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特許7567376無線フレーム解析システム、無線フレーム解析方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】無線フレーム解析システム、無線フレーム解析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/10 20090101AFI20241008BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20241008BHJP
【FI】
H04W24/10
H04W24/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020184239
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074302
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹内 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩平
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/133108(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/011065(WO,A1)
【文献】特開2010-038943(JP,A)
【文献】国際公開第2020/088747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析する分析手段と、
前記クラスタリング処理により得られたクラスタ間の距離を算出する距離算出手段と、
前記クラスタ間の距離に基づいて前記クラスタリング処理の結果の信頼度を判定する信頼度判定手段と、
前記分析手段の分析結果を出力する出力手段と、
前記信頼度に応じて、結果を出力するために必要とされる前記フレーム特徴量のサンプル数を切り替えることにより、前記出力手段が前記分析結果を出力するタイミングを変更する出力タイミング変更手段と、
を含む無線フレーム解析システム。
【請求項2】
前記分析手段は、前記フレーム特徴量のサンプル数が所定数増えるごとに前記クラスタリング処理を行ない、
前記出力タイミング変更手段は、前記信頼度が所定の閾値未満である場合、予め設定された第1の数のサンプルについての前記フレーム特徴量に対する前記クラスタリング処理が行われた時点で、前記出力手段が前記分析結果の出力を行うよう制御し、前記信頼度が所定の閾値以上である場合、前記クラスタリング処理の対象となった前記フレーム特徴量のサンプル数が前記第1の数に到達しているか否かにかかわらず直ちに前記出力手段が前記分析結果の出力を行うよう制御する
請求項1記載の無線フレーム解析システム。
【請求項3】
前記出力タイミング変更手段は、前記信頼度が所定の閾値以上である場合、前記クラスタリング処理の対象となった前記フレーム特徴量のサンプル数が予め設定された第2の数に到達していないときは、前記出力手段が前記分析結果の出力を行わないように制御し、
前記第2の数は、前記第1の数よりも小さい数である
請求項2に記載の無線フレーム解析システム。
【請求項4】
前記距離算出手段が、マハラノビス距離または正規化ユークリッド距離を用いて前記クラスタ間の距離を算出する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線フレーム解析システム。
【請求項5】
前記出力手段は、前記分析結果とともに、前記信頼度または前記クラスタ間の距離の情報も出力する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無線フレーム解析システム。
【請求項6】
受信データ系列から送信ノード数をカウントする送信ノード数カウント手段と、
前記送信ノード数カウント手段のカウント結果に基づいて抽出期間を算出する抽出期間算出手段と、
前記抽出期間に受信した受信データ系列から前記フレーム特徴量を抽出するフレーム特徴量抽出手段と、
をさらに備える
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線フレーム解析システム。
【請求項7】
複数の受信センサを用いて、各受信センサで取得した受信データ系列の受信強度の情報から、各送信ノードの送信電力または送信位置を推定する送信ノード推定手段をさらに含む
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線フレーム解析システム。
【請求項8】
前記分析手段は、前記送信ノードごとに推定した送信電力または送信位置の情報も用いて分析を行う
請求項7に記載の無線フレーム解析システム。
【請求項9】
フレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析し、
前記クラスタリング処理により得られたクラスタ間の距離を算出し、
前記クラスタ間の距離に基づいて前記クラスタリング処理の結果の信頼度を判定し、
前記信頼度に応じて、結果を出力するために必要とされる前記フレーム特徴量のサンプル数を切り替えることにより、分析結果を出力するタイミングを変更する
無線フレーム解析方法。
【請求項10】
フレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析する分析ステップと、
前記クラスタリング処理により得られたクラスタ間の距離を算出する距離算出ステップと、
前記クラスタ間の距離に基づいて前記クラスタリング処理の結果の信頼度を判定する信頼度判定ステップと、
分析結果を出力する出力ステップと、
前記信頼度に応じて、結果を出力するために必要とされる前記フレーム特徴量のサンプル数を切り替えることにより、前記分析結果を出力するタイミングを変更する出力タイミング変更ステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線フレームを解析することで分析対象のネットワーク構成を分析する無線フレーム解析システム、無線フレーム解析方法、及びプログラムに関する。特に、無線フレームを解析してネットワーク構成を分析する際の出力の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電波センサやトラフィックモニターなどを用いて、対象端末の無線フレームやトラフィックを解析することでそれらの伝送内容を推定したり、分析対象のネットワークの構成を推定したりするシステムが提案されている。以下、分析対象のネットワークを対象ネットワークと称すことがある。ここで、伝送内容の例としては、音声通話、映像伝送、テレビ電話、放送、テレビ放送、衛星放送、ラジオ、SMS(Short Message Service)、Webアクセス、SNS(Social Networking Service)アプリ、iMode等のキャリア機能利用、スマートフォンアプリケーション、テレメトリ、ゲーム、FTP(File Transfer Protocol)、SSH(Secure Shell)、Telnet、RDP(Remote Desktop Protocol)、などである。また、ネットワーク構成の例としては、ツリー型、スター型、リング型、メッシュ型、バス型、フルコネクト型、これらの複合型、などである。
【0003】
無線フレームやトラフィックを解析する手法の1つとして、ある単位時間当たりの転送データ量や、転送データ個数、転送回数、転送頻度、転送時間などのフレーム特徴量を抽出して分析する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1では、一定時間ごとの加入者毎のデータ量や消費リソース量を抽出してサービス料金を清算する方法が提案されている。各加入者が利用可能なリソースは、他のユーザがリソースを利用しているかを含む様々な条件によって変動する。このため、この文献の方法では、一定時間ごとに加入者ごとのデータ量だけでなくリソース量も抽出して、サービス料金を消費されたリソースの量と伝達されたデータの量の双方の関数として決定することで、妥当なサービス料金の清算と徴収を可能にする。この場合、データ量やリソース量を抽出する期間の基準となる一定時間(単位時間)を、清算対象時間等に合わせて固定的に設定(例えば、1時間ごと、1日ごと、1か月ごと、等のように)することで所望の清算料金を双方の関数から算出できる。しかしながら、これらの単位時間の設定に対して清算対象時間が必要以上に長い場合には、算出結果が得られるまで必要以上に時間を要してしまうという課題がある。
【0005】
また、特許文献2では、ネットワーク通信動作に関連した各種エラーの発生回数に応じてユーザに対してエラーを認識可能にする方法が提案されている。これは、ネットワーク通信動作に関連した各種エラーのそれぞれついて、計数された連続発生回数が、設定された回数に達した場合にだけ当該エラーが発生した旨をユーザに対して出力することで、信頼性の高い必要なエラーのみユーザに認識可能にするものである。しかしながら、この場合も、上述した設定された回数に依存してユーザにエラー出力するか否かが決定されてしまう。このため、もし途中でより信頼性の高い重要なエラー発生状態となった場合でも、発生回数が設置された回数まで達していない場合は、エラーが発生した旨がユーザに対して出力されない。すなわち、エラー出力までの時間を必要以上に要してしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2008-510372号公報
【文献】特開2004-248083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線フレームやトラフィックを解析する手法の1つとして、ある単位時間当たりの転送データ量や、転送データ個数、転送回数、転送頻度、転送時間などのフレーム特徴量を抽出して分析する方法が提案されている。ここで、分析結果の推定精度を高めるためには、できるだけ多いサンプル数のフレーム特徴量を用いた分析が好ましい。しかし、必要とするサンプル数が多いほど、必要とするサンプル数がそろうまでに時間を要してしまい、分析結果を出力するまでに多くの時間を要することとなる。このため、経験的に、又は、統計的な手法を用いて、必要なサンプル数を固定的に設定した場合、実際には設定したサンプル数に比べて少ないサンプル数でも高い推定精度になる場合があるにも関わらず、結果出力までに無駄に時間を要してしまうという課題がある。
【0008】
一例として、単位時間あたりの各送信ノードの送信データ量の比率から、どの送信ノードがスター型ネットワークのハブ局であるかを分析する場合を考える。この場合、単位パケット長、ユーザ切り替え時間、又は伝送データ内容等が未知の場合、各送信ノードの送信データ量を抽出する単位時間を適切に設定するのは困難であると共に、分析結果の出力のための必要サンプル数を適切に設定することも困難である。すなわち、例えば、通信が安定するまでの時間を考慮して設定した1分間という時間の間に取得されるサンプル数からネットワークを推定するなど、ある前提や用途に応じてマージンを含めて固定的に必要サンプル数を設定した場合を考える。この場合、その前提や用途に合致する対象ネットワークの場合は、設定した必要サンプル数のサンプルに対する分析により、必要十分な分析結果が得られる。一方で、その前提や用途に合致しない場合や、各ノードが所定の種別(例えばハブ局)か否かが明確に区別できる場合、マージンが多すぎる場合などは、設定した必要サンプル数に比べて少ないサンプル数でも実際には十分な分析精度が得られる場合がある。この場合、必要以上に結果出力までの時間を要していることが課題である。
【0009】
そこで、本明細書に開示される実施形態が達成しようとする目的の1つは、無線フレーム解析やトラフィック解析において、フレーム特徴量を抽出して分析する場合に、分析対象に応じた適切な時間で分析結果を出力することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様にかかる無線フレーム解析システムは、
フレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析する分析手段と、
前記クラスタリング処理により得られたクラスタ間の距離を算出する距離算出手段と、
前記クラスタ間の距離に基づいて前記クラスタリング処理の結果の信頼度を判定する信頼度判定手段と、
前記分析手段の分析結果を出力する出力手段と、
前記信頼度に応じて、結果を出力するために必要とされる前記フレーム特徴量のサンプル数を切り替えることにより、前記出力手段が前記分析結果を出力するタイミングを変更する出力タイミング変更手段と、
を含む。
【0011】
第2の態様にかかる無線フレーム解析方法では、
フレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析し、
前記クラスタリング処理により得られたクラスタ間の距離を算出し、
前記クラスタ間の距離に基づいて前記クラスタリング処理の結果の信頼度を判定し、
前記信頼度に応じて、結果を出力するために必要とされる前記フレーム特徴量のサンプル数を切り替えることにより、分析結果を出力するタイミングを変更する
無線フレーム解析方法。
【0012】
第3の態様にかかるプログラムは、
フレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析する分析ステップと、
前記クラスタリング処理により得られたクラスタ間の距離を算出する距離算出ステップと、
前記クラスタ間の距離に基づいて前記クラスタリング処理の結果の信頼度を判定する信頼度判定ステップと、
分析結果を出力する出力ステップと、
前記信頼度に応じて、結果を出力するために必要とされる前記フレーム特徴量のサンプル数を切り替えることにより、前記分析結果を出力するタイミングを変更する出力タイミング変更ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
上述の態様によれば、フレーム特徴量を抽出して分析する場合に、分析対象に応じた適切な時間で分析結果を出力することができる無線フレーム解析システム、無線フレーム解析方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態の概要における無線フレーム解析システムのブロック図である。
図2】第1の実施の形態における無線フレーム解析システムの全体構成を示す図である。
図3】第1の実施の形態における無線フレーム解析システムの処理フローを示す図である。
図4A】第1の実施の形態における特徴量サンプル数可変制御の処理イメージを示す図である。
図4B】第1の実施の形態における特徴量サンプル数可変制御の処理イメージを示す図である。
図5】複数の分布間の距離を求める手法の例を示す図である。
図6】第1の実施の形態における出力タイミング変更制御の処理フロー例を示す図である。
図7】第2の実施の形態における無線フレーム解析システムの全体構成を示す図である。
図8】第2の実施の形態における無線フレーム解析システムの処理フローを示す図である。
図9】第2の実施の形態における出力タイミング変更制御の処理フロー例を示す図である。
図10】クラスタごとの詳細出力情報の例を示す図である。
図11】第3の実施の形態における無線フレーム解析システムの全体構成を示す図である。
図12】第3の実施の形態における抽出期間可変制御の処理フロー例を示す図である。
図13】第3の実施の形態における抽出期間可変制御の処理イメージを示す図である。
図14】受信電波強度と送受信間距離の関係の例を示す図である。
図15】各実施の形態における無線フレーム解析システムのコンピュータ構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態の概要>
実施形態の詳細な説明に先立って、実施形態の概要を説明する。図1は、実施の形態の概要にかかる無線フレーム解析システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、無線フレーム解析システム1は、分析部2と、距離算出部3と、信頼度判定部4と、出力部5と、出力タイミング変更部6とを備えている。
【0016】
分析部2は、フレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析する。距離算出部3は、クラスタリング処理により得られたクラスタ間の距離を算出する。信頼度判定部4は、算出されたクラスタ間の距離に基づいてクラスタリング処理の結果の信頼度を判定する。出力部5は、分析部2の分析結果を出力する。出力部5は、例えば、ディスプレイに情報を出力してもよいし、無線フレーム解析システム1と有線又は無線により通信可能に接続された他の端末装置などに出力してもよい。そして、出力タイミング変更部6は、判定された信頼度に応じて、結果を出力するために必要とされるフレーム特徴量のサンプル数を切り替えることにより、出力部5が分析結果を出力するタイミングを変更する。なお、フレーム特徴量とは、送信ノード毎の送信態様を表す特徴量であり、例えば、送信データ量、送信頻度、送信回数、送信時間、占有率、送信フレーム数、送信帯域、送信データの個数、送信変調レート、送信電力などが該当する。
【0017】
このような構成を有する無線フレーム解析システム1によれば、クラスタリング処理の結果の信頼度に応じて、分析結果の出力タイミングを制御することができる。すなわち、無線フレーム解析システム1によれば、フレーム特徴量のサンプル数が予め定められた必要数に達していなくても、判定された信頼度が基準を満たす場合には、分析結果を出力することが可能である。このため、無線フレーム解析システム1によれば、フレーム特徴量を抽出して分析する場合に、分析対象に応じた適切な時間で分析結果を出力することができる。つまり、結果出力までの時間を適応的に短縮することが可能となる。
【0018】
次に、実施の形態について詳細に説明する。第1の実施の形態では、無線フレーム解析システムの例として、フレーム特徴量抽出部、分析部、サンプル数可変制御部などの基本構成と特徴、動作について詳説する。なお、フレーム特徴量抽出部は、受信データ系列からフレーム特徴量として送信データ量などを抽出する構成要素であり、分析部は、抽出したフレーム特徴量からネットワーク構成の分析のためのクラスタリング処理を行う構成要素である。また、サンプル数可変制御部は、分析結果の出力までに必要とされるフレーム特徴量のサンプル数を制御する構成要素である。また、第2の実施の形態では、クラスタ間の距離(すなわち信頼度又はクラスタ間の類似度)を、分析結果と共に出力する場合の例について説明する。更に、第3の実施の形態では、複数の電波センサを用いて各々の送信ノードの位置や送信電力も推定した上で無線フレーム解析する場合の例について説明する。
【0019】
<構成の説明>
図2は、第1の実施の形態である無線フレーム解析システムの全体構成を示す図である。一例として、当該システムは、フレーム特徴量抽出部や、分析部、サンプル数可変制御部などを備える。以下、具体的に説明する。
【0020】
第1の実施の形態である無線フレーム解析システム100は、受信データ取得部10と、抽出期間制御部20、フレーム特徴量抽出部30、分析部40、サンプル数可変制御部50、出力部60を備える。ここで、サンプル数可変制御部50は、サンプル数設定部70、距離算出部80、信頼度判定部85、出力タイミング変更部90を含む。なお、図示されていないが、出力部60の後段に、その出力結果を用いて対象ネットワーク構成や各送信ノードの特徴などをユーザ向けに可視化する分析結果可視化部などを備えていても良い。
【0021】
本実施の形態において、分析部40は、図1の分析部2に対応している。距離算出部80は、図1の距離算出部3に対応している。信頼度判定部85は、図1の信頼度判定部4に対応している。出力部60は、図1の出力部5に対応している。出力タイミング変更部90は、図1の出力タイミング変更部6に対応している。
【0022】
受信データ取得部10は、例えば、電波センサ等を用いて取得した受信データ系列から、その無線フレーム情報(電波強度情報、周波数帯域情報、フレーム長情報、使用プロトコル情報、送信元情報、送信先情報、ヘッダ情報など)を取得する。また、フレーム特徴量抽出部30は、抽出期間制御部20から指定された抽出期間に従って、受信データ系列の無線フレーム情報からフレーム特徴量(送信ノードごとの送信データ量、送信回数、送信時間、送信電力など)を抽出する。抽出されたフレーム特徴量は、クラスタリング処理の対象となるサンプルとして利用されることとなる。抽出期間制御部20は、フレーム特徴量の抽出期間を指定する。したがって、抽出期間制御部20は、1つのサンプルを得るための抽出期間を指定する。例えば、抽出期間制御部20が抽出期間として時間Tを指定した場合、時間Tの間に取得した受信データ系列から抽出されたフレーム特徴量が1つのサンプルを構成することとなる。フレーム特徴量抽出部30は、フレーム特徴量の抽出、すなわちサンプルの抽出を繰り返す。例えば、フレーム特徴量抽出部30は、時間Tが経過する度にフレーム特徴量(すなわちサンプル)を抽出する。本実施の形態では、抽出期間制御部20は、例えば所定の固定時間を抽出期間として指定する。
【0023】
分析部40は、抽出されたフレーム特徴量に対するクラスタリング処理を行うことにより、ネットワーク構成を分析する。分析部40は、例えば対象ネットワーク内のいずれの送信ノードがハブ局(統制局、ルートノードなど)か通常の端末局(子局)かを分析する。具体的には、例えば、まず、分析部40は、分析開始時までに得られた全てのフレーム特徴量(サンプル)に対し、クラスタリング処理を行い、次に、注目する送信ノードについてのサンプルが最も多く属しているクラスタを特定する。これにより、分析部40は、注目するノードが、特定されたクラスタが有する特徴に対応する種別のノードであると判定する。例えば、フレーム特徴量が送信データ量であり、注目する送信ノードのサンプルが最も多く属しているクラスタがクラスタXであるとする。そして、クラスタXは他のクラスタに比べて、送信データ量が多いという特徴を有しているとする。この場合、分析部40は、注目する送信ノードが、ハブ局(統制局、ルートノードなど)であると判定する。これに対し、注目する送信ノードのサンプルが最も多く属しているクラスタがクラスタYであり、クラスタYは他のクラスタに比べて、送信データ量が少ないという特徴を有している場合、分析部40は、注目する送信ノードが、端末局(子局)であると判定する。
【0024】
出力部60は、サンプル数可変制御部50から指定された出力タイミングに従って、分析部40の分析結果を出力する。
【0025】
ここで、サンプル数可変制御部50におけるサンプル数設定部70は、必要特徴量サンプル数として、所定の値を設定する。ここで、必要特徴量サンプル数は、分析部40の分析結果の出力までに必要とされるフレーム特徴量のサンプル数である。また、距離算出部80は、分析部40におけるクラスタリング結果から各クラスタ間の距離を算出する。信頼度判定部85は、そのクラスタ間距離に応じてクラスタリング結果の信頼度を判定する。そして、出力タイミング変更部90は、分析結果の出力までに必要とされるフレーム特徴量のサンプル数を、信頼度判定部85にて判定された信頼度に応じて、動的に切り替える。具体的には、出力タイミング変更部90は、分析結果の出力までに必要とされるフレーム特徴量のサンプル数を、サンプル数設定部70にて予め設定された所定値から、信頼度の判定がされたタイミングまでの間に得られたサンプル数に、動的に切り替える。これにより出力タイミング変更部90は、結果出力までのタイミング(結果を出力するために必要とされる特徴量サンプル数)を制御する。
【0026】
<動作の説明>
第1の実施の形態の動作について図3から図6を用いて説明する。
図3は、第1の実施の形態における無線フレーム解析システム100の処理フロー例を示す図である。第1の実施の形態の動作としては、まず、受信データ取得部10にて、例えば電波センサ等を用いて取得した受信データ系列から、その無線フレーム情報の取得を行う(S11)。ここで、受信データ取得部10は、抽出期間制御部20から通知される抽出期間になるまで無線フレーム情報の取得を継続する(S12)。そして、抽出期間分の時間が経過したら、フレーム特徴量抽出部30では、送信データ量などのフレーム特徴量を、抽出期間内に取得された無線フレーム情報(抽出期間内に取得された受信データ系列)から抽出する(S13)。具体的には、例えば、抽出期間内に送信された送信ノードごとの送信データ量をカウントし、それを送信ノードごとのフレーム特徴量として抽出する。なお、フレーム特徴量としては、送信データ量の他に、送信頻度、送信回数、送信時間、占有率、送信フレーム数、送信帯域、送信データの個数、送信変調レート、送信電力などの特徴量であっても良い。
【0027】
次に、抽出したフレーム特徴量を用いて、分析部40では、例えば対象ネットワーク内のいずれの送信ノードがハブ局(統制局、ルートノードなど)か通常の端末局(子局)かなどを分析するためのクラスタリング処理を行う(S14)。このクラスタリング処理は、一定数のフレーム特徴量サンプルごとに実施しても良い。すなわち、分析部40は、フレーム特徴量のサンプル数が所定数増えるごとにクラスタリング処理を行なう。そして、フレーム特徴量抽出部30および分析部40は、クラスタリング処理の対象となるサンプル数がサンプル数可変制御部50から通知される必要特徴量サンプル数になるまで、フレーム特徴量の抽出とクラスタリング処理を繰り返す(S15)。すなわち、フレーム特徴量抽出部30および分析部40は、結果出力タイミングが到来するまで、フレーム特徴量の抽出とクラスタリング処理を繰り返す。そして、クラスタリング処理の対象となるサンプル数が必要特徴量サンプル数に達すると、出力部60では、分析結果(各送信ノードについて、ハブ局(統制局)か端末局かを判定する分析などのネットワーク構成の分析の結果)を出力する(S16)。
【0028】
ここで、サンプル数可変制御部50では、上述した通り、結果の出力タイミング(必要特徴量サンプル数)の決定を行う。
【0029】
まず、サンプル数設定部70が予め設定する必要特徴量サンプル数(S20)について説明する。一般的には、信頼度が所定の水準より高いクラスタリング結果が得られるサンプル数として、対象ネットワーク構成や通信方式、伝送される内容やその用途などに応じて実験的または経験的に決定されたサンプル数が、必要特徴量サンプル数として事前に設定される。例えば、通信が安定するために要する時間として想定される1分間に取得されるサンプルからネットワークの構成を分析する場合は、1分間で取得可能な特徴量サンプル数を必要特徴量サンプル数として設定することなどが考えられる。なお、1分間で取得可能な特徴量サンプル数は、1分間を、抽出期間制御部20が指定する抽出期間で除算することにより定まる。
【0030】
または、統計学を用いて統計的に必要特徴量サンプル数を算出することにより、必要特徴量サンプル数が設定されてもよい。統計的に算出する場合は、例えば、抽出したフレーム特徴量だけでなく、それに続くフレーム特徴量も含めた母集団が、抽出したフレーム特徴量のみで構成されたクラスタ分布の中に入る統計的な確率から、必要特徴量サンプル数が算出されてもよい。例えば、フレーム特徴量の分布が正規分布に従うとし、信頼係数を95%とし、母比率の推定精度の誤差を5パーセント以下にするために必要なサンプル数nは、以下の式により算出することができる。なお、以下の例は、推定精度(各送信ノードのフレーム特徴量が当該送信ノードの特徴を表すクラスタへと正しく分類される確率)を80%に設定した場合の例である。なお、下記の式では、信頼係数が95%であるため、必要特徴量サンプル数の算出に用いられる分位点の値として、1.96が用いられている。
【0031】
【数1】
【0032】
上記式をnについて解くと、n≧245.9という解が得られる。すなわち、この場合、246を必要特徴量サンプル数として設定すればよい。なお、上述の説明では、正規分布を用いたが、t分布などの他の分布が用いられてもよい。このように、サンプル数設定部70は、母比率の信頼係数と、母比率の推定精度の誤差などを用いて統計的に必要特徴量サンプル数を決定してもよい。なお、必要特徴量サンプル数のユーザによる事前設定が不要な場合、すなわち、固定的に必要特徴量サンプル数をシステムに登録しておいて良い場合は、サンプル数設定部70は明示的に存在しなくてもよい。
【0033】
次に、距離算出部80、信頼度判定部85、出力タイミング変更部90を用いて、出力タイミング(必要特徴量サンプル数)を制御する一連の動作について説明する。図4A及び図4Bは、サンプル数可変制御部50の処理イメージを示す図である。図4A及び図4Bでは、2次元のフレーム特徴量(すなわち、2種類のフレーム特徴量からなるサンプル)について、クラスタリング処理を行った結果である。図4A及び図4Bでは、黒い点で表されるサンプルの集合である第1のクラスタと、×印の点で表されるサンプルの集合である第2のクラスタの2つのクラスタが示されている。また、それぞれのクラスタについて、クラスタに属するサンプルの平均の点から2σ(ただし、σはクラスタに属するサンプルの標準偏差を表す)の距離の位置を円で示している。具体的には、第1のクラスタにおいては、実線の円で2σの点の位置が示され、第2のクラスタにおいては、破線の円で2σの点の位置が示されている。なお、これらのことは、後述する図5においても同様である。
【0034】
図4Aは、2つのクラスタ(2σの点の位置を表す円)間の距離が近く、クラスタリング処理の信頼度が低いと判定される場合の例を示している。この場合、出力タイミング変更部90は、クラスタリングされるサンプル数が、予め設定された必要特徴量サンプル数に到達するまで、分析結果が出力されないように出力タイミングを制御する。これに対して、図4Bは、2つのクラスタ(2σの点の位置を表す円)間の距離が遠く、クラスタリング処理の信頼度が高いと判定される場合の例を示している。この場合、出力タイミング変更部90は、クラスタリングされるサンプル数が、予め設定された必要特徴量サンプル数に到達していなくても、分析結果を直ちに出力するように出力タイミングを制御する。
【0035】
以下、図3に示したフローチャートに沿って、出力タイミングの制御の動作の流れについて説明する。距離算出部80では、分析部40によるクラスタリング処理の度に、クラスタリング結果に対して各クラスタ間(各分布間)の距離を算出する(S21)。なお、距離の算出の詳細な具体例については後述する。
【0036】
そして、信頼度判定部85では、距離算出部80で算出されたクラスタ間距離から信頼度を判定する(S22)。例えば、信頼度判定部85は、各クラスタ間の距離がまだ近ければ(クラスタ間距離の値が小さければ)、まだ信頼度が低いと判定する。また、信頼度判定部85は、各クラスタ間の距離が遠ければ(クラスタ間距離の値が大きければ)、クラスタリング結果の信頼度が高いと判定する。信頼度判定部85は、各クラスタの信頼度を次のように判定する。信頼度判定部85は、注目するクラスタ(信頼度の判定対象のクラスタ)と他のそれぞれのクラスタとのそれぞれの距離のうち最小の距離に基づいて、当該注目するクラスタの信頼度を判定する。これは、注目するクラスタに対して近いクラスタが一つでもある場合、当該注目するクラスタは、クラスタリングの精度が不十分であると考えられるためである。このため、他のそれぞれのクラスタとのそれぞれの距離のうち最小の距離を用いて信頼度が判定される。なお、信頼度の判定の詳細な具体例については後述する。
【0037】
そして、出力タイミング変更部90では、信頼度判定部85における信頼度判定の結果に基づいて、出力タイミングを変更するか否かを制御する(S23)。出力タイミング変更部90は、クラスタリング結果の信頼度が高いという判定の場合は、結果出力までに必要な特徴量サンプル数をその時点までに取得された特徴量サンプル数に切り替えて、その時点からクラスタリング結果の出力を開始するように変更する。一方で、信頼度がまだ低いという判定の場合は、出力タイミング変更部90は、出力タイミングは切り替えず、予め設定された必要特徴量サンプル数に対する分析が行われるまで待って、クラスタリング結果を出力させるように制御する。
【0038】
ここで、図5を用いて、距離算出部80における、クラスタ間距離の算出(S21)の方法について説明する。図5は、例えば、クラスタ間距離を、「マハラノビス距離」を応用して算出する例を模式的に示している。マハラノビス距離とは、任意の点と任意の分布との間の距離を計算するための手法の1つであり、分布の分散(標準偏差、ばらつき)を考慮して、点と分布間の距離を計算できるという特徴を持つ。なお、共分散行列が対角行列の場合(異なる次元(変数)の間に相関がない場合)、マハラノビス距離は「正規化ユークリッド距離」とも呼ばれる。
【0039】
点との距離が計算される対象である分布が1次元の分布である場合、点Xとこの分布とのマハラノビス距離D(g,b)は、以下の式で計算される。なお、以下の式において、上にバーが付いたXは、分布の平均値を表し、V(X)は、分布における分散(共分散)を示している。
【0040】
【数2】
【0041】
点との距離が計算される対象である分布が2次元の分布である場合、点(u,v)とこの分布とのマハラノビス距離D(k,n)は、以下の式で計算される。なお、以下の式において、{u、v}は、分布における次元ごとの平均値を表し、{λ、λ}は、分布における分散(共分散)を示している。
【0042】
【数3】
【0043】
点との距離が計算される対象である分布がn(nは3以上の整数)次元の分布である場合、点(1d,2d,…,nd)とこの分布とのマハラノビス距離D(k,m)は、以下の式で計算される。なお、以下の式において、{1d、2d、…、nd}は、分布における次元ごとの平均値を表し、{λ、λ、…、λ}は、分布における分散(共分散)を示している。
【0044】
【数4】
【0045】
上述したように、マハラノビス距離は任意の点と任意の分布との間の距離を算出する手法のため、任意のクラスタ分布間の距離を、距離算出部80は、例えば、次のように算出する。ここでは、2種類の計算方法について説明する。
【0046】
1つ目の計算方法は、次元ごとに一方の分布に含まれる点と他方の分布との間の距離を求めた上で、分布間の距離を求める手法である。具体的には、例えば、各分布の各次元の標準偏差をσとすると、距離算出部80は、まず、次元ごとに、分布Aの2σの点と分布Bの間のマハラノビス距離と、分布Bの2σの点と分布Aの間のマハラノビス距離をそれぞれ計算する。例えば、図5を参照すると、マハラノビス距離は次のように算出される。ここでは、第1の次元についてのマハラノビス距離の算出について説明する。図5において、分布Bにおける点P1と点P2が、分布Bの2σの点である。この場合、第1の次元について、分布Bの2σの点と分布Aの間のマハラノビス距離として、点P1と分布Aのマハラノビス距離と、点P2と分布Aのマハラノビス距離が算出されることとなる。同様に、第1の次元について、分布Aの2σの点と分布Bの間のマハラノビス距離が算出される。すなわち、ここでは、合計4つのマハラノビス距離が算出される。同様に、第2の次元についても、4つのマハラノビス距離が算出される。そして、距離算出部80は、注目する次元について算出されたマハラノビス距離のうち、最小のマハラノビス距離を、この注目する次元についての距離とする。例えば、上述の例では、第1の次元について、上述した4つのマハラノビス距離のうち、最小のマハラノビス距離が第1の次元についての距離となる。同様に、第2に次元に対しても、この次元についての距離が決定される。そして、距離算出部80は、次元についての距離のそれぞれのうち、最大の値をこれら2つの分布間の距離(すなわち、クラスタ間の距離)とする。上述した例では、第1の次元についての距離と第2の次元についての距離のうち、最大の距離が、分布Aと分布Bの距離として算出される。なお、各次元の距離のうち最大の距離を選択する理由は以下の通りである。図5に示されるように、2つの分布Aと分布Bは、離れたクラスタを形成している。第1の次元(すなわちグラフの横軸)の座標だけに着目した場合、分布Aのサンプルと分布Bのサンプルの値域は離れている。これに対し、第2の次元(すなわちグラフの縦軸)の座標だけに着目した場合、二つのサンプルの値域は概ね重複している。図5から明らかなようにいずれかの次元において、2つの分布が離れている場合、両者は離れている。このため、本計算方法では、各次元の距離のうち最大の距離を選択している。
【0047】
2つ目の計算方法は、一方の分布における全次元の平均値の点を求め、その点ともう一方の分布との間の距離を求めることで、それを分布間の距離とする手法である。距離算出部80は、まず、n次元の分布Aの平均値の点と分布Bとの間のマハラノビス距離を計算するとともに、n次元の分布Bの平均値の点と分布Aとの間のマハラノビス距離を計算する。例えば、図5を参照すると、距離算出部80は、分布Bの平均の点P3と分布Aとの間のマハラノビス距離を計算する。同様に、距離算出部80は、分布Aの平均の点(不図示)と分布Bとの間のマハラノビス距離を計算する。そして、距離算出部80は、両者の最小値(または平均値)をこれら2つの分布間の距離(すなわち、クラスタ間の距離)とする。なお、2つ目の計算方法で、一方の分布における平均値の1点ともう一方の分布との間の距離の代わりに、一方のn次元の分布における複数の2σの点ともう一方の分布との間の距離を全て求めて、算出された距離のうち最小の距離を2つのクラスタ間の距離としてもよい。
【0048】
ここで、図5の例では、クラスタ分布間の距離を算出する手法として、マハラノビス距離を応用して算出する場合の例を示したが、他の手法や指標を用いてクラスタ間距離を算出してもよい。例えば、距離算出部80は、分布Aと分布Bの間のカルバック・ライブラー情報量やクロスエントロピーを計算し、その計算結果から換算して分布間の距離を算出してもよい。なお、カルバック・ライブラー情報量とは、分布間の類似度に相当する非負の情報量(完全一致の場合に値がゼロ)であり、クラスタリング処理時にクラスタを統合するための指標として用いられることもある情報量の1つである。
【0049】
次に、信頼度判定部85における信頼度の判定(S22)の動作について説明する。信頼度判定部85は、距離算出部80により算出されたクラスタ間の距離を用いて、クラスタリング処理の結果の信頼度を判定する。信頼度判定部85は、クラスタ間が離れている場合は信頼度を高く、クラスタ間が近接している場合は信頼度を低く判定する。例えば、距離算出部80において、図5の例に示したようにマハラノビス距離を応用して各クラスタ間の距離を算出している場合は、距離の値そのものが標準偏差σの乗数に相当する値となる。そのため、例えば、信頼度判定部85は、クラスタ間距離=3の場合は信頼度= 3σ(約99.7%)、クラスタ間距離=2の場合は信頼度=2σ(約95.5%)と計算できる。そして、信頼度判定部85は、所定の信頼度閾値を基準として、例えば信頼度の値が信頼度閾値以上の場合は「信頼度が高い」、信頼度閾値より小さい場合は「信頼度がまだ低い」などとして判定する。なお、信頼度閾値は、分析内容やその用途などに応じて決定する。
【0050】
例えば、クラスタリング結果により、対象ネットワーク内の各送信ノードがハブ局か端末局かといったネットワーク構成の分析を行う場合は、例えば、信頼度判定部85は次のような判定を行う。注目する送信ノードについてのサンプルが最も多く属しているクラスタの信頼度(当該クラスタとそれ以外の全クラスタとの距離に基づく信頼度)が信頼度閾値以上の場合、信頼度判定部85は、クラスタリング結果(分析結果)について「信頼度が高い」と判定する。一方、注目する送信ノードについてのサンプルが最も多く属しているクラスタの信頼度が信頼度閾値未満の場合は、信頼度判定部85は、クラスタリング結果(分析結果)について「信頼度が低い」と判定する。なお、この信頼度閾値は、上述の通り、例えば3σ(約99.7%)であってもよいし、その他の値(例えば、2.5σ(約98.8%)、2σ(約95.5%)など)であってもよい。
【0051】
なお、信頼度閾値を3σとすると、例えば、上述した1つ目の計算方法を用いてクラスタ間距離を算出する場合は、一方のクラスタ分布の2σの位置に相当する点のうち最も他方のクラスタ分布に近い点と、他方のクラスタ分布の平均値の点との距離が、他方のクラスタの3σの範囲よりも大きいか否かを判定することを意味する。
【0052】
注目する送信ノードについてのサンプルが最も多く属しているクラスタごとに信頼度判定を行うのか、全クラスタに対して一括して信頼度判定を行うのか、は用途などに応じて選択可能であり、いずれの方法でもよい。すなわち、注目する送信ノードについてのサンプルが最も多く属しているクラスタの信頼度に基づいて、分析結果の出力タイミングが制御されてもよいし、全てのクラスタに対する信頼度に基づいて、分析結果の出力タイミングが制御されてもよい。全てのクラスタに対する信頼度は、例えば、各クラスタの信頼度に基づいて算出されてもよい。例えば、全てのクラスタに対する信頼度は、各クラスタの信頼度の最小値であってもよいし、各クラスタの信頼度の平均値などであってもよい。
【0053】
最後に、出力タイミング変更部90における、分析結果の出力までに必要な特徴量サンプル数を変更するか否かの制御(S23)の動作について説明する。図6は、出力タイミング変更部90の処理フローの例を示す図である。出力タイミング変更部90は、信頼度判定部85における信頼度判定の結果に基づいて、出力タイミングを変更するか否かを制御する(S231)。すなわち、信頼度判定部85における信頼度判定の結果が「信頼度が高い」という判定の場合は、結果出力までに必要な特徴量サンプル数をその時点までの特徴量サンプル数とし、直ちに出力を開始するように、出力タイミングを切り替える(S232)。すなわち、出力タイミング変更部90は、予め設定した必要特徴量サンプル数まで分析対象のサンプル数が到達するまで待たずに、その時点から出力を開始するよう制御する。一方で、「信頼度がまだ低い」という判定の場合には、出力タイミングは切り替えず、サンプル数設定部70で予め設定された必要特徴量サンプル数のサンプルが分析されるまで待ってからクラスタリング結果(分析結果)を出力するように制御する(S232)。
【0054】
このように、第1の実施の形態においては、サンプル数可変制御部50における距離算出部80、信頼度判定部85、出力タイミング変更部90の動作によって、クラスタ間距離から信頼度を判定し、信頼度に応じて、結果の出力タイミングを動的に切り替える。すなわち、出力タイミング変更部90は、クラスタリング処理の結果の信頼度が所定の閾値未満である場合、予め設定された第1の数のサンプルについてのフレーム特徴量に対するクラスタリング処理が行われた時点で、出力部60が分析結果の出力を行うよう制御する。また、出力タイミング変更部90は、クラスタリング処理の結果の信頼度が所定の閾値以上である場合、サンプル数が上述の第1の数に到達しているか否かにかかわらず直ちに出力部60が分析結果の出力を行うよう制御する。つまり、クラスタリング結果の信頼度が高い場合に限り、結果出力のタイミングを早めることが可能になる。これは、対象ネットワーク構成の推定精度や分析精度を高精度に保ったまま、結果出力までの時間を短縮できるという効果に繋がる。すなわち、無線フレーム解析を用いた対象ネットワーク構成推定などにおいて、適応的な高速化が可能という利点がある。
【0055】
<第2の実施の形態>
図7は、第2の実施の形態である無線フレーム解析システムの構成例を示す図である。具体的には、図7は、分析状況を外部に可視化するために、クラスタ間の距離(すなわち信頼度又はクラスタ間の類似度)を、分析結果と共に出力する無線フレーム解析システム101の構成例を示す図である。また、第2の実施の形態では、信頼度判定部85によって判定された信頼度が高くても最低限必須とされる特徴量サンプル数を用いることにより、出力される分析結果の信頼度を更に高めた構成の例についても示している。なお、本実施の形態は、分析結果とともにクラスタ間の距離等の出力も行うという特徴と、最低限必須とされる特徴量サンプル数を用いるという特徴の両方を備えるが、いずれか一方だけを備えた実施の形態を提供することも可能である。
【0056】
<構成の説明>
第2の実施の形態における無線フレーム解析システム101は、第1の実施の形態と同様に、受信データ取得部10と、抽出期間制御部20、フレーム特徴量抽出部30、分析部40、サンプル数可変制御部51、出力部61を備える。ここで、サンプル数可変制御部51は、第1の実施の形態と同様に、サンプル数設定部71、距離算出部80、信頼度判定部85、出力タイミング変更部91を含む。なお、図示されていないが、出力部61の後段に、その出力結果を用いて対象ネットワーク構成や各送信ノードの特徴などをユーザ向けに可視化する分析結果可視化部などを備えていても良い。
【0057】
無線フレーム解析システム101における受信データ取得部10、抽出期間制御部20、フレーム特徴量抽出部30、分析部40は、第1の実施の形態で既に説明されているため、説明を割愛する。
【0058】
出力部61は、第1の実施の形態の出力部60と同様、サンプル数可変制御部51から指定された出力タイミングに従って、分析部40の分析結果を出力する。ここで、第2の実施の形態に特有の構成として、分析状況を外部に可視化するために、出力部61は、分析結果とともに、次のような情報を出力する。出力部61は、例えば、分析結果とともに、各クラスタ間の距離すなわち信頼度を出力する。また、出力部61は、分析対象のサンプル数が必要特徴量サンプル数に達しているか否かを示す情報について、分析結果とともに出力してもよい。
【0059】
サンプル数可変制御部51における距離算出部80と信頼度判定部85については、第1の実施の形態において既に説明されている。ただし、第2の実施の形態に特有の構成として、サンプル数可変制御部51から出力部61に対して、出力すべき情報(例えば、距離の情報、信頼度の情報など)が出力される。
【0060】
また、サンプル数設定部71は、第1の実施の形態のサンプル数設定部70と同様、必要特徴量サンプル数として、所定の値を設定する。ただし、サンプル数設定部71は、第2の実施の形態に特有の構成として、第1の実施の形態と同様の必要特徴量サンプル数(第1の必要特徴量サンプル数)の設定に加えて、最低限必須となる必要特徴量サンプル数(第2の必要特徴量サンプル数)の設定も行う。
【0061】
出力タイミング変更部91は、第1の実施の形態の出力タイミング変更部90と同様、信頼度判定部85にて判定された信頼度と、サンプル数設定部71にて予め設定された必要特徴量サンプル数とに基づいて、分析結果の出力タイミングを制御する。ただし、第2の実施の形態に特有の構成として、出力タイミング変更部91は、サンプル数設定部71にて設定される2種類の必要特徴量サンプル数を用いて、出力タイミングの制御を行う。
【0062】
<動作の説明>
第2の実施の形態の動作について図8図9を用いて説明する。
図8は、第2の実施の形態における無線フレーム解析システム101の処理フロー例を示す図である。無線フレーム解析システム101における処理フローは、第1の実施の形態とほぼ同様であるが、第2の実施の形態に特有の処理として、サンプル数設定部71における2種類の必要特徴量サンプル数の設定(S24)がある。1つ目の第1の必要特徴量サンプル数は、第1の実施の形態と同様、経験的(実験的)または統計的に予め決定されたサンプル数である。より詳細には、第1の必要特徴量サンプル数は、種々の外部環境や任意のネットワーク構成など想定され得る条件を考慮して決定された、信頼できる分析結果を出力可能になるまでに必要とされる特徴量サンプル数である。一方で、第2の実施の形態に特有の第2の必要特徴量サンプル数は、クラスタ間距離に基づく信頼度が「高い信頼度」と判定された場合であっても、分析結果を出力するために最低限必須となる必要特徴量サンプル数である。必然的に、第2の必要特徴量サンプル数は、第1の必要特徴量サンプル数より小さい数値となる。
【0063】
最低限必須となる第2の必要特徴量サンプル数の設定方法としては、例えば、以下の2種類の方法が考えられる。1つ目の設定方法は、経験的(実験的)に設定する方法である。例えば、第1の実施の形態と同様、通信が安定するために要する時間として想定される1分間に取得されるサンプルからネットワークの構成を推定するために、1分間で取得可能な特徴量サンプル数を第1の必要特徴量サンプル数として設定する場合を考える。この場合、例えば、サンプル数設定部71は、第2の必要特徴量サンプル数として、例えば最初の10秒間で取得可能な特徴量サンプル数を設定する。
【0064】
2つ目の設定方法は、第1の実施の形態で述べたような統計的な手法を用いて設定する方法である。この場合、第2の必要特徴量サンプル数を算出する例としては、サンプル数設定部71は、次のようにサンプル数を設定してもよい。サンプル数設定部71は、第1の必要特徴量サンプル数を算出する場合に比べて、母比率の信頼係数(信頼区間)の値を低い値にする、又は、推定精度の誤差の値を大きい値にするなどして、統計的に最低限必須となるサンプル数を算出してもよい。例えば、必要なサンプル数の算出に用いる母比率の信頼係数(信頼区間)の値を最低限必須である低い値に設定したり、推定精度の誤差の値をギリギリ許容できる誤差の値に設定したりしてもよい。
【0065】
なお、2種類の必要特徴量サンプル数の設定方法としては、任意の設定方法を採用することが可能である。このため、サンプル数設定部71は、値の異なる2種類の必要特徴量サンプル数を設定すればよく、具体的な値の決定方法については任意の方法を採用することができる。
【0066】
出力タイミング変更部91における出力タイミング(必要特徴量サンプル数)を変更するか否かの制御(S25)も第2の実施の形態に特有の動作となる。図9は、第2の実施の形態における出力タイミング変更部91の処理フローの例を示す図である。出力タイミング変更部91は、まず、最低限必須なサンプル数として設定された第2の必要特徴量サンプル数のサンプルについて分析済みか否かを判定する(S251)。まだ第2の必要特徴量サンプル数のサンプルについて分析済みでなければ、出力タイミングの変更は行わない(S254)。すなわち、この場合、出力待ちの状態となる。つまり、この場合、出力タイミング変更部91は、出力タイミングを切り替えず、サンプル数設定部70で予め設定された第1の必要特徴量サンプル数のサンプルが分析されるまで待ってからクラスタリング結果(分析結果)を出力するように制御する。一方で、第2の必要特徴量サンプル数のサンプルについて分析済みであれば、出力タイミング変更部91は、信頼度判定部85における信頼度判定の結果に基づいて、出力タイミングを変更するか否かを制御する(S252)。すなわち、信頼度判定部85における信頼度判定の結果が「信頼度が高い」という判定の場合は、結果出力までに必要な特徴量サンプル数をその時点までの特徴量サンプル数とし、直ちに出力を開始するように、出力タイミングを切り替える(S253)。すなわち、出力タイミング変更部91は、予め設定した第1の必要特徴量サンプル数まで分析対象のサンプル数が到達するまで待たずに、その時点から出力を開始するよう制御する。一方で、「信頼度がまだ低い」という判定の場合には、出力タイミングは切り替えず、サンプル数設定部71で予め設定された第1の必要特徴量サンプル数のサンプルが分析されるまで待ってからクラスタリング結果(分析結果)を出力するように制御する(S254)。
【0067】
また、第2の実施の形態に特有の動作である信頼度等の情報の出力について説明する。出力部61は、クラスタリング結果(対象ネットワーク構成等の分析結果)の出力と合わせて、分析結果を補助する情報を出力する。出力部61は、分析結果を補助する情報として、例えば、信頼度判定部85で判定された信頼度に関する情報や、クラスタリングされたサンプル数が必要特徴量サンプル数に達しているか否かの情報などを出力する(S17)。ここで、信頼度判定部85で判定された信頼度に関する情報としては、出力タイミング変更部91にて出力タイミング(必要特徴量サンプル数)の変更可否を判断するために用いられた信頼度についての判定結果だけでなく、クラスタごとの詳細情報を含んでいても良い。図10は、クラスタごとの詳細出力情報の例を示す図である。例えば、クラスタごとの詳細情報としては、クラスタごとの信頼度の判定結果(信頼度の値)、その判定に用いられた各クラスタ間距離の値、そして、各クラスタの情報(例えば平均値や分散などの統計量)の情報を含んでいても良い。また、クラスタリングされたサンプル数が必要特徴量サンプル数に達しているか否かの情報を出力する場合は、まだ出力タイミングに達していない分析結果、すなわち信頼度が低い状態の分析結果が、途中段階の参考として、出力されても良い。
【0068】
このように、第2の実施の形態においては、最低限必須である第2の必要特徴量サンプル数が追加で設定され、クラスタ間距離から算出した信頼度に基づく出力タイミングの変更制御時に、この第2の必要特徴量サンプル数が参照される。そして、第2の必要特徴量サンプル数のサンプルについて分析済みでなければ、そもそもまだクラスタ単体の信頼度が低いものとして分析結果の出力は行わない。このように、本実施の形態では、出力タイミング変更部91は、次のような制御を行う。すなわち、出力タイミング変更部91は、判定された信頼度が所定の閾値以上である場合であっても、分析対象となったサンプル数が予め設定された第2の数に到達していないときは、出力部61が分析結果の出力を行わないように制御する。ここで、第2の数は、判定された信頼度が所定の閾値未満である際に分析結果の出力のために必要とされる予め設定されたサンプル数である第1の数よりも小さい所定のサンプル数である。これにより、クラスタ単体の信頼度と、クラスタ間距離に基づく信頼度の両方を考慮した、第1の実施の形態に比べて更に高信頼な分析結果を出力することが可能という利点がある。
【0069】
更に、第2の実施の形態においては、クラスタリング結果(対象ネットワーク構成の分析結果)と合わせて、分析結果を補助する情報を出力することで、外部ユーザ向けに、分析結果に関連する様々な情報を可視化することが可能となる。これにより、外部ユーザは、対象ネットワーク構成(例えば、送信ノードごとの諸元等)の分析結果の確度などをリアルタイムに把握できるという利点がある。
【0070】
<第3の実施の形態>
図11は、第3の実施の形態である無線フレーム解析システムの構成例を示す図である。具体的には、図11は、フレーム特徴量を抽出する期間である抽出期間を可変制御する抽出期間可変制御部を備える無線フレーム解析システム102の構成例を示す図である。また、本実施の形態にかかる無線フレーム解析システム102は、複数の電波センサを用いて各々の送信ノードの位置や送信電力も推定した上で無線フレーム解析を行う無線フレーム解析システムでもある。なお、本実施の形態は、抽出期間の可変制御が行われるという特徴と、複数の電波センサを用いて各々の送信ノードの位置や送信電力が推定されるという特徴の両方を備えるが、いずれか一方だけを備えた実施の形態を提供することも可能である。
【0071】
<構成の説明>
第3の実施の形態における無線フレーム解析システム102は、受信データ取得部11、12、13、抽出期間可変制御部21、フレーム特徴量抽出部31、送信ノード推定部35、分析部41、サンプル数可変制御部50、出力部60を備える。ここで、第3の実施の形態に特有の構成として、抽出期間可変制御部21は、抽出期間を動的に可変制御するために、送信ノード数カウント部21a、抽出期間算出部21b、送信ノード数更新部21cを含む。また、フレーム特徴量抽出部31には、抽出されたフレーム特徴量を規格化するフレーム特徴量規格化部も含む。なお、図11の例では、第1の実施の形態と同様、サンプル数可変制御部50及び出力部60が存在するが、第2の実施の形態で説明したサンプル数可変制御部51及び出力部61が用いられてもよい。
【0072】
抽出期間可変制御部21における送信ノード数カウント部21aは、受信データ系列から送信ノード情報を抽出して送信ノード数をカウントする。そして、予め設定した「所定の送信ノード数」分の送信ノードからデータを受信したら、抽出期間算出部21bは、それまでに要した時間と当該送信ノード数の情報から、その後の抽出期間を決定し、フレーム特徴量抽出部31に伝達する。また、送信ノード数更新部21cは、カウントされた送信ノードの総数が「所定の送信ノード数」より増加した場合に、「所定の送信ノード数」を更新して送信ノード数カウント部21aに転送する。
【0073】
また、第3の実施の形態に特有の構成として、無線フレーム解析システム102は、複数の位置に配置された複数の電波センサからの受信データ系列をそれぞれ取得する複数の受信データ取得部11, 12, 13を備える。ここで、図11の例では3つの電波センサと受信データ取得部を記載しているが、その個数は特に3に限定されない。また、これらの受信データ取得部11, 12, 13は、物理的に無線フレーム解析システム102内に存在しても良いし、各々の電波センサ側に存在しても良い。そして、無線フレーム解析システム102は、送信ノード推定部35を備える。送信ノード推定部35は、これらの受信データ取得部11, 12, 13にて取得された無線フレーム情報の1つである受信電波強度情報(受信電力情報)を入力し、当該受信データ信号が送信された送信位置や送信電力を推定する。送信ノード推定部35は、各送信ノードの送信位置と送信電力のうちいずれか一方だけを推定してもよい。
【0074】
フレーム特徴量抽出部31は、抽出期間可変制御部21が決定した抽出期間に従って、受信データ系列の無線フレーム情報からフレーム特徴量を抽出する。また、フレーム特徴量抽出部31は、抽出したフレーム特徴量を規格化した上で、分析部41に出力する。このように、本実施の形態では、送信ノード数カウント部21aは、受信データ系列から送信ノード数をカウントし、抽出期間算出部21bは、送信ノード数カウント部21aのカウント結果に基づいて抽出期間を算出する。そして、フレーム特徴量抽出部31は、算出された抽出期間に受信した受信データ系列からフレーム特徴量を抽出する。
【0075】
分析部41は、第1及び第2の実施の形態の分析部40と同様、抽出された各フレーム特徴量を用いてクラスタリング処理を用いた分析を行うが、分析に用いるフレーム特徴量の1つとして、さらに、送信ノード推定部35で推定される送信ノードごとの送信電力の情報を用いてもよい。すなわち、分析部41は、これらの情報を用いて、対象ネットワーク構成や伝送内容の種類、各送信ノードの特徴等の分析を行う。また、分析部41は、クラスタリングの対象とするフレーム特徴量がいずれの送信ノードについてのものであるかを、送信ノード推定部35により推定される送信ノードの位置情報に基づいて区別してもよい。このように、本実施の形態では、分析部41は、送信ノードごとに推定した送信電力または送信位置の情報も用いて分析を行ってもよい。
【0076】
<動作の説明>
第3の実施の形態の動作について図12図13を用いて説明する。
第3の実施の形態の無線フレーム解析システム102における処理フローは、図3および図8に示した第1および第2の実施の形態の処理フローとほぼ同様である。ただし、第3の実施の形態に特有の処理として、抽出期間可変制御部21は、動的に抽出期間の可変制御を行う。図12は、抽出期間可変制御部21の処理フローを示す図であり、図13は、抽出期間可変制御部21の処理イメージを示す図である。
【0077】
抽出期間可変制御部21では、受信データ取得部11にて取得した無線フレーム情報を基に、送信ノード数カウント部21aにて送信ノード数のカウントを開始する(S31、図13の[1])。ここで、送信ノードの情報は、例えばWi-Fi(登録商標)の場合であればMACアドレスのように、無線フレーム情報の中から取得する。また、送信ノード推定部35にて推定される送信ノードの位置や送信電力から送信ノード情報を推定しても良いし、又は、物理層の信号波形情報から送信ノードを識別する、など他の手段で送信ノードの情報が取得されても良い。そして、その送信ノード数が、予め設定した所定の送信ノード数Nに達したら(S32)、抽出期間算出部21bによる抽出期間を決定する処理に移行する(S33、図13の[2])。ここで、所定の送信ノード数Nとして、分析したいネットワークの諸元に合わせて、想定される最小のノード数を設定しても良いし、分析したいネットワークの諸元が未知であれば、ネットワークとして意味を持つ最小の数(例えば3)を設定する。図13の例では、所定の送信ノード数Nの初期値としてN=3を用いた。抽出期間算出部21bでは、送信ノード数のカウントを開始したタイミングT1から所定の送信ノード数Nに達したタイミングT2までの経過時間T1_2(図13の[1]に相当する時間)と、カウントした送信ノード数の情報Nを用いて、フレーム特徴量を抽出するための抽出期間を算出する。抽出期間算出部21bは、具体的には、例えば、次のように抽出期間を算出する。T2は、所定の送信ノード数であるN(=M)個目の最初のデータを取得したタイミングといえる。このため、抽出期間算出部21bは、T1からT2までの途中経過時間T1_2を、直前までカウントした送信ノード数である(M-1)で除算して、送信ノード1個分に相当するデータ送信時間T2_3を算出する(S33、図13の[2])。そして、抽出期間算出部21bは、所定の送信ノード数に達するまでの時間(途中経過時間T1_2)に、送信ノード1個分に相当するデータ送信時間T2_3を加えた期間を、フレーム特徴量を抽出するための抽出期間とする。すなわち、抽出期間算出部21bは、観測された送信ノード数が所定の送信ノード数に達したタイミングの後、送信ノード1個分に相当するデータ送信時間T2_3を追加することより、抽出期間を延長することで、送信ノードM個分のデータ送信時間に相当する抽出期間T1_3を決定する(S33、図13の[3])。具体的には、[1]経過時間T1_2に対して、(M-1)で除算してMを乗算した期間が、[3]抽出期間T1_3として算出される(T1_3=T1_2×M/(M-1))。つまり、フレーム特徴量を抽出するための抽出期間の開始タイミングは、送信ノード数のカウントを開始したタイミングT1である。そして、フレーム特徴量を抽出するための抽出期間の終了タイミングは、観測された送信ノード数が所定の送信ノード数に達したタイミングT2から、送信ノード1個分に相当するデータ送信時間T2_3が経過したタイミングである。なお、もし抽出期間算出部21bにて抽出期間を算出中に、観測された送信ノード数が増えた場合(例えばN+1個目やN+2個目の送信ノードからデータ受信した場合)には、抽出期間算出部21bは、次のように抽出期間を算出してもよい。すなわち、抽出期間算出部21bは、更なる送信ノードが観測されたタイミングを新たにT2とし、Mを観測されたノード数として(すなわち、例えばM=N+1またはM=N+2として)、新たに[3]抽出期間T1_3=T1_2×M/(M-1)を算出する。
【0078】
ここで、抽出期間算出部21bにおけるM個目の送信ノード1個分に相当するデータ送信時間T2_3の算出方法(S33、図13の[2])の他の例について説明する。抽出期間算出部21bは、直前までカウントした送信ノード{M-1}個が全て子局(端末局)であり、M個目の送信ノード1個だけがハブ局(統制局、ルートノード等)である可能性を考慮して、データ送信時間T2_3を算出してもよい。すなわち、抽出期間算出部21bは、M個目の送信ノード1個分に相当するデータ送信時間T2_3を、T1からT2までの途中経過時間T1_2と同じ時間とする。その場合、具体的には、抽出期間算出部21bは、[1]経過時間T1_2に対して2倍した値を、[3]送信ノードM個分に相当する抽出期間T1_3として算出する(T1_3=T1_2×2)。
【0079】
受信データ取得部11にて、受信データ系列から、無線フレーム情報の取得を行う(S11)。受信データ取得部11は、抽出期間可変制御部21から通知される抽出期間が経過するまで無線フレーム情報の取得を継続する(S12)。
そして、フレーム特徴量抽出部31では、抽出期間可変制御部21にて算出された抽出期間における、送信ノードごとの送信データ量などといったフレーム特徴量を抽出し(S13a)、抽出したフレーム特徴量を規格化する(S13b)。この規格化処理では、例えば、取得した全送信ノード数M個分の送信データ量などのフレーム特徴量の和(Sum_of_each_frame_feature)を、その送信ノード数であるMに相当する値として、各送信ノードにおけるフレーム特徴量(each_frame_feature)を規格化する。つまり、抽出したフレーム特徴量の値を送信ノード数であるMで規格化する。例えば、フレーム特徴量の和をSum_of_each_frame_featureとし、その値がMとなるように規格化すると、規格化後の各送信ノードのフレーム特徴量(Each_Normalized_frame feature)は、{Each_Normalized_frame_feature} = M×{each_frame_feature}/{Sum_of each_frame_feature} として規格化できる。これは、送信ノード数の数が異なっても、抽出期間内における送信データ量などのフレーム特徴量の割合が各送信ノード間で均等である場合には、規格化後の各送信ノードのフレーム特徴量は、常に1に相当する値に規格化されて出力されることを意味する。(仮に({each_frame_feature}=={Sum_of_each_frame feature}/M)の場合、{Each_Normalized_frame_feature = 1}となる)。すなわち、抽出期間や、送信ノード数が可変であっても、送信ノード間における相対的なフレーム特徴量の関係性が変わらなければ、常に同じ値に規格化される。抽出期間を抽出期間可変制御部21にて繰り返し算出し、フレーム特徴量抽出部31にて、連続して繰り返しフレーム特徴量を抽出して規格化することにより、後段の分析部40等でクラスタリングによる所望のネットワーク分析が可能になる。
【0080】
最後に、送信ノード数更新部21cにおける送信ノード数更新処理(S34, S35)について説明する。図13に示した処理例では、例えば、1回目の抽出期間における送信ノード数のカウントを、所定の送信ノード数N=3で開始し、送信ノードD, A, Bの順で3つカウントした。次に、2回目の抽出期間における送信ノード数カウントでは、同様にN=3で開始し、今度は送信ノードC, D, Bの順で3つカウントした。ここで、1回目はA, B, Dの3つ、2回目はB, C, Dの3つが検出されたため、2回の抽出期間で送信ノードは少なくともA, B, C, Dの4つ存在することがわかる。このように、予め設定した所定の送信ノード数(本例ではN=3)を超える送信ノードが存在する場合(S34)には、送信ノード数更新部21cにて、次回以降に設定する「所定の送信ノード数」を更新する処理を行う(S35)。例えば、検出された送信ノード数の値(図13の例では4)にそのまま更新しても良いし、または、検出された送信ノード数から所定数を差し引いた値や、検出された送信ノード数に対して8割や7割にした値に更新しても良い。すなわち、検出された送信ノード数に対し所定の割合だけ減少させた値に更新して良い。ただし、更新前の「所定の送信ノード数」以上の値となるように更新する。ここで、必ずしも検出された送信ノード数に等しい値でなくても良い理由は次の通りである。すなわち、無線フレーム解析の目的は対象ネットワークの構成等を推定することであるため、送信頻度の低い送信ノードも含めて必ずしも全ての送信ノードからのデータ送信を待ってフレーム特徴量を抽出する必要はないためである。このように、所定の送信ノード数を更新することで、例えば図13における3回目の抽出期間においては、所定の送信ノード数N=4として送信ノード数のカウントを開始する。このような送信ノード数更新処理を行なうことにより、実際の送信ノード数に応じた適切な解析が可能となる。
【0081】
更に、第3の実施の形態の無線フレーム解析システム102における特有の動作として、複数の受信データ取得部11, 12, 13では、対応する複数の電波センサで受信した受信データ系列から受信電波強度(受信電力)情報を取得する。そして、受信データ取得部11, 12, 13は、各々の受信電波強度の情報を送信ノード推定部35に送り、送信ノード推定部35では、分散設置された複数の電波センサで受信した各々の受信電波強度(受信電力)の情報を用いて、送信ノードの位置や送信電力を推定する。
【0082】
例えば、送信ノード推定部35は、下記の数式(以下、数式5と称す)に示すような伝搬モデルを用いて、送信電力と送信位置を推定してもよい。
【0083】
【数5】
【0084】
数式5におけるm (φ)は、電波センサnにおける受信電波強度である。また、数式5における伝搬定数αは一般に電波の送信出力に関連したパラメータで、βは単位距離における減衰率に関連したパラメータである。d(φ)は電波センサnと送信ノードとの距離であり、φ=(x,y,z)は送信ノードの位置座標、(xn1,xn2,xn3)は電波センサnの位置座標である。電波センサが配置された環境において、事前に送信位置と送信電力が既知である送信ノードから発信した電波を各電波センサで受信すれば、図14のグラフが得られる。図14は、数式5の伝搬モデルを例として、既知の送信ノードからの電波を電波センサで受信した際の受信電波強度と、送信ノード-電波センサ間距離との関係をプロットした図である。ここで、図14の例では、高出力の送信ノード(例:固定AP(アクセスポイント))と、低出力の送信ノード(例:携帯端末)という送信電力が異なる2種類の送信ノードについてプロットしている。そして、事前に測定した受信電波強度と、送信ノード-電波センサ間距離との値を、最小二乗法や最尤推定法などを用いて数式5にフィッティングすることで、各々の伝搬定数(α,β)が得られる。なお、伝搬環境が同じであれば、減衰率に関連するβは同じ値になることが期待され、送信ノードの送信電力の違いがαとして表現される。
【0085】
そして、送信ノード推定部35における位置推定処理では、各電波センサで受信した受信強度情報を基に、この伝搬定数(α,β)を含む数式5を用いて、各電波センサから送信ノードまでの距離を推定した上で送信ノードの位置を推定する。この時、各送信ノードにおける送信電力が既知の場合は、事前に推定した高出力送信ノードと低出力送信ノードの各々の伝搬定数αの値から、当該送信電力の送信ノードに相当するαを推定した上で、送信ノードの位置を推定する。一方で、各送信ノードにおける送信電力が未知の場合は、伝搬定数αとしていくつかの候補値を用いて送信位置の推定を行い、位置推定の信頼度(複数センサからの距離が任意の1点に集まる結合尤度)が最も高くなる推定位置と、その時の伝搬定数αに対応する送信電力を、それぞれ当該送信ノードの位置と推定送信電力として出力する。なお、送信ノード推定部35における位置推定や送信電力推定は、上記の他に、パーティクルフィルタ等を用いて、リアルタイムに伝搬定数であるαやβ、送信位置を一括して推定及び更新するような手法を用いても良い。
【0086】
このように、第3の実施の形態における無線フレーム解析システム102では、送信ノード数カウント部21aにて所定の送信ノード数の送信ノードからデータを取得するまでカウントし、抽出期間算出部21bにおいてその後の抽出期間を算出する。これによって、所望のフレーム特徴量(送信ノードごとの送信データ量の比率など)を、必要十分な長さ(所望の分析が可能である一方で必要最小限の長さ)の単位時間で抽出することが可能になる。これは、必要最小限の時間で、所望の分析が可能になるという利点につながる。また、抽出したフレーム特徴量をフレーム特徴量抽出部31において規格化することにより、動的に設定した抽出期間の差によって生じる絶対的なフレーム特徴量の差を、所望の分析に必要な相対的な差として抽出することも可能になる。すなわち、分析結果は、それまでにカウントした送信ノード数などに依存した抽出期間の差によって生じるフレーム特徴量の絶対値には依存せず、各送信ノード間の偏りのみを反映した相対値による分析が可能になる。これにより、複数回の抽出期間でフレーム特徴量の抽出を繰り返すことにより、分析の精度を高めることが可能となる。
【0087】
また、第3の実施の形態の他の効果としては、分散配置された複数の電波センサで受信した受信電波強度等の情報を用いて、送信ノード推定部35にて送信位置と送信電力を推定することにより、受信データ系列から送信ノードの情報を推定できる。これにより、送信ノード数カウント部21aにおいて、フレーム情報からは送信ノード情報が取得できない(Wi-Fi等のMACアドレスのような情報が得られない)未知のネットワークノードであっても、送信ノード数のカウントが可能になるという利点がある。また、分析部41が、送信ノード推定部35にて送信ノードごとに推定された送信位置または送信電力の情報も用いることにより、各送信ノードの諸元(固定AP型の車載局や、携帯型の端末局など)も分析することが可能である。すなわち、例えば、送信データ量も多く送信電力も大きい送信ノードAは、スター型やツリー型の統制局(ハブ局)で且つ送信電力の大きい固定APや車載局である可能性が高いと推定できる。一方で、送信データ量も少なく送信電力も小さい送信ノードBは、子局であり且つ人が携帯する携帯端末局である可能性が高い、などと推定できる。
【0088】
<コンピュータ構成>
図15は、上述した各実施の形態における無線フレーム解析システム100、101、102のコンピュータ構成を示すブロック図である。図15に示すように、無線フレーム解析システム100、101、102は、例えば、ネットワークインタフェース110、メモリ120、及びプロセッサ130を含む。
【0089】
ネットワークインタフェース110は、外部と通信するために使用される。ネットワークインタフェース110は、例えば、ネットワークインタフェースカード(NIC)を含んでもよい。
【0090】
メモリ120は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ120は、プロセッサ130により実行される、1以上の命令を含むソフトウェア(コンピュータプログラム)、及び、各種処理に用いられるデータなどを格納するために使用される。
【0091】
上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、Programmable ROM(PROM)、Erasable PROM(EPROM)、フラッシュROM、Random Access Memory(RAM))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0092】
プロセッサ130は、メモリ120からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述した各実施の形態における無線フレーム解析システム100、101、102の処理を行う。すなわち、無線フレーム解析システム100、101、102の処理は、プログラムの実行により実現されてもよい。なお、無線フレーム解析システム100、101、102の処理の一部又は全てをハードウェア回路などにより実現してもよい。プロセッサ130は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。プロセッサ130は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0093】
<実施の形態の効果>
以上のように、上述した実施の形態によれば、以下のような効果が期待できる。
【0094】
第1の効果は、フレーム特徴量を用いたクラスタリング分析による対象ネットワーク構成等の分析結果について、分析精度を低下させずに、結果出力までの時間を適応的に短縮して高速化することができることである。その理由は、上述した実施の形態では、距離算出部によって各クラスタ間の距離を算出し、信頼度判定部によってクラスタリング結果の信頼度を判定し、その信頼度に応じて、出力タイミング変更部によって、出力タイミングを制御するためである。すなわち、クラスタリング結果の信頼度が高い場合に限り、結果の出力のタイミングを早めることが可能になる。これは、対象ネットワーク構成の推定精度や分析精度を高精度に保ったまま、結果の出力までの時間を短縮できるという効果に繋がる。すなわち、無線フレーム解析を用いた対象ネットワーク構成の推定などにおいて、適応的な高速化が可能という利点がある。
【0095】
更に、第2の実施の形態では、結果の出力のために最低限必須であるサンプル数が追加で設定された実施の形態について示した。この実施の形態では、クラスタ間距離から算出した信頼度に基づく出力タイミングの変更制御時に、この最低限必須であるサンプル数が参照される。そして、この最低限必須であるサンプル数について分析済みでなければ、そもそもまだクラスタ単体の信頼度が低いものとして分析結果の出力は行わない。このようなシステムとすることで、クラスタ単体の信頼度とクラスタ間距離に基づく信頼度の両方を加味した更に高信頼な分析結果を、適応的に高速化して出力することが可能という利点がある。
【0096】
第2の効果は、対象ネットワーク構成等の分析結果の確度などの情報をリアルタイムに利用者向けに可視化できることである。その理由は、第2の実施の形態で示したように、クラスタリング結果(対象ネットワーク構成の分析結果)と合わせて、分析結果を補助する情報も出力されるためである。これにより、クラスタリング結果(分析結果)の信頼度や、クラスタリングされたサンプル数が必要特徴量サンプル数に達しているか否か等の情報を、外部ユーザ向けに可視化可能となる。また、図10にも示したように、各々のクラスタごとの詳細情報(クラスタごとの平均や分散等の特徴、他クラスタとのクラスタ間距離、クラスタごとの信頼度等)も出力することにより、個別のクラスタごとの特徴や信頼度等も外部ユーザ向けに可視化可能となる。これにより、外部ユーザ(利用者)は、対象ネットワーク構成(例えば、送信ノードごとの諸元等)の分析結果の確度などを、クラスタごとの詳細情報とともにリアルタイムに把握できるという利点がある。
【0097】
第3の効果は、対象ネットワークの単位パケット長などの単位時間が不明確な場合においても、必要十分な抽出期間にて送信データ量等のフレーム特徴量を抽出可能にする方法と組み合わせることにより、もたらされる。この効果は、効率的にネットワーク構成等を分析できると共に、相乗的に当該分析処理の更なる適応的な高速化が可能になることである。その理由は、第3の実施の形態にて示したように、送信ノード数カウント部で所定の送信ノード数の送信ノードからデータが送信されるまでカウントし、抽出期間算出部においてその後の取得期間を算出しているためである。これによって、所望のフレーム特徴量(送信ノードごとの送信データ量の比率など)を、必要十分な長さ(所望の分析が可能である一方で必要最小限の長さ)の単位時間で取得することが可能になる。これは、取得したいフレーム特徴量や対象ネットワークの単位パケット長、伝送内容などが異なっても、それに合わせて必要十分な長さに抽出期間を最適化できることを意味する。この最適化された抽出期間と、第1の効果の説明で言及したクラスタ間距離から判定した信頼度に基づく動的な出力タイミングの変更制御とを組み合わせることによって、相乗的に更なる適応的な高速化が可能になるという利点がある。
【0098】
また、副次的な効果として、送信ノード推定部における受信強度情報を用いた送信電力推定と組み合わせることにより、各送信ノードの種別推定(車載型・携帯型など)も含めた形での対象ネットワーク構成の分析が可能になるという利点がある。その理由は、次の通りである。第3の実施の形態にて説明したように、複数の分散配置された電波センサで受信した受信電波強度等の情報を用いて、送信ノード推定部で送信位置と送信電力を推定する。そして、送信ノード推定部にて推定された送信ノード情報(送信位置や送信電力)も用いることにより、分析部は、クラスタリング結果から、各送信ノードの諸元(固定AP型の車載局や、携帯型の端末局など)も分析することが可能になるためである。
【0099】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1、100、101、102… 無線フレーム解析システム
10、11、12、13 … 受信データ取得部
20 … 抽出期間制御部
21 … 抽出期間可変制御部
21a … 送信ノード数カウント部
21b … 抽出期間算出部
21c … 送信ノード数更新部
30、31 … フレーム特徴量抽出部
35 … 送信ノード推定部
2、40、41 … 分析部
50、51 … サンプル数可変制御部
5、60、61 … 出力部
70、71 … サンプル数設定部
3、80 … 距離算出部
4、85 … 信頼度判定部
6、90、91 … 出力タイミング変更部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15