(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】スキャナー、画像データの生産方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/407 20060101AFI20241008BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H04N1/407 740
H04N1/00 L
(21)【出願番号】P 2020188053
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宗田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】牧 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 肇展
【審査官】宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-14185(JP,A)
【文献】特開2016-127350(JP,A)
【文献】特開平5-48889(JP,A)
【文献】特開2006-339875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40 - 1/409
H04N 1/00
H04N 1/46 - 1/62
G09G 5/00 - 5/42
B41J 2/52 - 2/525
G06T 1/00
G06T 11/60 - 13/80
G06T 17/05
G06T 19/00 - 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除去対象の色に対応する部分を含む原稿を読み取ってデジタルデータに変換する光電変
換モジュールと、
前記原稿を
複数色の光で読み取ったデジタルデータの
除去対象の色に対応する単色成分
である単色データに対して、
第1の閾値よりも大きい画素値を白色を表す値に変換する背
景除去を行う色除去モードと、前記原稿を複数色の光で読み取ったデジタルデータである
多色データに対して、
第2の閾値よりも大きい画素値を白色を表す値に変換する背景除去
を行う通常モードと、をユーザーの指定に応じて選択的に実行する背景除去部と、
を備え、
前記色除去モードの前記第1の閾値は、前記通常モードの前記第2の閾値よりも小さい
、
スキャナー。
【請求項2】
前記色除去モードでは、
背景除去が行われた後の前記単色データから生成したモノクロ
データを出力し、前記通常モードでは、
背景除去が行われた後の前記多色データを出力す
るスキャンデータ出力部を備える、
請求項
1に記載のスキャナー。
【請求項3】
前記色除去モードでは、
背景除去が行われた後の前記単色データから生成したモノクロ
データを出力し、前記通常モードでは、
背景除去が行われた後の前記多色データから生成
したモノクロデータを出力するスキャンデータ出力部を備える、
請求項
1に記載のスキャナー。
【請求項4】
前記通常モードでの
前記第2の閾値は、前記原稿に応じて算出され、
前記色除去モードでの
前記第1の閾値は、前記通常モードでの
前記第2の閾値よりも固
定値分小さい、
請求項
1に記載のスキャナー。
【請求項5】
コンピューターを、
除去対象の色に対応する部分を含む原稿を読み取ったデジタルデータを取得する取得部
、
前記原稿を
複数色の光で読み取ったデジタルデータの
除去対象の色に対応する単色成分
である単色データに対して
、第1の閾値よりも大きい画素値を白色を表す値に変換する背
景除去を行う色除去モードと、前記原稿を複数色の光で読み取ったデジタルデータである
多色データに対して、
第2の閾値よりも大きい画素値を白色を表す値に変換する背景除去
を行う通常モードと、をユーザーの指定に応じて選択的に実行する背景除去部であって、
前記色除去モードの前記第1の閾値は、前記通常モードの前記第2の閾値よりも小さい、
背景除去部、
として機能させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナー、画像データの生産方法、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば赤色のドロップアウトカラーの部分を含むOCRやOMR用の原稿を、赤色の光源で照明して読み取ることで当該部分を除去したスキャンデータを得ることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、除去できる色の範囲が狭いため、除去対象としてユーザーが想定していた部分が除去されずに僅かに残存してしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためのスキャナーは、原稿を読み取ってデジタルデータに変換する光電変換モジュールと、原稿を読み取ったデジタルデータの単色成分である単色データに対して背景除去を行う色除去モードと、原稿を複数色の光で読み取ったデジタルデータである多色データに対して背景除去を行う通常モードと、をユーザーの指定に応じて選択的に実行する背景除去部と、を備え、背景除去部は、色除去モードでは通常モードと異なる強度で背景除去を行う。
【0006】
上記目的を達成するための画像データの生産方法は、ユーザーの指定に応じて色除去モードか通常モードを選択し、色除去モードにおいて、原稿を読み取ったデジタルデータの単色成分である単色データに対して背景除去を行って画像データを生産し、通常モードにおいて、原稿を複数色の光で読み取ったデジタルデータである多色データに対して背景除去を行って画像データを生産し、色除去モードでは通常モードと異なる強度で背景除去を行う、ことを含む。
【0007】
上記目的を達成するための制御プログラムは、コンピューターを、原稿を読み取ったデジタルデータを取得する取得部、原稿を読み取ったデジタルデータの単色成分である単色データに対して背景除去を行う色除去モードと、原稿を複数色の光で読み取ったデジタルデータである多色データに対して背景除去を行う通常モードと、をユーザーの指定に応じて選択的に実行する背景除去部であって、色除去モードでは通常モードと異なる強度で背景除去を行う背景除去部、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】通常モードと色除去モードにおける背景除去のレベルの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)スキャナーの構成:
(2)背景除去:
(3)スキャン制御処理:
(4)他の実施形態:
【0010】
(1)スキャナーの構成:
図1は、本発明の一実施例にかかるスキャナー1のブロック図である。スキャナー1は、コントローラー10と通信部70と操作部80と光源21、光学部22、光電変換モジュール23、副走査装置30を備える。コントローラー10は、図示しない記録媒体と、当該記録媒体からプログラムを読み出して実行するプロセッサー(特定の処理を実行するように回路が構成されたASIC等の専用回路であってもよいし、ASIC等とCPUとが協働していてもよい)を備える。コントローラー10は、光源21、光電変換モジュール23、副走査装置30を制御し、スキャン対象物としての原稿を読み取り、読み取り結果を処理してスキャンデータを生成する。
【0011】
操作部80は、利用者に対して種々の情報を提供する出力部と、利用者による入力操作を受け付ける入力部とを備えている。出力部は、例えば表示を行うディスプレイであり、入力部は、入力ボタンやタッチパネルである。コントローラー10は、操作部80を制御してスキャン条件の選択やスキャン開始指示等を行うための情報を出力部に表示させる。利用者は、当該出力部の出力に基づいてスキャン条件の選択やスキャン開始指示等を入力することができる。スキャン開始指示が入力されると、コントローラー10は、スキャナー1の各部を制御し、スキャン対象物を読み取るための動作を行わせる。この動作により、光電変換モジュール23から読み取り結果が出力される。
【0012】
通信部70は、図示しないPC等の外部の装置と通信を行うための装置であり、コントローラー10は、任意の情報をPCに送信し、PCから各種の指示等を受け取ることができる。本実施形態において、スキャンデータが生成されると、コントローラー10が通信部70を介してスキャンデータをPCに送信する。この場合に、通信部70はスキャンデータ出力部として機能する。むろん、スキャンデータは、種々の態様で利用されてよく、スキャナー1が備える図示しない記録媒体に保存されてもよいし、リムーバブルメモリーに保存されてもよいし、通信部70を介してPC以外の装置に提供されてもよい。
【0013】
本実施形態にかかるスキャナー1はスキャン対象物を置くための載置台を備えており、平面の載置台に載せられたスキャン対象物が読み取られる。本実施形態において、載置台のスキャン対象物は、光源21,光学部22,光電変換モジュール23,副走査装置30を備える読取部によって読み取られる。本実施形態において、光源21,光学部22,光電変換モジュール23はCIS(Contact Image sensor)として構成されている。
図2は、CISと載置台50とを模式的に示す図である。同図に示すY軸は副走査方向、Z軸は載置台50に垂直な方向を示しており、この図においてはY軸およびZ軸に垂直な方向が主走査方向である。
【0014】
副走査装置30は、図示しないモーターを備え、当該モーターの動力によって副走査方向(Y軸方向)にCISを往復動作させることが可能な装置である。コントローラー10は、副走査装置30の動作を制御することができる。光源21は、複数色のLEDを備えており、各LEDは載置台50の所定方向に向けて照明光E1を照射するようにCISに取り付けられている。従って、スキャン対象物が読み取られる場合、LEDの向きが所定方向に向いた状態で光源21が副走査方向に移動し得る。すなわち、照明光が照射される位置が副走査方向に移動することで読み取り位置が変化し、副走査が行われる。
【0015】
なお、本実施形態において光源21は、赤色(R:Red)光源、緑色(G:Green)光源、青色(B:Blue)光源の3色の光源(LED)を備えている。コントローラー10は、光源21を制御し、副走査を行いながら赤色、緑色、青色の順に光源21を点灯させる制御を繰り返すことでスキャン対象物のカラースキャンを行うことができる(むろん、点灯順序は異なっていてもよいし、CISの搬送を間欠駆動させ、停止している間に各色の照射を行う動作を停止毎に繰り返しても良い)。
【0016】
図2においては、載置台50上でのスキャン対象物の読取面の付近が拡大
図Fとして示されている。拡大
図Fにおいては、赤色の光路がRおよび実線の矢印で示され、緑色の光路がGおよび破線の矢印で示され、青色の光路がBおよび一点鎖線の矢印で示されている。拡大
図Fに示す光路の矢印は代表的な光路である。拡大
図Fに示すように、本実施形態においては、各色の光源21のそれぞれが独立して点灯された状態でCISが副走査方向に移動することで副走査方向の所定範囲が読み取られる。また、本実施形態においては、副走査方向に連続する一定の領域が1画素を構成し、1画素の画像は赤色の画素値と緑色の画素値と青色の画素値とで構成される。
【0017】
光学部22は、レンズ等の光学部品を備えている。本実施形態において、レンズは主走査方向(X軸)に並ぶロッドレンズである。光源21からの照明光E1はスキャン対象物で乱反射する。これらの光は光学部22に対する入射光E2となる。入射光E2はレンズを通り、スキャン対象物の像が光電変換モジュール23に等倍結像する。むろん、光学部22はレンズ以外の光学部品、例えば絞り等を備えていて良い。また、光学系は等倍結像させる構成に限定されず、縮小結像や拡大結像させる光学系であっても良い。
【0018】
光電変換モジュール23は1列のラインセンサーであり、一方向に並ぶ複数の光電変換素子(以後、素子と呼ぶ)を備えている。すなわち、本実施形態においては、赤色光源、緑色光源、青色光源が異なるタイミングで点灯され、各色での読み取り結果(光の強度)を出力する。従って、光電変換モジュール23は、カラーフィルターを備えないセンサーである。なお、本実施形態においては、光電変換モジュール23の各素子が並ぶ方向を主走査方向とみなす。むろん、光電変換モジュール23の構成は、他にも種々の構成が採用されてよく、例えば、主走査方向に分割された複数のセンサーを備え、各センサーでの読み取り結果を結合して1ラインの読み取りを行ってもよい。
【0019】
光電変換モジュール23は、図示しないアナログフロントエンドを備えている。アナログフロントエンドは、光の受光量に応じて素子が出力した信号を増幅させて出力する回路やA/D変換する回路を含む。本実施形態においてアナログフロントエンドは、増幅率を示す情報を記録する記録媒体を備えており、アナログフロントエンドにおいては、当該増幅率を示す情報に基づいて、光電変換モジュール23の黒レベルを最小の出力値、白レベルを最大の出力値にする増幅率調整を行う。
【0020】
ユーザーが紙原稿を読みらせる場合、利用者は紙原稿を載置台50におく。この状態で、利用者がスキャナー1の操作部80を操作し、スキャンの開始指示を行なうと、コントローラー10は、スキャン動作を開始する。スキャン動作が開始されると、コントローラー10は、既定の順序および期間で赤色光源、緑色光源、青色光源のそれぞれが一つずつ点灯するように光源21を制御する。また、コントローラー10は、副走査装置30を制御してCISのY軸正方向の移動を開始させる。さらに、コントローラー10は、光電変換モジュール23を制御し、既定のタイミングで光電変換モジュール23にライン取り込み動作をさせる。
【0021】
本実施形態においては、既定の順序および期間で1色毎に光源21が点灯され、点灯に同期した一定期間毎のセンサー駆動タイミングによってライン取り込み動作が行われる。この結果、画素毎に赤色、緑色、青色のそれぞれについての強度が特定されたデジタルデータが生成される。すなわち、本実施形態においては、光電変換モジュール23がカラーフィルターを備えておらず、赤色光源、緑色光源、青色光源のそれぞれを1色ずつ順次点灯させることによって3色の色成分の強度を取得している。このような構成においては、光源21において点灯された光源とその光源による照明によって読み取られたデータとが明らかであるために、光源の点灯タイミングに応じてデータの色成分が決められる。
【0022】
(2)背景除去:
本実施形態において、コントローラー10は、光電変換モジュール23から出力されたデジタルデータから背景色(原稿の地色)を除去する機能を実現することができる。背景除去のための後述する処理を実行する場合に、コントローラー10は取得部、背景除去部として機能する。
【0023】
背景除去に関するスキャン条件として、通常モードまたは色除去モードが選択可能に操作部80にて案内され、ユーザーは、背景除去機能に関して、通常モードまたは色除去モードのいずれかを選択してスキャン指示を行うことができる。通常モードは、原稿の紙の地色を除去したスキャンデータを生成するモードであり、色除去モードは、地色に加えて特定の色をも除去したスキャンデータを生成するモードである。本実施形態において、当該特定の色は、市販の赤ペンで表現される赤色である。色除去モードは、例えば、市販の赤ペンで記載した赤文字を含む原稿をスキャンして赤文字を消去したスキャンデータを取得し、印刷する等の用途が想定される。
【0024】
OCR用シート等の原稿に含まれる赤色の部分を除去したスキャンデータを生産する場合、従来は、赤色の部分と原稿の地色(白色)の部分における赤色光の反射率がほぼ同じであることを利用し、赤色光源で原稿を照明して読み取りを行う。この結果、赤色の部分は原稿の下地とほぼ区別されないスキャンデータが生成されるため、従来はこのようにして赤色部分を除去したスキャンデータを生産することが一般的である。しかし、赤色光によって上述のように脱落する(地色と区別されない値で読み取られる)ように設計された赤色でない、例えば明度のより低い赤色の部分を除去したスキャンデータを生産したい場合、上述した従来の方法では、スキャンデータにおいて除去対象の赤色の部分が原稿の地色に対して僅かに識別可能に残存してしまうことがある。この僅かに残存する部分の輝度は、原稿の地色の輝度に近いものの、人間の目には識別可能な程度の差がある。本実施形態では、背景除去の手法を用いて、原稿の地色か否かを区別する閾値を調整することで、この僅かに残存する部分を原稿の地色と同様に除去する。
【0025】
本実施形態において、コントローラー10は、通常モードの場合も、色除去モードの場合も、赤色光源、緑色光源、青色光源のそれぞれを1色ずつ順次点灯させることによってRGB3色の色成分の強度を示すRGBデータ(多色データ)を取得する。本実施形態において、色除去モードの場合、コントローラー10は、RGBデータから赤色の単色成分であるRデータ(Rの単色データ)を抽出し、Rデータによってグレースケール化したデータ(R,G=R,B=R)を対象に背景除去を行う。通常モードの場合、コントローラー10は、RGBデータを対象に背景除去を行う。
【0026】
図3は、1ページの原稿を読み取って生成されたRGBデータの各画素の画素値から換算された輝度のヒストグラムと、背景除去のための入出力関係の一例を示している。
図3においてヒストグラムは黒の線で表されており、横軸は輝度であり、縦軸は度数である。原稿の地色が白に近い明るい色であり、文書等のように原稿の地色が多く残された原稿である場合、
図3のヒストグラムに示すように、高輝度の位置に高い度数のピークP1が存在する。この例では、ピークP1およびその前後の斜線ハッチングの部分が原稿の地色を示している。T1は、地色を示す輝度値とそれ以外の輝度値とを区別する閾値である。本実施形態においては、一般的な白色の紙を何種類かスキャンして得られた地色に該当する輝度の分布に基づいて、予め閾値T1が決められている。閾値T1は通常モードにおけるデフォルトレベルの閾値である。
【0027】
図3のグレーの実線は、通常モードにおける、入力輝度(横軸)に対する出力輝度(縦軸)の関係を示している。この入出力関係を示す変換テーブルがスキャナー1の記録媒体に記録されている。通常モードにおいて、コントローラー10は、この変換テーブルに基づいて、輝度が閾値T1より大きい画素を、輝度が最大(すなわち白色)となるようにRGBデータを変換し、輝度が閾値T1未満の画素については輝度がグレーの実線に示す値となるようにRGBデータを変換する。このため、斜線ハッチングの色として読み取られた部分の画素は白に変換され、背景が除去される。なおこのような背景除去の処理は、RGBデータを例えばYCbCrに変換し、輝度Yの値を変換テーブルに従って変換し、変換後のYcbCrをRGBに再変換することによって行われても良い。あるいは、RGB各チャンネルにおいて閾値や変換テーブルを準備し、RGB各チャンネルにおいて変換テーブルに基づく変換を行うことによって背景除去の処理が行われても良い。
【0028】
次に色除去モードについて詳細に説明する。市販されている複数種類の赤ペンで記載された文字等を含む原稿をそれぞれスキャンした結果、当該赤ペンの記載部分の輝度は、原稿の地色と非地色とを区別する閾値より固定値t分小さい輝度が下限値となる知見が得られた。そのため本実施形態では、通常モードで採用されている閾値がT1(すなわち通常モードにおける背景除去のレベルがデフォルトレベル)の場合、コントローラー10は、色除去モードでは、(T1-t)を閾値として採用し、通常モードと同様の方法(閾値は異なる)で背景除去を行う。
【0029】
図3のグレーの破線は、色除去モードにおける、入力輝度に対する出力輝度の関係を示している。この入出力関係を示す変換テーブルがスキャナー1の記録媒体に記録されている。グレーの破線に示すように、赤ペンの記載部分を除去する色除去モードでは、Rデータによってグレースケール化したデータにおいて輝度が(T1-t)より大きい画素の値を、最大輝度を示す値に変換する。すなわち、コントローラー10は、Rデータによってグレースケール化したデータ(モノクロデータ)から各画素の輝度を算出し、算出した輝度と
図3のグレーの破線に示す変換テーブルに基づいて、輝度が閾値(T1-t)より大きい画素を、輝度が最大(すなわち白色)となるようにモノクロデータの値を変換する。また、コントローラー10は、グレーの破線に示す変換テーブルに基づいて、輝度が閾値(T1-t)未満の画素については輝度がグレーの破線に示す値となるようにモノクロデータの値を変換する。これにより、色除去モードでは、原稿の紙の地色のみならず、赤ペンでの記載部分も除去されたスキャンデータが生成される。すなわち、色除去モードでは、通常モードのデフォルトレベルよりも強く背景除去が行われることとなる。なお、輝度が(T1-t)未満であるその他の部分はスキャンデータに残存する。従って例えば、黒色や青色の文字等はスキャンデータに残存する。
【0030】
このように、本実施形態によれば、通常モードでは、原稿の地色を除去したスキャンデータを生産することができる、また、色除去モードでは、通常モードにおける背景除去と同様の方法を、閾値を通常モードと相違させて行うことで、原稿の地色に加えて特定の色も除去したスキャンデータを生産することができる。そのため、本実施形態によれば、色除去のための複雑な仕組みを追加する必要がなく、簡易な構成で特定の色を除去したスキャンデータを生成する機能を実現することができる。
【0031】
背景除去後のスキャンデータは、通信部70を介してPCやリムーバブルメモリーに出力可能である。本実施形態において、色除去モードでは、Rデータ(単色データ)から生成したモノクロデータが出力される。すなわち、コントローラー10は、
図3のグレーの破線に示す変換テーブルに基づいて変換を行ったグレースケールデータを出力する。なお、
図3のグレーの破線に示す変換テーブルに従って変換した後のデータを二値化し、二値データが出力されてもよい。
【0032】
通常モードでは、コントローラー10は、ユーザーの指示に応じて、カラーデータまたはRGBデータ(多色データ)から生成したモノクロデータを出力する。すなわち、通常モードにおいてユーザーはモノクロ出力またはカラー出力のいずれかを指示することができ、ユーザーがカラー出力を指示した場合、コントローラー10は、背景除去後のRGBデータを出力する。ユーザーがモノクロ出力を指示した場合、コントローラー10は、背景除去後のRGBデータをグレースケールデータに変換し、出力する。なおモノクロ出力の場合、背景除去後のRGBデータを二値化した二値化データが出力されてもよい。
【0033】
背景除去後のスキャンデータが通信部70を介してPCに出力されると、ユーザーはPCのディスプレイにおいて、スキャンデータを確認することができる。原稿の地色や赤文字が除去されずに残存している場合に、ユーザーは、スキャナー1の操作部80において、通常モードにおける背景除去のレベルをデフォルトレベルから変更してスキャン指示を行うことができる。本実施形態においては、通常モードか色除去モードかの選択と独立して、デフォルトレベルと、デフォルトレベルより強く背景除去を行う第2レベルと、第2レベルよりさらに強く背景除去を行う第3レベルの3段階が提示され、ユーザーはこの3段階の中から背景除去のレベルを選択可能である。デフォルトレベルでは、上述したデフォルトの地色か否かを区別する輝度の閾値としてT1が採用される。第2レベルでは、T1より小さい値であるT2が当該閾値として採用され背景除去が行われる。第3レベルではT2より小さい値であるT3が当該閾値として採用され背景除去が行われる。色除去モードでは、通常モードで採用されている閾値から固定値t分小さい値が閾値として採用される。従って、通常モードで採用されている閾値がT2の場合、色除去モードでは(T2-t)が閾値として採用される。通常モードで採用されている閾値がT3の場合、色除去モードでは(T3-t)が閾値として採用される。
【0034】
(3)スキャン制御処理:
図4は、スキャン制御処理を示すフローチャートである。スキャン制御処理はコントローラー10が制御プログラムを実行することにより開始される。スキャン制御処理が開始されると、コントローラー10は、ユーザー設定を受け付ける(ステップS100)。すなわち、本実施形態において、コントローラー10は、通常モード、色除去モード等の背景除去に関するモードの選択や、背景除去の強さのレベルの選択(デフォルトレベル、第2レベル、第3レベル)や、通常モードが選択された場合にはさらに、カラー出力/モノクロ出力等の選択を、操作部80を介して受け付ける。
【0035】
なお、背景除去に関するモードでは、背景除去を行わないモードも選択可能に提示されてもよく、背景除去を行わないモードが選択された場合、コントローラー10は原稿の地色を除去しないスキャンデータを生成する。コントローラー10は、その他にも、読み取り解像度や出力ファイルの形式等、様々なスキャン条件の指定を受け付ける。ユーザーが明示的に指定操作を行わなかった項目については、前回使用された設定値や、カスタマイズされた設定値や、デフォルトの設定値が採用される。
【0036】
続いて、コントローラー10は、原稿をスキャンする(ステップS105)。すなわち、コントローラー10は、ステップS100で受け付けたユーザー設定等を含むスキャン条件に基づいて、光源21,光学部22,光電変換モジュール23、副走査装置30を制御し、原稿を読み取る。読み取りの結果、コントローラー10は、光電変換モジュール23からRGBデータを取得する。
【0037】
続いて、コントローラー10は、背景除去に関するモードについてユーザーが選択したのが色除去モードであるか通常モードであるかいずれであるかを判定する(ステップS110)。ステップS110において色除去モードが選択されていると判定された場合、コントローラー10は、RGBデータからRデータを抽出する色変換を行う(ステップS115)。具体的には例えば、コントローラー10は、ステップS105で得られたRGBデータの各画素の階調値(R,G,B)を(R,R,R)に変換する。
【0038】
続いて、コントローラー10は、通常モードの閾値より固定値分小さい閾値で背景除去を行う(ステップS120)。例えば、通常モードで設定されているレベルがデフォルトレベルの場合、コントローラー10は、T1-tを閾値として採用した変換テーブルに基づいて、背景除去を行う(
図3のグレーの破線を参照)。続いて、コントローラー10は、背景除去後のデータをモノクロデータで出力する(ステップS125)。すなわち、コントローラー10は、背景除去後のデータ(グレースケールデータ)を、通信部70を介してPCに出力する。
【0039】
ステップS110において、通常モードが選択されていると判定された場合、コントローラー10は、通常モードの閾値で背景除去を行う(ステップS135)。例えば、通常モードで選択されているレベルがデフォルトレベルの場合、コントローラー10は、T1を閾値として採用した変換テーブルに基づいて、RGBデータを対象に背景除去を行う(
図3のグレーの実線を参照)。続いて、コントローラー10は、カラー出力が選択されているか否かを判定し(ステップS140)、カラー出力が選択されていると判定した場合、カラーデータを出力する(ステップS145)。すなわち、コントローラー10は、ステップS135の処理後のRGBデータを、通信部70を介してPCに出力する。ステップS140においてカラー出力であると判定されない場合、コントローラー10は、モノクロデータを出力する(ステップS150)。すなわち、コントローラー10は、ステップS135の処理後のRGBデータをグレースケールデータに変換し、通信部70を介してPCに出力する。
【0040】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、本発明の一実施形態にかかるスキャナーは、読み取り以外の目的にも使用される電子機器である複合機等に備えられていても良い。さらに、読み取りを行って生産したスキャンデータ(画像データ)は、PCやリムーバブルメモリーへの出力の他にも、様々に利用されうる。例えば、スキャンデータ(画像データ)は、複合機の印刷部に出力され印刷(すなわちコピー)されてもよいし、ディスプレイに表示出力されてもよい。さらに、コントローラー10の処理の少なくとも一部が、PCのドライバープログラム又はアプリケーションプログラムによって実行されてもよい。この場合、PCをスキャナーの一部とみなすことができる。
【0041】
スキャナーは光電変換モジュールによって画像を読み取ることができればよく、光電変換モジュールは、カラー画像をスキャン可能な種々のセンサーであって良い。すなわち、上述のように、RGB等の3色の光源から光を順次切り替えながらスキャン対象に照射し、スキャン対象から出力される光を光電変換モジュールによって検出する構成以外にも種々の構成が採用可能である。色除去モードにおいては、RGB等の3色の光源から光を順次切り替えながら読み取ることによって取得したRGBデータからRデータを抽出してもよいし、G光源を点灯した読み取りやB光源を点灯した読み取りを行わず、R光源を点灯してRデータを読み取ることによってRデータを得る構成を採用してもよい。
【0042】
また例えば、白色のような単一光源からの光をスキャン対象に照射し、スキャン対象から出力される光を、RGBのようなカラーフィルターを搭載した光電変換モジュールによって検出する構成等が採用されてもよい。
色除去モードにおいては、赤以外の色が除去されてもよい。どの色を除去するかをユーザーに指定させて、指定された色を除去するようにしてもよい。
【0043】
また、スキャナー以外の装置によって生成されたデジタルデータの背景除去を行う場合に適用してもよい。例えば、デジタルカメラでホワイトボードを撮影することで生成された写真データの背景除去を行った画像データを生産する場合に適用してもよい。
背景除去の強度とは、原稿の地色と見なす画素値(例えば輝度、各色チャンネルの明度等)の範囲の広さを示している。背景除去の強度が異なる場合、原稿の地色と見なす画素値の範囲が異なる。強く背景除去する場合、原稿の地色と見なす画素値の範囲を広がればよい。
【0044】
原稿の地色が地色以外の部分よりも明るい色である場合、地色と地色以外の部分を区別する閾値を設定し、閾値より明るい画素を白色に変換することによって背景除去を行うことができる。強く背景除去を行う場合、この閾値を小さくすることによって、背景として除去される範囲が広がる。なお、上記実施形態においては、輝度が閾値以下の画素について、例えば
図3に示すように変換テーブルに従って変換する例を示したが、輝度が閾値以下の画素は輝度を変換せずに入力値のまま出力する構成を採用してもよい。
【0045】
通常モードでの閾値は、原稿に応じて算出されてもよい。例えば、スキャナーは、原稿を1頁読み取る毎に、当該原稿の輝度ヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状等から原稿の地色と地色以外を区別する閾値を自動的に算出する機能を有していても良い。一例としては、最も度数が大きいピークを検出し、当該ピークから輝度が低下する側において度数が既定値未満であって極小となった輝度値までを地色と見なし当該輝度値を閾値とする方法を採用してもよい。このように1スキャンずつ自動的に閾値を算出する機能を備える場合、通常モードでは、自動的に算出された閾値より大きい輝度の画素を白色に変換するようにしてもよい。また色除去モードにおいては、自動的に算出された閾値より固定値t分小さい値を閾値として、当該閾値より輝度が大きい画素を白色に変換するようにしてもよい。あるいは、固定値tを用いずにヒストグラムの形状等から色除去モードにおける閾値を算出してもよい。なお、tはユーザーの指定に応じた値(可変値)であってもよい。RGB各色の明度のヒストグラムが生成されてもよい。
【0046】
色除去モードと通常モードとでは閾値が異なっていればよい。例えば、色除去モードと通常モードとは、相互に異なる固定の閾値を有していてもよい。背景除去部は、色除去モードで実行可能なレベルよりも弱いレベルを含む複数のレベルから、通常モードでの背景除去のレベルを選択可能にユーザーに対して提示する構成であってもよい。例えば、通常モードでの背景除去の各レベルに対応する閾値T1、T2、T3と、色除去モードで実行可能な各レベルに対応する閾値(T1-t)、(T2-t)、(T3-t)とが、
図5に示す関係にある場合について考える。
図5の例は、通常モードにおけるデフォルトレベル(閾値T1)や第2レベル(閾値T2)は、色除去モードで実行可能な3つのどのレベルよりも、弱く背景除去することを示している。一方で、
図5の例は、通常モードにおける第3レベル(閾値T3)は、色除去モードにおける閾値(T1-t)が示す背景除去レベルと比較すると、強く背景除去することを示している。従って、
図5の例のように、色除去モードで実行可能な背景除去のレベルよりも強いレベルおよび弱いレベルを含む複数のレベルから通常モードでの背景除去のレベルを選択可能にユーザーに対して提示する構成であってもよい。また、上記実施形態では、通常モードにおける背景除去のレベルを選択可能であり、色除去モードでは通常モードよりも常に強く背景除去を行う構成であったが、例えば、色除去モードにおける背景除去のレベルもユーザーが選択可能な構成を採用してもよい。例えば、通常モードでは、背景除去のレベルを弱(閾値T1)、中(閾値T2)、強(閾値T3)、の3つからユーザーが選択可能であり、色除去モードでは、背景除去のレベルを中(閾値T2)、強(閾値T3)、の2つからユーザーが選択可能としてもよい。その場合に、強が選択された通常モードにおいて中が選択された色除去モードよりも強いレベルで背景除去が行われ、強が選択された色除去モードと同じレベルで背景除去が行われることになるが、このような構成を採用してもよい。また、色除去モードと通常モードとはいずれも背景除去のレベルを弱(閾値T1)、中(閾値T2)、強(閾値T3)、の3つからユーザーが選択可能であり、色除去モードでは中がデフォルトであり、通常モードでは弱がデフォルトであってもよい。仮にユーザーが除去したい赤色が設計上の理想の赤色であって、除去対象の赤色の部分が原稿の地色に対して僅かに識別可能に残存してしまうことがないとユーザーがわかっているような例外的な場合には、ユーザーは弱を選択することも可能になる。なお、このように、デフォルトの設定が異なっていれば、色除去モードでは通常モードと異なる強度で背景除去を行うということに含まれるし、デフォルトの設定がなくユーザーが設定できる範囲が異なっていても、色除去モードでは通常モードと異なる強度で背景除去を行うということに含まれる。なお、ユーザーが閾値を選択できる場合に、選択肢の数は特に制限されない。
また、背景除去のアルゴリズムは上述したものに限られない。他のアルゴリズムで背景除去を行う場合に本発明を適用してもよい。
【0047】
さらに、本発明は、コンピューターが実行するプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリーであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…スキャナー、10…コントローラー、21…光源、22…光学部、23…光電変換モジュール、30…副走査装置、50…載置台、70…通信部、80…操作部