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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/10 20060101AFI20241008BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G05D16/10 Z
F16K17/30 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020188957
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077895
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 一志
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中野 哲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 和広
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 千生
(72)【発明者】
【氏名】木原 侑也
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102581(JP,A)
【文献】特開2012-123466(JP,A)
【文献】特開2005-004553(JP,A)
【文献】特開2006-189163(JP,A)
【文献】特開2014-095401(JP,A)
【文献】米国特許第05676172(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/10
F16K 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路を有するボディと、
前記ガス流路に配置される弁座と、
前記ガス流路における前記弁座の下流側に配置され、該弁座に対して接離する弁体と、
前記弁体を前記弁座から離間させる方向に付勢する付勢部材と、
前記弁体の外周面に装着される少なくとも1つのシール部材と、を備える減圧弁であって、
前記弁体は、
前記弁座に着座可能な頭部と、
前記少なくとも1つのシール部材のうち、最も前記頭部寄りの位置に設けられた先端シール部材よりも該頭部寄りに位置する当接部と、を含み、
前記ボディは、前記当接部に当接することにより前記弁体の上流側への移動を規制するストッパを含む減圧弁。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧弁において、
前記弁体は、前記弁体における前記先端シール部材よりも前記頭部寄りの位置に開口する横穴、及び前記横穴に連通するとともに前記ガス流路における前記弁体の下流側に連通する縦穴を有する本体部をさらに含み、
前記当接部は、前記弁体における前記横穴よりも前記頭部寄りの位置に設けられる減圧弁。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧弁において、
前記弁体は、前記弁体における前記先端シール部材よりも前記頭部寄りの位置に開口する横穴、及び前記横穴に連通するとともに前記ガス流路における前記弁体の下流側に連通する縦穴を有する本体部をさらに含み、
前記当接部は、前記弁体における前記横穴よりも前記頭部から離れた位置に設けられる減圧弁。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の減圧弁において、
前記ストッパは、前記ボディの一部として形成されている減圧弁。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の減圧弁において、
前記ストッパは、前記ボディとは別体で形成されており、前記弁座に隣接して該弁座の下流側に配置される減圧弁。
【請求項6】
請求項5に記載の減圧弁において、
前記弁座の前記ストッパに対する接触面積は、前記弁座の前記頭部に対する接触面積よりも大きい減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されるように、一次ポートから供給される流体の圧力(以下、一次圧という。)を所定圧以下となるように減圧して二次ポートに送出する減圧弁がある。こうした減圧弁は、一次ポート及び二次ポートに連通するガス流路を有するボディと、ガス流路内に配置される弁座と、弁座に対して接離する弁体と、弁体を弁座から離間させる方向に付勢する付勢部材とを備えている。弁体は、一次圧と減圧弁により減圧された圧力(以下、二次圧という。)との差圧及び付勢部材の付勢力に応じて移動する。そして、弁体の位置に応じて減圧弁の開度が変化することにより、二次圧が所定圧以下となるように調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-126269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の構成では、弁体が弁座に着座した閉弁時において、弁体が二次圧に応じて弁座に押し付けられることにより、弁座が過度に変形することがある。その結果、弁座が劣化しやすくなり、例えば寿命の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、弁座の過度な変形を抑制できる減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する減圧弁は、ガス流路を有するボディと、前記ガス流路に配置される弁座と、前記ガス流路における前記弁座の下流側に配置され、該弁座に対して接離する弁体と、前記弁体を前記弁座から離間させる方向に付勢する付勢部材と、前記弁体の外周面に装着される少なくとも1つのシール部材と、を備えるものであって、前記弁体は、前記弁座に着座可能な頭部と、前記少なくとも1つのシール部材のうち、最も前記頭部寄りの位置に設けられた先端シール部材よりも該頭部寄りに位置する当接部と、を含み、前記ボディは、前記当接部に当接することにより前記弁体の上流側への移動を規制するストッパを含む。
【0007】
上記構成によれば、当接部がストッパに当接することで、弁体が上流側に移動することが規制されるため、弁座が過度に変形することを抑制でき、ひいては弁座の寿命の低下を抑制できる。
【0008】
ここで、弁座を過度に変形させないという観点からは、弁体が上流側に移動した際に、当接部がなるべく早くストッパに当接することが望ましい。一方、一次圧を適切に減圧する観点からは、減圧弁の閉弁時に弁体が弁座にしっかりと着座して流体の流通を遮断できるように、弁体の上流側への移動はなるべく規制しないことが望ましい。したがって、弁座の過度な変形を抑制しつつ、弁体を弁座に対してしっかりと着座させるためには、弁体の上流側への移動が規制される位置を精度良く規定し、製造される個体毎にばらつかないようにする必要がある。この実現には、弁体及びボディの寸法精度をなるべく高くすることが求められる。具体的には、弁体の頭部と当接部との相対位置(距離)、及びボディにおける弁座の取り付け位置とストッパとの相対位置(距離)のばらつきをそれぞれ小さくする必要がある。しかし、例えば弁体及びボディの製造にあたっては、寸法公差が設定されることから、部品全体の寸法精度を高くすることには限界がある。
【0009】
この点、上記構成では、当接部が先端シール部材よりも頭部寄りに設けられている。つまり、当接部は、頭部に近接した位置に設けられている。そのため、当接部が頭部から離れた位置に設けられる場合に比べ、頭部と当接部との相対位置のばらつきを小さくすることができる。また、弁体の頭部及び当接部に対応して、ストッパが弁座の取付位置に対して近接した位置に設けられるため、弁座の取付位置とストッパとの相対位置のばらつきを小さくすることができる。これにより、弁座の過度な変形を抑制しつつ、二次圧の調圧を適切に行うことができる。
【0010】
上記減圧弁において、前記弁体は、前記弁体における前記先端シール部材よりも前記頭部寄りの位置に開口する横穴、及び前記横穴に連通するとともに前記ガス流路における前記弁体の下流側に連通する縦穴を有する本体部をさらに含み、前記当接部は、前記弁体における前記横穴よりも前記頭部寄りの位置に設けられることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、当接部が頭部に対して好適に近接した位置に設けられる。そのため、頭部と当接部との相対位置のばらつきをより小さくすることができる。また、弁体の頭部及び当接部に対応して、ストッパが弁座の取付位置に対して好適に近接した位置に設けられる。そのため、弁座の取付位置とストッパとの相対位置のばらつきをより小さくすることができる。
【0012】
上記減圧弁において、前記弁体は、前記弁体における前記先端シール部材よりも前記頭部寄りの位置に開口する横穴、及び前記横穴に連通するとともに前記ガス流路における前記弁体の下流側に連通する縦穴を有する本体部をさらに含み、前記当接部は、前記弁体における前記横穴よりも前記頭部から離れた位置に設けられることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、当接部がストッパに当接する際に、ストッパから当接部に作用する力が、弁体における横穴が設けられた部分に影響を及ぼしにくくなる。これにより、当接部がストッパに対して繰り返し当接しても、横穴が変形することを抑制できる。
【0014】
上記減圧弁において、前記ストッパは、前記ボディの一部として形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、ストッパをボディと別体で形成する合に比べ、弁座の取付位置とストッパとの相対位置のばらつきをより小さくすることができる。
【0015】
上記減圧弁において、前記ストッパは、前記ボディとは別体で形成されており、前記弁座に隣接して該弁座の下流側に配置されることが好ましい。
上記構成によれば、閉弁時に、ストッパは弁座と弁体との間に挟まれる。したがって、当接部がストッパに対して当接する際の衝撃が弁座によって吸収されることになり、ストッパに対して当接部が当接する際の打音を低減できる。
【0016】
上記減圧弁において、前記弁座の前記ストッパに対する接触面積は、前記弁座の前記頭部に対する接触面積よりも大きいことが好ましい。
上記構成によれば、弁座がストッパを介して受ける弁体の付勢力によって過度に変形することを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弁座の過度な変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の減圧弁の概略断面図。
図2】第1実施形態の減圧弁における弁体及び弁座近傍の概略拡大断面図。
図3】第2実施形態の減圧弁における弁体及び弁座近傍の概略拡大断面図。
図4】第3実施形態の減圧弁における弁体及び弁座近傍の概略拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、減圧弁の第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す減圧弁1は、一例として、燃料電池自動車に搭載される水素ガスのガスタンク2と燃料電池3とをつなぐ流体回路の途中に設けられる。減圧弁1は、ガスタンク2から一次ポート4を介して供給される水素ガスの圧力(以下、一次圧という。)を所定圧以下に減圧し、二次ポート5を介して燃料電池3に送出する。なお、一次ポート4から供給される一次圧は、例示的に87.5MPa程度の高圧である。減圧弁1により減圧された圧力(以下、二次圧という。)の目標値である所定圧は、例示的に1.2MPa程度である。
【0020】
減圧弁1は、ボディ11と、弁座12と、弁体13と、付勢部材14と、可動部シール部材である第1シール部材15及び第2シール部材16とを備えている。
ボディ11は、一次ポート4及び二次ポート5に連通し、高圧ガスが流通するガス流路17を有している。弁座12は、ガス流路17に配置されている。弁体13は、ガス流路17における弁座12の下流側に配置されている。付勢部材14は、弁体13を弁座12から離間させる開弁方向に付勢する。第1シール部材15及び第2シール部材16は、それぞれ弁体13の外周面に装着されている。弁体13は、一次圧と二次圧との差圧及び付勢部材14の付勢力に応じて弁座12に対して接離する。そして、弁体13の位置に応じて減圧弁1の開度が変化することにより、二次圧が所定圧以下となるように調整される。
【0021】
詳しくは、ボディ11は、継ぎ手部材21と、第1ハウジング部材22と、第2ハウジング部材23とを備えている。継ぎ手部材21、第1ハウジング部材22及び第2ハウジング部材23は、それぞれ金属製である。ボディ11は、継ぎ手部材21、第1ハウジング部材22、第2ハウジング部材23の順で、水素ガスの流通方向における上流側から連結されることにより組み立てられている。組み立て後のボディ11において、継ぎ手部材21、第1ハウジング部材22及び第2ハウジング部材23は、それぞれ共通の軸線L上に配置されている。
【0022】
継ぎ手部材21の形状は、概ね段付きの円柱状である。継ぎ手部材21における大径部31の外周面は、雄ネジを有している。継ぎ手部材21は、ガス流路17の一部である継ぎ手流路32を有している。継ぎ手流路32は、軸線Lに沿って直線状に延びており、継ぎ手部材21の両端に開口している。継ぎ手流路32の上流側の開口が一次ポート4として機能する。図示の例では、継ぎ手部材21は、継ぎ手流路32の下流側の開口に配置されるフィルタ33を備えている。
【0023】
第1ハウジング部材22の形状は、概ね円柱状である。第1ハウジング部材22の外径は、継ぎ手部材21の外径よりも大きい。第1ハウジング部材22は、ガス流路17の一部となる第1取付穴41及び第2取付穴42を有している。
【0024】
第1取付穴41及び第2取付穴42の形状は、それぞれ丸穴状である。第1取付穴41は、継ぎ手部材21と対向する端面、すなわち第1ハウジング部材22の上流側に開口している。第2取付穴42は、第1取付穴41の下流側に連続している。第1取付穴41及び第2取付穴42は、それぞれ同一の軸線L上に設けられている。第1取付穴41の内周面は、雌ネジを有している。そして、第1取付穴41に大径部31がネジ止めされることにより、継ぎ手部材21が第1ハウジング部材22に連結されている。第2取付穴42の内径は、第1取付穴41の内径よりも小さい。第2取付穴42には、弁座12が取り付けられる。これにより、弁座12がガス流路17の途中に配置される。そして、第1ハウジング部材22における第2取付穴42の位置が、ボディ11における弁座12の取付位置である。
【0025】
また、第1ハウジング部材22は、ガス流路17の一部である収容穴43を有している。収容穴43は、第2取付穴42に連続するとともに、第1ハウジング部材22における第2ハウジング部材23と対向する端面、すなわち第1ハウジング部材22の下流側に開口している。収容穴43は、軸線L上に設けられている。収容穴43内には、弁体13の一部が収容される。これにより、弁体13は、ガス流路17における弁座12の下流側に配置される。
【0026】
図1及び図2に示すように、収容穴43は、概ね丸穴形状である。第1ハウジング部材22は、収容穴43における上流側部分の内径を上流側に向かって徐々に小さくする絞り部44を有している。絞り部44は、第1ハウジング部材22の一部(第1ハウジング部材22と一体)として形成されている。絞り部44は、その内周縁(下流側端部)に軸線Lと略直交する円環状の平面を有している。後述するように、絞り部44の内周縁、特に前記平面は、ストッパ45に相当する。
【0027】
さらに、図1に示すように、第1ハウジング部材22は、収容穴43の外周側に位置する設置溝46を有している。設置溝46の形状は、円環の溝状である。設置溝46は、円筒状の周壁47によって内郭を規定され、収容穴43の外周側に設けられている。設置溝46は、収容穴43と同様に、第1ハウジング部材22の下流側に開口している。設置溝46の外郭を規定する外壁部48は、周壁47よりも下流側に突出している。外壁部48の形状は、円筒状である。第1ハウジング部材22(外壁部48)の外周面は、設置溝46と対応する位置に雄ネジを有している。なお、図示の例では、第1ハウジング部材22は、設置溝46の内部とボディ11の外部とを連通する連通路49を有している。
【0028】
第2ハウジング部材23の形状は、概ね円柱状である。第2ハウジング部材23の外径は、第1ハウジング部材22の外径よりもやや大きい。第2ハウジング部材23は、第1ハウジング部材22と対向する端面、すなわち第2ハウジング部材23の上流側に開口する連結穴51を有している。連結穴51の形状は、丸穴状である。連結穴51の内周面は、開口端寄りの位置に雌ネジを有している。そして、連結穴51の奥側に外壁部48が挿入されるとともに第1ハウジング部材22の外周面がネジ止めされることにより、第1ハウジング部材22が第2ハウジング部材23に連結されている。なお、外壁部48の外周面には、固定部シール部材である、例えばOリング等の第3シール部材52が装着されている。
【0029】
また、第2ハウジング部材23は、ガス流路17の一部であるハウジング流路53を有している。ハウジング流路53は、軸線Lに沿って直線状に延びている。ハウジング流路53は、連結穴51の底面に上流側の開口を有し、第2ハウジング部材23における第1ハウジング部材22と反対側、すなわち第2ハウジング部材23の下流側の端面に、下流側の開口を有している。ハウジング流路53の下流側の開口が二次ポート5として機能する。
【0030】
弁座12は、樹脂製である。弁座12の形状は、円環状である。弁座12は、第1ハウジング部材22の第2取付穴42に配置されている。そして、弁座12は、第1取付穴41に取り付けられた継ぎ手部材21によって第2取付穴42の底面に押さえつけられている。弁座12は、弁孔61を有している。弁孔61は、軸線Lに沿って直線状に延びており、弁座12の両端に開口している。弁孔61の内周面は、弁孔61の下流側領域において、下流側に向かって内径が大きくなるように傾斜している。
【0031】
弁体13は、金属製である。図2に示すように、弁体13は、頭部71と、本体部72と、受圧部73とを有している。頭部71、本体部72及び受圧部73は、上流側からこの順で一体に形成されている。頭部71及び本体部72は第1ハウジング部材22の収容穴43に収容され、受圧部73は周壁47から下流側へ突出して外壁部48の内側に収容されている。そして、弁体13は、ボディ11内において軸線Lに沿って移動可能である。つまり、弁体13は、弁座12に対して接離可能である。
【0032】
頭部71の形状は、概ね円柱状である。頭部71は、先端側、すなわち上流側に向かって先細となるテーパ形状を有している。頭部71のテーパ形状は、弁孔61の下流側領域の傾斜に対応して傾斜している。
【0033】
本体部72の形状は、概ね段付きの円柱状である。本体部72は、先端部81と、中間部82と、基端部83とを有している。先端部81、中間部82及び基端部83は、上流側からこの順で一体に形成されている。頭部71は、先端部81における上流側の端面に設けられている。本体部72の外径は、先端部81、中間部82、基端部83の順で大きくなる。基端部83の外周面は、第1装着溝84を有している。第1装着溝84は、基端部83の全周に亘る円環状に延びている。
【0034】
先端部81の外径は、第1ハウジング部材22の絞り部44、すなわちストッパ45の内径よりも小さく、先端部81と絞り部44との間の隙間がガス流路の17の一部となる。中間部82の外径は、先端部81の外径及びストッパ45の内径よりも大きい。基端部83の外径は、収容穴43の内径よりも僅かに小さく、摺動可能とされている。したがって、中間部82は、ストッパ45内に進入できず、中間部82の外周縁(上流側端部)がストッパ45に当接する。中間部82は、その外周縁に軸線Lと略直交する円環状の平面を有している。つまり、中間部82の外周縁、特に前記平面が当接部85に相当する。
【0035】
ここで、当接部85と頭部71との相対位置(距離)、及び弁座12の取付位置とストッパ45との相対位置(距離)は、次の条件(a)及び(b)を満足するように設定されている。
【0036】
(a)頭部71が弁座12に対してしっかりと着座して高圧の水素ガスの流通を遮断できるまでは、当接部85はストッパ45に当接しない。
(b)弁座12が弁体13に押圧されることにより過度に変形する前に、当接部85はストッパ45に当接する。
【0037】
また、本体部72は、複数の横穴86と、1つの縦穴87とを有している。各横穴86は、軸線Lと直交する方向に沿って直線状に延びている。各横穴86は、中間部82の外周面に開口している。複数の横穴86は、本体部72の周方向に等角度間隔で設けられている。このように各横穴86は中間部82の外周面に開口していることから、当接部85は各横穴86よりも頭部71寄りに設けられている。縦穴87は、軸線Lに沿って直線状に延びている。縦穴87は、本体部72における頭部71が位置する側と反対側の端面に開口している。つまり、縦穴87の下流側端部は、ガス流路17における弁体13の下流側に開口している。一方、縦穴87の上流側端部は、複数の横穴86のそれぞれに連通している。
【0038】
受圧部73の形状は、概ね段付きの円環状である。受圧部73は、本体部72の下流側端部から径方向外側に延出されている。受圧部73の外径は、第1ハウジング部材22の外壁部48の内径よりも僅かに小さく、摺動可能とされている。受圧部73の軸線Lに沿った厚みは、径方向外側部分の方が径方向内側部分よりも厚い。受圧部73の外周面は、第2装着溝88を有している。第2装着溝88は、受圧部73の全周に亘る円環状に延びている。
【0039】
付勢部材14には、コイルばねが採用されている。付勢部材14は、設置溝46に収容されている。付勢部材14は、設置溝46において、設置溝46の底面と弁体13の受圧部73との間で軸線Lに沿って圧縮されている。これにより、付勢部材14は、弁体13を開弁方向、すなわち水素ガスの流通方向における下流側に付勢している。
【0040】
第1シール部材15及び第2シール部材16には、それぞれリップシールが採用されている。第1シール部材15は、第1装着溝84に装着され、第2シール部材16は、第2装着溝88に装着されている。つまり、第1シール部材15が、弁体13の外周面に装着されるシール部材のうち、最も頭部71寄りの位置に設けられた先端シール部材に相当する。上記のように第1装着溝84は本体部72の基端部83に設けられていることから、中間部82に設けられた当接部85は、第1シール部材15(先端シール部材)よりも頭部71寄りの位置に設けられていることになる。
【0041】
第1シール部材15は、本体部72の外周面と収容穴43の内周面との間をシールしている。第2シール部材16は、受圧部73の外周面と外壁部48の内周面との間をシールしている。これにより、減圧された水素ガスが設置溝46及び連通路49を介して外部に放出されることが防止されている。
【0042】
次に、減圧弁1の動作について説明する。
一次ポート4から高圧の水素ガスが供給される前の初期状態では、弁体13は付勢部材14の付勢力により下流側に移動する。これにより、弁体13が弁座12から離間し、減圧弁1は開弁した状態となる。
【0043】
一次ポート4から供給される一次圧の水素ガスは、ガス流路17である継ぎ手流路32を通り、弁孔61と弁体13の頭部71との間の隙間を介して収容穴43内に流入する。水素ガスは、弁孔61と頭部71との間の隙間を通過する際に、当該隙間の大きさに応じて減圧される。減圧された水素ガスは、横穴86及び縦穴87を介してガス流路17であるハウジング流路53に流入し、二次ポート5から送出される。このように弁孔61を介して流入する水素ガスが増加することで、二次圧が上昇する。
【0044】
弁体13は、付勢部材14の付勢力及び弁孔61を介して頭部71が受ける一次圧に応じた付勢力によって、下流側(開弁方向)に付勢される。これに対し、弁体13は、主に受圧部73が受ける二次圧に応じた付勢力によって、上流側(閉弁方向)に付勢される。弁体13は、このような上流側への付勢力と下流側への付勢力との大小関係に応じて、移動する。
【0045】
弁体13は、二次圧の上昇に応じて弁座12に接近し、二次圧が所定圧になると、弁座12に着座する。つまり、減圧弁1は閉弁した状態となる。そして、本実施形態では、一次ポート4からの水素ガスの流入を遮断できるように弁体13が弁座にしっかりと着座した状態から、二次圧に応じた付勢力により付勢される弁体13が弁座12に向かってさらに移動しようとすると、当接部85がストッパ45に当接する。これにより、弁体13が上流側へ移動することが規制される。
【0046】
その後、燃料電池3において水素ガスが消費され、二次圧が低下すると、弁体13が下流側へ移動する。これにより、減圧弁1が開弁した状態となり、一次ポート4から水素ガスが流入する。このように一次圧と二次圧との差圧に応じて弁体13が移動することで、所定圧の水素ガスが減圧弁1から送出される。
【0047】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)弁体13は、当接部85を備える。ボディ11は、当接部85に当接することにより弁体13の上流側への移動を規制するストッパ45を備える。したがって、当接部85がストッパ45に当接することで、弁体13が上流側に移動することが規制されるため、弁座12が過度に変形することを抑制でき、ひいては弁座12の寿命の低下を抑制できる。
【0048】
ここで、弁座12を過度に変形させないという観点からは、弁体13が上流側に移動した際に、当接部85がなるべく早くストッパ45に当接することが望ましい。一方、高圧の水素ガスを適切に減圧する観点からは、減圧弁1の閉弁時に弁体13が弁座12にしっかりと着座して水素ガスの流通を遮断できるように、弁体13の上流側への移動はなるべく規制しないことが望ましい。したがって、弁座12の過度な変形を抑制しつつ、弁体13を弁座12に対してしっかりと着座させるためには、弁体13の上流側への移動が規制される位置を精度良く規定し、製造される個体毎にばらつかないようにする必要がある。この実現には、弁体13及びボディ11の寸法精度をなるべく高くすることが求められる。具体的には、頭部71と当接部85との相対位置、及び弁座12の取り付け位置とストッパ45との相対位置のばらつきをそれぞれ小さくする必要がある。しかし、例えば弁体13及びボディ11の製造にあたっては、寸法公差が設定されることから、部品全体の寸法精度を高くすることには限界がある。
【0049】
この点、本実施形態では、当接部85は、弁体13における横穴86よりも頭部71寄りの位置に設けられている。つまり、当接部85は、頭部71に好適に近接した位置に設けられている。そのため、当接部85が頭部71から離れた位置に設けられる場合に比べ、頭部71と当接部85との相対位置のばらつきを好適に小さくすることができる。また、頭部71及び当接部85に対応して、ストッパ45が弁座12の取付位置に対して好適に近接した位置に設けられる。そのため、弁座12の取付位置とストッパ45との相対位置のばらつきを好適に小さくすることができる。これにより、弁座12の過度な変形を抑制しつつ、二次圧の調圧を適切に行うことができる。
【0050】
(2)ストッパ45は、ボディ11の一部(ボディ11と一体)として形成されている。そのため、ストッパ45をボディ11と別体で形成する合に比べ、弁座12の取付位置とストッパ45との相対位置のばらつきをより小さくすることができる。
【0051】
(3)当接部85は、弁体13の一部(弁体13と一体)として形成されている。そのため、当接部85を弁体13と別体で形成する合に比べ、頭部71と当接部85との相対位置のばらつきをより小さくすることができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、減圧弁の第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図3に示すように、本実施形態の収容穴43の形状は、段付きの丸穴状である。収容穴43は、下流側の大径穴部91と、大径穴部91の上流側に連続する小径穴部92とを有している。大径穴部91は、弁体13の基端部83の外径よりも僅かに大きく、弁体13が摺動可能とされている。小径穴部92は、基端部83の外径よりも小さく、中間部82の外径よりも大きい。ストッパ93は、第1ハウジング部材22における大径穴部91と小径穴部92との間の段差部分に、第1ハウジング部材22の一部として形成されている。
【0054】
上記のように基端部83の外径は、小径穴部92の内径よりも大きい。そのため、弁体13が弁座12に着座した状態からさらに弁座12に向かって移動しようとすると、基端部83の外周縁がストッパ93に当接する。基端部83は、その外周縁に軸線Lと略直交する円環状の平面を有している。つまり、基端部83の外周縁、特に前記平面が当接部94に相当する。このように当接部94は、基端部83の外周縁であることから、横穴86よりも頭部71から離れているものの、第1シール部材15よりも頭部71寄りの位置に設けられている。なお、当接部94と頭部71との相対位置、及び弁座12の取付位置とストッパ93との相対位置は、上記(a)及び(b)の条件を満たすように設定されている。
【0055】
以上、本実施形態では、上記第1実施形態の(2),(3)の作用及び効果と同様の作用及び効果に加え、以下の作用及び効果を奏する。
(4)当接部94は、弁体13における第1シール部材15よりも頭部71寄りの位置に設けられている。つまり、当接部94は、頭部71に近接した位置に設けられている。そのため、当接部94が頭部71から離れた位置に設けられる場合に比べ、頭部71と当接部94との相対位置のばらつきを小さくすることができる。また、頭部71及び当接部94に対応して、ストッパ93が弁座12の取付位置に対して近接した位置に設けられる。そのため、弁座12の取付位置とストッパ93との相対位置のばらつきを小さくすることができる。
【0056】
(5)当接部94は、横穴86よりも頭部71から離れた位置に設けられている。そのため、当接部94がストッパ93に当接する際に、ストッパ93から当接部94に作用する力が、基端部83よりも上流側に設けられた中間部82に影響を及ぼしにくくなる。これにより、当接部94がストッパ93に対して繰り返し当接しても、横穴86が変形することを抑制できる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、減圧弁の第3実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図4に示すように、第1ハウジング部材22は、ガス流路17の一部である第3取付穴101を有している。第3取付穴101は、第2取付穴42の下流側に連続している。第3取付穴101の形状は、丸穴状である。第3取付穴101は、軸線L上に設けられている。第3取付穴101の内径は、第2取付穴42の内径よりも小さく、かつ絞り部44の内周縁の内径よりも大きい。
【0059】
ボディ11は、金属製のストッパ102を備えている。ストッパ102は、第1ハウジング部材22とは別体で形成されている。ストッパ102は、第3取付穴101に取り付けられる。つまり、ストッパ102は、弁座12に隣接して該弁座12の下流側に配置されている。
【0060】
ストッパ102の形状は、円環状である。ストッパ102は、貫通孔103を有している。貫通孔103は、軸線Lに沿って直線状に延びており、ストッパ102の両端に開口している。貫通孔103の内径は、絞り部44の内径よりも小さく、頭部71の外径よりも大きい。ストッパ102が第3取付穴101内に配置された状態で、ストッパ102の上流側端面の全体が弁座12に接触している。ストッパ102は、弁体13の頭部71よりも大きな内外径を有しており、弁座12のストッパ102に対する接触面積は、弁座12の頭部71に対する接触面積よりも大きい。
【0061】
弁体13の先端部81の外径は、絞り部44の内径よりも小さく、先端部81と絞り部44との間の隙間がガス流路17の一部となっている。弁体13の先端部81の外径は、ストッパ102の内径よりも大きい。そのため、弁体13が弁座12に着座した状態からさらに弁座12に向かって移動しようとすると、先端部81の外周縁がストッパ102に当接する。先端部81は、その外周縁に軸線Lと略直交する円環状の平面を有している。つまり、先端部81の外周縁、特に前記平面が当接部104に相当する。なお、当接部104と頭部71との相対位置、及び弁座12の取付位置とストッパ102との相対位置は、上記(a)及び(b)の条件を満たすように設定されている。
【0062】
以上、本実施形態では、上記第1実施形態の(1),(3)の作用及び効果と同様の作用及び効果に加え、以下の作用及び効果を奏する。
(6)ボディ11とは別体で形成されたストッパ102が、弁座12に隣接して該弁座12の下流側に配置されている。これにより、閉弁時に、ストッパ102は弁座12と弁体13との間に挟まれる。したがって、当接部104がストッパ102に対して当接する際の衝撃が弁座12によって吸収されることになり、ストッパ102に対して当接部104が当接する際の打音を低減できる。
【0063】
(7)弁座12のストッパ102に対する接触面積は、弁座12の頭部71に対する接触面積よりも大きい。そのため、弁座12がストッパ102を介して受ける弁体13の付勢力によって過度に変形することを抑制できる。
【0064】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第3実施形態において、弁座12のストッパ102に対する接触面積を、弁座12の頭部71に対する接触面積以下としてもよい。
【0065】
・上記第3実施形態において、ストッパ102を、例えば樹脂製としてもよい。
・上記第1及び第2実施形態において、ストッパ45,93を第1ハウジング部材22と別体で形成してもよい。この場合において、ストッパを、例えば樹脂製としてもよい。
【0066】
・上記各実施形態において、当接部85,94,104を、弁体13と別体で形成してもよい。この場合において、当接部を、例えば樹脂製としてもよい。
・上記実施形態では、減圧弁1が第1シール部材15及び第2シール部材16の2つを備えていたが、これに限らず、単一の又は3つ以上のシール部材を備えてもよい。シール部材としては、リップシールに限らず、例えばOリング等を採用してもよい。さらに、シール部材は、リップシール又はOリングに加え、例えばバックアップリングを備える構成であってもよい。
【0067】
・上記各実施形態において、横穴86の数、及び配置は適宜変更可能である。
・上記各実施形態では、付勢部材14としてコイルばねを採用したが、これに限らず、例えば皿ばね等、他の弾性部材を採用してもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、減圧弁1を高圧の水素ガスを減圧する用途に用いたが、これに限らず、水素以外の高圧ガスを減圧する用途に用いてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…減圧弁
11…ボディ
12…弁座
13…弁体
14…付勢部材
15…第1シール部材(シール部材、先端シール部材)
16…第2シール部材(シール部材)
17…ガス流路
45,93,102…ストッパ
71…頭部
85,94,104…当接部
図1
図2
図3
図4