(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液晶プロジェクターおよび液晶プロジェクターの制御方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20241008BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241008BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 E
H04N9/31
(21)【出願番号】P 2020190759
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青木 透
(72)【発明者】
【氏名】若林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】外園 大悟
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-118159(JP,A)
【文献】特開2000-338916(JP,A)
【文献】特開2016-004237(JP,A)
【文献】特開2017-129730(JP,A)
【文献】特開2002-281517(JP,A)
【文献】特開2019-039995(JP,A)
【文献】特開2008-271413(JP,A)
【文献】特開2004-139018(JP,A)
【文献】特開2008-224751(JP,A)
【文献】特開2004-347936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101807(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106385575(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
G09G3/00-3/08
3/12
3/16-3/26
3/30
3/34-5/42
H04N9/12-9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調画像を生成する液晶パネルと、
前記液晶パネルの温度を検出するセンサーと、
前記液晶パネルにより生成された変調画像の出射光路をシフトさせる光学シフト素子と
、
前記センサーで検出された温度に応じて、前記光学シフト素子におけるシフトの速度を
制御する制御回路と、
を含む液晶プロジェクター。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記センサーで検出された温度が第1値よりも高い第2値である場合、
前記光学シフト素子における出射光路を、前記第1値である場合の速度よりも高い速度
でシフトさせる
請求項1に記載の液晶プロジェクター。
【請求項3】
第1色光の第1変調画像を生成する第1液晶パネルと、
前記第1色光の波長よりも短い第2色光の第2変調画像を生成する第2液晶パネルと、
前記第2色光の波長よりも短い第3色光の第3変調画像を生成する第3液晶パネルと、
前記第1変調画像、前記第2変調画像および前記第3変調画像を合成する合成部と、
前記合成部による合成像の出射光路をシフトさせる光学シフト素子と、
前記第2液晶パネルの温度を検出するセンサーと、
前記センサーで検出された温度に応じて、前記光学シフト素子におけるシフトの速度を
制御する制御回路と、
を含む液晶プロジェクター。
【請求項4】
第1色光の第1変調画像を生成する第1液晶パネルと、
前記第1色光の波長よりも短い第2色光の第2変調画像を生成する第2液晶パネルと、
前記第2色光の波長よりも短い第3色光の第3変調画像を生成する第3液晶パネルと、
前記第1変調画像、前記第2変調画像および前記第3変調画像を合成する合成部と、
前記合成部による合成像の出射光路をシフトさせる光学シフト素子と、
前記第2液晶パネルの温度を検出するセンサーと、
前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネル、前記第
3液晶パネルおよび前記光学シフト
素子を制御する制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、
前記出射光路を、第1期間で第1位置にシフトさせ、前記第1期間の後の第2期間で第
2位置にシフトさせ、
前記第1期間で、前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記第3液晶パネル
における一のパネル画素を、映像データで指定される第1表示画素の階調レベルのうち、
順に、前記第1色光の階調レベル、前記第2色光の階調レベルおよび前記第3色光の階調
レベルとし、
前記第2期間で、前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記第3液晶パネル
における前記一のパネル画素を、前記映像データで指定される第2表示画素の階調レベル
のうち、順に、前記第1色光の階調レベル、前記第2色光の階調レベルおよび前記第3色
光の階調レベルとし、
前記センサーで検出された温度に応じて、前記第1位置から前記第2位置までシフトす
る速度を制御する、
液晶プロジェクター。
【請求項5】
液晶パネルと、光学シフト素子とを備えた液晶プロジェクターの制御方法であって、
前記液晶パネルに、変調画像を生成させ、
前記光学シフト素子に、前記液晶パネルの温度に応じて、前記液晶パネルにより生成さ
れた変調画像の出射光路をシフトさせる速度を変化させる
液晶プロジェクターの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクターおよび液晶プロジェクターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクターでは、画像の解像度を擬似的に高めるために、スクリーン等への投写される画素の位置を、シフトデバイスによってシフトさせる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術によって、液晶パネルの解像度よりも高い解像度が投写されているかのようにユーザーに視認させることができる。シフトデバイスは、光学シフト素子であり、光軸シフト素子とも呼ばれる。
光学シフト素子によって投写される画素の位置をシフトさせる技術において、シフトさせる期間に画像を表示させないようにすると、画像の明るさが低下するので、当該シフトの期間に移動期間用の画像を表示させる技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平04-063332号公報
【文献】特開2018-1284862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シフトの期間に移動期間用の画像を表示させる技術では、液晶プロジェクターの使用条件が変化した場合に、投写される画像の品位の低下が発生する、という点が指摘された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る液晶プロジェクターは、変調画像を生成する液晶パネルと、前記液晶パネルの温度を検出するセンサーと、前記液晶パネルにより生成された変調画像の出射光路をシフトさせる光学シフト素子と、前記センサーで検出された温度に応じて、前記光学シフト素子におけるシフトの速度を制御する制御回路と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る液晶プロジェクターの光学的な構成を示す図である。
【
図2】液晶プロジェクターの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】フレームおよびサブフレームの関係を示す図である。
【
図4】表示画素とパネル画素との関係等を示す図である。
【
図5】パネル画素で表現される表示画素と投写位置との関係を示す図である。
【
図7】液晶パネルにおける画素回路の構成を示す図である。
【
図8】液晶パネルにおける走査線の選択推移等を示す図である。
【
図9】液晶素子の光学応答と光学シフト素子によるシフト動作との説明図である。
【
図10】光学シフト素子の設定処理を示すフローチャートである。
【
図11】液晶素子の光学応答と光学シフト素子によるシフト動作との説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されている。このため、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
図1は、実施形態に係る液晶プロジェクター1の光学的な構成を示す図である。
図1には、画像が投写されるスクリーンScrも示され、スクリーンScrの投写面の左右方向は、紙面の手前方向あるいは奥行方向であり、投写面の上下方向は、紙面の上下方向である。図に示されるように、液晶プロジェクター1は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bを含む三板式である。液晶プロジェクター1の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられる。ランプユニット2102から出射された光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によって、赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色に分離される。このうち、Rの光は液晶パネル100Rに、Gの光は液晶パネル100Gに、Bの光は液晶パネル100Bに、それぞれ入射する。また、ランプユニット2102は、LD光源、LED光源及び蛍光発光体を含み、白色光を出射してもよい。Rの光、Gの光およびBの光は、それぞれ、赤色光、緑色光および青色光に対応し、周知のとおり、青色光の波長は緑色光の波長より短く、緑色光の波長は赤色光の波長より短い。
なお、Bの光路は、他のRおよびGと比較して長い。したがって、Bの光は、光路での損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して液晶パネル100Bに導かれる。
【0009】
液晶パネル100Rは、後述するようにマトリクス状に配列する画素回路を有する。上記画素回路に含まれる液晶素子から出射される光の透過率が、Rに対応するデータ信号に基づいて制御される。すなわち、液晶パネル100Rでは、液晶素子からの出射光が画像の最小単位として機能とする。このような制御によって液晶パネル100Rは、Rに対応するデータ信号に基づいてRの変調画像(透過像)を生成する。同様に、液晶パネル100Gは、Gに対応するデータ信号に基づいてGの変調画像を生成し、液晶パネル100Bは、Bに対応するデータ信号に基づいてBの変調画像を生成する。Rの変調画像、Gの変調画像およびBの変調画像は、それぞれ、第1変調画像、第2変調画像および第3変調画像に対応する。
液晶パネル100Gには、使用条件を検出するセンサー240が設けられる。本実施形態では、センサー240は、当該液晶パネル100Gの温度を検出し、検出信号Tsとして出力する。
【0010】
液晶パネル100R、100Gおよび100Bによってそれぞれ生成された各色の変調画像は、ダイクロイックプリズム2112に三方向から入射する。そして、ダイクロイックプリズム2112において、RおよびBの光は90度に屈折する一方、Gの光は直進する。したがって、ダイクロイックプリズム2112が各色の変調画像を合成する。ダイクロイックプリズム2112により合成された変調画像は光学シフト素子230を介して投写レンズ2114に入射する。光学シフト素子230は、ダイクロイックプリズム2112からの出射光路をシフトさせる。詳細には、光学シフト素子230は、スクリーンScrに投写される画像を、投写面に左右方向と上下方向とにわたってシフト可能となっている。左右方向と上下方向は、それぞれ、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの横方向と縦方向に対応する。 投写レンズ2114は、光学シフト素子230および投写レンズ2114を順に介した合成像を、スクリーンScrに拡大して投写する。
【0011】
説明の便宜のため、スクリーンScrに投写される画素と、液晶パネル100R、100Gおよび100Bによる画素とを区別するために、スクリーンScrに投写される画素を投写画素と表記し、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの画素をパネル画素と表記する。また、光学シフト素子230を介した投写画素の位置を、単に投写位置と表記する。
なお、液晶パネル100R、100Bによる変調画像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投写されるのに対し、液晶パネル100Gによる変調画像はダイクロイックプリズム2112を直進して投写される。したがって、液晶パネル100R、100Bによる各変調画像は、液晶パネル100Gの変調画像に対して左右反転の関係にある。
【0012】
図2は、液晶プロジェクター1の電気的な構成を示すブロック図である。図に示されるように、液晶プロジェクター1は、上述した液晶パネル100R、100G、100B、光学シフト素子230およびセンサー240のほか、制御回路20を含む。
【0013】
制御回路20には、映像データVid-inが、図示省略されたホスト装置等の上位装置から同期信号Syncに同期してシリアルで供給される。映像データVid-inは、液晶プロジェクター1に表示させる画像を示すデータであり、詳細には、当該画像の画素における階調レベルを、例えばRGB毎に8ビットで指定する。説明の便宜上、映像データVid-inで示される画像の画素を、表示画素と表記する。
同期信号Syncには、映像データVid-inにおける垂直走査の開始を指示する垂直同期信号や、水平走査の開始を指示する水平同期信号、および、映像データVid-inの1画素分のタイミングを示すクロック信号が含まれる。
【0014】
本実施形態において、スクリーンScrに投写されるカラー画像は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの各変調画像を合成することで表現される。したがって、カラー画像の最小単位である画素は、液晶パネル100Rによる赤のパネル画素、液晶パネル100Gによる緑のパネル画素、および、液晶パネル100Bによる青のパネル画素に分けることができる。なお、赤のパネル画素、緑のパネル画素および青のパネル画素は、厳密にいえば、副画素と表記すべきであるが、本説明では、上述したようにパネル画素と表記する。
【0015】
液晶パネル100R、100Gおよび100Gについては、入射する光の色、すなわち波長だけが異なり、基本的な構造は共通である。そこで、液晶パネル100R、100Gおよび100Gについて、色を特定して説明する必要がない場合には、符号を100とする。
【0016】
制御回路20は、表示制御回路21、映像処理回路22を含む。
本実施形態において、映像データVid-inで指定される表示画素の配列は、液晶パネル100におけるパネル画素の配列と比較して、例えば縦方向で2倍、横方向で2倍となっている。この場合、液晶パネル100の解像度の4倍の解像度の情報を含む映像データVid-inが上位装置から入力される。
このため、本実施形態では、パネル画素の解像度よりも高い解像度で投写画素を視認させるために、投写位置が光学シフト素子230によってシフトされる。詳細には、映像データVidによって1フレームの画像を表示する場合、当該1フレームを表示するための期間を4つのサブフレームとし、サブフレーム毎に投写位置がシフトされる。このようなシフトによって、1つのパネル画素が、1フレーム(4サブフレーム)で、4つの表示画素が表示されているかのように視認される。
【0017】
表示制御回路21および映像処理回路22の説明の前に、液晶パネル100における1つのパネル画素によって、映像データVid-inで指定される4つの表示画素を表現するための具体的な手法について説明する。
【0018】
図3は、本実施形態におけるフレームとサブサブフレームとの関係を説明するための図である。この図に示されるように、本実施形態では、1つのフレームFは、4つのサブフレームに分割される。なお、フレームFにおける4つのサブフレームを便宜的に区別するために、符号が、時間の順にf1、f2、f3、f4と付与されている。
なお、フレームFの期間長は、同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzである場合、1周期の16.7ミリ秒である。この場合、サブフレームf1~f4の期間長は、それぞれ4.17ミリ秒になる。
【0019】
次に、映像データVid-inで階調レベルが指定される表示画素と、液晶パネル100によるパネル画素と、光学シフト素子230による投写位置と、の関係について説明する。なお、光学シフト素子230については、上述したようにダイクロイックプリズム2112からの投写方向をシフトさせるが、便宜的に当該シフト量については、スクリーンScrにおける投写画素(パネル画素)の大きさに換算する。
【0020】
図4における左欄は、映像データVidで示される表示画像のうち、一部だけを抜き出して示す図である。また、
図4における右欄は、パネル画素のうち、当該左欄における表示画素の配列に対応した配列を抜き出して示す図である。
【0021】
図4における映像データVidの表示画素の配列では、画素を区別するために、便宜的に符号として1行目にA1~A6が、2行目にB1~B6が、3行目にC1~C6が、4行目にD1~D6が、5行目にE1~E6が、6行目にF1~F6が、それぞれ付与されている。
図4におけるパネル画素の配列では、画素を区別するために、便宜的に符号として1行目にa1~a3が、2行目にb1~b3が、3行目にc1~c3が、それぞれ付与されている。
図4は、映像データVidで示される表示画素の配列では、太線枠で示される2×2の計4つの表示画素が1つのパネル画素で表現可能であることを示している。
【0022】
図5は、液晶プロジェクター1において、液晶パネル100のパネル画素が、映像データVid-inで示される表示画素を、どの投写位置で表示されるのかを示す図である。詳細には、
図5は、
図4におけるパネル画素の9個が、
図4の表示画素のうち、どの画素を、サブフレームf1~f4においてどの投写位置で表示するのかを示す図である。
図5の1段目は、サブフレームf1で、例えば、パネル画素a1は、表示画素A1に対応した情報を表示し、第1投写位置に投写することを示す。
図5の2段目は、次に続くサブフレームf2で、例えば、パネル画素a1は、表示画素A2に対応した情報を表示し、第2投写位置に投写することを示す。
図5の3段目は、次に続くサブフレームf3で、例えば、パネル画素a1は、表示画素B2に対応した情報を表示し、第3投写位置に投写することを示す。
図5の4段目は、次に続くサブフレームf4で、例えば、パネル画素a1は、表示画素B1に対応した情報を表示し、第4投写位置に投写することを示す。これにより、1つのフレームで、パネル画素a1を用いて、表示画素A1、A2、B2、B1に基づく高解像の画像を表示できる。本実施形態では、表示画素A1、表示画素A2、表示画素B2および表示画素のB1は、それぞれ、第1表示画素、第2表示画素、第3表示画素および第4表示画素に対応する。また、サブフレームf1、サブフレームf2、サブフレームf3およびサブフレームf4は、それぞれ、第1期間、第2期間、第3期間および第4期間に対応する。また、第1投写位置、第2投写位置、第3投写位置および第4投写位置は、それぞれ、合成像の出射光路が第1位置、第2位置、第3位置および第4位置に対応した投写位置である。
【0023】
便宜上、光学シフト素子230による投写位置を説明する際の基準を、フレームFのサブフレームf1における投写位置(A)とする。
サブフレームf1において、パネル画素a1~a3、b1~b3、c1~c3は、順に表示画素A1、A3、A5、C1、C3、C5、E1、E3およびE5を表示する。
ここで例えばパネル画素a1が表示画素A1を表現するとは、液晶パネル100Rのパネル画素a1は、映像データVid-inで示される表示画素A1のうち、R成分の階調レベルに相当する透過率となり、液晶パネル100Gのパネル画素a1は、映像データVid-inで示される表示画素A1のうち、G成分の階調レベルに相当する透過率となり、液晶パネル100Bのパネル画素a1は、映像データVid-inで示される表示画素A1のうち、B成分の階調レベルに相当する透過率となる、という意味である。
【0024】
次のサブフレームf2において、光学シフト素子230は、破線で示されるサブフレームf1での投写位置(A)から、図において右(Right)方向にパネル画素で0.5画素分シフトさせた投写位置(B)とする。また、サブフレームf2では、パネル画素a1~a3、b1~b3、c1~c3は、順に表示画素A2、A4、A6、C2、C4、C6、E2、E4およびE6を表示する。
【0025】
サブフレームf3において、光学シフト素子230は、破線で示されるサブフレームf2での投写位置(B)から、図において下(Down)方向にパネル画素でみて0.5画素分シフトさせた投写位置(C)とする。また、サブフレームf3では、パネル画素a1~a3、b1~b3、c1~c3は、順に表示画素B2、B4、B6、D2、D4、D6、F2、F4およびF6を表示する。
【0026】
そして、サブフレームf4において、光学シフト素子230は、破線で示されるサブフレームf3での投写位置(C)から、図において左(Left)方向にパネル画素でみて0.5画素分シフトさせた投写位置(D)とする。また、サブフレームf4では、パネル画素a1~a3、b1~b3、c1~c3は、順に表示画素B1、B3、B5、D1、D3、D5、F1、F3およびF5を表示する。
サブフレームf4の後、光学シフト素子230は、破線で示されるサブフレームf4の投写位置(D)から、図において上(Up)方向にパネル画素でみて0.5画素分にシフトさせてサブフレームf1における投写位置(A)に戻す。
【0027】
再び説明を
図2に戻すと、表示制御回路21は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの走査をサブフレーム毎に制御するための制御信号Ctrを生成する。表示制御回路21は、サブフレーム毎に光学シフト素子230による投写位置を制御するための制御信号Lacを出力する。
【0028】
なお、表示制御回路21は、制御信号Lacの出力に際し、後述するようにセンサー240で検出された温度を反映させる。制御信号Lacには、スクリーンScrにおいて投写位置を上下方向にシフトさせる制御信号Lac_Yと、左右方向にシフトさせる制御信号Lac_Xとが含まれる。具体的には、光学シフト素子230による投写位置のうち、上下方向が制御信号Lac_Yの電圧で指定され、左右方向が制御信号Lac_Xの電圧で指定される。
【0029】
より具体的には、光学シフト素子230は、制御信号Lac_Yの電圧が最高値であれば、投写位置を(A)または(B)とし、最低値であれば、投写位置を(C)または(D)とする。光学シフト素子230は、制御信号Lac_Yの電圧が最高値から最低値までであれば、当該電圧に応じて、投写位置(A)または(B)から投写位置(C)または(D)までの間の位置とさせる。
すなわち、投写面における上下方向の投写位置は、制御信号Lac_Yの電圧が一定であれば、移動せずに固定となり、制御信号Lac_Yの電圧が変化すれば、当該電圧変化の傾きに応じた速度でシフトする。
【0030】
また、光学シフト素子230は、制御信号Lac_Xの電圧が最高値であれば、投写位置を(A)または(D)とし、最低値であれば、投写位置を(B)または(C)とする。光学シフト素子230は、制御信号Lac_Xの電圧が最高値から最低値までであれば、当該電圧に応じて、投写位置(A)または(D)から投写位置(B)または(C)までの間の位置とさせる。
すなわち、投写面における左右方向の投写位置は、制御信号Lac_Xの電圧が一定であれば、移動せずに固定となり、制御信号Lac_Xの電圧が変化すれば、当該電圧変化の傾きに応じた速度でシフトする。
【0031】
映像処理回路22は、映像データVid-inを一旦蓄積し、蓄積した映像データVid-inのうち、サブフレームで表示すべき画素に対応する映像データを読み出し、読み出した映像データをアナログ信号に変換して、データ信号Vid-R、Vid-GおよびVid-Bとして出力する。このうち、データ信号Vid-Rは、映像データVid-inのうち、Rの成分を変換した信号であり、液晶パネル100Rに供給される。同様に、データ信号Vid-Gは、映像データVid-inのうち、Gの成分を変換した信号であり、液晶パネル100Gに供給される。データ信号Vid-Bは、映像データVid-inのうち、Bの成分を変換した信号であり、液晶パネル100Bに供給される。
【0032】
次に、液晶パネル100R、100Gおよび100Gについて、色を特定しないで一般的に説明する。
【0033】
図6は、液晶パネル100の電気的な構成を示すブロック図である。液晶パネル100には、表示領域10の周縁に、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140が設けられる。
【0034】
液晶パネル100の表示領域10においては、画素回路110がマトリクス状に配列する。詳細には、表示領域10において、複数本の走査線12が図において横方向に延在して設けられ、また、複数本のデータ線14が図において縦方向に延在し、かつ、走査線12と互いに電気的な絶縁を保って設けられる。そして、複数本の走査線12と複数本のデータ線14との交差に対応して画素回路110がマトリクス状に設けられる。
【0035】
走査線12の本数をmとし、データ線14の本数をnとした場合、画素回路110は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。m、nは、いずれも2以上の整数である。走査線12と画素回路110とにおいて、マトリクスの行を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線14および画素回路110において、マトリクスの列を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、n列と呼ぶ場合がある。
【0036】
走査線駆動回路130は、表示制御回路21による制御にしたがって、走査線12を例えば1、2、3、…、m行目という順番で1本ずつ選択し、選択した走査線12への走査信号をHレベルとする。なお、走査線駆動回路130は、選択した走査線12以外の走査線12への走査信号をLレベルとする。
データ線駆動回路140は、映像処理回路22から供給されたデータ信号を、表示制御回路21による制御にしたがって1行分ラッチし、走査線12への走査信号がHレベルとなった期間に当該走査線12に位置する画素回路110に、データ線14を介して出力する。
【0037】
図7は、隣り合う2本の走査線12と、隣り合う2本のデータ線14との交差に対応する2行2列の計4個の、画素回路110の等価回路を示す図である。
図に示されるように、画素回路110は、トランジスター116と液晶素子120とを含む。トランジスター116は、例えばnチャネル型の薄膜トランジスターである。画素回路110において、トランジスター116のゲートノードは、走査線12に接続される一方、そのソースノードはデータ線14に接続され、そのドレインノードは、平面視で略正方形の画素電極118に接続される。
【0038】
画素電極118に対向するようにコモン電極108が全画素回路に対して共通に設けられる。コモン電極108には電圧LCcomが印加される。そして、画素電極118とコモン電極108との間には液晶105が挟持される。したがって、画素回路110毎に、画素電極118およびコモン電極108によって液晶105を挟持した液晶素子120が構成される。
なお、液晶素子120に対して並列に蓄積容量が設けられることもあるが、本件では重要ではないので省略されている。
【0039】
走査信号がHレベルとなった走査線12では、当該走査線12に対応して設けられる画素回路110のトランジスター116がオンする。トランジスター116のオンにより、データ線14と画素電極118とが電気的に接続された状態となるので、データ線14に供給されたデータ信号が、オンしたトランジスター116を介して画素電極118に到達する。走査線12がLレベルになると、トランジスター116はオフになるが、画素電極118に到達したデータ信号の電圧は、液晶素子120の容量性によって保持される。
【0040】
周知のように、液晶素子120では、画素電極118およびコモン電極108によって生じる電界に応じて液晶分子の配向が変化する。したがって、液晶素子120は、印加された電圧の実効値に応じた透過率となる。なお、本実施形態では、液晶素子120は、印加電圧が高くなるにつれて、透過率が高くなるノーマリーブラックモードである。
【0041】
液晶素子120の画素電極118にデータ信号を供給する動作が、1サブフレームの期間において、1、2、3、…、m行目という順番で実行されることによって、m行n列で配列する画素回路110の液晶素子120の各々にデータ信号に応じた電圧が保持される。このような電圧の保持によって各液晶素子120が目的とする透過率となり、m行n列で配列する液晶素子120によって、対応する色の変調画像が生成される。
【0042】
図8は、走査線12の選択推移、液晶素子120の光学応答、および、光学シフト素子230による投写位置の関係の一例を示す図である。
【0043】
なお、
図8において走査線12の選択推移では、走査線12の1行目からm行目までを縦軸にとり、経過時間を横軸とったときに、選択される走査線12が時間的にどうように移行するかが示される。走査線12が選択される状態を黒の太線で示したとき、走査線12はサブフレームf1~f4の各期間において1行ずつ排他的に選択される。この選択の順序は、上述したように1、2、3、…、m行目である。
あるサブフレームにおいて、ある走査線12が選択されたとき、あるデータ線14には、次のようなデータ信号が供給される。詳細には、あるデータ線14には、当該パネル画素に対応した4つの表示画素のうち、当該サブフレームに対応した位置の表示画素の映像データVin-inを、アナログに変換したデータ信号が供給される。
【0044】
液晶素子120の光学応答は、ここでは説明を簡略化するために、すべてのパネル画素を、サブフレームf1、f3において最高の階調レベルに相当するデータ信号を印加し、サブフレームf2、f4において最低の階調レベルに相当するデータ信号を印加した場合について説明する。なお、ここでは代表して1行目、m行目、そして中間の(m/2)行目に位置する液晶素子120の光学応答を示している。
【0045】
周知のように、液晶素子120の光学応答、すなわち液晶素子120の印加電圧に対する透過率の変化特性は、時間的な遅れを伴って緩慢に変化する。例えば、
図8において、1行目の走査線12に位置する液晶素子120の透過率は、1行目の走査線12がHレベルとなるタイミングt1において最高の階調レベルに相当するデータ信号が当該液晶素子120の画素電極118に印加されても、直ちに100%とはならず、時間遅れを伴った積分波形のように徐々に上昇する。なお、液晶素子120の印加電圧は、画素電極118に印加された電圧とコモン電極108に印加された電圧との差である。
【0046】
液晶素子120の画素電極118にデータ信号の電圧が印加されるタイミングは、図に示されるように、当該液晶素子120に対応する走査線12の行が小さいほど早く、行が大きいほど遅い。第1行から第m行に向かって走査が行われるため、すべてのパネル画素を同じ透過率に書き換える場合であっても、各行において透過率が異なる状況が発生する。なお、この場合に、各サブフレームに対応する投写位置でユーザーに視認させるべき投写画素の透過率は0%または100%の状態である。
【0047】
そこで、光学シフト素子230は、例えば中間の(m/2)行目における実際の透過率が目的とする値に近くなる期間で、当該サブフレームの投写位置となるように制御され、他の期間では、投写位置を移動するように制御される。詳細には、例えばサブフレームf1において最高の階調レベルに相当するデータ信号が印加された場合、中間の(m/2)行目における液晶素子120の透過率が目的の100%と同視できる値となるタイミングt21からt22までの期間で、光学シフト素子230が、投写位置(A)に固定される。なお、t22は、次のサブフレームf2において(m/2)行目の走査線12がHレベルとなるタイミング、すなわち、透過率が目的の100%を維持する期間の終期のタイミングである。
同様に、例えばサブフレームf2において最低の階調レベルに相当するデータ信号が印加された場合、(m/2)行目における液晶素子120の透過率が目的の0%と同視できる値となるタイミングt23からt24までの期間で、光学シフト素子230が、投写位置(B)に固定される。なお、t24は、サブフレームf3において(m/2)行目の走査線12がHレベルとなるタイミング、すなわち、透過率が目的の0%を維持する期間の終期のタイミングである。
また、タイミングt25からt26までの期間で、光学シフト素子230が、サブフレームの投写位置(C)に固定される。また、タイミングt27から次のフレームのt20までの期間で、光学シフト素子230が、投写位置(D)に固定される。
【0048】
なお、タイミングt22からt23までは、光学シフト素子230は、投写位置(A)から投写位置(B)までシフトするように制御される。同様に、光学シフト素子230は、タイミングt24からt25までは投写位置(B)から投写位置(C)までシフトするように制御され、タイミングt26からt27までは投写位置(C)から投写位置(D)までシフトするように制御され、タイミングt20からt21までは投写位置(D)から投写位置(A)までシフトするように制御される。
【0049】
図9は、光学シフト素子230による投写位置と、制御信号Lac_Y、Lac_Xとの関係を示す図である。
詳細には、制御信号Lac_Yの電圧は、タイミングt20からt21までの期間において最低値から最高値まで上昇し、タイミングt24まで最高値を維持し、タイミングt24からt25までの期間において最高値から最低値まで低下し、次のフレームのタイミングt20まで最低値を維持する。
また、制御信号Lac_Xの電圧は、タイミングt22からt23までの期間で最高値から最低値まで低下し、タイミングt26まで最低値を維持し、タイミングt26からt27までの期間で最低値から最高値まで上昇し、次フレームのタイミングt22まで最高値を維持する。
【0050】
なお、中間の(m/2)行目における液晶素子120の透過率が目的値となるように、光学シフト素子230の投写位置を制御する場合、他の行については、特に1行目とm行目とについては、目的値から乖離した透過率の状態で投写位置が固定されるが、表示領域10の中心から離れているので、表示品位の低下として視認されにくい。
【0051】
ところで、液晶プロジェクター1において、液晶パネル100R、100Gおよび100Bでは、直視パネルと比較して、極めて高い光束の光が入射するので、温度変化が著しい。具体的には、液晶素子120では、温度が高くなるにつれて、電気的な変化にする光学応答が速くなる。
したがって、光学シフト素子230のシフト動作を、液晶素子120の光学応答に追従させないと、所定の投写位置に、目的とする透過率に至っていない投写画素が視認されることになり、解像度を擬似的に高める効果が低下する。
そこで、本実施形態では、センサー240によって液晶パネル100Gの温度を検出し、当該検出した温度に基づいて光学シフト素子230によるシフト動作を制御することした。具体的には、温度が高い程、投写位置を固定する時間を長くし、投写位置をシフトさせる期間を短くするように制御する。
【0052】
なお、本実施形態において、センサー240によって、Gの光が入射する液晶パネル100Gの温度を検出する理由は、一般に、緑の視認性が赤および青と比較して高いためである。具体的には、液晶パネル100Gによる変調画像が目的とする投写位置で視認されないと、その影響が大きくなり、表示品位の低下につながりやすいためである。センサー240の個数が増えるが、センサー240を液晶パネル100Rまたは/および液晶パネル100Bに設けてもよい。
【0053】
図10は、光学シフト素子230の制御するにあたって、投写位置の固定期間およびシフト期間の設定処理を示すフローチャートである。
まず、表示制御回路21は、センサー240による検出信号Tsから液晶パネル100Gの温度を取得する(ステップS11)。例えば、センサー240が抵抗素子であれば、当該抵抗値が温度に応じて変化するので、表示制御回路21は、検出信号Tsで示される抵抗値を変換して、液晶パネル100Gの温度を取得する。
【0054】
次に、表示制御回路21は、取得した温度に対応した制御信号Lacの傾きに取得する(ステップS12)。例えば表示制御回路21は、温度と傾きの大きさとの関係を予め対応付けて記憶するルックアップテーブルを有し、取得した温度を、当該ルックアップテーブルを参照して傾きの大きさに変換する。ルックアップテーブルでは、温度を第1値、第2値等として記憶し、例えば、第2値は、第1値より高い温度に対応する
表示制御回路21は、取得した傾きの大きさを制御信号Lac_XおよびLac_Xに適用する(ステップS13)。具体的には、表示制御回路21は、制御信号Lac_Yがタイミングt20で立ち上がる際の傾き、タイミングt24で立ち下がる際の傾き、制御信号Lac_Xがタイミングt22で立ち下がる際の傾き、および、タイミングt26で立ち上がる際の傾きの4つを、ステップS12において取得した傾きの大きさに変更する。
そして、傾きの大きさを変更後、表示制御回路21は、この設定処理において所定の時間、例えば5分間だけ待機する(ステップS14)。
【0055】
待機後、表示制御回路21は、処理手順をステップS11に戻す。したがって、ステップS11~S14の設定処理は、上記所定の時間間隔毎に繰り返して実行される。
【0056】
液晶パネル100Gの温度が上昇した場合、液晶素子120の光学応答は、
図11に示されるように、タイミングt20、t22、t24、t26を起点として早まる。なお、
図11の光学応答における破線は、
図9の光学応答、すなわち温度が相対的に低い場合の光学応答を示す。
本実施形態によれば、液晶パネル100Gの温度が上昇した場合、タイミングt20、t22、t24、t26を始期とするシフト期間が短くなり、その分、投写位置(A)、(B)、(C)、(D)に固定される期間が長く確保される。なお、
図11の投写位置における破線は、
図9の投写位置、すなわち温度が低い場合の投写位置を示す。
また例えば電源投入直後のように、液晶パネル100Gの温度が比較的低い場合、タイミングt20、t22、t24、t26を始期とするシフト期間が長くなるので、目的とする透過率となっていない状態で投写位置(A)、(B)、(C)、(D)に固定されることが抑えられる。
【0057】
このように、本実施形態によれば、液晶パネル100Gの温度に応じて、投写位置の固定期間およびシフト期間が制御されるので、表示品位の低下を抑えることができる。
また、本実施形態において、シフト期間は、液晶素子120の透過率が目的とする値に変化する期間であるから、移動用の専用画像を挿入する構成と比較して、明るさが低下することがないし、移動用の専用画像を挿入する構成も不要である。
【0058】
実施形態に係る液晶プロジェクター1では、実施形態に限られるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0059】
実施形態では、ノーマリーブラックモードで説明したが、ノーマリーホワイトモードとしてもよい。また、液晶パネル100R、100G、100Bを透過型としたが、反射型としてもよい。液晶パネル100R、100G、100Bを反射型とする場合、透過率を反射率に読み替えればよい。
【0060】
液晶プロジェクター1は、液晶パネル100R、100G、100Bを含む三板式としたが、例えばGとRとの間にY(イエロー)を追加して四板式として、色再現性を高めてもよい。また、カラー画像でなく、濃淡のみのモノクロ画像を表示する単板式にも適用可能である。
【0061】
センサー240は液晶パネル100Gとは別体ではなく、液晶パネル100Gに検出用配線を形成し、当該検出用配線の抵抗が温度によって変化する内蔵型でもよい。また、センサー240としては、液晶パネル100Gとは別体のセンサーを、液晶パネル100Gに接触させて用いてもよいし、液晶パネル100Gとは非接触で、表示領域10における温度と相関性の高い部位の温度を検出してもよい。また、センサー240は、液晶応答に影響を与える使用条件を検出するものであればよく、セルギャップセンサー、歪センサー等でもよい。
【0062】
実施形態において、光学シフト素子230は、投写面に上下方向および左右方向の2軸でシフトする構成としたが、例えば上下方向、左右方向または斜め方向の1軸でシフトする構成としてもよい。
【0063】
以上に説明した実施形態および変形例(以下、実施形態等と表記する)から、例えば以下の態様が把握される。
【0064】
ひとつの態様(態様1)に係る液晶プロジェクターは、変調画像を生成する液晶パネルと、前記液晶パネルの温度を検出するセンサーと、前記液晶パネルにより生成された変調画像の出射光路をシフトさせる光学シフト素子と、前記センサーで検出された温度に応じて、前記光学シフト素子におけるシフトの速度を制御する制御回路と、を含む。
この態様によれば、温度によって液晶パネルの光学応答が変化しても、検出された温度に応じて光学シフト素子によるシフトの速度が変化するので、目的値とは異なる透過率または反射率が投写位置で視認されることによる表示品位の低下を抑えることができる。
【0065】
態様1の具体的な態様(態様2)では、前記制御回路は、前記センサーで検出された温度が第1値よりも高い第2値である場合、前記光学シフト素子における出射光路を、前記第1値である場合の速度よりも高い速度でシフトさせる。
この態様によれば、温度が高くなって、光学応答が速くなれば、当該光学応答に合わせてシフトの速度も速くなる。
【0066】
別の態様(態様3)に係る液晶プロジェクターは、第1色光の第1変調画像を生成する第1液晶パネルと、前記第1色光の波長よりも短い第2色光の第2変調画像を生成する第2液晶パネルと、前記第2色光の波長よりも短い第3色光の第3変調画像を生成する第3液晶パネルと、前記第1変調画像、前記第2変調画像および前記第3変調画像を合成する合成部と、前記合成部による合成像の出射光路をシフトさせる光学シフト素子と、前記第2液晶パネルの温度を検出するセンサーと、前記センサーで検出された温度に応じて、前記光学シフト素子におけるシフトの速度を制御する制御回路と、を含む。
この異様によれば、カラー画像を投写する液晶プロジェクターにおいて、目的値とは異なる透過率または反射率が投写位置で視認されることによる表示品位の低下を抑えることができる。なお、赤色光が第1色光の一例であり、緑色光が第2色光の一例であり、青色光が第3色光の一例である。また、液晶パネル100Rが第1液晶パネルの一例であり、液晶パネル100Gが第2液晶パネルの一例であり、液晶パネル100Bが第3液晶パネルの一例である。
【0067】
さらに別の態様(態様4)に係る液晶プロジェクターは、第1色光の第1変調画像を生成する第1液晶パネルと、前記第1色光の波長よりも短い第2色光の第2変調画像を生成する第2液晶パネルと、前記第2色光の波長よりも短い第3色光の第3変調画像を生成する第3液晶パネルと、前記第1変調画像、前記第2変調画像および前記第3変調画像を合成する合成部と、前記合成部による合成像の出射光路をシフトさせる光学シフト素子と、前記第2液晶パネルの温度を検出するセンサーと、前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記光学シフト素子を制御する制御回路と、を含み、前記制御回路は、前記出射光路を、第1期間で第1位置にシフトさせ、前記第1期間の後の第2期間で第2位置にシフトさせ、前記第1期間で、前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記第3液晶パネルにおける一のパネル画素を、映像データで指定される第1表示画素の階調レベルのうち、順に、前記第1色光の階調レベル、前記第2色光の階調レベルおよび前記第3色光の階調レベルとし、前記第2期間で、前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記第3液晶パネルにおける前記一のパネル画素を、前記映像データで指定される第2表示画素の階調レベルのうち、順に、前記第1色光の階調レベル、前記第2色光の階調レベルおよび前記第3色光の階調レベルとし、前記センサーで検出された温度に応じて、前記第1位置から前記第2位置までシフトする速度を制御する。
この異様によれば、カラー画像を投写する液晶プロジェクターにおいて、表示品位の低下を抑えることができる。
なお、例えば投写位置(A)が第1位置の一例であり、投写位置(B)が第2位置の一例である。また、表示画素A1が第1表示画素の一例であり、表示画素A2が第2表示画素の一例であり、パネル画素a1が一のパネル画素の一例である。
態様5は、態様1に係る液晶プロジェクターを、液晶プロジェクターの制御方法として表現したものである。
【符号の説明】
【0068】
1…液晶プロジェクター、20…制御回路、21…走査制御回路、22…映像処理回路、100、100R、100G、100B…液晶パネル、110…画素回路、120…液晶素子、230…光学シフト素子、240…センサー。