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特許7567391分散液、インクジェット記録用インク組成物、及び分散樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】分散液、インクジェット記録用インク組成物、及び分散樹脂
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/328 20140101AFI20241008BHJP
   C08F 234/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C09D11/328
C08F234/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020192510
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081147
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 幸一
(72)【発明者】
【氏名】戸治野 真美
(72)【発明者】
【氏名】大竹 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘
(72)【発明者】
【氏名】堀場 幸治
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-106875(JP,A)
【文献】特開2013-036013(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042482(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/125845(WO,A1)
【文献】特開2014-173039(JP,A)
【文献】特開平07-144126(JP,A)
【文献】米国特許第05596051(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
C08F
B41M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、色材と、該色材を分散する分散樹脂と、を含み、
前記分散樹脂が、下記式(1)で表される構成単位Aと、下記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される構成単位Bと、下記式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される構成単位Cと、を有する、
分散液。
【化1】
(式中、R1は、独立して、炭素数1~20の2価の有機基を示し、R2は、独立して、スルホ基又はその塩を示す。)
【化2】
(式中、R3は、独立して、炭素数1~20の1価の有機基を示し、R4は、独立して、炭素数1~12の二価の有機基を示し、R5は、独立して、炭素数1~12の有機基を示す。)
【化3】
(式中、R6は、独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を示す。)
【請求項2】
前記構成単位Aの含有量が、前記分散樹脂の総量に対して、5~55mol%である、
請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記構成単位Bの含有量が、前記分散樹脂の総量に対して、1~20mol%である、
請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
前記構成単位Cの含有量が、前記分散樹脂の総量に対して、40~90mol%である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項5】
前記構成単位Cの含有量が、前記分散樹脂の総量に対して、50~75mol%である、
請求項4に記載の分散液。
【請求項6】
前記分散樹脂が、下記式(4)で表される構成単位Dをさらに有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の分散液。
【化4】
(式中、R7は、独立して、水素原子又はメチル基を示し、R8は、独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を示す。)
【請求項7】
前記構成単位Dの含有量が、前記分散樹脂の総量に対して、1~20mol%である、
請求項6に記載の分散液。
【請求項8】
前記構成単位Aが、N-メタンスルホン酸マレイミド、N-エタンスルホン酸マレイミド、N-プロパンスルホン酸マレイミド、Nベンゼンスルホン酸マレイミド、及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項9】
前記構成単位Bが、N-ベンジルマレイミド、及び3-ブトキシプロピルマレイミドからなる群より選ばれる1種以上を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項10】
前記構成単位Cが、スチレン、アリルベンゼン、ビニルトルエン、1-ビニルナフタレン、及び2-ビニルナフタレンからなる群より選ばれる1種以上を含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項11】
前記分散樹脂の重量平均分子量が、10000~60000である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項12】
前記色材が、分散染料である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の分散液と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、を含む、
インクジェット記録用インク組成物。
【請求項14】
下記式(1)で表される構成単位Aと、下記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される構成単位Bと、下記式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される構成単位Cと、を有する、
分散樹脂。
【化5】
(式中、R1は、独立して、炭素数1~20の2価の有機基を示し、R2は、独立して、スルホ基又はその塩を示す。)
【化6】
(式中、R3は、独立して、炭素数1~20の1価の有機基を示し、R4は、独立して、炭素数1~12の二価の有機基を示し、R5は、独立して、炭素数1~12の有機基を示す。)
【化7】
(式中、R6は、独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液、インクジェット記録用インク組成物、及び分散樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、インク中の色材の分散性についても種々の検討がなされている。
【0003】
ところで、色材の分散性向上の一つの方法として、分散剤を用いることが考えられる。例えば、特許文献1には、分散剤として、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂を用いたインクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-048437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のスチレン-アクリル系樹脂など従来の分散剤を含むインク組成物は、インクが乾燥して色材が固化すると、その後、再分散し難く、乾燥後に再吐出したときの不具合を発生させやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水と、色材と、該色材を分散する分散樹脂と、を含み、分散樹脂が、下記式(1)で表される構成単位Aと、下記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される構成単位Bと、下記式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される構成単位Cと、を有する、分散液である。
【化1】
(式中、R1は、独立して、炭素数1~20の2価の有機基を示し、R2は、独立して、スルホ基又はその塩を示す。)
【化2】
(式中、R3は、独立して、炭素数1~20の1価の有機基を示し、R4は、独立して、炭素数1~12の二価の有機基を示し、R5は、独立して、炭素数1~12の有機基を示す。)
【化3】
(式中、R6は、独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を示す。)
【0007】
また、本発明は、上記分散液と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、を含む、インクジェット記録用インク組成物である。
【0008】
さらに、本発明は、上記式(1)で表される構成単位Aと、上記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される構成単位Bと、上記式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される構成単位Cと、を有する分散樹脂である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
1.分散液
本実施形態の分散液は、水と、色材と、該色材を分散する分散樹脂と、を含み、分散樹脂が、下記式(1)で表される構成単位Aと、下記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される構成単位Bと、下記式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される構成単位Cと、を有する。
【化4】
(式中、R1は、独立して、炭素数1~20の2価の有機基を示し、R2は、独立して、スルホ基又はその塩を示す。)
【化5】
(式中、R3は、独立して、炭素数1~20の1価の有機基を示し、R4は、独立して、炭素数1~12の二価の有機基を示し、R5は、独立して、炭素数1~12の有機基を示す。)
【化6】
(式中、R6は、独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を示す。)
【0011】
従来の分散樹脂を用いた分散液又はインク組成物は、一度色材が固化すると、再分散し難いという問題がある。これに対して、本実施形態においては、上記構成を有する分散樹脂を用いることにより、固化した色材が容易に再分散することを可能とし、また、高温下で保管した場合であっても、色材粒子の粒子径や分散液の粘度変化が少なく、これにより分散液を用いたインクジェット記録用インク組成物の目詰まりの防止や吐出安定性をより向上することが可能となる。以下、各成分について詳説する。
【0012】
1.1.分散樹脂
分散樹脂は、上記式(1)で表される構成単位Aと、上記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される構成単位Bと、上記式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される構成単位Cと、を有し、必要に応じて、後述する構成単位Dを有していてもよい。なお、本実施形態において、「構成単位」とは、重合後に分散樹脂の一部を構成する繰り返し単位をいい、「単量体」とは、重合前の重合性不飽和結合を有するモノマーをいう。
【0013】
分散樹脂は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、グラフト共重合体であってよい。ブロック共重合体としては、構成単位Aから構成されるブロックAと、構成単位Bから構成されるブロックBと、構成単位Cから構成されるブロックCとを有するトリブロック共重合体の他、構成単位Aから構成されるブロックAと、構成単位B及び構成単位Cから構成されるランダムブロックB/Cとを有するジブロック共重合体などが挙げられる。また、グラフト共重合体としては、スチレンマレイン酸共重合体のマレイン酸を含む構成単位を構成単位Aに変性したものが挙げられる。このような分散樹脂を用いることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0014】
分散樹脂の含有量は、分散液の総量に対して、好ましくは2.5~12.5質量%であり、より好ましくは3.5~10質量%であり、さらに好ましくは4.5~9.0質量%である。分散樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0015】
また、分散樹脂の含有量は、色材100質量部に対して、好ましくは20~100質量部であり、より好ましくは30~80質量部であり、さらに好ましくは40~70質量部である。分散樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0016】
1.1.1.構成単位A
構成単位Aは、下記式(1)で表される構成単位である。構成単位Aを構成する単量体は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【化7】
(式中、R1は、独立して、炭素数1~20の2価の有機基を示し、R2は、独立して、スルホ基又はその塩を示す。)
【0017】
式中、R1により表される炭素数1~20の2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレン-シクロアルキレン基等)、2価の芳香族炭化水素基(アリーレン基、アルキレン-アリーレン基等)等が挙げられる。
【0018】
このなかでも、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。アルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ペンチレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が挙げられる。
【0019】
また、R1により表される2価の有機基の炭素数は、1~20であり、好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8である。
【0020】
2により表されるスルホ基の塩としては、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0021】
このなかでも、構成単位Aを構成する単量体としては、N-メタンスルホン酸マレイミド、N-エタンスルホン酸マレイミド、N-プロパンスルホン酸マレイミド、N-ベンゼンスルホン酸マレイミド、及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。このような構成単位Aを用いることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0022】
構成単位Aの含有量は、分散樹脂の総量に対して、好ましくは5~55mol%以上であり、より好ましくは10~50mol%であり、さらに好ましくは10~45mol%である。構成単位Aの含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0023】
1.1.2.構成単位B
構成単位Bは、下記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される構成単位である。構成単位Bを構成する単量体は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【化8】
(式中、R3は、独立して、炭素数1~20の1価の有機基を示し、R4は、独立して、炭素数1~12の二価の有機基を示し、R5は、独立して、炭素数1~12の有機基を示す。)
【0024】
式中、R3により表される炭素数1~20の1価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、1価の脂肪族炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アルキル-シクロアルキル基等)、1価の芳香族炭化水素基(アリール基、アルキル-アリール基等)等が挙げられる。このなかでも、1価の芳香族炭化水素基が好ましく、ベンジル基等のアルキル-アリール基がより好ましい。
【0025】
また、R3により表される1価の有機基の炭素数は、1~20であり、好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8である。
【0026】
式中、R4により表される炭素数1~12の2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレン-シクロアルキレン基等)、2価の芳香族炭化水素基(アリーレン基、アルキレン-アリーレン基等)等が挙げられる。
【0027】
このなかでも、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。アルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ペンチレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基が挙げられる。
【0028】
また、R4により表される1価の有機基の炭素数は、1~12であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~4である。
【0029】
式中、R5で表される炭素数1~12の1価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、1価の脂肪族炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アルキル-シクロアルキル基等)、1価の芳香族炭化水素基(アリール基、アルキル-アリール基等)等が挙げられる。このなかでも、1価の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基等のアリール基がより好ましい。
【0030】
また、R3により表される1価の有機基の炭素数は、1~20であり、好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8である。
【0031】
構成単位Bの含有量は、分散樹脂の総量に対して、好ましくは1~20mol%以上であり、より好ましくは3~15mol%であり、さらに好ましくは5~10mol%である。構成単位Bの含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0032】
1.1.3.構成単位C
構成単位Cは、下記式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される構成単位である。構成単位Cを構成する単量体は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【化9】
(式中、R6は、独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を示す。)
【0033】
6で表される炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基を用いることができる。このようなアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。
【0034】
6で表される炭素数1~12のアルコキシ基としては、特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0035】
6で表されるアルキル基又はアルコキシ基の炭素数は、1~12であり、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~3である。
【0036】
このなかでも、構成単位Cを構成する単量体としては、スチレン、アリルベンゼン、ビニルトルエン、1-ビニルナフタレン、及び2-ビニルナフタレンからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。このような構成単位Cを用いることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0037】
構成単位Cの含有量は、分散樹脂の総量に対して、好ましくは40~90mol%であり、より好ましくは45~85mol%であり、さらに好ましくは50~75mol%である。構成単位Bの含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0038】
1.1.4.構成単位D
分散樹脂は、下記式(4)で表される構成単位Dをさらに有していてもよい。このような構成単位Dを有することにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【化10】
(式中、R7は、独立して、水素原子又はメチル基を示し、R8は、独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を示す。)
【0039】
8で表される炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基を用いることができる。このようなアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。
【0040】
8で表されるアルキル基の炭素数は、1~12であり、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~8である。
【0041】
このなかでも、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、及びメタクリル酸シクロヘキシルからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。このような構成単位Dを用いることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0042】
構成単位Dの含有量は、分散樹脂の総量に対して、好ましくは1~20mol%であり、より好ましくは3~15mol%であり、さらに好ましくは5~10mol%である。構成単位Dの含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0043】
1.1.5.その他の構成単位
本実施形態の分散樹脂は、上記構成単位以外の構成単位として、マレイン酸又はその誘導体を含む構成単位を有していてもよい。
【0044】
1.1.6.重量平均分子量
分散樹脂の重量平均分子量は、10000~60000であり、好ましくは12500~45000であり、より好ましくは15000~30000である。分散樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0045】
重量平均分子量は、公知の方法により、クロマトグラフィー法により測定することができる。より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
1.1.7.製造方法
本実施形態の分散樹脂は、上記各構成単位を構成する単量体を共重合させることにより得ることができる。重合反応は、特に制限されないが、例えば、ラジカル重合、特にはリビングラジカル重合を用いることができる。また、スチレンマレイン酸共重合体のマレイン酸を含む構成単位を構成単位A(マレイミド単位)に変性してもよい。
【0047】
1.2.水
水の含有量は、分散液の総量に対して、好ましくは60~95質量%であり、より好ましくは65~95質量%であり、さらに好ましくは75~90質量%である。
【0048】
1.3.色材
色材としては、特に制限されないが、例えば、分散染料や顔料が挙げられる。このなかでも分散染料が好ましい。分散染料を用いることにより、固化した後の再分散性がより向上するほか、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。色材は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0049】
分散染料としては、特に制限されず、C.I.ディスパースイエロー、C.I.ディスパースオレンジ、C.I.ディスパースブルー、C.I.ディスパースバイオレット、C.I.ディスパースブラックなど公知のものを用いることができる。
【0050】
無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンが挙げられる。
【0051】
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、及びアゾ系顔料等が挙げられる。
【0052】
色材の含有量は、分散液の総量に対して、好ましくは7.5~30質量%であり、より好ましくは7.5~25質量%であり、さらに好ましくは8.5~20質量%である。
【0053】
1.4.pH調整剤
分散液は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。pH調整剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0054】
2.インクジェット記録用インク組成物
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物(単に、「インク組成物」ともいう。)は、上記分散液と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、を含み、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。なお、「インクジェット記録用」とは、インクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出するインクジェット法により用いることを意味する。
【0055】
2.1.分散液
分散液については上記のとおりである。分散液とともにインク組成物に添加される上記分散樹脂の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1~3.5質量%であり、より好ましくは0.3~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.5~2.5質量%である。分散樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0056】
また、分散液とともにインク組成物に添加される上記色材の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.5~7.0質量%であり、より好ましくは1.0~6.0質量%であり、さらに好ましくは1.5~4.5質量%である。色材の含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0057】
インク組成物中において、分散樹脂の含有量は、色材100質量部に対して、好ましくは20~100質量部であり、より好ましくは30~80質量部であり、さらに好ましくは40~70質量部である。分散樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0058】
2.2.界面活性剤
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0059】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。
【0060】
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。
【0061】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。
【0062】
界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量に対し、好ましくは0.1~3.0質量%であり、より好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0063】
2.3.水溶性有機溶剤
水溶性有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、グリセリン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等の含窒素溶剤;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、Iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、Iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノール等のアルコール類が挙げられる。このなかでも、グリセリン、グリコール類やグリコールモノエーテル類が好ましく、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びグリセリンがより好ましい。水溶性有機溶剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0064】
水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量に対し、好ましくは5.0~30質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0065】
2.4.水
水の含有量は、インク組成物の総量に対し、好ましくは60~90質量%であり、より好ましくは70~85質量%である。水の含有量が上記範囲内であることにより、固化した後の再分散性がより向上し、高温下で保管した場合であっても、粒子径や粘度変化がより少なくなる傾向にある。
【0066】
2.5.pH調整剤
インク組成物は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。pH調整剤としては、特に限定されないが、分散液で例示したものを上げることができる。インク組成物におけるpH調整剤は、分散液に由来して混合されるものであってもよいし、インク組成物の調整時に別途添加されるものであってもよい。
【0067】
pH調整剤の含有量は、インク組成物の総量に対し、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0068】
2.6.その他の樹脂
インク組成物は、分散樹脂以外のその他の樹脂をさらに含んでいてもよい。その他の樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アニオン系樹脂、カチオン系樹脂、又はノニオン系樹脂が挙げられる。このような樹脂を含むことにより、色材を記録媒体に固着させることができる。
【0069】
カチオン系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、カチオンでんぷんなどのでんぷん誘導体、カチオン系のウレタン系樹脂、カチオン系のオレフィン系樹脂、及びカチオン系のアリルアミン系樹脂が挙げられる。
【0070】
アニオン系樹脂の例としては、カルボキシメチルセルロース塩、ビスコースなどのセルロース誘導体、アルギン酸塩、アラビアゴム、トラガントゴム、リグニンスルホン酸塩等
の天然樹脂類が挙げられる。
【0071】
ノニオン系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂が挙げられる。
【0072】
その他の樹脂の含有量は、インク組成物の総量に対し、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.5~1.5質量%である。
【実施例
【0073】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0074】
1.合成例
1.1.単量体合成
1.1.1.合成例1
還流冷却管及び温度計を備えた3つ口フラスコに、アミノメタンスルホン酸8.8g(東京化成工業社、80mmol)、無水マレイン酸7.84g(富士フィルム和光純薬工業社、80mmol)及び酢酸300mL(富士フィルム和光純薬工業社)を入れ、マグネティックスターラーを用いて、大気下、室温にて15時間攪拌した後、8時間加熱還流した。酢酸を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を分離し、再結晶することにより、下記式で表されるN-メタンスルホン酸マレイミド(a-1)(8.5g、収率55.6%)を得た。化合物の同定はプロトン核磁気共鳴分光法により行った。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm)=7.64(1H,s,SO3H)、6.75(2H,s,2×CH),3.58(2H,s,CH2
【化11】
【0075】
1.1.2.合成例2
アミノメタンスルホン酸の代わりに3-アミノプロパンスルホン酸を用いた以外は合成例1と同様に操作して、N-プロパンスルホン酸マレイミド(a-2)を得た。
【0076】
1.1.3.合成例3
アミノメタンスルホン酸の代わりに2-アミノエタンスルホン酸ナトリウム塩を用いた以外は合成例1と同様に操作して、N-エタンスルホン酸マレイミド(a-3)を得た。
【0077】
1.1.4.合成例4
アミノメタンスルホン酸の代わりにp-アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩を用いた以外は合成例1と同様に操作して、N-ベンゼンスルホン酸マレイミド(a-4)を得た。
【0078】
下記表1に、上記合成例1~4により得られた構成単位Aを構成する単量体の式(1)におけるR1及びR2を示す。
【表1】
【0079】
1.1.5.合成例5
アミノメタンスルホン酸の代わりにベンジルアミン(東京化成工業社製)を用いた以外は合成例1と同様に操作して、N-マレイミド単量体(b-1)を得た。
【0080】
1.1.6.合成例6
アミノメタンスルホン酸の代わりに3-ブトキシプロピルアミン(東京化成工業社製)を用いた以外は合成例1と同様に操作して、N-マレイミド単量体(b-2)を得た。
【0081】
1.1.7.合成例7
アミノメタンスルホン酸の代わりに2-フェノキシエチルアミン(東京化成工業社製)を用いた以外は合成例1と同様に操作して、N-マレイミド単量体(b-3)を得た。
【0082】
下記表2に、上記合成例5~7により得られた構成単位Bを構成する単量体の式(2-1)又は(2-2)におけるR3、R4、及びR5を示す。
【表2】
【0083】
1.2.共重合体合成
1.2.1.合成例8
還流冷却管及び温度計を備えた3つ口フラスコに、構造単位Aを与えるN-メタンスルホン酸マレイミド(a-1)5.74g(30mmol)、構造単位Bを与えるN-マレイミド単量体(b-1)11.0g(10mmol)、構造単位Cを与える単量体としてスチレン10.4g(東京化成工業社製、100mmol)、および、ジメチルスルホキシド60g(DMSO)(東京化成工業社製)を入れ、マグネティックスターラーを用いて溶解させた。また、別のガラス瓶にアゾビスイソブチロニトリル0.46g(富士フィルム和光純薬工業社製、2.8mmol)を入れてDMSO:20gで溶解させ開始剤溶液とした。窒素で反応器内を置換後、ここへ、開始剤溶液を滴下した。その後、75℃で5時間反応させた。反応終了後、反応物を水中に滴下して白色固体を析出させた。白色固体を吸引ろ過後、水で繰り返し洗浄、50℃にて10時間真空乾燥して共重合体A-1を13.2g得た。
【0084】
1.2.2.合成例9~14
表3に記載の単量体を用い、また各単量体と開始剤の使用量を調整したこと以外は、合成例8と同様にして、共重合体A-2~A-7を得た。
【0085】
1.2.3.合成例15
還流冷却管及び温度計を備えた3つ口フラスコに、構造単位Cを与える単量体としてスチレン8.32g(東京化成工業社製、80mmol)、2-{[(カルボキシメチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸(CSPA)(東京化成工業社製、9.6mmol)、アゾビスイソブチロニトリル0.52g(富士フィルム和光純薬工業社製、3.2mmol)、および、ジメチルホルムアミド(DMF)80g(東京化成工業社製)を入れ、マグネティックスターラーを用いて溶解させた。窒素バブリングによる脱気後、75℃で6時間加熱した。反応終了後、反応物を水中に滴下して単黄色固体を析出させた。得られた固体を濾別し、少量のメタノールで洗い、50℃にて10時間真空乾燥してポリスチレンRaft剤付加物(mb-1)を得た。
【0086】
続いて還流冷却管及び温度計を備えた3つ口フラスコに、このポリスチレンRaft剤付加物(mb-1)、構造単位Aを与えるN-メタンスルホン酸マレイミド(a-1)5.74g(30mmol)、構造単位Bを与えるN-マレイミド単量体(b-1)1.87g(10mmol)、構造単位Cを与える単量体としてスチレン10.4g(東京化成工業社製、100mmol)、アゾビスイソブチロニトリル0.52g(富士フィルム和光純薬工業社製、3.2mmol)、および、DMF60g(東京化成工業社製)を入れ、マグネティックスターラーを用いて溶解させた。窒素バブリングによる脱気後、75℃で6時間加熱した。反応終了後、反応液をメタノールで希釈し、メチルエチルケトン中に添加して淡黄色固体を析出させた。得られた固体を遠心分離により回収し、50℃にて10時間真空乾燥して共重合体B-1を19.5g得た。
【0087】
得られた共重合体B-1は、構成単位Cのブロックと、構成単位A、B、及びCのランダムブロックと、を有するブロック共重合体であった。
【0088】
1.2.4.合成例16
構成単位Aを与える単量体として表3に記載の単量体を用い、また用いる単量体の使用量を調整したこと以外は、合成例15と同様にして、共重合体B-2を得た。
【0089】
1.2.5.合成例17
還流冷却管及び温度計を備えた3つ口フラスコに、構造単位Cを含むスチレン無水マレイン酸共重合体7.5g(SMA EF60,スチレン/無水マレイン酸比:6/1、川原油化社製)のメチルエチルケトン(25mL)溶液に、構造単位Aを与える2-アミノエタンスルホン酸1.35g(東京化成工業社製)の10wt%水酸化ナトリウム水溶液(4.31g)と、構造単位Bを与えるベンジルアミン0.54gを添加し、窒素気流下100℃で1時間加熱撹拌した。一旦冷却し、蒸留装置を取り付け、メチルエチルケトンおよび水分を蒸留除去し、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体にN-メチルピロリドン6.0g(東京化成工業社製)を添加し、N2気流下、180℃で2.5時間加熱撹拌した。冷却後、黄色液体をイソプロピルアルコール(500ml)に添加し、析出した固体を濾別、少量のイソプロピルアルコールで洗浄して、50℃にて10時間真空乾燥して共重合体C-1を8.2g得た。
【0090】
1.2.6.合成例18~19
合成例18では、スチレン無水マレイン酸共重合体(SMA EF60)に代えて、スチレン無水マレイン酸共重合体(SMA EF40,スチレン/無水マレイン酸比:4/1)を用い、合成例19では、構造単位Aを与える2-アミノエタンスルホン酸に代えて、4-アミノベンゼンスルホン酸、およびスチレン無水マレイン酸共重合体(SMA EF60)に代えて、スチレン無水マレイン酸共重合体(SMA 3000,スチレン/無水マレイン酸比:3/1)を用いたこと以外は、合成例17と同様にして、共重合体C-2~C-3を得た。
【0091】
1.2.7.合成例20~21
構成単位Dを与える単量体として表3に記載の単量体をさらに用い、また単量体と開始剤の使用量を調整したこと以外は、合成例8と同様にして、共重合体D-1~D-2を得た。
【0092】
1.2.8.合成例22~23
ポリスチレンRaft剤付加物(mb-1)に、構成単位A、構成単位B、および構成単位Cに加えて構成単位Dを与える単量体として表3に記載の単量体をさらに用い、また単量体と開始剤の使用量を調整したこと以外は、合成例15~16と同様にして、共重合体E-1~E-2を得た。なお、得られた共重合体E-1~E-2は、構成単位Bのブロックと、構成単位A、B,C,及びDのランダムブロックと、を有するブロック共重合体であった。
【0093】
1.2.9.合成例24
還流冷却管及び温度計を備えた3つ口フラスコに、構造単位Cを与える単量体としてスチレン6.77g(東京化成工業社製、65mmol)、構造単位Dを与える単量体としてメタクリル酸メチル1.50g(東京化成工業製、15mmol)、およびDMSO(東京化成工業社製、80g)を入れ、マグネティックスターラーを用いて溶解させた。また、別のガラス瓶に無水マレイン酸1.96g(東京化成工業社製、20mmol)およびアゾビスイソブチロニトリル 0.52g(富士フィルム和光純薬工業社製、3.2mmol)を入れてDMSO25gで溶解させ開始剤混合溶液とした。窒素で反応器内を置換後、ここへ、開始剤混合溶液を滴下した。その後、75℃で6時間反応させた。反応終了後、反応物を水中に滴下して白色固体を析出させた。白色固体を吸引ろ過後、水で繰り返し洗浄、50℃にて10時間真空乾燥して共重合体(f-1)8.7gを得た。
【0094】
続いて、還流冷却管及び温度計を備えた3つ口フラスコに、得られた共重体(f-1,スチレン/無水マレイン酸/メタクリル酸メチル比:13/4/3)8.0gのメチルエチルケトン(25mL)溶液に、構造単位Aを与える2-アミノエタンスルホン酸2.5g(東京化成工業社製、20mmol)を10wt%水酸化ナトリウム水溶液(8.0g)に溶解させた水溶液を添加し、窒素気流下100℃で1時間加熱撹拌した。一旦冷却し、蒸留装置を取り付け、メチルエチルケトンおよび水分を蒸留除去し、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体に構造単位Bを与えるベンジルアミン 1.1g(東京化成工業社製)とN-メチルピロリドン6.0g(東京化成工業社製)を添加し、窒素気流下、180℃で2.5時間加熱撹拌した。冷却後、黄色液体をイソプロピルアルコール(500ml)に添加し、析出した固体を濾別、少量のイソプロピルアルコールで洗浄して、50℃にて10時間真空乾燥して共重合体F-1を7.5g得た。
【0095】
1.2.10.合成例25~27
合成例25と26では、構成単位Cを与える単量体として表3に記載の単量体を用い、また単量体と開始剤の使用量を調整したこと以外は、合成例24と同様にして、共重合体F-2~F-3を得た。また合成例27では、構造単位Aを与える2-アミノエタンスルホン酸に代えて、4-アミノベンゼンスルホン酸を用い、また単量体と開始剤の使用量を調整したこと以外は、合成例24と同様にして、共重合体F-4を得た。
【0096】
表3に、上記合成例により得らえた各共重合体の重量平均分子量Mwと、各構成単位の組成比を示す。
【0097】
【表3】
【0098】
1.3.NMR分析
各構成単位の組成比は、1H-NMR分析及び13C-NMR分析により確認した。NMR分析においては、核磁気共鳴装置(日本電子製、JNM-ECX400)を使用した。
【0099】
1.4.重量平均分子量
各分散樹脂の重量平均分子量Mwは、クロマトグラフィー法により測定した。条件を以下に示す。
(測定条件)
装置名 :HLC8320GPC(東ソー)
ガードカラム:TSKgel guarcolumn SuperAWM-H
カラム :TSKgel SuperAWM-H
カラム温度 :25℃
溶出液 :10mmol/L臭化リチウム ジメチルアセトアミド溶液
流速 :0.6 mL/mIn
検出器 :RI
【0100】
2.分散液の調製(実施例1~20及び比較例1~2)
1Lナス型フラスコ(撹拌子、ジムロート冷却管)をセットし、表4に記載の共重合体を15質量部、純水70質量部を加え、80℃に加熱撹拌した。ここに、トリエタノールアミンをpH8.0となるまで加え、純水で100質量部とした。25℃まで冷却後、溶解した水溶液をワニス液として用いた。
【0101】
次に、ジルコニアビーズと、ワニス液13質量部と、非水溶性色材としてDISPERSE RED 364(以下、「D.R.364」ともいう)又はDISPERSE BLUE 359(以下、「D.B.359」ともいう)4質量部と、純水17質量部と、を加えてビーズミルにて1時間粉砕し、共重合体5.7質量%と色材11.7質量%を含む分散液を調製した。
【0102】
3.インク組成物の調製
下記組成となるように、上記のようにして得られた分散液とその他の成分を混合し、各インク組成物を得た。
分散液 15.0質量%
有機溶剤 ジエチレングリコール 10.0質量%
1,2-ヘキサンジオール 3.0質量%
その他の樹脂 カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 1.0質量%
界面活性剤 BYK-348 0.3質量%
pH調整剤 トリエタノールアミン 1.0質量%
水 残量
【0103】
4.評価
4.1.粒度分布変化
上記のように調整したインク組成物をサンプル瓶に入れ、60℃で5日間放置した。そして、放置前後のインク組成物の体積基準の累積50%粒子径(D50)を、動的光散乱法によって測定し、放置前後における累積50%粒子径の変化を確認した。測定装置としては、マイクロトラックUPA150(Microtrac Inc.社製商品名)を使用した。得られた測定結果に基づいて粒度分布変化を求めた。
(評価基準)
A:累積50%粒子径の増加が10%未満であった。
B:累積50%粒子径の増加が10%以上30%未満であった。
C:累積50%粒子径の増加が30%以上であった。
【0104】
4.2.再分散性
上記のように調製したインク組成物をスライドガラス上に滴下し、40℃の乾燥機で16時間乾燥させて固化させた。そして、インク水を入れたサンプル瓶内に、スライドガラスを浸漬し、固形物の再分散の挙動を目視にて確認した。なお、インク水が撹拌等されないように注意して操作を行った。なお、インク水とは、上記インク組成物の組成において分散液を含まないものをいう。再分散性の評価基準を以下に示す。
(評価基準)
A:固形物が消失し、再分散した。
B:固形物が一部残存したが、再分散が認められた。
C:固形物が残存し、再分散は認められなかった。
【0105】
【表4】
*JONCRYL 61J(BASFジャパン社製 水溶性スチレンアクリル樹脂)
*SMA1440F(川原油化社製 スチレン無水マレイン酸エステル樹脂)