(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】フィルム、積層体及び形状転写部材
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20241008BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C59/02 Z
B32B3/30
(21)【出願番号】P 2020193088
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 竜典
(72)【発明者】
【氏名】木村 和輝
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088765(JP,A)
【文献】特開2019-089319(JP,A)
【文献】特開昭51-030265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されて
おり、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が二等辺三角形状を有するとき、前記二等辺三角形の頂角θ1が30°≦θ1≦150°を満たし、かつ底辺L1が10μm≦L1≦2000μmを満たすことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されており、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が円弧および弦で囲まれた形状を有するとき、前記円弧の中心角θ2が30°≦θ2≦180°を満たし、前記弦の長さL2が10μm≦L2≦2000μmを満たすことを特徴と
するフィルム。
【請求項3】
第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されており、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が等脚台形状を有するとき、前記等脚台形の上角θ3が90°<θ3≦150°を満たし、上底の幅L3および下底の幅L4が、L3<L4、10μm≦L3≦2000μm、10μm≦L4≦2000μmを満たすことを特徴と
するフィルム。
【請求項4】
第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されており、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が長方形状を有するとき、前記長方形の上角θ4がθ4=90°であり、幅L5が10μm≦L5≦2000μmを満たすことを特徴と
するフィルム。
【請求項5】
厚さが500μm以下である等厚のフィルム素材を用いて形成されることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載されたフィルムの片面もしくは両面に異なるフィルムを少なくとも1層以上積層することを特徴とする積層体。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか一項に記載されたフィルムを形成するために用いる形状転写部材であって、前記第1凸形状および前記第2凸形状に対応した型凸形状と、前記第1凹形状および前記第2凹形状に対応した型凹形状と、前記遷移面に対応した型遷移面とを有することを特徴とする形状転写部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、積層体及び形状転写部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能であるなどの長所があり、様々なものに利用されている。その用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買い物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。
プラスチックフィルムの具体的な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリルポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0003】
用途により適正なプラスチック材料が選択され、さらに、それらを複数種類重ね、積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を混合することで、単一材料の欠点を補うようにした用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、もしくは透明性などを考慮して適正なフィルム材料を選択している。
【0004】
プラスチックフィルムの機械特性は、一般的には材料や層構成により決まる。このため、強度重視の材料では伸度が小さくなる傾向があり、高い強度を有しつつ十分な伸度を確保できるフィルム材料が切望されている。また、基材に蒸着層を積層したバリア性包装材は、延伸する際に、蒸着層に亀裂が生じてバリア性が消失する傾向があり、蒸着層の破壊を抑制しつつ伸度を確保したフィルム材料も切望されている。また、なるべく少ない材料を用いて、フィルムの曲げ強度などの機械特性の向上を図ることも切望されている。
【0005】
例えば、ポリ乳酸のフィルムは強度があり、生分解性を有することから環境保護の観点からも注目を集めているが、比較的伸度が低く、耐衝撃性に劣るため用途が制限されている。このように、強度と伸度を両立できるフィルム材料の要請に対し、様々な検討がされている。
【0006】
特許文献1ではフィルムに山折りと谷折りの形状を繰り返した形状、いわゆる蛇腹形状を採用し、この蛇腹形状をフィルム面においてジグザグに設けることで強度と伸度が共に良好、かつ2方向に伸びるフィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、要求される形状のフィルムを実際に製造する場合において、形状を転写する型に関する課題がある。特許文献1ではフィルムの製造方法として熱プレスや押出成形を挙げており、凹凸形状を設けた加熱ロールもしくは平版を使用することでフィルムを蛇腹形状に転写成形しているが、加熱ロールもしくは平版に対応する凹凸形状を加工する方法については具体的に示されていない。
【0009】
加熱ロールもしくは平版に要求されるμmオーダーの凹凸形状を加工する技術としては、エンドミルやバイトなどを使用した切削加工が一般的であるが、工具形状および工具経路を考慮すると特許文献1に記載される方向変換点の位置にて加工不可能な部分が発生し、要求される形状に実際に加工することは困難である。
【0010】
要求される形状に加工する方法としてはエンドミルやバイトを使用した切削加工の後に、より微細な加工が可能で、工具形状および工具経路に加工物が影響されにくいレーザー加工や放電加工で追加工をすることが挙げられる。しかし、この手法では連続して加工ができないことから加工精度が悪くなることに加え、大面積かつ大量生産が難しくコスト増大を招くこととなる。
【0011】
本発明は、かかる先行技術の問題点を鑑みてなされたものであり、大量生産が可能で、プラスチック材料を用いたフィルムであって、強度と伸度が共に良好で、大面積であって2方向に進展可能なフィルム、およびこれを用いた積層体並びに形状転写部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のフィルムの一つは、第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されており、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が二等辺三角形状を有するとき、前記二等辺三角形の頂角θ1が30°≦θ1≦150°を満たし、かつ底辺L1が10μm≦L1≦2000μmを満たす。
代表的な本発明のフィルムの一つは、
第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されており、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が円弧および弦で囲まれた形状を有するとき、前記円弧の中心角θ2が30°≦θ2≦180°を満たし、前記弦の長さL2が10μm≦L2≦2000μmを満たす。
代表的な本発明のフィルムの一つは、
第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されており、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が等脚台形状を有するとき、前記等脚台形の上角θ3が90°<θ3≦150°を満たし、上底の幅L3および下底の幅L4が、L3<L4、10μm≦L3≦2000μm、10μm≦L4≦2000μmを満たす。
代表的な本発明のフィルムの一つは、
第1の方向に延在する第1凸形状および第1凹形状と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2凸形状および第2凹形状とが、表裏面に形成されたフィルムであって、
前記第1凸形状は、隣接する前記第1凹形状との間に第1斜面を有し、
前記第2凸形状は、隣接する前記第2凹形状との間に第2斜面を有し、
前記第1斜面と前記第2斜面とは、前記第1斜面及び前記第2斜面の法線の向きと異なる法線を有する遷移面を介して連結されており、
前記遷移面は、円錐面の一部または斜平面であり、
前記第1凸形状および前記第1凹形状の間隔P1と、前記第2凸形状および前記第2凹形状の間隔P1とは等しく、前記間隔P1が、10μm≦P1≦2000μmを満たし、
前記第1凸形状の最頂線と前記第2凸形状の最頂線との交差点に角を有し、隣接する前記角の間隔P2と、前記間隔P1との間に、P1<P2なる関係が成立し、かつ100μm≦P2≦20000μmを満たし、
前記角の内角δが、30°≦δ≦150°であり、前記第1凸形状の最頂線の両端において前記角を介して前記第2凸形状の最頂線とそれぞれ交差するとき、両端の前記角は共通した内角δを持ち、
前記フィルムの断面形状が長方形状を有するとき、前記長方形の上角θ4がθ4=90°であり、幅L5が10μm≦L5≦2000μmを満たす。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大量生産が可能で、プラスチック材料を用いたフィルムであって、強度と伸度が共に良好で、大面積であって2方向に進展可能なフィルム、およびこれを用いた積層体並びに形状転写部材を提供することが出来る。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態のフィルムの一例における上面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のフィルムの一例における斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のフィルムの一例における断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のフィルムの一部を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態にかかるフィルムの形成に用いる平版の製作工程を示す斜視図であり、y方向がフィルムとは逆になる。
【
図6】
図6は、別な実施形態のフィルムの一部を拡大して示す図である。
【
図7】
図7は、別な実施形態にかかるフィルムの形成に用いる平版の製作工程を示す斜視図であり、y方向がフィルムとは逆になる。
【
図8】
図8は、本実施形態のフィルムにおける断面形状の一例となる二等辺三角形の形状をとった場合の断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態のフィルムにおける断面形状の一例となる二等辺三角形の形状をとった場合の断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態のフィルムにおける断面形状の一例となる円弧および弦で囲まれた形状をとった場合の断面図である。
【
図11】
図11は、本実施形態のフィルムにおける断面形状の一例となる円弧および弦で囲まれた形状をとった場合の断面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態のフィルムにおける断面形状の一例となる等脚台形の形状をとった場合の断面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態のフィルムにおける断面形状の一例となる長方形の形状をとった場合の断面図である。
【
図14】
図14は、本実施形態のフィルムにおける断面図の一例である。
【
図15】
図15は、本実施形態のフィルムにおける断面図の一例である。
【
図16】
図16は、本実施形態のフィルムにおける断面図の一例である。
【
図17】
図17は、1次元の蛇腹形状フィルムの断面図である。
【
図18】
図18は、1次元の蛇腹形状フィルムの斜視図である。
【
図19】
図19は、別な実施の形態にかかるフィルムの断面図である。
【
図20】
図20は、別な実施の形態にかかるフィルムの断面図である。
【
図21】
図21は、別な実施の形態にかかるフィルムの断面図である。
【
図22】
図22は、別な実施の形態にかかるフィルムの断面図である。
【
図23】
図23は、別な実施の形態にかかるフィルムの断面図である。
【
図24】
図24は、複数区画を持つフィルムの別な実施形態を示す表面図である。
【
図25】
図25は、熱プレスで作製した本実施形態におけるフィルムの上面図である。
【
図26】
図26は、比較例2のフィルムを模式的に示す斜視図である。
【
図27】
図27は、比較例4のフィルムを模式的に示す斜視図である。
【
図28】
図28は、比較例6のフィルムを模式的に示す斜視図である。
【
図29】
図29は、比較例8のフィルムを模式的に示す断面図である。
【
図30】
図30は、比較例11のフィルムを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明にかかるフィルムの実施形態について説明する。なお、模式的に示した図においては、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために誇張して示している場合がある。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。本明細書で用いる表面と裏面とは便宜上の記載であり、フィルムにおける一対の面のいずれを表面または裏面としてもよい。
【0016】
(フィルムの構成)
図1は、本実施形態のフィルム1の一例における上面図であり、
図2はその斜視図であり、
図3はその断面図である。
図1、2等において、左右方向をx方向(第1の方向)とし、上下方向をy方向(第2の方向)とする。本実施形態では、x方向とy方向とは直交する。
【0017】
本実施形態にかかるフィルム1は、x方向及びy方向に延在する凸形状2および凹形状3を有する。
図1、
図2おける点線は凸形状2の最頂点を結んだ線(以下、最頂線という)を示し、一点鎖線は凹形状3の最奥点を結んだ線(以下、最奥線という)を示す(後述する
図4、
図5、
図24においても同様)。
図1,2に示す自由状態で、最頂線と最奥線とは平行である。
【0018】
ここで、x方向に延在する凸形状2および凹形状3を第1凸形状および第1凹形状とし、y方向に延在する凸形状2および凹形状3を第2凸形状および第2凹形状とする。
【0019】
凸形状2の最頂線を挟んで両側に、最頂線に対して対称の配置で内側斜面2aと外側斜面2bとが形成されている。内側斜面2aと外側斜面2bの近接縁は、最頂線で交差しており、また内側斜面2aと外側斜面2bの遠方縁は、それぞれ凸形状2に隣接する凹形状3の最奥線で終端している。
さらに、
図1でフィルム1の左下端(基準点)に対し、各最頂線より近い側を内側とし、遠い側を外側と定義する。また、x方向に延在する凸形状2の内側斜面2aまたは外側斜面2bを第1斜面とし、y方向に延在する凸形状2の内側斜面2aまたは外側斜面2bを第2斜面とする。
【0020】
図4は、本実施形態のフィルム1の一部を拡大して示す図である。x方向に延在する凸形状2の最頂線と、y方向に延在する凸形状の最頂線の交差点を角4とする。角4の近傍において、x方向に延在する内側斜面2aと、y方向に延在する内側斜面2aとを、第1の遷移面5により連結している。また、
図2を参照して、x方向に延在する外側斜面2b(
図2では隠れて見えない)と、y方向に延在する外側斜面2bとを、第2の遷移面5’により連結している。
図1に示すように、第1の遷移面5は内側を向き、第2の遷移面5’は外側を向いている。
【0021】
ここでは、遷移面5、5’は凸状円錐面の一部により構成される。したがって、第1の遷移面5内の任意の位置における法線は、x方向に延在する凸形状2の内側斜面2aおよびy方向に延在する凸形状2の内側斜面2aの法線の向きとは異なる。同様に、第2の遷移面5’内の任意の位置における法線は、x方向に延在する凸形状2の外側斜面2bおよびy方向に延在する凸形状2の外側斜面2bの法線の向きとは異なる。遷移面5、5’の下端は、凹形状3の最奥線と接する。また、フィルム1は等厚であり、遷移面5、5’の裏面側にも対応する形状の遷移面がそれぞれ形成される。
【0022】
本実施形態のフィルム1は、凹凸形状を有する平版(型)を用いて、厚さが500μm以下である等厚のフィルム素材を厚さ方向に押圧して変形させ、凹凸形状をフィルムに転写することで形成される。以下、平版の製作方法について説明する。
【0023】
(平版の加工)
図5は、平版FMの製作工程を示す斜視図である。本実施形態においては、金属製の平板素材に対して、円錐形状の切削部を先端に有するエンドミルEMを用いて切削加工を行うことで、平版FMを製作する。平版FMは、フィルム1の凸形状2に対応した型凹形状FM2と、凹形状3に対応した型凸形状FM3とを有する。
【0024】
より具体的には、
図5において、金属製の平板素材に対して、回転するエンドミルEMをx方向に沿って移動させ、次いでy方向に沿って移動させることを繰り返して、二等辺三角形状断面を有する溝を切削加工により形成する。このとき、エンドミルEMの先端により型凹形状FM2の最奥線が形成され、エンドミルEMの円錐状の切削部により、型凹形状FM2の内側斜面FM2aと外側斜面FM2bが形成される。
【0025】
ここで、エンドミルEMの外径を小さくすれば、精度よく微細加工を行えるが、それによりエンドミルEMの剛性が低下して、工具の逃げや折損などが生じる恐れがある。そこで、所定の外径のエンドミルEMにて平版FMを切削加工する。かかる場合、角4に対応する型角FM4近傍において、x方向からy方向への方向転換点では、エンドミルEMの円錐形状により平版FMが切削された状態が残存し、内側斜面2a同士を直接交差させることができない。局所的に切削された円錐形状を型遷移面FM5,FM5’とする。以上の切削加工により、平版FMが形成される。
【0026】
(フィルムの形成)
平版FMの凹凸形状を、ゴム素材の弾性板に対向させ、その間に平たいフィルムの素材を挿入して、平版FMと弾性板とを接近する方向に所定時間加熱しながら押圧し、冷却後に離型する。これにより表面側において、型凹形状FM2によってフィルム1の凸形状2が転写形成され、型凸形状FM3によって凹形状3が転写形成され、また裏面側において、対応する凹凸形状が形成され、さらに型遷移面FM5,FM5’によりそれぞれ遷移面5、5’が形成される。型遷移面FM5,FM5’は凹状の円錐面の一部であるから、これに対向するフィルムの遷移面5,5’は凸状の円錐面の一部となる。
なお、平版の代わりに凹凸形状を外周に形成したロールと、ゴム素材の弾性ロールとを対向させて回転させつつ、凹凸形状と弾性ロールとの間にフィルムの素材を挿入して加圧すれば、連続してフィルム1を形成できる。
【0027】
図3に示すように、等厚のフィルム1の裏面7は表面8に追従した形状を有する。すなわち、表面8側の凸形状または凹形状が裏面7側の凹形状または凸形状となることで、フィルム1は等しい厚さの凹凸形状を有する。凹形状の最奥部から凸形状の最頂点までの距離を、フィルム1の高低差Hという。本実施形態のフィルム1の高低差Hは、フィルム1の厚さTよりも大きい。
【0028】
図1~3に示すように、フィルム1は蛇腹形状をとることでプラスチック材料を問わず強度と伸度を高めることができる。また、角4を持つことで蛇腹形状は面内でジグザグに展開され、2方向への伸びも可能となり、
図1に示すx方向に伸びると連動してy方向も伸びる。また、本実施形態のフィルム1は遷移面5、5’を有するため、強度と伸度を両立する特性を維持しつつ、製造が容易となり大量生産が可能となる。
【0029】
(別な実施形態)
図6は、別な実施形態のフィルム1’の一部を拡大して示す図である。x方向に延在する凸形状2の最頂線と、y方向に延在する凸形状の最頂線の交差点を角4とする。角4の近傍において、x方向に延在する内側斜面2aと、y方向に延在する内側斜面2aとを、第1の遷移面6により連結し、またx方向に延在する外側斜面2bと、y方向に延在する外側斜面2bとを、第2の遷移面(
図6で不図示)により連結している。第1の遷移面6は内側を向き、第2の遷移面は外側を向いている。
【0030】
ここでは、いずれの遷移面6も略三角形状の斜平面である。したがって、第1の遷移面6内の任意の位置における法線は、x方向に延在する凸形状2の内側斜面2aおよびy方向に延在する凸形状2の内側斜面2aの法線の向きとは異なる。同様に、
図6に図示しない第2の遷移面内の任意の位置における法線は、x方向に延在する凸形状2の外側斜面2bおよびy方向に延在する凸形状2の外側斜面2bの法線の向きとは異なる。遷移面6の下端は、凹形状3の最奥線と接する。また、フィルム1は等厚であり、遷移面6の裏面側にも対応する形状の遷移面がそれぞれ形成される。
【0031】
(平版の加工)
図7は、平版FM’の製作工程を示す斜視図である。本実施形態においては、金属製の平板素材に対して、三角形状のすくい面を備えたダイヤモンドバイトDBを用いて切削加工を行うことで、平版FM’を製作する。平版FM’は、フィルム1’の凸形状2に対応した型凹形状FM2と、凹形状3に対応した型凸形状FM3とを有する。
【0032】
より具体的には、
図7において、金属製の平板素材に対して、すくい面をx方向に対向させつつダイヤモンドバイトDBをx方向に沿って移動させ、二等辺三角形状断面を有する溝を切削加工により形成する。次いで、すくい面をy方向に対向させつつダイヤモンドバイトDBをy方向に沿って移動させ、二等辺三角形状断面を有する溝を切削加工により形成する。以上の動作を繰り返して、平版FM’を製作する。
【0033】
このとき、角4に対応する型角FM4近傍における、x方向の切削終了端近傍では、ダイヤモンドバイトDBを平板素材に対して離間するように漸次移動させる必要があり、またy方向の切削開始端近傍では、ダイヤモンドバイトDBを平板素材に対して接近するように漸次移動させる必要がある。このため、ダイヤモンドバイトDBを離間または接近させた際に切削された部位が残存し、x方向とy方向の内側斜面2a同士を直接交差させることができない。そこで、ダイヤモンドバイトDBの離間または接近時の移動軌跡を調整して、型角FM4の近傍で交差する内側斜面2a同士の間に、略三角形状の斜平面である型遷移面FM6を形成するようにする。
【0034】
(フィルムの形成)
平版FM’の凹凸形状と、ゴム製の弾性板とを対向させ、その間に平たいフィルムの素材を挿入して、平版FM’と弾性板とを接近する方向に所定時間加熱しながら押圧し、冷却後に離型する。これにより表面側において、型凹形状FM2によってフィルム1’の凸形状2が転写形成され、型凸形状FM3によって凹形状3が転写形成され、また裏面側において、対応する凹凸形状が形成され、さらに型遷移面FM6,FM6’によりそれぞれ遷移面6、6’が形成される。型遷移面FM6,FM6’は略三角状の斜平面であるから、これに対向するフィルムの遷移面6も略三角状の斜平面となる。本実施形態のフィルム1’も遷移面6を有するため、強度と伸度を両立する特性を維持しつつ、製造が容易となり大量生産が可能となる。
【0035】
フィルム1(または1’、以下同じ)の厚さTは、1μm≦T≦500μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5μm≦T≦100μmの範囲である。フィルムの厚さTが厚くなるとフィルムを伸ばすために必要な力が大きくなってしまうため、フィルムを容易に伸ばすことができる効果が薄れてしまうためである。また、フィルムの厚さTが薄くなるとフィルムを伸ばすために必要な力が小さくなり容易に伸ばすことができるが、破断しやすくなると同時に取り扱いが難しくなる。なお、フィルムの厚さTは均一である必要はない。
【0036】
フィルム1の高低差Hは、5μm≦H≦500μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10μm≦H≦200μmの範囲である。また、フィルムの厚さTとフィルムの高低差HがT<H/2であることが好ましく、これにより良好な伸度を得ることができる。なお、高低差Hを含む、フィルムの形状に関する値は、フィルムの自由状態における値とする。
【0037】
フィルム1に異なる2方向に伸度を付与しつつ、伸びやすさを得るためには凸形状2および凹形状3の間隔(ピッチ)P1(
図1参照)、角4の内角(角4で交差する凸形状2の最頂線同士のなす角度)δ、角4の間隔(ピッチ)P2を要求される特性に合わせて変化させることが望ましい。これらの値P1,P2,δは、平版FMの型凹形状FM2、型凸形状FM3、型角FM4の関係においても同様に適用され(
図5,6参照)、以下の実施例でも同様である。
【0038】
ここで、伸びやすさとは、フィルムが伸びを示すまでに必要な力が小さいことを意味し、例えばより小さい力でフィルムが等量伸びた場合、フィルムは伸びやすいといえる。角4はフィルム1を引っ張った際に、張力を伝達することと、張力の向きを変化させる役割を持つ。
図1を用いて説明すると、x方向に引っ張ったとき、角4があるためにy方向にも張力が伝わるようになる。
【0039】
角4が密集しすぎると、すなわち凸形状2および凹形状3の間隔P1、角4の間隔P2が小さくなりすぎると、加工が難しくなるだけでなく、伸度も低くなり、伸びにくくもなる。また、角4が疎になりすぎると、すなわち凸形状2および凹形状3の間隔P1、角4の間隔P2が大きくなりすぎると、張力の向きを変化させる役割がなくなり、2方向に伸びる効果が薄れてしまう。
【0040】
隣接する凸形状2および凹形状3の間隔P1は、すべて等しくてもよいし、すべて異なっていてもよいが、フィルム1に所望の物性を得るためには10μm≦P1≦2000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50μm≦P1≦500μmの範囲である。
【0041】
角4の間隔P2は、すべて等しくてもよいし、すべて異なってもよいが、フィルム1に所望の物性を得るためには100μm≦P2≦20000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは500μm≦P2≦10000μmの範囲である。また、P1≧P2となると蛇腹形状をジグザグに展開できないため、必ずP1<P2となる。
【0042】
角4は同じ凸形状内および凹形状内で隣接するものは、それぞれ対称配置であると好ましい。x方向に延在する凸形状2の最頂線の両端において、y方向に延在する凸形状2の最頂線と角4を介してそれぞれ交差するとき、両端の角4は共通した内角δを持つ。
【0043】
角4の内角δを変化させることで、フィルム1の伸びる方向、および1方向に伸ばした際に連動して伸びる方向を変化させることができる。角4の内角δは30°≦δ≦150°の範囲であり、より好ましくは60°≦δ≦120°である。30°>δおよびδ>150°の場合には、フィルム1に2方向の伸度が十分に確保されにくい。
【0044】
例えば隣接する凸形状2および凹形状3の断面形状は、
図8および
図9に示す二等辺三角形、
図10および
図11に示す円弧および弦で囲まれた形状、
図12に示す等脚台形、
図13に示す長方形、それぞれを選択することができる。
【0045】
図8に示す断面形状を持つフィルム1が最も良好な伸度を確保することができ、
図9、
図11、
図12、
図13に示す断面形状を持つフィルム1のように、平面部9を持つと伸度は若干低くなる。しかし、断面形状は要求される物性や特性に応じて選択することができる。一例として大きな伸度を要求せず、印刷を行うなどの場合には、平らな面を広く持つことが好ましいことから、
図9、
図11、
図12、
図13の断面形状を選択すると好ましい。
【0046】
二等辺三角形の断面形状を選択した場合、凸形状2および凹形状3の間隔P1と二等辺三角形の底辺L1とが、P1=L1の関係にある場合には
図8に示す形状になり、P1>L1の場合には
図9に示す形状となり、必ずP1≧L1の関係となる。また、10μm≦L1≦2000μm、30°≦θ1≦150°の範囲であると好ましく、より好ましくは100μm≦L1≦1000μmの範囲である。L1<10μm、θ1<30°の場合、加工精度が悪くなりがちである。θ1>150°および2000μm<L1の場合には、フィルム1に伸度が付与されにくい。また、フィルム1の各角は尖っている必要はなく、
図14に示す断面形状のように、凹凸形状の最頂点または最奥部にR形状が付加されていてもよい。
【0047】
円弧および弦で囲まれた断面形状を選択した場合、凸形状2および凹形状3の間隔P1と、凹形状の弦の長さL2とが、P1=L2の関係にある場合には
図10に示す断面形状になり、P1>L2の場合には
図11に示す断面形状となり、必ずP1≧L2の関係となる。また、10μm≦L2≦2000μm、30°≦θ2≦180°の範囲であり、より好ましくは100μm≦L2≦1000μmの範囲である。L2<10μmの場合には加工精度が悪くなりがちであり、2000μm<L2の場合にはフィルム1に伸度が付与されにくい。θ2>180°の形状は加工することが困難となり、30°>θ2の場合にはフィルム1に伸度が付与されにくくなる。
【0048】
図12に示すように等脚台形の断面形状を選択した場合、等脚台形の上辺L3は10μm≦L3≦2000μm、および底辺L4は10μm≦L4≦2000μmの範囲であり、より好ましくは100μm≦L3≦1000μm、100μm≦L4≦1000μmの範囲である。L3<10μm、およびL4<10μmの場合、加工精度が悪くなりがちであり、2000μm<L3、2000μm<L4の場合にはフィルム1に伸度が付与されにくい。ただし、L3>L4(=等脚台形の上角θ3<90°)の形状は加工することができないためL3<L4かつθ3<90°である。また、
図12に示す等脚台形の上角θ3は90°<θ3≦150°の範囲である。θ3>150°の場合にはフィルム1に伸度が付与されにくい。また、フィルム1の各角は尖っている必要はなく、
図15に示すようにR形状が付いていてもよい。
【0049】
図13に示すように長方形の断面形状を選択した場合、長方形の幅L5は10μm≦L5≦2000μmの範囲であり、より好ましくは100μm≦L5≦1000μmの範囲である。L5<10μmの場合、加工精度が悪くなりがちである。2000μm<L5の場合にはフィルム1に伸度が付与されにくい。長方形の上角θ4は長方形であることからθ4=90°である。またフィルム1の各角は尖っている必要はなく、
図16に示すようにR形状が付いていてもよい。
【0050】
(フィルムの作用)
本実施形態にかかる高延性を持つフィルム1の作用を簡略化して説明する。ここでは、
図17および
図18のような一次元に伸びた蛇腹形状のフィルムについて考察する。
図17の左右方向、すなわち周期的な凹凸構造の並び方向に引っ張ると、まず弾性変形による形状変形が生じ、その後、形状変形の一部に塑性変形を生じる。さらに引っ張り続けると引っ張り応力により凹凸構造の高低差が小さくなり平坦なフィルムに近づくことで形状変形できなくなり、最終的には引張変形が主効果になり、ネッキングが発生し破断する。
【0051】
一方、通常の平坦なフィルムでは、同じ引っ張り条件で引張変形しか生じない。そのため、蛇腹状のフィルムは、上述のように複数の段階からなる形状変形を行うことで、通常のフィルムに比較して容易に伸ばすことができる。この形状変形領域では、同じ伸度を得るのに必要な力は小さくできる。ただし最終的には、引張変形が支配的になるため、破断強度は同じ厚みのフィルムとほぼ同等である。
【0052】
本実施形態にかかる高延性を持つフィルム1によれば、2次元的に蛇腹状になっており、例えば
図1中x方向に引張った際は、上述したようにx方向に容易に伸びると同時に、隣接する凹凸形状が連動して変形することで、y方向にも伸ばすことが可能である。もちろん、y方向に伸ばせば、y方向だけでなくx方向にも伸びる。
【0053】
このとき、フィルムの厚さ方向を含む任意の断面において、フィルムの高低差Hがフィルム厚みTよりも大きいことで、上記のように形状変形を生じさせることができ、伸びる効果を得ることが出来る。フィルムの高低差Hがフィルム厚みTよりも小さい場合は、引張った際に形状変形が生じにくくなってしまう。ここで、フィルムの厚さ方向を含む任意の断面におけるフィルムの高低差は、凸形状2と凹形状3の高低差に一致する。
【0054】
このようにして、一般的に伸度が低いとされる材料で作られたフィルムであっても、形状に工夫を与えることより2方向に高延性にすることができる。つまり、フィルムの強度と伸度を両立し、2方向に同時に伸ばすことができる。
【0055】
本実施形態にかかる高延性を持つフィルム1は、引張時の初期においては、フィルム全体は、形状が変化することにより延性を向上させることができる。つまり、通常のフラットな面を持つフィルムのように、引っ張り当初の段階から材料自身が延展することでフィルムが伸びているわけではない。本実施形態に係るフィルムにおいては、引っ張り当初において、凹凸構造に局所的な歪み(伸びや縮み)が生じ、それにより形状が変化することで、大きな延性を得ることができる。
【0056】
(フィルムの特性)
また、本実施形態のフィルム1は、応力をかけた際に伸びる効果があるため、衝撃耐性も高く、凹凸構造が潰れることによる衝撃吸収性も高い。さらに、本実施形態のフィルム1はラミネートした場合、
図20または
図22に示すようにフィルム1の凹凸形状により、フィルムの上下に空隙、つまり空気層を設けることができるから、断熱性が高い特性も確保できる。
【0057】
本実施形態の高延性を持つフィルム1は曲げ剛性に関しては、どちらの方向に対しても向上させることが出来る。曲げ剛性は、断面二次モーメントとヤング率の掛け算の積分によって決まる。本実施形態の高延性を持つフィルム1は、同樹脂量の通常のフィルムに比べ、この断面二次モーメントが大きくなるため、曲げ剛性を高めることができる。
【0058】
(フィルム材料)
フィルム1の材料としては、熱可塑性樹脂、硬化樹脂(熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等)であると好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
また、硬化樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、およびこれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単独で用いられてもよいし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられてもよい。また、複数の層が重ね合わさった多層構成(積層体ともいう)を形成しても良い。
【0059】
(フィルムの製造方法)
フィルム1は、上述したように凹凸形状を形成した平版と弾性板、または凹凸形状を形成したロールと弾性ロールとの組み合わせ以外にも、例えば、熱プレスによる方法や押出成形による方法を用いて製造することができる。
【0060】
熱プレスによる方法では、製膜したフィルムを、表面に凹凸形状を設けた一対の加熱した平版により挟持して、該平版同士が近接するようにプレス機を用いて加圧することで作製することができる。この際、上下の凹形状と凸形状とを精密に位置合わせを行い、プレス後のフィルム表裏が連続的に山谷を繰り返す構造となっていることが重要である。
【0061】
また、押出成形による方法では、Tダイより押出された溶融樹脂をフィルム化するための冷却工程において、同様に外周面に凹凸形状を形成した一対の冷却ロールおよびニップロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、対応する凹凸形状を形成することができる。この方法においても、冷却ロールとニップロールの凹凸形状の精密な位置合わせが、フィルム1の性能に影響を与えることは言うまでもない。
【0062】
さらに押出成形による別の方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の別の樹脂をフィードブロック法、またはマルチマニホールド法により共押出することで、2層以上の多層構成のフィルムを得ることができる。このときフィルム化するための冷却工程において、凹凸形状を形成した冷却ロールおよび凹凸のないニップロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、冷却ロールと接するフィルム表面に凹凸構造をつけることが出来る。
【0063】
さらにこのとき、冷却ロールと接する第一樹脂層のフィルム厚さTに対し、凹凸形状の高低差Hが大きいときには、第一樹脂層とそれに隣接する第二樹脂層との界面にも同様に凹凸構造が付加される。そのため、冷却後の多層フィルムから第二樹脂層を剥離すれば、両面に凹凸構造を持った第一樹脂層、すなわち、高延展性を持つフィルムを得ることができる。
その他、射出成形など、凹凸構造を付加するいずれかの方法が選択可能であり、特に方法が限定されるものではない。
【0064】
なお、熱プレスで使用する凹凸形状を設けた一対の加熱ロール、もしくは一対の平版を備えたプレス機、押出成形法で使用する凹凸形状を形成した冷却ロールおよびニップロールそれぞれに、凹凸形状を加工するために、エンドミルやダイヤモンドバイトなどを使用した切削加工を用いることができる。ここで、凹凸形状を形成するためにフィルムに押圧される加熱ロール、平版、冷却ロールおよびニップロール等を総称して、形状転写部材という。
その他、レーザー加工など、凹凸形状を付加するいずれかの方法が選択可能であり、特に方法が限定されるものではない。
【0065】
(積層体)
高延性を持つフィルム1は、1層であっても良いし、さらに
図19に示すように、層構成を増やすことで複数のフィルム1を積層して積層体10とすることもできる。例えば、1層目を気体バリア層や薬剤非吸着層とし、2層目を安価な樹脂層(嵩増し層)や高剛性層や1層目の物性を補う層とすること等が考えられる。もちろん、フィルムの積層は3層以上であってよい。また、高延性を持つフィルム1に対して、後工程で蒸着層や、ハードコート層、反射防止層などの機能層を積層した積層体10とすることもできる。
【0066】
その他、
図20~23のように、高延性を持つフィルム1に別のフィルム11をラミネートした積層体10とすることもできる。ここで、
図20、21の実施形態によれば、フィルム1に別のフィルム11を直接貼り付けて積層体10としている。一方、
図22、23の実施の形態によれば、フィルム1に粘着剤層(または接着剤層)12を介して別のフィルム11を貼り付けて積層体10としている。別のフィルム11は特定の機能を持つ機能層とすることが好ましい。
【0067】
(フィルムの利用用途)
たとえば高延展性を持つフィルム1やそれを用いた積層体を、バリアフィルム、包装材、湿布などの貼付剤の支持体として利用することが考えられる。その他、本実施形態のフィルムを加飾した伸びる加飾フィルムや、本実施形態のフィルムの構造を利用することで見る方向により見え方を変えることができるフィルム、更に伸ばすことで形状を変化させることにより見え方を変化させるフィルムなどへの応用が考えられるが、用途はこれらに限られるものではない。
【0068】
フィルム1の適用例である貼付剤の支持体では、貼付剤に含まれる薬剤や添加剤に対する耐性や非吸着性もしくはバリア性が求められ、さらには伸縮性があると望ましいとされる。耐薬品性、非吸着性、バリア性の高い材料に対して、凹凸構造を付加し、高延展性を持つフィルム1とすることで、これらすべての要求を満たすことができる。耐薬品性、非吸着性、バリア性の高い材料としては、例えば、環状ポリオレフィンやエチレン・ビニルアルコール共重合体やポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。また、同じ伸度時に掛かる応力も高延展性を持つフィルム1は小さくなるため、伸縮時に引張られるような違和感を感じにくくできる。
【0069】
(フィルムの別な実施形態)
図24に示すフィルムは、複数の区画13を有するフィルム1を示す上面図である。
図24において、フィルム1は
図24における太線部の縁14で囲まれた4つの区画13を有しており、各区画13の一つの縁14から、これと対向する他の縁端へと凸形状2と凹形状3がジグザグ状に延在している。
【0070】
図示していないが、裏面側の凸形状2および凹形状3も同様である。
図24に示すように、隣接する区画13同士は、同方向を向いていても良いし、異方向を向いていても良い。
図24では、隣接する区画13同士は隙間15を有しているが、隙間15がなくてもよい。また、
図24では一例として4つの区画13を有しているが、一連のフィルム上に存在する区画13の数は任意である。
【0071】
1つの区画内は上述のように2方向に伸びる特性を有している。そのため、区画13の周囲に伸びない隙間15を有することで、加工時にフィルムが伸びてしまうという加工プロセスの問題を解決することができる。最終製品では区画13毎にカットしたり、打ち抜き加工を行うことで、所望の2方向へ伸びるフィルムを提供できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは任意である。
【0073】
[実施例と比較例]
以下、本発明者らが作成した実施例について、比較例を参照して詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
比較例1は、フィルム材料にポリプラスチックス製の環状オレフィン・コポリマー(以下COCと記す)(ポリプラスチックス株式会社製の製品名8007F-600)を採用し、押出成形を使用して作製した厚さ40μmの平坦なフィルムである。押出成形機には、東洋精機製のラボプラストミルを使用した。
【0075】
比較例1の成形条件として、全てのヒーター温度を220℃とし、押出機回転数30rpm、引取速度2m/minとして、幅120mm、COCフィルムを得た。ネックインによりフィルム端部は目標となる厚さ40μmよりも厚いため、フィルム端部を20mmずつスリットし幅80mm、厚さ40μmで平坦なCOCフィルムを得た。
【0076】
比較例2~17および実施例1~16について、比較例1で作製した平坦なCOCフィルムに熱プレスを行うことで凹凸形状を付与した。作製した実施例1のフィルムを
図25に示す。また、作製した凹凸形状の仕様を表1に示す。
【0077】
【0078】
(比較評価結果)
本発明者は、比較例と実施例について、フィルムの作製可否および伸度の評価を実施した。フィルムの作製可否としては、熱プレスに使用する平版の作製可否および熱プレスでのフィルム作製可否について判断した。平版の作製が可能だった場合は〇、不可能だった場合は×を、表1に合わせて示す。また、熱プレスでのフィルム作製が可能だった場合は〇、不可能だった場合は×を、表1に合わせて示す。なお、平版の作製が不可能(×)だった場合には、フィルムの加工は未実施とする。
【0079】
さらに伸度の評価として、各実施例および各比較例を
図25に示すx方向およびy方向に伸ばした場合に伸縮する感触があるか否かを判断した。フィルムが伸びた場合は〇、伸びなかった場合は×を、表1に合わせて示す。
【0080】
凹凸形状のない平坦な比較例1のフィルムは、x方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0081】
比較例2を模式的に示す斜視図を、
図26に示す。比較例2は、P1およびL1が8μmと小さく、凹凸形状が非常に小さい形状となる。このため平版の作製を実施したが凹凸形状を目標の寸法にすることが出来ず、狙い通りの平版の作製が不可能であった。
【0082】
比較例3は、P1およびL1が3000μmであり、平版の作製は可能であった。しかし、作製された平版により形成されたフィルムはx方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0083】
比較例4を模式的に示す斜視図を、
図27に示す。比較例4はP2が80μmであるが、角を精度よく形成するには、P1に対してP2をある程度高くする必要がある。このため、実際に平版を作製したときに、
図27に示すように角が丸くなり、精度良い平版の作製が不可能であった。
【0084】
比較例5は、P2が30000μmであり、平版の作製は可能であった。しかし、x方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0085】
比較例6を模式的に示す斜視図を、
図28に示す。比較例6はδ=25度であるが、このようにδが小さすぎると凹凸形状が先鋭化し、凸部の欠けが生ずる恐れがある。また、工具の先端が欠けることで、凹部の最奥部が丸まるなどの加工不良が生じ、その結果、精度の良い平版の作製が不可能であった。
【0086】
比較例7は、δ=160度であり、平版の作製は可能であった。しかし、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向には伸びるが、y方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至った。
【0087】
比較例8を模式的に示す断面図を、
図29に示す。比較例8は、θ1=25度であるが、このようにθ1が小さすぎると凹凸形状が先鋭化し、凸部の欠けが生ずる恐れがある。また、工具の先端が欠けることで、凹部の最奥部が丸まるなどの加工不良が生じ、その結果、精度の良い平版の作製が不可能であった。
【0088】
比較例9は、θ1=160度であり、平版の作製は可能であった。しかし、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0089】
比較例10は、θ2=25度であり、平版の作製は可能であった。しかし、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0090】
比較例11を模式的に示す断面図を、
図30に示す。比較例11は、P1およびL2が8μmと小さく、凹凸形状が非常に小さい形状となる。このため平版の作製を実施したが凹凸形状を目標の寸法にすることが出来ず、狙い通りの平版の作製が不可能であった。
【0091】
比較例12は、P1が3000μm、L2が3000μmであり、平版の作製は可能であった。しかし、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0092】
比較例13は、θ3=160度であり、平版の作製は可能であった。しかし、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0093】
比較例14は、P1が50μm、L3が8μmと小さく、凹凸形状が非常に小さい形状となる。このため平版の作製を実施したが凹凸形状を目標の寸法にすることが出来ず、狙い通りの平版の作製が不可能であった。
【0094】
比較例15は、P1が8μm、L4が8μmと小さく、凹凸形状が非常に小さい形状となる。このため平版の作製を実施したが凹凸形状を目標の寸法にすることが出来ず、狙い通りの平版の作製が不可能であった。
【0095】
比較例16は、P1が3000μm、L5が3000μmであり、平版の作製は可能であった。しかし、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸ばしても伸縮する感触はなく、強く伸ばすと伸縮する感触を得る前に破断に至り、伸縮する感触は得られなかった。
【0096】
実施例1は、P1が1000μm、L1が10μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0097】
実施例2は、P1が10μm、L1が10μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0098】
実施例3は、P1が2000μm、L1が2000μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0099】
実施例4は、P2が100μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0100】
実施例5は、P2が20000μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0101】
実施例6は、δ=30度であり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0102】
実施例7は、δ=150度であり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0103】
実施例8は、θ1=30度であり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0104】
実施例9は、θ1=150度であり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0105】
実施例10は、θ2=30度であり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0106】
実施例11は、θ2=180μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0107】
実施例12は、P1が10μm、L2が10μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0108】
実施例13は、P1が2000μm、L2が2000μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0109】
実施例14は、θ3=150度であり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0110】
実施例15は、L3が10μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
【0111】
実施例16は、L5が10μmであり、平版の作製が可能であった。また、作製された平版により形成されたフィルムは、x方向およびy方向共に伸縮する感触があり、x方向に伸ばした際にはy方向に広がる挙動が見られた。逆に、y方向に伸ばした際にはx方向に広がる挙動が見られ、2方向に伸びることが確認できた。
以上、すべての実施例は2方向に延びることが確認された。
【符号の説明】
【0112】
1 フィルム
2 凸形状
3 凹形状
4 角
5 円錐状の遷移面
6 三角形状の遷移面
7 フィルム裏面
8 フィルム表面
9 平面部
10 積層体
11 別のフィルム
12 粘着剤層(または接着剤層)
13 区画
14 縁
15 隙間
H フィルムの高低差
T フィルムの厚さ
P1 凸形状および凹形状の間隔
δ 角の内角
P2 角の間隔
L1 二等辺三角形の底辺
θ1 二等辺三角形の頂角
L2 弦の長さ
θ2 円弧の中心角
L3 台形の上辺
L4 台形の底辺
θ3 台形の上角
L5 長方形の幅
θ4 長方形の上角