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特許7567397燃料電池システムおよび燃料電池の発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび燃料電池の発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241008BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241008BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20241008BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20241008BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241008BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20241008BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20241008BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20241008BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241008BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04858
H01M8/04313
H01M8/04537
B60L50/60
B60L50/75
B60L58/13
B60L58/40
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020195389
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083830
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 岳
(72)【発明者】
【氏名】池谷 謙吾
【審査官】柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-062085(JP,A)
【文献】特開2013-137977(JP,A)
【文献】特開2001-275205(JP,A)
【文献】特開2012-252998(JP,A)
【文献】特開2008-192549(JP,A)
【文献】特開2004-327448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0021445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/04858
H01M 8/04313
H01M 8/04537
B60L 50/60
B60L 50/75
B60L 58/13
B60L 58/40
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池の作動に関連する補機と、
前記燃料電池の発電を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記燃料電池の発電中に当該燃料電池に前記補機を含めた発電効率を監視し、
前記燃料電池の前記発電効率の変化を検知すると、前記燃料電池の発電電流を所定の範囲内で変化させることにより前記発電効率が最も高くなる最高効率電流を算出して、前記燃料電池の発電を前記最高効率電流にて継続させる、燃料電池システム。
【請求項2】
前記最高効率電流は、前記発電電流の電流値を変化させたときの前記発電効率が最も高くなる極点により決められる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
酸化剤ガスと燃料ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池の作動に関連する補機と、
前記燃料電池の発電を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記燃料電池の発電中に、前記燃料電池の発電電流を微小変化させて前記燃料電池に前記補機を含めた発電効率のよい最高効率電流に近づけながら前記燃料電池の発電を継続させる、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の燃料電池システムと、
二次電池と、を備える燃料電池の発電システムであって、
前記燃料電池の発電システムの起動中に前記二次電池の充電率が上限を超えないように前記燃料電池の発電を停止する停止モードと、
前記最高効率電流で前記燃料電池を発電し、前記燃料電池の発電システムへの要求出力の不足分を前記二次電池で補う高効率モードと、
前記燃料電池の発電システムへの要求出力が前記最高効率電流による発電量と前記二次電池の最大出力の合計よりも大きい場合、前記燃料電池の発電量を前記最高効率電流による発電量より大きくして前記二次電池の最大出力より大きい出力分を補う第一高負荷モードと、
前記二次電池の充電率が低下した場合、前記燃料電池の発電量を前記最高効率電流による発電量より大きくして前記二次電池の充電率の低下速度を緩やかにする第二高負荷モードと、
前記二次電池の充電率が下限を下回らないように前記燃料電池を最大出力で発電する第三高負荷モードと、を有する、燃料電池の発電システム。
【請求項5】
前記高効率モードにおいて、前記燃料電池の発電システムへの要求出力が前記最高効率電流による前記燃料電池の発電量より小さい場合には、出力差分を前記二次電池に充電する、請求項に記載の燃料電池の発電システム。
【請求項6】
前記第三高負荷モードにおいて、前記燃料電池の発電システムへの要求出力が前記燃料電池の最大出力付近以上である状態が継続した場合には、前記要求出力を前記燃料電池の最大出力以下に制限する、請求項またはに記載の燃料電池の発電システム。
【請求項7】
前記第二高負荷モードにおいて、前記発電効率を監視し、前記燃料電池の発電システムへの要求出力が所定の値以下のときは、前記充電率の低下速度が所定の速度以下になるよう前記燃料電池の出力を前記最高効率電流に近づける、請求項からのいずれか一項に記載の燃料電池の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池をエネルギー源として備える電源システムが知られている。この電源システムは、燃料変換効率が最も良い発電条件内で運転することで、エネルギー密度、および出力密度が大きく、変動の激しい消費電力に対応する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、エネルギー密度とは、電池の単位質量あるいは単位体積あたりの供給可能な電気エネルギーである。出力密度とは、電池の単位質量あるいは単位体積あたりの出力である。これらエネルギー密度および出力密度は、電池の特性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-192549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モーターを駆動源とし、そのエネルギー源として燃料電池および駆動用バッテリーを搭載した車両である燃料電池車が知られている。この燃料電池車は、燃料電池の出力をモーターが要求する電力に追従させる。また、燃料電池車では、モーターからの電力の要求に対して燃料電池の出力が不足する場合には、駆動用バッテリーから電力を補助する場合がある。
【0006】
しかしながら、燃料電池は、出力によってその発電効率が変動する。そのため、モーターから要求される電力によっては、燃料電池は、発電効率が低い領域で出力する場合がある。また、出力変動による電圧の変動は燃料電池の劣化を加速させる。つまり、出力変動が大きい用法の場合には、燃料電池の性能が長時間持続せず短期間で低下してしまうといった問題があった。
【0007】
そのため、燃料電池車においては、運転中に燃料電池の補機を含む燃料電池システム全体が最も効率よく動作可能な出力、つまり電流で発電することが望まれている。これにより、燃料電池の発電効率の向上が期待できる。なお、運転中に燃料電池の補機を含む燃料電池システム全体が最も効率よく動作可能な電流を、以下、「最高効率電流」と呼ぶ。
【0008】
また、燃料電池の発電効率は、燃料電池車において車両全体の発電効率に最も大きく寄与する。そのため、燃料電池の発電効率を向上できれば、その結果として、車両全体の発電効率の向上、すなわち燃費の向上を図ることができ、ひいては車両の航続距離を延長することができる。したがって、車両の運転中に燃料電池の補器を含む燃料電池システム全体が最高効率電流にて発電可能な技術が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、車両の運転中に状況に応じて変動する効率に追従して、補機を含む燃料電池システム全体が最高効率電流で発電の継続が可能な燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するため本発明に係る燃料電池システムは、酸化剤ガスと燃料ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池の作動に関連する補機と、前記燃料電池の発電電流を変換するコンバータと、前記燃料電池の発電を制御する制御部と、を含む燃料電池システムであって、前記燃料電池の発電中に当該燃料電池に前記補機を含めた発電効率を監視する監視部を備え、前記制御部は、最も効率よく動作する最高効率電流により前記燃料電池を発電させ、前記監視部によって前記燃料電池の前記発電効率の変化を検知すると、前記燃料電池の発電電流を所定の範囲内で変化させることにより前記燃料電池の前記発電電流を前記発電効率の最も高い電流値に変化させ、前記発電効率変化後の最高効率電流として前記燃料電池を発電させる。
【0011】
また、本発明に係る燃料電池システムは、酸化剤ガスと燃料ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池の作動に関連する補機と、前記燃料電池の発電を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池の発電中に、前記燃料電池の発電電流を微小変化させて前記燃料電池の効率のよい最高効率電流に近づけながら前記燃料電池の発電を継続させる。
【0012】
さらに、本発明に係る燃料電池の発電システムは、上記の燃料電池システムと、二次電池と、を備える燃料電池の発電システムであって、前記燃料電池の発電システムの起動中に前記二次電池の充電率が上限を超えないように前記燃料電池の発電を停止する停止モードと、前記最高効率電流で前記燃料電池を発電し、前記燃料電池の発電システムへの要求出力の不足分を前記二次電池で補う高効率モードと、前記燃料電池の発電システムへの要求出力が前記最高効率電流による発電量と前記二次電池の最大出力の合計よりも大きい場合、前記燃料電池の発電量を前記最高効率電流による発電量より大きくして前記二次電池の最大出力より大きい出力分を補う第一高負荷モードと、前記二次電池の充電率が低下した場合、前記燃料電池の発電量を前記最高効率電流による発電量より大きくして前記二次電池の充電率の低下速度を緩やかにする第二高負荷モードと、前記二次電池の充電率が下限を下回らないように前記燃料電池を最大出力で発電する第三高負荷モードと、を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の運転中に状況に応じて変動する効率に追従して、補機を含む燃料電池システム全体が最高効率電流で発電の継続が可能な燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図。
図2】本発明の実施形態に係る燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムにおける燃料電池の効率の計算を説明する図。
図3】本発明の実施形態に係る燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムにおける燃料電池の最高効率電流の確認方法を示すフローチャート。
図4】本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムにおける燃料電池の最高効率電流の確認方法を示すフローチャート。
図5】本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムの燃料電池における充電率と要求電力との関係を示す図。
図6】本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムにおける燃料電池の発電システムへの要求出力と二次電池の充電率との関係を示す図。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムにおける燃料電池の発電システムへの要求出力と二次電池の充電率との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムの実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号を付す。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【0017】
本実施形態に係る燃料電池の発電システム10は、燃料電池システム1と、二次電池7と 、を備えている。燃料電池システム1は、酸化剤ガスと燃料ガスとを反応させて発電する燃料電池2、燃料電池2の電流を制御し電圧を調整するDC-DCコンバータ3、受け取った電力を駆動力に変換して車両を動かし、また回生電流を発生させるインバーターモーター4、車両におけるアクセルペダルまたはブレーキペダルの踏込量等のユーザー(ドライバー)による操作や車両の環境温度等の車両状態を検知する各種のセンサー8、センサー8からの信号に基づき各部品の動作を司る制御部としての制御装置5、および、燃料ガスとしての水素ガスを貯蔵する水素タンク6等を備えている。二次電池7は、燃料電池2で発生される電力を充電し、充電した電力を出力する。つまり、二次電池7は、DC-DCコンバータ3からの電流やインバーターモーター4からの回生電流を受け入れ電力を充電する。また、二次電池7は、充電した電力をインバーターモーター4に供給する。
【0018】
燃料電池システム1において、燃料電池2は、不図示の空気供給通路を介して酸化剤ガスとして供給される空気と、水素タンク6から不図示の水素供給通路を介して燃料ガスとして供給される水素と、を反応させて発電する。燃料電池2の発電反応に使用された空気は、不図示の空気排出通路を介して排出される。また、燃料電池2は、不図示の冷媒を循環させる冷却通路によって冷却される。
【0019】
燃料電池システム1は、燃料電池2で発電した電力を不図示の負荷へ供給する。例えば、燃料電池システム1が車両に搭載される場合には、負荷は、駆動輪を駆動させる走行用モーターとしてのインバーターモーター4を含む。インバーターモーター4は、燃料電池2に接続される。なお、走行用モーターは、主に二次電池7からの電力の供給を受けて駆動する。また、走行用モーターは、車両の前輪側に設けてもよいし、後輪側に設けてもよいし、前後輪両側に設けてもよい。
【0020】
燃料電池2は、積層された多数の燃料電池セルを備えている。そのため、燃料電池2は、燃料電池スタックとも呼ばれる。燃料電池2は、燃料電池セルを最小単位とし、この燃料電池セルを数十から数百積層した燃料電池スタックとして使用される。
【0021】
燃料電池2は、積層された複数の燃料電池セルと、積層された燃料電池セルを両方の外側から挟む一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートを燃料電池セルの積層体に固定する締結部材と、を備えている。
【0022】
それぞれの燃料電池セルは、燃料極(負極)、固体高分子膜(電解質)、空気極(正極)を一体化した膜電極接合体((Membrane Electrode Assembly、MEA)と、膜電極接合体を表裏から挟む一対のセパレーターと、を備えている。セパレーターは、反応ガスの供給路を有している。
【0023】
それぞれの燃料電池セルには、反応ガスとして酸化剤ガスと燃料ガスとが供給される。これら、酸化剤ガスと燃料ガスとが膜電極接合体を挟んで反応してそれぞれの燃料電池セルに電圧が生じる。それぞれの燃料電池セルに生じた電圧の総和が燃料電池2の出力電圧である。
【0024】
燃料電池2に空気を供給する空気供給通路は、酸化剤ガスの流れにおいて、燃料電池2より上流側に設けられている。空気供給通路には、燃料電池2へ酸化剤ガスとしての空気を供給する不図示の圧縮機や、圧縮機で圧縮されて高温になった空気を冷却する不図示のインタークーラー等の補機が設けられている。
【0025】
圧縮機は、吸い込んだ空気を圧縮して空気供給通路に送り込む。インタークーラーは、圧縮機によって圧縮された空気の温度が燃料電池2に供給するには高温すぎる場合には、圧縮機によって圧縮された空気を冷却する。
【0026】
空気排出通路は、酸化剤ガスの流れにおいて、燃料電池2より下流側に設けられている。空気排出通路には、背圧弁としての不図示の調圧弁などの補機が設けられている。調圧弁は、燃料電池2の排気側の圧力損失を変化させて燃料電池2に流れる空気の流量を変化させることができる。
【0027】
水素供給通路には、水素タンク6に貯留されている水素ガスの圧力を燃料電池2の燃料ガスとして適合する圧力に降圧させる不図示の減圧弁、水素タンク6から供給される水素ガスを燃料電池2に供給する不図示のインジェクターや、パージ弁等の補機が設けられている。水素タンク6に貯留されている水素ガスは、減圧弁によって降圧されて燃料電池2へ供給される。パージ弁は、燃料ガスを水素供給通路から排気する。この燃料ガスの排気は、発電反応の継続にともなって酸化剤の供給路から燃料電池セルを不可避的に透過する窒素による燃料ガスの濃度低下を防止し、発電を安定に継続させる。また、燃料ガスの排気は、反応により生成する水分を排出する。
【0028】
空気供給通路から燃料電池2に供給された空気は、積層された複数の燃料電池セルのそれぞれが有するカソード側の供給路に分配される。分配された空気は、それぞれの膜電極接合体のカソード側の面内を伝って流れた後、空気排出通路へ排出される。
【0029】
水素供給通路から燃料電池2に供給された水素は、積層された複数の燃料電池セルのそれぞれが有するアノード側の供給路に分配される。分配された水素は、それぞれの膜電極接合体のアノード側の面内を伝って流れた後、燃料電池2外へ排出される。
【0030】
冷却通路には、燃料電池2を冷却する冷媒を放熱させる不図示のラジエーター、ラジエーターに冷却風を通風させる不図示の送風機や、冷媒を循環させる不図示のポンプ等の補機が設けられている。
【0031】
DC-DCコンバータ3は、二次電池7から供給される直流電圧を昇圧してインバーターモーター4に出力する機能と、燃料電池2が発電した直流電力、またはインバーターモーター4が回生制動により回収した回生電力を降圧して燃料電池2に充電する機能と、を有する。これらのDC-DCコンバータ3の機能により、燃料電池2の充放電が制御される。また、DC-DCコンバータ3による電圧変換制御により、この燃料電池2の発電(出力電圧、出力電流)が制御される。
【0032】
制御装置5は、いわゆるECM(Engine Control Module)である。制御装置5は、不図示の信号線を介して燃料電池2、DC-DCコンバータ3、インバーター4、および二次電池7に接続されている。制御装置5は、これら燃料電池2、DC-DCコンバータ3、およびインバーター4の運転や、二次電池7の充電を制御する。なお、制御装置5は、前述した負荷の運転制御を含んでいても良い。
【0033】
制御装置5は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit、CPU、不図示)、中央処理装置で実行(処理)される各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する補助記憶装置(例えば、Read Only Memory、ROM、不図示)、プログラムの作業領域が動的に確保される主記憶装置(例えば、Random Access Memory、RAM、不図示)を備えている。
【0034】
燃料電池システム1は、車両におけるアクセルペダルまたはブレーキペダルの踏込量等のユーザー(ドライバー)による操作や、車両の環境温度等の車両状態を検知する種々のセンサー8を備えている。制御装置5は、これら種々のセンサー8から取得する情報に基づいて、燃料電池システム1の運転を制御する。
【0035】
これら種々のセンサー8は、例えば、燃料電池2の出力電流を計測する燃料電池出力センサーと、補機の消費電流を測定する補機出力センサーと、補機に印加される電圧を測定する補機入力センサーと、燃料電池システム1の出力電流および出力電圧を測定するシステム出力センサーと、を含んでいる。
【0036】
これにより、制御装置5は、これら種々のセンサー8から取得する情報に基づいて、燃料電池システム1の運転中に燃料電池2の補機を含むシステム全体が最高効率電流で発電するよう燃料電池2の発電を制御する。
【0037】
ここで、このような燃料電池システム1は、制御装置5が燃料電池2の出力をインバーターモーター4の要求する電力に追従させる。燃料電池システム1は、インバーターモーター4からの電力の要求に対して燃料電池2の出力が不足する場合には、制御装置5の制御によって駆動用バッテリーである二次電池7から電力を補助する。
【0038】
ところが、燃料電池2は、出力によってその発電効率が変動するため、インバーターモーター4から要求される電力によっては、燃料電池2は、発電効率が低い領域で出力する場合がある。この出力変動による電圧の変動は燃料電池2の劣化を加速させる。つまり、出力変動が大きい用法の場合には、燃料電池2の性能が長時間持続せず短期間で低下してしまう点が懸念される。
【0039】
そこで、本実施形態の燃料電池システム1は、制御装置5が種々のセンサー8から取得する情報に基づいて、燃料電池2の発電中に当該燃料電池2の効率を監視する。
【0040】
次に、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1および燃料電池の発電システム10における燃料電池2の発電の制御について説明する。
【0041】
図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムにおける燃料電池の効率の計算を説明する図である。
【0042】
図3は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムおよび燃料電池の発電システムにおける燃料電池の最高効率電流の確認方法を示すフローチャートである。
なお、図中、Ie.maxとは最高効率電流を意味する。
【0043】
燃料電池システム1を有する燃料電池2の発電システム10において、制御装置5は、燃料電池2の効率を算出する。具体的に、燃料電池2の効率は、燃料電池2が出力したエネルギー量と、燃料電池2が使用した水素量と、の商として求められる。
【0044】
ここで、燃料電池2が使用した水素量は、燃料電池2の電流値および燃料電池2のセル数(積層数)から算出される。また、燃料電池2が出力したエネルギー量は、燃料電池2の出力電流Cである。図2に示すように、燃料電池2の出力電流Cは、種々のセンサー8(図1参照)によって検出される、燃料電池システム1の出力A(すなわち、燃料電池システム1の出力電流および出力電圧)と、補機20の消費電力B(すなわち、補機20の消費電流および補機に印加される電圧)と、の和である。
【0045】
燃料電池システム1の制御装置5は、図3に示すように、種々のセンサー8によって測定された測定結果に基づき、燃料電池2の発電電流を効率の最も高い最高効率電流で発電させる(ステップS1)。
【0046】
制御装置5は、燃料電池システム1の運転中に、常に種々のセンサー8によって燃料電池2の効率をセンシングする(ステップS2)。例えば、制御装置5は、算出された効率の変動を検知した時に、燃料電池2の発電電流を任意の幅(例えば、-3A~+3Aの幅)で変動させる。制御装置5は、極点が現れるまで燃料電池2の発電電流の変動を繰り返し(ステップS21およびステップS22)、極点が現れると(ステップS23)、その時点での最高効率電流を算出し、算出結果を新たな最高効率電流として用いて燃料電池2の発電を継続する。
【0047】
以上、説明したように、本実施形態の燃料電池システム1の制御装置5は、燃料電池2の発電中に燃料電池2の効率を常時監視し、燃料電池2の効率の変化を検知すると、燃料電池2の発電電流を効率の最も高い最高効率電流に変化させて、燃料電池2の発電を継続させる。これにより、車両の運転中に状況に応じて変動する効率に追従して、補機を含む燃料電池システム1全体が最高効率電流で発電の継続が可能である。
【0048】
このとき、最高効率電流は、燃料電池2の効率の変化を検知したときのみ変化させるため、効率の良い発電を継続できる。
【0049】
また、燃料電池システム1が車両に適用された場合、車両走行中の環境などや燃料電池2の劣化状態、電解質の湿潤状態によっても最高効率電流は変わるが、燃料電池2の効率を常時監視しているため、環境に応じた最高効率電流によって発電を継続できる。
【0050】
さらに、車両全体の発電効率に一番大きく寄与する燃料電池2の発電効率を向上することで、車両全体の発電効率を向上させることができる。その結果、車両の航続距離を延長できる。
【0051】
しかも、最高効率電流は、発電電流の電流値を変化させたときの燃料電池2の効率が最も高くなる極点により決められる。すなわち、効率自体の変化は常時算出できるため、電流を変化させて効率が向上した後、低下するポイントを極点として検知し、当該極点を最高効率電流として新たに設定するため、状況により変わる最高効率電流をより正確に見つけることができる。また、燃料電池2の効率の変化を常時監視していることから当該効率の変化に即座に対応可能であり、効率の変化に追従できるため、最高効率電流の変化も必要最低限に抑えることができ、効率変化してから極点を探す際の最高効率電流の変化量も少なくできる。このように、変化量が少なくても最高効率電流を探すことができるため、その分、最高効率電流での燃料電池2の発電時間を長くすることができる。
【0052】
また、制御装置5は、燃料電池2の発電中に、燃料電池2の発電電流を微小変化させて燃料電池2の効率のよい最高効率電流に近づけながら燃料電池2の発電を継続させるようにしてもよい。
すなわち、燃料電池システム1は、酸化剤ガスと燃料ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する燃料電池2と、燃料電池2の作動に関連する補機20と、燃料電池2の発電を制御する制御部としての制御装置5と、を備え、制御装置5は、燃料電池2の発電中に、燃料電池2の発電電流を微小変化させて燃料電池2の効率のよい最高効率電流に近づけながら燃料電池2の発電を継続させるようにしてもよい。
【0053】
この場合、常時、燃料電池2の発電電流を微小変化させてフィードバック制御するため、理想的な最高効率電流から大きく逸脱しないうちに燃料電池2の効率の変化を確認し、当該効率の変化に応じて常に最適で理想的な最高効率電流に近づけるように電流値を変えることができる。
【0054】
燃料電池2の効率は、燃料電池2の出力電流と、補機20の消費電流および補機に印加される電圧、または、燃料電池システム1の出力電流および出力電圧と、により算出される。つまり、燃料電池2の効率の変化は、燃料電池2の出力電流Cがわかれば燃料電池システム1の出力Aや補機20の消費電力Bにより検知できる。水素センサーを用いて効率を求める場合と異なり、水素の消費量が安定していなくても効率を求めることができる。また効率の変化にセンシティブに反応することができる。そのため効率を常時算出することができる。つまり、簡単かつ正確に燃料電池2の効率を算出できる。
【0055】
図4は、本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムにおける燃料電池の最高効率電流の確認方法を示すフローチャートである。
【0056】
図5は、本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムの燃料電池における充電率と要求電力との関係を示す図である。
【0057】
本発明に係る燃料電池2の発電の制御については、前述した実施形態に限られない。すなわち、燃料電池2の発電システム10の制御装置5は、燃料電池2の発電の制御方法として、停止モードM1と、高効率モードM2と、第一高負荷モードM3と、第二高負荷モードM4と、第三高負荷モードM5と、を含んでいてもよい。
【0058】
なお、図5において、縦軸は二次電池7の充電率(state of charge、SOC)を示し、横軸は燃料電池2の発電システム10への要求出力を示している。また、図5において、点Q1は二次電池7の充電率の制御中心を示し、点Q0は二次電池7の充電率の下限を示している。また、図5において、点P0は二次電池7の下限を示し、点P4は二次電池7の最大出力と燃料電池の最大出力との合計を示している。さらに、点P1は燃料電池2の最高効率電流による出力を示している。
【0059】
ここで、図5に示すように、停止モードM1とは、二次電池7の充電率が上限(図5の点Q2)近くである場合(例えば、車両停車中や低速走行中)に、二次電池7の充電率が上限を超えないように燃料電池2の発電を停止するモードである。
【0060】
また、高効率モードM2とは、燃料電池2の発電システム10への要求出力が最高効率電流による発電量と二次電池7の最大出力の合計(点P2)よりも小さい場合(例えば、平坦中速以下での走行中)に、最高効率電流で燃料電池2を発電し、燃料電池2の発電システム10への要求出力の不足分を二次電池7で補うモードである。
【0061】
第一高負荷モードM3とは、燃料電池2の発電システム10への要求出力が最高効率電流による発電量と二次電池7の最大出力の合計(点P2)よりも大きい(例えば、二次電池7の充電率が通常状態かつ高速走行中である)場合に、燃料電池2の発電量を最高効率電流による発電量より大きくして二次電池7の最大出力より大きい出力分を補うモードである。
【0062】
第二高負荷モードM4とは、二次電池7の充電率が低下した(例えば、二次電池7の充電率が下限近くに近づいているときであり平坦中速以下での走行中である)場合に、燃料電池2の発電量を最高効率電流による発電量より大きくして二次電池7の充電率の低下速度を緩やかにするモードである。つまり、燃料電池2の発電システム10への要求電力を燃料電池2の最大出力より低い点P3(例えば、燃料電池2の最大出力比6割)の位置まで下げることで、燃料電池2の残りの出力で二次電池7の充電を促すことができる。
【0063】
第三高負荷モードM5とは、二次電池7の充電率が下限近くである(つまり、それ以上、二次電池7の充電率を下げることができない)場合に、二次電池7の充電率が下限を下回らないように燃料電池2を最大出力で発電するモードである。つまり、燃料電池2の発電システム10への要求電力を燃料電池2の最大出力より低い点P4の位置まで下げることで、燃料電池2の残りの出力で二次電池7の充電を促すことができる。
【0064】
具体的に、図4および図5に示すように、制御装置5は、燃料電池2の発電システム10の起動中に前述した種々のセンサー8によって二次電池7の充電率(SOC)の状態をセンシングする(ステップS10)。このとき、二次電池7の充電率が過多の状態、すなわち、上限近くであることを検知すると、燃料電池2の発電状態を停止モードM1に切り換え、二次電池7の充電率が上限を超えないように燃料電池2の発電を停止する(ステップS11)。
【0065】
また、二次電池7の充電率が通常(すなわち、十分な)状態であって、燃料電池2の発電システム10への要求出力が最高効率電流による発電量と二次電池7の最大出力の合計よりも小さいことを検知すると(ステップS12:YES)、燃料電池2の発電状態を高効率モードM2に切り換え、最高効率電流で燃料電池2を発電し、燃料電池2の発電システム10への要求出力の不足分を二次電池7で補う(ステップS13)。
【0066】
このとき、燃料電池2の発電システム10への要求出力が最高効率電流による発電量と二次電池7の最大出力の合計よりも大きいことを検知すると(ステップS12:NO)、燃料電池2の発電状態を第一高負荷モードM3に切り換え、燃料電池2の発電量を最高効率電流による発電量より大きくして二次電池7の最大出力より大きい出力分を補う(ステップS14)。
【0067】
また、制御装置5は、燃料電池2の発電システム10の起動中に前述した種々のセンサー8によって二次電池7の充電率(SOC)の状態をセンシングし(ステップS10)、二次電池7の充電率が不足している状態である場合、二次電池7の充電率が下限近くか否を判断する(ステップS15)。そして、二次電池7の充電率が下限近くではないものの(ステップS15:NO)、燃料電池2の発電システム10への要求出力が二次電池7の充電率の低下速度を調整する発電量と二次電池7の最大出力の合計よりも小さいこと(すなわち、二次電池7の充電率の低下)を検知すると(ステップS16:YES)、燃料電池2の発電状態を第二高負荷モードM4に切り換え、燃料電池2の発電量を最高効率電流による発電量より大きくして二次電池7の充電率の低下速度を緩やかにする。なお、燃料電池2の発電システム10への要求出力が二次電池7の充電率の低下速度を調整する発電量と二次電池7の最大出力の合計よりも大きいことを検知すると(ステップS16:NO)、前述したステップS14に移行して第一高負荷モードM3に切り換え、燃料電池2の発電量を最高効率電流による発電量より大きくして二次電池7の最大出力より大きい出力分を補う(ステップS17)。
【0068】
また、制御装置5は、二次電池7の充電率が下限近くである(つまり、それ以上、二次電池7の充電率を下げることができない)こと検知すると(ステップS15:YES)、燃料電池2の発電状態を第三高負荷モードM5に切り換え、二次電池7の充電率が下限を下回らないように燃料電池2を最大出力で発電する(ステップS18)。
【0069】
そして、制御装置5は、再びステップS10に戻って燃料電池2の発電システム10の起動中に前述した種々のセンサー8によって二次電池7の充電率の状態をセンシングし、前述したステップS10からステップS18のいずれかのルーチンを繰り返す。
【0070】
このように、燃料電池2の発電システム10では、限られた条件下でのみ燃料電池2の発電を最高効率電流外とすることで、不足なく最高効率電流での燃料電池2の発電の機会を増やすことができる。また、燃料電池2の発電システム10への要求出力が最高効率電流による発電量と二次電池7の最大出力の合計よりも大きくなる場合、燃料電池2の出力を最高効率電流より高くすることにはなるが、二次電池7の発電出力を最高出力としてできる限り二次電池で出力を補うことで、燃料電池2の出力を最高効率電流に近づけることができるため、効率の向上を図ることができる。
【0071】
図6は、本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムにおける燃料電池の発電システムへの要求出力と二次電池の充電率との関係を示す図である。
【0072】
図6に示すように、燃料電池2の発電システム10は、高効率モードM2において、燃料電池2の発電システム10への要求出力が最高効率電流による燃料電池2の発電量より小さい場合には、出力差分を二次電池7に充電する。
【0073】
これにより、燃料電池2の最高効率電流での発電するシチュエーションを増やしつつ、余剰分は二次電池7に充電するため、電力の無駄をなくし、燃料電池2の発電の持続時間の延長、すなわち、車両に適用された場合、車両の航続距離の延長を図ることができる。
【0074】
図7は、本発明の実施形態の変形例に係る燃料電池の発電システムにおける燃料電池の発電システムへの要求出力と二次電池の充電率との関係を示す図である。
【0075】
図7に示すように、燃料電池2の発電システム10は、第三高負荷モードM5において、燃料電池2の発電システム10への要求出力が燃料電池2の最大出力付近以上である状態が継続した場合には、燃料電池2の発電システム10への要求出力を燃料電池2の最大出力以下に制限するようにしてもよい。
【0076】
燃料電池2の発電システム10への要求出力を下げ、燃料電池をそれ以上の出力で発電することで、二次電池7の充電率が下限を下回らないように充電することができる。これにより、燃料電池システム1の用法(車両に適用された場合は、車両の走行シチュエーション)が変わった際に、再度、適切な最高効率電流に変更して発電できるシチュエーションを増やすことができる。
【0077】
さらに、燃料電池2の発電システム10は、第二高負荷モードM4において、燃料電池2の効率を監視し、燃料電池2の発電システム10への要求出力が所定の値以下のときは、充電率の低下速度が所定の速度以下になるよう燃料電池2の出力を最高効率電流に近づけるようにしてもよい。
【0078】
燃料電池2の発電システム10は、第二高負荷モードM4では二次電池の充電率の低加速度を緩めることを目的として、例えば燃料電池2の出力を6割程度にしているが、燃料電池2の発電システム10への要求出力が低い場合は、燃料電池2の出力を6割程度の出力にしなくとも、二次電池の充電率の低加速度を遅くできるため、燃料電池2の出力を6割より下げることで最高効率電流に少しでも近づけて燃料電池2の効率を向上ができる。
【符号の説明】
【0079】
1…燃料電池システム、2…燃料電池、3…DC-DCコンバータ、4…インバーターモーター、5…制御装置、6…水素タンク、7…二次電池、8…センサー、10…発電システム、20…補機、M1…停止モード、M2…高効率モード、M3…第一高負荷モード、M4…第二高負荷モード、…第三高負荷モードM5。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7