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特許7567413画像形成装置、及び画像形成装置の加熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】画像形成装置、及び画像形成装置の加熱方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 13/03 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 13/22 20060101ALI20241008BHJP
   B65H 5/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J13/03
B41J13/22
B65H5/12 A
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020201126
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088971
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】外園 豊
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-121288(JP,A)
【文献】特開2009-214996(JP,A)
【文献】特開2017-065180(JP,A)
【文献】特開2018-010842(JP,A)
【文献】特開2013-199370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 13/03
B41J 13/22
B65H 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙トレイから送り出される用紙を搬送する給紙手段と、
前記用紙を把持する把持部を有し、前記給紙手段に搬送された前記用紙を受け取り、当該用紙の紙端を前記把持部にて把持した状態で印字部の位置まで搬送する搬送胴と、
前記搬送胴よりも搬送方向上流側に設けられ、以下の式(1)の温度条件を充足するように、前記用紙を加熱するヒーターと、
を備える画像形成装置。
|T1-T2|/T1≦0.15 …式(1)
(但し、T1:前記印字部の位置における前記用紙の前記紙端の温度[℃]、T2:前記用紙が前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡されるときの前記用紙の前記紙端の温度[℃])
【請求項2】
前記ヒーターは、前記用紙が前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡される前に、前記用紙の前記紙端の温度が前記搬送胴の外周面の用紙搬送領域の温度以上となるように、前記用紙を加熱する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記給紙手段は、前記給紙手段上を搬送された前記用紙を、前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡す位置に位置決めする位置決め部を有し、
前記ヒーターは、前記位置決め部に位置決めされた前記用紙の前記紙端を加熱する、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヒーターは、前記用紙の非印字領域を加熱する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ヒーターは、加熱エアを吹き付けることにより、前記用紙を加熱する空気加熱式ヒーターである、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送胴は、前記用紙を印刷実行位置に搬送する第1搬送胴と、前記第1搬送胴の搬送方向上流側に位置し、前記用紙を予備加熱する第2搬送胴と、を含んで構成される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記把持部は、前記搬送胴の前記外周面に設けられ、前記用紙の前記紙端を把持する爪部である、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記爪部は、前記用紙の紙幅方向に沿って並んで設けられた複数のくわえ爪、又は、前記用紙の搬送方向に沿って並んで設けられた複数のくわえ爪によって構成されている、
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記給紙手段は、前記給紙トレイから送り出される前記用紙を、ストリームフィーダー方式で搬送する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ヒーターの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記用紙の種類が合成紙である場合、前記ヒーターを稼働状態とし、前記用紙の種類が非合成紙である場合、非稼働状態とする、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
インクジェット式画像形成装置に適用される、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
給紙トレイから送り出される用紙を搬送する給紙手段と、
前記用紙を把持する把持部を有し、前記給紙手段上を搬送された前記用紙を受け取り、当該用紙の紙端を前記把持部にて把持した状態で印字部の位置まで搬送する搬送胴と、
前記搬送胴よりも搬送方向上流側に設けられたヒーターと、
を備える画像形成装置の加熱方法であって、
前記ヒーターは、以下の式(2)の温度条件を充足するように、前記用紙を加熱する
加熱方法。
|T1-T2|/T1≦0.15 …式(2)
(但し、T1:前記印字部の位置における前記用紙の前記紙端の温度[℃]、T2:前記用紙が前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡されるときの前記用紙の前記紙端の温度[℃])
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置、及び画像形成装置の加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置により搬送される用紙に対し、インクジェットヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出することにより当該用紙に画像を形成(記録)するインクジェット式画像形成装置(以下、「画像形成装置」と略称する)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/165003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の画像形成装置においては、給紙トレイに積載された用紙を、フィーダーボードで一枚ずつに分離した後、当該用紙をフィーダーボードから搬送胴(例えば、後述の図2に示すように、第1搬送胴と第2搬送胴とからなる回転搬送体)に受け渡し、当該用紙を搬送胴で搬送する過程で、インクジェットヘッドにて当該用紙に対して画像形成を行う。
【0005】
フィーダーボードから搬送胴への用紙の受け渡しは、典型的には、フィーダーボードの前端位置まで搬送された用紙を、搬送胴に設けられた爪部で把持して、当該用紙をフィーダーボードから搬送胴に引き込むようにして行われる。
【0006】
図1は、搬送胴に設けられた爪部の一例を示す図である。尚、図1に示す爪部は、用紙の紙幅方向(即ち、用紙の搬送方向に直交する方向)に沿って所定間隔で設けられた複数のくわえ爪によって構成され、複数のくわえ爪で用紙の前端を把持する構造となっている。
【0007】
ところで、この種の画像形成装置においては、インクの吐出を受けた際の用紙のインクの濡れ性を高めるため、搬送胴の外周面を所定温度(例えば、60℃程度)まで昇温させた状態としておき、搬送胴にて用紙を搬送する過程で、用紙を所定温度まで昇温する予備加熱機構が導入されている。
【0008】
しかしながら、本願の発明者らの鋭意検討の結果、この予備加熱機構により、フィーダーボード上を搬送されているときの用紙の温度と搬送胴の外周面の温度との間には、大きな温度差が生じた状態となっており、これに起因して、用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡された際(受け渡された直後、及び、その後に搬送されている間)に、用紙の前端の爪部で把持された領域(典型的には、爪部の各くわえ爪の間の領域)で熱膨張が生じて皺が発生する、という課題が明らかになってきた。かかる用紙の前端に発生した皺は、用紙の印字領域にも波及し、用紙を印字部の位置(ここでは、インクジェットヘッドの位置)まで搬送した際に、インクの着弾ずれを誘起することになる。つまり、かかる皺は、用紙に形成する画像の品質低下を引き起こすこととなる。又、かかる皺が発生した場合、用紙の前端部が隆起するため、これに起因して、用紙が画像形成装置のインクヘッドに衝突し、インクヘッドの破損を引き起こすおそれもある。
【0009】
尚、かかる皺は、用紙の熱膨張に起因して発生するため、特に、一般に大きな熱膨張係数を有する合成紙において発生しやすい。
【0010】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、用紙搬送時に用紙に皺が発生することに伴う画像の品質低下を抑制し得る画像形成装置、及び画像形成装置の加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
給紙トレイから送り出される用紙を搬送する給紙手段と、
前記用紙を把持する把持部を有し、前記給紙手段に搬送された前記用紙を受け取り、当該用紙を前記把持部にて把持した状態で印字部の位置まで搬送する搬送胴と、
前記搬送胴よりも搬送方向上流側に設けられ、以下の式(X1)の温度条件を充足するように、前記用紙を加熱するヒーターと、
を備える画像形成装置である。
|T1-T2|/T1≦0.15 …式(X1)
(但し、T1:前記印字部の位置における前記用紙の前記紙端の温度[℃]、T2:前記用紙が前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡されるときの前記用紙の前記紙端の温度[℃])
【0012】
又、他の局面では、
給紙トレイから送り出される用紙を搬送する給紙手段と、
前記用紙を把持する把持部を有し、前記給紙手段上を搬送された前記用紙を受け取り、当該用紙を前記把持部にて把持した状態で印字部の位置まで搬送する搬送胴と、
前記搬送胴よりも搬送方向上流側に設けられたヒーターと、
を備える画像形成装置の加熱方法であって、
前記ヒーターは、以下の式(X2)の温度条件を充足するように、前記用紙を加熱する
加熱方法である。
|T1-T2|/T1≦0.15 …式(X2)
(但し、T1:前記印字部の位置における前記用紙の前記紙端の温度[℃]、T2:前記用紙が前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡されるときの前記用紙の前記紙端の温度[℃])
【発明の効果】
【0013】
本開示の画像形成装置によれば、用紙搬送時に用紙に皺が発生することに伴う画像の品質低下を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】搬送胴に設けられた爪部の一例を示す図
図2】一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す図
図3】一実施形態に係るヘッドユニットの構成を示す模式図
図4】一実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図
図5】一実施形態に係る給紙部の構成を示す平面図
図6】一実施形態に係る給紙部の構成を示す側面図
図7】一実施形態に係る画像形成装置において、第1ヒーターの動作制御を行うために制御部が実行する処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
[インクジェット式画像形成装置の概略構成]
以下、図2図4を参照して、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成について説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す図である。
【0018】
画像形成装置1は、給紙部10、画像形成部20、排紙部30、及び、制御部40(図4を参照)を備える。
【0019】
画像形成装置1は、制御部40による制御下で、給紙部10に格納された用紙Pを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で用紙Pに画像を形成し、画像が形成された用紙Pを排紙部30に搬送する。画像形成装置1にて画像形成する対象の用紙Pとしては、普通紙(木材パルプを主原料として製造された用紙)、及び合成紙(合成樹脂を主原料として製造された用紙)等、任意の種類の用紙を用いることができる。
【0020】
給紙部10は、用紙Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像形成部20(第2搬送胴22)へ用紙Pを搬送するフィーダーボード12と、フィーダーボード12から画像形成部20の第2搬送胴22に用紙Pを受け渡す前に、用紙Pの前端を加熱する第1ヒーター13と、を有する。尚、給紙部10の詳細構成については、図5図6を参照して後述する。
【0021】
画像形成部20は、第1搬送胴21、第2搬送胴22、第2ヒーター23a、第3ヒーター23b、第4ヒーター23c、ヘッドユニット24、定着部25、第1温度センサ26a、第2温度センサ26b、及びデリバリー部28を有する。
【0022】
第1搬送胴21は、円筒形状を呈し、自身の外周面(即ち、搬送面)の上に用紙Pを保持し、ヘッドユニット24(本発明の「印字部」に相当)にて画像形成を行う位置に、用紙Pを搬送する(印刷胴とも称される)。第1搬送胴21は、その外周面上で用紙Pを保持するための爪部21a及び吸気部(図示せず)を備える。用紙Pは、爪部21aにより端部が押さえられ、かつ吸気部により外周面に吸い寄せられることで外周面に保持される。第1搬送胴21は、モーター(図示せず)に接続され、当該モーターの回転量に比例した角度だけ回転する。そして、第1搬送胴21がX方向(図2の紙面垂直方向)に延びた回転軸(円筒軸)を中心に回転して周回移動することで、用紙Pは、第1搬送胴21の回転方向に沿って、搬送される。
【0023】
第2搬送胴22は、円筒形状を呈し、自身の外周面(即ち、搬送面)の上に用紙Pを保持し、用紙Pを搬送する(プレヒート胴とも称される)。第2搬送胴22は、フィーダーボード12と第1搬送胴21との間に介在し、自身がフィーダーボード12と対向する位置にて、フィーダーボード12から用紙Pを受け取り、自身が第1搬送胴21と対向する位置まで用紙Pを搬送した後、用紙Pを第1搬送胴21に渡す。第2搬送胴22は、例えば、歯車機構(図示せず)により、第1搬送胴21の回転動作と連動し、第1搬送胴21が用紙Pの保持領域一つ分(例えば、120°)回転すると、第2搬送胴22が逆方向に一回転を行うように構成されている。
【0024】
第2搬送胴22は、例えば、第1搬送胴21と同様に、その外周面上で用紙Pを保持するための爪部22a及び吸気部(図示せず)を備える。爪部22a(本発明の「把持部」に相当)は、第2搬送胴22の外周面(即ち、搬送面)上に配設され、フィーダーボード12の前端位置まで搬送された用紙Pの端部(ここでは、前端)を把持して、用紙Pをフィーダーボード12から第2搬送胴22の外周面上に引き込む。そして、用紙Pは、爪部22aにより端部が押さえられ、かつ吸気部により外周面に吸い寄せられることで外周面に保持される。尚、爪部22aは、例えば、図1に示したように、用紙Pの紙幅方向に沿って所定間隔で設けられた複数のくわえ爪によって構成されている。
【0025】
第2搬送胴22には、例えば、爪部22aを開閉させて、第2搬送胴22における用紙Pの受け取り動作及び受け渡し動作を制御するカム機構(図示せず)が設けられている。このカム機構は、爪部22aがフィーダーボード12と近接対向した位置に到達する時には、爪部22aを開状態から閉状態に変化させ、爪部22aにて用紙Pを受け取る動作を行わせる。又、このカム機構は、爪部22aが第1搬送胴21の爪部21aと近接対向した位置に到達する時には、爪部22aを閉状態から開状態に変化させ、用紙Pを爪部22aから第1搬送胴21の爪部21aに受け渡す動作を行わせる。
【0026】
尚、第2搬送胴22とフィーダーボード12とが対向する位置に隣接して、フィーダーボード12から第2搬送胴22への用紙Pの受け渡しをサポートする渡し爪が設けられていてもよい。
【0027】
尚、本実施形態では、フィーダーボード12上を搬送された用紙Pを受け取り、当該用紙Pを印刷実行位置に搬送する搬送胴の一例として、第1搬送胴21及び第2搬送胴22により構成された態様を示す。しかしながら、本発明において、搬送胴の構成は、任意であり、搬送胴は、第1搬送胴21のみで構成されてもよい。以下では、第1搬送胴21と第2搬送胴22とを区別しない場合には、単に「搬送胴21、22」とも称する。
【0028】
第2ヒーター23aは、第1搬送胴21により搬送される用紙Pが所定の温度範囲内の温度となるように、用紙Pを加熱するヒーターである。第2ヒーター23aは、例えば、赤外線ヒーターによって構成され、第1搬送胴21の外周面に保持されながら搬送される用紙Pを、その表面側から加熱する。第2ヒーター23aは、第1搬送胴21の外周面のうち、第2搬送胴22と対向する位置の搬送方向下流側で、且つ、ヘッドユニット24と対向する位置の搬送方向上流側の位置において、第1搬送胴21の外周面と対向するように設けられている。
【0029】
第3ヒーター23bは、第1搬送胴21の外周面(即ち、搬送面)を加熱するヒーターである。第3ヒーター23bは、例えば、第2ヒーター23aと同様に、赤外線ヒーターにより構成され、第1搬送胴21の外周面に対して赤外線を照射して、第1搬送胴21の外周面を加熱する。第3ヒーター23bは、第1搬送胴21の外周面のうち、デリバリー部28と対向する位置の搬送方向下流側で、且つ、第2搬送胴22と対向する位置の搬送方向上流側の位置において、第1搬送胴21の外周面と対向するように設けられている。
【0030】
本実施形態に係る画像形成装置1では、第2ヒーター23aにて、ヘッドユニット24から吐出されるインクの着弾前に用紙Pを直接的に加熱すると共に、第3ヒーター23bにて、第1搬送胴21の外周面の用紙搬送領域(即ち、用紙受け取り位置から印刷実行位置まで搬送する領域)を所定温度まで昇温しておくことで、インクの着弾前及び着弾後の用紙Pを適正温度に維持する構成となっている。
【0031】
尚、第2ヒーター23a及び第3ヒーター23bの動作は、制御部40(図4を参照)によって制御されている。第2ヒーター23aは、例えば、インクの着弾時に用紙Pの温度が所定の温度範囲内(例えば、45℃~60℃)となるように制御され、第3ヒーター23bは、例えば、第1搬送胴21の外周面の温度が所定の温度範囲内(例えば、50℃~65℃)となるように制御される。制御部40は、例えば、第2ヒーター23a及び第3ヒーター23bを、第1温度センサ26a及び第2温度センサ26bが示す温度情報に基づいて制御する。
【0032】
第4ヒーター23cは、第2搬送胴22の外周面(即ち、搬送面)を加熱するヒーターである。第4ヒーター23cは、例えば、赤外線ヒーターにより構成され、第2搬送胴22の外周面に対して赤外線を照射して、第2搬送胴22の外周面を加熱する。第2搬送胴22は、用紙Pを自身の外周面上に保持しながら搬送している過程で、用紙Pを予備的に加熱する。
【0033】
第4ヒーター23cの動作は、制御部40(図4を参照)によって制御されており、第4ヒーター23cは、第2搬送胴22の外周面の温度が、所定温度範囲(例えば、50℃~65℃)内となるように制御される。
【0034】
尚、用紙Pが第2搬送胴22から第1搬送胴21に受け渡される際に、用紙Pの熱膨張に起因して用紙Pに皺が発生することを抑制する観点から、第2搬送胴22の外周面の温度と第1搬送胴21の外周面の温度との温度差は小さい方が好ましく、典型的には、略同一の温度に設定される。但し、用紙Pの昇温を段階的に実施する観点から、第1搬送胴21の外周面の温度が、第2搬送胴22の外周面の温度よりも大きく設定されてもよい。又、逆に、用紙Pの昇温を早い段階から実施する観点から、第2搬送胴22の外周面の温度が、第1搬送胴21の外周面の温度よりも大きく設定されてもよい。
【0035】
ヘッドユニット24(以下、印字部24とも称する)は、自身のインク吐出面と第1搬送胴21の外周面とが所定の距離だけ離隔した状態で、第1搬送胴21の外周面の所定位置に対向して配設されている。そして、ヘッドユニット24は、用紙Pが保持された第1搬送胴21の回転に応じた適切なタイミングで、第1搬送胴21の外周面に保持された用紙Pに対してインクを吐出して画像を形成する。
【0036】
本実施形態に係る画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が用紙Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0037】
図3は、本実施形態に係るヘッドユニット24の構成を示す模式図である。ここでは、ヘッドユニット24のうち第1搬送胴21の外周面と対向する面が示されている。
【0038】
ヘッドユニット24は、取り付け部材244に取り付けられた4つのインクジェットヘッド242を備える。インクジェットヘッド242の各々には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズル243とを各々有する複数の画像形成素子(記録素子)が設けられている。この画像形成素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0039】
4つのインクジェットヘッド242は、ノズル列のX方向についての配置範囲が切れ目なく繋がるように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット24に含まれるノズル243のX方向についての配置範囲は、第1搬送胴21により搬送される用紙Pのうち画像が形成される領域のX方向の幅をカバーしており、ヘッドユニット24の位置は、画像の形成時には第1搬送胴21の回転軸に対して固定されて用いられる。すなわち、ヘッドユニット24は、用紙Pに対するX方向についての画像形成可能幅に亘ってインクを吐出可能なラインヘッドを有している。
【0040】
インクジェットヘッド242は、インクジェットヘッド242内に貯留されるインクを加熱するインク加熱部(図示せず)を備え、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクが用紙Pに吐出されると、インク滴が用紙Pに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となって用紙P上で凝固する。
【0041】
定着部25は、第1搬送胴21のX方向の幅に亘って配置された発光部を有し、第1搬送胴21に載置された用紙Pに対して当該発光部から紫外線等のエネルギー線を照射して用紙P上に吐出されたインク(ゲルインク)を硬化させて定着させる。定着部25の発光部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部28の受け渡し胴281の配置位置までの間において第1搬送胴21の外周面と対向して配置される。
【0042】
第1温度センサ26aは、第1搬送胴21の外周面の用紙搬送領域の温度を検出する。第1温度センサ26aは、第2ヒーター23aの搬送方向下流側で、且つ、ヘッドユニット24の搬送方向上流側の位置に、第1搬送胴21の外周面と対向して配設されている。第1温度センサ26aとしては、例えば、サーモパイルのような非接触式の温度センサが用いられる。
【0043】
第2温度センサ26bは、ヘッドユニット24によってインクの塗布が行われた後の用紙Pの温度を検出する。第2温度センサ26bは、ヘッドユニット24の搬送方向下流側で、且つ、定着部25の搬送方向上流側の位置に、第1搬送胴21の外周面と対向して配設されている。第2温度センサ26bとしては、例えば、サーモパイルのような非接触式の温度センサが用いられる。
【0044】
デリバリー部28は、用紙Pを第1搬送胴21からベルトループ282に受け渡す円筒状の受け渡し胴281と、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ282とを有し、受け渡し胴281により第1搬送胴21からベルトループ282上に受け渡された用紙Pをベルトループ282により搬送して排紙部30に送出する。
【0045】
排紙部30は、デリバリー部28により画像形成部20から送り出された用紙Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
【0046】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
【0047】
画像形成装置1の制御系は、制御部40、ヘッド駆動部241、定着部25、搬送駆動部51、操作表示部52、入出力インターフェース53、及び、ヒーター駆動部54等によって構成されている。
【0048】
制御部40は、例えば、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)及び記憶部44を有するマイコンである。
【0049】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU41は、画像形成装置1の全体動作を統括制御する。RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでも良い。ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0050】
記憶部44には、入出力インターフェース53を介して外部装置2から入力された印刷ジョブ(画像形成命令)及び当該印刷ジョブに係る画像データなどが記憶される。このうち印刷ジョブには、形成する画像に係る画像データを指定する情報の他、画像を形成する用紙Pの種別に係る情報(例えば、用紙Pの大きさ及び厚さ)が含まれる。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0051】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、第1搬送胴21のモーターに駆動信号を供給して、第1搬送胴21を所定の速度及びタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいてフィーダーボード12、第2搬送胴22及びデリバリー部28を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、用紙Pの第1搬送胴21への供給及び第1搬送胴21からの排出を行わせる。
【0052】
操作表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部52は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部40に出力する。
【0053】
入出力インターフェース53は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース53は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースの何れかまたはこれらの組み合わせで構成される。尚、外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース53を介してプリントジョブ及び画像データ等を制御部40に供給する。
【0054】
ヒーター駆動部54は、第1ヒーター13、第2ヒーター23a、第3ヒーター23b、及び第4ヒーター23cを駆動する駆動回路である。ヒーター駆動部54は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、第1ヒーター13、第2ヒーター23a、第3ヒーター23b、及び第4ヒーター23cそれぞれの動作を独立して、制御可能に構成されている。
【0055】
ヘッド駆動部241は、インクジェットヘッド242の画像形成素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、インクジェットヘッド242のノズル243から画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0056】
[給紙部10の詳細構成]
図5は、本実施形態に係る給紙部10の構成を示す平面図であり、図6は、本実施形態に係る給紙部10の構成を示す側面図である。
【0057】
給紙トレイ11には、フィーダーボード12(本発明の「給紙手段」に相当)が連なって設置されており、給紙トレイ11に積み重ねられた用紙Pは、用紙送り出し機構(例えば、給紙トレイ11に積載された用紙束の最上段にある用紙Pを吸着して搬送する機構)(図示せず)により、1枚又は複数枚ずつに分離されて、フィーダーボード12に送り出されるようになっている。
【0058】
フィーダーボード12は、給紙トレイ11からフィーダーボード12に送り出された用紙Pを、用紙搬送方向に搬送する紙送りベルト12a、紙送りベルト12a上を搬送される用紙Pを上方から押さえつける紙押さえコロ12b、及び、フィーダーボード12上を搬送される用紙Pを、フィーダーボード12から第2搬送胴22に受け渡す位置(即ち、フィーダーボード12の前端位置)に位置決めする見当部としての位置決め部12c等を有する。
【0059】
フィーダーボード12は、例えば、給紙トレイ11から送り出される用紙Pを、ストリームフィーダー方式で搬送する構成となっている。ストリームフィーダー方式では、一枚一枚の用紙Pを20cm程度ずらしながら、複数枚の用紙Pを重ねた状態で、給紙トレイ11からフィーダーボード12に用紙Pを送り出す。
【0060】
ここで、位置決め部12cは、例えば、フィーダーボード12の前端位置に設けられた前当てである。つまり、給紙トレイ11からフィーダーボード12に送り出された用紙Pは、紙送りベルト12aにて搬送されて、位置決め部12cに衝突することにより、フィーダーボード12の前端位置に停止し、位置決めされる。尚、位置決め部12cの用紙Pと衝突する側の面は、用紙搬送方向に対して直交する方向に延在する当接面となっており、位置決め部12cに衝突した用紙Pは、用紙Pの前端が、用紙搬送方向と直交する方向に平行になるように位置決めされることになる。
【0061】
位置決め部12cに衝突して位置決めされた用紙Pは、その後、第2搬送胴22の爪部22aに把持されて、フィーダーボード12から第2搬送胴22に受け渡される。
【0062】
位置決め部12cは、例えば、第2搬送胴22の回転位置に応じて、図6の矢印に示すように、フィーダーボード12の搬送面に対して、倒れた状態と立位状態とが変化するように構成されている。より詳細には、位置決め部12cは、第2搬送胴22の爪部22aがフィーダーボード12の前端位置に達していないときには立位状態となっており、第2搬送胴22の爪部22aがフィーダーボード12の前端位置に達したときに倒れた状態へと変化する。このとき、フィーダーボード12の前端位置に位置決めされた用紙Pの前端が爪部22aに把持され、用紙Pは、第2搬送胴22の回転に伴って、フィーダーボード12から第2搬送胴22の外周面上に引き込まれ、第2搬送胴22の外周面上に保持されることになる。そして、用紙Pは、第2搬送胴22の外周面上に保持された状態で、第2搬送胴22の回転方向に沿って搬送される。
【0063】
尚、位置決め部12cの状態変化は、例えば、第2搬送胴22の回転動作と連動するカム機構(図示せず)、又は、第2搬送胴22の回転位置にあわせて位置決め部12cを動作させる駆動モータ(図示せず)によって行われる。
【0064】
第1ヒーター13は、用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡される前に、用紙Pの前端の温度が所定温度範囲となるように、用紙Pを加熱する。つまり、第1ヒーター13は、用紙Pの前端が搬送胴21、22(ここでは、第2搬送胴22)の外周面に接触する前に、用紙Pの前端を事前加熱し、用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡された際(即ち、受け渡された直後、及び、その後に搬送されている間)に、用紙Pの前端に皺が発生することを抑制する。
【0065】
用紙Pの前端に発生する皺は、典型的には、用紙Pの前端が爪部22aのくわえ爪で押さえ付けられた状態で、用紙Pの前端が搬送胴21、22の外周面の温度付近まで上昇することによって、用紙Pの前端の爪部22aの各くわえ爪の間の領域が熱膨張して皺状になる現象に依拠する。つまり、用紙Pの前端の皺は、用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に対して受け渡された際の用紙Pの前端の温度の急上昇により発生し、この皺が、用紙Pが搬送胴21、22にて印字部24の位置まで搬送されるまでの間に、更に成長及び波及することになる。
【0066】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置1においては、第1ヒーター13を用いて、用紙Pの前端を事前加熱しておくことで、用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡された際(即ち、受け渡された直後、及び、その後に搬送されている間)に、用紙Pの前端の爪部22aの各くわえ爪の間の領域が過度に熱膨張することを抑制する。
【0067】
かかる観点から、第1ヒーター13は、例えば、以下の式(1)の温度条件を充足するように、用紙Pを加熱する。
|T1-T2|/T1≦0.15 …式(1)
(但し、T1:印字部24の位置における用紙Pの前端の温度[℃]、T2:用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡されるときの用紙Pの前端の温度[℃])
これによって、フィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡された際(即ち、受け渡された直後、及び、その後に搬送されている間)に発生する用紙Pの熱膨張を抑制することができるため、用紙Pの前端に発生する皺を抑制することが可能となる。尚、印字部24の位置における用紙Pの前端の温度は、例えば、第1温度センサ26aのセンサ値(及び/又は第2温度センサ26bのセンサ値)により定義されてもよいし、搬送胴21、22の外周面の温度を基準に定義されてもよい。
【0068】
この際、より好ましくは、第1ヒーター13は、例えば、以下の式(2)の温度条件を充足するように、用紙Pを加熱する。
(T1-T2)/T1≦0 …式(2)
(但し、T1:印字部24の位置における用紙Pの前端の温度[℃]、T2:用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡されるときの用紙Pの前端の温度[℃])
【0069】
又、更に好ましくは、第1ヒーター13は、用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡されるときに、事前に、用紙Pの前端の温度が搬送胴21、22の外周面の用紙搬送領域の温度以上となるように、用紙Pの前端を加熱する。
【0070】
尚、ここでは、第1搬送胴21の外周面の用紙搬送領域の温度と第2搬送胴22の外周面の用紙搬送領域の温度とが同一であることを前提としたが、第1搬送胴21の外周面の用紙搬送領域の温度と第2搬送胴22の外周面の用紙搬送領域の温度とが異なる場合には、上記の温度条件は、典型的には、第2搬送胴22の外周面の用紙搬送領域の温度を基準に設定される。
【0071】
第1ヒーター13は、例えば、図5図6に示すように、フィーダーボード12と隣接して位置決め部12cと対向する位置に配設され、用紙Pがフィーダーボード12の前端位置に位置決めされたときに、用紙Pの前端を加熱する構成となっている。つまり、用紙Pは、位置決め部12cで位置決めされたタイミングで、第1ヒーター13に加熱され、フィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡されるまでの待機時間に、用紙Pの前端は、少なくとも用紙Pの前端の温度と搬送胴21、22の外周面の用紙搬送領域の温度との温度差が略7.5℃以下となるまで、昇温されることになる。尚、かかる構成によって、短時間で効率的に、用紙Pの前端を加熱することが可能であり、第1ヒーター13に加熱処理が施されてから搬送胴21、22に受け渡されるまでの間に用紙Pの前端の温度が低下することも抑制される。
【0072】
尚、ストリームフィーダー方式では、フィーダーボード12は、給紙トレイ11側では、複数枚の用紙Pを重ねた状態で搬送し、前端位置(即ち、搬送胴21、22に用紙Pを受け渡す位置)側で、用紙Pを1枚ずつ分離した状態とする。従って、第1ヒーター13を、位置決め部12cと対向する位置に配設することで、第1ヒーター13が、1枚1枚の用紙Pの前端を各別に加熱し得る状態となる。
【0073】
第1ヒーター13としては、例えば、加熱エアを吹き付けることにより、用紙Pを加熱する空気加熱式ヒーターが用いられるのが好ましい。空気加熱式ヒーターは、局所加熱が可能であり、且つ、高い昇温速度を確保することが可能である点で有用である。又、これによって、不必要に用紙P全体を昇温することもないため、最小限の熱量で、皺の発生を抑制することができる。但し、第1ヒーター13としては、ランプ照射により用紙Pを加熱する赤外線ヒーターや、フィーダーボード12上に設けられた電気抵抗式ヒーター等が用いられてもよい。
【0074】
又、第1ヒーター13は、用紙Pの前端に隣接する非印字領域を選択的に加熱するのが好ましい。これによって、用紙Pの印字領域に温度ムラが発生することを抑制することが可能である。
【0075】
第1ヒーター13の動作は、制御部40によって制御されており、例えば、用紙Pがフィーダーボード12上を搬送されるタイミングにあわせて、加熱動作を実行するように制御される。
【0076】
但し、第1ヒーター13の動作は、用紙Pの種類が合成紙である場合、稼働状態となり、用紙Pの種類が非合成紙(例えば、普通紙)である場合、非稼働状態となるように、制御されるのが好ましい。これは、用紙Pの種類によっては、熱膨張率が小さく、用紙Pがフィーダーボード12から搬送胴21、22に受け渡された際(即ち、受け渡された直後、及び、その後に搬送されている間)にも用紙Pの皺が問題とならないためである。具体的には、用紙Pの皺は、特に、用紙Pの種類が合成紙である場合に限って、インクの着弾ずれを引き起こす程度まで発生しやすいため、消費エネルギー抑制の観点から、印刷対象の用紙Pが合成紙である場合に限って、第1ヒーター13を稼働状態としてもよい。
【0077】
図7は、本実施形態に係る画像形成装置1において、第1ヒーター13の動作制御を行うために制御部40が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、例えば、制御部40がコンピュータプログラムに従って、所定間隔(例えば、100msec毎)で繰り返し実行する処理である。
【0078】
ステップS1において、制御部40は、印刷実行指令があったか否かを判定する。そして、制御部40は、印刷実行指令があった場合(S1:YES)、ステップS2に処理を進め、印刷実行指令がない場合(S1:NO)、特に処理を行うことなく、図7のフローチャートの処理を終了する。
【0079】
ステップS2において、制御部40は、印刷対象の用紙Pが合成紙か否かを判定する。
そして、制御部40は、印刷対象の用紙Pが合成紙のあった場合(S2:YES)、ステップS3に処理を進め、印刷対象の用紙Pが合成紙ではない場合(S2:NO)、特に処理を行うことなく、図7のフローチャートの処理を終了する。
【0080】
ステップS3において、制御部40は、第1ヒーター13の動作をONにする。これにより、第1ヒーター13は、稼働状態となり、フィーダーボード12から搬送され、位置決め部12cにて位置決めされた用紙Pの前端を加熱処理するように動作する。
【0081】
制御部40は、このような一連の処理を繰り返し実行することで、用紙Pの種類に応じて、第1ヒーター13の動作のオンオフの切り替えを行う。
【0082】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1は、
給紙トレイ(例えば、給紙トレイ11)から送り出される用紙を搬送する給紙手段(例えば、フィーダーボード12)と、
前記用紙を把持する把持部(例えば、爪部22a)を有し、前記給紙手段に搬送された前記用紙を受け取り、当該用紙を前記把持部にて把持した状態で印字部の位置まで搬送する搬送胴(例えば、搬送胴21、22)と、
前記搬送胴よりも搬送方向上流側に設けられ、前記用紙が前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡される前に、以下の式(3)の温度条件を充足するように、前記用紙を加熱するヒーター(例えば、第1ヒーター13)と、
を備える。
|T1-T2|/T1≦0.15 …式(3)
(但し、T1:前記印字部の位置における前記用紙の前記紙端の温度[℃]、T2:前記用紙が前記給紙手段から前記搬送胴に受け渡されるときの前記用紙の前記紙端の温度[℃])
【0083】
従って、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、用紙搬送時に用紙に皺が発生することに伴う画像の品質低下を抑制することが可能である。
【0084】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0085】
例えば、上記実施形態では、フィーダーボード12上を搬送された用紙Pを受け取り、当該用紙Pを印刷実行位置に搬送する搬送胴の一例として、第1搬送胴21及び第2搬送胴22により構成された態様を示した。しかしながら、本発明において、搬送胴の構成は、任意であり、搬送胴は、第1搬送胴21のみで構成されてもよい。尚、その場合には、第1ヒーター13は、用紙Pがフィーダーボード12から第1搬送胴21に受け渡されるときの用紙Pの前端の温度と、第1搬送胴21の外周面の用紙搬送領域における温度と、を基準として、上記式(1)及び式(2)と同様の温度条件を充足するように、用紙Pを加熱する構成となる。
【0086】
又、上記実施形態では、爪部22aの一例として、用紙Pの紙幅方向に沿って並んで設けられた複数のくわえ爪によって構成された態様を示した。しかしながら、本発明において、爪部22aの構成は、任意であり、例えば、爪部22aは、用紙Pの搬送方向に沿って並んで設けられた複数のくわえ爪によって構成されてもよい。尚、爪部22aが、用紙Pの搬送方向に沿って並んで設けられた複数のくわえ爪によって構成されている場合には、上記した熱膨張に起因した皺は、主に、複数のくわえ爪によって把持される用紙Pの横端にて発生することになる。従って、かかる場合には、第1ヒーター13は、用紙Pの横端を加熱する構成とするのが好ましい。
【0087】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の画像形成装置によれば、用紙搬送時に用紙に皺が発生することに伴う画像の品質低下を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 インクジェット式画像形成装置
10 給紙部
11 給紙トレイ
12 フィーダーボード
12a 紙送りベルト
12b 紙押さえコロ
12c 位置決め部
13 第1ヒーター
20 画像形成部
21 第1搬送胴
22 第2搬送胴
22a 爪部
23a 第2ヒーター
23b 第3ヒーター
23c 第4ヒーター
24 ヘッドユニット
25 定着部
28 デリバリー部
30 排紙部
31 排紙トレイ
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
51 搬送駆動部
52 操作表示部
53 入出力インターフェース
54 ヒーター駆動部
2 外部装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7