(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241008BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 H
(21)【出願番号】P 2020201781
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 正和
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-133672(JP,A)
【文献】特開2019-067147(JP,A)
【文献】特開2016-021125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在の位置を検出する位置検出装置と、
前記
自車両の現在の速度を検出する速度検出装置と、
二つの車線が合流する地点である合流地点に前記
自車両が接近しつつある場合に当該
自車両の運転者が行う運転操作の特徴を表す特徴データを記憶した記憶装置と、
前記
自車両が特定の合流地点の手前の所定の地点を通過するとき、前記所定の地点と前記合流地点との間の区間における車両の運転操作に関する統計データを取得し、前記取得した統計データを前記特徴データに基づいて補正し、前記所定の地点における前記
自車両の速度及び前記補正後の統計データに基づいて、前記
自車両が前記合流地点に到達する時刻である自車両到達時刻を推定する推定装置と、
前記合流地点における
前記自車両の合流に関する情報を、前記
自車両の運転者に提示する情報提示装置と、
を備えた車両運転支援装置であって、
前記情報提示装置は、
他の前記車両運転支援装置が搭載された他車両における前記推定装置により推定された時刻であって、当該他車両が前記合流地点に到達する時刻である他車両到達時刻を表す時刻データを取得し、前記自車両到達時刻と前記時刻データが表す他車両到達時刻との差が所定の閾値以下であるとき、前記情報を、前記
自車両の運転者に提示するように構成され、
前記統計データは、前記区間において車両が加速を開始する標準的な地点を表す加速開始地点データ、前記区間における車両の標準的な加速度を表す加速度データ、及び前記合流地点における車両の標準的な速度を表す速度データを含み、
前記推定装置は、
前記特徴データに基づいて、前記標準的な加速開始地点、前記標準的な加速度、前記標準的な速度を補正し、
前記所定の地点から前記補正後の加速開始地点までの第1区間における前記自車両の速度が前記所定の地点における速度であり、前記補正後の加速開始地点から加速を開始した前記自車両の速度が前記補正後の速度に達するまでの第2区間における前記自車両の加速度が前記補正後の加速度であり、且つ前記自車両の速度が前記補正後の速度に達してから前記合流地点に到達するまでの第3区間における前記自車両の速度が前記補正後の速度であると仮定して、前記自車両到達時刻を推定する、
ように構成された、
車両運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の合流地点における車両の合流に関する情報を運転者に提示する車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の本線を走行している車両が合流開始地点に到達するまでに要する時間を推定して、その推定結果を、前記道路の本線に合流する合流車線を走行している車両の運転者に提示する車両運転支援装置(以下、「従来装置」と称呼する。)が知られている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【0003】
従来装置は、第1センサ、第2センサ及びサーバコンピュータを含む。第1センサ及び第2センサは、例えば、高速道路の本線に設置されている。第1センサは、本線と合流車線とが交差し始める地点に対して手前(上流側)に位置する所定の地点(以下、「第1地点」と称呼する。)に設置されている。第2センサは、本線と合流車線とが交差し始める地点(以下、「第2地点」と称呼する。)に設置されている。第1センサ及び第2センサのそれぞれは、それらが設置された地点を車両が通過した時刻、その車両の速度などを検出する。サーバコンピュータは、第1センサ及び第2センサによる、各車両の通過時刻、速度などの検出結果に基づいて、各車両が第1地点から第2地点に到達するまでに要した時間を計算し、その計算結果を、所要時間データとして記憶している。
【0004】
第1地点を車両が新たに通過すると、サーバコンピュータは、前記第1センサにより検出された当該車両の速度、及び第1地点と第2地点との距離に基づいて、当該車両が第2地点に到達する時刻(以下。「到達時刻」と称呼する)を推定する。さらに、サーバコンピュータは、当該推定結果を、前記所要時間データに基づいて補正する。そして、サーバコンピュータは、当該補正後の到達時刻を、合流車線を走行している車両の運転者に報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
ところで、運転者ごとに、運転操作の特徴が異なる。例えば、ある運転者は、各合流地点の手前の所定の区間(第1地点と第2地点の間)において、自車両の速度を大きく変化させるように運転する。他のある運転者は、各合流地点の手前の所定の区間において、自車両の速度をあまり変化させないように運転する。従来装置のサーバコンピュータによる到達時刻の推定及び補正において、上記のような、「自車両の運転者の運転操作に関する特徴」が考慮されていない。したがって、従来装置による到達時刻(補正後の到達時刻)の推定精度が低い。
【0007】
本発明の目的の一つは、自車両が合流地点に到達する時刻の推定精度を向上させた車両運転支援装置を提供することにある。
【0008】
本発明の車両運転支援装置(10)は、
自車両(V1)の現在の位置を検出する位置検出装置(12)と、
前記自車両の現在の速度を検出する速度検出装置(112)と、
二つの車線が合流する地点である合流地点に前記自車両が接近しつつある場合に当該自車両の運転者が行う運転操作の特徴を表す特徴データ(KPA、KA、KS)を記憶した記憶装置(111)と、
前記自車両が特定の合流地点(J)の手前の所定の地点(PT[J])を通過するとき、前記所定の地点と前記合流地点との間の区間における車両の運転操作に関する統計データ(D[J])を取得し、前記取得した統計データを前記特徴データに基づいて補正し、前記所定の地点における前記自車両の速度及び前記補正後の統計データに基づいて、前記自車両が前記合流地点に到達する時刻である自車両到達時刻を推定する推定装置(111)と、
前記合流地点における前記自車両の合流に関する情報を、前記自車両の運転者に提示する情報提示装置(13)と、
を備える。
前記情報提示装置は、他の前記車両運転支援装置が搭載された他車両における前記推定装置により推定された時刻であって、当該他車両が前記合流地点に到達する時刻である他車両到達時刻を表す時刻データを取得し、前記自車両到達時刻と前記時刻データが表す他車両到達時刻との差が所定の閾値以下であるとき、前記情報を、前記自車両の運転者に提示するように構成される。
前記統計データは、前記区間において車両が加速を開始する標準的な地点を表す加速開始地点データ、前記区間における車両の標準的な加速度を表す加速度データ、及び前記合流地点における車両の標準的な速度を表す速度データを含み、
前記推定装置は、
前記特徴データに基づいて、前記標準的な加速開始地点、前記標準的な加速度、前記標準的な速度を補正し、
前記所定の地点から前記補正後の加速開始地点までの第1区間における前記自車両の速度が前記所定の地点における速度であり、前記補正後の加速開始地点から加速を開始した前記自車両の速度が前記補正後の速度に達するまでの第2区間における前記自車両の加速度が前記補正後の加速度であり、且つ前記自車両の速度が前記補正後の速度に達してから前記合流地点に到達するまでの第3区間における前記自車両の速度が前記補正後の速度であると仮定して、前記自車両到達時刻を推定する、
ように構成される。
【0009】
本発明に係る車両運転支援装置において、推定装置は、前記所定の地点と前記合流地点との間の区間における運転者の運転操作(例えば、速度の変化態様)に関する統計データを取得し、前記取得した統計データを前記特徴データに基づいて補正する。推定装置は、前記補正後の統計データを用いて、自車両が合流地点に到達する時刻(到達時刻)を推定する。すなわち、「自車両の運転者の運転操作に関する特徴」が推定値(到達時刻)に反映されている。よって、車両運転支援装置によれば、従来装置に比べて、到達時刻の推定精度が高い。
【0011】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両運転支援装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、自車両と他車両が合流する場面を示す平面図である。
【
図3】
図3は、表示装置に表示される画像の一例である。
【
図4】
図4は、到達時刻を推定する方法の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、合流車両報知プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(構成)
本発明の一実施形態に係る車両運転支援装置10は、
図1に示したように、車両Vに適用される。
【0014】
車両運転支援装置10は、制御装置11、ナビゲーションシステム12及び表示装置13を備え、これらの装置が通信ネットワークCANを介して接続されている。
【0015】
制御装置11は、コンピュータ装置111、速度センサ112、加速度センサ113及び通信機114を備える。コンピュータ装置111は、演算装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM)、タイマー装置などから構成される。演算装置は、後述する合流車両報知プログラムを実行する。記憶装置は、合流車両報知プログラム及び同プログラムにおける所定の演算に用いられるデータを記憶している。
【0016】
速度センサ112は、車両Vの現在の速度を検出し、当該速度を表す速度データをコンピュータ装置111に供給する。加速度センサ113は、車両Vの現在の加速度を検出し、当該加速度を表す加速度データをコンピュータ装置111に供給する。
【0017】
通信機114は、サーバコンピュータSCから、無線通信回線を介して、データ(後述するデータセットD[J])を受信してコンピュータ装置111へ供給する。さらに、通信機114は、コンピュータ装置111から供給されたデータを、無線通信回線を介して、サーバコンピュータSCに送信する。加えて、通信機114は、他車両の車両運転支援装置10から、無線通信回線を介して、データを受信してコンピュータ装置111へ供給する。さらに、通信機114は、コンピュータ装置111から供給されたデータを、無線通信回線を介して、他車両の車両運転支援装置10に送信する。
【0018】
ナビゲーションシステム12は、複数の人工衛星STからGPS信号を受信し、前記受信した複数のGPS信号に基づいて、車両V(自車両)の現在の位置VP(緯度及び経度)を検出する。ナビゲーションシステム12は、地図を表す地図データを記憶している。ナビゲーションシステム12は、前記検出した位置VPの周辺の地図を、前記地図データに基づいて表示する。ナビゲーションシステム12は、コンピュータ装置111に、前記検出した位置VPを表す車両位置データを送信する。さらに、ナビゲーションシステム12は、2つの地点の距離L(道路に沿った距離)を計算する機能を備える。例えば、ナビゲーションシステム12は、コンピュータ装置111から異なる2つの地点の距離を計算することを表す要求信号を受信すると、その距離(道路に沿った距離)を計算し、前記計算した距離Lを表す距離データをコンピュータ装置111に送信する。加えて、ナビゲーションシステム12は、道路の各合流開始地点J(2つの車線のうちの一方の車線に他方の車線が合流する部位における上流側の端点)の位置を表す地点データを記憶している。さらに、ナビゲーションシステム12は、各合流開始地点Jの手前の所定の地点(以下、「基点PT[J]」と称呼する。)をそれぞれ表す地点データを記憶している。本実施形態において、基点PT[J]は、合流開始地点Jからの距離Lが所定値LT[J]である地点に定められている。ナビゲーションシステム12は、車両V(自車両)が、基点PT[J]が到達したとき、第1到達信号RS1をコンピュータ装置111に送信する。詳しくは後述するように、コンピュータ装置111は、第1到達信号RS1をトリガーとして、車両V(自車両)が合流開始地点Jに到達する時刻を推定する。さらに、ナビゲーションシステム12は、車両V(自車両)が、合流開始地点Jに到達したとき、第2到達信号RS2をコンピュータ装置111に送信する。なお、本明細書において、「車両Vがある地点Xに到達する」とは、平面視において、地点Xを通り且つ車線の延設方向に対して垂直な直線上を、車両Vの前端が重なった状態を意味する。
【0019】
表示装置13は、液晶ディスプレイ131及びディスプレイコントローラ132を含む。液晶ディスプレイ131は、例えば、車両Vのインストゥルメントパネルに組み込まれる。ディスプレイコントローラ132は、コンピュータ装置111から画像を表す画像データを受信する。ディスプレイコントローラ132は、前記受信した画像データが表す前記画像を、液晶ディスプレイ131に表示させる。
【0020】
(動作)
図2を参照して、車両運転支援装置10の動作の概略を説明する。合流する2つの車線のうちの一方の車線を走行している車両V(以下、「自車両V1」と称呼する。)が基点PT[J]に到達すると、当該自車両V1の車両運転支援装置10は、自車両V1が合流開始地点Jに到達する時刻を推定する。自車両V1は、前記推定した時刻を表す到達時刻データを、他方の車線を走行している車両Vであって、合流開始地点Jの近傍に位置する車両V(以下、「他車両V2」と称呼する。)の車両運転支援装置10に送信する。さらに、自車両V1の車両運転支援装置10は、当該他車両V2の車両運転支援装置10から、当該他車両V2が合流開始地点Jに到達する時刻を表す到達時刻データを受信する。自車両V1の車両運転支援装置10は、自車両V1が合流開始地点Jに到達する時刻と、他車両V2が合流開始地点Jに到達する時刻との時間差を計算する。その時間差が所定の閾値以下である場合、自車両V1の車両運転支援装置10は、自車両V1の運転者に対して他車両V2への注意を促す画像(例えば、
図3に示した画像G)を表示する。他車両V2の車両運転支援装置10も同様の処理を行い、上記時間差が所定の閾値以下である場合に他車両V2の運転者に対して注意を促す画像Gを表示する。
【0021】
つぎに、
図4を参照して、自車両V1が合流開始地点Jに到達する時刻(以下、「到達時刻TJ」と称呼する。)を推定する方法を説明する。自車両V1の車両運転支援装置10のコンピュータ装置111(以下、「CPU」と称呼する。)は、下記の事項(A)乃至(D)を前提として規定された演算式(1)乃至演算式(10)に基づいて、到達時刻TJを推定する。
【0022】
(A)自車両V1が走行している車線(合流する車線Ra及び車線Rbのうちの一方の車線)における基点PT[J]と合流開始地点Jとの間の区間を第1区間d1、第2区間d2及び第3区間d3に区分する。
(B)第1区間d1における自車両V1の速度は一定である。その速度は、基点PT[J]における速度S1である。
(C)自車両V1は、第2区間d2の始点(以下、「加速開始地点PA」と称呼する。)から加速を開始する。第2区間d2における自車両V1の加速度Aは一定である。第2区間d2の終点における自車両V1の速度が所定値(以下、「速度S2」と称呼する。)である。
(D)第3区間d3における自車両V1の速度は一定である。その速度は、第2区間d2の終点における速度S2である。
【0023】
上記の事項(A)乃至(D)を前提とすると、到達時刻TJは、現在時刻TN(自車両V1が基点PT[J]に到達した時刻)に、下記の時間t1乃至時間t3を加算して求められる。
・時間t1:自車両V1が第1区間d1の始点(基点PT[J])から終点(加速開始地点PA)に至るまでに要する時間
・時間t2:自車両V1が第2区間d2の始点(加速開始地点PA)から終点に至るまでに要する時間
・時間t3:自車両V1が第3区間d3の始点から終点(合流開始地点J)に至るまでに要する時間
【0024】
すなわち、到達時刻TJは、現在時刻TN、時間t1、時間t2及び時間t3を用いて規定された下記の演算式(1)に基づいて求められる。
TJ=TN+t1+t2+t3 ・・・(1)
【0025】
時間t1は、速度S1及び第1区間d1の区間長L1を用いて規定された下記の演算式(2)に基づいて求められる。
t1=L1/S1 ・・・(2)
【0026】
時間t2は、加速度A、速度S1及び速度S2を用いて規定された下記の演算式(3)に基づいて求められる。
t2=(S2-S1)/A ・・・(3)
【0027】
時間t3は、速度S2及び第3区間の区間長L3を用いて規定された下記の演算式(4)に基づいて求められる。
t3=L3/S2 ・・・(4)
【0028】
CPUは、上記の演算式(2)乃至演算式(4)に基づいて、時間t1乃至時間t3を特定するために、下記の処理を実行する。
【0029】
自車両V1が基点PT[J]に到達すると、CPUは、速度センサ112から速度データを取得して、速度S1を特定する。
【0030】
つぎに、CPUは、以下説明するように、所定のデータをサーバコンピュータSCから取得し、さらにそれらのデータを補正し、当該補正後のデータに基づいて、区間長L1、加速度A、速度S2及び区間長L3を特定する。
【0031】
ところで、サーバコンピュータSCは、各合流開始地点Jに対応付けられたデータセットD[J]を記憶している。データセットD[J]は、車線Raに対応したデータセットDa[J]及び車線Rbに対応したデータセットDb[J]から構成されている。自車両V1が車線Raを走行している場合、CPUは、到達時刻TJを推定する際、データセットDa[J]を用いる。一方、自車両V1が車線Rbを走行している場合、CPUは、到達時刻TJを推定する際、データセットDb[J]を用いる。
【0032】
データセットDa[J]は、以下の統計データから構成されている。
・車線Raにおける、車両の標準的な加速開始地点PA[J](車両が加速を開始する地点と合流開始地点Jとの標準的な距離)を表す加速開始地点データ
・車線Raの第2区間d2における車両の標準的な加速度A[J]を表す加速度データ
・車線Raを走行して合流開始地点Jに到達した車両の合流開始地点Jにおける標準的な速度である合流速度S[J]を表す合流速度データ
【0033】
データセットDb[J]は、以下の統計データから構成されている。
・車線Rbにおける、車両の標準的な加速開始地点PA[J](車両が加速を開始する地点と合流開始地点Jとの標準的な距離)を表す加速開始地点データ
・車線Rbの第2区間d2における車両の標準的な加速度A[J]を表す加速度データ
・車線Rbを走行して合流開始地点Jに到達した車両の合流開始地点Jにおける標準的な速度である合流速度S[J]を表す合流速度データ
【0034】
データセットDa[J]及びデータセットDb[J]を構成する各データは、それらが表す物理量の実測値に基づいて決定されている。すなわち、各車両に搭載された車両運転支援装置10は、その車両が基点PT[J]から合流開始地点Jに到達するまでに、車両位置データ、速度データ及び加速度データに基づいて、実際の加速開始地点(加速を開始した地点と合流開始地点Jとの距離)、加速度(第2区間d2における平均加速度)及び合流速度(第3区間d3における平均速度)を特定(実測)する。そして、各車両の車両運転支援装置10は、それらの実測値を表すデータ及び走行した車線(車線Ra又は車線Rb)を表すデータを、通信機114を介して、サーバコンピュータSCに送信する。サーバコンピュータSCは、各車両から送信されたデータを記憶(蓄積)する。そして、サーバコンピュータSCは、前記記憶しているデータに基づいて、加速開始地点の平均値、加速度の平均値及び合流速度の平均値をそれぞれ計算し、それらの計算結果をデータセットD[J]として記憶する。すなわち、ある車両が合流開始地点Jを通過すると、データセットDa[J]及びデータセットDb[J]のうち、その車両が走行した車線に対応するデータセットが更新される。なお、サーバコンピュータSCには、「加速開始地点、加速度及び合流速度」の実測値をそれぞれ表すデータが蓄積されていくが、サーバコンピュータSCは、最新の所定数のデータを保持し、それよりも古いデータを破棄する。そして、サーバコンピュータSCは、前記最新の所定数のデータに基づいて、「加速開始地点、加速度及び合流速度」の平均値をそれぞれ計算する。
【0035】
ここで、ある運転者は、各合流開始地点Jから比較的大きく離れた地点から加速を開始するように運転する、これに対し、他のある運転者は、各合流開始地点Jに比較的近い地点から加速を開始するように運転する。
【0036】
加えて、ある運転者は、各合流開始地点Jの手前において、比較的大きく加速するように運転する。これに対し、他のある運転者は、各合流開始地点Jの手前において、あまり加速しないように運転する。
【0037】
さらに、ある運転者は、各合流開始地点Jにおいて、比較的高速で運転する。これに対し、他のある運転者は、各合流開始地点Jにおいて、比較的低速で運転する。
【0038】
そこで、CPUは、標準値としての「加速開始地点PA[J]、加速度A[J]及び合流速度S[J]」を、「自車両の運転者の運転操作に関する特徴」に基づいて規定された「加速開始地点補正値KPA、加速度補正値KA及び合流速度補正値KS」を用いて補正する。
【0039】
加速開始地点補正値KPAは、「各合流開始地点Jの手前の区間における自車両V1の加速開始地点の実測値と、その区間における標準的な加速開始地点PA[J]との差分」の平均値である。加速度補正値KAは、「各合流開始地点Jの手前の区間における標準的な加速度A[J]に対する、その区間における自車両V1の加速度の実測値の比」の平均値である。合流速度補正値KSは、「各合流開始地点Jにおける自車両V1の合流速度の実測値と、その合流開始地点Jにおける標準的な合流速度S[J]との差分」の平均値である。加速開始地点補正値KPA、加速度補正値KA及び合流速度補正値KSを表す補正値データは、自車両V1のコンピュータ装置111の記憶装置に記憶されている。
【0040】
以下、加速開始地点補正値KPA、加速度補正値KA及び合流速度補正値KSを決定(更新)する手法を具体的に説明する。上記のように、CPUは、自車両V1が基点PT[J]から合流開始地点Jに到達するまでの間に、加速開始地点(加速を開始した地点と合流開始地点Jとの距離)、加速度(第2区間d2における加速度)及び合流速度を実測している。CPUは、各合流開始地点Jを通過する際に、上記の実測値に基づいて、加速開始地点補正値KPA、加速度補正値KA及び合流速度補正値KSを、以下に述べるようにして更新する。
【0041】
CPUは、自車両V1の加速開始地点の実測値と、標準的な加速開始地点PA[J]との差分(距離)を計算する。自車両V1が、標準的な加速開始地点PA[J]に対して上流側で加速を開始した場合、上記の「差分」は正の値であり、自車両V1が、標準的な加速開始地点PA[J]に対して下流側で加速を開始した場合、上記の「差分」は負の値である。CPUは、当該計算結果と、記憶装置に記憶されている加速開始地点補正値KPAとの平均値を、新たな加速開始地点補正値KPAとして、記憶装置に記憶させる。なお、加速開始地点補正値KPAの初期値は、「0」である。
【0042】
加えて、CPUは、標準的な加速度A[J]に対する、自車両V1の加速度の実測値の比を計算する。CPUは、当該計算結果と、記憶装置に記憶されている加速度補正値KAとの平均値を、新たな加速度補正値KAとして、記憶装置に記憶させる。なお、加速度補正値KAの初期値は、「1」である。
【0043】
さらに、CPUは、自車両V1の合流速度の実測値と、標準的な合流速度S[J]との差分を計算する。CPUは、当該計算結果と、記憶装置に記憶されている合流速度補正値KSとの平均値を、新たな合流速度補正値KSとして、記憶装置に記憶させる。なお、合流速度補正値KSの初期値は、「0」である。
【0044】
上記演算式(1)乃至演算式(3)の区間長L1、速度S2、加速度A及び区間長L3を特定するために、CPUは、ナビゲーションシステム12から車両位置データを取得し、この車両位置データに基づいて、自車両V1が走行している車線(車線Ra又は車線Rb)を特定する。CPUは、データセットDa[J]及びデータセットDb[J]のうち、前記特定した車線に対応するデータセットをサーバコンピュータSCから受信する。すなわち、CPUは、標準的な加速開始地点PA[J]、加速度A[J]及び合流速度S[J]を特定する。
【0045】
つぎに、CPUは、前記特定した加速度A[J]に、加速度補正値KAを乗算して、加速度Aを特定する。
A=A[J]×KA ・・・(5)
【0046】
つぎに、CPUは、加速開始地点PA[J]に加速開始地点補正値KPAを加算して、加速開始地点PAを特定する。
PA=PA[J]+KPA ・・・(6)
【0047】
つぎに、CPUは、前記特定した合流速度S[J]に、合流速度補正値KSを加算して、速度S2を特定する。
S2=S[J]+KS ・・・(7)
【0048】
つぎに、CPUは、距離LT[J]及び加速開始地点PAを用いて規定された下記の演算式(8)に基づいて、第1区間d1の区間長L1を特定する。
L1=LT[J]-PA ・・・(8)
【0049】
つぎに、CPUは、速度S1、速度S2及び加速度Aを用いて規定された下記の演算式(9)に基づいて、第2区間d2の区間長L2を特定する。
L2=((S2)2ー(S1)2)/2A ・・・(9)
【0050】
つぎに、CPUは、下記のようにして、第3区間d3の区間長L3を特定する。CPUは下記の演算式(10)に基づいて区間長L3を特定する。
L3=PA-L2 ・・・(10)
【0051】
つぎに、CPUは、前記特定した区間長L1、速度S1、加速度A、速度S2及び区間長L3を演算式(2)乃至演算式(4)に適用(代入)して、時間t1、時間t2及び時間t3を特定する。
【0052】
つぎに、CPUは、タイマー装置から現在時刻TNを表す時刻データを取得して、現在時刻TNを特定する。そして、CPUは、演算式(1)に、前記特定した現在時刻TN、時間t1、時間t2及び時間t3を適用(代入)して、到達時刻TJを特定する。
【0053】
つぎに、自車両V1の車両運転支援装置10のCPUの動作を具体的に説明する。CPUは、ナビゲーションシステム12から第1到達信号RS1を受信すると、
図5に示した合流車両報知プログラムの実行を開始する。
【0054】
CPUは、ステップ500から合流車両報知処理を開始する。つぎに、CPUは、ステップ501にて、上述した演算式(1)乃至演算式(10)に基づいて、到達時刻TJ(自車両到達時刻)を推定する。
【0055】
つぎに、CPUは、ステップ502にて、通信機114を介して、到達時刻TJを表す到達時刻データの発信を開始する。CPUは、自車両V1が合流開始地点Jに到達するまでの間(すなわち、第1区間d1乃至第3区間d3のうちのいずれかの区間を走行している間)、所定の時間間隔をおいて、到達時刻データを繰り返し発信する。
【0056】
ところで、自車両V1が走行している車線Ra(Rb)とは反対側の車線Rb(Ra)における第1区間d1乃至第3区間d3のうちのいずれかの区間を他車両V2が走行していれば、当該他車両V2の車両運転支援装置10が、当該他車両V2の到達時刻TJ(他車両到達時刻)を表す到達時刻データを発信している。
【0057】
自車両V1のCPUは、ステップ503にて、通信機114を、他車両V2から発信されている到達時刻データを受信可能な状態に設定する。
【0058】
CPUは、ステップ504にて、他車両V2から発信されている到達時刻データを受信できたか否かを判定する。他車両V2から到達時刻データを受信できた場合(504:Yes)、CPUは、ステップ505にて、前記特定した自車両V1の到達時刻TJ(自車両到達時刻)と、前記受信した到達時刻データが表す他車両V2の到達時刻TJ(他車両到達時刻)との時間差ΔTが、所定の閾値Tth以下であるか否かを判定する。
【0059】
時間差ΔTが閾値Tth以下であるとき(505:Yes)、CPUは、ステップ506にて、表示装置13に画像Gを表示させる。そして、CPUは、ステップ504に戻る。
【0060】
ステップ504において、自車両V1が走行している車線Ra(Rb)とは反対側の車線Rb(Ra)における第1区間d1乃至第3区間d3に他車両V2が存在しなければ、CPUは、他車両V2から到達時刻データを受信できない。この場合(504:No)、CPUは、ステップ505及びステップ506を実行することなく、再びステップ504を実行する。
【0061】
ステップ505において、時間差ΔTが閾値Tthより大きい場合、CPUは、ステップ506を実行することなく、ステップ504に戻る。
【0062】
上記のように、CPUは、ステップ504乃至ステップ506からなる処理を繰り返し実行する。その間に、自車両V1が合流開始地点Jに近づいていく。自車両V1が、合流開始地点Jに到達すると、ナビゲーションシステム12は、第2到達信号RS2をCPUに送信する。CPUは、第2到達信号RS2を受信すると、通信機114を介した、自車両V1の到達時刻データの発信及び他車両V2からの到達時刻データの受信を停止(終了)し、合流車両報知処理を終了する。
【0063】
(実施形態の効果)
上記のように、車両運転支援装置10において、CPUは、基点PT[J]において、まず、標準的な、加速開始地点PA[J]、加速度A[J]及び合流速度S[J]を特定する。つぎに、CPUは、これらの標準値を、「自車両の運転者の運転操作に関する特徴」に基づいて規定された「加速開始地点補正値KPA、加速度補正値KA及び合流速度補正値KS」に基づいてそれぞれ補正する。そして、CPUは、前記標準値を補正して得られた加速開始地点PA、加速度A及び速度S2、並びにその他のパラメータに基づいて、自車両V1の到達時刻TJを推定する。すなわち、「自車両の運転者の運転操作に関する特徴」が推定値(つまり、到達時刻TJ)に反映されている。よって、車両運転支援装置10によれば、従来装置に比べて、到達時刻TJの推定精度が高い。
【0064】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、以下に述べるように、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0065】
(変形例1)
上記実施形態では、CPUは、予め規定された基点PT[J]において、到達時刻TJを推定している。これに代えて、CPUは、合流開始地点Jの手前の所定の区間において、加速度データに基づいて自車両V1の加速度を監視し、自車両V1が加速し始めたことを検出したとき、到達時刻TJを推定してもよい。この場合、CPUは、自車両V1が加速を開始した時点の自車両V1の速度の実測値及び加速度の実測値を演算式(9)に適用するとともに、演算式(7)に基づいて特定した速度S2を演算式(9)に適用して、区間長L2を特定する。つぎに、CPUは、当該区間長L2を演算式(10)に適用するとともに、自車両V1が加速を開始した地点と合流開始地点Jとの距離を表すデータをナビゲーションシステム12から取得し、当該距離を上記の加速開始地点PAに代えて演算式(10)に適用して、区間長L3を特定する。つぎに、CPUは、演算式(3)及び演算式(4)に基づいて、時間t2及び時間t3を特定する。そして、CPUは、自車両V1が加速を開始した時刻を特定し、当該時刻に、前記特定した時間t2及び時間t3を加算して、到達時刻TJを特定する。この場合、データセットD[J]は、合流速度S[J]を表す合流速度データのみから構成される。すなわち、加速開始地点PA[K]を表す加速開始地点データ及び加速度Aを表す加速度データは不要である。さらに、加速開始地点補正値KPAを表す補正値データ及び加速度補正値KAを表す補正値データは不要である。
【0066】
(変形例2)
上記実施形態及び変形例1において、第2区間d2を走行しているとき、CPUは、加速度センサ113から取得した加速度データに基づいて、自車両V1の加速度を特定(実測)している。これに代えて、コンピュータ装置111の記憶装置に、アクセル開度及びトランスミッションのギア段と加速度との関係を表すデータを記憶させておき、CPUが、当該データに基づいて、自車両V1の加速度を特定してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…車両運転支援装置、11…制御装置、12…ナビゲーションシステム、13…表示装置、112…速度センサ、113…加速度センサ、114…通信機、A…加速度、D[J]…データセット、G…画像、J…合流開始地点、KA…加速度補正値、KPA…加速開始地点補正値、KS…合流速度補正値、PA…加速開始地点、S…合流速度、SC…サーバコンピュータ、V…車両、V1…自車両、V2…他車両、ΔT…時間差