(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A01C11/02 303C
(21)【出願番号】P 2020212241
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-161303(JP,A)
【文献】特開2012-110277(JP,A)
【文献】特開2010-226982(JP,A)
【文献】特開2004-344012(JP,A)
【文献】特開2020-195322(JP,A)
【文献】特開2020-005568(JP,A)
【文献】特開2020-000126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(11)に苗供給装置(15)と
単一の植付装置(14)を設け、走行車体(11)の後部に操縦ハンドル(13)を設けた苗移植機において、
走行車体(11)と操縦ハンドル(13)を直線的な
単一のハンドルフレーム(20)で連結し、該ハンドルフレーム(20)に沿って
、操縦パネル(24)のレバー類(21,22)で各装置を作動するワイヤ(21a,22a)を配策し
、
走行車体(11)に搭載する伝動ケース(19)から左右中央に植付装置(14)を設け、
ハンドルフレーム(20)は植付装置(14)の側部に略水平姿勢で設け、
苗供給装置(15)は供給伝動軸(151)と供給円盤(153)と供給台(155)を有し、
伝動ケース(19)から上方に突出する供給伝動軸(151)で、作業者が苗を投入する苗搬送ポット(154)を複数円状に設けた供給円盤(153)を回転駆動可能にし、
供給台(155)は、供給円盤(153)の左右外側と後側に苗トレイを載置できる程度の載置面を形成し、
苗供給装置(15)の機体前側で、且つ走行車体(11)の上面には、作業者が移動するフロアステップ(30)を設け、
フロアステップ(30)の機体前側には、座席フレーム(34)を設け、座席フレーム(34)の上部には、苗供給装置(15)に苗を投入する作業者が座る作業座席(35)を設け、作業座席(35)は、背もたれ側が機体前側に位置し、
走行車体(11)の左右に苗トレイを複数段に載置する予備トレイ支持台(50)を設け、供給台(155)の前記左右外側の部位を予備トレイ支持台(50)の後端部付近に位置させることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
走行車体(11)の前側において、畝ガイドフレーム(41)を機体左右方向に向けて装着し、畝ガイドフレーム(41)の左右両側にサイドボス(42)を各々左右方向に摺動可能に装着し、左右両側のサイドボス(42)に畝の法面に接触する法面ローラ(44)を回転可能に支持する法面ローラアーム(43)の基部側を各々装着し、
左右のサイドボス(42)の左右間には、走行車体(11)の機体左右方向中央部に向かう姿勢で左右の中央ローラアーム(45)の基部を上下回動可能に設け、左右の中央ローラアーム(45)の前側端部に畝面に接触する畝面ローラ(46)を回転可能に装着することを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉葱やレタス等の野菜苗を圃場に移植する苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苗移植機は、作業者が苗を投入する苗供給装置とその苗供給装置から苗を受け取って昇降しながら畝に移植する苗移植装置を機体上に設けた構成が、特許第6705536号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公報に記載の苗移植機は、側面視で走行車体の後部から後上方へ円弧状に湾曲したハンドルフレームを設け、その後端に操縦操作を行う操作ハンドルを設け、各種操作レバー類のワイヤをハンドルフレームに沿って機体側の各装置に配策しているので、ワイヤに緩みが生じて各種操作レバーの操作動作が各装置に伝わり難く、操作遅れが生じたり緩んだワイヤが苗移植装置の昇降動作を邪魔して苗の移植動作に支障を生じたりする。
【0005】
また、予備苗載せ台が機体前側上部であるために、操作ハンドル近傍に居る作業者が予備苗の取出しに手間取る問題がある。
【0006】
本発明は、走行車体後部に設ける操縦ハンドルのハンドルフレーム構成を簡略にすると共に、苗移植装置が良好に移植動作を行うことが可能な苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
第1の本発明は、
走行車体(11)に苗供給装置(15)と単一の植付装置(14)を設け、走行車体(11)の後部に操縦ハンドル(13)を設けた苗移植機において、
走行車体(11)と操縦ハンドル(13)を直線的な単一のハンドルフレーム(20)で連結し、該ハンドルフレーム(20)に沿って、操縦パネル(24)のレバー類(21,22)で各装置を作動するワイヤ(21a,22a)を配策し、
走行車体(11)に搭載する伝動ケース(19)から左右中央に植付装置(14)を設け、
ハンドルフレーム(20)は植付装置(14)の側部に略水平姿勢で設け、
苗供給装置(15)は供給伝動軸(151)と供給円盤(153)と供給台(155)を有し、
伝動ケース(19)から上方に突出する供給伝動軸(151)で、作業者が苗を投入する苗搬送ポット(154)を複数円状に設けた供給円盤(153)を回転駆動可能にし、
供給台(155)は、供給円盤(153)の左右外側と後側に苗トレイを載置できる程度の載置面を形成し、
苗供給装置(15)の機体前側で、且つ走行車体(11)の上面には、作業者が移動するフロアステップ(30)を設け、
フロアステップ(30)の機体前側には、座席フレーム(34)を設け、座席フレーム(34)の上部には、苗供給装置(15)に苗を投入する作業者が座る作業座席(35)を設け、作業座席(35)は、背もたれ側が機体前側に位置し、
走行車体(11)の左右に苗トレイを複数段に載置する予備トレイ支持台(50)を設け、供給台(155)の前記左右外側の部位を予備トレイ支持台(50)の後端部付近に位置させることを特徴とする苗移植機である。
第2の本発明は、
走行車体(11)の前側において、畝ガイドフレーム(41)を機体左右方向に向けて装着し、畝ガイドフレーム(41)の左右両側にサイドボス(42)を各々左右方向に摺動可能に装着し、左右両側のサイドボス(42)に畝の法面に接触する法面ローラ(44)を回転可能に支持する法面ローラアーム(43)の基部側を各々装着し、
左右のサイドボス(42)の左右間には、走行車体(11)の機体左右方向中央部に向かう姿勢で左右の中央ローラアーム(45)の基部を上下回動可能に設け、左右の中央ローラアーム(45)の前側端部に畝面に接触する畝面ローラ(46)を回転可能に装着することを特徴とする第1の本発明の苗移植機である。
本発明に関連する第1の発明は、走行車体(11)に苗供給装置(15)と植付装置(14)を設け、走行車体(11)の後部に操縦ハンドル(13)を設けた苗移植機において、走行車体(11)と操縦ハンドル(13)を直線的なハンドルフレーム(20)で連結し、該ハンドルフレーム(20)に沿って操縦パネル(24)のレバー類(21,22)で各装置を作動するワイヤ(21a,22a)を配策したことを特徴とする苗移植機とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、走行車体(11)に搭載する伝動ケース(19)から左右中央に植付装置(14)を設け、ハンドルフレーム(20)は、植付装置(14)の側部に略水平姿勢で設けることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の苗移植機とする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、苗供給装置(15)の周囲に、苗を収納するトレイを載置する供給台(155)を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の苗移植機とする。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、走行車体(11)の左右に苗トレイを複数段に載置する予備トレイ支持台(50)を設け、供給台(155)の側部を予備トレイ支持台(50)の後端部付近に位置させたことを特徴とする本発明に関連する第3の発明の苗移植機とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、弛むことなく、直線的なワイヤ(21a,22a)がレバー類(21,22)の操作を滑らかに作動装置に伝動して、確実に苗移植機を操作できる。また、直線的なハンドルフレーム(20)は、曲げ加工が不要で制作コストが低減する。さらに、一般的に供給円盤に設ける苗搬送ポットは数が少ないので、常時苗を供給し続ける必要があるが、作業座席(35)の作業者と横を歩く作業者の2人の作業者が苗を供給しやすくすることができる。
本発明に関連する第1の発明により、操縦ハンドル(13)の操縦パネル(24)に設けるレバー類(21,22)のワイヤ(21a,22a)が直線的なハンドルフレーム(20)に沿って配策されるので、弛むことなく、直線的なワイヤ(21a,22a)がレバー類(21,22)の操作を滑らかに作動装置に伝動して、確実に苗移植機を操作できる。
【0013】
また、直線的なハンドルフレーム(20)は、曲げ加工が不要で制作コストが低減する。
【0014】
本発明に関連する第2の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、操縦ハンドル(13)を取り付けたハンドルフレーム(20)が強固な伝動ケース(19)を介して走行車体(11)と連結されるので、操縦ハンドル(13)で走行車体(11)を傾ける旋回操作が行え、ハンドルフレーム(20)やレバー類(21,22)のワイヤ(21a,22a)が走行車体(11)の左右中央で移植する植付装置(14)の昇降動作を邪魔せず、植付装置(14)で苗の移植を確実に行える。
【0015】
本発明に関連する第3の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、供給台(155)に苗トレイを載せて直接苗を取り出して苗供給装置(15)に供給する作業が行えるので、多くの苗供給が効率的に行える。
【0016】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第3の発明の効果に加えて、予備トレイ支持台(50)から供給台(155)上に苗トレイを引き下ろす簡単な操作で移動出来て、効率的に予備苗補充作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態の移植機の一例として苗を移植する移植機10を示す左側面図であり、
図2は平面図である。
【0020】
なお、以下の説明では、操縦ハンドル13を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン12を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
【0021】
本件の移植機10は、
図1、
図2に示すとおり、機体を前進走行可能とする走行車体11と、走行車体11の後部に設ける歩行操縦用の操縦ハンドル13と、圃場に苗を植え付ける植付装置14と、植付装置14に苗を供給する苗供給装置15を備える。
【0022】
走行車体11は、機体前部にミッションケース16を設け、ミッションケース16の前側に駆動装置であるエンジン12を設ける。前記ミッションケース16の左右両側には、後輪となる走行輪17に駆動力を伝動する走行伝動ケース18を各々上下回動可能に装着する。
【0023】
なお、
図1及び
図2に示すとおり、左右の走行輪17は、走行伝動ケース18の機体後側で外側に向けて伝動車軸17aを突出させて装着しているが、この伝動車軸17aは組み換え作業により、機体内側に向けて突出させることも可能であり、走行車体11と走行伝動ケース18の左右間に走行輪17が配置される構成とすることも可能である。
【0024】
走行輪17の配置変更は、移植する作物の種類、植付作業を行う圃場の土質、あるいは作業地域の慣行により畝幅が異なる際に行う。これにより、移植機10を畝の左右に形成される畝溝を安定して走行でき、苗を畝の左右中央に揃えて植え付けることが可能になる。
【0025】
なお、作物の種類によっては、畝高さが低い、あるいは畝を作らない、所謂平畝に植え付けるものもある。平畝に苗を植え付けるとき、移植機10が苗の植付位置付近を踏みながら走行すると土が固められると共に、移植機10の重量により窪みができて水が溜まりやすくなり、苗の根部の定着が阻害されると共に、溜まった水を過剰に吸水してしまうことで、生育不良が生じるおそれがある。
【0026】
したがって、平畝での作業時においても、苗の植付位置に対して左右の走行輪17の左右間隔を適切に確保することで、植付後の苗の生育が安定する。
【0027】
左右の走行伝動ケース18は、後述する昇降シリンダ62やローリングシリンダ63の伸縮により回動し、これにより走行輪17の接地面から走行車体11までの高さが変動し、車高が調節される。
【0028】
この車高調節は、畝の高さに合わせて植付深さを設定するときだけでなく、旋回走行前に作業者が操縦ハンドル13を押し下げて機体前側を持ち上げ易くするときや、苗を植え付けない移動時に植付装置14等が地面に接触することを防止する際にも行われる。
【0029】
そして、
図1及び
図2に示すとおり、前記ミッションケース16から伝動されて植付装置14及び苗供給装置15に駆動力を分岐供給する伝動ケース19を走行車体11の後部に設ける。具体的には、該伝動ケース19の左右一側に植付装置14を設け、機体上側に苗供給装置15を設ける。
【0030】
さらに、
図1に示すとおり、前記伝動ケース19の上部には、操縦ハンドル13と走行車体11を連結するハンドルフレーム20の機体前側端部をコ字状の取付フレーム36で連結する。該ハンドルフレーム20は直線状のパイプ材で、機体後側端部を操縦ハンドル13の機体前側左右に位置するハンドルシャフト13aの左右中央部に連結する。なお、操縦ハンドル13は、機体左右方向の該ハンドルシャフト13aと、ハンドルシャフト13aの左右両側に各々設けられて機体後側に突出するハンドルアーム13bで構成する。
【0031】
ハンドルフレーム20は、走行車体11の左右中央に位置する植付装置14と干渉しないように右側に位置し、操縦ハンドル13も走行車体11に対して右にやった位置になる。
【0032】
そして、前記ハンドルシャフト13aの機体後側で、且つ左右のハンドルアーム13bの基部側寄りの左右間には、昇降シリンダ62を伸縮させて車高を調節する車高調節レバー21と、ミッションケース16に内装する主クラッチを入切して左右の走行伝動ケース18及び伝動ケース19への伝動を入切する主クラッチレバー22がハンドルフレーム20に沿って配策するワイヤ21a,22aで連結した操縦パネル24を設ける。この操縦パネル24の前上に、走行車体11の走行伝動を移動速、植付作業速、走行中立及び後進のいずれかに切り替える主変速レバー23をミッションケース16から伸ばして設ける。
【0033】
また、前記左右のハンドルアーム13bには、左右の走行伝動ケース18に内装され、走行輪17への駆動の入切を切り替えるサイドクラッチを操作するサイドクラッチレバー28を各々装着する。該サイドクラッチレバー28は、作業者が旋回操作や移動操作をする際に操縦ハンドル13の左右のハンドルアーム13bを把持する際、握りやすい位置に配置するものとする。
【0034】
これにより、苗の植付作業を行わない旋回走行や移動走行の際、作業者は機体後側の操縦ハンドル13及び操縦パネル24を操作しやすい位置に立って作業することになり、状況に合わせた操作を適切に行いやすく、作業能率が向上する。
【0035】
また、走行車体11に作業者が搭乗する苗の植付作業時には、作業者と操縦ハンドル13及び操縦パネル24が離間し合うので、作業者の身体が触れて各操縦部材が動くことが防止され、苗の植付姿勢の乱れや、苗が植え付けられない欠株の発生、あるいは走行の停止による作業能率の低下等が防止される。
【0036】
なお、搭乗時に進行方向のズレを修正する必要や、作業の中断等主クラッチの入切操作が必要になることがあるので、走行車体11のうち、例えば苗供給装置15の下方にサイドクラッチ操作ペダルを左右各々設けると共に、別の主クラッチ操作用のレバーを配置しておくとよい。
【0037】
そして、走行車体11の機体前側の左右両側には、前輪でもある、地面との接地抵抗により回転する接地転輪25を各々設ける。該接地転輪25は、機体左右方向に位置を変更可能とし、走行輪17と共に畝の幅、あるいは植付条の幅に合わせて適切な位置に調節するものとする。
【0038】
次に、伝動ケース19の左右一側に設ける植付装置14について、具体的に説明する。
【0039】
前記伝動ケース19の左右一側には、走行車体11の車速、ならびに設定した苗の前後方向の植付間隔、所謂株間に合わせて上下回動する上側リンクアーム141と、該上側リンクアーム141に連動して上下回動する、側面視で円弧形状の下側リンクアーム142を、回動軸を介して装着する。該下側リンクアーム142の円弧は機体後側下方に向かって突出するものとし、これにより後述する植付ホッパ145が昇降される際、前後方向に揺動される構成となる。
【0040】
前記上側リンクアーム141と下側リンクアーム142の後側端部はリンクステー143の上下方向に各々装着し、該リンクステー143の機体後側に機体左右一側から機体左右他側に向かうホッパ支持アームを装着し、該ホッパ支持アームの後部で且つ機体内側端部に植付ホッパ145を装着する。該植付ホッパ145は左右一対のホッパ構成体を各々回動可能に設けて構成するものであり、前記上側リンクアーム141と下側リンクアーム142の上下回動に合わせて回動して開閉する構成とする。
【0041】
なお、該植付ホッパ145の取付位置は、走行車体11の機体左右方向、より具体的には、左右の走行輪17及び接地転輪25の左右方向の中間位置とし、畝または苗の植付位置に合わせて適切に左右の走行輪17及び接地転輪25の左右幅が調節されると、苗の植付位置が左右の中央位置付近に自動的に合わせられる構成とする。
【0042】
上記により、苗の植付位置が畝や植付条の左右中央位置から大幅にずれることを防止できるので、根部が露出して生育不良が生じることや、植え付けられた苗が風等の影響で倒れることが防止される。
【0043】
また、伝動ケース19の左右一側に植付ホッパ145を昇降させる上側リンクアーム141と下側リンクアーム142を設け、左右他側にハンドルフレーム20の機体前側端部を連結したことにより、伝動ケース19を支持部材として有効に活用できる。
【0044】
なお、伝動ケース19は植付装置14や苗供給装置15、操縦ハンドル13を支持するものであるので、外装部分は特に強度を高く設計しており、複数の重量物の加重や駆動負荷を受けても、破損や作動不良が生じにくい。
【0045】
さらに、苗の植付位置が機体の左右中央に配置されていることにより、機体の左右方向の重量バランスが安定し、進行方向のズレや左右傾斜が生じにくくなり、苗の植付精度の安定化が図られる。
【0046】
次に、苗供給装置15について説明する。
【0047】
図1及び
図2に示すとおり、伝動ケース19から上方に突出する供給伝動軸151で作業者が苗を投入する苗搬送ポット154…を複数円状に設けた供給円盤153を駆動可能に配置する。なお、該供給円盤153は機体左右中央で回転可能に供給台155に支持するものとする。供給台155は、植付ホッパ145の昇降に支障のない位置で伝動ケース19に支持する。
【0048】
供給台155は、左右と後に広くしているので、苗を収めた苗トレイを載置出来て、その苗トレイから苗を取り出して苗搬送ポット154に投入することになる。
【0049】
各苗搬送ポット154は、底蓋154aを回動可能に構成し、この底蓋154aはトルクスプリング等の付勢力により開く方向に付勢する。そして、供給円盤153には、底蓋154aに接触する規制レールを設けるが、該規制レールは、苗供給装置15の下側で、植付ホッパ145の上方で分断される形状とし、植付ホッパ145の上方で底蓋154aが下方回動して開き、投入された苗を落下供給する構成とする。このとき、苗の投入位置は、苗供給装置15の機体左後側で、且つ左右方向の中央部付近とし、投入された苗は苗搬送ポット154が所定角度回転してから落下供給されるものとする。
【0050】
なお、植付ホッパ145は、落下供給される苗を受ける際、上下回動軌跡における上端部(上死点)、乃至上端部付近に位置するものとし、落下中の苗が風等の影響で植付ホッパ145の投入口から離れた位置に落下することを防止するものとする。
【0051】
これにより、作業者が苗搬送ポット154に投入した苗は、植付ホッパ145への落下供給位置まで回転搬送されるので、複数の苗を連続的に植え付けることが可能になる。
【0052】
また、作業者が苗を投入してから苗搬送ポット154が角度回転してから苗が落下供給される構成により、苗の投入ミスがあっても作業者が投入し直す猶予があるので、苗が供給されず欠株が発生し、作業者が手作業で植え直す必要が無くなる。
【0053】
上述する植付装置14による苗の植付深さは、畝への進入時に走行車体11の車高を変更することにより設定されるが、畝は必ずしも平坦ではなく、また、走行車体11が移動する畝溝も平坦ではないので、上下方向の機体の揺れ等により、植付深さが設定と異なるものとなることがある。
【0054】
畝面や畝溝に合わせて車高を変更し、苗の植付深さをほぼ一定に保つべく、伝動ケース19の下部には畝面を検出する畝面センサ26を上下回動可能に装着する。この畝面センサ26には昇降シリンダ62を伸縮させる油圧バルブ(図示省略)に連結される連動ワイヤ(図示省略)の一側部を装着し、回動量の変化があると油圧バルブの開度が変更されて昇降シリンダ62が伸縮して走行車体11の車高が自動的に上昇または下降する構成となる。
【0055】
なお、畝面センサ26の機体後部側の接地部分は、検出精度を高めるべく前後方向に長く構成し、後端部側は植付ホッパ145の下方に臨ませる。当然、このままでは植付ホッパ145が苗を植え付けるべく下降した際に畝面センサ26が干渉するので、畝面センサ26の接地部分には、植付ホッパ145を畝へ進入させる進入切溝(図示省略)を形成する。
【0056】
この進入切溝は、例えばU字形状とし、その端面をゴム板等の弾性部材で覆い、植付ホッパ145の外周面に弾性変形しながら接触して付着した土を除去する、スクレーパとして作用させてもよい。
【0057】
また、畝面センサ26は、付勢力を調節可能な荷重調節スプリング(図示省略)により機体下側、即ち畝面への接地方向に付勢し、この荷重調節スプリングの付勢力を調節することにより、畝面の高さの変化の検出感度、及び畝に敷設したマルチフィルムを押圧する力を変更可能に構成してもよい。
【0058】
僅かな凹凸であっても車高が自動調節される感度に設定したとき、頻繁に車高が変更されると、車高が変更されている間に植付動作が行われ、かえって植付深さが設定と異なることがあるので、付勢力を強めて僅かな凹凸であれば畝面センサ26で凹凸を押し均し、車高の変更の発生を防止することができる。
【0059】
また、マルチフィルムを押圧する力を変更することにより、マルチフィルムを破ってしまうことや、マルチフィルムの弛みが取れず、苗の植付姿勢が乱れることを防止できる。
【0060】
また、畝面センサ26や植付ホッパ145を避け、畝の左右どちらかの一側に寄せて配置する必要がなくなり、苗の植付位置である畝の左右中央部付近の畝の高さ、及び凹凸を検知できるので、苗の植付位置に合わせた植付深さの自動調節が行われ、苗の植付精度が向上する。
【0061】
そして、苗供給装置15の機体前側で、且つ走行車体11の上面には、作業者が移動するフロアステップ30を設ける。該フロアステップ30の機体前側の左右中央部付近は、エンジン12及びミッションケース16を回避する切欠部が形成されている。この切欠部の上部には、エンジン12やミッションケース16を覆うボンネットカバー31を着脱自在に設けるものとする。なお、エンジン12やミッションケース16の側部等は、冷却や排気を効率よく行うべく、ボンネットカバー31で覆わず、外気に晒される構成である。
【0062】
前記ミッションケース16には、前記植付ホッパ145の株間を変更する際に伝動速度を変速する株間伝動ケース(図示省略)が連結されており、この株間伝動ケース内のギア機構を切り替える株間主変速レバー32と株間副変速レバー33が、フロアステップ30の機体前側の左右どちらか一方に配置される。株間主変速レバー32と株間副変速レバー33は上下に並べて配置されると共に、フロアステップ30に形成された左右方向のレバー操作孔から機体前側に向かって突出しており、作業者は走行車体11に乗ったままでも、走行車体11の車外からでも操作可能に構成している。
【0063】
そして、フロアステップ30の機体前側には、ボンネットカバー31の上方を跨ぐ座席フレーム34を設け、該座席フレーム34の上部には、苗供給装置15に苗を投入する作業者が座る作業座席35を設ける。この作業座席35は、背もたれ側が機体前側に位置し、着座した作業者は機体後側を向くことになる。
【0064】
上記の作業座席35に搭乗した作業者は、苗供給装置15に対面して苗を供給できるので、苗を投入しやすく、また投入ミスが生じたかどうかを視覚的に確認できる。また、走行車体11の後部側に視線が向くので、植え付けられる苗の姿勢の適否や、植え付けの有無も見ることができ、植付姿勢の異常や欠株の発生に速やかに対処でき、植え直しに要する時間と労力が軽減される。
【0065】
一方、走行車体11の進行方向に対して背を向けた状態であるので、走行車体11が畝に沿って正しく走行しているかどうかの確認は振り返る必要があるが、このとき苗の投入作業に集中しにくくなる問題がある。
【0066】
作業前に走行輪17及び接地転輪25の左右幅を畝幅に適切に合わせていれば、走行車体11は畝に沿って直進し得る構成ではあるが、実際の圃場では畝の崩れや畝溝の凹凸等、走行輪17及び接地転輪25が接触した際に僅かに進行方向を直進からズレさせる要因があるので、移動距離が長くなるにつれて植付位置が畝の左右中心からずれた位置となる可能性がある。
【0067】
この問題に対応すべく、走行車体11の前側に、畝ガイドローラ機構40を設けることが考えられる。畝ガイドローラ機構40は、
図1、
図2に示すとおり、走行車体11の前側において、畝ガイドフレーム41を機体左右方向に向けて装着し、畝ガイドフレーム41の左右両側にサイドボス42を各々左右方向に摺動可能に装着する。そして、これら左右のサイドボス42に畝の法面に接触する法面ローラ44を回転可能に支持する法面ローラアーム43の基部側を各々装着する。
【0068】
なお、法面ローラ44は、平面視でコの字形状である法面ローラアーム43の前側端部に装着するものとし、法面ローラ44を法面にほぼ水平姿勢で接触させるべく、下端部が上端部よりも機体外側に位置する傾斜姿勢で装着するものとすることが望ましい。さらに言えば、法面ローラアーム43の基部側、あるいは法面ローラ44を装着する前側端部を回転可能に構成し、任意に角度調節できるものとして、法面の角度に自在に対応できるものとすることが望ましい。
【0069】
そして、左右のサイドボス42の左右間には、走行車体11の機体左右方向中央部に向かう姿勢で左右の中央ローラアーム45の基部を各々上下回動可能に設け、左右の中央ローラアーム45の前側端部に畝面に接触する畝面ローラ46を回転可能に装着する。より具体的には、左右の中央ローラアーム45の平面視でコの字形状の畝面ローラステー47を支持し、この畝面ローラステー47に畝面ローラ46を回転可能に装着する。
【0070】
上記の畝面ローラ46は、付勢スプリング(図示省略)を設けて下方に押し下げられる構成とし、この付勢力を強いものとして、苗の植付前の畝面を踏み均す構成としてもよい。一方、マルチフィルムを敷設した畝においては、付勢力を下げ、マルチフィルムの剥離を防止すると共に、法面ローラ44と共にマルチフィルムを伸ばして弛みによる苗の植付不良の発生を防止する構成としてもよい。
【0071】
なお、畝面ローラ46は左右の法面ローラ44よりも機体後側よりに配置し、且つ左右の中央ローラアーム45の上下回動により前後位置を変更することにより、マルチフィルムを押圧する力を調節できる構成となる。
【0072】
この構成では、使用するマルチフィルムや畝に合わせて付勢スプリングを付け替える作業が不要であると共に、左右の中央ローラアーム45に伸縮機構をつける必要がないので、構成の簡潔化が図られる。また、マルチフィルムを押圧する力は大幅に変化させる必要はないので、左右の中央ローラアーム45の回動のみで対応することにより、構成の簡潔化が図られる。
【0073】
これにより、畝ガイドローラ機構40が構成される。
【0074】
この構成では、畝の幅に合わせてサイドボス42を各々左右方向に摺動させ、左右の法面ローラ44の接地位置を変更することができるので、畝と左右の法面ローラ44の間に空間が生じることが防止され、走行車体11が畝からずれた方向に移動することが防止される。
【0075】
また、畝面ローラ46は左右方向中央位置付近に配置され、左右に移動しないことにより、苗が植え付けられる苗の中央位置付近を均すことや、マルチフィルムを適度に張らせることができるので、苗の植付姿勢が適切になり、生育の安定化が図られると共に、姿勢の乱れた苗を植え直す作業が不要になる。
【0076】
また、畝面ローラ46と左右の法面ローラ44の前後間隔を付け、且つ畝面ローラ46の前後位置が変更可能であることにより、使用するマルチフィルムや、マルチフィルムを敷設する畝に合わせて適切な押圧力を設定できるので、マルチフィルムが破れることが防止されると共に、マルチフィルムが弛んで植付不良の原因となることが防止される。
【0077】
なお、畝ガイドローラ機構40は、畝に苗を植え付ける際には畝に接触するべくなるべく下方位置にあることが望ましいが、移動時等には地面と接触することを防止すべく、上方に退避することが望ましい。したがって、畝ガイドフレーム41を回動軸とその外周の回動パイプで構成し、この外周パイプと昇降シリンダ62の伸縮側をワイヤ等で連結し、走行車体11の車高を所定高さ以上まで高くすると、畝ガイドローラ機構40が前上がり傾斜姿勢となるように上方回動させられ、地面からの離間距離が大きくなる構成としてもよい。
【0078】
図1及び
図2に示すとおり、走行車体11の左右両側には、補充用の苗が入った苗箱を積載する予備苗枠50を設ける。この予備苗枠50は、走行車体11のうち、作業座席35の左右両側に苗枠支柱51の基部を装着し、苗枠支柱51の上部側に苗載せ台52を少なくとも一つ、あるいは上下方向に一定の間隔を空けて複数配置する。
【0079】
なお、苗載せ台52は走行車体11側、即ち機体内側と、機体前側及び後側を開放状態として装着することにより、作業座席35あるいはフロアステップ30に位置する作業者がほぼ移動することなく苗箱を取り出すことができるので、作業能率が向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
【0080】
また、苗箱の移動中の落下を防止すべく、苗箱よりも上下長さが短い受け部を苗載せ台52の機体前後及び内側に上方を向けて配置または形成すると、落下した苗箱を回収する作業が不要であると共に、苗箱の取り出しの際に持ち上げる高さが抑えられ、作業者の労力が軽減される。
【符号の説明】
【0081】
11 走行車体
13 操縦ハンドル
14 植付装置
15 苗供給装置
19 伝動ケース
20 ハンドルフレーム
21 レバー類(車高調節レバー)
22 レバー類(主クラッチレバー)
21a,22a ワイヤ
50 予備トレイ支持台
155 供給台