(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】媒体給送装置、画像読取装置、媒体給送方法
(51)【国際特許分類】
B65H 7/06 20060101AFI20241008BHJP
B65H 1/06 20060101ALI20241008BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20241008BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65H7/06
B65H1/06 Z
B65H3/06 B
H04N1/00 567J
(21)【出願番号】P 2020215278
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】江口 聖次
(72)【発明者】
【氏名】潮田 尚之
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0198908(US,A1)
【文献】特開2019-64790(JP,A)
【文献】特開2020-83621(JP,A)
【文献】特開2009-166998(JP,A)
【文献】特開2019-26393(JP,A)
【文献】米国特許第6724506(US,B1)
【文献】特開2017-61350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/06
B65H 1/06
B65H 3/06
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を載置する載置面を形成する媒体載置部と、
前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体を給送方向へ給送する給送ローラーと、
前記給送方向において前記給送ローラーの上流において前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体と対向する位置に配置され、前記載置面に沿った方向の媒体の動きに係わる情報を出力する移動検出手段と、
前記移動検出手段から得た情報に基づき媒体の給送を開始した後の媒体の動きが許容範囲を超えた場合に給送異常と判定する異常検出処理を実行可能な制御手段と、を備えた媒体給送装置であって、
前記媒体載置部に載置された媒体の前記載置面からの高さに係わる情報を出力する媒体高さ検出手段を備え、
前記制御手段は、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体給送装置において、前記制御手段は、媒体の給送を開始した際、前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき前記高さの初期値を取得し、
前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さの前記初期値からの変化量が第2閾値を超えると、媒体の給送を停止する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体給送装置において、前記制御手段は、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが前記第1閾値より大きい第2閾値を超えると、媒体の給送を停止する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の媒体給送装置において、前記第1閾値は、前記給送方向の媒体のサイズに応じて異なり、
前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部に収まるサイズである場合に適用する前記第1閾値は、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れるサイズである場合に適用する前記第1閾値より小さい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の媒体給送装置において、前記第1閾値は、前記給送方向の媒体のサイズに応じて異なり、
前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れる場合、前記給送方向の媒体のサイズが第1サイズの場合に適用する前記第1閾値は、前記第1サイズよりも前記給送方向のサイズの大きい第2サイズの場合に適用する前記第1閾値より小さい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の媒体給送装置において、前記第1閾値は、前記給送方向と交差する方向である幅方向の媒体のサイズに応じて異なり、
前記幅方向の媒体のサイズが第1サイズの場合に適用する前記第1閾値は、前記第1サイズよりも前記幅方向のサイズの小さい第2サイズの場合に適用する前記第1閾値より小さい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の媒体給送装置において、前記移動検出手段は、前記給送方向に沿った方向である第1方向及び前記給送方向と交差する方向である第2方向の媒体の動きに係わる情報を出力する2次元センサーで構成される、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の媒体給送装置において、前記高さ検出手段は、前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も上に位置する媒体までの距離を計測する測距センサーで構成される、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項9】
媒体を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段に向けて媒体を給送する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の媒体給送装置と、
を備えた画像読取装置。
【請求項10】
媒体を載置する載置面を形成する媒体載置部と、
前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体を給送方向へ給送する給送ローラーと、
前記給送方向において前記給送ローラーの上流において前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体と対向する位置に配置され、前記載置面に沿った方向の媒体の動きに係わる情報を出力する移動検出手段と、を備えた媒体給送装置における媒体給送方法であって、
前記移動検出手段から得た情報に基づき媒体の給送を開始した後の媒体の動きが許容範囲を超えた場合に給送異常と判定する異常検出処理において、前記媒体載置部に載置された媒体の前記載置面からの高さに係わる情報を出力する媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続する、
ことを特徴とする媒体給送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を給送する媒体給送装置及びこれを備えた画像読取装置に関する。また本発明は、媒体給送装置における媒体給送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置や記録装置では、媒体を給送する媒体給送装置が設けられる。媒体を給送する際、媒体が斜行する等の給送異常が生じる場合があり、従来からその様な給送異常を検出する技術が知られている。特許文献1には、シートが載置される載置部と、前記載置部側のシートを給送する給送部と、前記給送部との間でシートを1枚ずつ分離する分離部と、前記載置部上でのシートの移動を検知する移動検知部と、を備えたシート給送装置が開示されている。
【0003】
特許文献1記載の構成では、上記移動検知部に、光源から原稿に対して光を照射し、原稿からの反射光を撮像部で受光して得られる画像を所定のサンプリング周期で取得し、当該画像に含まれる追跡対象域の移動を追跡し、その結果に基づいて、原稿の移動量又は移動方向を検知する追跡型の光学センサーが採用されている。
そして分離給送の開始後に移動する最下位の原稿を撮像して得た原稿画像の変化を追跡し、当該原稿画像の変化を分離途中の原稿の動きとして検知し、分離異常パターンを判断する。
その結果、画像領域の移動方向が基準方向と異なる場合に、原稿の斜行と判断したり、画像領域の移動が回転成分を伴う場合、あるいは斜行異常でもなく不送り異常でもない状態の場合等には、ステープル等で綴じた原稿を分離しているときのステープル異常である、などと判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された追跡型の光学センサーは、原稿が光学センサーに近接している状態では正確な検出値を出力するが、原稿が光学センサーから浮き上がると、検出値の信頼性が低下してしまうという性質がある。その結果、給送異常が生じていないにも拘わらず給送異常であると誤判定して原稿の給送を止めてしまい、ユーザーに無駄な操作を強いることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為の、本発明の媒体給送装置は、媒体を載置する載置面を形成する媒体載置部と、前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体を給送方向へ給送する給送ローラーと、前記給送方向において前記給送ローラーの上流において前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体と対向する位置に配置され、前記載置面に沿った方向の媒体の動きに係わる情報を出力する移動検出手段と、前記移動検出手段から得た情報に基づき媒体の給送を開始した後の媒体の動きが許容範囲を超えた場合に給送異常と判定する異常検出処理を実行可能な制御手段と、を備えた媒体給送装置であって、前記媒体載置部に載置された媒体の前記載置面からの高さに係わる情報を出力する媒体高さ検出手段を備え、前記制御手段は、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続することを特徴とする。
【0007】
また本発明の媒体給送方法は、媒体を載置する載置面を形成する媒体載置部と、前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体を給送方向へ給送する給送ローラーと、前記給送方向において前記給送ローラーの上流において前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体と対向する位置に配置され、前記載置面に沿った方向の媒体の動きに係わる情報を出力する移動検出手段と、を備えた媒体給送装置における媒体給送方法であって、前記移動検出手段から得た情報に基づき媒体の給送を開始した後の媒体の動きが許容範囲を超えた場合に給送異常と判定する異常検出処理において、前記媒体載置部に載置された媒体の前記載置面からの高さに係わる情報を出力する媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】給送方向下流において綴じ針で綴じられた原稿が給送される際に生じる現象を示す模式図。
【
図6】給送方向上流において綴じ針で綴じられた原稿が給送される際に生じる現象を示す模式図。
【
図10】他の実施例に係る異常検出処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る媒体給送装置は、媒体を載置する載置面を形成する媒体載置部と、前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体を給送方向へ給送する給送ローラーと、前記給送方向において前記給送ローラーの上流において前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体と対向する位置に配置され、前記載置面に沿った方向の媒体の動きに係わる情報を出力する移動検出手段と、前記移動検出手段から得た情報に基づき媒体の給送を開始した後の媒体の動きが許容範囲を超えた場合に給送異常と判定する異常検出処理を実行可能な制御手段と、を備えた媒体給送装置であって、前記媒体載置部に載置された媒体の前記載置面からの高さに係わる情報を出力する媒体高さ検出手段を備え、前記制御手段は、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続することを特徴とする。
【0010】
媒体が前記移動検出手段から浮き上がると、前記移動検出手段の検出値の信頼性が低下する虞があり、この様な不具合は媒体の積載量が少ないほど、換言すれば前記媒体載置部に載置された媒体の前記載置面からの高さが低いほど生じ易い。そこで本態様では、前記制御手段は、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続するので、給送異常が生じていないにも拘わらず給送異常であると誤判定して媒体の給送を止めてしまうことを抑制できる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御手段は、媒体の給送を開始した際、前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき前記高さの初期値を取得し、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さの前記初期値からの変化量が第2閾値を超えると、媒体の給送を停止することを特徴とする。
【0012】
媒体が綴じられた状態のままセットされ、給送される場合、特に媒体が給送方向上流の角部で綴じられた状態で給送される場合、最も下の先行媒体が送り出されると、後続媒体の後端のみが先行媒体とともに下流側に移動し、これにより後続媒体は上方に膨らむこととなる。尚、この様に給送方向上流の角部で綴じられた状態で媒体が給送されることに伴い生じる異常を「後端綴じ異常」と称することとする。
本態様によれば、前記制御手段は、媒体の給送を開始した際、前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき前記高さの初期値を取得し、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さの前記初期値からの変化量が第2閾値を超えると、媒体の給送を停止するので、後端綴じ異常を検出して媒体の給送を停止することで媒体に生じるダメージを抑制することができる。
また本態様では、前記高さの前記初期値からの変化量に基づいて後端綴じ異常の有無を判定する為、媒体の積載量に拘わらず、後端綴じ異常の有無を適切に判定することができる。
【0013】
第3の態様は、第1の態様において、前記制御手段は、前記異常検出処理において前記媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが前記第1閾値より大きい第2閾値を超えると、媒体の給送を停止することを特徴とする。
本態様によれば、上記第2の態様と同様に、後端綴じ異常を検出して媒体の給送を停止することで媒体に生じるダメージを抑制することができる。
また本態様では、前記高さの絶対値に基づいて後端綴じ異常の有無を判定することができる為、前記高さ検出手段として安価なものを採用でき、装置のコストアップを抑制できる。
【0014】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記第1閾値は、前記給送方向の媒体のサイズに応じて異なり、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部に収まるサイズである場合に適用する前記第1閾値は、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れるサイズである場合に適用する前記第1閾値より小さいことを特徴とする。
前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れるサイズの場合、前記媒体載置部上での媒体の変形に伴って媒体が前記移動検出手段から浮き上がり易くなる。換言すれば、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部に収まるサイズの場合、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れるサイズの場合よりも、前記移動検出手段から浮き上がり難いと言える。
そこで本態様では、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部に収まるサイズである場合に適用する前記第1閾値を、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れるサイズである場合に適用する前記第1閾値より小さくする。これにより前記移動検出手段を利用した給送異常の検出を過剰にスキップしてしまうことを抑制でき、ひいては前記給送異常をより適切に検出できる。
【0015】
第5の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記第1閾値は、前記給送方向の媒体のサイズに応じて異なり、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れる場合、前記給送方向の媒体のサイズが第1サイズの場合に適用する前記第1閾値は、前記第1サイズよりも前記給送方向のサイズの大きい第2サイズの場合に適用する前記第1閾値より小さいことを特徴とする。
【0016】
前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れるサイズの場合、前記媒体載置部上での媒体の変形に伴って媒体が前記移動検出手段から浮き上がり易くなる。この場合、媒体後端の前記媒体載置部からのはみ出し量が少ないほど、前記移動検出手段から浮き上がり難いと言える。
そこで本態様では、前記給送方向の媒体の後端が前記媒体載置部から外れる場合、前記給送方向の媒体のサイズが第1サイズの場合に適用する前記第1閾値は、前記第1サイズよりも前記給送方向のサイズの大きい第2サイズの場合に適用する前記第1閾値より小さくする。これにより前記移動検出手段を利用した給送異常の検出を過剰にスキップしてしまうことを抑制でき、ひいては前記給送異常をより適切に検出できる。
【0017】
第6の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記第1閾値は、前記給送方向と交差する方向である幅方向の媒体のサイズに応じて異なり、前記幅方向の媒体のサイズが第1サイズの場合に適用する前記第1閾値は、前記第1サイズよりも前記幅方向のサイズの小さい第2サイズの場合に適用する前記第1閾値より小さいことを特徴とする。
前記幅方向の媒体のサイズが大きいほど、媒体の重量が重いため、前記移動検出手段から浮き上がり難くなる。この様な性質に鑑み、本態様では、前記幅方向の媒体のサイズが第1サイズの場合に適用する前記第1閾値を、前記第1サイズよりも前記幅方向のサイズの小さい第2サイズの場合に適用する前記第1閾値より小さく設定するので、前記移動検出手段を利用した給送異常の検出を過剰にスキップしてしまうことを抑制でき、ひいては前記給送異常をより適切に検出できる。
【0018】
第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記移動検出手段は、前記給送方向に沿った方向である第1方向及び前記給送方向と交差する方向である第2方向の媒体の動きに係わる情報を出力する2次元センサーで構成されることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1方向と前記第2方向の媒体の動きを検出することで、前記給送異常をより適切に検出することができる。
【0019】
第8の態様は、第1から第7の態様のいずれかにおいて、前記高さ検出手段は、前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も上に位置する媒体までの距離を計測する測距センサーで構成されることを特徴とする。
本態様によれば、前記高さ検出手段は、前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も上に位置する媒体までの距離を計測する測距センサーで構成されるので、前記高さを正確に検出することができる。
【0020】
第9の態様に係る画像読取装置は、媒体を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段に向けて媒体を給送する、第1から第8の態様のいずれかに係る媒体給送装置とを備えたことを特徴とする。
本態様によれば、画像読取装置において、上述した第1から第8の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0021】
第10の態様に係る媒体給送方法は、媒体を載置する載置面を形成する媒体載置部と、前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体を給送方向へ給送する給送ローラーと、前記給送方向において前記給送ローラーの上流において前記媒体載置部に載置された媒体のうち最も下の媒体と対向する位置に配置され、前記載置面に沿った方向の媒体の動きに係わる情報を出力する移動検出手段と、を備えた媒体給送装置における媒体給送方法であって、前記移動検出手段から得た情報に基づき媒体の給送を開始した後の媒体の動きが許容範囲を超えた場合に給送異常と判定する異常検出処理において、前記媒体載置部に載置された媒体の前記載置面からの高さに係わる情報を出力する媒体高さ検出手段の検出情報に基づき、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、上述した第1の態様と同様、前記高さが第1閾値未満の場合、前記移動検出手段の検出情報に拘わらず、或いは前記移動検出手段の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続するので、給送異常が生じていないにも拘わらず給送異常であると誤判定して媒体の給送を止めてしまうことを抑制できる。
【0023】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では画像読取装置の一例として、媒体の一例である原稿の表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能なシートフィードタイプのスキャナー1(以下、単にスキャナーと称する)を例に挙げる。以下では、原稿を原稿Pと称する。
【0024】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であって、X軸方向が装置幅方向であり、また、原稿送り方向と交差する方向である原稿幅方向である。また、Y軸方向が原稿送り方向に沿った方向であり、本実施形態ではY軸方向は水平に対して傾斜角を成している。Z軸方向はY軸方向と直交する方向であって、概ね給送及び搬送される原稿の面と直交する方向を示している。
原稿Pの給送方向及び搬送方向の下流は+Y方向となり、上流は-Y方向となる。
【0025】
図1はスキャナー1の外観斜視図である。スキャナー1は、原稿Pの画像を読み取る読取部20(
図2参照)を内部に備える装置本体2を備えている。
装置本体2は、下部ユニット3及び上部ユニット4を備えて構成されている。上部ユニット4は下部ユニット3に対して+Y方向に設けられた不図示の回転軸を中心にして回転することで開閉可能に設けられており、上部ユニット4を装置前面方向に開くことで装置内部が露呈し、原稿Pのジャム処理を行うことができる。
【0026】
装置本体2の背面には、給送される原稿Pを載置する載置面11aを有する原稿載置部11が設けられている。
また、原稿載置部11には、載置された原稿Pの幅方向の側縁をガイドする一対のエッジガイド、具体的にはエッジガイド12A、12Bが設けられている。エッジガイド12A、12Bは、載置面11aの幅方向における中心位置CL(
図3参照)を中心にしてX軸方向に左右対称に位置する様に変位可能に設けられている。
【0027】
装置本体2は、上部ユニット4の装置前面に、各種読み取り設定や読み取り実行の操作を行う為の操作パネル7を備えている。
上部ユニット4の上部には装置本体2内部に連なる給送口6が設けられており、原稿載置部11に載置される原稿Pは、後述する原稿給送装置10によって読取部20に向けて送られる。読み取りが行われた原稿Pは、下部ユニット3の前面に設けられた排出口18から排紙トレイ5に向けて排出される。
【0028】
続いて
図2及び
図3を参照してスキャナー1における原稿送り経路について説明する。スキャナー1は、原稿給送装置10を備えている。原稿給送装置10は、原稿Pを載置する原稿載置部11と、原稿載置部11に載置された原稿Pを給送する給送ローラー14と、原稿Pを分離する分離ローラー15と、制御手段の一例である制御部40(
図4参照)と、移動検出手段の一例である2次元センサー36と、を備えている。
尚、原稿給送装置10は、スキャナー1から原稿読み取りに係る機能、具体的には後述する読取部20を省いた装置と捉えることができる。しかしながら読取部20を備えていても、原稿給送の観点に着目すれば、スキャナー1そのものが原稿給送装置と捉えることができる。
図2において符号Tを付す実線は、原稿送り経路、換言すれば給送及び搬送される原稿Pの通過軌跡を示している。
【0029】
原稿送り経路Tの最も上流側には、原稿載置部11が設けられており、原稿載置部11の下流側には、原稿載置部11の載置面11aに載置された原稿Pを読取部20に向けて送る給送ローラー14と、給送ローラー14との間で原稿Pをニップして分離する分離ローラー15が設けられている。
給送ローラー14は、原稿載置部11の載置面11aに載置された原稿Pのうち、最下位のものと接する。従って、スキャナー1において複数枚の原稿Pを原稿載置部11にセットした場合には、載置面11a側の原稿Pから順に下流側に向けて給送される。
【0030】
給送ローラー14は、本実施形態では
図3に示す様に、X軸方向の中心位置CLに対して左右対称に配置されている。
図3では中心位置CLに対し左側の給送ローラー14を符号14Aで、中心位置CLに対し右側の給送ローラーを符号14Bで、それぞれ示している。同様に分離ローラー15も、
図5及び
図6に示す様に中心位置CLに対して左側の分離ローラー15Aと右側の分離ローラー15Bとで構成されている。
図3において破線Y1は、給送ローラー14と分離ローラー15とによる原稿ニップ位置を示している。
【0031】
給送ローラー14は、給送モーター45(
図4参照)により回転駆動される。給送モーター45から回転トルクを得て、給送ローラー14は
図2において反時計回り方向に回転する。
給送ローラー14と給送モーター45(
図4参照)との間の駆動力伝達経路にはワンウェイクラッチ49が設けられている。従って給送モーター45が逆回転しても、給送ローラー14は逆回転しない。また、給送モーター45が停止した状態においては、給送ローラー14は搬送される原稿Pと接して、
図2の反時計回り方向に従動回転することができる。
例えば、原稿Pの先端が搬送ローラー対16の下流に配置された第2原稿検出部32で検出されると、制御部40は給送モーター45の駆動を停止し、搬送モーター46のみを駆動する。これにより原稿Pは搬送ローラー対16により搬送され、そして給送ローラー14は搬送される原稿Pに接して
図2の反時計回り方向に従動回転する。
【0032】
次に分離ローラー15には、搬送モーター46(
図4参照)から、トルクリミッター50を介して回転トルクが伝達される。原稿Pの給送動作中、搬送モーター46(
図4参照)からは、分離ローラー15を
図2の反時計回り方向に回転させる様な駆動トルクが分離ローラー15に伝達されている。
【0033】
給送ローラー14と分離ローラー15との間に原稿Pが介在しない場合、或いは1枚のみ介在する場合、分離ローラー15を
図2の時計回り方向に回転させようとする回転トルクがトルクリミッター50のリミットトルクを越え、これによりトルクリミッター50において滑りが生じることにより、搬送モーター46(
図4参照)から受ける回転トルクに拘わらず分離ローラー15は
図2の時計回り方向に従動回転する。
【0034】
これに対し、給送ローラー14と分離ローラー15との間に、給送されるべき原稿Pに加えて更に2枚目以降の原稿Pが入り込むと、原稿間で滑りが生じることにより、分離ローラー15は搬送モーター46(
図4参照)から受ける駆動トルクにより、
図2の反時計回り方向に回転する。これにより、重送されようとする2枚目以降の原稿Pが上流に戻され、即ち重送が防止される。
【0035】
次に給送ローラー14の下流側には、搬送ローラー対16と、画像を読み取る読取部20と、排出ローラー対17とが設けられている。搬送ローラー対16は、搬送モーター46(
図4参照)により回転駆動される搬送駆動ローラー16aと、従動回転する搬送従動ローラー16bとを備えて成る。搬送駆動ローラー16aは、本実施形態では
図3に示す様に中心位置CLに対して対称位置となるように2つ配置されている。搬送従動ローラー16bも
図3では図示を省略するが同様に中心位置CLに対して対称位配置されている。
給送ローラー14及び分離ローラー15によりニップされて下流側に給送された原稿Pは搬送ローラー対16にニップされて、搬送ローラー対16の下流側に位置する読取部20に搬送される。
【0036】
読取部20は、上部ユニット4側に設けられた上部読取センサー20aと、下部ユニット3側に設けられた下部読取センサー20bとを備えている。本実施形態において、上部読取センサー20a及び下部読取センサー20bは一例として密着型イメージセンサーモジュール(CISM)として構成されている。
【0037】
原稿Pは、読取部20において原稿Pの表面及び裏面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた後、読取部20の下流側に位置する排出ローラー対17にニップされて、下部ユニット3の装置前面に設けられた排出口18から排出される。
排出ローラー対17は、搬送モーター46(
図4参照)により回転駆動される排出駆動ローラー17aと、従動回転する排出従動ローラー17bとを備えて成る。排出駆動ローラー17aは、
図3に示す様に本実施形態では中心位置CLに対して対称位置となるように2つ配置されている。排出従動ローラー17bも同様に、
図3では図示を省略するが中心位置CLに対して対称位置となるように2つ配置されている。
【0038】
以下、
図4を参照しつつスキャナー1における制御系統について説明する。
図4は本発明に係るスキャナー1の制御系統を示すブロック図である。
図4において、制御手段としての制御部40は原稿Pの給送、搬送、排出制御及び読み取り制御を含め、スキャナー1の各種制御を行う。制御部40には、操作パネル7からの信号が入力される。
【0039】
制御部40は、給送モーター45と搬送モーター46を制御する。給送モーター45と搬送モーター46は、本実施形態ではいずれもDCモーターである。
制御部40には、読取部20からの読み取りデータが入力され、また、読取部20を制御する為の信号が制御部40から読取部20に送信される。
制御部40には、後述する2次元センサー36、原稿高さ検出部37、重送検出部30、第1原稿検出部31、及び第2原稿検出部32からの検出信号も入力される。
また制御部40には、給送モーター45の回転量を検出するエンコーダーや、搬送駆動ローラー16a及び排出駆動ローラー17aの回転量を検出するエンコーダーの検出値も入力され、これにより制御部40は各ローラーによる原稿送り量を把握できる。
【0040】
制御部40は、CPU41、フラッシュROM42を備えている。フラッシュROMは読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリである。CPU41はフラッシュROM42に格納されたプログラム44やパラメータ等に従って各種演算処理を行い、スキャナー1全体の動作を制御する。ここでプログラム44は、必ずしも一つのプログラムを意味するものではなく、複数のプログラムで構成され、それには後述する異常検出処理を行う為のプログラムが含まれ、また原稿Pの給送、搬送、及び読み取りに必要な各種制御プログラムなども含まれる。
【0041】
またスキャナー1は外部コンピューター90と接続可能に構成されており、制御部40には、外部コンピューター90から情報が入力される。外部コンピューター90は、不図示の表示部を備えている。表示部には、外部コンピューター90が備える不図示の記憶手段に格納された制御プログラムによりユーザーインターフェース(UI)が実現される。
【0042】
続いて、原稿送り経路Tに設けられた各検出手段について説明する。
原稿載置部11には、X-Y平面での原稿Pの動き、即ち原稿載置部11の載置面11aに沿った方向の原稿Pの動きに係わる情報を出力する移動検出手段としての2次元センサー36が設けられている。2次元センサー36は、原稿載置部11に載置された原稿Pのうち最下位のものと対向可能に設けられている。
【0043】
2次元センサー36は、コンピューター用マウスに用いられる2次元座標系での検出対象の移動を検出可能なセンサーと同じ、或いは類似する原理に基づくセンサーであって、コントローラー36a、光源36b、レンズ36c、イメージセンサー36d、のこれらを備えている。
光源36bは、レンズ36cを介して原稿載置部11に載置された原稿Pに光を照射するための光源であり、例えば赤色LED、赤外線LED、レーザー、青色LED、等の光源を採用することができ、本実施形態ではレーザー光を採用する。光源36bは、制御部40の制御により、発光状態と非発光状態とを切り換え可能である。
レンズ36cは光源36bから発せられた光を原稿載置部11に載置された原稿Pに向けて案内し、照射する。
【0044】
イメージセンサー36dは原稿載置部11に載置された原稿Pからの反射光を受光するセンサーであり、CMOSやCCD等のイメージセンサーを用いることができる。イメージセンサー36dは、第1軸Ay方向と、これと直交する第2軸Ax方向とに沿って画素が配列されて成る。第1軸Ay方向及び第2軸Ax方向は、
図3に示されており、本実施形態では第1軸Ay方向はY軸方向に平行な方向であり、第2軸Ax方向はX軸方向に平行な方向となる。第1軸Ay方向は、第1方向の一例であり、第2軸Ax方向は、第2方向の一例である。
尚、本明細書において「第1軸Ay方向」とは、+Ay方向及び-Ay方向のいずれか一方のみを意味するものではなく、双方を含む意味である。同様に、「第2軸Ax方向」とは、+Ax方向及び-Ax方向のいずれか一方のみを意味するものではなく、双方を含む意味である。
【0045】
コントローラー36aは、イメージセンサー36dにより取得した画像を解析し、画像の第1軸Ay方向の移動量Wyと、第2軸Ax方向の移動量Wxとを、検出値として出力する。コントローラー36aによる画像解析手法は、コンピューター用マウスに用いられている公知の手法を用いることができる。
【0046】
そして2次元センサー36から移動量Wy、Wxを取得する制御部40は、取得した移動量Wy、Wxを用い、給送中の原稿Pの動きを判断する。本実施形態に係る2次元センサー36は、移動量Wy、Wxを制御部40に出力するが、その出力値は、制御部40からの初期化指示によってゼロリセットされる。
制御部40は、移動量Wyを取得することで2次元センサー36の位置において原稿Pに第1軸Ay方向の動きが生じているか否かを把握することができる。また制御部40は、移動量Wxを取得することで2次元センサー36の位置において原稿Pに第2軸Ax方向の動きが生じているか否かを把握することができる。
【0047】
尚、2次元センサー36は一例として光学式を説明したが、機械式、より具体的にはトラックボールと、第1軸Ay方向のトラックボールの回転を検出するロータリーエンコーダーと、第2軸Ax方向のトラックボールの回転を検出するロータリーエンコーダーと、のこれらを備えたセンサーであっても良い。しかしながら2次元センサー36として光学式を採用することで、より正確に原稿Pの動きを検出することができる。
また、本実施形態では第1軸Ay方向の検出値である移動量Wyと第2軸Ax方向の検出値である移動量Wxとを一つの2次元センサー36で取得するが、第1軸Ay方向の検出値を取得する為のセンサーと、第2軸Ax方向の検出値を取得する為のセンサーとを別個に設けても良い。
【0048】
次に、原稿載置部11に載置された原稿Pと対向する位置には、媒体高さ検出手段の一例である原稿高さ検出部37が設けられている。原稿高さ検出部37は、一例として測距センサーで構成することができる。測距センサーは、光学式や超音波式等の公知のものを用いることができ、本実施形態では一例として超音波式を用いる。超音波式の測距センサーは、超音波を発する発信部(不図示)及び前記超音波を受信可能な受信部(不図示)を備えて成る。原稿高さ検出部37からの検出信号を受信する制御部40は、超音波の発信から受信までに要した時間に基づいて、原稿載置部11に載置された原稿Pのうち最も上に位置する原稿Pまでの距離を算出することができ、ひいては載置面11aからの原稿Pの高さを取得することができる。以下、載置面11aからの原稿Pの高さは原稿高さZtと称する。
尚、原稿高さ検出部37は非接触式のセンサーに限らず、接触式のセンサーを用いることもできる。
【0049】
この様に媒体高さ検出手段は、原稿載置部11に載置された原稿Pのうち最も上に位置する原稿Pまでの距離を計測する測距センサーで構成されるので、原稿高さZtを正確に検出することができる。
【0050】
次に、給送ローラー14の下流近傍には、第1原稿検出部31が設けられている。第1原稿検出部31は、一例として光学式センサーとして構成され、
図2に示す様に原稿送り経路Tを挟んで対向配置される発光部31aと、受光部31bとを備えて成り、受光部31bが制御部40に検出光の強度を示す電気信号を送信する。搬送される原稿Pが発光部31aから発せられる検出光を遮ることにより、前記検出光の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
【0051】
第1原稿検出部31の下流には、原稿Pの重送を検出する重送検出部30が配置されている。重送検出部30は、
図2に示す様に原稿送り経路Tを挟んで対向配置される超音波発信部30aと、超音波を受信する超音波受信部30bとを備えて成り、超音波受信部30bが検出した超音波の強度に応じた出力値を制御部40に送信する。原稿Pの重送が生じると、前記超音波の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿Pの重送を検知できる。
【0052】
重送検出部30の下流であって、更に搬送ローラー対16の下流には、第2原稿検出部32が設けられている。第2原稿検出部32は、レバーを有する接触式センサーとして構成されており、原稿Pの先端或いは後端の通過に伴いレバーが回動すると、第2原稿検出部32から制御部40に送られる電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
制御部40は、上述した第1原稿検出部31及び第2原稿検出部32により、原稿送り経路Tにおける原稿Pの位置を把握することができる。
【0053】
続いて2次元センサー36を用いた異常検出処理について説明する。
制御部40は、2次元センサー36から得た検出値である移動量Wx、Wyに基づき原稿Pの給送を開始した後の原稿Pの動きが許容範囲を超えた場合に給送異常と判定する異常検出処理を行う。制御部40は給送異常と判定すると、原稿Pの給送、及び搬送を停止する。本実施形態では、具体的には給送モーター45及び搬送モーター46を停止する。
【0054】
給送異常の一例として、複数枚の原稿Pが綴じられたまま原稿載置部11に載置され、給送されることに伴う異常が挙げられる。この給送異常には、複数枚の原稿Pが後端側で綴じられている場合の後端綴じ異常と、先端側で綴じられている場合の先端綴じ異常とが含まれる。
図5は先端綴じ異常を説明するものであり、符号P1は給送ローラー14と接して送り出される最下位の原稿を示し、符号P2はその上に積載された原稿を示している。以下、符号P1で示される最下位の原稿を先行原稿P1と称し、その上に積載された原稿を後続原稿P2と称する。先行原稿P1は二点鎖線で示し、後続原稿P2は実線で示している。
また符号P1Fは、先行原稿P1の給送方向下流端、つまり先端を示し、符号P1Eは給送方向上流端、つまり後端を示している。また符号P2Fは、後続原稿P2の給送方向下流端、つまり先端を示し、符号P2Eは給送方向上流端、つまり後端を示している。
【0055】
先行原稿P1と後続原稿P2は、給送方向の下流側即ち先端側において-X方向の角部で、綴じ針Sによって綴じられている。この状態から先行原稿P1が給送ローラー14によって給送方向下流に送り出されると、後続原稿P2は先端P2Fが分離ローラー15で停止した状態を維持する為、先行原稿P1だけが下流側に進む。このとき先行原稿P1は綴じ針Sによって綴じられている為、綴じ針Sを中心に回転し、+X方向の先端がより顕著に下流に進む。
【0056】
この現象は、2次元センサー36の第2軸Ax方向の検出値に表れる為、制御部40は第2軸Ax方向の検出値である移動量Wxが所定の閾値を超えた場合、即ち原稿Pの動きが許容範囲を超えた場合、先端綴じ異常の発生と判断し、原稿送りを停止する。
【0057】
次に
図6は後端綴じ異常を説明するものであり、先行原稿P1と後続原稿P2は、給送方向の上流側即ち後端側において+X方向の角部で、綴じ針Sによって綴じられている。この状態から先行原稿P1が給送ローラー14によって給送方向下流に送り出されると、後続原稿P2は先端P2Fが分離ローラー15で停止した状態で後端P2Eだけが下流に進むため、上方に膨らむ。そして更に後続原稿P2の後端領域が反転し、後続原稿P2の後端P2Eと先行原稿P1の後端P1Eとの間にY軸方向の間隔Gpが形成される。間隔GPは、X軸方向の位置によって異なるが、
図6に示す間隔Gpは、X軸方向における2次元センサー36の配置位置における間隔である。
【0058】
従って制御部40は、2次元センサー36の第1軸Ay方向の検出値即ち移動量Wyに基づき、後続原稿P2の給送動作を行っていないにも拘わらず間隔Gpを検出した場合、即ち後続原稿P2の後端P2Eを検出した場合、原稿Pの動きが許容範囲を超えたとして
後端綴じ異常の発生と判断し、原稿送りを停止する。
【0059】
以上の様に原稿載置部11の載置面11aに沿った原稿Pの動きに係わる情報を出力する移動検出手段は、第1軸Ay方向及び第2軸Ax方向の原稿Pの動きに係わる情報を出力する2次元センサー36で構成されるので、給送異常を適切に検出することができる。
【0060】
ここで上述した給送異常は2次元センサー36の検出値に基づき判定するが、2次元センサー36は原稿Pが2次元センサー36に近接している状態では正確な検出値を出力するものの、原稿Pが2次元センサー36から浮き上がると、検出値の信頼性が低下してしまい、給送異常が生じていないにも拘わらず給送異常であると誤判定して原稿Pの給送を止めてしまい、ユーザーに無駄な操作を強いる虞がある。
そこで制御部40は、原稿載置部11に載置された原稿Pの積載量即ち原稿高さZtに基づいて異常検出処理を行う。
【0061】
具体的には、異常検出処理の流れを示す
図7において制御部40は、原稿給送開始指令を受けると、給送モーター45(
図4参照)及び搬送モーター46(
図4参照)の回転を開始し、原稿Pの給送を開始する(ステップS101)。
次いで制御部40は、原稿高さ検出部37の検出情報に基づき原稿高さZtの初期値Z0を取得する(ステップS102)。尚、本実施例では原稿高さZtの初期値Z0は原稿Pの給送開始直後に取得するが、給送モーター45及び搬送モーター46の回転を開始してから所定のウェイトを設けた後に原稿高さZtの初期値Z0を取得しても良いし、或いは給送モーター45及び搬送モーター46の回転開始前に原稿高さZtの初期値Z0を取得しても良い。
【0062】
次いで制御部40は、現在の原稿高さZtと初期値Z0との差分が第2閾値Sz2以上であるかを判断する(ステップS103)。この第2閾値Sz2は、
図6を参照して説明した後端綴じ異常に基づく原稿Pの浮き上がりを検出する為の閾値である。現在の原稿高さZtと初期値Z0との差分が第2閾値Sz2以上であれば(ステップS103においてYes)、後端綴じ異常の発生として原稿Pの給送及び搬送を停止し(ステップS108)、給送異常が発生した旨をユーザーに知らせるアラートを発する(ステップS109)。
【0063】
現在の原稿高さZtと初期値Z0との差分が第2閾値Sz2未満であれば(ステップS103においてNo)、現在の原稿高さZt、換言すれば現在の原稿積載量が第1閾値Sz1未満であるかを判断する(ステップS104)。
その結果現在の原稿高さZtが第1閾値Sz1未満であれば(ステップS104においてYes)、2次元センサー36を用いた給送異常の判定(ステップS105、S106)をスキップし、ステップS107に進む。
【0064】
これに対し現在の原稿高さZtが第1閾値Sz1を超えていれば(ステップS104においてNo)、2次元センサー36を用いた給送異常の判定を行い(ステップS105、S106)、ステップS107に進む。ステップS106の異常判定では、上述した先端綴じ異常や後端綴じ異常を含む給送異常の判定を行う。その結果給送異常と判定した場合(ステップS106においてYes)、原稿Pの給送及び搬送を停止し(ステップS108)、給送異常が発生した旨をユーザーに知らせるアラートを発する(ステップS109)。
【0065】
ステップS107では、次ページの給送を行うかを判断し、次ページがあれば(ステップS107においてYes)、ステップS103に戻り、次ページがなければ(ステップS107においてNo)、処理を終了する。尚、次ページの有無は、2次元センサー36の検出値に基づき判断することができるが、原稿載置部11上の原稿Pの有無を検出する為のセンサーを別途設けても良い。
【0066】
図8の上の図は、現在の原稿高さZtが第1閾値Sz1未満の場合の一例であり、
図8の下の図は、現在の原稿高さZtが第1閾値Sz1を超える場合の一例である。
図8の上の図に示す様に、原稿積載量が少ない場合、給送される最も下の原稿Pはその上に積載されている原稿Pから受ける荷重が小さく、原稿載置部11から浮き上がり易い為、この様な場合には2次元センサー36を用いた給送異常の判定は行わない。これに対し
図8の下の図に示す様に、原稿積載量が多い場合、給送される最も下の原稿Pはその上に積載されている原稿Pから受ける荷重が大きく、原稿載置部11から浮き上がり難い為、この様な場合には2次元センサー36を用いた給送異常の判定を行うものとする。
【0067】
以上の様に制御部40は、異常検出処理において原稿高さ検出部37の検出情報に基づき、原稿高さZtが第1閾値Sz1未満の場合(
図7のステップS104においてYes)、2次元センサー36の検出情報に拘わらず、或いは2次元センサー36の検出情報を取得せずに媒体の給送を継続するので、給送異常が生じていないにも拘わらず給送異常であると誤判定して原稿Pの給送を止めてしまうことを抑制できる。
尚、
図7のステップS104において、原稿高さZtが第1閾値Sz1未満であれば(ステップS104においてYes)、2次元センサー36を用いた給送異常の判定(ステップS105、S106)をスキップするが、これに代えてステップS105、S106を実施した上で、ステップS106において異常判定結果に拘わらずステップS107に進む様にしても良い。
【0068】
また制御部40は、原稿Pの給送を開始した際、原稿高さ検出部37の検出情報に基づき原稿高さZtの初期値Z0を取得し、その後原稿高さZtの初期値Z0からの変化量が第2閾値Sz2を超えると(
図7のステップS103においてYes)、原稿Pの給送を停止するので、後端綴じ異常を検出して原稿Pの給送を停止することで原稿Pに生じるダメージを抑制することができる。
また本態様では、原稿高さZtの初期値Z0からの変化量に基づいて後端綴じ異常の有無を判定する為、原稿Pの積載量に拘わらず、後端綴じ異常の有無を適切に判定することができる。
【0069】
尚、本実施形態において原稿高さ検出部37は2次元センサー36と対向する位置に配置したが、
図9に示す原稿高さ検出部37Aの様に、2次元センサー36と対向する場所から外れた位置に設けられていても良い。
【0070】
また原稿高さ検出部は、
図11に示す様に原稿積載方向に沿って複数のセンサー部を備えて成る様に構成することもできる。
図11に示す原稿高さ検出部37Bは、原稿積載方向に沿って光学センサーであるセンサー部38a、38bを備えて成る。符号Gは検出光の光軸を示しており、
図11では光軸GがX軸に平行となる様にセンサー部38a、38bが配置されている。本実施形態においてセンサー部38aは、第1閾値Sz1に対応する高さに配置され、センサー部38bは、第2閾値Sz2に対応する高さに配置されている。
尚、センサー部38a、38bは、X軸方向において発光部と受光部が同じ側に配置されて成る反射光検出方式であっても良いし、或いはX軸方向において発光部と受光部が原稿載置部11を挟んで配置されて成る透過光検出方式であっても良い。
また検出光の光軸Gは、本実施形態ではX軸方向に平行であるが、Y軸方向に平行であっても良い。
【0071】
この様な原稿高さ検出部37Bを適用した場合、制御部40は
図10に示す様な異常検出処理を行う。
図10において制御部40は、原稿給送開始指令を受けると、給送モーター45(
図4参照)及び搬送モーター46(
図4参照)の回転を開始し、原稿Pの給送を開始する(ステップS201)。
【0072】
次いで制御部40は、現在の原稿高さZtが第2閾値Sz2以上であるかを判断する(ステップS202)。現在の原稿高さZtが第2閾値Sz2以上であるかは、センサー部38bの検出情報により把握できる。そして原稿高さZtが第2閾値Sz2以上であれば(ステップS202においてYes)、後端綴じ異常の発生として原稿Pの給送及び搬送を停止し(ステップS207)、給送異常が発生した旨をユーザーに知らせるアラートを発する(ステップS208)。
【0073】
現在の原稿高さZtが第2閾値Sz2未満であれば(ステップS202においてNo)、現在の原稿高さZt、換言すれば現在の原稿積載量が第1閾値Sz1未満であるかを判断する(ステップS203)。現在の原稿積載量が第1閾値Sz1未満であるかは、センサー部38bの検出情報により把握できる。
その結果現在の原稿高さZtが第1閾値Sz1未満であれば(ステップS203においてYes)、2次元センサー36を用いた給送異常の判定(ステップS204、S205)をスキップし、ステップS206に進む。
【0074】
これに対し現在の原稿高さZtが第1閾値Sz1を超えていれば(ステップS203においてNo)、2次元センサー36を用いた給送異常の判定を行い(ステップS204、S205)、ステップS206に進む。ステップS205の異常判定では、上述した先端綴じ異常や後端綴じ異常を含む給送異常の判定を行う。その結果給送異常と判定した場合(ステップS205においてYes)、原稿Pの給送及び搬送を停止し(ステップS207)、給送異常が発生した旨をユーザーに知らせるアラートを発する(ステップS208)。
【0075】
ステップS206では、次ページの給送を行うかを判断し、次ページがあれば(ステップS206においてYes)、ステップS202に戻り、次ページがなければ(ステップS206においてNo)、処理を終了する。尚、次ページの有無は、2次元センサー36の検出値に基づき判断することができるが、原稿載置部11上の原稿Pの有無を検出する為のセンサーを別途設けても良い。
【0076】
以上の様に本実施形態では、原稿高さZtの絶対値に基づいて後端綴じ異常の有無を判定するので(ステップS202)、原稿高さ検出部として安価なものを採用でき、装置のコストアップを抑制できる。
尚、本実施形態において原稿高さ検出部37Bは、2つのセンサー部38a、38bで構成したが、これに限られず、3つ以上のセンサー部で構成しても良い。また第1閾値Sz1に基づいた判断処理を行う観点では(ステップS203)、センサー部は1つのみであっても良い。
【0077】
尚、上述した第1閾値Sz1は、原稿PのY軸方向即ち給送方向サイズに応じて異なるものとしても良い。具体的には、原稿Pの後端が原稿載置部11に収まるサイズである場合に適用する第1閾値Sz1を、原稿Pの後端が原稿載置部11から外れるサイズである場合に適用する第1閾値Sz1より小さくする。
即ち原稿Pの後端が原稿載置部11から外れるサイズの場合、原稿載置部11上での原稿Pの変形に伴って2次元センサー36から浮き上がり易くなる。換言すれば、原稿Pの後端が原稿載置部11に収まるサイズの場合、原稿Pの後端が原稿載置部11から外れるサイズの場合よりも、2次元センサー36から浮き上がり難いと言える。
そこで原稿Pの後端が原稿載置部11に収まるサイズである場合に適用する第1閾値Sz1を、原稿Pの後端が原稿載置部11から外れるサイズである場合に適用する第1閾値Sz1より小さくすることで、2次元センサー36を利用した給送異常の検出を過剰にスキップしてしまうことを抑制でき、ひいては給送異常をより適切に検出できる。
尚、原稿Pの給送方向サイズは、2次元センサー36や第1原稿検出部31などで取得できる。またドライバ設定によりユーザーが原稿サイズを指定している場合は、その情報を利用できる。
【0078】
また原稿Pの後端が原稿載置部11から外れるサイズである場合、原稿後端の原稿載置部11からのはみ出し量が少ないほど、2次元センサー36から原稿Pが浮き上がり難いと言える。そこで原稿Pの給送方向サイズが第1サイズの場合に適用する第1閾値Sz1を、前記第1サイズよりも給送方向サイズの大きい第2サイズの場合に適用する第1閾値Sz1より小さくすることも好適である。これにより2次元センサー36を利用した給送異常の検出を過剰にスキップしてしまうことを抑制でき、ひいては給送異常をより適切に検出できる。
【0079】
また上述した第1閾値Sz1は、原稿PのX軸方向即ち幅方向サイズに応じて異なるものとしても良い。具体的には、原稿Pの幅方向サイズが第1サイズの場合に適用する第1閾値Sz1を、第1サイズよりも幅方向サイズの小さい第2サイズの場合に適用する第1閾値Sz1より小さくする。
即ち原稿Pの幅方向サイズが大きいほど、原稿Pの重量が重いため、2次元センサー36から浮き上がり難くなる。この様な性質に鑑み、原稿Pの幅方向サイズが第1サイズの場合に適用する第1閾値Sz1を、幅方向サイズが第1サイズよりもサイズの小さい第2サイズの場合に適用する第1閾値Sz1より小さくすることで、2次元センサー36を利用した給送異常の検出(
図7においてステップS106、
図10においてステップS205)を過剰にスキップしてしまうことを抑制でき、ひいては給送異常をより適切に検出できる。
尚、原稿PのX軸方向サイズは、読取部20による読み取り画像で取得でき、或いはエッジガイド12A、12Bの位置を検出する手段を設けることで取得でき、或いは他の専用の検出手段を設けることで取得できる。またドライバ設定によりユーザーが原稿サイズを指定している場合は、その情報を利用できる。
【0080】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1…スキャナー(画像読取装置)、2…装置本体、3…下部ユニット、4…上部ユニット、5…排紙トレイ、6…給送口、7…操作パネル、8…第1ペーパーサポート、9…第2ペーパーサポート、10…原稿給送装置、11…原稿載置部、11a…載置面、12A、12B…エッジガイド、14…給送ローラー、15…分離ローラー、16…搬送ローラー対、16a…搬送駆動ローラー、16b…搬送従動ローラー、17…排出ローラー対、17a…排出駆動ローラー、17b…排出従動ローラー、18…排出口、20…読取部、20a…上部読取センサー、20b…下部読取センサー、30…重送検出部、30a…超音波発信部、30b…超音波受信部、31…第1原稿検出部、31a…発光部、31b…受光部、32…第2原稿検出部、36…2次元センサー、36a…コントローラー、36b…光源、36c…レンズ、36d…イメージセンサー、37…原稿高さ検出部、40…制御部、41…CPU、42…フラッシュROM、44…プログラム、45…給送モーター、46…搬送モーター、49…ワンウェイクラッチ、50…トルクリミッター、P…原稿