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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/64 20210101AFI20241008BHJP
   B22F 10/18 20210101ALI20241008BHJP
   B22F 10/36 20210101ALI20241008BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20241008BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241008BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241008BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
B22F10/64
B22F10/18
B22F10/36
B28B1/30
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020216427
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101987
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094817(JP,A)
【文献】米国特許第10751951(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第112010641(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180083(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/02,3/16,10/00,12/00
B28B
B29C 64/00
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末とバインダーとを含む第1部品と、無機粉末とバインダーとを含む第2部品と
を接合して製品を製造する製造方法であって、
三次元造形装置により前記第1部品を生成する第1工程と、
前記第2部品を生成する第2工程と、
前記第1部品と前記第2部品とを組み立てて組立体を得る第3工程と、
前記組立体を第1温度で加熱する第4工程と、
前記第4工程の後に、前記組立体を前記第1温度より高い第2温度で加熱して焼結する
第5工程と、
を備え
前記第1部品は、前記第2部品と接触する第1領域と、前記第2部品と接触しない第2
領域とを有し、
前記第1領域に含まれるバインダーの融点は、前記第2領域に含まれるバインダーの融
点に比べて低い、製造方法。
【請求項2】
無機粉末とバインダーとを含む第1部品と、無機粉末とバインダーとを含む第2部品と
を接合して製品を製造する製造方法であって、
三次元造形装置により前記第1部品を生成する第1工程と、
前記第2部品を生成する第2工程と、
前記第1部品と前記第2部品とを組み立てて組立体を得る第3工程と、
前記組立体を第1温度で加熱する第4工程と、
前記第4工程の後に、前記組立体を前記第1温度より高い第2温度で加熱して焼結する
第5工程と、
を備え、
前記第1部品は、前記第2部品と接触する第1領域と、前記第2部品と接触しない第2
領域を有し、
前記第1領域に含まれる無機粉末の粒径は、前記第2領域に含まれる無機粉末の粒径に
比べて小さい、製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法であって、
前記第2工程において、前記第2部品を射出成形機により生成する、製造方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記第2工程において、前記第2部品を三次元造形装置により生成する、製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法であって、
前記第1工程において用いられる前記三次元造形装置、および、前記第2工程において
用いられる前記三次元造形装置は、それぞれ、ペレット状の材料が投入されるホッパーと
、前記材料を可塑化する可塑化部と、可塑化された前記材料を吐出するノズルと、を備え
る、製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法であって、
前記第1工程において用いられる前記三次元造形装置、および、前記第2工程において
用いられる前記三次元造形装置は同じ三次元造形装置であり、
前記第1部品と前記第2部品とは、前記三次元造形装置に備えられた同じステージ上で
並行して生成される、製造方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記第4工程よりも前において、前記第1領域における前記無機粉末の粒子密度は、前
記第2領域における前記無機粉末の粒子密度に比べて高い、製造方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記第1領域に含まれる前記無機粉末は、前記第2領域に含まれる前記無機粉末と同じ
元素を主成分として含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を製造する技術に関し、特許文献1には、軸部を有する溶製鋼材と、鉄系金属粉末を含む混合粉を圧縮成形した孔部を有する圧粉体とを、軸部表層の炭素量および嵌合寸法をコントロールすることによって、焼結工程において接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-330108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した方法では、炭素量と寸法のコントロールが必要になるため、製造の難易度が比較的高い。そのため、より簡易な手法で複数の部品を接合して製品を製造することの技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、無機粉末とバインダーとを含む第1部品と、無機粉末とバインダーとを含む第2部品とを接合して製品を製造する製造方法が提供される。この製造方法は、三次元造形装置により前記第1部品を生成する第1工程と、前記第2部品を生成する第2工程と、前記第1部品と前記第2部品とを組み立てて組立体を得る第3工程と、前記組立体を第1温度で加熱する第4工程と、前記第4工程の後に、前記組立体を前記第1温度より高い第2温度で加熱する第5工程と、を有し、前記第1部品は、前記第2部品と接触する第1領域と、前記第2部品と接触しない第2領域とを有し、前記第1領域に含まれるバインダーの融点は、前記第2領域に含まれるバインダーの融点に比べて低い。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、無機粉末とバインダーとを含む第1部品と、無機粉末とバインダーとを含む第2部品とを接合して製品を製造する製造方法が提供される。この製造方法は、三次元造形装置により前記第1部品を生成する第1工程と、前記第2部品を生成する第2工程と、前記第1部品と前記第2部品とを組み立てて組立体を得る第3工程と、前記組立体を第1温度で加熱する第4工程と、前記第4工程の後に、前記組立体を前記第1温度より高い第2温度で加熱する第5工程と、を有し、前記第1部品は、前記第2部品と接触する第1領域と、前記第2部品と接触しない第2領域を有し、前記第1領域に含まれる無機粉末の粒径は、前記第2領域に含まれる無機粉末の粒径に比べて小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における製造システムの概略構成を示す図である。
図2】ホッパーおよび吐出部の概略構成を示す図である。
図3】スクリューの構成を示す概略斜視図である。
図4】バレルの構成を示す上面図である。
図5】射出成形機の概略構成を示す断面図である。
図6】第1実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。
図7】第1部品の例と第2部品の例とを示す図である。
図8】第1部品と第2部品とが組み立てられた組立体を示す図である。
図9】第4実施形態における製造システムの概略構成を示す図である。
図10】第4実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。
図11】第5実施形態における製造システムの概略構成を示す図である。
図12】第5実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。
図13】第5実施形態における製品の製造方法の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における製造システム5の概略構成を示す図である。製造システム5は、三次元造形装置100と、射出成形機200と、脱脂装置300と、焼結炉400とを備える。図1に示したX,Y,Z方向は、図2以降に示したX,Y,Z方向に対応している。
【0009】
三次元造形装置100は、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含む第1部品を付加製造法によって生成する。射出成形機200は、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含む第2部品を射出成形によって生成する。脱脂装置300は、第1部品と第2部品とを組み立てることにより得られる組立体を第1温度で加熱して脱脂を行う。焼結炉400は、組立体を第1温度よりも高い第2温度で加熱することによって焼結させ、製品を完成させる。本明細書において、「製品」とは、製造システム5において製造される物を意味しており、他の製品の一部となる物や、焼結後に後処理や加工が行われる物も含む。
【0010】
三次元造形装置100は、第1吐出部10aと、第2吐出部10bと、第1ホッパー20aと、第2ホッパー20bと、移動機構部70と、ステージ80と、制御部90とを備える。以下では、第1吐出部10aと第2吐出部10bとを特に区別することなく説明する場合、単に、吐出部10と呼ぶこともある。同様に、第1ホッパー20aと第2ホッパー20bとを特に区別することなく説明する場合、単に、ホッパー20と呼ぶこともある。
【0011】
移動機構部70は、吐出部10とステージ80との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構部70は、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bに対して、ステージ80を移動させる。本実施形態における移動機構部70は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ80をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部90の制御下にて駆動する。なお、他の実施形態では、移動機構部70は、ステージ80を移動させる構成ではなく、例えば、ステージ80を移動させずに吐出部10を移動させる構成であってもよい。また、移動機構部70は、ステージ80と吐出部10との両方を移動させる構成であってもよい。
【0012】
制御部90は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部90は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための三次元造形処理を実行する機能等、種々の機能を発揮する。制御部90は、第1吐出部10aと第2吐出部10bとを選択的に使い分けることにより、2種類の異なる材料を切り替えて三次元造形物を造形することができる。なお、制御部90は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0013】
図2は、三次元造形装置100に備えられたホッパー20および吐出部10の概略構成を示す図である。吐出部10は、可塑化部30とノズル60とを備えている。吐出部10には、ホッパー20に収容されている材料が供給される。吐出部10は、制御部90の制御下で、ホッパー20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化部30によって可塑化して可塑化材料を生成し、生成した可塑化材料をノズル60からステージ80上に吐出して積層させる。本実施形態において「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0014】
ホッパー20には、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含むペレット状の材料が収容されている。ホッパー20に収容された材料は、ホッパー20と吐出部10とを接続するようにホッパー20の下方に設けられた供給路22を介して、可塑化部30に供給される。本実施形態では、第1ホッパー20aには第1材料が収容されており、第2ホッパー20bには第2材料が収容されている。そのため、第1吐出部10aには、第1ホッパー20aに収容されている第1材料が供給され、第2吐出部10bには第2ホッパー20bに収容されている第2材料が供給される。第1材料は、第2材料よりも溶融温度が低い。換言すれば、第2材料は、第1材料よりも溶融温度が高い。
【0015】
可塑化部30は、スクリューケース31と、スクリューケース31内に収容されたスクリュー41と、スクリュー41を駆動させる駆動モーター32と、バレル50と、ヒーター58とを備えている。バレル50には連通孔56が設けられている。ヒーター58は、バレル50に埋設されている。本実施形態のスクリュー41は、いわゆるフラットスクリューであり、「スクロール」と呼ばれることもある。
【0016】
スクリュー41は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。スクリュー41は、バレル50に対向する面に、スクリュー溝45が形成された溝形成面42を有している。溝形成面42は、バレル50のスクリュー対向面52と対向する。
【0017】
駆動モーター32は、スクリュー41の溝形成面42とは反対側の面に接続されている。駆動モーター32は、制御部90の制御下で駆動される。スクリュー41は、駆動モーター32の回転で生じるトルクによって、中心軸RXを中心に回転する。なお、駆動モーター32は、直接、スクリュー41と接続されていなくてもよく、例えば、減速機を介して接続されていてもよい。
【0018】
バレル50は、スクリュー41の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。バレル50に設けられた連通孔56は、スクリュー41の中心軸RXに沿うように形成されている。
【0019】
ノズル60は、先端にノズル開口63を有している。ノズル開口63は、バレル50に設けられた連通孔56に連通している。ノズル60は、ノズル開口63から、ステージ80に向けて、可塑化部30により可塑化された材料を吐出する。
【0020】
図3は、スクリュー41の溝形成面42側の構成を示す概略斜視図である。図3には、スクリュー41の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。上述したように、溝形成面42には、スクリュー溝45が設けられている。スクリュー41の溝形成面42の中央部であるスクリュー中央部47は、スクリュー溝45の一端が接続されている窪みとして構成されている。スクリュー中央部47は、バレル50の連通孔56に対向する。スクリュー中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0021】
スクリュー41のスクリュー溝45は、いわゆるスクロール溝を構成する。スクリュー溝45は、スクリュー中央部47から、スクリュー41の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。スクリュー溝45は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、スクリュー溝45の側壁部を構成し、各スクリュー溝45に沿って延びている凸条部46が設けられている。スクリュー溝45は、スクリュー41の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、ホッパー20から供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0022】
図3には、3つのスクリュー溝45と、3つの凸条部46と、を有するスクリュー41の例が示されている。スクリュー41に設けられるスクリュー溝45や凸条部46の数は、3つには限定されず、1つのスクリュー溝45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数のスクリュー溝45が設けられていてもよい。また、図3には、材料導入口44が3箇所に形成されているスクリュー41の例が図示されている。スクリュー41に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されず、1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0023】
図4は、バレル50のスクリュー対向面52側の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端は連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0024】
説明を図1に戻す。射出成形機200は、可塑化装置210と型締装置230とを備えている。可塑化装置210と型締装置230とは、それぞれ、基台205に固定されている。基台205には、制御部290が備えられている。射出成形機200は、型締装置230に装着された成形型220内に、可塑化装置210から可塑化材料を射出して成形品を成形する。本実施形態では、型締装置230には、金属製の成形型220が装着されている。型締装置230に装着される成形型220は、金属製に限られず、樹脂製あるいはセラミック製でもよい。金属製の成形型220のことを金型と呼ぶ。
【0025】
可塑化装置210には、成形品の材料が投入される材料供給部208が接続されている。成形品の材料としては、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含むペレット状の材料が用いられる。可塑化装置210は、材料供給部208から供給された材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する。
【0026】
制御部290は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。プロセッサーが主記憶装置上にプログラムを読み込んで実行することにより、制御部290は、可塑化装置210と型締装置230とを制御し、成形品の製造を行う。
【0027】
図5は、射出成形機200の概略構成を示す断面図である。射出成形機200は、上記の通り、可塑化装置210と型締装置230と成形型220とを備えており、また、射出制御機構240を備えている。
【0028】
可塑化装置210は、スクリュー211とバレル212とヒーター213とノズル214とを有している。スクリュー211は、スクリュー211を収容する収容部215に収容されている。本実施形態のスクリュー211は、いわゆるフラットスクリューであり、「スクロール」とも呼ばれる。スクリュー211は、駆動モーターを備えるスクリュー駆動部216によって、その中心軸RXを中心に収容部215内で回転駆動される。バレル212の中心には、連通孔217が形成されている。連通孔217には、後述する射出シリンダー241が接続されている。連通孔217には、射出シリンダー241よりも上流部に、逆止弁218が備えられている。スクリュー駆動部216によるスクリュー211の回転と、ヒーター213による加熱とは、制御部290によって制御される。
【0029】
射出制御機構240は、射出シリンダー241と、プランジャー242と、駆動モーターを備えるプランジャー駆動部243とを備えている。射出制御機構240は、射出シリンダー241内の可塑化材料を、後述するキャビティー223に射出注入する機能を有している。射出制御機構240は、制御部290の制御下で、ノズル214からの可塑化材料の射出量を制御する。射出シリンダー241は、バレル212の連通孔217に接続された略円筒状の部材であり、内部にプランジャー242を備えている。プランジャー242は、射出シリンダー241の内部を摺動し、射出シリンダー241内の可塑化材料を、可塑化装置210に備えられたノズル214に圧送する。プランジャー242は、プランジャー駆動部243により駆動される。
【0030】
成形型220は、可動型221と固定型222とを備えている。可動型221と固定型222とは、互いに対面して設けられ、その間に成形品の形状に応じた空間であるキャビティー223を有している。キャビティー223には、バレル212の連通孔217から流出した可塑化材料が、射出制御機構240によって圧送されてノズル214から射出される。
【0031】
型締装置230は、駆動モーターを備える成形型駆動部231を備えており、可動型221と固定型222との開閉を行う機能を有している。型締装置230は、制御部290の制御下で、モーターによって構成される成形型駆動部231を駆動することによってボールネジ232を回転させ、ボールネジ232に結合された可動型221を固定型222に対して移動させて成形型220を開閉させる。
【0032】
上述したように、本実施形態では、三次元造形装置100および射出成形機200は、いずれも、材料を可塑化するためにフラットスクリューを備えている。これに対して、三次元造形装置100および射出成形機200は、材料の可塑化のために、インラインスクリューを備えてもよい。
【0033】
図6は、第1実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。第1工程S10では、三次元造形装置100により第1部品が造形される。第2工程S20では、射出成形機200により第2部品が成形される。第1工程S10と第2工程S20との順序は任意であり、同時であってもよい。三次元造形装置100により造形された第1部品、および、射出成形機200により成形された第2部品は、それぞれグリーン体と呼ばれる。
【0034】
図7は、第1部品P1の例と第2部品P2の例とを示す図である。図7には、直方体状の第1部品P1と、2つの円柱が、それぞれの中心軸が交差するように連結した形状を有する第2部品P2とを示している。第1部品P1の形状と第2部品P2の形状とは、図7に示した形状に限られず、様々な形状とすることが可能である。
【0035】
第1部品P1は、第1領域A1と第2領域A2とを含んでいる。第1領域A1は、第2部品P2と接触する領域であり、第1部品P1の上面に、円形の領域として形成されている。第1領域A1のことを「接合領域」ともいう。第2領域A2は、第2部品P2と接触しない領域である。
【0036】
上記第1工程S10において、三次元造形装置100は、第1吐出部10aから、SUSと第1バインダーとを含む第1材料を可塑化して吐出することにより第1領域A1を造形する。三次元造形装置100は、第2吐出部10bから、SUSと第2バインダーとを含む第2材料を可塑化して吐出することにより第1領域A1以外の第2領域A2を造形する。本実施形態において、第1領域A1に用いる無機粉末と、第2領域A2に用いる無機粉末とは、同じSUSであり、同じ元素を主成分として含んでいる。主成分とは、無機粉末の主要な元素を意味し、その無機粉末において最も多くの含有率を占める元素を意味する。
【0037】
本実施形態において、第1バインダーと第2バインダーとは、それぞれ、樹脂とワックスとを含む。ただし、第1バインダーと第2バインダーとでは、異なる種類の樹脂を用いることによって、第1領域A1に含まれる第1バインダーの融点が、第2領域A2に含まれる第2バインダーの融点に比べて低くなっている。より具体的には、第1バインダーの融点は、後述する脱脂処理においてワックス成分を除去する温度よりも低く、第2バインダーの融点は、後述する脱脂処理においてワックス成分を除去する温度よりも高い。第1バインダーのことを低融点バインダー、第2バインダーのことを高融点バインダーと呼ぶこともできる。
【0038】
第1バインダーに用いられる樹脂および第2バインダーに用いられる樹脂としては、上述した融点を満たすように、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性樹脂から採用することができる。
【0039】
本実施形態では、第1部品P1を三次元造形装置100によって造形するため、第1部品P1を小さく複雑な形状とすることは困難であるものの、比較的大きなサイズの形状とすることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、第1材料および第2材料に無機粉末としてSUSが含まれるものとしたが、SUSに限らず、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金や、マルエージング鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金などの合金を用いてもよい。また、無機粉末としては金属に限らず、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどを用いてもよい。
【0041】
本実施形態において第2部品P2は、上記第2工程S20において、射出成形機200により、第1部品P1の第2領域A2と同じ材料を成形型220に射出することによって成形される。なお、第2部品P2に用いられる無機粉末は、第1部品P1に用いられる無機粉末と異なる粉末であってもよい。また、第2部品P2に用いられるバインダーの樹脂は、後述する脱脂処理においてワックス成分を除去する温度よりも融点が高ければ、第1部品P1の第2領域A2に用いられる樹脂とは異なる種類の樹脂であってもよい。
【0042】
本実施形態では、第2部品P2を射出成形機200によって成形するため、第2部品P2を大型の形状とすることは困難であるものの、サポート材などを用いることなく小さく複雑な形状とすることができる。
【0043】
第3工程S30では、第1部品P1と第2部品P2とが組み立てられ、組立体が得られる。第1部品P1と第2部品P2の組み立ては、例えば、ロボットによって行うことができる。本実施形態では、図7に示すように、第1部品P1の第1領域A1に、第2部品P2を載置することによって組み立てが行われる。図8には、第1部品P1と第2部品P2とが組み立てられた組立体ABを示している。
【0044】
第4工程S40では、脱脂装置300によって、組立体ABを第1温度で加熱して脱脂する脱脂処理を実施する。第1温度は、第1部品P1および第2部品P2に含まれるワックス成分を除去するための温度であり、例えば、110℃である。第1部品P1の第1領域A1に含まれる樹脂の融点は、第1温度よりも低い温度である。そのため、脱脂処理によって第1領域A1が軟化し、第1部品P1と第2部品P2とが第1領域A1において良好に接触する。第4工程S40では、第1温度によるワックス成分の除去後、第1温度を400~500℃に上昇させ、組立体ABに含まれるバインダー中の樹脂成分を除去する。
【0045】
第5工程S50では、焼結炉400によって、脱脂後の組立体ABを第1温度よりも高い第2温度で加熱して焼結する。第2温度は、例えば、1200℃である。以上で説明した一連の工程によって、第1部品P1と第2部品P2とからなる製品が製造される。
【0046】
以上で説明した第1実施形態における製品の製造方法によれば、複数の吐出部10を備える三次元造形装置100によって複数の材料を切り替えることによって、第1部品P1の第2部品P2との接合領域である第1領域A1に、融点の低いバインダーを有する材料を選択的に配置することができる。そのため、第1部品P1と第2部品P2とを加熱して脱脂する際に、接合領域において第1部品P1のバインダー成分が溶融し、第1部品P1と第2部品P2との間に隙間が生じることを抑制できる。この結果、簡易な手法で複数の部品を良好に接合して製品を製造することができる。
【0047】
また、本実施形態では、第2部品P2を射出成形機200により成形するので、第2部品P2を短時間で生成でき、また、サポート材を用いることなく複雑な形状の第2部品P2を製造できる。また、本実施形態では、第1部品P1を三次元造形装置100によって造形するため、中空構造や肉抜き構造を容易に形成できるので、大型な第1部品P1を造形できる。そのため、第1部品P1と第2部品P2とを接合することにより、複雑な形状を有し、射出成形機200の金型の大きさに依存しない大型の製品を製造できる。
【0048】
また、本実施形態では、第1部品P1の第1領域A1に含まれる無機粉末は、第2領域A2に含まれる無機粉末と同じ元素を主成分として含むので、接合領域にロウなどを用いることなく、第1部品P1と第2部品P2とを接合できる。そのため、接合領域における製品の強度が低下することを抑制できる。
【0049】
B.第2実施形態:
第2実施形態では、製造システム5の構成、および、製品の製造方法の一連の工程は、第1実施形態と同じである。第1実施形態では、第1部品P1の第1領域A1の造形に用いる第1材料と、第2領域A2の造形に用いる第2材料とで、異なる融点を有するバインダーを用いている。これに対して、第2実施形態では、第1部品P1の第1領域A1の造形に用いる第1材料の無機粉末の粒径を、第2領域A2の造形に用いる第2材料の無機粉末の粒径に比べて小さくする。本実施形態において、粒径とは中心粒径を意味する。
【0050】
より具体的には、第2実施形態では、第1材料に含まれる無機粉末として中心粒径が5μmのSUSを用いる。また、第2材料に含まれる無機粉末として中心粒径が10μmのSUSを用いる。このように、第1部品P1と第2部品P2とが接合される接合領域である第1領域A1において、粒径の小さな粉末を用いることにより、焼結時において、接合領域における拡散接合が促進され、接合領域における焼結開始温度を低下させることができる。例えば、第1材料に含まれる無機粉末として中心粒径が5μmのSUSを用い、第2材料に含まれる無機粉末として中心粒径が10μmのSUSを用いたところ、接合領域における焼結開始温度を1200℃から1150℃に低下させることができた。この結果、第1部品P1の第1領域A1を起点として、第1部品P1と第2部品P2との接合を良好に行うことができた。
【0051】
以上で説明した第2実施形態によれば、三次元造形装置100によって、第1部品P1の第2部品P2との接合領域に、粒径の小さい無機粉末を有する材料を配置することができる。そのため、第1部品P1と第2部品P2とを焼結する際に、接合領域において焼結が早く開始され、これらを良好に接合することができる。この結果、簡易な手法で複数の部品を接合して製品を製造することができる。なお、本実施形態において、第1材料と第2材料とに含まれるバインダーの種類は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、第1実施形態のように、第1材料に含まれる第1バインダーの融点の方が、第2材料に含まれる第2バインダーの融点よりも低いことが好ましい。
【0052】
C.第3実施形態:
第3実施形態では、製造システム5の構成、および、製品の製造方法の一連の工程は、第1実施形態と同じである。
【0053】
第3実施形態では、三次元造形装置100において用いる第1材料中の無機粉末の粒子密度を、第2材料中の無機粉末の粒子密度よりも高くすることにより、図6に示す第4工程S40よりも前、すなわち、脱脂処理前における、第1部品P1の第1領域A1の粒子密度を、第1部品P1の第2領域A2の粒子密度に比べて高くする。具体的には、第2領域A2に用いる第2材料のバインダー部数よりも、第1領域A1に用いる第1材料のバインダー部数を少なくすることによって、第1材料の粒子密度を高める。例えば、本実施形態では、第1領域A1に用いる第1材料の組成を、SUS100gに対してバインダー7.0gとすることで、バインダー部数を7.0とし、第2領域A2に用いる第2材料の組成を、SUS100gに対して、バインダー8.5gとすることで、バインダー部数を8.5とする。
【0054】
以上で説明した第3実施形態によれば、第1部品P1に含まれる第1領域A1の粒子密度を小さくすることで、組立体ABにおいて、第1部品P1に含まれる無機粒子と第2部品P2に含まれる無機粒子との間隔を狭くすることができる。そのため、焼結後に、第1部品P1と第2部品P2との接合部分が脆弱になることを抑制できる。なお、第1材料および第2材料に含まれる樹脂の種類やバインダーの種類は、第1実施形態と同じである。また、無機粒子の粒径は、第1材料と第2材料とで同一でもよいし、第2実施形態のように、第1材料と第2材料とで異なっていてもよい。
【0055】
D.第4実施形態:
図9は、第4実施形態における製造システム5dの概略構成を示す図である。製造システム5dは、第1の三次元造形装置101と、第2の三次元造形装置102と、脱脂装置300と、焼結炉400とを備える。つまり、第4実施形態では、射出成形機200の代わりに、第2の三次元造形装置102が製造システム5dに備えられている。第1の三次元造形装置101および第2の三次元造形装置102の構成は、第1実施形態における三次元造形装置100の構成と同じである。第1の三次元造形装置101および第2の三次元造形装置102には、それぞれ、ホッパー20と可塑化部30とノズル60とが備えられている。第4実施形態において製品の製造に用いる材料は、第1~3実施形態において説明したいずれの材料も採用可能である。
【0056】
図10は、第4実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。本実施形態では、第1工程S10において、第1の三次元造形装置101により第1部品P1が造形される。第2工程S20dでは、射出成形機200ではなく、第2の三次元造形装置102により第2部品が造形される。第1工程S10と第2工程S20dとの順序は任意であり、同時であってもよい。第3工程S30~第5工程S50の処理内容は第1実施形態と同じである。以上で説明した一連の工程により、本実施形態では、三次元造形装置によって造形された第1部品および第2部品が接合されることにより製品が製造される。
【0057】
以上で説明した第4実施形態によれば、三次元造形装置101,102によって第1部品P1と第2部品P2とを造形してそれらを接合するため、三次元造形装置101,102で一度に造形可能なサイズを超える大きさの製品を製造できる。そのため、製品の設計自由度を高めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、第1の三次元造形装置101と第2の三次元造形装置102とは、どちらもホッパー20を備えているので、第1の三次元造形装置101と第2の三次元造形装置102とで同じ種類のペレットを用いて第1部品P1および第2部品P2を造形できる。そのため、第1部品P1と第2部品P2とで物性が変化することを抑制でき、製品の品質を高めることができる。
【0059】
E.第5実施形態:
図11は、第5実施形態における製造システム5eの概略構成を示す図である。製造システム5eは、三次元造形装置100と、脱脂装置300と、焼結炉400とを備える。つまり、第5実施形態の製造システム5eは、三次元造形装置100を1台のみ備えており、射出成形機200を備えていない。
【0060】
図12は、第5実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。図13は、第5実施形態における製品の製造方法の概要を示す説明図である。本実施形態では、第1工程S10eにおいて、三次元造形装置100により第1部品P1と第2部品P2とが同じステージ80上で並行して造形される。図13の左側には、鉛直方向に沿って長尺状の第1部品P1と第2部品P2とが造形された様子を示している。本実施形態の第1工程S10eでは、第1部品P1を造形するための第1工程と、第2部品P2を造形するための第2工程とが同時に行われていると言える。
【0061】
第3工程S30では、第1部品P1と第2部品P2とが組み立てられる。図13の右側には、第1部品P1と第2部品P2とが組み立てられた組立体ABが、脱脂装置300内に配置された様子を示している。本実施形態では、第1領域A1が、第1部品P1の端部において、段差を有するように造形されており、第1部品P1と第2部品P2とが組み立てられる際には、その段差に対して、第2部品P2の端部に形成された段差が重なるように配置される。このように組み立てられた組立体ABは、第4工程S40により脱脂され、第5工程S50により焼結される。なお、第1部品P1および第2部品P2の接合部分の形状は図13に示した形状に限らず、例えば、いずれか一方の接合部を凸状とし、他方の接合部を凹状とすることも可能である。
【0062】
以上で説明した第5実施形態によれば、第1部品P1と第2部品P2とを1台の三次元造形装置100によって同時並列的に造形できるので、効率的に製品を製造できる。また、第1部品P1と第2部品P2とを造形する際のスペース効率を高めることができる。更に、第1部品P1と第2部品P2とを同じ湿度や温度といった環境条件で生成できるので、製品の品質が部品毎に不均一になることを抑制できる。また、三次元造形装置100で造形可能な最大サイズを超えるサイズの製品を製造することができる。
【0063】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、第1部品P1は、バインダージェット方式や、マテリアルジェット方式などの異なる方式の三次元造形装置で造形されても構わない。
【0064】
F.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0065】
(1)本開示の第1の形態によれば、無機粉末とバインダーとを含む第1部品と、無機粉末とバインダーとを含む第2部品とを接合して製品を製造する製造方法が提供される。この製造方法は、三次元造形装置により前記第1部品を生成する第1工程と、前記第2部品を生成する第2工程と、前記第1部品と前記第2部品とを組み立てて組立体を得る第3工程と、前記組立体を第1温度で加熱する第4工程と、前記第4工程の後に、前記組立体を前記第1温度より高い第2温度で加熱する第5工程と、を有し、前記第1部品は、前記第2部品と接触する第1領域と、前記第2部品と接触しない第2領域とを有し、前記第1領域に含まれるバインダーの融点は、前記第2領域に含まれるバインダーの融点に比べて低い。
このような形態であれば、三次元造形装置によって、第1部品の第2部品との接合領域に、融点の低いバインダーを有する材料を配置することができる。そのため、第4工程において第1部品と第2部品とを加熱して脱脂する際に、接合領域において第1部品のバインダー成分が溶融し、第1部品と第2部品との間に隙間が生じることを抑制できる。この結果、簡易な手法で複数の部品を良好に接合して製品を製造することができる。
【0066】
(2)本開示の第2の形態によれば、無機粉末とバインダーとを含む第1部品と、無機粉末とバインダーとを含む第2部品とを接合して製品を製造する製造方法が提供される。この製造方法は、三次元造形装置により前記第1部品を生成する第1工程と、前記第2部品を生成する第2工程と、前記第1部品と前記第2部品とを組み立てて組立体を得る第3工程と、前記組立体を第1温度で加熱する第4工程と、前記第4工程の後に、前記組立体を前記第1温度より高い第2温度で加熱する第5工程と、を有し、前記第1部品は、前記第2部品と接触する第1領域と、前記第2部品と接触しない第2領域を有し、前記第1領域に含まれる無機粉末の粒径は、前記第2領域に含まれる無機粉末の粒径に比べて小さい。
このような形態であれば、三次元造形装置によって、第1部品の第2部品との接合領域に、粒径の小さい無機粉末を有する材料を配置することができる。そのため、第5工程において第1部品と第2部品とを焼結する際に、接合領域において早く焼結が開始され、これらを良好に接合することができる。この結果、簡易な手法で複数の部品を良好に接合して製品を製造することができる。
【0067】
(3)上記形態では、前記第2工程において、前記第2部品を射出成形機により生成してもよい。このような形態であれば、第2部品を射出成形機によって生成するため、サポート材を用いることなく複雑な形状の第2部品を製造できる。また、第1部品を三次元造形装置によって造形するため、大型の第1部品を造形できる。そのため、第1部品と第2部品とを接合することにより、複雑な形状を有する大型の製品を製造できる。
【0068】
(4)上記形態では、前記第2工程において、前記第2部品を三次元造形装置により生成してもよい。このような形態であれば、三次元造形装置によって第1部品と第2部品とをそれぞれ造形してそれらを接合するため、三次元造形装置で一度に造形可能なサイズを超える大きさの製品を製造できる。
【0069】
(5)上記形態において、前記第1工程において用いられる前記三次元造形装置、および、前記第2工程において用いられる三次元造形装置は、それぞれ、ペレット状の材料が投入されるホッパーと、前記材料を可塑化する可塑化部と、可塑化された前記材料を吐出するノズルと、を備えてもよい。このような形態であれば、第1の三次元造形装置と第2の三次元造形装置とで同じ種類のペレットを用いて第1部品および第2部品を生成できるので、第1部品と第2部品とで物性が変化することを抑制できる。
【0070】
(6)上記形態において、前記第1工程において用いられる前記三次元造形装置、および、前記第2工程において用いられる前記三次元造形装置は同じ三次元造形装置であり、前記第1部品と前記第2部品とは、前記三次元造形装置に備えられた同じステージ上で並行して生成されてもよい。このような形態であれば、第1部品および第2部品を生成する際のスペース効率を高めることができ、また、第1部品と第2部品とを同じ湿度や温度といった環境条件で生成できるので、製品の品質が部品毎に不均一になることを抑制できる。
【0071】
(7)上記形態において、前記第4工程よりも前において、前記第1領域における前記無機粉末の粒子密度は、前記第2領域における前記無機粉末の粒子密度に比べて高くてもよい。このような形態であれば、焼結後に第1部品と第2部品との接合部分が脆弱になることを抑制できる。
【0072】
(8)上記形態において、前記第1領域に含まれる前記無機粉末は、前記第2領域に含まれる前記無機粉末と同じ元素を主成分として含んでもよい。このような形態であれば、接合領域にロウなどを用いることなく、第1部品と第2部品とを接合できる。そのため、接合領域における製品の強度が低下することを抑制できる。
【符号の説明】
【0073】
5…製造システム、10…吐出部、20…ホッパー、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、41…スクリュー、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…スクリュー溝、46…凸条部、47…スクリュー中央部、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…ノズル、63…ノズル開口、70…移動機構部、80…ステージ、90…制御部、100…三次元造形装置、101…第1の三次元造形装置、102…第2の三次元造形装置、200…射出成形機、205…基台、208…材料供給部、210…可塑化装置、211…スクリュー、212…バレル、213…ヒーター、214…ノズル、215…収容部、216…スクリュー駆動部、217…連通孔、218…逆止弁、220…成形型、221…可動型、222…固定型、223…キャビティー、230…型締装置、231…成形型駆動部、232…ボールネジ、240…射出制御機構、241…射出シリンダー、242…プランジャー、243…プランジャー駆動部、290…制御部、300…脱脂装置、400…焼結炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13