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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 451
B41J2/205
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020216750
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102175
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】荒崎 真一
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-296754(JP,A)
【文献】特開2005-169659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0057985(US,A1)
【文献】特開2016-155322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像をインクで印刷するための印刷データであって、前記画像の画素毎にドットの非形成または複数サイズのいずれかのサイズのドットの形成を規定した前記印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記印刷データ生成部が生成した第1の前記印刷データに基づいて、前記インクのミスト発生量を算出するミスト算出部と、を備え、
前記印刷データ生成部は、前記ミスト発生量が所定のしきい値を超える場合、前記複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの形成比率が第1の前記印刷データよりも高い第2の前記印刷データを生成し、
前記印刷データ生成部は、
インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換する第1ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第1の前記印刷データを生成し、
前記ミスト発生量が前記しきい値を超える場合、インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換するドット発生率テーブルであって、前記第1ドット発生率テーブルよりも前記大きいサイズのドットの発生率を高く設定した第2ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第2の前記印刷データを生成する、ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記印刷データ生成部は、
前記画像の第1インクおよび前記第1インクよりも明度が高い色の第2インクそれぞれの濃度を、前記第1ドット発生率テーブルを用いて変換することにより第1の前記印刷データを生成し、
前記ミスト発生量が前記しきい値を超える場合、前記画像の前記第1インクの濃度を、前記第1ドット発生率テーブルを用いて変換し、前記画像の前記第2インクの濃度を、前記第2ドット発生率テーブルを用いて変換することにより、第2の前記印刷データを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
画像をインクで印刷するための印刷データであって、前記画像の画素毎にドットの非形成または複数サイズのいずれかのサイズのドットの形成を規定した前記印刷データを生成する印刷データ生成工程と、
前記印刷データ生成工程により生成された第1の前記印刷データに基づいて、前記インクのミスト発生量を算出するミスト算出工程と、
前記ミスト発生量が所定のしきい値を超える場合、前記複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの形成比率が第1の前記印刷データよりも高い第2の前記印刷データを生成する印刷データ再生成工程と、を含み、
前記印刷データ生成工程では、インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換する第1ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第1の前記印刷データを生成し、
前記印刷データ再生成工程では、前記ミスト発生量が前記しきい値を超える場合、インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換するドット発生率テーブルであって、前記第1ドット発生率テーブルよりも前記大きいサイズのドットの発生率を高く設定した第2ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第2の前記印刷データを生成する、ことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体のドットをノズルから吐出して印刷を行うインクジェットプリンターでは、吐出されたインクの一部は用紙の適切な位置へ着弾せず、ミストとなって空気中に漂う。ミストは、用紙や、プリンター内部の様々な場所や機構に付着し、それらを汚す。また、プリンター内部にミストによる汚れが蓄積すると、例えば用紙の搬送が不安定になる等、プリンターの動作や印刷品質に影響が生じることがある。
関連技術として、吐出ヘッドの複数のノズルから液体を吐出することにより生じる液体のミストを捕集するミスト捕集装置を備えたプリンターが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013‐180539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミスト捕集装置により、用紙やプリンター内部へのミストの付着を抑制することができる。その一方で、ミストの発生自体を抑制するための工夫も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
画像処理装置は、画像をインクで印刷するための印刷データであって、前記画像の画素毎にドットの非形成または複数サイズのいずれかのサイズのドットの形成を規定した前記印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記印刷データ生成部が生成した第1の前記印刷データに基づいて、前記インクのミスト発生量を算出するミスト算出部と、を備え、前記印刷データ生成部は、前記ミスト発生量が所定のしきい値を超える場合、前記複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの形成比率が第1の前記印刷データよりも高い第2の前記印刷データを生成し、前記印刷データ生成部は、インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換する第1ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第1の前記印刷データを生成し、前記ミスト発生量が前記しきい値を超える場合、インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換するドット発生率テーブルであって、前記第1ドット発生率テーブルよりも前記大きいサイズのドットの発生率を高く設定した第2ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第2の前記印刷データを生成する
【0006】
画像処理方法は、画像をインクで印刷するための印刷データであって、前記画像の画素毎にドットの非形成または複数サイズのいずれかのサイズのドットの形成を規定した前記印刷データを生成する印刷データ生成工程と、前記印刷データ生成工程により生成された第1の前記印刷データに基づいて、前記インクのミスト発生量を算出するミスト算出工程と、前記ミスト発生量が所定のしきい値を超える場合、前記複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの形成比率が第1の前記印刷データよりも高い第2の前記印刷データを生成する印刷データ再生成工程と、を含み、前記印刷データ生成工程では、インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換する第1ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第1の前記印刷データを生成し、前記印刷データ再生成工程では、前記ミスト発生量が前記しきい値を超える場合、インクの濃度を前記複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換するドット発生率テーブルであって、前記第1ドット発生率テーブルよりも前記大きいサイズのドットの発生率を高く設定した第2ドット発生率テーブルを用いて、前記画像のインクの濃度を変換することにより第2の前記印刷データを生成する
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】装置構成を簡易的に示すブロック図。
図2】印刷媒体と印刷ヘッドとの関係性を上方からの視点により示す図。
図3】印刷制御処理を示すフローチャート。
図4】複数種類のドット発生率テーブルを示す図。
図5】ミスト量比テーブルの例を示す図。
図6図6Aはドット発生率テーブルの使用順を定めたテーブルを示す図、図6Bはドット発生率テーブルの使用順をインク色別に定めたテーブルを示す図。
図7】ミスト発生量に応じた使用ドット発生率テーブルを定めたテーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0009】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。
印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、印刷部16等を備える。印刷部16は、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19等を備える。IFは、インターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0010】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、印刷データ生成部12a、ミスト算出部12b、印刷制御部12c等の各種機能を実現する。制御部11を含む印刷装置10の少なくとも一部は「画像処理装置」に該当する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0011】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。
【0012】
表示部13や操作受付部14は、印刷装置10の構成の一部であってもよいが、印刷装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。通信IF15は、印刷装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と接続するための一つまたは複数のIFの総称である。
【0013】
印刷部16は、インクジェット方式により印刷を行う機構である。搬送部17は、所定の搬送方向へ用紙等の印刷媒体を搬送するための手段であり、ローラーや、ローラー等を回転させるモーターを含む。印刷ヘッド19は、複数のノズル20を有する。印刷ヘッド19は、制御部11によって生成された、画像をインクで印刷するための印刷データに基づいて、ノズル20からインクのドットを吐出したり吐出しなかったりすることにより、印刷媒体へ画像を印刷する。印刷ヘッド19は、例えば、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インク等の各色インクを吐出可能である。むろん、印刷ヘッド19は、CMYK以外の色のインクや液体も吐出するとしてもよい。
【0014】
キャリッジ18は、不図示のキャリッジモーターによる動力を受けて所定の主走査方向に沿って往復移動可能な機構である。主走査方向は、搬送方向に対して交差している。ここで言う交差は、直交あるいはほぼ直交と解してよい。キャリッジ18は印刷ヘッド19を搭載している。つまり、印刷ヘッド19は、キャリッジ18とともに、主走査方向に沿って往復移動する。
【0015】
図2は、印刷媒体30と印刷ヘッド19との関係性を上方からの視点により簡易的に示している。キャリッジ18に搭載された印刷ヘッド19は、キャリッジ18とともに主走査方向D1の一端から他端への移動(往路移動)や、他端から一端への移動(復路移動)をする。
【0016】
図2では、ノズル面21におけるノズル20の配列の一例を示している。ノズル面21は、印刷ヘッド19の下面である。ノズル面21内の一つ一つの小さな丸がノズル20である。印刷ヘッド19は、インクカートリッジやインクタンク等と呼ばれる不図示の液体保持手段から各色のインクの供給を受けてノズル20から吐出する構成において、インク色別のノズル列26を備える。図2は、CMYKインクを吐出する印刷ヘッド19の例を示している。Cインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Cである。同様に、Mインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26M、Yインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Y、Kインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Kである。ノズル列26C,26M,26Y,26Kは、主走査方向D1に沿って並んでいる。
【0017】
夫々のノズル列26は、搬送方向D2におけるノズル20同士の間隔であるノズルピッチが一定或いはほぼ一定とされた複数のノズル20により構成される。ノズル列26を構成する複数のノズル20が並ぶ方向が、ノズル列方向D3である。図2の例では、ノズル列方向D3は、搬送方向D2と平行である。ノズル列方向D3が搬送方向D2と平行な構成においては、ノズル列方向D3と主走査方向D1とは直交する。ただし、ノズル列方向D3は、搬送方向D2と平行でなく、主走査方向D1に対して斜めに交差する構成であってもよい。
【0018】
主走査方向D1に沿ったキャリッジ18の移動に伴い印刷ヘッド19がインクを吐出する動作を、主走査、あるいはパスと呼ぶ。印刷部16は、パスと、搬送部17による印刷媒体30の搬送方向D2への一定量の搬送とを組み合わせることにより、印刷媒体30への印刷を完成させる。
【0019】
図1に示す印刷装置10の構成は、一台のプリンターによって実現されてもよいし、互いに通信可能に接続した複数の装置により実現されてもよい。
つまり、印刷装置10は、実態として印刷システム10であってもよい。印刷システム10は、例えば、制御部11として機能する「画像処理装置」と、印刷部16に該当するプリンターと、を含む。このような印刷装置10または印刷システム10により、本実施形態の画像処理方法が実現される。また、画像処理装置は、印刷部16を制御する印刷制御装置とも言える。
【0020】
印刷ヘッド19は、各ノズル20から、一滴あたりの体積が異なる複数サイズのドットを吐出可能である。印刷ヘッド19の構造において、ノズル20には圧電素子等の駆動素子が設けられている。印刷ヘッド19は、ノズル20の駆動素子に、印刷データが規定するドットサイズに対応した駆動信号を供給することで、当該ドットサイズのドットをノズル20から吐出させる。
【0021】
ノズル20は、例えば、2種類のサイズのドットを吐出可能である。あるいは、ノズル20は、3種類以上のサイズのドットを吐出可能である。以下では、ノズル20は、小ドット、中ドット、大ドットと呼ぶ3種類のサイズのドットを吐出可能であるとする。呼び名の通り、小ドット<中ドット<大ドット、である。あるサイズのドットを第1ドットと呼び、第1ドットよりもサイズが大きいドットを第2ドットと呼んでもよい。例えば、小ドットを第1ドットとしたとき、中ドットおよび大ドットが第2ドットである。また、中ドットを第1ドットとしたとき、大ドットが第2ドットである。
【0022】
2.印刷制御処理:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行する印刷制御処理をフローチャートにより示している。印刷制御処理には、画像処理方法が含まれている。
ステップS100では、印刷データ生成部12aは、印刷対象の画像を表現する画像データを、制御部11が通信可能な所定のメモリーや記憶装置等の保存元から取得する。ユーザーは、操作受付部14を操作して、画像データの選択を制御部11に指示することができる。制御部11は、ユーザーに指示された画像データを取得すればよい。画像データは、例えば、所定の表色系で各画素の色を規定したビットマップ形式の画像データである。ここで言う表色系とは、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)表色系、CMYK表色系等、様々である。
【0023】
ステップS110では、印刷データ生成部12aは、ステップS100で取得した画像データから印刷データを生成する。ステップS110は「印刷データ生成工程」に該当する。この場合、印刷データ生成部12aは、必要に応じて画像データに対して色変換処理を施すことにより、印刷部16が使用するCMYKインク毎の階調値を画素毎に有する画像データを生成する。インクの階調値は、例えば、0~255の256階調で表現され、画像の単位面積におけるインクの濃度を表している。さらに、印刷データ生成部12aは、画像データのインク色毎かつ画素毎の階調値を、小ドット、中ドット、大ドット毎の発生率に変換し、これら発生率に応じて、ドットの非形成または小中大いずれかのドットの形成を決定する。
【0024】
ドットの非形成、つまりドットの不吐出をドットオフと言う。小ドットの形成、つまり小ドットの吐出を小ドットオン、中ドットの形成を中ドットオン、大ドットの形成を大ドットオン、とそれぞれ言う。このようなステップS110の結果、インク色毎かつ画素毎に、ドットオフ、小ドットオン、中ドットオン、大ドットオンのいずれかを規定した、印刷データが生成される。
【0025】
ドット発生率への変換について具体的に説明する。
図4は、ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4を示している。ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4はいずれも、インクの濃度としての階調値を、ドット発生率に変換するためのテーブルである。ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4において、実線によるテーブルは小ドットの発生率を示し、破線によるテーブルは中ドットの発生率を示し、二点鎖線によるテーブルは大ドットの発生率を示している。ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4は、制御部11がアクセス可能なメモリー等に予め記憶されている。
【0026】
ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4は、小中大ドットそれぞれの発生率の設定が互いに異なる。これらの中では、ドット発生率テーブルT1が最も小ドットを発生させ易く且つ大ドットを発生させにくい。図4から解るように、ドット発生率テーブルT1は、ドット発生率テーブルT2,T3,T4と異なり、0から始まるある程度の低濃度範囲では、小ドットの発生率だけが0%より高く、中ドットや大ドットの発生率は0%、つまり生じていない。また、ドット発生率テーブルT1は、大ドットの発生率が生じる濃度が、ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4の中で最も高い。
【0027】
同じ画像を印刷する場合であっても、大きいドットよりも小さいドットをより多用した方が、印刷結果の粒状性が向上し画質が良好になる。そのため、画質を優先する観点では、ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4の中で、ドット発生率テーブルT1を使用することが望ましい。
【0028】
図4から解るように、ドット発生率テーブルT1,T2,T3,T4の中で、ドット発生率テーブルT1に次いで、相対的に小さいドットを優先的に発生させるのは、ドット発生率テーブルT2である。ドット発生率テーブルT3,T4は、0から始まる全濃度範囲で大ドットの発生率を生じさせているが、ドット発生率テーブルT2は、低濃度範囲では大ドットの発生率を生じさせていない。また、ドット発生率テーブルT2は、低濃度範囲ではドット発生率テーブルT3と異なり、小ドットの発生率を中ドットの発生率よりも高く設定している。ドット発生率テーブルT4は、小ドットおよび中ドットの発生率は常に0%とし、大ドットの発生率のみを生じさせる。
【0029】
あるドット発生率テーブルを「第1ドット発生率テーブル」と呼んだとき、複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの発生率を第1ドット発生率テーブルよりも高く設定したドット発生率テーブルを「第2ドット発生率テーブル」と呼ぶ。つまり、ドット発生率テーブルT1が第1ドット発生率テーブルであるとき、ドット発生率テーブルT2,T3,T4が第2ドット発生率テーブルに該当する。また、ドット発生率テーブルT2が第1ドット発生率テーブルであるとき、ドット発生率テーブルT3,T4が第2ドット発生率テーブルに該当する。ドット発生率テーブルT3が第1ドット発生率テーブルであるときは、ドット発生率テーブルT4が第2ドット発生率テーブルに該当する。
【0030】
ステップS110では、印刷データ生成部12aは、画質優先の観点から、画像データのインク色毎かつ画素毎の階調値を、ドット発生率テーブルT1を用いて小ドット、中ドット、大ドット毎の発生率に変換する。
【0031】
印刷データ生成部12aは、ステップS110や後述のステップS140において、ドット発生率テーブルから導き出した、一つのインク色かつ一画素にとっての小ドット、中ドット、大ドットそれぞれの発生率を、しきい値と比較して、ドットオフ、小ドットオン、中ドットオン、大ドットオンのいずれかを決定すればよい。このような決定についての方法は様々に提案されている。例えば、小ドットの発生率があるしきい値以上であるとき(第1条件成立)、小ドットオンと決定すればよい。また、例えば、第1条件が成立せず中ドットの発生率があるしきい値以上であるとき(第2条件成立)、中ドットオンと決定する。また、例えば、第2条件が成立せず大ドットの発生率があるしきい値以上であるとき(第3条件成立)、大ドットオンと決定する。第1、第2、第3条件のいずれも成立しない場合、ドットオフと決定すればよい。ここで言う、あるしきい値とは、互いに異なるしきい値であったり、一部で共通するしきい値であったりする。
【0032】
また、印刷データ生成部12aは、一画素に対して、デューティー制限値の下で、インク色毎のドットオン、オフを決定してもよい。デューティー制限値とは、印刷媒体の単位面積に吐出可能なインク量の上限を意味し、例えば、一画素につき全インク色トータルで大ドット二つ分のインク量がデューティー制限値であるとする。この場合、印刷データ生成部12aは、ドットサイズ毎の発生率に基づきつつ、デューティー制限値が遵守されるように、一画素についてCMYKインクそれぞれのドットオフ又は小ドットオン又は中ドットオン又は大ドットオン、を決定する。
【0033】
ステップS120では、ミスト算出部12bは、印刷データ生成部12aが生成した印刷データに基づいて、インクのミスト発生量を算出する。ミスト算出部12bは、ステップS110の次に実行するステップS120では、ステップS110で生成された印刷データに基づいてミスト発生量を算出し、ステップS140の次に実行するステップS120では、ステップS140で生成された印刷データに基づいてミスト発生量を算出する。ステップS120は「ミスト算出工程」に該当する。
【0034】
図5は、ミスト量比テーブル40の例を示している。ミスト量比テーブル40や、後述する各テーブル50,51,60も、制御部11がアクセス可能なメモリー等に予め記憶されている。ミスト量比テーブル40は、サイズが異なるドット毎のミスト量比と、サイズ比とを規定している。サイズ比とは、一滴の小ドットのサイズを1としたときの、中ドット、大ドットそれぞれの一滴のサイズ比である。サイズ比を、体積比と呼んでもよい。ミスト量比テーブル40によれば、中ドットのサイズは小ドットの2倍、大ドットのサイズは小ドットの4倍である。
【0035】
ミスト量比とは、一滴の大ドットの吐出により発生するミスト量を1としたときの、小ドット、中ドットそれぞれの一滴の吐出により発生するミスト量の比である。大きいドットを吐出したときよりも、小さいドットを吐出したときの方が、ミストは多く発生する。これは、小さいドットは、大きいドットと比べてノズル20からの吐出速度が遅い傾向があり、印刷媒体に着弾できないインク量が増えるからである。また、単純にノズル20によるドットの吐出回数が増えるとミスト量は増える。ミスト量比テーブル40によれば、大ドットを一滴吐出するときと同じ量のインクを確保するために、小ドットは四滴吐出する必要がある。そのため、小さいドットを多用する程、ミストが多く発生する。ミスト量比テーブル40によれば、中ドットの吐出により発生するミスト量は大ドットの吐出により発生するミスト量の3倍、小ドットの吐出により発生するミスト量は大ドットの吐出により発生するミスト量の8倍である。
【0036】
ミスト算出部12bは、印刷データを解析し、印刷データに規定されている小ドット、中ドット、大ドットそれぞれの数を集計する。小ドットの数とは、Cインクの小ドットオンの数、Mインクの小ドットオンの数、Yインクの小ドットオンの数、およびKインクの小ドットオンの数の合計である。同様に、中ドットの数はCMYKインクそれぞれの中ドットオンの数の合計であり、大ドットの数はCMYKインクそれぞれの大ドットオンの数の合計である。ミスト算出部12bは、小ドットの数にミスト量比テーブル40が規定する小ドットのミスト量比を掛けた値と、中ドットの数にミスト量比テーブル40が規定する中ドットのミスト量比を掛けた値と、大ドットの数にミスト量比テーブル40が規定する大ドットのミスト量比を掛けた値と、の合計をミスト発生量とする。このようなステップS120によるミスト発生量の算出は、ミスト発生量の推定である。
【0037】
なお、ミスト算出部12bは、ステップS120では所定の印刷面積分の印刷データを対象としてミスト発生量を算出する。所定の印刷面積分の印刷データとは、例えば、画像データ一ページ分の印刷データである。あるいは、ミスト算出部12bは、ステップS120では所定の印刷時間分の印刷データを対象としてミスト発生量を算出してもよい。印刷部16において、一回のパスの開始時点から次のパスの開始時点までに要するパス時間は決まっている。従って、ミスト算出部12bは、N回のパス時間で印刷する分の印刷データを対象としてミスト発生量を算出してもよい。
【0038】
ステップS130では、印刷データ生成部12aは、ステップS120で算出されたミスト発生量が、ミスト発生量との比較のために予め設定されたしきい値(ミストしきい値)以下であるか否かを判定する。ミストしきい値は、粒状性等の画質を優先するために許容できるミスト発生量の上限を意味する。図1では特に示していないが、印刷装置10は、例えば前記文献1のミスト捕集装置のような、発生したミストを回収するための機構を備えるとしてもよい。このようなミストの回収機構を備える場合は、回収機構の回収能力も考慮した上でミストしきい値が決められている。
【0039】
印刷データ生成部12aは、ミスト発生量がミストしきい値以下であれば、“Yes”の判定からステップS150へ進む。一方、ミスト発生量がミストしきい値を超えていれば、“No”の判定からステップS140へ進む。
【0040】
ステップS140では、印刷データ生成部12aは、印刷データを再び生成する。ただし、画像データの色変換処理はステップS110で実行済みであるため、ステップS140では、ステップS110で説明した印刷データを生成する各工程のうち、画素毎にインク色毎の階調値を有する画像データにドット発生率テーブルを適用して小ドット、中ドット、大ドット毎の発生率に変換する処理からやり直せばよい。ステップS140では、印刷データ生成部12aは、“直近の印刷データ生成”で使用したドット発生率テーブルを第1ドット発生率テーブルとしたときの第2ドット発生率テーブルを使用して、インクの濃度を小ドット、中ドット、大ドット毎の発生率に変換する。
【0041】
今回のステップS140が、ステップS110の後に実行する最初のステップS140であれば、ステップS110が直近の印刷データ生成である。一方、今回のステップS140が、ステップS110の後に実行する2回目以降のステップS140であれば、前回のステップS140が直近の印刷データ生成である。直近の印刷データ生成により生成した印刷データは「第1の印刷データ」に該当する。そして、今回のステップS140で生成した印刷データは「第2の印刷データ」に該当する。第2の印刷データは、第1の印刷データにおける小中大ドット間のドットオンの比率と比べて、より大きいドットのドットオン比率が高い印刷データとなっている。つまり、第2の印刷データは、複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの形成比率が第1の印刷データよりも高い印刷データである。
【0042】
図6Aは、ドット発生率テーブルの使用順を定めた使用順テーブル50を示している。印刷データ生成部12aは、ステップS140で使用するドット発生率テーブルを、使用順テーブル50を参照して決定すればよい。使用順=1のドット発生率テーブルT1は、ステップS110で使用済みであるため、ステップS140では、使用順=2以降のドット発生率テーブルT2,T3,T4のいずれかを使用する。つまり、ステップS110の後に実行する最初のステップS140であれば使用順=2のドット発生率テーブルT2を使用する。また、ステップS110の後に実行する2回目のステップS140であれば、使用順=3のドット発生率テーブルT3を使用する。
【0043】
このようなステップS140は「印刷データ再生成工程」に該当する。ステップS140の後、制御部11は、再びステップS120,S130を実行する。ステップS140の後、ステップS120,S130を実行し、ステップS130の“No”から再びステップS140を実行する場合、最新のステップS140にとっては前回のステップS140は「印刷データ生成工程」に該当し、最新のステップS140が「印刷データ再生成工程」に該当する。つまり、第2の印刷データは、ステップS130の“No”を経た次回のステップS140にとっては、第1の印刷データに該当する。
【0044】
ステップS150では、印刷制御部12cは、ステップS130でミストしきい値以下と判定されたミスト発生量の算出元となった印刷データを、印刷部16へ転送することにより、転送した印刷データに基づく印刷を印刷部16に実行させる。印刷部16では、転送された印刷データが規定する画素毎かつインク色毎のドットオフ、小ドットオン、中ドットオン、大ドットオンの情報に従って、印刷ヘッド19が有する各インク色のノズル20の駆動を制御することにより、印刷データが表現する画像を印刷媒体30へ印刷する。この結果、印刷データに基づく印刷実行時に、ミストしきい値を超える量のミストは発生しない。以上で、図3のフローチャートを終了する。むろん、制御部11は、図3のフローチャートを繰り返し実行可能である。
【0045】
3.変形例:
本実施形態に含まれる変形例を説明する。
第1変形例:
画質の粒状性への影響度合いは、インクの色によって異なる。例えば、CMYKインクの中では、最も暗い色であるKインクが粒状性への影響が最も大きい。Kインクの大ドットは、粒状感が目立つため、画質のためにはできるだけ小さいドットを優先的に使用した方が良い。一方で、CMYKインクの中で最も明るい色であるYインクは、大ドットであっても粒状感が目立たないため、多用しても画質を殆ど低下させない。このような観点に基づき、印刷データ生成部12aは、ステップS140では、全てのインク色について同じドット発生率テーブルを適用するのではなく、インク色に応じてドット発生率テーブルを使い分けてもよい。
【0046】
ある色のインクを「第1インク」と呼んだとき、第1インクよりも明度が高い色のインクを「第2インク」と呼ぶ。例えば、Kインクが第1インクであれば、CMYインクのそれぞれが第2インクに該当する。また、例えば、CインクやMインクが第1インクであれば、Yインクが第2インクに該当する。そして、第1変形例では、印刷データ生成部12aは、画像の第1インクおよび第2インクそれぞれの濃度を、第1ドット発生率テーブルを用いて変換することにより第1の印刷データを生成し、ミスト発生量がミストしきい値を超える場合、第1インクの濃度を、第1ドット発生率テーブルを用いて変換し、第2インクの濃度を、第2ドット発生率テーブルを用いて変換することにより、第2の印刷データを生成する。
【0047】
図6Bは、ドット発生率テーブルの使用順を定めた使用順テーブル51を示している。第1変形例では、印刷データ生成部12aは、ステップS140で使用するドット発生率テーブルを、使用順テーブル51を参照して決定する。使用順テーブル51は、画質への影響が大きい色のインクについては、できるだけ画質に有利なドット発生率テーブルを使用するように、インク色別にドット発生率テーブルの使用順を規定している。使用順テーブル50の説明と同様、使用順=1のドット発生率テーブルT1は、ステップS110でCMYKインクのそれぞれに使用済みである。そのため、ステップS140では、使用順=2以降のドット発生率テーブルを使用する。
【0048】
つまり、ステップS110の後に実行する最初のステップS140であれば、印刷データ生成部12aは、使用順テーブル51の使用順=2に従い、CMKインクそれぞれの濃度のドット発生率への変換にはドット発生率テーブルT1を使用し、Yインクの濃度のドット発生率への変換にはドット発生率テーブルT2を使用する。この場合、Yインクについてはドット発生率テーブルT2を使用することで、直近の印刷データ生成と比べて、ミスト発生量を減らすことができる。また、ステップS110の後に実行する2回目のステップS140であれば、印刷データ生成部12aは、使用順テーブル51の使用順=3に従い、Kインクの濃度のドット発生率への変換にはドット発生率テーブルT1を使用し、CMYインクそれぞれの濃度のドット発生率への変換にはドット発生率テーブルT2を使用する。
【0049】
ステップS110の後に実行する3回目以降のステップS140においても、印刷データ生成部12aは、使用順テーブル51を参照し、インク色毎に使用するドット発生率テーブルを選択して濃度からドット発生率への変換を行う。このように第1変形例によれば、印刷データ生成部12aは、ステップS130で“No”と判定して、ミスト発生量を減らすためにステップS140で印刷データを再生成する場合であっても、画質への影響が大きい色のインクについては、できるだけ大きいドットを発生させないように制御する。
【0050】
印刷部16が吐出するインクはCMYKインクに限定されない。印刷部16は、例えば、ライトシアン(LC)インクや、ライトマゼンタ(LM)インクを使用する機種であってもよい。この場合、印刷データ生成部12aは、LC,LMインクについては、Yインクと同様に第2インクとして扱えばよい。
【0051】
第2変形例:
印刷データ生成部12aは、ステップS130で“No”と判定してステップS140を実行した後、ステップS120は実行せず、図3の破線の矢印が示すようにそのままステップS150へ進んでもよい。つまり、ステップS140の実行回数を一回に限定し、ステップS140で再生成した印刷データに基づいてステップS150で印刷を実行する構成であってもよい。
【0052】
ステップS140の実行回数を一回に限定する構成においては、印刷データ生成部12aは、ステップS130でミスト発生量と比較するしきい値を複数用意しておき、ミスト発生量と複数のしきい値との大小関係に応じて、ステップS140で使用するドット発生率テーブルを決定すればよい。
【0053】
図7は、ミスト発生量とドット発生率テーブルとの対応関係を規定したテーブル60を示している。ステップS130では、印刷データ生成部12aは、ステップS120で算出されたミスト発生量と、しきい値TH1,TH2,TH3とを比較する。図7では、ステップS120で算出されたミスト発生量を“Q”と記載している。しきい値TH1は、これまでに説明したミストしきい値と解してよい。TH1<TH2<TH3である。
【0054】
ステップS130において、印刷データ生成部12aは、Q≦TH1であれば、“Yes”と判定してステップS150へ進む。また、印刷データ生成部12aは、TH1<Q≦TH2であれば、テーブル60を参照して、ドット発生率テーブルT2を使用することを決定し、ステップS140へ進む。また、印刷データ生成部12aは、TH2<Q≦TH3であれば、テーブル60を参照して、ドット発生率テーブルT3を使用することを決定しステップS140へ進み、TH3<Qであれば、テーブル60を参照して、ドット発生率テーブルT4を使用することを決定しステップS140へ進む。
【0055】
印刷データ生成部12aは、ステップS140では、テーブル60を参照して決定したドット発生率テーブルを使用してインクの濃度を小中大ドットそれぞれの発生率へ変換することにより、印刷データ(第2の印刷データ)を生成する。そして、このステップS140に続いて、印刷制御部12cは、ステップS150を実行する。このような第2変形例によれば、ステップS120,S130,S140のサイクルを繰り返さないことにより制御部11の処理負担を軽減し、それでいて印刷データに基づく印刷実行時にミスト発生量を抑えることができる。
【0056】
第2変形例に第1変形例を組み合わせることも可能である。上述したように、ステップS130において、印刷データ生成部12aは、TH1<Q≦TH2、TH2<Q≦TH3、TH3<Qのいずれかが成立する場合、テーブル60に従ってステップS140で使用するドット発生率テーブルを決定する。この場合、第2インクについてはテーブル60に従ってドット発生率テーブルを決定し、第1インクについては、ステップS110と同様にステップS140でもドット発生率テーブルT1を使用すると決定してもよい。
【0057】
4.まとめ:
このように本実施形態によれば、画像処理装置は、画像をインクで印刷するための印刷データであって、画像の画素毎にドットの非形成または複数サイズのいずれかのサイズのドットの形成を規定した印刷データを生成する印刷データ生成部12aと、印刷データ生成部12aが生成した第1の印刷データに基づいて、インクのミスト発生量を算出するミスト算出部12bと、を備える。印刷データ生成部12aは、ミスト発生量が所定のしきい値(ミストしきい値)を超える場合、複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの形成比率が第1の印刷データよりも高い第2の印刷データを生成する。
【0058】
前記構成によれば、画像処理装置は、画像を印刷するために生成した第1の印刷データから算出したミスト発生量が、ミストしきい値を超える場合に、第1の印刷データよりも発生させるミスト量が少ない第2の印刷データを生成する。これにより、印刷データに基づく印刷実行時に発生するミスト量を抑制することができる。つまり、第2の印刷データを生成しなかった場合は、第1の印刷データに基づく印刷を実行し、第2の印刷データを生成した場合は、第2の印刷データに基づく印刷を実行することになるが、いずれの場合も印刷実行時に発生するミスト量は少ない。
【0059】
また、本実施形態によれば、印刷データ生成部12aは、インクの濃度を複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換する第1ドット発生率テーブルを用いて、画像のインクの濃度を変換することにより第1の印刷データを生成し、ミスト発生量がミストしきい値を超える場合、インクの濃度を複数サイズのドットそれぞれの発生率に変換するドット発生率テーブルであって、第1ドット発生率テーブルよりも前記大きいサイズのドットの発生率を高く設定した第2ドット発生率テーブルを用いて、画像のインクの濃度を変換することにより第2の印刷データを生成する。
前記構成によれば、印刷データ生成部12aは、第1の印刷データから算出したミスト発生量がミストしきい値を超える場合に、ドット発生率テーブルを、第1ドット発生率テーブルから第2ドット発生率テーブルに切り替えることにより、容易に第2の印刷データを生成することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、印刷データ生成部12aは、画像の第1インクおよび第1インクよりも明度が高い色の第2インクそれぞれの濃度を、第1ドット発生率テーブルを用いて変換することにより第1の印刷データを生成し、ミスト発生量がミストしきい値を超える場合、画像の第1インクの濃度を、第1ドット発生率テーブルを用いて変換し、画像の第2インクの濃度を、第2ドット発生率テーブルを用いて変換することにより、第2の印刷データを生成する。
前記構成によれば、印刷データ生成部12aは、第1の印刷データから算出したミスト発生量がミストしきい値を超える場合に、粒状性への影響が大きい第1インクについては引き続き第1ドット発生率テーブルを使用し、粒状性への影響が小さい第2インクについては第2ドット発生率テーブルを使用して第2の印刷データを生成する。これにより、画質低下をできるだけ避けながら、ミスト量の発生も抑制する。
【0061】
なお、ステップS110やステップS140で使用し得るドット発生率テーブルは、図4に示したような4種類に限定されないことは言うまでもない。
また、画像の画素毎にドットの非形成または複数サイズのいずれかのサイズのドットの形成を規定した印刷データを生成する方法は、ドット発生率テーブルを使用する方法に限定されない。例えば、印刷データ生成部12aは、画素のインク毎の濃度に相当する各階調値の大きさに応じて、当該画素のインク色毎に、ドットオフ、小ドットオン、中ドットオン、大ドットオンのいずれかを決定してもよい。
【0062】
また、ステップS130で“No”と判定して、ステップS140で印刷データを再生成する場合も、印刷データ生成部12aは、ドット発生率テーブルを使用せずに印刷データを再生成してもよい。印刷データ生成部12aは、例えば、第1の印刷データにおける少なくとも一部の小ドットを、小ドットと中ドットとのサイズ比に従ってインク量が同等となる数の中ドットに置換したり、小ドットと大ドットとのサイズ比に従ってインク量が同等となる数の大ドットに置換したりすることで、第2の印刷データを生成してもよい。同様に、印刷データ生成部12aは、第1の印刷データにおける少なくとも一部の中ドットを、中ドットと大ドットとのサイズ比に従ってインク量が同等となる数の大ドットに置換して第2の印刷データを生成してもよい。
【0063】
本実施形態は、画像処理装置、印刷装置、印刷システムを開示する。さらに、本実施形態は、これら装置やシステムが実行する方法や、これら方法をプロセッサーに実行させるプログラム12の発明を開示する。
画像処理方法は、画像をインクで印刷するための印刷データであって、画像の画素毎にドットの非形成または複数サイズのいずれかのサイズのドットの形成を規定した印刷データを生成する印刷データ生成工程と、印刷データ生成工程により生成された第1の印刷データに基づいて、インクのミスト発生量を算出するミスト算出工程と、ミスト発生量が所定のしきい値(ミストしきい値)を超える場合、複数サイズのうちの相対的に大きいサイズのドットの形成比率が第1の印刷データよりも高い第2の印刷データを生成する印刷データ再生成工程と、を備える。
【0064】
印刷装置10は、これまでに説明したような主走査方向D1へ移動するキャリッジ18に印刷ヘッド19を搭載した、いわゆるシリアル型のインクジェットプリンターでなくてもよい。
搬送方向D2に交差する主走査方向D1に延在して、印刷媒体30の幅をカバー可能な長さのノズル列26をインク色毎に有する印刷ヘッド19により、インク吐出を行ういわゆるライン型のインクジェットプリンターを想定してもよい。ライン型のインクジェットプリンターでは、キャリッジ18は不要であり、ノズル列方向D3は、搬送方向D2ではなく主走査方向D1と平行と解せばよい。
【符号の説明】
【0065】
10…印刷装置(画像処理装置)、11…制御部、11a…CPU、11b…ROM、11c…RAM、12…プログラム、12a…印刷データ生成部、12b…ミスト算出部、12c…印刷制御部、16…印刷部、17…搬送部、18…キャリッジ、19…印刷ヘッド、20…ノズル、26,26C,26M,26Y,26K…ノズル列、30…印刷媒体、40…ミスト量比テーブル、50,51…使用順テーブル、T1,T2,T3,T4…ドット発生率テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7