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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B65D1/16 111
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020218659
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103806
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 章太
(72)【発明者】
【氏名】福本 隼人
(72)【発明者】
【氏名】眞仁田 清澄
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-264769(JP,A)
【文献】特開2008-073759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0117024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶軸を中心とする缶胴とネック部と底部を備え、
缶胴は、上部湾曲部と下部湾曲部を有し、
前記ネック部は、缶胴上端に連続して設けられており、
前記底部は、缶胴下端に連続して設けられており、
前記上部湾曲部は、前記缶胴上端から始まり、前記缶胴下端側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記下部湾曲部は、前記缶胴下端から始まり、前記缶胴上端側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記上部湾曲部と前記下部湾曲部の間はつながっており、視認できるような凹凸は無く、
前記缶胴上端径と、前記上部湾曲部の前記缶胴上端を除く部分の外径との差が、
U1:缶胴上端径、
S1:上部湾曲部の缶胴上端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<U1-S1<0.8mmを満たし、
前記缶胴下端径と、前記下部湾曲部の前記缶胴下端を除く部分の外径との差が、
B1:缶胴下端径、
S2:部湾曲部の缶胴端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<B1-S2<0.8mmを満たす
ことを特徴とする金属製缶体。
【請求項2】
缶軸を中心とする缶胴とネック部と底部を備え、
缶胴は、上部湾曲部と下部湾曲部を有し、
前記ネック部は、缶胴上端に連続して設けられており、
前記底部は、缶胴下端に連続して設けられており、
前記上部湾曲部は、前記缶胴上端から始まり、前記缶胴下端側へ向かって10mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記下部湾曲部は、前記缶胴下端から始まり、前記缶胴上端側へ向かって10mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記上部湾曲部と前記下部湾曲部の間はつながっており、視認できるような凹凸は無く、
前記缶胴上端径と、前記上部湾曲部の前記缶胴上端を除く部分の外径との差が、
U1:缶胴上端径、
S1:上部湾曲部の缶胴上端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<U1-S1<1mmを満たし、
前記缶胴下端径と、前記下部湾曲部の前記缶胴下端を除く部分の外径との差が、
B1:缶胴下端径、
S2:部湾曲部の缶胴端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<B1-S2<1mmを満たす
ことを特徴とする金属製缶体。
【請求項3】
缶軸を中心とする缶胴とネック部と底部を備え、
缶胴は、上部湾曲部と下部湾曲部を有し、
前記ネック部は、缶胴上端に連続して設けられており、
前記底部は、缶胴下端に連続して設けられており、
前記上部湾曲部は、前記缶胴上端から始まり、前記缶胴下端側へ向かって20mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記下部湾曲部は、前記缶胴下端から始まり、前記缶胴上端側へ向かって20mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記上部湾曲部と前記下部湾曲部の間はつながっており、視認できるような凹凸は無く、
前記缶胴上端径と、前記上部湾曲部の前記缶胴上端を除く部分の外径との差が、
U1:缶胴上端径、
S1:上部湾曲部の缶胴上端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<U1-S1<2mmを満たし、
前記缶胴下端径と、前記下部湾曲部の前記缶胴下端を除く部分の外径との差が、
B1:缶胴下端径、
S2:部湾曲部の缶胴端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<B1-S2<2mmを満たす
ことを特徴とする金属製缶体。
【請求項4】
缶軸を中心とする缶胴とネック部と底部を備え、
缶胴は、上部湾曲部と下部湾曲部を有し、
前記ネック部は、缶胴上端に連続して設けられており、
前記底部は、缶胴下端に連続して設けられており、
前記上部湾曲部は、前記缶胴上端から始まり、前記缶胴下端側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記下部湾曲部は、前記缶胴下端から始まり、前記缶胴上端側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、
前記上部湾曲部と前記下部湾曲部の間はつながっており、視認できるような凹凸は無く、
前記缶胴上端径と、前記上部湾曲部の前記缶胴上端を除く部分の外径との差が、
U1:缶胴上端径、
S1:上部湾曲部の缶胴上端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<U1-S1<0.5mを満たし、
前記缶胴下端径と、前記下部湾曲部の前記缶胴下端を除く部分の外径との差が、
B1:缶胴下端径、
S2:部湾曲部の缶胴端を除く部分の外径
と置いたとき、
0mm<B1-S2<0.5mmを満たす
ことを特徴とする金属製缶体。
【請求項5】
前記金属製缶体が、塗装された缶体、シュリンク包装された缶体、内容物を詰める前の缶体、内容物を詰めた缶体、ラベルを巻いた缶体、エアゾル缶または飲料缶である請求項1~4記載のいずれか1項記載の金属製缶体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、エアゾルなどを入れる金属缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボトル缶やツーピース缶などの金属缶が作られ、飲料やエアゾルなどが詰められて流通している(一例を示せば特許文献1)。これらの金属缶は、表面に塗装がなされるか、表面に印刷された樹脂製シュリンクフィルムで包装されたり、表面に印刷された樹脂製ラベルフィルムが巻き付けられて包装されて流通する。また、塗装前の金属缶は、金属表面が露出したままの状態で、搬送される。このような内容物を詰める前の缶体は、ケースなどに詰められて製缶工場から充填工場へ、充填工場から問屋へ、問屋から小売店へと運ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-104548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗装された金属缶は、ケースなどに詰められてトラックなどで搬送されるうちに、隣接する金属缶同士が振動でぶつかったり、こすれたりして、小売店に並ぶ前に表面に疵が付いてしまうことがあった。金属缶の周面は、商品名や消費を喚起するための表示など大切なデザインが印刷されており、疵が付くことで商品価値を落とすなどの不都合が起きる。
また、塗装前の金属缶も同様であり、搬送中に缶の周面に疵が付いたり凹んだりすると、塗装工程やシュリンク包装やラベル巻き付き工程に影響を及ぼす懸念があった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、金属缶周面を保護することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は、一形態として以下の構成を具備する。
缶軸を中心とする缶胴とネック部と底部を備え、缶胴は、上部湾曲部と下部湾曲部を有し、前記ネック部は、缶胴上端に連続して設けられており、前記底部は、缶胴下端に連続して設けられており、前記上部湾曲部は、前記缶胴上端から始まり、前記缶胴下端側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、前記下部湾曲部は、前記缶胴下端から始まり、前記缶胴上端側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するものであり、視認できるような凹凸は無く、前記上部湾曲部と前記下部湾曲部の間はつながっており、視認できるような凹凸は無く、前記缶胴上端径と、前記上部湾曲部の前記缶胴上端を除く部分の外径との差が、U1:缶胴上端径、S1:上部湾曲部の缶胴上端を除く部分の外径と置いたとき、0mm<U1-S1<0.8mmを満たし、前記缶胴下端径と、前記下部湾曲部の前記缶胴下端を除く部分の外径との差が、B1:缶胴下端径、S2:部湾曲部の缶胴端を除く部分の外径と置いたとき、0mm<B1-S2<0.8mmを満たすことを特徴とする金属製缶体。
【発明の効果】
【0007】
缶体をケースに入れて搬送しても、缶胴周面に疵ができることが無くなった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1のツーピース缶の説明図。(A) 目視した印象を示す缶体の一部断面・一部正面図。(B) 缶胴をデフォルメーションした缶体の一部断面・一部正面図。
図2】実施形態1の缶体の実測データ。
図3】缶体をケースに詰めた説明図。
図4】実施形態のツーピース缶の説明図。(A)実施形態2の缶体の一部断面・一部正面図であり、缶胴をデフォルメーションしている。(B)実施形態2の缶体の実測データ。
図5】実施形態3のツーピース缶の説明図。(A)湾曲部間繋ぎ部が垂直面となっている缶体の一部断面・一部正面図であり、缶胴をデフォルメーションしている。(B)実施形態3の缶体の実測データ。(C)実施形態3の変化例。湾曲部間繋ぎ部が傾斜面となっている缶体の一部断面・一部正面図であり、缶胴をデフォルメーションしている。
図6】実施形態4のボトル缶の説明図。(A)実施形態4の缶体の一部断面・一部正面図。(B)実施形態4の缶体の一部断面・一部正面図であり、缶胴をデフォルメーションしている。
図7】実施形態5のエアゾル缶の説明図。(A)実施形態5の缶体の一部断面・一部正面図であり、缶胴をデフォルメーションしている。(B)実施形態5の缶体の実測データ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。また、図面は、説明のため意図的に一部デフォルメーションしている図がある。図面は、実測データを除き概念図として提示するものである。図面は、正確な縮尺を反映しているものではない。
【0010】
(実施形態1)
[上部湾曲部および缶胴上端]
図1は実施形態1の缶体1の一部断面・一部正面図である。実施形態1の缶体1は、ツーピース缶11(1)である。ツーピース缶11(1)は、缶軸37を中心とするネック部2と缶胴3と底部36を備えた金属製の缶体1である。図1(A)は目視した印象を示す缶体1を表しており、図1(B)は缶胴3をデフォルメーションした缶体1を表している。ツーピース缶11(1)は、上部にネック部2があり、ネック部2に連続して缶胴上端31となっている。上部湾曲部32は、缶胴上端31から始まり缶胴下端33側へ向かって徐々に縮径するように湾曲している。図1(B)の点線は、缶胴上端31からの垂線を示している。上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1は、上部湾曲部32の範囲で、上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1が連続的に変化し、缶胴下端33側に向かうにつれ湾曲に沿って徐々に短くなる。
【0011】
図2は、実施形態1の缶体1(ツーピース缶11)の実測データである。横軸は、缶体1の高さを表し、縦軸は缶胴径を表している。図2の缶胴上端31から垂直に引かれた点線は、缶胴上端31から始まる上部湾曲部32の範囲が分かるように付した補助線である。缶胴上端31は、缶の高さ105mmの位置にある。実施形態1では、上部湾曲部32は、缶胴上端31の高さ105mmから始まり、高さ93mmまでの間に存在する。上部湾曲部32は、長さ12mmにわたって存在する。
【0012】
缶胴上端31(高さ105mm)の缶胴上端径U1は66.11mmである。上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1(縦軸「缶胴径」の範囲)は「S1の変化範囲」として図示した範囲で変化する。図2の縦軸(缶胴径)のS1の変化範囲を観ても分かるように、実施形態1のツーピース缶11(1)では、上部湾曲部32の領域において、最大径は、缶胴上端径U1(66.11mm)である。上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1は、65.89mm<S1<66.11mmの間で変化する。
【0013】
「缶胴上端径U1」と「上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1」の差(U1-S1)は、上部湾曲部32の領域において、缶胴上端径U1と比較して、縮径する範囲を表している。上部湾曲部32の領域では、缶胴上端31の缶胴上端径U1が最大径であり、上部湾曲部32の缶胴上端31を除けば、
0mm<U1-S1<0.22mm
の範囲で缶胴径が変化している。
つまり、「缶胴上端径U1」と「上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1」の差は、缶胴上端31を除いて上部湾曲部32の範囲内のどこをとっても、0mm<U1-S1<0.8mmとなっている。
【0014】
この時、缶体1の外観を見たところ図1(A)のように、円筒状に見えた。あたかも、上部湾曲部32が存在しないように感じたため、実施形態1とは別の試験により、図2の上部湾曲部32に対応する横軸(缶体1の高さ)は、缶胴上端31から始まり、缶胴下端33側へ向かって5mm以上湾曲し、視認できるような凹凸は無い場合であって、
U1:缶胴上端径
S1:上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径
と置いたとき
0<U1-S1<0.8mm
の条件を満たせば、缶体1を視認したときに上部湾曲部32が湾曲しているようには見えないことが分かった。
オリンパス社の以下のURLでは
URL:https://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/02/027/
次のような説明がある。
「肉眼で見える大きさは0.1mm(100μm)程度、ちょうど細い髪の毛の太さぐらいである。これ以下のものは肉眼で見ることはできない。」
上部湾曲部32は、缶胴下端33に向かって高さ5mm以上の範囲で湾曲している。上部湾曲部32が5mmだとしても、その5mmの間に0.8mm縮径することは、1mmあたり、0.16mm縮径していることに相当する。傾斜は非常に気づきにくく、肉眼で見える大きさが0.1mmであることに照らすと、肉眼で湾曲していることが分からないという結果と矛盾しない。
【0015】
前述したように、上部湾曲部32は、缶胴下端33に向かって高さ5mm以上の範囲で湾曲しており、かつ、その縮径の程度が0mm<U1-S2<0.8mmであり、上部湾曲部32において、最も外径が大きいのは缶胴上端31の缶胴上端径U1となっている。視認できるような凹凸もなく上部湾曲部32の勾配がわずかなため、図1(A)のように、上部湾曲部32が湾曲しているようには見えない。
【0016】
なお、上部湾曲部32や下部湾曲部34の領域を広くすると、U1-S1や後述するB1-S2の上限を上げることもできる。例えば、上部湾曲部32は、缶胴上端31から始まり、缶胴下端33側へ向かって10mm以上の範囲で湾曲するようにした場合、0mm<U1-S1<1mmを満たすようにすることもできる。上部湾曲部32の領域を広くすること(10mm以上とすること)で、肉眼で見える大きさの限界である0.1mmを考慮し、1mm当たり0.1mm縮径するにとどめることで、湾曲しているようには見えないようにできる。
また、缶胴下端33側へ向かって20mm以上の範囲で湾曲するようにした場合、0mm<U1-S1<2mmを満たすようにすることもできる。この場合も肉眼で見える大きさの限界を考慮し、1mm当たり0.1mm縮径するにとどめることで、湾曲しているようには見えないようにできる。
後述する下部湾曲部34についても、同様である。
【0017】
[下部湾曲部および缶胴下端]
図1(B)を参照されたい。ツーピース缶11は、底部36があり、底部36に連続して缶胴下端33となっている。下部湾曲部34は、缶胴下端33から始まり缶胴上端31側へ向かって徐々に縮径するように湾曲している。図1(B)の点線は、缶胴上端31からの垂線を示している。下部湾曲部34の缶胴下端33を除く部分の缶胴外径S2は、下部湾曲部34の範囲で連続的に変化し、缶胴上端31側に向かうにつれ湾曲に沿って徐々に縮径する。
【0018】
図2で下部湾曲部34の実測データを確かめる。図2の缶胴下端33から垂直に引かれた点線は、缶胴下端33から始まる下部湾曲部34の範囲が分かるように付した補助線である。缶胴下端33は、缶体1の高さ10mm(横軸)の位置にある。実施形態1では、下部湾曲部34は、缶胴下端33(缶胴3の高さ10mm)から始まり、高さ22mmまでの間に存在する。下部湾曲部34は、長さ12mmにわたって存在する。
【0019】
缶胴下端33(高さ10mm)の缶胴下端径B1は66.11mmである。下部湾曲部34の缶胴下端33を除く部分の缶胴外径S2は「S2の変化範囲」(縦軸「缶胴径」の範囲)として図示した範囲で変化する。図2の縦軸(缶胴径)のS2の変化範囲を観ても分かるように、実施形態1のツーピース缶11では、下部湾曲部34の領域において、最大径は、缶胴下端径B1(66.11mm)である。下部湾曲部34の缶胴下端33を除く部分の缶胴外径S2は、65.89mm<S2<66.11mmの間で変化する。
【0020】
「缶胴下端径B1」と「下部湾曲部34の缶胴下端33を除く部分の缶胴外径S2」の差(B1-S2)は、下部湾曲部34の領域において、缶胴下端径B1と比較して、縮径する範囲を表している。下部湾曲部34の領域では、缶胴下端33の缶胴下端径B1が最大径であり、下部湾曲部34の缶胴下端33を除けば、
0mm<B1-S2<0.22mm
の範囲で缶胴径が変化している。
つまり、「缶胴下端径B1」と「下部湾曲部34の缶胴下端33を除く部分の缶胴外径S2」の差は、缶胴下端33を除いて下部湾曲部34の範囲内のどこをとっても、0mm<B1-S2<0.8mmとなっている。
【0021】
前述の[上部湾曲部および缶胴上端]と同じく、
下部湾曲部34は、缶胴下端33から始まり、缶胴上端31側へ向かって5mm以上湾曲しており、視認できるような凹凸は無い場合であって、
B1:缶胴下端径
S2:下部湾曲部34の缶胴下端33を除く部分の缶胴外径
と置いたとき
0<B1-S2<0.8mm
の条件を満たせば、缶体1を視認したときに下部湾曲部34が湾曲しているようには見えないことが分かった。
【0022】
前述したように、下部湾曲部34は、缶胴上端31に向かって5mm以上湾曲しており、かつ、その縮径の程度が0mm<B1-S2<0.8mmであり、下部湾曲部34において、最も外径が大きいのは缶胴下端33の缶胴下端径B1となっている。視認できるような凹凸もなく下部湾曲部34の勾配がわずかなため、図1(A)のように、下部湾曲部34が湾曲しているようには見えない。
【0023】
[湾曲部間繋ぎ部]
上部湾曲部32と下部湾曲部34は湾曲部間繋ぎ部35で繋がれている。実施形態1では、湾曲部間繋ぎ部35は、上部湾曲部32と下部湾曲部34を繋ぐように所定の長さ設けられている。さらに湾曲部間繋ぎ部35には、視認できるような凹凸はなく、滑らかである。
【0024】
図2から分かるように、上部湾曲部32および下部湾曲部34は、自然に湾曲部間繋ぎ部35に繋がっている。実測データからも分かるように、上部湾曲部32および下部湾曲部34は滑らかであり、凹凸がない。そして、湾曲部間繋ぎ部35は、ほぼ平坦で凹凸がないことが分かる。
【0025】
[缶胴]
上述したように、上部湾曲部32、湾曲部間繋ぎ部35と下部湾曲部34は、視認できるような凹凸はなく滑らかであり、勾配もわずかなため一見しただけでは上部湾曲部32も下部湾曲部34も湾曲しているようには見えず。湾曲部間繋ぎ部35は、ほぼ平坦であり、缶胴3を見ても、上部湾曲部32も下部湾曲部34が湾曲しているようには見えず、図1(A)のように缶胴3は、円筒のように見え外観を損なうことが無い。
【0026】
[缶胴上端・缶胴下端の機能]
上述したように、缶胴3の上部側で最も外径が大きいのは缶胴上端31の缶胴上端径U1であり、缶胴3の下部側で最も外径が大きいのは缶胴下端33の缶胴下端径B1である。
図3は、缶体1をケース4に詰めた説明図である。ケース4に詰められた缶体1と隣接する缶体1は、缶胴3の上部において缶胴上端31と隣接する缶体1の缶胴上端31が接触し、缶胴3の下部において缶胴下端33と隣接する缶胴下端33が接触する。缶胴3は、缶胴上端31と缶胴下端33を除き、隣接する缶体1と接触することが無い。缶胴3の缶胴上端31はネック部2から曲がる部分であり、一般的に板厚が厚く強度が高い。缶胴上端31同士で接触しても凹みにくい。
また、一般的に缶胴下端33は底部36に向けて曲がる部分であり、板厚が厚く強度が高い。缶胴下端33同士で接触しても凹みにくい。缶胴上端31と缶胴下端33を除いた缶胴中央部分が守られる。
【0027】
しかも、缶胴上端31と缶胴下端33は、塗装や印刷がなされているとしても、消費者に訴求するようなデザインや文字が配置されることは少なく、塗装や印刷が多少疵つくことがあっても、缶胴中央に疵が付くことに比べて消費者に悪い印象を与えにくい。さらに、缶胴上端31はネック部2に向かって屈曲する部位であり、缶胴下端33は底部36に向かって屈曲する部位であるから、疵が付いても目立たない。また、表面に印刷された樹脂製シュリンクフィルムで包装されたり、表面に印刷された樹脂製ラベルフィルムが巻き付けられて包装されてる場合でも、同様である。樹脂製ラベルフィルムや樹脂製シュリンクフィルムには、印刷されずに透明な部分があり、凹みや疵が直接見えてしまう心配がある。缶胴上端31と缶胴下端33に凹みや疵が付いても、缶胴中央に疵が付くことに比べて消費者に悪い印象を与えにくい。
また、塗装工程においても、印刷される前の缶胴中央に疵や凹みがあると、印刷が歪む心配があるが、缶胴上端31や缶胴下端33は、凹みや疵が付いても、元々ネック部2や底部36に向かって縮径が開始される部分であり、印刷に多少の歪みが生じても目立つことはない。
【0028】
[試験]
[空缶の輸送]
製缶工程を経た空缶(缶体1)をパレットにて輸送した。輸送されるが缶同士は密着された状態となっている。輸送中の振動により、缶胴3の中央部分に凹みや疵が入っている空缶(缶体1)はなかった。
【0029】
[充填工場内での内容物充填工程における缶の搬送]
パレットより排出された缶体1は内容物充填工程に搬送される。搬送中、缶体1同士が密着した状態で搬送される。充填工程を経て缶蓋を巻き締めた後にも、缶胴3の中央部分に凹みや疵が入っている缶体1はなかった。
【0030】
[内容物充填後における缶の輸送]
充填され内容物を詰めた缶体1はカートン詰めされる。内容物を詰めているため缶胴3がわずかに膨らむ。しかしながら、缶胴3の中央部分に凹みや疵が入っている缶体1はなかった。
【0031】
(実施形態2)
図4は実施形態2の説明図である。図4(A)は実施形態2の缶体1の一部断面・一部正面図であり、缶胴3をデフォルメーションしている。図4(B)は実施形態2の缶体1の実測データである。いずれも、ツーピース缶11(1)である。
実施形態2のツーピース缶11(1)は、上部湾曲部32の領域と下部湾曲部34の領域が長く、上部湾曲部32と下部湾曲部34を繋ぐ湾曲部間繋ぎ部35は、断面図では点(缶体1では円形の線)になっている。このように、本発明では、湾曲部間繋ぎ部35は領域として存在する必要はない。
【0032】
実施形態2では、上部湾曲部32と下部湾曲部34の勾配が緩やかであり、実施形態1よりさらに円筒状に見える。
上部湾曲部32と下部湾曲部34の外径が大きいため、輸送中の缶体1同士の接触により、缶胴3の中央部分に凹みや疵ができることを防いでいる。
【0033】
(実施形態3)
缶胴3は、缶胴上端径U1と缶胴下端径B1が同一である必要はない。缶胴3の上部側で最も外径が大きいのは缶胴上端31の缶胴上端径U1であり、缶胴3の下部側で最も外径が大きいのは缶胴下端33の缶胴下端径B1であればよい。
図5は、実施形態3の缶体1の説明図である。缶体1はツーピース缶11(1)である。図5(A)は湾曲部間繋ぎ部35が垂直面となっている缶体1の一部断面・一部正面図であり、缶胴3をデフォルメーションしている。図5(B)は実施形態3の缶体1の実測データである。
【0034】
図1で示した実施形態1では、缶胴3は円筒形であり、缶胴上端径U1と缶胴下端径B1は同一であった。実施形態3の缶胴3は、缶胴上端径U1が缶胴下端径B1より小さくなっている。そのため、缶胴上端31引いた垂線と缶胴下端33から引いた垂線(図5(A)において点線で示されている。)は、缶胴径方向にずれている。また、湾曲部間繋ぎ部35は、垂直かつ平坦になっている。
【0035】
図5(C)は実施形態3の変形例である。湾曲部間繋ぎ部35が傾斜面となっている缶体1の一部断面・一部正面図であり、缶胴3をデフォルメーションしている。缶胴上端31<缶胴下端33となっており、缶胴上端径U1≒缶胴下端径B1となっている場合は、円筒形に見え、缶胴上端径U1と缶胴下端径B1の差が大きな場合は、戴頭円錐形に見える。いずれにせよ、上部湾曲部32と下部湾曲部34は湾曲しているようには見えない。
【0036】
図5(C)の実施形態3の変形例では、缶体1をケースに入れて搬送する場合、缶胴下端33が隣接する缶体1の缶胴下端33と密着し、隣接する缶体1の缶胴上端31同士の間に隙間ができる。振動が起きて、缶体1が傾くとしても、ケース4内で缶体1が同じ方向に倒れれば、缶胴上端31が隣接する缶体1の缶胴3に当たりにくい。また、ケース4内で隣接する缶体1同士が互いに近づくように倒れた場合は、缶胴上端31と隣接する缶体1の缶胴上端31が当接するため、缶胴下端33と缶胴上端31を除く缶胴3の中央部が守られる。
さらに、図では示さないが缶胴上端31>缶胴下端33としてもよい。この場合、ケース4内では、缶胴上端31は動きにくく、隣接する缶体1同士が強く接触するとしても、缶胴下端33である。缶胴下端31は缶胴上端33より目立つ箇所ではなく、多少凹みや疵がついても缶胴上端33に凹みや疵が付くより消費者に悪い印象を与えにくい。
【0037】
(実施形態4)
実施形態4は、缶体1を金属製ボトル缶12とした例である。図6は実施形態4のボトル缶12(1)の説明図であり、図6(A)は実施形態4の缶体1の一部断面・一部正面図であり、図6(B)は缶体1の一部断面・一部正面図であり、缶胴3をデフォルメーションしている。
ボトル缶12(1)も上述の実施形態1~3と同様である。
【0038】
(実施形態5)
実施形態5は、缶体1をエアゾル缶(スプレー缶)13とした例である。図7は実施形態5のエアゾル缶13(1)の説明図である。図7(A)は缶体1の一部断面・一部正面図であり、缶胴3をデフォルメーションしており、図7(B)は内容物を詰める前の空缶と内容物を詰めた製品の実測データである。図7(B)の○は内容物を詰めた製品の缶胴径の推移(プロフィール)を示し、■は空缶の缶胴径の推移(プロフィール)を示す。製品の缶胴径は、内容物が詰められた影響により空缶の缶胴径より若干膨らんでいる。
【0039】
内容物を詰める前の空缶について、缶胴径の推移(プロフィール)を追うと、湾曲部間繋ぎ部35は、傾斜しておらず平坦(垂直)であり、缶体1の高さ55mm~120mmにわたっており、外径は52.95mmである。缶胴上端31は、缶体1の高さ137mmに位置し、缶胴上端径U1は53.1mmである。缶胴下端33は、缶胴3の高さ6mmに位置し、缶胴下端径B1は53.05mmである。
【0040】
上部湾曲部32は、缶胴上端31(高さ137mm)から湾曲部間繋ぎ部35の上端(高さ120mm)の間にあり、その長さは、17mmであり、前記缶胴上端から始まり、缶胴下端33側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するという条件を満たす。
【0041】
そして、缶胴上端径U1と上部湾曲部の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1は、最大で、湾曲部間繋ぎ部35と同じ52.95mmである。
内容物を詰める前の空缶は、(缶胴上端径U1)-(上部湾曲部の缶胴上端を除く部分の缶胴外径S1)=53.1mm-52.95mm=0.15mmであり、
0mm<U1-S1<0.8mmを満たす。
【0042】
下部湾曲部34は、高さ6mmから高さ55mmまであり、49mmの長さにわたっている。下部湾曲部34は、前記缶胴下端33から始まり、缶胴上端31側へ向かって5mm以上の範囲で湾曲するという条件を満たす。
さらに、空缶の(缶胴下端径B1)-(下部湾曲部の缶胴下端を除く部分の缶胴外径S2)=53.05mm-52.92mm=0.13mmであり、0mm<B1-S2<0.8mmという条件を満たす。
製品は、空缶より上部湾曲部32の外径および下部湾曲部34の外径の変化の範囲が小さく、上記条件を満たす。
【0043】
実施形態5は、エアゾル缶13(1)に内容物を詰めて製品とした実測データを図7(B)で示したが、実施形態1~4のツーピース缶11でも、飲料を詰めて製品とした場合、内容物を詰める前の空缶より製品の方が若干膨らみ、内容物を詰める前の空缶で上記条件を満たせば、製品でも満たすことが確認された。
【0044】
なお、実施形態5では、内容物を詰める前の空缶と製品の両者で、上記条件を満たすものであった。本発明は、内容物を詰める前の空缶のみで上記条件を満たす、または、製品のみで上記条件を満たすものを包含する。
さらに、上部湾曲部32の缶胴上端31を除く部分の缶胴外径S1は、缶胴上端径U1と比較して、0mm<U1-S1<0.5mmの範囲で小さいとすることにより、上部湾曲部32がより湾曲しているようには見えず好ましい。
また、下部湾曲部34の缶胴下端33を除く部分の缶胴外径S2は、缶胴下端径B1と比較して、0mm<B1-S2<0.5mmの範囲で小さいとすることにより、下部湾曲部34がより湾曲しているようには見えず好ましい。
【0045】
以上、本発明に係る実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 缶体
11 ツーピース缶
12 ボトル缶
13 エアゾル缶
2 ネック部
3 缶胴
31 缶胴上端
32 上部湾曲部
33 缶胴下端
34 下部湾曲部
35 湾曲部間繋ぎ部
36 底部
37 缶軸
4 ケース
B1 缶胴下端径
U1 缶胴上端径
S1 上部湾曲部の缶胴上端を除く部分の缶胴外径
S2 下部湾曲部の缶胴下端を除く部分の缶胴外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7