(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 21/02 20060101AFI20241008BHJP
C07H 21/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C07H21/02
C07H21/04 A
(21)【出願番号】P 2020572340
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005814
(87)【国際公開番号】W WO2020166705
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019025605
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】市丸 泰介
(72)【発明者】
【氏名】平井 邦博
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/028345(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/157723(WO,A1)
【文献】特開2003-002895(JP,A)
【文献】特開昭61-165399(JP,A)
【文献】特開2003-313198(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)~(4)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1)5’位水酸基が保護されておらず、且つその他の基が
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護され、且つその他の基が
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
を縮合させ、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程;
(2):(2-1)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に硫化剤を添加して硫化し、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)を得る工程、または
(2-2)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に酸化剤を添加して酸化し、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)を得る工程;
(3):(3-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)に酸を添加して5’位水酸基の
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物を得る工程、または
(3-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)に酸を添加して5’位水酸基の
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物を得る工程
、
ここで、工程(3-1)および(3-2)において、5’位水酸基のトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基の除去で使用する酸は、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸またはトリクロロ酢酸である;および
(4):(4-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程、または
(4-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程
、
ここで、工程(4-1)および(4-2)において、加溶媒分解で使用する溶媒は塩基と求核物質との混合物であり、塩基はピリジン、コリジン、ルチジンおよびメチルピリジンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、求核物質は水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【請求項2】
ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の保護基を全て除去した後、保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドまたは保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを単離する工程をさらに含む、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
以下の工程(1A)、(3A)および(4A)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1A)5’位水酸基が保護されておらず、且つその他の基が
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がH-ホスホネート法により修飾されており、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護され、且つその他の基が
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
を縮合させ、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程;
(3A)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に酸を添加して5’位水酸基の
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)粗製物を得る工程
、ここで、5’位水酸基のトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基の除去で使用する酸は、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸またはトリクロロ酢酸である;および
(4A)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程
、ここで、加溶媒分解で使用する溶媒は塩基と求核物質との混合物であり、塩基はピリジン、コリジン、ルチジンおよびメチルピリジンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、求核物質は水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【請求項4】
工程(1)が、
5’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基、3’位水酸基および3’位アミノ基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基および3’位アミノ基から選ばれる少なくとも一つの基が、
炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護され、且つその他の基がさらに
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)、或いは
5’位水酸基が保護されておらず、3’位末端のリン酸基の一つのOHが-OL
n1-OH(式中、L
n1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OL
n1-OHの水酸基が
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護され、且つその他の基がさらに
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護され、且つその他の基がさらに、
炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
を縮合させ、5’位水酸基が
トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程である、請求項
1または
2に記載の製造方法。
【請求項5】
以下の工程(1’)~(4’)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1’)3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、且つその他の基が
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)と、
5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基
がトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護され、または3’位アミノ基が
トリチル基、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基で保護され、且つその他の基が
、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)と
を縮合させ、3’位水酸基
がトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護され、または3’位アミノ基が
トリチル基、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)を得る工程;
(2’):(2’-1)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に硫化剤を添加して硫化し、3’位水酸基
がトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護され、または3’位アミノ基が
トリチル基、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)を得る工程、または
(2’-2)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に酸化剤を添加して酸化し、3’位水酸基
がトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基で保護され、または3’位アミノ基が
トリチル基、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)を得る工程;
(3’):(3’-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)に酸を添加して3’位水酸基
のトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基または3’位アミノ基の
トリチル基、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基を除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物を得る工程、または
(3’-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)に酸を添加して3’位水酸基
のトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基または3’位アミノ基の
トリチル基、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基を除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物を得る工程
、
ここで、工程(3’-1)および(3’-2)において、3’位水酸基のトリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、ビス(C
1-6
アルコキシ)トリチル基またはモノ(C
1-18
アルコキシ)トリチル基または3’位アミノ基のトリチル基、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基の除去で使用する酸は、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸またはトリクロロ酢酸である;および
(4’):(4’-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程、または
(4’-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程
、
ここで、工程(4’-1)および(4’-2)において、加溶媒分解で使用する溶媒は塩基と求核物質との混合物であり、塩基はピリジン、コリジン、ルチジンおよびメチルピリジンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、求核物質は水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドの製造方法として、現在、ホスホロアミダイト法やH-ホスホネート法が汎用されており、その他にも、ジハロホスフィン法やオキサザホスホリジン法も知られている。オリゴヌクレオチドの製造は反応が多段階を要することから、塩基伸長毎の反応工程でたとえ1%以下の微量な不純物副生であっても、目的物となるオリゴヌクレオチド伸長体になると不純物が多量になってしまう。そのため、高純度のオリゴヌクレオチドを取得するには各反応単工程の不純物副生を抑制することが肝要である。しかしながら、縮合反応工程においては、反応が完結せず、目的のオリゴヌクレオチドの収率が下がるだけでなく、1塩基欠損体(N-1mer)などの不純物が副生し、これらの不純物の除去が困難となるという問題もある。
オリゴヌクレオチドの製造方法として、固相合成(固相法)や液相法があり、さらに固相法と液相法の欠点を解消するため、擬似固相保護基を使用した液相法も開発されている(特許文献1~9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/157723号
【文献】国際公開第2013/122236号
【文献】国際公開第2017/104836号
【文献】国際公開第2005/070859号
【文献】国際公開第2013/179412号
【文献】国際公開第2014/077292号
【文献】国際公開第2017/086397号
【文献】国際公開第2018/203574号
【文献】国際公開第2018/212236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの縮合反応を完結させ得る、オリゴヌクレオチドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究をし、原因を解析したところ、縮合反応の前工程となる、酸(カルボン酸)による脱保護工程において、脱保護された5’位水酸基が酸(カルボン酸)によってアシル化され、縮合反応が完結できず、欠損化不純物の副生に繋がることを見出した。更に、本発見を基に、上記O-アシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程を新たに導入することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
【0006】
[1]ホスホロチオエート(PS)、ホスフェート(PO)またはH-ホスホネート部位を有する保護オリゴヌクレオチドに酸を添加して5’位水酸基の一時保護基を除去したのち、5’位水酸基がアシル化された副生物を加溶媒分解して脱アシル化する工程を含むオリゴヌクレオチドの製造方法。
[2]以下の工程(1)~(4)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1)5’位水酸基が保護されておらず、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
を縮合させ、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程;
(2):(2-1)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に硫化剤を添加して硫化し、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)を得る工程、または
(2-2)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に酸化剤を添加して酸化し、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)を得る工程;
(3):(3-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)に酸を添加して5’位水酸基の一時保護基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物を得る工程、または
(3-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)に酸を添加して5’位水酸基の一時保護基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物を得る工程;および
(4):(4-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程、または
(4-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程。
[3]ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の保護基を全て除去した後、保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドまたは保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを単離する工程をさらに含む、[2]に記載の製造方法。
[4]以下の工程(1A)、(3A)および(4A)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1A)5’位水酸基が保護されておらず、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がH-ホスホネート法により修飾されており、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
を縮合させ、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程;
(3A)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に酸を添加して5’位水酸基の一時保護基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)粗製物を得る工程;および
(4A)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程。
[5]工程(1)が、
5’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基、3’位水酸基および3’位アミノ基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基および3’位アミノ基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)、或いは
5’位水酸基が保護されておらず、3’位末端のリン酸基の一つのOHが-OLn1-OH(式中、Ln1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基および核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
を縮合させ、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程である、[2]または[3]に記載の製造方法。
[6]5’位水酸基の一時保護基の除去で使用する酸が、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、またはリン酸を含む[1]~[5]のいずれか1に記載の製造方法。
[7]酸が、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ホスホン酸、またはリン酸である[6]に記載の製造方法。
[8]加溶媒分解で使用する溶媒が、塩基と求核物質との混合物である[1]~[7]のいずれか1に記載の製造方法。
[9]塩基が非求核性塩基および窒素原子を含む複素環式化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、求核物質が水およびアルコール誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である[8]に記載の製造方法。
[10]非求核性塩基のpKaが3~10である[9]に記載の製造方法。
[11]窒素原子を含む複素環式化合物がピリジン誘導体である[9]または[10]に記載の製造方法。
[12]求核物質が水を含む場合、そのpHが3.0~8.0である[8]~[11]のいずれか1に記載の製造方法。
[13]塩基がピリジン、コリジン、ルチジンおよびメチルピリジンからなる群より選ばれる少なくとも1種である[8]~[12]のいずれか1に記載の製造方法。
[14]求核物質が水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である[8]~[13]のいずれか1に記載の製造方法。
[14A]塩基と求核物質との混合物が、ピリジンと水との混合物、ピリジンとメタノールとの混合物、またはピリジンとエタノールとの混合物である[8]~[14]のいずれか1に記載の製造方法。
[15]ホスホロチオエート(PS)、ホスフェート(PO)またはH-ホスホネート部位を有する保護オリゴヌクレオチドに酸を添加して3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を除去したのち、3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化された副生物を加溶媒分解して脱アシル化する工程を含むオリゴヌクレオチドの製造方法。
[16]以下の工程(1’)~(4’)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1’)3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)と、
5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)と
を縮合させ、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)を得る工程;
(2’):(2’-1)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に硫化剤を添加して硫化し、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)を得る工程、または
(2’-2)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に酸化剤を添加して酸化し、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)を得る工程;
(3’):(3’-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)に酸を添加して3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物を得る工程、または
(3’-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)に酸を添加して3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物を得る工程;および
(4’):(4’-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程、または
(4’-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法によれば、縮合反応を完結させて縮合収率を向上させ、1塩基欠損体(N-1mer)などの不純物を著しく低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[用語]
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物および特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物および方法論を記載および開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0009】
本明細書において、オリゴヌクレオチドの構成単位となる「ヌクレオシド」とは、核酸塩基が糖(例えば、2-デオキシリボース、リボース、2位炭素原子および4位炭素原子が2価の有機基により結合された2-デオキシリボースまたはリボースなど)の1位にN-グリコシド化により結合された化合物を意味する。
本明細書における「糖」は、水酸基がアミノ基に置き換わったアミノ糖、および2位水酸基がハロゲン原子に置き換わったリボースも包含する。
【0010】
2位炭素原子および4位炭素原子が2価の有機基により結合された2-デオキシリボースまたはリボースとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
下記式中、Rは水素原子、置換または無置換の炭化水素基、置換または無置換の水酸基、置換または無置換のアミノ基のいずれかを示し、R’は、水素原子、水酸基のいずれかを示す。
【0011】
【0012】
アミノ糖としては、例えば、以下に示すような3位水酸基がアミノ基に置き換わった2-デオキシリボース、3位水酸基がアミノ基に置き換わったリボース、および3位水酸基がアミノ基に、2位水酸基がハロゲンに置き換わったリボースが挙げられる(下記式中、Xsはハロゲン原子を示す。)。
【0013】
【0014】
本明細書中、「リン酸基」は、-O-P(O)(OH)2だけでなく、酸素原子が硫黄原子またはNHに置き換わった基(例えば、-O-P(S)(OH)2、-NH-P(O)(OH)2、-NH-P(S)(OH)2)も包含する。また、リン酸基中の水酸基(-OH)が-ORp(式中、Rpは、リン酸基の保護基などの有機基を示す)に置き換わった基(例えば、保護されたリン酸基)も、「リン酸基」に包含される。
【0015】
本明細書中、「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドにリン酸基が結合した化合物を意味する。3’位水酸基または5’位水酸基がリン酸基に置き換わったヌクレオチドとしては、例えば、下記式に示す化合物が挙げられる(下記式中、Rm1およびRm2は、それぞれ独立して、水素原子または有機基(但し、ヌクレオシド残基を除く)を示し、Xmは、水素原子、水酸基またはハロゲン原子を示し、R1およびR2は、水素原子またはアルキル基を示し、R1およびR2が結合して5または6員環を形成してよく、R3およびR4は、水素原子またはフェニル基を示す。)。
【0016】
【0017】
【0018】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオシドにヌクレオチドが1個以上連結した化合物を意味する。なお、「オリゴヌクレオチド」には、リン酸基の酸素原子が硫黄原子に置き換わったホスホロチオエート型のオリゴヌクレオチド、リン酸基の-O-が-NH-に置き換わったオリゴヌクレオチド、リン酸基中の水酸基(-OH)が-ORp(式中、Rpは有機基を示す)に置き換わったオリゴヌクレオチドも包含される。本発明におけるオリゴヌクレオチドのヌクレオシドの数は特に限定されないが、好ましくは3~50、より好ましくは5~30である。
【0019】
本明細書中、「固相担体」とは、当該分野において核酸の固相合成に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等が挙げられる。固相担体として用いられる固相支持体または樹脂は、固相合成での使用に適した当技術分野において知られているあらゆる支持体または樹脂でありうる。本明細書中、「固相」という用語は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが慣用される機能的リンカー又はハンドル基を介して上記の固相支持体又は樹脂に結合又はリンクされることを含んでおり、本文脈で「固相」と言うときにはこのようなリンカーも含意している。固相の例は、例えば、ポリスチレン支持体(例えばp-メチルベンジル-ヒドリルアミンによってさらに機能化されてもよい)、又は、珪藻土封入ポリジメチルアクリルアミド(ペプシンK)、シリカ又は微細孔性ガラスなどの剛直な機能化支持体である。固相の樹脂マトリクスは、両親媒性のポリスチレン-PEG樹脂又はPEG-ポリアミド又はPEG-ポリエステル樹脂によって構成されてもよい。固相担体として、例えば、Wang-PEGレジンやRink-アミドPEGレジンが含まれる。
【0020】
本明細書中、「3’位アミノ基」とは、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの3’位の炭素原子に結合したアミノ基を意味する。
本明細書中、「5’位アミノ基」とは、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’位の炭素原子に結合したアミノ基を意味する。
【0021】
本明細書中、「3’位リン酸基」とは、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの3’位の炭素原子に結合したリン酸基を意味する。
本明細書中、「5’位リン酸基」とは、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’位の炭素原子に結合したリン酸基を意味する。
【0022】
本明細書中、「核酸塩基」とは、核酸の合成に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、シトシル基、ウラシル基、チミニル基等のピリミジン塩基、アデニル基、グアニル基等のプリン塩基を挙げることができる。また、「保護されていてもよい核酸塩基」とは、例えば、アミノ基を有する核酸塩基であるアデニル基、グアニル基、またはシトシル基において、アミノ基が保護されていてもよいことを意味し、核酸塩基のアミノ基が、ヌクレオチドの5’位の脱保護条件に耐え得る保護基により保護されている核酸塩基が好ましい。
【0023】
アミノ基の保護基としては、特に限定されず、例えば、グリーンズ・プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Greene’s PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS)、第4版、ウィリー・インターサイエンス(Wiley-Interscience)出版(2006年)等に記載されている保護基を挙げることができる。該保護基の具体例としては、ピバロイル基、ピバロイロキシメチル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、1-(ジメチルアミノ)エチリデン基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、および1-(ジメチルアミノ)エチリデン基が好ましい。
【0024】
核酸塩基のカルボニル基も保護されていてもよい。例えば、フェノール、2,5-ジクロロフェノール、3-クロロフェノール、3,5-ジクロロフェノール、2-ホルミルフェノール、2-ナフトール、4-メトキシフェノール、4-クロロフェノール、2-ニトロフェノール、4-ニトロフェノール、4-アセチルアミノフェノール、ペンタフルオロフェノール、4-ピバロイロキシベンジルアルコール、4-ニトロフェネチルアルコール、2-(メチルスルホニル)エタノール、2-(フェニルスルホニル)エタノール、2-シアノエタノール、2-(トリメチルシリル)エタノール、ジメチルカルバミン酸クロライド、ジエチルカルバミン酸クロライド、エチルフェニルカルバミン酸クロライド、1-ピロリジンカルボン酸クロライド、4-モルホリンカルボン酸クロライド、ジフェニルカルバミン酸クロライド等を反応させて、核酸塩基のカルボニル基を保護することができる。ここで、カルボニル基の保護基については、特に導入しなくてもよい場合がある。
【0025】
核酸塩基には、上記した基の他に、核酸塩基が任意の置換基(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシアルキル基、水酸基、アミノ基、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、シアノ、ニトロ等)により任意の位置に1~3個置換されている修飾核酸塩基(例えば、8-ブロモアデニル基、8-ブロモグアニル基、5-ブロモシトシル基、5-ヨードシトシル基、5-ブロモウラシル基、5-ヨードウラシル基、5-フルオロウラシル基、5-メチルシトシル基、8-オキソグアニル基、ヒポキサンチニル基等)も包含される。
【0026】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である。
【0027】
本明細書中、「アルキル(基)」は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。「アルキル(基)」としては、炭素数1以上のアルキル基が挙げられ、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくはC1-10アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-5アルキル基である。炭素数範囲の限定がない場合の好適な具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられ、特にメチル、エチルが好ましい。
本明細書中、「Ca-b」とは、炭素数がa以上b以下(a、bは整数を示す)を意味する。
【0028】
本明細書中、「アラルキル(基)」としては、C7-20アラルキル基が挙げられ、好ましくはC7-16アラルキル基(C6-10アリール-C1-6アルキル基)である。好適な具体例としては、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、ナフチルメチル、1-ナフチルエチル、1-ナフチルプロピル等が挙げられ、特にベンジルが好ましい。
【0029】
本明細書中、「アルコキシ(基)」は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。「アルコキシ(基)」としては、炭素数1以上のアルコキシ基が挙げられ、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくはC1-10アルコキシ基であり、より好ましくはC1-6アルコキシ基である。炭素数範囲の限定がない場合の好適な具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられ、特にメトキシ、エトキシが好ましい。
【0030】
本明細書中、「アシル(基)」は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。「アシル(基)」としては、例えば、C1-6アルカノイル基、C7-13アロイル基等が挙げられる。具体的には、例えば、ホルミル、アセチル、n-プロピオニル、イソプロピオニル、n-ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、バレリル、ヘキサノイル、ベンゾイル、ナフトイル、レブリニル等が挙げられ、これらはそれぞれ置換されていてもよい。
【0031】
本明細書中、「アルケニル(基)」は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。「アルケニル(基)」としては、例えば、C2-6アルケニル基等が挙げられる。具体的には、例えば、ビニル、1-プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等が挙げられる。中でも、C2-4アルケニル基が好ましい。
【0032】
本明細書中、「アルキニル(基)」は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。「アルキニル(基)」としては、例えば、C2-6アルキニル基等が挙げられる。具体的には、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル等が挙げられる。中でも、C2-4アルキニル基が好ましい。
【0033】
本明細書中、「シクロアルキル(基)」は、環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-6シクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシルが特に好ましい。
【0034】
本明細書中、「アリール(基)」は、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等のC6-14アリール基等が挙げられる。中でもC6-10アリール基がより好ましく、フェニルが特に好ましい。
【0035】
本明細書中、「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基である。
【0036】
本明細書中、「C6-14炭化水素環」としては、例えば、C6-10シクロアルカン、C6-10シクロアルケン、C6-14芳香族炭化水素環が挙げられる。
該「C6-10シクロアルカン」としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンが挙げられる。
該「C6-10シクロアルケン」としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。
該「C6-14芳香族炭化水素環」としては、例えば、ベンゼン、ナフタレンが挙げられる。
【0037】
本明細書中、「アルキレン(基)」は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。「アルキレン(基)」としては、炭素数1以上のアルキレン基が挙げられ、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくはC1-10アルキレン基であり、より好ましくはC1-6アルキレン基である。好適な具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンが挙げられ、特にメチレン、エチレンが好ましい。
本明細書中、「リンカー」としては、例えば、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-S-、-SO-、-SO2-、-Si(R’)(R”)O-、-Si(R’)(R”)-(R’、R”は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-22炭化水素基を示す。)等が挙げられる。
【0038】
本明細書中、「置換されていてもよい」における「置換基」には、前記のハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基の他、水酸基、ニトロ基、シアノ基、グアニジル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(アルコキシ部は前記アルコキシ基と同様)、スルホ基、ホスホ基、アルキルチオ基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、アルキルスルフィニル基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、アルキルスルホニル基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、アミノ基、モノアルキルアミノ基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、ジアルキルアミノ基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、オキソ基などが包含される。
【0039】
[オリゴヌクレオチドの製造方法]
本発明の製造方法は、液相法(擬似固相保護基を用いた液相法を含む)および固相法のいずれにも適用することができるが、液相法(擬似固相保護基を用いた液相法を含む)に適用するのが好ましい。
本発明の製造方法は、3’末端から5’末端への方向にオリゴヌクレオチド鎖の伸長を行う態様(以下「3’-5’合成」と略称することがある)および5’末端から3’末端への方向にオリゴヌクレオチド鎖の伸長を行う態様(以下「5’-3’合成」と略称することがある)の両方を包含する。まず、3’-5’合成である本発明の製造方法から説明する。
オリゴヌクレオチドはキラルであってもよい。
【0040】
3’-5’合成
3’-5’合成である本発明の製造方法は、ホスホロチオエート(PS)、ホスフェート(PO)またはH-ホスホネート部位を有する保護オリゴヌクレオチドに酸を添加して5’位水酸基の一時保護基を除去したのち、5’位水酸基がアシル化された副生物を加溶媒分解して脱アシル化する工程を含む。
当該製造方法は、以下の工程(3):脱保護および工程(4):加溶媒分解によって説明される。
【0041】
3’-5’合成である本発明の製造方法はまた、以下の工程(1)~(4)を含む。
(1)5’位水酸基が保護されておらず、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
を縮合させ、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程;
(2):(2-1)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に硫化剤を添加して硫化し、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)を得る工程、または
(2-2)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に酸化剤を添加して酸化し、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)を得る工程;
(3):(3-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)に酸を添加して5’位水酸基の一時保護基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物を得る工程、または
(3-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)に酸を添加して5’位水酸基の一時保護基を除去し、5’位水酸基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物を得る工程;および
(4):(4-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程、または
(4-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程。
【0042】
工程(1)~(4)のサイクルを繰り返すことによって、オリゴヌクレオチド鎖を伸長させることができる。
【0043】
工程(1)(縮合)
本工程は、5’位水酸基が保護されておらず、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)と、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)とを縮合させ、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)を得る工程である。
【0044】
本発明の製造方法が固相法である場合、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)は、例えば、その3’位が当該分野において通常使用されるリンカーを介して固相担体に結合している。
【0045】
本工程の好ましい態様では、
5’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基、3’位水酸基および3’位アミノ基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基および3’位アミノ基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)、或いは
5’位水酸基が保護されておらず、3’位末端のリン酸基の一つのOHが-OLn1-OH(式中、Ln1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)と、
3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基および核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と
が使用される。
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)は、2’位がハロゲン化(例、フッ素化)されていてもよい。
【0046】
Ln1の有機基とは、炭化水素基、または炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換わった基を意味する。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、有機基は、水酸基、アミノ基、オキソ基(=O)等の置換基を有していてもよい。有機基が有し得る水酸基およびアミノ基は、保護基で保護されていることが好ましい。有機基の形状は、鎖状(直鎖状または分岐鎖状)、環状またはこれらの組合せのいずれでもよい。
【0047】
有機基は、細胞に対して機能性を有する基を有していてもよい。細胞に対して機能性を有する基は、有機基の主鎖または側鎖の末端に結合していることが好ましい。細胞に対して機能性を有する基としては、例えば、「化合物の脂溶性を向上させることによって、化合物の細胞膜透過性を向上させる基」、「細胞膜受容体を介して細胞内への化合物の取込みを向上させる基」等が挙げられる。「化合物の脂溶性を向上させることによって、化合物の細胞膜透過性を向上させる基」としては、例えば、コレステロール残基、トコフェロール残基等が挙げられる。「細胞膜受容体を介して細胞内への化合物の取込みを向上させる基」としては、例えば、N-アセチルガラクトサミン残基等が挙げられる。これら細胞に対して機能性を有する基は、WO2017/104836号公報に記載されている。
【0048】
-OLn1-OHの具体例としては、以下のものが挙げられる(下記式中の*は、リン原子との結合位置を示し、Acはアセチル基を示す。)。
【0049】
【0050】
Ln1は、好ましくはC2-6アルキレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0051】
本工程のより好ましい態様では、
5’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド(a)、および
3’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド(b)
が使用される。
【0052】
液相法の場合、本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)の溶液中の濃度は、それらが溶媒に溶解していれば特に限定されないが、好ましくは1~30重量%である。
【0053】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)およびヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)のアミノ基は、上述の保護基で保護されていることが好ましい。該保護基としては、セチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、および1-(ジメチルアミノ)エチリデン基が好ましい。ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)およびヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)が複数のアミノ基を有する場合、アミノ基の保護基は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0054】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)は、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基、3’位水酸基および3’位アミノ基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基および3’位アミノ基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護されている。ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)は、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも一つの基が、前記保護基で保護されていることが好ましく、リボース残基の3’位水酸基またはデオキシリボース残基の3’位水酸基が、前記保護基で保護されていることがより好ましい。
【0055】
ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)は、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護されている。
【0056】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)およびヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)が有する「酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基」、並びにヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)が有していてもよい「酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基」は、それぞれ独立して、固液分離または抽出を効率的に行うために、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する保護基(以下「擬似固相保護基」と略称することがある)であることが好ましい。
【0057】
擬似固相保護基は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)およびヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)(場合によりヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b))に疎水性を付与して、非極性溶媒に対する溶解性を向上させる。また極性溶媒に対する溶解性を低下させることもできる。このような擬似固相保護基で保護されたヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)およびヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)は、非極性溶媒の液相中で縮合反応を行うことができ、その後の固液分離または抽出で反応液に極性溶媒を添加することによって、擬似固相保護基で保護されたオリゴヌクレオチド(e)が沈殿し、その固液分離を行うことができる。または固液分離または抽出で反応液に極性溶媒を添加して、極性溶媒-非極性溶媒間で分層させ、非極性溶媒にオリゴヌクレオチド(e)を移行させることにより、その抽出を行うことができる。このような擬似固相保護基としては、例えば、国際公開第2012/157723号公報、国際公開第2013/122236号、国際公開第2017/104836号、国際公開第2013/179412号、国際公開第2014/077292号、国際公開第2017/086397号、国際公開第2018/203574号、国際公開第2018/212236号に記載されているものを使用することができる。
【0058】
「核酸合成に用いられる保護基」は、核酸合成の分野で通常使用されるものであれば特に制限されず、上記の低分子量の保護基も含まれるが、固液分離による精製を行う場合、擬似固相保護基は、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する保護基であることが好ましく、抽出による精製を行う場合、擬似固相保護基は、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する保護基であることが好ましい。
【0059】
まず、固液分離のために好適な擬似固相保護基について説明する。固液分離のために好適な擬似固相保護基としては、例えば、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基がリンカーを介して結合したC6-14炭化水素環を有する保護基が挙げられる。
【0060】
前記炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基および直鎖状のC10-40アルケニル基から選ばれる基であり、より好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10-30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12-28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14-26アルキル基である。
【0061】
前記リンカーは、好ましくは-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-S-、-SO-、-SO2-、および-Si(R’)(R”)O-、-Si(R’)(R”)-(R’、R”は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-22炭化水素基を示す。)から選ばれ、より好ましくは-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-および-NHC(=O)-から選ばれ、さらに好ましくは-O-である。
【0062】
前記C6-14炭化水素環は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環およびシクロヘキサン環から選ばれ、より好ましくはベンゼン環およびシクロヘキサン環から選ばれ、さらに好ましくはベンゼン環である。
【0063】
固液分離のために好適な擬似固相保護基は、好ましくは、直鎖状のC10-40アルキル基が単結合または-O-を介して結合した炭化水素基が-O-を介して結合したベンゼン環を有する保護基である。
【0064】
次に、抽出のために好適な擬似固相保護基について説明する。「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「分岐鎖」としては、直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であり、C1-6アルキル基が好ましく、C1-4アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が一層好ましい。また、該「分岐鎖」は、1個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0065】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、C2-300アルキル基(好ましくは、C3-100アルキル基、より好ましくは、C3-60アルキル基)、C2-300アルケニル基(好ましくは、C3-100アルケニル基、より好ましくは、C3-60アルケニル基)またはC2-300アルキニル基(好ましくは、C3-100アルキニル基、より好ましくは、C3-60アルキニル基)である。
【0066】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」の部位は、特に限定されず、末端に存在しても(1価基)、それ以外の部位に存在してもよい(例えば2価基)。
【0067】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基、オレイル基、リノリル基、リグノセリル基等の分岐異性体であって、1以上の分岐鎖を有する1価基およびそれらから誘導される2価基が挙げられる。「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」は、好ましくは、3,7,11-トリメチルドデシル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基(以下、2,3-ジヒドロフィチル基ということもある。)、2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン-5-イル基等である。
【0068】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」中に「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」が複数存在する場合には、その各々は同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0069】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」中の「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」以外の部位は任意に設定することができる。例えば-O-、-S-、-CO-、-NH-、-COO-、-OCONH-、-CONH-、-NHCO-、炭化水素基(1価基または2価基)等の部位を有していてもよい。「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基が用いられる。「アルキル基」としては、C1-6アルキル基が好ましく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。「アルケニル基」としては、C2-6アルケニル基が好ましく、例えば、ビニル、1-プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等が挙げられる。「アルキニル基」としては、C2-6アルキニル基が好ましく、例えば、エチニル、プロパルギル、1-プロピニル等が挙げられる。「シクロアルキル基」としては、C3-6シクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。「アリール基」は、C6-14アリール基が好ましく、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等が挙げられる。中でもC6-10アリール基がより好ましく、フェニルが特に好ましい。「アラルキル基」としては、C7-20アラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、ナフチルメチル、1-ナフチルエチル、1-ナフチルプロピル等が挙げられる。中でも、C7-16アラルキル基(C6-10アリール-C1-6アルキル基)がより好ましく、ベンジルが特に好ましい。該「炭化水素基」は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、オキソ基等から選択される置換基で置換されていてもよい。
【0070】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「総炭素数」は、14以上、好ましくは16以上、より好ましくは18以上であり、300以下、好ましくは200以下、より好ましくは160以下である。また、「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における分岐鎖の数は特に制限されないが、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより一層好ましく、8以上がさらに好ましく、10以上がさらに一層好ましい。この分岐鎖の数が多いほど、オリゴヌクレオチド鎖が長鎖になった場合でも、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドは、有機溶媒(特に、非極性溶媒)に対して良好に溶解する。
【0071】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」としては、式(A):
【0072】
【0073】
[式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
R14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;および
X1は、単結合またはC1-4アルキレン基を示す。
但し、R14およびR15が共に水素原子であることはない。]
で表される同一または異なる2価の基を有する基が好ましい。
【0074】
式(A)で表される2価の基を有する基としては、例えば、下記式(B)~(D)のいずれかで表される基が挙げられる。なお、式(B)~(D)における各記号の定義中の炭素数、繰り返し単位の数(m1、n0~n2)等は便宜上示されたものであって、総炭素数が14以上(好ましくは16以上、より好ましくは18以上)、300以下(好ましくは200以下、より好ましくは160以下)になるよう上記した定義の範囲内で適宜変更することができる。以下、式(B)~(D)について、順に説明する。
【0075】
式(B)は、以下の通りである。
【0076】
【0077】
[式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
R16およびR17は、水素原子を示すか、または一緒になって=Oを示し;
n0は、2~40の整数を示し;
n0個のR18およびR19は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;
n0個のX2は、それぞれ独立して、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;
R20は、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;および
R21は、C1-4アルキル基を示す。
但し、R18およびR19が共に水素原子であることはなく、且つn0が2の場合には、R20はC1-4アルキル基を示す。]
【0078】
式(B)の基としては、
R16およびR17は、共に水素原子であり;
n0は、2~40の整数であり;
n0個のR18およびR19は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n0個のX2は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;および
R20は、水素原子、メチル基またはエチル基である;
基(但し、R18およびR19が共に水素原子であることはなく、且つn0が2の場合には、R20はメチルまたはエチル基を示す。)が好ましい。
【0079】
より好適な式(B)の基は、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基等の炭素数14~160の分岐異性体であり、中でも2,3-ジヒドロフィチル基、3,7,11-トリメチルドデシル基、2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイル基が特に好ましい。
【0080】
式(C)は、以下の通りである。
【0081】
【0082】
[式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
m1個のOR22は、それぞれ独立して、式(B)で表される基により置換された水酸基を示し;および
m1は、1~3の整数を示す。]
なお、式(C)中の「式(B)で表される基」は、その*がO(即ち、隣接原子)との結合位置を示すこと以外は上述した通りである。
【0083】
式(C)の基において、R22は、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基等の炭素数14~30の分岐異性体である基がより好ましく、中でも2,3-ジヒドロフィチル基、3,7,11-トリメチルドデシル基が特に好ましい。
【0084】
式(D)は、以下の通りである。
【0085】
【0086】
[式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
n1は、1~10の整数を示し;
n2は、1~10の整数を示し;
n1個のR26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;
n1個のX3は、それぞれ独立して、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;
n2個のR28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;
n2個のX5は、それぞれ独立して、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;
X4は、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;および
R23、R24、R25、R30、R31およびR32は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示す。
但し、R26およびR27、および/またはR28およびR29が共に水素原子であることはなく、且つn1+n2が2の場合には、R23、R24およびR25の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示すか、またはR30、R31およびR32の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示す。]
【0087】
式(D)の基としては、
n1は、1~5の整数であり;
n2は、1~5の整数であり;
n1個のR26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n1個のX3は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
n2個のR28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n2個のX5は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
X4は、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;および
R23、R24、R25、R30、R31およびR32は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基である;
基(但し、R26およびR27、および/またはR28およびR29が共に水素原子であることはなく、且つn1+n2が2の場合には、R23、R24およびR25の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示すか、またはR30、R31およびR32の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示す。)がより好ましい。
【0088】
特に好適な式(D)の基としては、
n1は、1~5の整数であり;
n2は、1~5の整数であり;
n1個のR26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり;
n1個のX3は、それぞれ独立して、単結合またはメチレン基であり;
n2個のR28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり;
n2個のX5は、それぞれ独立して、単結合またはメチレン基であり;
X4は、単結合またはメチレン基であり;および
R23、R24、R25、R30、R31およびR32は、メチル基である;
基(但し、R26およびR27、および/またはR28およびR29が、共に水素原子であることはない)が挙げられる。
【0089】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」の具体例として、以下の基が挙げられる。各基中の*は結合位置を示し;式中のn3は、3以上の整数を示し;n4は、該基の総炭素数が14以上300以下になるように適宜設定され得る。
【0090】
【0091】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」の好ましい具体例として、以下の基が挙げられる:
3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基(別名:2,3-ジヒドロフィチル基);
3,7,11-トリメチルドデシル基;
2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイル基;
3,4,5-トリ(3’,7’,11’,15’-テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基;および
3,5-ジ(3’,7’,11’,15’-テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基。
【0092】
擬似固相保護基は、より好ましくは、下記式(g-I)で表される基(以下「擬似固相保護基(g-I)」と略称することがある。)である。
**L-Y-Z (g-I)
[式中、
**は保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【0093】
【0094】
(式中、
*は、Yとの結合位置を示し;
**は前記と同義であり;
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-22炭化水素基を示し;
L1は、置換されていてもよい2価のC1-22炭化水素基を示し;
L2は、単結合を示すか、または***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、C1-22アルキレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素原子若しくはC1-22アルキル基を示すか、またはR3およびR5が一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し;
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し;および
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【0095】
【0096】
[式中、
*は、結合位置を示し;
R6は、水素原子であるか、あるいはRbが、下記式(a3)で表される基である場合には、環Aまたは環BのR6は、R8と一緒になって単結合または-O-を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
kは、1~4の整数を示し;
k個のQは、それぞれ独立して、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-を示し;
k個のR7は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子を示し;および
Rbは、水素原子、または式(a3):
【0097】
【0098】
(式中、
*は、結合位置を示し;
jは、0~4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
j個のR9は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
R8は、水素原子を示すか、または環Aまたは環BのR6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;および
環Cは、j個のQR9に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基を示す。]
【0099】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9が有する炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基は、それぞれ独立して、好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基および直鎖状のC10-40アルケニル基から選ばれる基であり、より好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10-30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12-28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14-26アルキル基である。
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9が有するリンカーは、それぞれ独立して、好ましくは-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-であり、より好ましくは-O-である。
【0100】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9の「炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基」は、好ましくは、直鎖状のC10-40アルキル基、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基である。
【0101】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9の一態様である「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」は、それぞれ独立して、好ましくは上記式(A)で表される2価の基を有する基であり、より好ましくは上記式(B)~(D)のいずれかで表される基であり、さらに好ましくは上記式(B)で表される基であり、特に好ましくは2,3-ジヒドロフィチル基、3,7,11-トリメチルドデシル基、または2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイル基である。
【0102】
式(a2)、式(a2’)、式(a2”)および式(a3)中のQは、好ましくは-O-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-であり、より好ましくは-O-である。
【0103】
式(g-I)において、式(a1)で表されるLの好ましい態様は、
L1が、2価のC1-22炭化水素基、またはCH2-O-1,4-フェニレン-O-CH2であり;および
L2が、単結合であるか、または***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、C1-6アルキレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して水素原子、若しくは置換されていてもよいC1-6アルキル基を示すか、またはR3およびR5が一緒になって、置換されていてもよいC1-6アルキレン基を形成していてもよい。)で表される基である;
基である。
【0104】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、2価のC1-22炭化水素基であり;および
L2が単結合である;
基である。
【0105】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、エチレン基であり;および
L2が、***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、C1-22アルキレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素原子若しくはC1-22アルキル基を示すか、またはR3およびR5が一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基である;
基である。
【0106】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、エチレン基であり;および
L2が、***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、N(R3)-R4-N(R5)部分が、1,4-ピペラジンジイル基を形成する。)で表される基である;
基である。
【0107】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、エチレン基であり;および
L2が、***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、ペンチレン基、またはヘキシレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。)で表される基である;
基である。
【0108】
式(a1)で表されるLの特に好ましい態様は、入手が容易で安価なスクシニル基である。
【0109】
次に、式(g-I)において式(a1’)で表されるLについて説明する。
式(a1’)中のL1は、好ましくは2価のC6-10芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニレン基である。
式(a1’)中のL2は、好ましくは単結合である。
式(a1’)中のL1およびL2の好ましい組合せとしては、L1が2価のC6-10芳香族炭化水素基であり、L2が単結合である、組合せである。式(a1’)中のL1およびL2のより好ましい組合せとしては、L1がフェニレン基であり、L2が単結合である、組合せである。
式(a1’)中のR1およびR2は、それぞれ独立して、好ましくはC1-22アルキル基であり、より好ましくはC1-10アルキル基である。
【0110】
式(a1’)で表されるLの好ましい態様は、
R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-22アルキル基であり;
L1が、2価のC6-10芳香族炭化水素基であり;および
L2が、単結合である;
基である。
【0111】
式(a1’)で表されるLの別の好ましい態様は、
R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり;
L1が、フェニレン基であり;および
L2が、単結合である;
基である。
【0112】
式(g-I)におけるYがNRである場合、前記Rは、好ましくは、水素原子、C1-6アルキル基またはC7-16アラルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル、エチルまたはベンジルであり、さらに好ましくは水素原子である。Yは、好ましくは単結合、酸素原子またはNRであり、より好ましくは単結合または酸素原子である。
【0113】
式(g-I)におけるZは、好ましくは、式(a2)または式(a2”)で表される基であり、より好ましくは式(a2”)で表される基である。式(a2)で表されるZ(即ち、ベンジル基の構造)を有する擬似固相保護基に比べて、式(a2”)で表されるZ(即ち、シクロヘキシルメチル基の構造)を有する擬似固相保護基を使用することにより、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)等の非極性溶媒に対する溶解性を飛躍的に向上することができる。それによって、本発明の製造方法をより高濃度で実行でき、生産性が大きく向上する。
【0114】
式(a2)において、R6は水素原子であることが好ましい。また、式(a2)において、RaおよびRbが、水素原子であるか、または一緒になってオキソ基を形成することが好ましい。
【0115】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である、
基である。
【0116】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Aが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、
基である。
【0117】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;および
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基であり、R6およびR8が、共に水素原子である。)で表される基である;
基である。
【0118】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;および
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基であり、R8は、R6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Aおよび環Cと共に縮合環を形成する。)で表される基である;
基である。
【0119】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である;
基である。
【0120】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Aが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい;
基である。
【0121】
式(a2”)において、R6は水素原子であることが好ましい。また、式(a2”)において、RaおよびRbが、水素原子であるか、または一緒になってオキソ基を形成することが好ましい。
【0122】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である;
基である。
【0123】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Bが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい;
基である。
【0124】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、C10-40アルキル基であり、R6およびR8が、共に水素原子である。)で表される基である;
基である。
【0125】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基であり、R8は、R6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Bおよび環Cと共に縮合環を形成する。)で表される基である;
基である。
【0126】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である;
基である。
【0127】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Bが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい;
基である。
【0128】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、好ましくは、
Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、L1が、2価のフェニレン基であり、L2が、単結合である。)であり;および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシシクロへキシル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)シクロへキシル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)シクロへキシル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である;
基であるか、または
L-Yが、単結合またはスクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり;および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基である;
基である。
【0129】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、より好ましくは、
Lが、スクシニル基であり;および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシシクロへキシル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)シクロへキシル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)シクロへキシル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である;
基であるか、または
L-Yが、単結合またはスクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり;および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基である;
基である。
【0130】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、さらに好ましくは、
Lが、スクシニル基であり;および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である;
基であるか、または
L-Yが、単結合またはスクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり;および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である;
基である。
【0131】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、特に好ましくは、
Lが、スクシニル基であり;および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基またはフェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基である;
基であるか、または
L-Yが、スクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり;および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である;
基である。
【0132】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、最も好ましくは、
Lが、スクシニル基であり;および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、または3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基である;
基であるか、または
L-Yが、スクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり;および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である;
基である。
【0133】
抽出のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、好ましくは、2-{2,4-ジ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;3,5-ジ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;2-{1-[(2-クロロ-5-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;2-{3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{2-[3’,4’,5’-トリ(2”,3”-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]-4-メトキシベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)-2-メトキシベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)-2-メチルベンジルオキシスクシニル基;2-{4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)-2-メチルベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;4-[2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイルアミノ]ベンジルオキシスクシニル基;2-{4-[2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイルアミノ]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;4-(3,7,11-トリメチルドデシルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;2-{4-(3,7,11-トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{3,5-ジ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{1-[2,3,4-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)フェニル]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{1-[4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)フェニル]-4’-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;3,4,5-トリス[3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル]ベンジルオキシスクシニル基;または2-{3,4,5-トリス[3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基である。
【0134】
擬似固相保護基を形成するために用いられる式:Z-Y-Hで表されるアルコール化合物またはアミン化合物は、例えば、国際公開第2017/104836号の段落[0186]~[0221]記載の工程またはそれに準じた工程によって製造することができる。
【0135】
本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)としては、例えば、下記式(a-I)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0136】
【0137】
[式中、
mは、0以上の整数を示し;
m+1個のBaseは、それぞれ独立して、保護されていてもよい核酸塩基を示し;
m+1個のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、または2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基を示し;
m+1個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
m個のR10は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子を示し;
m個のRp1は、それぞれ独立して、リン酸基の保護基を示し;
L、YおよびZは、前記と同義である。]
【0138】
以下では、式(a-I)で表される化合物を「化合物(a-I)」と略称することがある。他の式で表される化合物も同様に略称することがある。
【0139】
核酸塩基のアミノ基は、保護基で保護されていることが好ましい。該保護基としては、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、および=NC(R11)-N(R12)(R13)基(式中、R11は、メチル基を示し、R12およびR13は、それぞれ独立してC1-5アルキル基を示すか、またはR11およびR12が一緒になって、それらが結合する炭素原子および窒素原子と共に5員または6員の含窒素炭化水素環を形成していてもよい。)が好ましい。なお、前記=NC(R11)-N(R12)(R13)基としては、例えば、1-(ジメチルアミノ)エチリデン基が挙げられる。化合物(a-I)が複数のアミノ基を有する場合、アミノ基の保護基は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0140】
mが0である場合、化合物(a-I)はヌクレオシドであり、mが1以上である場合、化合物(a-I)はオリゴヌクレオチドである。mは、49以下が好ましく、29以下がより好ましく、19以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましく、2以下が最も好ましい。
【0141】
Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0142】
Xの保護されていてもよい水酸基の保護基としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基を挙げることができる。具体的には、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、シアノエチル基、シアノエトキシメチル基、フェニルカルバモイル基、1,1-ジオキソチオモルホリン-4-チオカルバモイル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(Tom)基、1-(4-クロロフェニル)-4-エトキシピペリジン-4-イル(Cpep)基等を挙げることができる。保護されていてもよい水酸基の保護基は、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、またはtert-ブチルジメチルシリル基であることが好ましく、経済性および入手の容易さの観点から、tert-ブチルジメチルシリル基であることが特に好ましい。
【0143】
Xの「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、ヌクレオシドの2位炭素原子および4位炭素原子と結合する限り特に限定はない。この2価の有機基としては、例えば、置換されていてもよいC2-7アルキレン基、並びに-O-、-NR33-(R33は水素原子またはC1-6アルキル基を示す)、-S-、-CO-、-COO-、-OCONR34-(R34は水素原子またはC1-6アルキル基を示す)および-CONR35-(R35は水素原子またはC1-6アルキル基を示す)から選ばれる2価のリンカーと、置換されていてもよいC1-7アルキレン基とから構成される2価の有機基等が挙げられる。C1-7アルキレン基およびC2-7アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチリデン基(CH2=)が挙げられる。
【0144】
「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、置換されていてもよいC2-7アルキレン基、-ORi-(Riは4位炭素原子と結合するC1-6アルキレン基を示す)、-O-NR33-Rj-(Rjは4位炭素原子と結合するC1-6アルキレン基を示し、R33は前記と同義を示す)、-O-Rk-O-Rl-(RkはC1-6アルキレン基を示し、Rlは4位炭素原子と結合架橋するC1-6アルキレン基を示す)が好ましく、-ORi-(Riは前記と同義を示す)、-O-NR33-Rj-(RjおよびR33は前記と同義を示す)、-O-Rk-O-Rl-(RkおよびRlは前記と同義を示す)がより好ましい。Ri、Rj、RkおよびRlで示されるC1-6アルキレン基としては、それぞれ独立して、メチレン基またはエチレン基が好ましい。
【0145】
「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-NR33-CH2-(R33は前記と同義を示す)、-O-CH2-O-CH2-がより好ましく、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-NH-CH2-、-O-N(CH3)-CH2-、-O-CH2-O-CH2-(それぞれ、左側が2位炭素原子に結合し、右側が4位炭素原子に結合する。)がさらに好ましい。
【0146】
m+1個のXは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、または保護されていてもよい水酸基であり、より好ましくは水素原子または保護されていてもよい水酸基である。
【0147】
Rp1のリン酸基の保護基としては、塩基性条件下で除去可能であり、リン酸基の保護基として用いられるものであれば、特に限定はされないが、-CH2CH2WG(WGは、電子吸引性基を示す。)で表される基が好ましい。
WGの電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基等が挙げられ、好ましくはシアノ基である。
【0148】
m個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
m+1個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
L、YおよびZの説明は、前記の通りである。
【0149】
化合物(a-I)は、好ましくは下記式(a-i)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0150】
【0151】
化合物(a-I)は、自体公知の方法またはこれに準ずる方法で製造することができる。例えば、mが0であり、Xn1が酸素原子であり、Lがスクシニル基である化合物(a-I)は、例えば、次式のように、まず、塩基存在下で5’位水酸基が一時保護基Q”により保護されたヌクレオシド(i)とコハク酸無水物とを反応させて、ヌクレオシド(ii)を合成し、次いで、縮合剤の存在下、得られたヌクレオシド(ii)と化合物Z-Y-Hとを縮合させて、3’位および5’位水酸基が保護されたヌクレオシドを合成した後、一時保護基Q”を酸で除去することによって、製造することができる。
【0152】
【0153】
ヌクレオシド(i)からヌクレオシド(ii)への転化反応は、反応に不活性な溶媒中で行うのが有利である。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、またはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系溶媒、またはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、およびこれらの混合溶媒が好ましい。中でもジクロロメタン、またはクロロホルムが特に好ましい。
【0154】
ヌクレオシド(ii)の合成に使用される塩基としては、特に限定されないが、有機塩基が好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
【0155】
ヌクレオシド(iii)を合成するための縮合反応は、反応に不活性な溶媒中で行うのが有利である。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系溶媒、またはこれらの組合せが好ましい。中でもジクロロメタン、クロロホルムが特に好ましい。
【0156】
ヌクレオシド(ii)とZ-Y-Hとの縮合反応に使用する縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N-エチル-N’-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-1H-ベンゾトリアゾリウム-3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)等が挙げられる。中でもHBTU、HCTU、N-エチル-N’-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)が好ましい。
【0157】
縮合剤の使用量は、ヌクレオシド(ii)1モルに対して、例えば1~10モル、好ましくは1~5モルである。また、Z-Y-Hの使用量は、ヌクレオシド(ii)1モルに対して、例えば1~10モル、好ましくは1~5モルである。反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、-10℃~50℃が好ましく、0℃~30℃がより好ましい。反応時間は、例えば30分~70時間である。
【0158】
ヌクレオシド(iii)の一時保護基Qの除去(脱保護)は、本発明の工程(4)と同様にして行うことができる。
【0159】
Lがスクシニル基以外である化合物(a-I)も、上記合成法におけるコハク酸無水物に代えて、対応する酸無水物、対応するジカルボン酸ハライド、対応するジカルボン酸の活性エステル等を用いて、同様の反応を行うことにより合成することができる。また、Xn1がNHである化合物(a-I)は、上記合成法におけるヌクレオシド(i)に代えて3’位水酸基がアミノ基であるヌクレオシドを用いて、同様の反応を行うことにより合成することができる。また、mが1以上である化合物(a-I)は、mが0である化合物(a-I)を出発原料として用いて5’末端伸長プロセスを繰り返すことによって合成することができる。
【0160】
化合物(a-i)の中で、式(a-II)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が好ましい。
【0161】
【0162】
[式中、
m、m個のBase、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
R11は、メチル基を示し、R12およびR13は、それぞれ独立してC1-5アルキル基を示すか、またはR11およびR12が一緒になって、それらが結合する炭素原子および窒素原子と共に5員または6員の含窒素炭化水素環を形成していてもよい。]
【0163】
式(a-II)において、m個のRp1が、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基であることが好ましい。
式(a-II)において、mが0であることが好ましい。即ち、化合物(a-II)の中で、式(a-III)で表される化合物(即ち、ヌクレオシド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0164】
【0165】
式(a-II)および式(a-III)において、R11がメチル基であり、R12およびR13が、それぞれ独立してC1-5アルキル基であることが好ましく、R11、R12およびR13が、メチル基であることがより好ましい。
式(a-II)および式(a-III)における他の記号の説明は、前記の通りである。
【0166】
本発明において、最初の残基がアデニンを核酸塩基として有するオリゴヌクレオチドを製造する場合、出発物質であるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)として化合物(a-II)(特に、化合物(a-III))を使用することで、ブランチ体の生成等を抑制できる。ここで、ブランチ体とは、目的化合物の核酸塩基におけるアミノ基の保護基が脱落し、該アミノ基とモノマーとが結合して生成した副生成物をいう。
【0167】
また、化合物(a-i)の中で、式(a-IV)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が好ましい。
【0168】
【0169】
[式中、
m、m+1個のBase、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、LおよびYは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
Z’は、式(a2”):
【0170】
【0171】
[式中、
*は、結合位置を示し;
R6は、水素原子であるか、あるいはRbが、下記式(a3)で表される基である場合には、R8と一緒になって単結合または-O-を示して、環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
kは、1~4の整数を示し;
k個のQは、それぞれ独立して、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-を示し;
k個のR7は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
環Bは、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子を示し;および
Rbは、水素原子、または式(a3):
【0172】
【0173】
(式中、*は、結合位置を示し;
jは、0~4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
j個のR9は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
R8は、水素原子を示すか、またはR6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;および
環Cは、j個のQR9に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基を示す。]
【0174】
式(a-IV)において、m個のRp1が、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基であることが好ましい。
式(a-IV)において、mが0であることが好ましい。
式(a-IV)における他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-IV)の中で、下記式(a-V)で表される化合物(即ち、ヌクレオシド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0175】
【0176】
化合物(a-I)の中でも、擬似固相保護基中に式(a2”)で表されるZ’(即ち、シクロヘキシルメチル基の構造)を有する化合物(a-IV)(特に、化合物(a-V))は、擬似固相保護基中に式(a2)で表されるZ(即ち、ベンジル基の構造)を有する他の化合物(a-I)に比べて、非極性溶媒に対する溶解性が高い。そのため、化合物(a-IV)(特に、化合物(a-V))を使用することによって、本発明の製造方法をより高濃度で実行でき、生産性が大きく向上する。式(a2”)で表されるZ’の説明は、上述の式(a2”)で表されるZの説明と同じである。
【0177】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、L1が、2価のフェニレン基であり、L2が、単結合である。)であり;および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である;
組合せが、固液分離のために好ましい。
【0178】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であり;および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である;
組合せが、固液分離のためにより好ましい。
【0179】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であり;および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基である;
組合せが、固液分離のためにさらに好ましい。
【0180】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であり;および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基である;
組合せが、固液分離のために特に好ましい。
【0181】
また、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)としては、例えば、下記式(a-VI)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0182】
【0183】
[式中、
m+1個のBase1の少なくとも一つは、-L-Y-Zで保護されている核酸塩基を示し、残りは保護されていてもよい核酸塩基を示し;
m個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Xn2は、保護されている水酸基またはアミノ基を示し;
m、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0184】
式(a-VI)中、m+1個のBase1の少なくとも一つは、-L-Y-Zで保護されている核酸塩基である。核酸塩基および-L-Y-Zの説明は、前記の通りである。
また、保護されていてもよい核酸塩基の説明も、前記の通りである。
【0185】
保護されている水酸基(Xn2)の保護基としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基を挙げることができる。具体的には、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシエチル基、、エトキシエチル基、シアノエチル基、シアノエトキシメチル基、フェニルカルバモイル基、1,1-ジオキソチオモルホリン-4-チオカルバモイル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(Tom)基、1-(4-クロロフェニル)-4-エトキシピペリジン-4-イル(Cpep)基等を挙げることができる。水酸基の保護基は、好ましくは、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基またはtert-ブチルジメチルシリル基であり、経済性および入手の容易さの観点から、より好ましくはtert-ブチルジメチルシリル基である。なお、水酸基の保護および脱保護は周知であり、例えば上述のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシスに記載の方法によって行うことができる。
【0186】
保護されているアミノ基(Xn2)の保護基としては、特に限定されず、例えば、グリーンズ・プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Greene’s PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS)、第4版、ウィリー・インターサイエンス(Wiley-Interscience)出版(2006年)等に記載されている保護基を挙げることができる。各保護基の具体例としては、ピバロイル基、ピバロイロキシメチル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、1-(ジメチルアミノ)エチリデン基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を挙げることができる。アミノ基の保護基は、好ましくは、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、または1-(ジメチルアミノ)エチリデン基である。なお、アミノ基の保護および脱保護は周知であり、例えば上述のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシスに記載の方法によって行うことができる。
【0187】
式(a-VI)中のm個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
式(a-VI)中のXn2は、好ましくは保護されている水酸基である。
式(a-VI)中のm個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(a-VI)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-VI)は、好ましくは下記式(a-vi)で表される化合物である。
【0188】
【0189】
[式中、
Rn4は、水酸基の保護基を示し;
m、m+1個のBase1、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0190】
式(a-vi)中のRn4の説明は、Xn2における水酸基の保護基の説明と同じである。
式(a-vi)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
【0191】
また、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)としては、例えば、下記式(a-VII)で表される化合物が挙げられる。
【0192】
【0193】
[式中、
m+1個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Ln1は有機基を示し;
m、m+1個のBase、m+1個のX、m+1個のR10、m+1個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0194】
式(a-VII)中のLn1は、好ましくはC2-6アルキレン基、より好ましくはエチレン基である。
式(a-VII)中のm+1個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
式(a-VII)中のm+1個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(a-VII)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-VII)は、好ましくは下記式(a-vii)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0195】
【0196】
化合物(a-VII)は、自体公知の方法またはこれに準ずる方法で製造することができる。mが0であり、Xn1が酸素原子であり、Lがスクシニル基である化合物(a-VII)は、例えば、以下のような工程によって製造することができる。
(i)化合物Z-Y-Hとコハク酸無水物とを縮合させて、Z-Y-CO(CH2)2COOHを製造する、
(ii)得られたZ-Y-CO(CH2)2COOHを、縮合剤の存在下、式:HO-Ln1-OQ”で表される化合物(前記式中、Q”は一時保護基を示し、Ln1は有機基を示す。)と縮合させた後、脱保護して、Z-Y-CO(CH2)2CO-O-Ln1-OHを製造する、
(iii)得られたZ-Y-CO(CH2)2CO-O-Ln1-OHにホスホロアミダイト化されたヌクレオシドを反応させて、mが0であり、Xn1が酸素原子であり、Lがスクシニル基である化合物(a-VII)を製造する。
上述のような縮合反応および脱保護反応は当業者にとって周知であり、当業者は、適宜条件を設定して行うことができる。
【0197】
Lがスクシニル基以外である化合物(a-VII)も、コハク酸無水物に代えて、対応する酸無水物、対応するジカルボン酸ハライド、対応するジカルボン酸の活性エステル等を用いて、同様の反応を行うことにより製造することができる。また、Xn1がNHである化合物(a-VII)は、3’位アミノ基がホスホロアミダイト化されたヌクレオシドを用いて、同様の反応を行うことにより製造することができる。また、mが1以上である化合物(a-VII)は、mが0である化合物(a-VII)を出発原料として用いて伸長プロセスを繰り返すことによって製造することができる。
【0198】
本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)は、好ましくは化合物(a-I)、化合物(a-VI)または化合物(a-VII)であり、より好ましくは化合物(a-i)、化合物(a-vi)または化合物(a-vii)であり、より一層好ましくは化合物(a-i)または化合物(a-vi)であり、さらに好ましくは化合物(a-i)であり、さらに一層好ましくは化合物(a-II)または化合物(a-IV)であり、特に好ましくは化合物(a-III)または化合物(a-V)である。
【0199】
本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)は、5’位水酸基が一時保護基で保護されている。水酸基の一時保護基としては、酸性条件下で脱保護が可能であり、且つ水酸基の保護基として用いられるものであれば、特に限定はされないが、例えば、トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1-フェニルメチル基(ジメトキシトリチル基)等のビス(C1-6アルコキシ)トリチル基、1-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジフェニルメチル基(モノメトキシトリチル基)等のモノ(C1-18アルコキシ)トリチル基等を挙げることができる。これらの中でも、脱保護のしやすさ、入手の容易さの観点から、水酸基の一時保護基は、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基であることが好ましく、ジメトキシトリチル基であることがより好ましい。
【0200】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)は、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法またはオキサザホスホリジン法の公知の方法に従い合成することができる。
ホスホロアミダイト法については、例えば、M. H. Caruthers et al., Method in Enzymology 1987, 154, 287-313; S. L. Beaucage and M. H. Caruthers, Tetrahedron Letters 1981, 22, 1859-1862;日本化学会編第5版 実験化学講座16 有機化合物IV 2010年 377~381頁などを参照して実施することができる。
例えば、ホスホロアミダイト法で用いるホスホロアミダイト化試薬は市販されており、容易に入手することができる。例えば、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒中で、3’位アミノ基を有するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)と、2-シアノエチル N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトとを反応させることによって、3’位アミノ基がホスホロアミダイト化されたヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)を合成することができる。
H-ホスホネート法については、例えば、B. F. Froehler, Protocols for Oligonucleotides and Analogs (Chapter 4) 1993年,63-80頁;日本化学会編第5版 実験化学講座16 有機化合物IV 2010年 381~384頁などを参照して実施することができる。
ジハロホスフィン法については、例えば、日本化学会編第4版 実験化学講座22 金属錯体遷移金属クラスター 1999年 426~431頁などを参照して実施することができる。
オキサザホスホリジン法を用いる修飾については、例えば、N.Oka et al.,J.Am.Chem.Soc.,2008年,130,16031-16037頁; N.Oka et al.,Organic Letters.,2009年,Vol.11,No.4,967-970頁;WO2011/08682などを参照して実施することができる。
【0201】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)の製造方法の一例として、以下、3’位水酸基を有するホスホロアミダイト化されたヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)(以下「化合物(b)」と略称することがある)から、3’位水酸基がホスホロアミダイト化されたヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)(以下「ホスホロアミダイト化された化合物(b)」と略称することがある)を製造する方法を説明する。
【0202】
この製造方法は、三価のリン上に二つの窒素置換基を有するホスフィチル化剤前駆体をモノ選択的に活性化してホスフィチル化剤とし、該ホスフィチル化剤を用いて、塩基存在下、化合物(b)の3’位水酸基をホスフィチル化する反応を含む。即ち、この製造方法は、以下の工程(P1)および工程(P2)を含むホスホロアミダイト化された化合物(b)の製造方法である。
(P1)溶媒中で、下記式(p1):
【0203】
【0204】
[式中、
Xp1は、酸素原子または硫黄原子を示し;
Rp2は、芳香環、水酸基の保護基またはチオール基の保護基を示し;
Rp3およびRp4は、それぞれ独立してアルキル基を示し、該アルキル基は、隣接する窒素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
で表されるホスフィチル化剤前駆体に活性化剤を作用させて、下記式(p2):
【0205】
【0206】
[式中、
Zaは活性化剤に由来する基を示し;
他の記号は、前記と同義である。]
で表されるホスフィチル化剤を調製する工程、および
(P2)溶媒中で、化合物(b)に、塩基の存在下、工程(P1)で得られたホスフィチル化剤を作用させて、化合物(b)の3’位水酸基をホスフィチル化する工程。
【0207】
工程(P1)
式(p1)中、Rp2の芳香環としては、フェニル、4-ニトロフェニル、2,4-ジニトロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、2-ブロモフェニル、4-ブロモフェニル、2-メチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル等が挙げられ、好ましくは4-ニトロフェニルである。
【0208】
式(p1)中、Rp2における水酸基の保護基またはチオール基の保護基としては、例えば、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル);シアノ化C1-6アルキル基(例、2-シアノエチル、2-シアノ-1,1-ジメチルエチル);置換シリル基で置換されたエチル基(例、2-メチルジフェニルシリルエチル、2-トリメチルシリルエチル、2-トリフェニルシリルエチル);ハロゲン化C1-6アルキル基(例、2,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリブロモエチル、2,2,2-トリフルオロエチル);C2-6アルケニル基(例、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-プロペニル);C3-6シクロアルキル基(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル);シアノ化C1-6アルケニル基(例、2-シアノブテニル);C7-11アラルキル基(例、ベンジル、α-ナフチルメチル、β-ナフチルメチル);C6-10アリール基(例、フェニル、インデニル、ナフチル)が挙げられ、より好ましくはシアノ化C1-6アルキル基であり、特に好ましくは2-シアノエチルである。
【0209】
式(p1)中、Rp3およびRp4は、それぞれ独立してアルキル基を示すが、該アルキル基は隣接する窒素原子と一緒になって環(例、ピロリジン)を形成してもよい。Rp3およびRp4は、好ましくは、いずれもイソプロピル基である。
ホスフィチル化剤前駆体としては、下記化合物が特に好ましい。
【0210】
【0211】
活性化剤をホスフィチル化剤前駆体に作用させることで、ホスフィチル化剤が得られる。
活性化剤は、ホスホロアミダイト上のアミンを置換して、水酸基等との反応性置換基を付与し得る酸である。具体的には、pKa 5以上の弱酸性活性化剤、より好ましくはpKa 5以上のアゾール系化合物およびそのC上置換体から選ばれる少なくとも1種である。アゾール系化合物としては、テトラゾール、トリアゾール、イミダゾール等が挙げられ、C上置換体としては、ジシアノイミダゾール、ビス(トリフルオロメチル)イミダゾール、ジクロロイミダゾール等のハロゲン原子でジ置換された化合物が用いられる。特に好ましくはジシアノイミダゾールおよびジクロロイミダゾールである。
【0212】
式(p2)において、Zaは活性化剤に由来する基であり、例えば活性化剤から水素原子を1つ除いた基であり、活性化剤としてジシアノイミダゾールを用いた場合、Zaはジシアノイミダゾリルであり、活性化剤としてジクロロイミダゾールを用いた場合、Zaはジクロロイミダゾリルである。
【0213】
本工程で使用する溶媒は、ホスフィチル化剤前駆体を溶解し、活性化剤が難溶性となるものであれば特に限定されないが、酸性または塩基性の官能基を通常有さない。ここで「難溶性」とは、溶媒中の活性化剤の濃度が6μM以下であることを目安とする。具体的には、トルエン、ベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、四塩化炭素等が挙げられ、好ましくはトルエン、シクロヘキサン、特に好ましくはトルエンである。
【0214】
本工程の反応温度および反応時間は、基質・生成物が析出しない限り特に限定されないが、それぞれ、通常、40℃以下、好ましくは0~30℃、より好ましくは5~15℃、特に好ましくは10℃程度であり、通常0.5~24時間、好ましくは1~12時間、より好ましくは1~6時間である。
【0215】
活性化剤とホスフィチル化剤前駆体との使用量は、ホスフィチル化剤前駆体が活性化される限り特に限定されないが、ホスフィチル化剤前駆体に対して、通常過剰量で、好ましくは1.5~10モル当量で用いられる。過剰量の活性化剤をホスフィチル化剤前駆体に溶媒中で作用させることで、ホスフィチル化剤前駆体を活性化すると同時に、ホスフィチル化時に副生するジイソプロピルアミンを活性化剤との塩として沈殿させる。従って、必要に応じて、工程(P1)と下記工程(P2)との間に、沈殿等の不溶物を分離する工程を実施することができ、また、実施することが好ましい。
【0216】
工程(P2)
本工程では、溶媒中で、化合物(b)に、塩基の存在下、工程(P1)で得られたホスフィチル化剤を作用させて、化合物(b)の3’位水酸基をホスフィチル化し、ホスホロアミダイト化された化合物(b)を製造する。
【0217】
本工程で使用する溶媒としては、工程(P1)で使用した溶媒と同様のもの(例えば、トルエン)を用いることができる。また、本工程で使用する溶媒として、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。トルエンとジクロロメタンの混合溶媒が好ましい。
【0218】
本工程で使用する塩基は、反応により生じた酸(活性化剤)の中和に十分な塩基性を有し、且つリン酸上の脱シアノエチルを引き起こさずP-N結合を形成しない塩基が選択される。そのような塩基としては、具体的には、pKa 5~8の塩基、好ましくは、コリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアニリン等が用いられる。pKa 8より高い塩基を用いると脱シアノ化が顕著となり、pKa 5未満の塩基を用いると反応の進行に伴い再生した活性化剤の捕捉が不十分となり副生物が生じる。
【0219】
工程(P2)では、ホスフィチル化剤前駆体は添加してもしなくてもよいが、添加することが好ましい。
【0220】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)としては、例えば、下記式(b-I)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0221】
【0222】
[式中、
qは、0以上の整数を示し;
q+1個のBase2は、それぞれ独立して、-L-X-Zおよび核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し;
q+1個のX、q+1個のRp1、q個のR10、L、XおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
q+1個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Q”は、酸性条件下で除去可能な水酸基の一時保護基を示し;
R36およびR37は、それぞれ独立して、アルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって形成する5または6員の飽和環状アミノ基を示し、かかる飽和環状アミノ基は、窒素原子の他に環構成原子として酸素原子または硫黄原子を1個有していてもよい。]
【0223】
R36およびR37は、それぞれ独立して、好ましくはC1-10アルキル基であるか、または隣接する窒素原子と一緒になって形成する5または6員の飽和環状アミノ基であり、より好ましくはC1-10アルキル基であり、さらに好ましくはC1-6アルキル基である。
【0224】
酸性条件下で除去可能な水酸基の一時保護基の説明は、前記の通りである。Q”は、好ましくはモノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基であり、より好ましくはジメトキシトリチル基である。
【0225】
式(b-I)中の核酸塩基のアミノ基は、保護基で保護されていることが好ましい。該保護基としては、-L-X-Zおよび核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基が挙げられる。L、XおよびZの説明は、前記の通りである。核酸合成に用いられる保護基としては、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、および=NC(R11)-N(R12)(R13)基(式中、R11は、メチル基を示し、R12およびR13は、それぞれ独立してC1-5アルキル基を示すか、またはR11およびR12が一緒になって、それらが結合する炭素原子および窒素原子と共に5員または6員の含窒素炭化水素環を形成していてもよい。)が好ましい。なお、前記=NC(R11)-N(R12)(R13)基としては、例えば1-(ジメチルアミノ)エチリデン基が挙げられる。化合物(b-I)が複数のアミノ基を有する場合、アミノ基の保護基は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0226】
qが0である場合、化合物(b-I)はヌクレオシドであり、qが1以上である場合、化合物(b-I)はオリゴヌクレオチドである。本工程で使用する化合物(b-I)において、qは、49以下が好ましく、29以下がより好ましく、19以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましく、2以下が最も好ましい。
【0227】
q+1個のXは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、または保護されていてもよい水酸基であり、より好ましくは水素原子または保護されていてもよい水酸基である。
Base2は、それぞれ独立して、好ましくは核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよい核酸塩基である。
q+1個のRp1は、それぞれ独立して、好ましくはCH2CH2WGで表される基である。
q+1個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
L、XおよびZの説明は、前記の通りである。
化合物(b-I)は、好ましくは下記式(b-i)で表される化合物である。
【0228】
【0229】
[式中、
q+1個のBase3は、それぞれ独立して、核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し、
q、q+1個のX、q+1個のRp1、q個のR10、Q”、R36およびR37は、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0230】
式(b-i)中、核酸合成に用いられる保護基、q、q+1個のX、q+1個のRp1、q個のR10、Q”、R36およびR37の説明は、前記の通りである。
【0231】
本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)とヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)との組合せは、
好ましくは化合物(a-I)、化合物(a-VI)または化合物(a-VII)と化合物(b-I)との組合せであり、
より好ましくは化合物(a-i)、化合物(a-vi)または化合物(a-vii)と化合物(b-i)との組合せであり、
より一層好ましくは化合物(a-i)または化合物(a-vi)と化合物(b-i)との組合せであり、
さらに好ましくは化合物(a-i)と化合物(b-i)との組合せであり、
さらに一層好ましくは化合物(a-II)または化合物(a-IV)と化合物(b-i)との組合せであり、
特に好ましくは化合物(a-III)または化合物(a-V)と化合物(b-i)との組合せである。
【0232】
本工程の縮合反応の進行が遅い場合には、縮合剤(例えば、ピリジン・トリフルオロ酢酸塩、テトラゾール、5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール、4,5-ジシアノイミダゾール等)を添加してもよい。
【0233】
本工程は、液相法の場合、非極性溶媒中で行われる。非極性溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の非極性エーテル系溶媒が挙げられる。非極性溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。非極性溶媒としては、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族系溶媒、およびこれらの組合せが好ましく;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、ノナン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびこれらの組合せがより好ましく;クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、およびこれらの組合せがさらに好ましい。本工程以降の工程で用いられる非極性溶媒も同様である。
【0234】
本工程におけるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)の使用量は、液相法の場合、本工程におけるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)の使用量1モルに対して、例えば1~10モル、好ましくは1~5モルであり、固相法の場合、本工程におけるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)の使用量1モルに対して、例えば1~20モル、好ましくは1~10モルである。
【0235】
本工程における反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~100℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましく、固相法の場合、10℃~40℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。反応時間は、使用する原料の種類、反応温度等によって異なるが、液相法の場合、例えば5分~24時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0236】
(3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されたヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)のクエンチ)
本発明では、工程(1)(縮合)の後に、工程(2)((2-1)(硫化)または(2-2)(酸化))および工程(3)(脱保護)を行う。そのため、液相法の場合、工程(2)および(3)の際の副生成物の生成を抑制するために、工程(2)の前にヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)をクエンチすることが好ましい。そのため、本発明の製造方法は、縮合後の反応液にクエンチ剤を添加する工程を含むことが好ましい。
【0237】
オリゴヌクレオチド製法の分野において、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドのクエンチ剤として公知のものを、本工程におけるクエンチ剤として使用することができる。クエンチ剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。クエンチ剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類およびアミン類が挙げられる。
【0238】
クエンチ剤として使用し得るアルコール類としては、例えば、メタノール、2-プロパノール、t-ブタノール、2,2,2,-トリフルオロエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、2,3-O-イソプロピリデン-D-リボフラノース、3’-O-トリイソプロピルシリル-チミジン等のハロゲン化されていてもよい1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のハロゲン化されていてもよい多価アルコールが挙げられる。
【0239】
クエンチ剤として使用し得るフェノール類としては、例えば、4-ニトロフェノールやペンタフルオロフェノールが挙げられる。クエンチ剤として使用し得るアミン類としては、例えば、モルホリンが挙げられる。
【0240】
クエンチ剤は、好ましくは、アルコール類およびアミン類から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはメタノール、2-プロパノール、t-ブタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、およびモルホリンから選ばれる少なくとも一つである。工程(3)(脱保護)の脱保護時に、オリゴヌクレオチド(e)の核酸塩基におけるアミノ基の保護基の脱落を防止するために、クエンチ剤は、さらに好ましくは、2-プロパノール、t-ブタノールおよび2,2-トリフルオロエタノールから選ばれる少なくとも一つである。
【0241】
本工程におけるクエンチ剤の使用量は、工程(1)におけるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)の使用量1モルに対して、好ましくは1~20モル、より好ましくは1~10モル、さらに好ましくは1~5モルである。
【0242】
クエンチ剤の添加後の反応液の温度は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)がクエンチできさえすれば特に限定されないが、5℃~40℃が好ましく、15℃~30℃がより好ましい。クエンチ剤の添加後の反応液の撹拌時間は、使用するクエンチ剤の種類、温度等によって異なるが、例えば10分~3時間である。
【0243】
工程(2):(2-1)(硫化)
本工程は、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に硫化剤を反応させることにより、そのホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合へと変換させて、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d)を得る工程である。硫化剤は、その1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0244】
本工程に使用する硫化剤としては、ホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合を、ホスホロチオエート結合に変換しうる能力がありさえすれば、特に限定されないが、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT、キサンタンヒドリド)、硫黄が好ましい。
【0245】
良好な反応が進行しうるという観点で、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)がより好ましく、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)がさらに好ましく、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)が特に好ましい。かかる硫化剤は、0.05~2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジンまたはこれら任意の混合溶媒が挙げられる。
【0246】
硫化剤の使用量は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)1モルに対し、液相法の場合、例えば1~50モル、好ましくは1~10モルであり、固相法の場合、例えば1~100モル、好ましくは1~20モルである。
【0247】
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~100℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましく、固相法の場合、10℃~40℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。反応時間は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)の種類、使用する硫化剤の種類、反応温度等によって異なるが、液相法の場合、例えば1分~3時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0248】
工程(2):(2-2)(酸化)
本工程は、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)に酸化剤を反応させることにより、そのホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合をホスフェート(リン酸ジエステルおよびリン酸トリエステルを含む)結合へと変換させて、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)を得る工程である。酸化剤は、その1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0249】
本工程に使用する酸化剤としては、ホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合を、ホスフェート結合に変換しうる能力がありさえすれば、特に限定されないが、良好な反応が進行しうるという観点で、ヨウ素が好ましい。
【0250】
かかる酸化剤は、適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ピリジン、水、またはこれら任意の混合溶媒が挙げられ、ピリジンと水の混合溶媒が好ましい。ピリジンは酸化剤1モルに対し、3~10モルで、好ましくは、4~6モルであり、水は酸化剤1モルに対し、1~5モルで、好ましくは、2~4モルである。
【0251】
酸化剤の使用量は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)1モルに対し、液相法の場合、例えば1~50モル、好ましくは1~10モルであり、固相法の場合、例えば1~100モル、好ましくは1~20モルである。
【0252】
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~100℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましく、固相法の場合、10℃~40℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。反応時間は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)の種類、使用する酸化剤の種類、反応温度等によって異なるが、液相法の場合、例えば1分~3時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0253】
工程(3):(3-1)(ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの一時保護基の脱保護)、または(3-2)(ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドの一時保護基の脱保護)
本工程は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)の一時保護基を酸によって除去し、5’位水酸基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物を得る工程である。また、本工程は、ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)の一時保護基を酸によって除去し、5’位水酸基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物を得る工程である。酸は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0254】
本工程に使用する酸としては、良好な脱保護が達成できさえすれば特に限定されず、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸等のカルボン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ホスホン酸、リン酸等が挙げられるが、本発明が脱保護工程において脱保護された5’位水酸基がアシル化されるという問題を解決するためのものであるという観点から、好ましくは水酸基をアシル化し得るカルボン酸を少なくとも含み、より好ましくはトリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸またはトリクロロ酢酸を少なくとも含む。これら酸は、前記非極性溶媒で希釈しても構わない。また、前記酸を使用する際には、特定の塩基を組み合わせて、酸性度を適宜調整して使用しても構わない。本工程における酸の使用量は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)1モルまたはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)1モルに対し、液相法の場合、例えば1~100モル、好ましくは1~40モルであり、固相法の場合、例えば1~200モル、好ましくは1~80モルである。
【0255】
本工程の反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、-10℃~50℃が好ましく、0℃~40℃がより好ましく、固相法の場合、10℃~50℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。反応時間は、使用するホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)の種類、酸の種類および非極性溶媒の種類、反応温度等により異なるが、液相法の場合、例えば5分~5時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0256】
本工程において、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)の5’位水酸基の一時保護基の除去反応中、または除去反応後に、カチオン捕捉剤を使用することが好ましい。即ち、一時保護基の除去反応をカチオン捕捉剤の存在下で行うか、または一時保護基の除去反応後に反応系にカチオン捕捉剤を添加することが好ましい。カチオン捕捉剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0257】
カチオン捕捉剤としては、除去された一時保護基による再保護(原料戻り)や脱保護された官能基への副反応が進行しなければ、特に限定されないが、ピロール、2-メチルピロール、3-メチルピロール、2,3-ジメチルピロール、2,4-ジメチルピロール等のピロール誘導体;インドール、3-メチルインドール、4-メチルインドール、5-メチルインドール、6-メチルインドール、7-メチルインドール、5,6-ジメチルインドール、6,7-ジメチルインドール等のインドール誘導体;2-メチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2-メチル-3-(メチルチオ)フラン、メントフラン等のフラン誘導体を使用することができる。良好なカチオン捕捉効果が得られるという観点で、ピロール、2-メチルピロール、3-メチルピロール、2,3-ジメチルピロール、2,4-ジメチルピロール、インドール、3-メチルインドール、4-メチルインドール、5-メチルインドール、6-メチルインドール、7-メチルインドール、5,6-ジメチルインドール、6,7-ジメチルインドール、2-メチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2-メチル-3-(メチルチオ)フラン、メントフランが好ましく、ピロール、3-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、インドール、4-メチルインドール、5-メチルインドール、6-メチルインドール、7-メチルインドール、5,6-ジメチルインドール、6,7-ジメチルインドールがより好ましく、ピロール、3-メチルピロール、インドールがさらに好ましく、ピロール、インドールがさらに一層好ましく、ピロールが特に好ましい。本工程におけるカチオン捕捉剤の使用量は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)1モルまたはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)1モルに対し、液相法の場合、例えば1~50モル、好ましくは5~20モルである。
【0258】
(中和)
液相法の場合、工程(3)(脱保護)の後に、工程(3)で使用した酸を中和するため、反応系に塩基を添加してもよい。但し、本発明の製造方法では、工程(4)の後に、必要に応じて、固液分離または抽出および洗浄を行うことによって、工程(3)で使用した酸を、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)から除去することが可能である。そのため、中和工程は必須ではない。
【0259】
本工程において、塩基は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。使用する塩基としては、有機塩基が好ましい。有機塩基としては、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、N-フェニルイミダゾール、2-アミノ-4,6-ジメチルピリミジン、1,10-フェナントロリン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-クロロベンズイミダゾール、2-ブロモベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、N-フェニルベンズイミダゾール、5-ニトロベンズイミダゾールが好ましく、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、N-フェニルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-アミノ-4,6-ジメチルピリミジン、1,10-フェナントロリンがより好ましく、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、N-フェニルイミダゾールがさらに好ましく、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾールが特に好ましく、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ベンズイミダゾールが最も好ましい。
【0260】
本工程における塩基の使用量は、工程(3)における酸の使用量1モルに対し、例えば1~10モルであり、好ましくは1~3モルである。
【0261】
工程(4):(4-1)(ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの加溶媒分解)、または(4-2)(ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドの加溶媒分解)
本工程は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程である。また、本工程は、ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物に含まれる5’位水酸基がアシル化されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程である。
本工程における「アシル化」は、前工程(3-1)または(3-2)において5’位水酸基の一時保護基を除去するために加えた酸が、5’位水酸基と反応することを指し、その結果、酸がカルボン酸の場合にはR-C(=O)-が5’位の酸素原子に結合し、スルホン酸の場合にはR-S(=O)2-が5’位の酸素原子に結合し、ホスホン酸の場合にはH-P(=O)(OH)-が5’位の酸素原子に結合し、リン酸の場合にはH-P(=O)2-が5’位の酸素原子に結合することを意味する。一方、本工程における「脱アシル化」は、本工程において生成したアシル化物が加溶媒分解により、5’位水酸基となることを指す。
本工程は、ホスホロチオエート化部位またはホスフェート化部位の酸素原子または硫黄原子に結合したシアノアルキル基(例えば、シアノエチル基)、アルコキシカルボニルアルキル基(例えば、エトキシカルボニルエチル基)、ハロゲノフェニル基(2-クロロフェニル基)等を脱落させないような弱酸性から弱塩基性条件下で行うのが好ましい。特に、塩基性に不安定なシアノアルキル基(例えば、シアノエチル基)の場合には、シアノアルキル基(例えば、シアノエチル基)を脱落させないようにすることが望まれ、また、アセチル基やベンゾイル基などの塩基上の側鎖保護基の脱落にも注意を払って用いる塩基や求核物質、ならびに必要に応じて塩基(非求核性塩基)の塩基性度および求核物質のpKaを選択する必要がある。
【0262】
本工程に使用する溶媒としては、5’位水酸基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを脱アシル化することができさえすれば特に限定されない。また、本工程に使用する溶媒としては、5’位水酸基がアシル化されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを脱アシル化することができさえすれば特に限定されない。好ましくは塩基と求核物質との混合物である。塩基は、固相担体に担持された状態で用いることもできる。塩基としては、有機塩基が好ましく、例えば、3級アミン(例、N,N-ジメチルアミノアセトニトリル、N,N-ジエチルアミノアセトニトリル、N,N-ジイソプロピルアミノアセトニトリル、1-ピロリジンアセトニトリル、1-ピペリジンアセトニトリル、N,N-ジメチルアニリン)、3級アミンと酸性カウンターとの中和塩(例、トリエチルアミン塩酸塩)、塩基性度を酸で調整した3級アミン(例、ジイソプロピルエチルアミン:ギ酸=5:3の混合物)等の非求核性塩基、窒素原子を有する複素環式化合物(例、ピリジン、コリジン、ルチジン、メチルピリジン等のピリジン誘導体、N-メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物)等が挙げられ、ピリジン誘導体が好ましい。求核物質としては、水やアルコール誘導体が好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、べンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられ、水、メタノールが好ましい。塩基と求核物質との混合物としては、好ましくは、非求核性塩基およびピリジン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基と、水およびアルコール誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の求核物質との混合物であり、より好ましくは、ピリジン、コリジン、ルチジンおよびメチルピリジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基と、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、べンジルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の求核物質との混合物であり、さらに好ましくは、ピリジンと水との混合物、ピリジンとメタノールとの混合物、ピリジンとエタノールとの混合物、コリジンと水との混合物、コリジンとメタノールとの混合物、コリジンとエタノールとの混合物、ルチジンと水との混合物、ルチジンとメタノールとの混合物、ルチジンとエタノールとの混合物であり、ピリジンと水との混合物、ピリジンとメタノールとの混合物、ピリジンとエタノールとの混合物が特に好ましい。
【0263】
本発明の1つの実施態様において、非求核性塩基のpKaは、シアノエチル基や核酸塩基側鎖保護基の脱落抑制の観点から、好ましくは3~10であり、より好ましくは4~9であり、さらに好ましくは4~7である。
本発明の別の実施態様において、求核物質が少なくとも水を含む場合、その塩基性(pH)を無機塩(例、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、バッファー溶液など)で調整することもできる。例えば、一残基目の脱トリチル化の後の加溶媒分解は、シアノエチル基がまだついていないため、比較的強塩基性条件を用いることができる。また、先に脱DMTr化で使用したTFAを中和させないと塩基性にならないので、最初強い塩基で中和し、その後、弱い塩基で調整することもできる。そのpHは、好ましくは3.0~8.0であり、より好ましくは4.0~7.0であり、さらに好ましくは4.5~6.0である。
【0264】
本工程における塩基の使用量は、使用する塩基の種類によって異なるが、液相法の場合で、脱保護工程後、精製せずにワンポットで本工程を実施する場合や固相法の場合には脱保護で使用した酸が反応液中に残っているため、より多くの塩基が必要となる。このことから、液相法(ワンポット法)や固相法では、使用した酸の量に対して1~10当量、好ましくは、3~5当量の塩基が必要となる。一方、上記固相法以外や液相法(ワンポット法)以外の場合、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物1モルまたはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物1モルに対し、1~5モル、好ましくは、1~3モル必要である。
本工程の反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~50℃が好ましく、5℃~30℃がより好ましく、固相法の場合、5℃~40℃が好ましく、10℃~30℃がより好ましい。反応時間は、使用するホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)粗製物またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)粗製物および溶媒の種類、反応温度等により異なるが、液相法の場合、例えば10分~24時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0265】
(固液分離または抽出)
本発明の製造方法は、液相法の場合、工程(4-1)で得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)または工程(4-2)で得られたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)を含む反応液に極性溶媒を添加し、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)を沈殿させて精製するか(固液分離)、または反応液に極性溶媒を添加し、極性溶媒-非極性溶媒間で分層させ、非極性溶媒層にホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)を移行させて精製する(抽出)工程を含んでいてもよい。固液分離および抽出のいずれの場合も、極性溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0266】
まず固液分離から説明する。固液分離で使用する極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、2-ブタノン等のケトン系溶媒;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性エーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;水等、並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの中でも、ニトリル系溶媒が好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
【0267】
ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の回収率を高めるために、固液分離における極性溶媒の添加量は、反応液中に含まれる非極性溶媒1mLに対して、好ましくは1~20mL、より好ましくは1~10mL、さらに好ましくは1~5mLである。
【0268】
極性溶媒は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の極性溶媒中へのロスを最小限とするために水を含んでいてもよい。この場合、極性溶媒中の水の含有量は、1~10%(v/v)が好ましく、3~8%(v/v)がより好ましい。水の含有量が低すぎる場合は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の極性溶媒中へのロスが増える場合があり、水の含有量が高すぎる場合は、不純物の極性溶媒中への除去が不十分となる傾向がある。
【0269】
ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の回収率を高めるために、WO2016/117663に記載されているような沈殿促進剤(例えば、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル 2,2-ジメチルプロパノエート)を使用してもよい。
【0270】
次に抽出について説明する。抽出の操作は、特に限定されないが、好ましくは、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)を含む反応液に極性溶媒を添加して、極性溶媒-非極性溶媒間で分層させ、非極性溶媒層にホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)を移行させることによって行われる。この抽出によって、残存する原料、副生成物等の不純物を極性溶媒層に移行させ、除去することができる。
【0271】
抽出で使用される極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン、2-ブタノン等のケトン系溶媒、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性エーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、水等、並びにこれら2種以上の混合溶媒が挙げられる。中でも、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、およびこれらの組合せが好ましく、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピペリドン、およびこれらの組合せがより好適に使用される。これらの中でも、ニトリル系溶媒が好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
【0272】
抽出で使用される極性溶媒は、非極性溶媒との分層性を向上させるために水を含んでいてもよい。この場合、極性溶媒中の水の含有量は、1~10%(v/v)が好ましく、3~8%(v/v)がより好ましい。水の含有量が低すぎる場合は、分層性があまり向上しない場合があり、水の含有量が高すぎる場合は、不純物の極性溶媒に対する溶解度が下がり、その除去効率が低下する傾向がある。
【0273】
抽出のために必要に応じて、極性溶媒と共に、非極性溶媒を反応液に添加してもよい。非極性溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。必要に応じて添加される非極性溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の非極性エーテル系溶媒が挙げられる。これらの中でも、芳香族系溶媒、脂肪族系溶媒、またはこれらの組合せが好ましく、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、ノナン、シクロヘキサンまたは、これらの組合せ等が好ましく、トルエン、ヘプタン、ノナンまたは、これらの組合せがより好ましく、トルエン、ヘプタンまたは、これらの組合せがさらに好ましく、ヘプタンが特に好ましい。
【0274】
極性溶媒-非極性溶媒間で分層後に、極性溶媒層を除く操作によって、不純物を除去することができる。極性溶媒層を除いた非極性溶媒層に、さらに極性溶媒を添加し、攪拌し、分層させた後、極性溶媒を除く操作を行うことによって、さらに不純物の量を低減させてもよい。
【0275】
1回の抽出操作のために用いられる極性溶媒の量は、非極性溶媒1mLに対して、好ましくは0.1~10mL、より好ましくは0.2~5mL、さらに好ましくは0.2~1mLである。
【0276】
得られた非極性溶媒層を濃縮することによって、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)を単離することができる。
【0277】
(脱保護および単離)
本発明の製造方法は、液相法の場合、固液分離または抽出の後に、得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の保護基を全て除去した後、保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドまたは保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを単離する工程を含んでいてもよい。脱保護の方法としては、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている脱保護方法に従い、オリゴヌクレオチドの全ての保護基を除去する工程を行うことができる。具体的には、擬似固相保護基、および核酸塩基の保護基であるフェノキシアセチル基、アセチル基等、リン酸骨格を保護しているシアノエチル基等は、アンモニア水、アンモニア水/エタノール溶液、またはアンモニア水とメチルアミン水溶液の混合液で処理することにより、全て除去することができる。また、5’水酸基の保護基は、工程(3)で使用される酸またはそれらを適宜希釈した溶液で処理することにより除去することができる。保護されていない(即ち、保護基を有さない)オリゴヌクレオチドは酵素により容易に分解されやすいため、空気清浄度管理下で、保護されていないオリゴヌクレオチドを単離することが好ましい。
【0278】
本発明の製造方法はまた、固相法の場合、工程(4)の後、固相を溶媒で洗浄し、得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)を固相から切り離し、その保護基を全て除去して、保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドまたは保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを単離する工程を含んでいてもよい。洗浄および固相からの切り離しは、当該分野で公知の方法を用いて行うことができる。また、脱保護は、上記の液相法の場合と同様にして行うことができる。
【0279】
液相法の場合、上記各工程における反応の進行の確認は、いずれも一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。即ち、薄層シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いて反応を追跡することができる。
【0280】
5’-3’合成
5’-3’合成である本発明の製造方法は、ホスホロチオエート(PS)、ホスフェート(PO)またはH-ホスホネート部位を有する保護オリゴヌクレオチドに酸を添加して3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を除去したのち、3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化された副生物を加溶媒分解して脱アシル化する工程を含む。
当該製造方法は、以下の工程(3’):脱保護および工程(4’):加溶媒分解によって説明される。
【0281】
5’-3’合成である本発明の製造方法はまた、以下の工程(1’)~(4’)を含む。
(1’)3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)と、
5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)と
を縮合させ、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)を得る工程;
(2’):(2’-1)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に硫化剤を添加して硫化し、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)を得る工程、または
(2’-2)ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に酸化剤を添加して酸化し、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)を得る工程;
(3’):(3’-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)に酸を添加して3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物を得る工程、または
(3’-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)に酸を添加して3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物を得る工程;および
(4’):(4’-1)ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程、または
(4’-2)ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程。
【0282】
工程(1’)~(4’)のサイクルを繰り返すことによって、オリゴヌクレオチド鎖を伸長させることができる。
【0283】
5’-3’合成である本発明の製造方法の説明は、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)と、5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)とを使用して、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)を製造すること以外は、上述の3’-5’合成である本発明の製造方法の説明と、基本的に同じである。言い換えると、3’位水酸基または3’アミノ基および5’位水酸基の保護等の態様が入れ替わっていること以外は、工程(1’)~(4’)、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)、およびホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)の説明は、上述の工程(1)~(4)、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c)、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d-2)、およびホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)の説明と、基本的に同じである。5’-3’合成について、3’-5’合成と異なる点を以下で説明する。
【0284】
工程(1’)(縮合)
本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)は、5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい。水酸基の一時保護基の説明は、工程(1)での説明と同じである。
【0285】
アミノ基の一時保護基としては、例えば、トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基等が挙げられる。これらの中で、トリチル基およびモノメトキシトリチル基が好ましい。
【0286】
本工程の好ましい態様では、
3’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基および5’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の5’位水酸基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)、或いは
3’位水酸基が保護されておらず、5’位末端のリン酸基の一つのOHが-OLn1-OH(式中、Ln1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい置換ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)、並びに
5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基および核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)
が使用される。
【0287】
本工程のより好ましい態様では、
3’位水酸基が保護されておらず、5’位末端のリン酸基の一つのOHが-OLn1-OH(式中、Ln1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)、並びに
5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基および核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド(b’)
が使用される。
【0288】
本工程のより好ましい別の態様では、
3’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基および5’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の5’位水酸基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド(a’)、並びに
5’位水酸基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、3’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド(b’)
が使用される。
【0289】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)が有する3’位水酸基と、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)が有するホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾された5’位水酸基との縮合は、工程(1)と同様に行うことができる。そのため、工程(1’)の縮合の説明は、「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)」を「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)」に置き換え、「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)」を「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)」に置き換えたこと以外、工程(1)の説明と同じである。
【0290】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)が有する3’位アミノ基と、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)が有するホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾された5’位水酸基との縮合も、工程(1)の縮合と同様に行うことができる。そのため、工程(1’)の縮合の説明は、「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1)」を「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)」に置き換え、「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b)」を「ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)」に置き換えたこと以外、工程(1)の説明と同じである。
【0291】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)としては、例えば、下記式(a-I’)で表される化合物(即ち、ヌクレオシド、またはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0292】
【0293】
[式中、
m、m+1個のBase、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
m個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Xn3は、水酸基またはアミノ基を示す。]
【0294】
式(a-I’)中のm個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
式(a-I’)中のXn3は、好ましくは水酸基である。
式(a-I’)中のm個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(a-I’)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-I’)は、好ましくは下記式(a-i’)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0295】
【0296】
化合物(a-i’)の中で、式(a-II’)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0297】
【0298】
式(a-II’)において、m個のRp1が、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基であることが好ましい。
式(a-II’)において、mが0であることが好ましい。
式(a-II’)における他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-II’)の中で、下記式(a-III’)で表される化合物(即ち、ヌクレオシド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0299】
【0300】
また、化合物(a-i’)の中で、下記式(a-IV’)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0301】
【0302】
式(a-IV’)において、m個のRp1が、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基であることが好ましい。
式(a-IV’)において、mが0であることが好ましい。
式(a-IV’)における他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-IV’)の中で、下記式(a-V’)で表される化合物(即ち、ヌクレオシド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0303】
【0304】
また、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)としては、例えば、下記式(a-VI’)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0305】
【0306】
[式中、
m+1個のBase1の少なくとも一つは、-L-Y-Zで保護されている核酸塩基を示し、残りは保護されていてもよい核酸塩基を示し;
m個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Xn3は、水酸基またはアミノ基を示し;
Rn4は、水酸基の保護基を示し;
m、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0307】
式(a-VI’)中のm個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
式(a-VI’)中のXn3は、好ましくは水酸基である。
式(a-VI’)中のm個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(a-VI’)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-VI’)は、好ましくは下記式(a-vi’)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0308】
【0309】
また、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)としては、例えば、下記式(a-VII’)で表される化合物が挙げられる。
【0310】
【0311】
[式中、
m個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Xn3は、水酸基またはアミノ基を示し;
Ln1は有機基を示し;
m、m+1個のBase、m+1個のX、m+1個のR10、m+1個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0312】
式(a-VII’)中のXn3は、好ましくは水酸基である。
式(a-VII’)中のm+1個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(a-VII’)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-VII’)は、好ましくは下記式(a-vii’)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0313】
【0314】
本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)は、好ましくは化合物(a-I’)、化合物(a-VI’)または化合物(a-VII’)であり、より好ましくは化合物(a-i’)、化合物(a-vi’)または化合物(a-vii’)であり、さらに好ましくは化合物(a-i’)または化合物(a-vii’)であり、特に好ましくは化合物(a-vii’)である。
【0315】
ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)としては、例えば、下記式(b-I’)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0316】
【0317】
[式中、
q+1個のBase2は、それぞれ独立して、-L-X-Zおよび核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し;
q個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Xn4は、酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されている水酸基またはアミノ基を示し;
q、q+1個のX、q+1個のRp1、q個のR10、R36およびR37は、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0318】
式(b-I’)中の水酸基の一時保護基およびアミノ基の一時保護基の説明は、前記の通りである。Xn4は、好ましくは酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されている水酸基である。
式(b-I’)中のq+1個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(b-I’)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(b-I’)は、好ましくは下記式(b-i’)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0319】
【0320】
3’位水酸基および5’位水酸基の保護等の態様が入れ替わっていること以外は、上述の化合物(a-I’)~化合物(a-vii’)並びに化合物(b-I’)および(b-i’)の説明は、上述の化合物(a-I)~化合物(a-vii)並びに化合物(b-I)および(b-i)の説明と、基本的に同じである。
【0321】
本工程で使用するヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)或いはヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a1’)とヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)との組合せは、
好ましくは化合物(a-I’)、化合物(a-VI’)または化合物(a-VII’)と化合物(b-I’)との組合せであり、
より好ましくは化合物(a-i’)、化合物(a-vi’)または化合物(a-vii’)と化合物(b-i’)との組合せであり、
さらに好ましくは化合物(a-i’)または化合物(a-vii’)と化合物(b-i’)との組合せであり、
特に好ましくは化合物(a-vii’)と化合物(b-i’)との組合せである。
【0322】
本工程におけるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(b’)の使用量は、液相法の場合、本工程におけるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)の使用量1モルに対して、例えば1~10モル、好ましくは1~5モルであり、固相法の場合、本工程におけるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a’)の使用量1モルに対して、例えば1~20モル、好ましくは1~10モルである。
【0323】
本工程における反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~100℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましく、固相法の場合、10℃~40℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。反応時間は、使用する原料の種類、反応温度等によって異なるが、液相法の場合、例えば5分~24時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0324】
工程(2’):(2’-1)(硫化)
本工程は、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に硫化剤を反応させることにより、そのホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合へと変換させて、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)を得る工程である。硫化剤は、その1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0325】
本工程に使用する硫化剤としては、ホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合を、ホスホロチオエート結合に変換しうる能力がありさえすれば、特に限定されないが、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT、キサンタンヒドリド)、硫黄が好ましい。
【0326】
良好な反応が進行しうるという観点で、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)がより好ましく、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)がさらに好ましく、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)が特に好ましい。かかる硫化剤は、0.05~2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジンまたはこれら任意の混合溶媒が挙げられる。
【0327】
硫化剤の使用量は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)1モルに対し、液相法の場合、例えば1~50モル、好ましくは1~10モルであり、固相法の場合、例えば1~100モル、好ましくは1~20モルである。
【0328】
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~100℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましく、固相法の場合10℃~40℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。反応時間は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)の種類、使用する硫化剤の種類、反応温度等によって異なるが、液相法の場合、例えば1分~3時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0329】
工程(2’):(2’-2)(酸化)
本工程は、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)に酸化剤を反応させることにより、そのホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合をホスフェート結合へと変換させて、3’位水酸基または3’位アミノ基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)を得る工程である。酸化剤は、その1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0330】
本工程に使用する酸化剤としては、ホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合を、ホスフェート結合に変換しうる能力がありさえすれば、特に限定されないが、良好な反応が進行しうるという観点で、ヨウ素が好ましい。
【0331】
かかる酸化剤は、適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ピリジン、水、またはこれら任意の混合溶媒が挙げられ、ピリジンと水の混合溶媒が好ましい。ピリジンは酸化剤1モルに対し、3~10モルで、好ましくは、4~6モルであり、水は酸化剤1モルに対し、1~5モルで、好ましくは、2~4モルである。
【0332】
酸化剤の使用量は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)1モルに対し、液相法の場合、例えば1~50モル、好ましくは1~10モルであり、固相法の場合、例えば1~100モル、好ましくは1~20モルである。
【0333】
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~100℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましく、固相法の場合、10℃~40℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。反応時間は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル(c’)の種類、使用する酸化剤の種類、反応温度等によって異なるが、液相法の場合、例えば1分~3時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0334】
工程(3’):(3’-1)(ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの一時保護基の脱保護)、または(3’-2)(ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドの一時保護基の脱保護)
本工程は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)の3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を酸によって除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物を得る工程である。また、本工程は、ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)の一時保護基を酸によって除去し、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されていないホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物を得る工程である。酸は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0335】
水酸基の一時保護基の除去の説明は、工程(1)での説明と同じである。
アミノ基の一時保護基の除去に使用する酸としては、良好な脱保護が達成できさえすれば特に限定されず、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸等のカルボン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ホスホン酸、リン酸等が挙げられるが、脱保護工程において脱保護された3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されるという問題を解決するという観点から、好ましくは水酸基をアシル化し得るカルボン酸を少なくとも含み、より好ましくはトリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸またはトリクロロ酢酸を少なくとも含む。これら酸は、前記非極性溶媒で希釈しても構わない。アミノ基の一時保護基の除去における酸の使用量は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)1モルまたは、ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)1モルに対し、液相法の場合、例えば1~100モル、好ましくは1~40モルであり、固相法の場合、例えば1~200モル、好ましくは1~80モルである。
【0336】
アミノ基の一時保護基の除去のための反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、-10℃~50℃が好ましく、0℃~40℃がより好ましく、固相法の場合、10℃~50℃が好ましく、20℃~30℃がより好ましい。アミノ基の一時保護基の反応時間は、使用するホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-1)またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(d’-2)の種類、酸の種類および非極性溶媒の種類、反応温度等により異なるが、液相法の場合、例えば5分~5時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0337】
工程(4’):(4’-1)(ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの加溶媒分解)、または(4’-2)(ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドの加溶媒分解)
本工程は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程である。また、本工程は、ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物に含まれる3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを加溶媒分解して脱アシル化する工程である。
本工程における「アシル化」は、前工程(3’-1)または(3’-2)において3’位水酸基または3’位アミノ基の一時保護基を除去するために加えた酸が、3’位水酸基または3’位アミノ基と反応することを指し、その結果、酸がカルボン酸の場合にはR-C(=O)-が3’位の酸素原子または窒素原子に結合し、スルホン酸の場合にはR-S(=O)2-が3’位の酸素原子または窒素原子に結合し、ホスホン酸の場合にはH-P(=O)(OH)-が3’位の酸素原子または窒素原子に結合し、リン酸の場合にはH-P(=O)2-が3’位の酸素原子または窒素原子に結合することを意味する。一方、本工程における「脱アシル化」は、本工程において生成したアシル化物が加溶媒分解により、3’位水酸基または3’位アミノ基となることを指す。
本工程は、ホスホロチオエート化部位またはホスフェート化部位の酸素原子に結合したシアノアルキル基(例えば、シアノエチル基)、アルコキシカルボニルアルキル基(例えば、エトキシカルボニルエチル基)、ハロゲノフェニル基(2-クロロフェニル基)等を脱落させないような塩基性条件下で行うのが好ましい。特に、塩基性に不安定なシアノアルキル基(例えば、シアノエチル基)の場合には、シアノアルキル基(例えば、シアノエチル基)を脱落させないようにすることが望まれるからである。
【0338】
本工程に使用する溶媒としては、3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを脱アシル化することができさえすれば特に限定されない。また、本工程に使用する溶媒としては、3’位水酸基または3’位アミノ基がアシル化されたホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドを脱アシル化することができさえすれば特に限定されない。好ましくは塩基と求核物質との混合物である。塩基としては、有機塩基が好ましく、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン等が挙げられ、ピリジンが好ましい。求核物質としては、水やアルコール類が好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール等が挙げられ、水、メタノールが好ましい。塩基と求核物質との混合物としては、好ましくはピリジンと水との混合物、ピリジンとメタノールとの混合物、ピリジンとエタノールとの混合物、コリジンと水との混合物、コリジンとメタノールとの混合物、コリジンとエタノールとの混合物、ルチジンと水との混合物、ルチジンとメタノールとの混合物、ルチジンとエタノールとの混合物であり、ピリジンと水との混合物、ピリジンとメタノールとの混合物、ピリジンとエタノールがより好ましい。
【0339】
本工程における塩基の使用量は、使用する塩基の種類によって異なるが、液相法の場合で、脱保護工程後、精製せずにワンポットで本工程を実施する場合や固相法の場合には脱保護で使用した酸が反応液中に残っているため、より多くの塩基が必要となる。このことから、液相法(ワンポット法)や固相法では、使用した酸の量に対して1~10当量、好ましくは、3~5当量の塩基が必要となる。一方、上記固相法以外や液相法(ワンポット法)以外の場合、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物1モルまたはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物1モルに対し、1~5モル、好ましくは、1~3モル必要である。
本工程の反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、液相法の場合、0℃~50℃が好ましく、5℃~30℃がより好ましく、固相法の場合、5℃~40℃が好ましく、10℃~30℃がより好ましい。反応時間は、使用するホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-1)粗製物またはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e’-2)粗製物および溶媒の種類、反応温度等により異なるが、液相法の場合、例えば10分~24時間であり、固相法の場合、例えば1分~30分である。
【0340】
オリゴヌクレオチド
固液分離または抽出により得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-1)もしくは(e’-1)、ホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチド(e-2)もしくは(e’-2)、或いは脱保護および単離により得られた保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドまたはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドは、さらに有機合成反応を施すことにより、所望の誘導体へと導くこともできる。本発明の製造方法によって得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドまたはホスフェート化部位を有するオリゴヌクレオチドは、人体用または動物用の医薬品(RNA、DNA、オリゴ核酸医薬等)、機能性食品、特定保健用食品、食品、化成品、生体用や工業用の高分子材料等の各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0341】
以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。また、本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
【0342】
後述の実施例等で使用する略号の意味は、以下の通りである。
また、後述の実施例等で使用する2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト等を、以下では、ホスホロアミダイトモノマーと総称することがある。
SUC:スクシニル
TOB:3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ
Piv-TOB:3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル ピバレート
DDTT:5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン
POS:5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン
PADS:フェニルアセチルジスルフィド
DMTr:4,4’-ジメトキシトリチル
LC-TOF MS:液体クロマトグラフ-飛行時間型質量分析計
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
PivCl:ピバロイルクロリド
2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N2-イソブチリル-2’-O-メチル-グアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
5-Me-dC(Bz)-CE ホスホロアミダイト:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-ベンゾイル-2’-デオキシ-5-メチルシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
dG-CE ホスホロアミダイト:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N2-イソブチリル-デオキシグアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
2’-O-TBDMS-C(Ac)-CE ホスホロアミダイト:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-アセチル-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
LNA-A(Bz)-CE ホスホロアミダイト:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
2’-F-C(Bz)-CE ホスホロアミダイト:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
dT-H-ホスホネート TEA塩:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-デオキシチミジン-3’-H-ホスホネート,トリエチルアミン塩
HO-dT-SUC-TOB:デオキシチミジン 3’-イル 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート
HO-T-SUC-TOB:デオキシチミジン-3’-イル 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート
HO-CmT-SUC-TOB:N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-GmCmT-SUC-TOB:N2-イソブチリル-2’-O-メチル-グアノシン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホリル N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート)
HO-2’-OMe-U-SUC-TOB:2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート
HO-Um-SUC-TOB:2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート
HO-CmUm-SUC-TOB:N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-GUm-SUC-TOB:N2-イソブチリル-デオキシグアノシン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-ALT-SUC-TOB:N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-CfALT-SUC-TOB:N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-rCCfALT-SUC-TOB:N4-アセチル-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-(CH2)2-SUC-TOB:3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル 2-ヒドロキシエチル スクシネート
HO-AL(CH2)2-SUC-TOB:N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル エチルオキシ-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-CfAL(CH2)2-SUC-TOB:N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル エチルオキシ-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-rCCfAL(CH2)2-SUC-TOB:N4-アセチル-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル エチルオキシ-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-THT-SUC-TOB:デオキシチミジン-3’-ホスホネート デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-TOHT-SUC-TOB:デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
【0343】
以下、TOB付加化合物は、国際公開第2012/157723号に記載された方法により合成した。
【0344】
参考例1:
アルゴン雰囲気下、20mLの二口フラスコにHO-2’-OMe-U-SUC-TOB(251mg,200μmol)とPiv-TOB(251mg,251μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(10.0mL)と脱水アセトニトリル(1.0mL)を加え溶解させた。その後、2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(518mg,600μmol)と5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(78.1mg,600μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(219μL,3.0mmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(351μL,2.9mmol)とDDTT(129mg,630μmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。その後、2,3-ジメチルフラン(316μL,3.0mmol)とトリフルオロ酢酸(459μL,6.0mmol)を順次加え、室温で1.5時間撹拌した。その脱DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が0.97%含まれていた。当該反応溶液を下記記載の実施例1と比較例1へ2つに分割した。
【0345】
実施例1:DDTTによる硫化反応後、脱DMTr化し、加溶媒分解
上記参考例1で合成した伸長オリゴ核酸(38μmol)を含む脱DMTr工程溶液にコリジン(318μL,2.4mmol)と水(23.8μL)を順次加え、室温にて2時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.004%であった。その後、アセトニトリル(5.7mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-CmUm-SUC-TOBを白色固体として得た。
m/z(TOF-MS):Calcd.1745.06, Found 1746.07[M+H]+
得られた2量体HO-CmUm-SUC-TOB(26.2mg,15μmol)に脱水ジクロロメタン(0.8mL)と脱水アセトニトリル(0.10mL)を加え溶解させた。その後、2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト(39.1mg,45μmol)と5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(8.7mg,45μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(16.4μL,225μmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(26.3μL,214μmol)とDDTT(9.7mg,47μmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液を分析したところ、残存原料は0.07%であった。
【0346】
比較例1:DDTTによる硫化反応後、脱DMTr化し、加溶媒分解未完結
上記参考例1で合成した伸長オリゴ核酸(38μmol)を含む脱DMTr工程溶液にコリジン(159μL,1.2mmol)と水(24μL,192μmol)を順次加え、室温にて2時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.21%であった。その後、アセトニトリル(5.7mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-CmUm-SUC-TOBを白色固体として得た。
m/z(TOF-MS):Calcd.1745.06, Found 1746.07[M+H]+
得られた2量体HO-CmUm-SUC-TOB(26.2mg,15μmol)に脱水ジクロロメタン(0.8mL)と脱水アセトニトリル(0.10mL)を加え溶解させた。その後、2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト(39.1mg,45μmol)と5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(8.7mg,45μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(16.4μL,225μmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(26.3μL,214μmol)とDDTT(9.7mg,47μmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液を分析したところ、残存原料は0.26%であった。
【0347】
実施例2:POSによる硫化反応後、脱DMTr化し、加溶媒分解
実施例1の硫化剤をDDTTからPOSに変え同様にして、HO-dT-SUC-TOB(81μmol)に5-Me-dC(Bz)-CE ホスホロアミダイトを伸長させたワンポットオリゴ核酸合成を行い、その脱DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が7%含まれていた。その後、反応溶液を3つに分割しそれぞれをA溶液、B溶液およびC溶液とした。
【0348】
A溶液:ピリジンとメタノールによる加溶媒分解
伸長したオリゴ核酸(20μmol)を含む脱DMTr工程溶液にピリジン(603μL,7.5mmol)とメタノール(6.7μL)を順次加え、室温にて1時間攪拌した。反応液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸含有量は0.01%であった。
【0349】
B溶液:コリジンと水による加溶媒分解
伸長したオリゴ核酸(19μmol)を含む脱DMTr工程溶液にコリジン(252μL,1.9mmol)と水(6.1μL)を順次加え、室温にて1時間攪拌した。反応液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸含有量は0.02%であった。
【0350】
C溶液:コリジンとメタノールによる加溶媒分解
伸長したオリゴ核酸(16μmol)を含む脱DMTr工程溶液にコリジン(207μL,1.6mmol)とメタノール(5.0μL)を順次加え、室温にて1時間攪拌した。反応液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸含有量は0.01%であった。
【0351】
実施例3:酸化反応後、脱DMTr化し、加溶媒分解
アルゴン雰囲気下、20mLの二口フラスコに、参考例1においてHO-2’-OMe-U-SUC-TOBの代わりにHO-T-SUC-TOBを用いることにより、参考例1および実施例1と同様にして合成したHO-CmT-SUC-TOB(101mg、60μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(2.9mL)と脱水アセトニトリル(0.9mL)を加え溶解させた。その後、2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト(151mg,173μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(22.6mg,173μmol)を順次加え室温で1時間撹拌した。続いて、反応溶液にテトラヒドロフルフリルアルコール(19.5μL,866μmol)を加え室温で30分攪拌した後、水(78μL)とピリジン(70μL,867μmol)、ヨウ素(89.3mg,352μmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。その後、2,3-ジメチルフラン(91.6μL,869μmol)とトリフルオロ酢酸(199μL,2.6mmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸量は11%であった。反応液にコリジン(692μL,5.2mmol)と水(19μL,1.1μmmol)を順次加え、室温にて2時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.07%であった。その後、アセトニトリル(15mL)を添加し、析出した固体を桐山漏斗で吸引濾過した後、乾燥し3量体HO-GmCmT-SUC-TOBを白色固体として得た(103.2mg)。
m/z(TOF-MS):Calcd.2211.20, Found 2212.23[M+H]+
【0352】
実施例4:4量体(HO-rCCfALT-SUC-TOB)の合成と脱保護
アルゴン雰囲気下、200mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(300mg,242μmol)とPiv-TOB(450mg,451μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(12.1mL)と脱水アセトニトリル(3.6mL)を加え溶解させた。その後、LNA-A(Bz)-CE ホスホロアミダイト(644mg,727μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(94.6mg,727μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(265μL,3.6mmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(506μL,4.1mmol)とDDTT(174mg,848μmol)を順次加え、室温で1.7時間撹拌した。その後、インドール(424mg,3.6mmol)とトリフルオロ酢酸(1.1mL,14.4mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が1.23%含まれていた。続いて反応溶液にピリジン(3.5mL,43.0mmol)と水(180μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.017%であった。その後、アセトニトリル(112mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し、2量体HO-ALT-SUC-TOBを白色固体として得た(829.9mg、95%)。
m/z:Calcd.1751.07, Found 1753.09[M+H]+
【0353】
アルゴン雰囲気下、200mLの二口フラスコにて得られた白色固体(829.9mg)に脱水ジクロロメタン(11.5mL)と脱水アセトニトリル(3.4mL)を加え溶解させた。その後、2’-F-C(Bz)-CE ホスホロアミダイト(591mg,694μmol)と4,5-ジシアノイミダゾール(83.5mg,707μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(251μL,3.5mmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(480μL,3.9mmol)とDDTT(165mg,805μmol)を順次加え、室温で2.0時間撹拌した。その後、インドール(402mg,3.43mmol)とトリフルオロ酢酸(1.0mL,13.6mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が2.74%含まれていた。続いて反応溶液にピリジン(3.3mL,40.8mmol)と水(170μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.084%であった。その後、アセトニトリル(110mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し3量体HO-CfALT-SUC-TOBを白色固体として得た(780.1mg、83%)。
m/z:calcd.2231.13, found 1117.07[M+2H]2+
【0354】
アルゴン雰囲気下、200mLの二口フラスコにて得られた白色固体(718mg)に脱水ジクロロメタン(8.8mL)と脱水アセトニトリル(2.6mL)を加え溶解させた。その後、2’-O-TBDMS-C(Ac)-CE ホスホロアミダイト(475mg,527μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(68.9mg,528μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(192μL,2.6mmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(366μL,3.0mmol)とDDTT(127mg,619μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。その後、インドール(307mg,2.6mmol)とトリフルオロ酢酸(796μL,10.4mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が2.73%含まれていた。続いて反応溶液にピリジン(2.5mL,31.2mmol)と水(130μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.070%であった。その後、アセトニトリル(100mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し4量体HO-rCCfALT-SUC-TOBを白色固体として得た(758.5mg、94%)。
m/z:calcd.2761.27, found 1382.15[M+2H]2+
【0355】
脱保護
上記で得られた白色固体(10mg)と30重量%アンモニア水(5.0mL)の混合物をオートクレーブに入れて、65℃で4時間加熱した後、室温まで冷却した。シリンジフィルターにより反応液中の不溶物を除去した後、遠心エバポレーターで減圧濃縮した。その後、濃縮液を凍結乾燥し、目的物である2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-フルオロ-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジンを得た。
m/z:calcd.1357.24,found 1356.23[M-H]-
【0356】
実施例5:3量体(HO-rCCfAL(CH2)2-SUC-TOB)の合成と脱保護
アルゴン雰囲気下、200mLの二口フラスコにHO-(CH2)2-SUC-TOB(256mg,242μmol)とPiv-TOB(385mg,386μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(12.1mL)と脱水アセトニトリル(3.6mL)を加え溶解させた。その後、LNA-A(Bz)-CE ホスホロアミダイト(644mg,727μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(94.7mg,727μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(265μL,3.6mmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(506μL,4.1mmol)とDDTT(174mg,848μmol)を順次加え、室温で1.7時間撹拌した。その後、インドール(424mg,3.6mmol)とトリフルオロ酢酸(1.1mL,14.4mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が1.76%含まれていた。続いて反応溶液にピリジン(3.5mL,43.1mmol)と水(180μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.015%であった。その後、アセトニトリル(120mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥しHO-AL(CH2)2-SUC-TOBを白色固体として得た(762mg、定量的)。
m/z:calcd.1571.01, found 1572.04[M+H]+
【0357】
アルゴン雰囲気下、200mLの二口フラスコにて得られた白色固体(762mg)を入れ、脱水ジクロロメタン(12.1mL)と脱水アセトニトリル(3.6mL)を加え溶解させた。その後、2’-F-C(Bz)-CE ホスホロアミダイト(615mg,724μmol)と4,5-ジシアノイミダゾール(86.2mg,730μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(264μL,3.6mmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(503μL,4.1mmol)とDDTT(173mg,844μmol)を順次加え、室温で2.0時間撹拌した。その後、インドール(422mg,3.6mmol)とトリフルオロ酢酸(1.1mL,14.3mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が2.95%含まれていた。続いて反応溶液にピリジン(3.5mL,42.8mmol)と水(179μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.076%であった。その後、アセトニトリル(120mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-CfAL(CH2)2-SUC-TOBを白色固体として得た(817.7mg、94%)。
m/z:calcd.2051.0789, found 1027.05 [M+2H]2+
【0358】
アルゴン雰囲気下、200mLの二口フラスコにて得られた白色固体(640mg,)に脱水ジクロロメタン(8.8mL)と脱水アセトニトリル(2.6mL)を加え溶解させた。その後、2’-O-TBDMS-C(Ac)-CE ホスホロアミダイト(476mg,528μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(68.5mg,527μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(192μL,2.6mmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(367μL,2.9mmol)とDDTT(126mg,613μmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。その後、インドール(308mg,2.6mmol)とトリフルオロ酢酸(797μL,10.4mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。DMTr工程完結時の反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸が2.79%含まれていた。続いて反応溶液にピリジン(2.5mL,31.2mmol)と水(130μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。反応溶液を分析したところ、トリフルオロアセチル化されたオリゴ核酸残量は0.051%であった。その後、アセトニトリル(100mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し3量体HO-rCCfAL(CH2)2-SUC-TOBを白色固体として得た(690.6mg、95%)。
m/z:calcd.2581.22, found 1292.11[M+2H]2+
【0359】
脱保護
上記で得られた白色固体(10mg)と30重量%アンモニア水(5.0mL)の混合物をオートクレーブに入れて、65℃で4時間加熱した後、室温まで冷却した。シリンジフィルターにより反応液中の不溶物を除去した後、遠心エバポレーターで減圧濃縮した。その後、濃縮液を凍結乾燥し、目的物である2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-フルオロ-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-ホスホロチオニル-エタノールを得た。
m/z:calcd.1177.18,found 1176.18[M-H]-
【0360】
実施例6:H-ホスホネートを用いた2量体の合成
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(100mg,80.8μmol)とdT-H-ホスホネート TEA塩(115.7mg,163μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(2.0mL)と脱水ピリジン(2.0mL)を加え溶解させた。その後、PivCl(29.5μl,242μmol)を加え室温で2.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し白色固体(133mg)を得た。得られた固体をアルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコに入れ、脱水ジクロロメタン(3.6mL)と脱水アセトニトリル(1.1mL)を加え溶解させた。その後、インドール(42.5mg,363μmol)とトリフルオロ酢酸(66.7μL,871μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(211μL,2.6mmol)と水(47μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-THT-SUC-TOBを白色固体として得た(82.2mg、74%)。
m/z:calcd.1525.03, found 1526.05[M+H]+
【0361】
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(99.1mg,80.0μmol)とdT-H-ホスホネート TEA塩(115.1mg,162μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(2.0mL)と脱水ピリジン(2.0mL)を加え溶解させた。その後、PivCl(29.5μl,242μmol)を加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液にDBU(48.4μL,324μmol)とDDTT(33.3mg,162μmol)を加え室温で40分攪拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し白色固体を得た。得られた固体をアルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコに入れ、脱水ジクロロメタン(3.9mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、インドール(45.6mg,389μmol)とトリフルオロ酢酸(71.6μL,910μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(226μL,2.8mmol)と水(51μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-TOHT-SUC-TOBを白色固体として得た(107.3mg、89%)。
m/z:calcd.1541.03, found 1542.04[M+H]+
【0362】
実施例7:トリクロロ酢酸を用いた実験
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-Um-SUC-TOB(102.4mg,81.7μmol)とPiv-TOB(105mg,105μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、dG-CE ホスホロアミダイト(135.1mg,161μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(21.4mg,164μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(58.1μL,797μmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(118μL,955μmol)とDDTT(40.9mg,199μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。その後、インドール(93.6mg,799μmol)とトリクロロ酢酸(698mg,4.27mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(1.01mL,12.6mmol)と水(66μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。その後、アセトニトリル(42mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-GUm-SUC-TOBを白色固体として得た(241.5mg)。
m/z:calcd.1721.07, found 1723.10[M+H]+
【0363】
実施例8:ジクロロ酢酸を用いた実験
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-Um-SUC-TOB(99.6mg,79.4μmol)とPiv-TOB(97.9mg,98.0μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、dG-CE ホスホロアミダイト(134.2mg,160μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(20.9mg,161μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(58.1μL,797μmol)を加え室温で30分攪拌した後、2,6-キシリジン(118μL,955μmol)とDDTT(40.9mg,199μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。その後、インドール(93.2mg,796μmol)とジクロロ酢酸(478μl,5.78mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(1.40mL,17.4mmol)と水(61μL)を順次加え、室温にて1.0時間攪拌した。その後、アセトニトリル(40mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-GUm-SUC-TOBを白色固体として得た(228.7mg、96%)。
m/z:calcd.1721.07, found 1723.10[M+H]+
【産業上の利用可能性】
【0364】
本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法によれば、縮合反応を完結させて縮合収率を向上させ、1塩基欠損体(N-1mer)などの不純物を著しく低減することができる。本発明の製造方法によって得られたオリゴヌクレオチドは、人体用または動物用の医薬品(RNA、DNA、オリゴ核酸医薬等)、機能性食品、特定保健用食品、食品、化成品、生体用や工業用の高分子材料等の各種用途に使用することができる。
【0365】
本出願は、日本で出願された特願2019-025605を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。