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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B62D25/20 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021007736
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112090
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-230421(JP,A)
【文献】特開2007-216843(JP,A)
【文献】米国特許第9085325(US,B2)
【文献】独国特許出願公開第19943242(DE,A1)
【文献】特開2005-206108(JP,A)
【文献】特開2005-67289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、当該車両下部構造はさらに、
前記フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びる一対のサイドシルと、
前記車両の後端から車両前方に延び前記一対のサイドシルの後端に接続される一対のリヤサイドメンバと、
前記一対のリヤサイドメンバに接続されていて後輪用の揺動するサスペンションが固定される一対のサスペンション固定部と、
前記一対のサイドシルそれぞれから斜め後方へ延びて互いに交差しさらに前記一対のリヤサイドメンバそれぞれに連結されるX連結部を有する連結メンバとを備え、
前記連結メンバのX連結部と前記一対のサスペンション固定部とは、前記一対のリヤサイドメンバ上で互いに隣接していて、あるいは、前記一対のリヤサイドメンバを隔てて互いに対面していることを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記連結メンバのX連結部は、前記一対のリヤサイドメンバの、後輪に対する前記サスペンション固定部の回転軸であって前記サスペンション固定部を通る前記サスペンションの揺動軸線と交差する側面に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記連結メンバのX連結部は、前記一対のサイドシルそれぞれの前端部に連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記一対のサスペンション固定部は、前記サスペンションの揺動軸線方向が前記連結メンバのX連結部と平行になるように前記一対のリヤサイドメンバに接続されていることを特徴とする請求項3に記載の車両下部構造。
【請求項5】
当該車両下部構造はさらに、車幅方向に延びていて前記一対のリヤサイドメンバを連結する1つ以上のリヤクロスメンバを備え、
前記連結メンバのX連結部は、前記一対のリヤサイドメンバおよび前記リヤクロスメンバに接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項6】
当該車両下部構造はさらに、
前記フロアパネルの下側の前部に位置するフロントメンバを備え、
前記連結メンバのX連結部は、前記一対のサイドシルそれぞれの内側側面に連結されていて、
前記連結メンバはさらに、前記X連結部の交差箇所よりも前方で該X連結部から車幅方向内側に分岐し前記フロントメンバに連結される一対のフロント連結部を有することを特徴とする請求項に記載の車両下部構造。
【請求項7】
前記フロントメンバは、
前記一対のサイドシルよりも車両前方に位置する一対のフロントサイドメンバと、
前記一対のフロントサイドメンバと前記一対のサイドシルとを連結する一対のトルクボックスと、
前記一対のトルクボックスを連結する連結部材とを含み、
前記一対のサイドシルと前記一対のトルクボックスとは、互いに所定の第1連結面で連結されていて、
前記連結メンバのX連結部は、前記第1連結面に連結されていて、
前記一対のトルクボックスと前記連結部材とは、互いに所定の第2連結面で連結されていて、
前記一対のフロント連結部は、前記第2連結面に連結されていることを特徴とする請求項6に記載の車両下部構造。
【請求項8】
前記連結メンバはさらに、前記X連結部の交差箇所の前後の位置を車両前後方向にわたって連結する一対の中間連結部を有することを特徴とする請求項6または7に記載の車両下部構造。
【請求項9】
前記連結メンバの一対の中間連結部の前端部は、前記X連結部を介して前記一対のフロント連結部の後端部と車両前後方向で重なっていて、
前記連結メンバはさらに、前記X連結部の内部に配置され前記一対の中間連結部の前端部と前記一対のフロント連結部の後端部との間を車両前後方向に架橋する架橋部を有することを特徴とする請求項8に記載の車両下部構造。
【請求項10】
前記1つ以上のリヤクロスメンバは、車幅方向に延びていて前記連結メンバのX連結部の交差箇所よりも後方の位置を連結する第1リヤクロスメンバを有し、
前記一対の中間連結部の後端部は、前記第1リヤクロスメンバに所定の接続領域で接続され、さらに前記接続領域に隣接する位置で前記X連結部に接続されていることを特徴とする請求項8または9に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、後輪用の揺動するサスペンションが固定されるサスペンション固定部と、車両の後端から車両前方に延びサスペンション固定部に接続されるリヤサイドメンバとを含む車両下部構造を備える。
【0003】
このような車両下部構造では、車両走行中に例えば車両旋回時の横方向の加速度(横G)などにより、サスペンション固定部からリヤサイドメンバに対して、サスペンションの揺動軸線方向の荷重を受けて、リヤサイドメンバが揺動軸線方向に振動してしまう。そして、リヤサイドメンバが揺動軸方向に振動すると、この振動に起因して車体の捩り振動やフロアパネルのフロア振動が発生する。
【0004】
また、車両下部構造では、前後左右の車輪のうちいずれか1つの車輪が上下方向の荷重例えば車両旋回時の外輪側に作用する車両の慣性力などを受ける場合がある。このような場合、荷重を受けた車輪と対角線上に位置する車輪側のフロアパネルの下面を振幅の最大点とする捩り振動が発生する。なおこの捩り振動には、上下方向の振動成分と車幅方向の振動成分とが含まれている。そして車両下部構造では、これら振動によりフロアの下面が振動し、この振動によって車両のNV(Noise and Vibration)特性および操縦安定性(操安性)を向上させることが困難になってしまう。
【0005】
特許文献1には、自動車のサスペンション支持部構造が記載されている。この支持部構造では、リヤ側フレーム12の前端にサイドシル2側に屈曲する屈曲部材13と、トルクボックス43とを備える。トルクボックス43は、屈曲部材13の後方に配置されてリヤ側フレーム12とサイドシル2とを接続する。さらに、この支持部構造では、これらの部材を閉断面構造としつつ、その底面にリヤサスペンションを構成するトレーリングアーム7を支持ブラケット6で固定している。このようにして、この構造では、支持ブラケット6の車体前後方向の支持剛性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4349039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の支持部構造では、車両旋回時の横方向の加速度(横G)などにより、トレーリングアーム7から支持ブラケット6、屈曲部材13およびトルクボックス43を介して、リヤサスペンションの揺動軸線方向の振動がリヤ側フレーム12に伝達される。かかる支持部構造では、この振動に起因して車体の捩り振動やフロアパネルのフロア振動が発生してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献1の支持部構造では、リヤ側フレーム12に車幅方向の振動成分を有する振動が発生した場合、この振動を効率的に分散させる特段の工夫がなされていない。したがって特許文献1の支持部構造では、車両のNV特性および操安性が良好に保たれているとは言い難い。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、フロアパネルの捩じり振動を抑制して車両のNV特性および操安性を向上させることができる車両下部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びる一対のサイドシルと、車両の後端から車両前方に延び一対のサイドシルの後端に接続される一対のリヤサイドメンバと、一対のリヤサイドメンバに接続されていて後輪用の揺動するサスペンションが固定される一対のサスペンション固定部と、一対のサイドシルそれぞれから斜め後方へ延びて互いに交差しさらに一対のリヤサイドメンバそれぞれに連結されるX連結部を有する連結メンバとを備え、連結メンバのX連結部と一対のサスペンション固定部とは、一対のリヤサイドメンバ上で互いに隣接していて、あるいは、一対のリヤサイドメンバを隔てて互いに対面していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フロアパネルの捩じり振動を抑制して車両のNV特性および操安性を向上させることができる車両下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る車両下部構造を示す下面図である。
図2図1の車両下部構造の一部を示す図である。
図3図1の車両下部構造の他の一部を示す図である。
図4図1の車両下部構造の一部を示す上面図である。
図5図1の車両下部構造の変形例を模式的に示す図である。
図6図2(a)の車両下部構造の他の変形例を示す図である。
図7図1の車両下部構造のさらに他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びる一対のサイドシルと、車両の後端から車両前方に延び一対のサイドシルの後端に接続される一対のリヤサイドメンバと、一対のリヤサイドメンバに接続されていて後輪用の揺動するサスペンションが固定される一対のサスペンション固定部と、一対のサイドシルそれぞれから斜め後方へ延びて互いに交差しさらに一対のリヤサイドメンバそれぞれに連結されるX連結部を有する連結メンバとを備え、連結メンバのX連結部と一対のサスペンション固定部とは、一対のリヤサイドメンバ上で互いに隣接していて、あるいは、一対のリヤサイドメンバを隔てて互いに対面していることを特徴とする。
【0014】
上記構成では、リヤサイドメンバにサスペンション固定部が接続されている。このため、リヤサイドメンバは、例えば車両走行中にサスペンションからサスペンション固定部を介してサスペンションの揺動軸線方向の荷重を受ける。そこで上記構成では、連結メンバのX連結部とサスペンション固定部を、リヤサイドメンバ上で互いに隣接、あるいはリヤサイドメンバを隔てて対面するように配置している。連結メンバのX連結部は、一対のサイドシルと一対のリヤサイドメンバを交差するように例えば対角線に沿って連結しているため、フロアパネルの捩り剛性を高めることができる。
【0015】
上記構成では、左右いずれかの側のリヤサイドメンバにサスペンション固定部から伝達される荷重を、連結メンバのX連結部を介して反対側のサイドシルまで分散させて逃がすことができる。また、フロアパネルの下側の前部に位置するフロントメンバから左右いずれかの側のサイドシルに伝達された荷重、特に車幅方向の振動を、連結メンバのX連結部を介して反対側のリヤサイドメンバまで分散させて逃がすことができる。したがって上記構成によれば、フロアパネルの捩り振動を抑制して、リヤサイドメンバの振動に起因する車体の捩り振動やフロアパネルのフロア振動を小さくすることにより、車両のNV特性および操安性を向上させることができる。
【0016】
上記の連結メンバのX連結部は、一対のリヤサイドメンバの、サスペンションの揺動軸線と交差する側面に接続されているとよい。
【0017】
これにより、一対のリヤサイドメンバがサスペンション固定部を介して揺動軸線方向の荷重を受けたときに、連結メンバは、一対のリヤサイドメンバの、この荷重を受ける揺動軸に交差する側面に接続されている。このため、左右いずれかの側のリヤサイドメンバが受けた荷重を、連結メンバのX連結部で効率的に受けて反対側のサイドシルまで分散させて逃がすことができる。その結果、リヤサイドメンバの揺動軸方向の振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動を小さくすることができる。
【0018】
上記の連結メンバのX連結部は、一対のサイドシルそれぞれの前端部に連結されているとよい。
【0019】
これにより、一対のサイドシルと一対のリヤサイドメンバが連結メンバのX連結部によって、例えば対角線上に連結されるため、フロアパネルの捩り剛性をより高めることができる。さらに、サスペンション固定部からリヤサイドメンバに伝達される振動に起因する車体の捩り振動を、連結メンバのX連結部を介してサイドシルの前端部からフロントメンバに効率的に伝達することができる。したがって、リヤサイドメンバの振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動を小さくすることができる。
【0020】
上記の一対のサスペンション固定部は、サスペンションの揺動軸線方向が連結メンバのX連結部と平行になるように一対のリヤサイドメンバに接続されているとよい。
【0021】
上記構成では、サスペンションの揺動軸線方向と連結メンバのX連結部が延びる方向例えば対角線方向とが平行になるようにサスペンション固定部をリヤサイドメンバに接続している。このため、サスペンション固定部から左右いずれかの側のリヤサイドメンバに伝達される揺動軸線方向の振動を、連結メンバのX連結部を介して反対側のサイドシルにより効率的に伝達することができる。したがって、リヤサイドメンバの振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動をより小さくすることができる。
【0022】
上記の車両下部構造はさらに、車幅方向に延びていて一対のリヤサイドメンバを連結する1つ以上のリヤクロスメンバを備え、連結メンバのX連結部は、一対のリヤサイドメンバおよびリヤクロスメンバに接続されているとよい。
【0023】
これにより、連結メンバのX連結部がリヤサイドメンバだけでなくリヤクロスメンバにも支持されるので、連結メンバの支持剛性を高めることができ、連結メンバの振動を抑制することができる。また、サスペンション固定部を介して左右いずれかの側のリヤサイドメンバに伝達された荷重を、連結メンバのX連結部およびリヤクロスメンバを介して、反対側のリヤサイドメンバおよびサイドシルに分散させて逃がすことができる。したがって、リヤサイドメンバの振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動をより小さくすることができる。
【0024】
上記の車両下部構造はさらに、フロアパネルの下側の前部に位置するフロントメンバを備え、連結メンバのX連結部は、一対のサイドシルそれぞれの内側側面に連結されていて、連結メンバはさらに、X連結部の交差箇所よりも前方でX連結部から車幅方向内側に分岐しフロントメンバに連結される一対のフロント連結部を有するとよい。
【0025】
これにより、連結メンバは、X連結部によってサイドシルに連結されるとともに、フロント連結部を介してフロントメンバにも連結される。このため、連結メンバの支持剛性を高めることができ、連結メンバの振動を抑制することができる。また、リヤサスペンション固定部からリヤサイドメンバに伝達された振動を、連結メンバのX連結部およびフロント連結部を介してフロントメンバに伝達して分散させることができる。したがって、リヤサイドメンバの振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動をより小さくすることができる。
【0026】
上記のフロントメンバは、一対のサイドシルよりも車両前方に位置する一対のフロントサイドメンバと、一対のフロントサイドメンバと一対のサイドシルとを連結する一対のトルクボックスと、一対のトルクボックスを連結する連結部材とを含み、一対のサイドシルと一対のトルクボックスとは、互いに所定の第1連結面で連結されていて、連結メンバのX連結部は、第1連結面に連結されていて、一対のトルクボックスと連結部材とは、互いに所定の第2連結面で連結されていて、一対のフロント連結部は、第2連結面に連結されているとよい。
【0027】
これにより、連結メンバでは、第1連結面に連結されるX連結部と第2連結面に連結されるフロント連結部がトルクボックスを介して連結される。このため、連結メンバは、X連結部とフロント連結部を隣接して配置して、X連結部とフロント連結部の間の分岐角度を小さくすることができる。このため、左右いずれかの側のリヤサイドメンバから伝達された振動を、反対側のX連結部やフロント連結部を介してフロントメンバに伝達しやすくなる。
【0028】
さらに、連結メンバでは、第1連結面で連結されたサイドシルおよびトルクボックスにX連結部が連結され、第2連結面で連結されたトルクボックスおよび連結部材にフロント連結部が連結されている。このため、X連結部およびフロント連結部の支持面が増えるので、連結メンバの支持剛性を高めることができ、連結メンバの振動を抑制することができる。
【0029】
上記の連結メンバはさらに、X連結部の交差箇所の前後の位置を車両前後方向にわたって連結する一対の中間連結部を有するとよい。
【0030】
これにより、連結メンバは、X連結部の交差箇所の前後の位置を中間連結部によって車両前後方向にわたって連結することができる。したがって、連結メンバの剛性を高めることができ、連結メンバの振動を抑制することができる。
【0031】
上記の連結メンバの一対の中間連結部の前端部は、X連結部を介して一対のフロント連結部の後端部と車両前後方向で重なっていて、連結メンバはさらに、X連結部の内部に配置され一対の中間連結部の前端部と一対のフロント連結部の後端部との間を車両前後方向に架橋する架橋部を有するとよい。
【0032】
これにより、連結メンバでは、フロント連結部の後端部と中間連結部の前端部との間がX連結部の内部に配置された架橋部によって架橋されているため、フロント連結部と中間連結部の間で振動を抑制することができる。したがって上記構成では、フロントメンバと一対のリヤサイドメンバとの間で、連結メンバのフロント連結部、X連結部および中間連結部を介して車両前後方向に荷重を効率的に伝達することができる。
【0033】
上記の1つ以上のリヤクロスメンバは、車幅方向に延びていて連結メンバのX連結部の交差箇所よりも後方の位置を連結する第1リヤクロスメンバを有し、一対の中間連結部の後端部は、第1リヤクロスメンバに所定の接続領域で接続され、さらに接続領域に隣接する位置でX連結部に接続されているとよい。
【0034】
これにより、連結メンバのX連結部がリヤサイドメンバだけでなく第1リヤクロスメンバにも連結されるので、X連結部の支持剛性を高めることができ、連結メンバの振動を抑制することができる。また、連結メンバでは、中間連結部を介して前方からX連結部に荷重や振動が伝達された場合、この荷重や振動をX連結部だけでなく第1リヤクロスメンバにも分散させて逃がすことができる。さらに、中間連結部と第1リヤクロスメンバの接続領域に隣接する位置で、中間連結部とX連結部が接続されているので、中間連結部、第1リヤクロスメンバおよびX連結部の接続剛性を高めることができる。
【実施例
【0035】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0036】
図1は、本発明の実施例に係る車両下部構造100を示す下面図である。図2は、図1の車両下部構造100の一部を示す図である。図中では車両下部構造100を車両下方から見た状態を示している。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0037】
車両下部構造100は、車両の床面を形成するフロアパネル102と、一対のサイドシル104、106と、一対のリヤサイドメンバ108、110とを備える。なお車両下部構造100は、図1に示すように左右対称な構造となっているため、以下では、特に必要な場合を除き、車幅方向右側の構造のみ説明する。
【0038】
一対のサイドシル104、106は、車幅方向に離間していて、フロアパネル102の縁112、114に沿って車両前後方向に延びている。一対のリヤサイドメンバ108、110は、一対のサイドシル104、106の車幅方向内側に配置されていて、車両の後端116から車両前方に延びて、一対のサイドシル104、106の後端部118、120に接続されている。
【0039】
車両下部構造100はさらに、一対のサスペンション固定部122、124と、フロントメンバ126と、連結メンバ128とを備える。一対のサスペンション固定部122、124は、一対のリヤサイドメンバ108、110に接続されていて、不図示の後輪用の揺動するサスペンションが固定される。
【0040】
また、サスペンション固定部122には、サスペンションの揺動軸Sa(図2(a)参照)が通っている。なお図2(a)は、サスペンション固定部122およびその周辺の構造を例示している。サスペンション固定部122を通る揺動軸Saは、車幅方向内側に向かうほど車両前側に傾斜していて、この方向を揺動軸線方向としている。このため、サスペンション固定部122に接続されるリヤサイドメンバ108は、例えば車両走行中にサスペンションからサスペンション固定部122を介して揺動軸線方向の荷重を受ける。
【0041】
フロントメンバ126は、フロアパネル102の下側の前部に位置する部材であって、一対のフロントサイドメンバ130、132と、一対のトルクボックス134、136と、連結部材138とを有する。一対のフロントサイドメンバ130、132は、一対のサイドシル104、106よりも車両前方に位置していて車両前後方向に延びている。一対のトルクボックス134、136は、一対のフロントサイドメンバ130、132と一対のサイドシル104、106とを連結する。連結部材138は、一対のトルクボックス134、136を連結している。
【0042】
一対のサイドシル104、106と一対のトルクボックス134、136とは、互いに所定の第1連結面140、142で連結されている。一対のトルクボックス134、136と連結部材138とは、互いに所定の第2連結面144、146で連結されている。なおフロントメンバ126に含まれるサスペンションフレーム148は、図示のように第2連結面144、146に車両下側から重なっている。
【0043】
連結メンバ128は、X連結部150と、一対のフロント連結部152、154と、一対の中間連結部156、158とを有する。X連結部150は、フロアパネル102の下側で一対のサイドシル104、106のそれぞれから斜め後方へ延びて所定の交差箇所160で互いに交差し、さらに反対側のリヤサイドメンバ108、110のそれぞれに連結される。
【0044】
またX連結部150は、一対のサイドシル連結部162、164と一対のリヤ連結部166、168とを有する。一対のサイドシル連結部162、164は、交差箇所160から一対のサイドシル104、106の前端部170、172および第1連結面140、142に向かって斜め前方に延びていて、これらの前端部170、172および第1連結面140、142に連結されている。
【0045】
車両下部構造100はさらに、第1リヤクロスメンバ174および第2リヤクロスメンバ176を備える。第1リヤクロスメンバ174は、車幅方向に延びていて一対のリヤサイドメンバ108、110の前端部178、180を連結する。第2リヤクロスメンバ176は、図示のように第1リヤクロスメンバ174の車両後方に離間していて、車幅方向に延びていて一対のリヤサイドメンバ108、110を連結する。
【0046】
また、X連結部150の一対のリヤ連結部166、168は、交差箇所160から一対のリヤサイドメンバ108、110の前端部178、180に向かって斜め後方に延びていて、これらの前端部178、180に連結されている。
【0047】
このため車両下部構造100では、一対のサイドシル104、106と一対のリヤサイドメンバ108、110が連結メンバ128のX連結部150によってフロアパネル102の下側で対角線上に連結される。したがって、フロアパネル102の捩り剛性をより高めることができる。
【0048】
また車両下部構造100では、サスペンション固定部122、124からリヤサイドメンバ108、110に伝達される振動に起因する車体の捩り振動を、連結メンバ128のX連結部150を介してサイドシル104、106からフロントメンバ126に効率的に伝達することができる。したがって、リヤサイドメンバ108、110の振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動を小さくすることができる。
【0049】
また一対のリヤサイドメンバ108、110の前端部178、180は、これらの車幅方向外側に位置する一対のサイドシル104、106の後端部118、120の内側側部に接合される。このため、一対のリヤサイドメンバ108、110は、剛性の高い一対のサイドシル104、106によって車幅方向で挟持されている。これにより車両下部構造100では、一対のリヤサイドメンバ108、110の振動をより十分に抑制することができる。
【0050】
さらにX連結部150の一対のリヤ連結部166、168は、図1に示す第1リヤクロスメンバ174および第2リヤクロスメンバ176と一対の中間連結部156、158にも連結されている。
【0051】
一対の中間連結部156、158は、X連結部150の交差箇所160の前後の位置で一対のサイドシル連結部162、164と一対のリヤ連結部166、168とを車両前後方向にわたって連結している。これにより、連結メンバ128は、X連結部150の交差箇所160の前後の位置で中間連結部156、158によって車両前後方向にわたって連結することができるため、剛性を高めることができ、振動を抑制することができる。
【0052】
このように車両下部構造100では、連結メンバ128のX連結部150の一対のリヤ連結部166、168がリヤサイドメンバ108、110だけでなく第1リヤクロスメンバ174および第2リヤクロスメンバ176にも支持される。したがって、連結メンバ128の支持剛性を高めることができ、連結メンバ128の振動を抑制することができる。
【0053】
また車両下部構造100では、サスペンション固定部122、124を介して左右いずれかの側のリヤサイドメンバ108、110に伝達された荷重を、連結メンバ128のX連結部150、第1リヤクロスメンバ174および第2リヤクロスメンバ176を介して、反対側のリヤサイドメンバ108、110およびサイドシル104、106に分散させて逃がすことができる。したがって、リヤサイドメンバ108、110の振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動をより小さくすることができる。
【0054】
さらに連結メンバ128の一対のフロント連結部152、154は、X連結部150の交差箇所160よりも前方で一対のサイドシル連結部162、164から車幅方向内側に分岐して、第2連結面144、146に連結されている(図2(b)参照)。なお図2(b)は、連結メンバ128のフロント連結部152、サイドシル連結部162およびその周辺の構造を例示している。
【0055】
連結メンバ128では、図1に示すように第1連結面140、142に連結されるX連結部150の一対のサイドシル連結部162、164と、第2連結面144、146に連結される一対のフロント連結部152、154とが一対のトルクボックス134、136を介して連結される。これにより、連結メンバ128は、X連結部150の一対のサイドシル連結部162、164と一対のフロント連結部152、154を隣接して配置することができるため、一対のサイドシル連結部162、164と一対のフロント連結部152、154との間の分岐角度を小さくすることができる。したがって、左右いずれかの側のリヤサイドメンバ108、110から伝達された振動を、反対側のサイドシル連結部162、164やフロント連結部152、154を介してフロントメンバ126に伝達しやすくなる。
【0056】
また連結メンバ128では、第1連結面140、142で連結された一対のサイドシル104、106および一対のトルクボックス134、136に一対のサイドシル連結部162、164が連結され、第2連結面144、146で連結された一対のトルクボックス134、136および連結部材138に一対のフロント連結部152、154が連結されている。したがって車両下部構造100では、一対のフロント連結部152、154およびX連結部150の一対のサイドシル連結部162、164の支持面が増えるので、連結メンバ128の支持剛性を高めることができ、連結メンバ128の振動を抑制することができる。
【0057】
さらに連結メンバ128のX連結部150は、図2(a)に示すようにリヤ連結部166がリヤサイドメンバ108の側面182に接続されている。このリヤサイドメンバ108の側面182は、サスペンションの揺動軸線Saと交差している。
【0058】
このため、左右いずれかの側のリヤサイドメンバ108、110がサスペンション固定部122、124を介して揺動軸線方向の荷重を受けたときに、この荷重を、連結メンバ128のX連結部150の一対のリヤ連結部166、168で効率的に受けて反対側のサイドシル104、106まで分散させて逃がすことができる。その結果、車両下部構造100では、リヤサイドメンバ108、110の揺動軸方向の振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動を小さくすることができる。
【0059】
また連結メンバ128では、図2(a)に示すようにX連結部150のリヤ連結部166がリヤサイドメンバ108と第2リヤクロスメンバ176の接続箇所の角部184に向かって延び、この角部184に重なって接合されている。このように連結メンバ128では、リヤ連結部166がリヤサイドメンバ108の側面182に加え、リヤサイドメンバ108と第2リヤクロスメンバ176の接続箇所の角部184に接続されているため、接続剛性を向上させることができる。
【0060】
さらに車両下部構造100では、X連結部150のリヤ連結部166とサスペンション固定部122を、図2(a)に示すようにリヤサイドメンバ108上で互いに隣接するように配置している。またリヤ連結部166は、リヤサイドメンバ108に角部184を基準にして接続幅Laで連結され、第2リヤクロスメンバ176に接続幅Lbで連結されている。なおサスペンション固定部122の不図示のボルト軸は、リヤサイドメンバ108の接続幅Laの範囲内に位置している。
【0061】
図2(b)に示すように、X連結部150のサイドシル連結部162は、サイドシル104とトルクボックス134の第1連結面140の角部186に向かって延び、この角部188に重なって接合されている。そしてサイドシル連結部162は、サイドシル104の内側側面188に接続幅Lcで連結されていて、さらにトルクボックス134に接続幅Ldで連結されている。これにより、サイドシル連結部162の接続剛性を向上させることができる。
【0062】
また連結メンバ128のフロント連結部152は、図2(b)に示すようにトルクボックス132と連結部材138の第2連結面144の角部190に向かって延び、この角部190に重なって接合されている。そしてフロント連結部152は、トルクボックス134に接続幅Leで連結されていて、さらに連結部材138に接続幅Lfで連結されている。これにより、フロント連結部152の接続剛性を向上させることができる。
【0063】
またフロント連結部152は、サスペンションフレーム148に取付点192で取り付けられている。このため、フロント連結部152は、サスペンションフレーム148が不図示のサスペンションから伝達された荷重を、取付点192を介して受けてX連結部150まで伝達し分散させることができる。またフロント連結部152の前端部193は、図2(b)に示すように車両前後方向に直線状に延びているが、これに限られず、車両前側ほど車幅方向外側に傾斜するような形状としてもよい。
【0064】
図3は、図1の車両下部構造100の他の一部を示す図である。図3(a)は、サスペンション固定部124およびその周辺の構造を示す図である。図3(b)は、図3(a)の車両下部構造100から連結メンバ128の中間連結部158を省略した図である。
【0065】
中間連結部158の後端部194は、図3(a)に示すように所定の接続領域196で第1リヤクロスメンバ174の前面198、下面200および後面202に接合され、さらに接続領域196に隣接する位置にある他の接続領域204でX連結部150のリヤ連結部168に接続されている。
【0066】
車両下部構造100はさらに、図3(a)に示すトラス構造206、208を備える。トラス構造206は、第1リヤクロスメンバ174、リヤサイドメンバ110の前端部180およびリヤ連結部168に囲まれることで形成されていて、これらの各部材およびフロアパネル102の剛性を高めることができる。トラス構造208は、X連結部150のサイドシル連結部164およびリヤ連結部168と、中間連結部158とに囲まれることで形成されていて、これらの各部材およびフロアパネル102の剛性を高めることができる。
【0067】
図3(b)に示すように、リヤ連結部168の後端部210は、接続領域196で第1リヤクロスメンバ174の前面198、下面200および後面202に接合されている。このため、接続領域196では、中間連結部158の後端部194、リヤ連結部168の後端部210および第1リヤクロスメンバ174によって三枚接合されていて、これら各部材の接続剛性を高めることができる。
【0068】
このように車両下部構造100では、連結メンバ128のX連結部150のリヤ連結部168がリヤサイドメンバ110だけでなく第1リヤクロスメンバ174にも連結されるので、X連結部150の支持剛性を高めることができ、連結メンバ128の振動を抑制することができる。また、連結メンバ128では、中間連結部158を介して前方からX連結部150に荷重や振動が伝達された場合、この荷重や振動をX連結部150だけでなく第1リヤクロスメンバ174にも分散させて逃がすことができる。
【0069】
さらに、中間連結部158の後端部194と第1リヤクロスメンバ174との接続領域196に隣接する位置で、中間連結部158の後端部194とX連結部150のリヤ連結部168が接続されているので、中間連結部158、第1リヤクロスメンバ174およびX連結部150のリヤ連結部168の接続剛性を高めることができる。
【0070】
図4は、図1の車両下部構造100の一部を示す上面図である。図4(a)は、フロアパネル102を透過した状態で車両下部構造100の一部を示している。図4(b)は、図4(a)の連結メンバ128を示している。
【0071】
車両下部構造100はさらに、図4(a)に示すようにセンタートンネル212と、前側シートクロスメンバ214および後側シートクロスメンバ216とを備える。センタートンネル212は、フロアパネル102の車幅方向の中央で車両前後方向にわたって延び上方に隆起している。
【0072】
前側シートクロスメンバ214は、車幅方向に延びていて一対のサイドシル104、106を連結する部材であり、その上面には複数の前側シート取付ブラケット218が設置されている。後側シートクロスメンバ216は、前側シートクロスメンバ214の車両後方に離間していて、車幅方向に延びていて一対のサイドシル104、106を連結する部材であり、その上面には複数の後側シート取付ブラケット220が設置されている。
【0073】
ここでセンタートンネル212は、フロアパネル102から上方に隆起したトンネル部222を有する。トンネル部222は、例えば車両後方に向かうほどフロアパネル102からの隆起量が小さくなる。このため、フロアパネル102は、図4(a)に示すトンネル部222の下端224よりも後方の位置では面振動を生じやすい。そこで車両下部構造100では、トンネル部222の下端224よりも後方の位置に連結メンバ128の交差箇所160を配置することにより、フロアパネル102の面振動を抑制することができる。
【0074】
また連結メンバ128では、後側シートクロスメンバ216に交差箇所160を重ねつつ、後側シートクロスメンバ216の後方にリヤ連結部166、168を配置している。このため、フロアパネル102のうち、トンネル部222の下端224よりも後方の位置での面振動をより十分に抑制することができる。
【0075】
さらに連結メンバ128では、交差箇所160の付近で、後側シートクロスメンバ216に設置された後側シート取付ブラケット220a、220bと、サイドシル連結部162、164とを上下方向で重ねて配置している。これにより、乗員が着座することで荷重を受ける不図示のフロントシート下面の剛性を高めることができ、乗員に伝達される振動を抑制してNV特性を向上させることができる。しかも、連結メンバ128の交差箇所160の付近で、乗員の体重を受ける後側シート取付ブラケット220a、220bとサイドシル連結部162、164を上下方向に重ねているので、サイドシル連結部162、164に前側シート取付ブラケット218を重ねる場合よりも、乗員に伝達される振動をより十分に抑制することができる。
【0076】
なお後側シート取付ブラケット220は、サイドシル連結部162、164に限らず、中間連結部156、158と上下方向で重ねるように配置したり、平面視でサイドシル連結部162、中間連結部156およびリヤ連結部166とで囲まれる所定領域226と上下方向に重ねるように配置したりしてもよい。
【0077】
連結メンバ128はさらに、図4(b)に示すように複数の架橋部228a、228b、230a、230b、232a、232bを備える。中間連結部156の前端部234は、X連結部150のサイドシル連結部162を介して、フロント連結部152の後端部236と車両前後方向で重なっている。架橋部228a、228bは、サイドシル連結部162の内部に配置され、中間連結部156の前端部234とフロント連結部152の後端部236との間を車両前後方向に架橋することによりバルクヘッドとして機能している。これにより、フロント連結部152と中間連結部156の間で剛性を高めつつ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0078】
中間連結部158の前端部238は、X連結部150のサイドシル連結部164を介して、フロント連結部154の後端部240と車両前後方向で重なっている。架橋部230a、230bは、サイドシル連結部164の内部に配置され、中間連結部158の前端部238とフロント連結部154の後端部240との間を車両前後方向に架橋することによりバルクヘッドとして機能している。これにより、フロント連結部154と中間連結部158の間で剛性を高めつつ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0079】
リヤ連結部168の前端部242は、X連結部150の交差箇所160を介して、サイドシル連結部162の後端部244と車両前後方向で重なっている。架橋部232a、232bは、X連結部150の交差箇所160の内部に配置され、リヤ連結部168の前端部242とサイドシル連結部162の後端部244との間を車両前後方向に架橋することによりバルクヘッドとして機能している。これにより、リヤ連結部168とサイドシル連結部162の間で剛性を高めつつ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0080】
したがって車両下部構造100では、フロントメンバ126と一対のリヤサイドメンバ108、110との間で、連結メンバ128のフロント連結部152、154、X連結部150および中間連結部156、158を介して、車両前後方向に荷重を効率的に伝達することができる。
【0081】
なお上記の連結メンバ128およびリヤサイドメンバ108、110は、フロアパネル102の下側に配置したが、これに限られず、フロアパネル102の上側に配置してもよい。
【0082】
図5は、図1の車両下部構造100の変形例を模式的に示す図である。図5(a)に示す車両下部構造100Aでは、連結メンバ128のX連結部150のリヤ連結部166とサスペンション固定部122を、リヤサイドメンバ108の車幅方向に対向する領域すなわち側面246、248にそれぞれ接続している。つまり、X連結部150のリヤ連結部166とサスペンション固定部122を、リヤサイドメンバ108を隔てて対面するように配置している。このような車両下部構造100Aであっても、リヤサイドメンバ108の揺動軸Saの揺動軸方向の振動を抑制することができる。
【0083】
図5(b)に示す車両下部構造100Bは、連結メンバ128のX連結部150のリヤ連結部166とサスペンション固定部122を、リヤサイドメンバ108の上下方向に対向する領域すなわち上面250、下面252にそれぞれ接続している。つまり、X連結部150のリヤ連結部166とサスペンション固定部122を、リヤサイドメンバ108上で互いに隣接するように配置している。このような車両下部構造100Bであっても、リヤサイドメンバ108の揺動軸Saの揺動軸方向の振動を抑制することができる。
【0084】
図6は、図2(a)の車両下部構造100の他の変形例を示す図である。変形例の車両下部構造100Cは、サスペンション固定部120に代えて、サスペンション固定部122Aを備える点で車両下部構造100と異なる。
【0085】
サスペンション固定部122Aは、図示を省略するサスペンションの揺動軸Sbの揺動軸線方向が、連結メンバ128のX連結部150のリヤ連結部166の延びる方向例えば対角線方向Tと平行になるようにリヤサイドメンバ108に接続されている。
【0086】
このように車両下部構造100Cでは、サスペンションの揺動軸Sbの揺動軸線方向とX連結部150のリヤ連結部166の対角線方向Tとが平行になるようにサスペンション固定部122Aをリヤサイドメンバ108に接続している。なお図示を省略するが、車両下部構造100Cでは、サスペンション固定部124も同様に、リヤ連結部168の対角線方向と平行になるようにリヤサイドメンバ110に接続している。
【0087】
したがって車両下部構造100Cでは、サスペンション固定部122A、124から左右いずれかの側のリヤサイドメンバ108、110に伝達される揺動軸線方向の振動を、連結メンバ128のX連結部150を介して反対側のサイドシル104、106により効率的に伝達することができる。したがって、リヤサイドメンバ108、110の振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動をより小さくすることができる。
【0088】
図7は、図1の車両下部構造100のさらに他の変形例を示す図である。図7(a)に示す車両下部構造100Dは、連結メンバ128に代えて、連結メンバ128Aを備える点で車両下部構造100と異なる。
【0089】
連結メンバ128Aは、X連結部150Aと、一対のフロント連結部162A、164Aと、一対の中間連結部156A、158Aとを有する。X連結部150Aは、一対のサイドシル連結部162A、164Aと一対のリヤ連結部166A、168Aとを有する。X連結部150Aは、一対のサイドシル104、106と一対のリヤサイドメンバ108、110をフロアパネル102の下側で交差するように連結しているものの、図7(a)に示すように対角線に沿っては連結していない。
【0090】
すなわち一対のサイドシル連結部162A、164Aは、交差箇所160Aから上記の第1連結面140、142ではなく、第1連結面140、142よりも車両後方に位置する一対のサイドシル104、106の所定箇所254、256に向かって斜め前方に延びていて、これらの所定箇所254、256に連結されている。
【0091】
また一対のリヤ連結部166A、168Aは、交差箇所160Aから一対のリヤサイドメンバ108、110の前端部178、180に向かって斜め後方に延びていて、これらの前端部178、180に連結されている。
【0092】
なお一対のフロント連結部152A、154Aは、X連結部150Aの交差箇所160Aよりも前方で一対のサイドシル連結部162A、164Aから車幅方向内側に分岐して、フロントメンバ126に連結されている。一対の中間連結部156A、158Aは、交差箇所160Aの前後の位置で一対のサイドシル連結部162A、164Aと一対のリヤ連結部166A、168Aとを車両前後方向にわたって連結している。
【0093】
このように車両下部構造100Cは、連結メンバ128AのX連結部150Aによって一対のサイドシル104、106と一対のリヤサイドメンバ108、110をフロアパネル102の下側で対角線に沿って連結していないものの、交差するようには連結しているので、フロアパネル102の捩り剛性を高めることができる。
【0094】
図7(b)に示す車両下部構造100Eは、連結メンバ128に代えて、連結メンバ128Bを備える点で車両下部構造100と異なる。連結メンバ128Bは、一対のフロアサイドメンバ258、260と、Xメンバ262と、一対のサイドシル連結部162B、164Bとを有する。
【0095】
一対のフロアサイドメンバ258、260は、図7(b)に示すようにフロアパネル102の下側で前端部264、266がフロントメンバ126に連結し、後端部268、270が一対のリヤサイドメンバ108、110の前端部178、180に連結している。このようにして、一対のフロアサイドメンバ258、260は、フロントメンバ126と一対のリヤサイドメンバ108、110とをつないでいる。
【0096】
またXメンバ262は、一対のフロアサイドメンバ258、260の間にX字状に差し渡され、一対のフロアサイドメンバ258、260それぞれに連結されている。一対のサイドシル連結部162B、164Bは、一対のフロアサイドメンバ258、260から車幅方向外側に分岐して、第1連結面140、142に連結されている。
【0097】
連結メンバ128Bはさらに、図7(b)に示すように複数の架橋部272a、272b、274a、274b、276、278を備える。Xメンバ262の前端部280は、フロアサイドメンバ258を介して、サイドシル連結部162Bの後端部282とXメンバ262の延びる延長方向で重なっている。架橋部272a、272bは、フロアサイドメンバ258の内部に配置され、Xメンバ262の前端部280とサイドシル連結部162Bの後端部282との間を延長方向に架橋することによりバルクヘッドとして機能している。これにより、Xメンバ262とサイドシル連結部162Bの間で剛性を高めつつ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0098】
Xメンバ262の前端部284は、フロアサイドメンバ260を介して、サイドシル連結部164Bの後端部286とXメンバ262の延長方向で重なっている。架橋部274a、274bは、フロアサイドメンバ260の内部に配置され、Xメンバ262の前端部284とサイドシル連結部164Bの後端部286との間を延長方向に架橋することによりバルクヘッドとして機能している。これにより、Xメンバ262とサイドシル連結部164Bの間で剛性を高めつつ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0099】
Xメンバ262の後端部288は、フロアサイドメンバ258の後端部268とXメンバ262の延長方向で重なっている。架橋部276は、フロアサイドメンバ258の内部に配置され、Xメンバ262の後端部288とフロアサイドメンバ258の後端部268との間を延長方向に架橋することによりバルクヘッドとして機能している。これにより、Xメンバ262とフロアサイドメンバ258の間で剛性を高めつつ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0100】
Xメンバ262の後端部290は、フロアサイドメンバ260の後端部270とXメンバ262の延長方向で重なっている。架橋部278は、フロアサイドメンバ260の内部に配置され、Xメンバ262の後端部290とフロアサイドメンバ260の後端部270との間を延長方向に架橋することによりバルクヘッドとして機能している。これにより、Xメンバ262とフロアサイドメンバ260の間で剛性を高めつつ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0101】
したがって車両下部構造100Eでは、フロントメンバ126と一対のリヤサイドメンバ108、110との間で、連結メンバ128Bの一対のフロアサイドメンバ258、260、一対のサイドシル連結部162B、164BおよびXメンバ262を介して、車両前後方向に荷重を効率的に伝達することができる。なお連結メンバ128Bは、図1に示す連結メンバ128と比べて各構成部材の数や形状が異なるものの、各構成部材を組み合わせた状態では同じ形状となるため、荷重や振動を伝達し分散させるなど同一の機能を有する。なお上記の一対のフロアサイドメンバ258、260は、フロアパネル102の下側に配置したが、これに限られず、フロアパネル102の上側に配置してもよい。
【0102】
以上説明したように車両下部構造100、100A~100Eでは、連結メンバ128、128A、128Bによってフロアパネル102の捩り剛性を高めることができる。また、車両下部構造100、100A~100Eでは、連結メンバ128、128A、128Bを介して、左右いずれかの側のリヤサイドメンバ108、110に伝達される荷重を、反対側のサイドシル104、106まで分散させて逃がすことができ、また、フロントメンバ126から左右いずれかの側のサイドシル104、106に伝達された荷重を、反対側のリヤサイドメンバ108、110まで分散させて逃がすことができる。
【0103】
したがって車両下部構造100、100A~100Eによれば、フロアパネル102の捩り振動を抑制して、リヤサイドメンバ108、110の振動に起因する車体の捩り振動やフロアパネル102のフロア振動を小さくすることにより、車両のNV特性および操安性を向上させることができる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、車両下部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
100、100A~100E…車両下部構造、102…フロアパネル、104、106…サイドシル、108、110…リヤサイドメンバ、112、114…フロアパネルの縁、116…車両の後端、118、120…サイドシルの後端部、122、122A、124…サスペンション固定部、126…フロントメンバ、128、128A、128B…連結メンバ、130、132…フロントサイドメンバ、134、136…トルクボックス、138…連結部材、140、142…第1連結面、144、146…第2連結面、148…サスペンションフレーム、150、150A…X連結部、152、152A、154、154A…フロント連結部、156、156A、158、158A…中間連結部、160、160A…交差箇所、162、162A、162B、164、164A、164B…サイドシル連結部、166、166A、168、168A…リヤ連結部、170、172…サイドシルの前端部、174…第1リヤクロスメンバ、176…第2リヤクロスメンバ、178、180…リヤサイドメンバの前端部、182、246、248…リヤサイドメンバの側面、184、186、190…角部、188…サイドシルの内側側面、192…取付点、193…フロント連結部の前端部、194…中間連結部の後端部、196、204…接続領域、198…第1リヤクロスメンバの前面、200…第1リヤクロスメンバの下面、202…第1リヤクロスメンバの後面、206、208…トラス構造、210…リヤ連結部の後端部、212…センタートンネル、214…前側シートクロスメンバ、216…後側シートクロスメンバ、218…前側シート取付ブラケット、220、220a、220b…後側シート取付ブラケット、222…トンネル部、224…トンネル部の下端、226…所定領域、228a、228b、230a、230b、232a、232b、272a、272b、274a、274b、276、278…架橋部、234、238…中間連結部の前端部、236、240…フロント連結部の後端部、242…リヤ連結部の前端部、244、282、286…サイドシル連結部の後端部、250…リヤサイドメンバの上面、252…リヤサイドメンバの下面、254、256…サイドシルの所定箇所、258、260…フロアサイドメンバ、262…Xメンバ、264、266…フロアサイドメンバの前端部、268、270…フロアサイドメンバの後端部、280、284…Xメンバの前端部、288、290…Xメンバの後端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7