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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】漏洩検知機能付き配管及び漏洩検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/18 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G01M3/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021008154
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112348
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本泉 光
(72)【発明者】
【氏名】菰田 夏樹
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089110(JP,A)
【文献】特開2004-279347(JP,A)
【文献】特開2001-099744(JP,A)
【文献】特表2018-523136(JP,A)
【文献】特表2018-519514(JP,A)
【文献】特開平02-269933(JP,A)
【文献】実開平01-171340(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/204802(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106662496(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108562409(CN,A)
【文献】中国実用新案第207989925(CN,U)
【文献】中国実用新案第208074305(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00~3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を液体が流れる筒状の配管本体と、
前記配管本体の周囲に巻き付けられた保温体と、
前記保温体の周囲に巻き付けられ、前記保温体への巻き付け面に一対の検知用配線を具備する防水シートとを有し、
前記一対の検知用配線は、それぞれ前記配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部とを具備し、前記第1の配線部及び前記第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向している、漏洩検知機能付き配管。
【請求項2】
請求項1に記載の漏洩検知機能付き配管において、
前記防水シートは、断熱性を有する、漏洩検知機能付き配管。
【請求項3】
周囲に保温体が巻き付けられ、内部を液体が流れる配管本体からの液体の漏洩を検知する漏洩検知装置であって、
前記保温体の周囲に巻き付けられ、前記保温体への巻き付け面に一対の検知用配線を具備する防水シートと、
前記一対の検知用配線に接続され、前記一対の検知用配線間の導通状態を検出し、その検出結果を導電性アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
前記一対の検知用配線は、それぞれ前記配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部を具備し、前記第1の配線部及び前記第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向している、漏洩検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が流れる配管本体からの液体の漏洩を検知する漏洩検知機能付き配管及び漏洩検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配管が張り巡らされたパイプラインを有する発電所や化学メーカーでは、配管内を薬品や水等の液体を流すことで、これら薬品や水等の液体を供給/排出したり、輸送したりしている。このような発電所や化学メーカーにおいては、配管内を流れる薬品や水等の液体が漏洩した場合、重大な事故につながる可能性がある。そのため、配管からの液体の漏洩を早期に検知する必要があるが、配管のどの箇所から液体が漏洩するかは予測が難しい。また、配管内を流れる液体の温度を維持するために配管の周囲に保温材が巻き付けられているものにおいては、配管からの液体の漏洩が発生した場合、それを視認しにくいため、漏洩が発生した箇所を特定することが困難である。
【0003】
ここで、特許文献1には、配管構造体に巻き付けられた保温材の一部に湿度センサを埋め込み、配管構造体からの水分の漏洩を検知する仕組みが開示されている。また、特許文献2には、配管とその外面に設けられた保温材との間において配管の破断が想定される位置に湿度センサを設け、配管の破断による水分の漏洩を検知する仕組みが開示されている。さらに、特許文献3には、蒸気管の周囲を被覆した断熱保温層の表面の中心線より下位にその長さ方向に亘ってセンサを配置することで、蒸気管からの水分の漏洩を検知する仕組みが開示されている。
【0004】
このような仕組みを用いることで、液体が流れる配管からの液体の漏洩を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5198946号公報
【文献】特開平8-285717号公報
【文献】特許平9-72489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたものにおいては、水分の漏洩を検知するためのセンサが特定の領域にしか設けられていないため、水分の漏洩を検知できる領域が制限されてしまうという問題点がある。また、特許文献3に開示されたものにおいても、センサが配管の長さ方向に亘って配置されているものの、配管の表面の中心線より下位にしか配置されていないため、配管の表面の中心線より上位や側部にて水分の漏洩が生じた場合、その旨を早期に検知することができない虞がある。また、水分の漏洩を検知するためのセンサがその一部でも露出している場合、周辺の環境によってはセンサが劣化しやすくなってしまうという問題点がある。
【0007】
また、特許文献1に開示されたものにおいては、湿度センサを保温材に埋め込むために湿度センサを収容した部材を新たに作製し、保温材に埋め込むという作業が発生してしまうという問題点がある。また、特許文献2,3に開示されたものにおいても、配管と保温材との間や断熱保温層の表面にセンサを取り付けて固定するための構成が新たに必要となってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で性能の劣化を抑制しながらも液体の漏洩を検知できる範囲を広げることができる漏洩検知機能付き配管及び漏洩検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の漏洩検知機能付き配管は、
内部を液体が流れる筒状の配管本体と、
前記配管本体の周囲に巻き付けられた保温体と、
前記保温体の周囲に巻き付けられ、前記保温体への巻き付け面に一対の検知用配線を具備する防水シートとを有し、
前記一対の検知用配線は、それぞれ前記配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部とを具備し、前記第1の配線部及び前記第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向している。
【0010】
上記のように構成された漏洩検知機能付き配管においては、配管本体から液体が漏洩した場合、漏洩した液体による水分が一対の検知用配線に付着することで一対の検知用配線間が短絡して導通状態となり、この導通状態を検出することで配管本体からの液体の漏洩を検知することができるが、一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートにおいて、それぞれ配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部とを具備し、第1の配線部及び第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向しているので、配管本体の長さ方向とそれと交差する方向との全域において液体の漏洩を検知しやすくなる。また、一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートの保温体への巻き付け面に設けられていることで、検知用配線が露出しておらず劣化が抑制される。また、一対の検知用配線が防水シートに設けられているが、防水シートが、そもそも保温体を外部からの湿気から保護するために保温体の周囲に巻き付けられたものであるため、新たな部材を用いることなく簡易な構成で配管本体からの液体の漏洩を検知することができる。
【0011】
また、防水シートが断熱性を有するものであれば、保温体における結露の発生が抑制される。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の漏洩検知装置は、
周囲に保温体が巻き付けられ、内部を液体が流れる配管本体からの液体の漏洩を検知する漏洩検知装置であって、
前記保温体の周囲に巻き付けられ、前記保温体への巻き付け面に一対の検知用配線を具備する防水シートと、
前記一対の検知用配線に接続され、前記一対の検知用配線間の導通状態を検出し、その検出結果を導電性アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
前記一対の検知用配線は、それぞれ前記配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部を具備し、前記第1の配線部及び前記第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向している。
【0013】
上記のように構成された漏洩検知装置においては、配管本体から液体が漏洩した場合、漏洩した液体による水分が一対の検知用配線に付着することで一対の検知用配線間が短絡して導通状態となり、この導通状態を検出手段にて検出して導電性アンテナを介して非接触送信することで配管本体からの液体の漏洩を検知することができるが、一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートにおいて、それぞれ配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部とを具備し、第1の配線部及び第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向しているので、配管本体の長さ方向とそれと交差する方向との全域において液体の漏洩を検知しやすくなる。また、一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートの保温体への巻き付け面に設けられていることで、検知用配線が露出しておらず劣化が抑制される。また、一対の検知用配線が防水シートに設けられているが、防水シートが、そもそも保温体を外部からの湿気から保護するために保温体の周囲に巻き付けられたものであるため、新たな部材を用いることなく簡易な構成で配管本体からの液体の漏洩が検知できる。さらには、一対の検知用配線間の導通状態が非接触送信されることで配管本体からの液体の漏洩が検知されることになるので、電源に接続された測定器等をセンサに接続する必要がなく、敷設が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の漏洩検知機能付き配管によれば、導通状態が検出されることで配管本体からの液体の漏洩を検知するための一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートにおいて、それぞれ配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部とを具備し、第1の配線部及び第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向しているため、配管本体の長さ方向とそれと交差する方向との全域において液体の漏洩を検知しやすくなり、液体の漏洩を検知できる範囲を広げることができる。また、一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートの保温体への巻き付け面に設けられているため、検知用配線が露出しておらず性能の劣化を抑制することができる。また、一対の検知用配線が、保温体を外部からの湿気から保護するために保温体の周囲に巻き付けられた防水シートに設けられているため、新たな部材を用いることなく簡易な構成で配管本体からの液体の漏洩を検知することができる。
【0015】
また、防水シートが断熱性を有するものにおいては、保温体における結露の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明の漏洩検知装置によれば、検出手段にて導通状態が検出されることで配管本体からの液体の漏洩を検知するための一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートにおいて、それぞれ配管本体の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部とを具備し、第1の配線部及び第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向しているため、配管本体の長さ方向とそれと交差する方向との全域において液体の漏洩を検知しやすくなり、液体の漏洩を検知できる範囲を広げることができる。また、一対の検知用配線が、配管本体の周囲に巻き付けられた保温体の周囲に巻き付けられた防水シートの保温体への巻き付け面に設けられているため、検知用配線が露出しておらず性能の劣化を抑制することができる。また、一対の検知用配線が、保温体を外部からの湿気から保護するために保温体の周囲に巻き付けられた防水シートに設けられているため、新たな部材を用いることなく簡易な構成で配管本体からの液体の漏洩を検知することができる。さらには、一対の検知用配線間の導通状態が非接触送信されることで配管本体からの液体の漏洩が検知されることになるため、電源に接続された測定器等をセンサに接続する必要がなく、敷設が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の漏洩検知機能付き配管の実施の一形態を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た図、(c)は(b)に示したA-A’断面図である。
図2図1に示したアルミクラフト紙の構成を示す図であり、(a)はグラスウールへの巻き付け面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA-A’断面図である。
図3図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管における配管本体からの漏洩を検知するためのシステム構成を示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した読み取りタグの構成を示す図である。
図4図3に示したシステムにおいて、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管における配管本体からの液体の漏洩を検知する方法を説明するためのフローチャートである。
図5図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管において配管本体から液体が漏洩している状態を説明するための図である。
図6図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管において、一対の検知用配線のそれぞれが、配管本体の長さ方向に延びる配線部と、それと交差する方向に延びる配線部とを具備し、一対の検知用配線の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向していることによる特有の効果を説明するための図である。
図7図1に示したアルミクラフト紙に形成される一対の検知用配線の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の漏洩検知機能付き配管の実施の一形態を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た図、(c)は(b)に示したA-A’断面図である。図2は、図1に示したアルミクラフト紙30の構成を示す図であり、(a)はグラスウール20への巻き付け面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA-A’断面図である。
【0020】
本形態は図1に示すように、筒状の配管本体10の周囲にグラスウール20が巻き付けられ、さらに、グラスウール20の周囲にアルミクラフト紙30が巻き付けられて構成された漏洩検知機能付き配管1である。
【0021】
配管本体10は、金属や樹脂からなり、筒状の内部を水や水溶液等の液体が流れる。配管本体10としては例えば、内径Φ100mmの鉄製配管を用いることができる。
【0022】
グラスウール20は、本願発明にて保温体となるものである。グラスウール20は、ガラス繊維でできた綿状の素材であることにより、配管本体10の周囲に巻き付けられることで、例えば、配管本体10の内部を高温の液体が流れる場合は、その液体が冷めないようにし、配管本体10の内部を低温の液体が流れる場合は、その液体が温まらないようにする。グラスウール20としては例えば、外形Φ300mmで1000mm長のものが考えられる。また、保温体として、グラスウール20の代わりに、気泡緩衝シートを用いてもよい。
【0023】
アルミクラフト紙30は、本願発明にて防水シートとなるものである。アルミクラフト紙30は図2に示すように、非導電性のクラフト紙31の一方の面にアルミ箔32が積層され、さらに、クラフト紙31のアルミ箔32の積層面とは反対側の面の全面に亘って、例えば銅エッチングによって、図1に示した検知用配線33となる一対の検知用配線33a,33bが形成されて構成されている。このようにアルミクラフト紙30は、クラフト紙31の一方の面にアルミ箔32が積層されて構成されることで、配管本体1の断熱性をさらに高めるとともに、グラスウール20を、結露等外部からの水分から保護する役割を果たす。
【0024】
検知用配線33aは、アルミクラフト紙30の側辺のうち配管本体10の長さ方向に延びる一方の側辺に沿って延びた第1の配線部33a-1と、配線部33a-1から、アルミクラフト紙30の側辺のうち配管本体10の長さ方向に延びる他方の側辺に向かって延びた複数の第2の配線部33a-2とから構成された櫛歯状となっている。配線部33a-1の一方の端部は、接続用端子34aとなっている。検知用配線33bは、アルミクラフト紙30の側辺のうち検知用配線33aの配線部33a-1が沿う側辺に対向する端辺に沿って配管本体10の長さ方向に延びた第1の配線部33b-1と、配線部33b-1から、アルミクラフト紙30の側辺のうち検知用配線33aの配線部33a-1が沿う側辺に向かって延びた複数の第2の配線部33b-2とから構成された櫛歯状となっている。配線部33b-1の一方の端部は、接続用端子34bとなっている。このように構成された一対の検知用配線33a,33bは、櫛歯状の歯となる配線部33a-2,33b-2が互い違いになるように配置されている。これにより、一対の検知用配線33a,33bは、配線部33a-1,33b-1どうしが間隔d1を隔てて対向しており、配線部33a-2,33b-2どうしが間隔d2を隔てて対向している。
【0025】
以下に、上記のように構成された漏洩検知機能付き配管1における配管本体10からの漏洩を検知する方法及びその際の作用について説明する。
【0026】
図3は、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1における配管本体10からの漏洩を検知するためのシステム構成を示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した読み取りタグ40の構成を示す図である。
【0027】
図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1における配管本体10からの漏洩を検知するためのシステムとしては、図3に示すように、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1に接続された読み取りタグ40と、読み取りタグ40に対して非接触通信が可能なリーダライタ2とを有するシステムが考えられる。なお、リーダライタ2が、読み取りタグ40との非接触通信のみを行い、後述する処理を実行できないものである場合は、リーダライタ2にパソコン等を接続して処理を実行することになる。
【0028】
読み取りタグ40は図3(b)に示すように、例えばPET(polyethylene terephthalate)等のプラスチックフィルムから構成されたベース基材41の一方の面上に、通信用のアンテナ43及び2本の補助配線44a,44bが形成されているとともに、検出手段となるICチップ42が搭載されている。
【0029】
アンテナ43は、ベース基材41の一方の面に、2本の導体が空隙を介して直列に並ぶようにして、例えば銅等の導電性材料がエッチングされること等によって形成されている。アンテナ43のサイズとしては、例えば、70mm×20mmのものが考えられる。
【0030】
2本の補助配線44a,44bは、一方の端部がICチップ42に接続され、そこからベース基材41の1つの端辺に向かって互いに並行して延び、ベース基材41の端辺に沿う領域において折れ曲がり、ベース基材41の端辺に沿って互いに反対方向に向かって延び、他方の端部が接続用端子45a,45bとなって終端している。この補助配線44a,44bも、例えば銅等の導電性材料がエッチングされること等によって形成されている。
【0031】
ICチップ42は、2つのアンテナ端子(不図示)と、2つの検知用端子(不図示)とが設けられており、これらアンテナ端子及び検知用端子が設けられた面が搭載面となって、ベース基材41のアンテナ43及び補助配線44a,44bが形成された面に搭載され、異方性導電ペースト(不図示)によって固定されている。ICチップ42のアンテナ端子はそれぞれアンテナ43に接続され、ICチップ42の検知用端子は、補助配線44a,44bのそれぞれの一方の端部に接続されており、異方性導電ペーストによって、アンテナ端子がアンテナ43に、検知用端子が補助配線44a,44bにそれぞれ導通している。ICチップ42としては、例えば、EM micro electronic社製のEM4425を用いることができる。
【0032】
上記のように構成された読み取りタグ40は、接続用端子45aにリード線46aの一方の端部が接続され、接続用端子45bにリード線46bの一方の端部が接続される。そして、リード線46aの他方の端部が検知用配線33aの接続用端子34aに接続され、リード線46bの他方の端部が検知用配線33bの接続用端子34bに接続されることで、上記のように構成されたアルミクラフト紙30と読み取りタグ40とから、周囲にグラスウール20が巻き付けられ、内部を液体が流れる配管本体10からの液体の漏洩を検知する漏洩検知装置が構成される。なお、本形態においては、読み取りタグ40の接続用端子45a,45bがそれぞれ、リード線46a,46bを介して検知用配線33a,33bの接続用端子34a,34bに接続されているが、これらは、はんだ等で電気的に接続されていればよい。
【0033】
このようにしてアルミクラフト紙30の検知用配線33a,33bがリード線46a,46bを介して読み取りタグ40に接続された状態において、ICチップ42は、アンテナ43を介した非接触通信によって得た電力による電流を補助配線44a,44b及びリード線46a,46を介して検知用配線33a,33bに流し、補助配線44a,44b及びリード線46a,46を介した検知用配線33a,33b間の抵抗値を検出することで、その抵抗値に基づいて検知用配線33a,33b間の導通状態を検出し、その検出結果をデジタル情報に変換してアンテナ43を介して非接触送信する。
【0034】
図4は、図3に示したシステムにおいて、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1における配管本体10からの液体の漏洩を検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図3に示したように、アルミクラフト紙30の検知用配線33a,33bがリード線46a,46bを介して読み取りタグ40に接続された状態において、リーダライタ2が読み取りタグ40に近接され、リーダライタ2にて読み取りタグ40が検出されると(ステップ1)、まず、リーダライタ2から、読み取りタグ40に電力が供給されるとともに、アルミクラフト紙30の検知用配線33a,33b間の導通状態の検出及びその検出結果の送信をする旨の命令が読み取りタグ40に対して送信される(ステップ2)。
【0036】
リーダライタ2から供給された電力が読み取りタグ40にて得られるとともに、リーダライタ2から送信された命令が読み取りタグ40のアンテナ43を介してICチップ42にて受信されると(ステップ3)、リーダライタ2から供給された電力によって、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bを介して検知用配線33a,33b間に電流が供給される。
【0037】
ICチップ42においては、供給された電流を用いて、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bを介した検知用配線33a,33b間の抵抗値が検出されることで、検知用配線33a,33b間の導通状態が検出されることになる(ステップ4)。ここで、アルミクラフト紙30が図1に示したように、配管本体10に巻き付けられたグラスウール20の周囲に巻き付けられ、配管本体10からの液体の漏洩が発生していない場合は、検知用配線33a,33b間が非導通状態となっている。その状態においては、リーダライタ2から供給された電力によって補助配線44a,44b及びリード線46a,46bを介して検知用配線33a,33b間に電流が供給されても、検知用配線33a,33b間が非導通状態となっていることから検知用配線33a,33b間には電流が流れず、それにより、ICチップ42において検出される抵抗値は、ほぼ無限大となる。
【0038】
ICチップ42においては、検出された抵抗値がほぼ無限大である場合は、検知用配線33a,33b間が非導通状態になっていると判断され、その判断結果が検知用配線33a,33b間の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ43を介してリーダライタ2に非接触送信される(ステップ5)。なお、検知用配線33a,33b間が導通状態である場合にICチップ42にて検出される抵抗値が、後述するように、検知用配線33aと検知用配線33bとがアルミクラフト紙30に付着した水分によって短絡した抵抗値、すなわち、最大でも、検知用配線33aと検知用配線33bとが接続用端子34a,34bから最も遠い端部にて接続されることで、検知用配線33a,33bの接続用端子34a,34bと接続用端子34a,34bから最も遠い端部との間の抵抗値のそれぞれと、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bの抵抗値とを加算した抵抗値となることから、ICチップ42において、検知用配線33a,33b間が非導通状態であると判断するための抵抗値として、ほぼ無限大ではなく、検知用配線33a,33bの接続用端子34a,34bと接続用端子34a,34bから最も遠い端部との間の抵抗値のそれぞれと、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bの抵抗値とを加算した抵抗値よりも大きな一定の閾値以上のものを用いてもよい。
【0039】
一方、アルミクラフト紙30が図1に示したように、配管本体10に巻き付けられたグラスウール20の周囲に巻き付けられ、配管本体10からの液体の漏洩が発生している場合は、検知用配線33a,33b間が導通状態となる。
【0040】
図5は、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1において配管本体10から液体が漏洩している状態を説明するための図である。
【0041】
図5(a)に示すように、アルミクラフト紙30が配管本体10に巻き付けられたグラスウール20の周囲に巻き付けられた状態において、配管本体10からの液体の漏洩が発生している場合は、漏洩した液体によりグラスウール20に水分3が溜まる。例えば、配管本体10の内部を流れる液体が高温のものである場合は、漏洩した液体の蒸気によってグラスウール20の全周に水分3が溜まり、配管本体10の内部を流れる液体が低温のものである場合は、グラスウール20のうち配管本体10の液体の漏洩部分の下方に水分3が溜まる。
【0042】
すると、グラスウール20に溜まった水分3が、アルミクラフト紙30のグラスウール20への巻き付け面に付着することになるが、アルミクラフト紙30のグラスウール20への巻き付け面には、検知用配線33a,33bが形成されていることにより、図5(b)に示すように、検知用配線33aと検知用配線33bとが水分3によって短絡することで導通状態となる。それにより、ICチップ42においては、検知用配線33aと検知用配線33bとが水分3が付着した領域間で接続された抵抗値、すなわち、検知用配線33a,33bのそれぞれの接続用端子34a,34bから水分3が付着した領域のうち最も近い領域までの抵抗値と、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bの抵抗値とを加算した抵抗値が検出されることになる。
【0043】
この際、検知用配線33aと検知用配線33bとが水分3によって短絡することで導通状態となっている場合は、検出される抵抗値は、上述したように、最大でも、検知用配線33a,33bの接続用端子34a,34bと接続用端子34a,34bから最も遠い端部との間の抵抗値のそれぞれと、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bの抵抗値とを加算した抵抗値となることから、ICチップ42においては、検出された抵抗値が、検知用配線33a,33bの接続用端子34a,34bと接続用端子34a,34bから最も遠い端部との間の抵抗値のそれぞれと、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bの抵抗値とを加算した抵抗値以下である場合は、検知用配線33a,33b間が導通状態にあると判断され、その判断結果が検知用配線33a,33b間の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ43を介してリーダライタ2に非接触送信される。なお、検知用配線33a,33b間が非導通状態となっている場合にICチップ42にて検出される抵抗値が、上述したようにほぼ無限大となることから、ICチップ42において、検知用配線33a,33b間が導通状態にあると判断するための抵抗値として、検知用配線33a,33bの接続用端子34a,34bと接続用端子34a,34bから最も遠い端部との間の抵抗値のそれぞれと、補助配線44a,44b及びリード線46a,46bの抵抗値とを加算した抵抗値ではなく、それよりも大きな一定の閾値以下のものを用いてもよい。
【0044】
このように、リーダライタ2においては、読み取りタグ40のICチップ42にて検出された検知用配線33a,33b間の導通状態を、アンテナ43を介して非接触送信させることになる。
【0045】
上記のようにして読み取りタグ40からリーダライタ2に非接触送信された検出結果がリーダライタ2にて受信されると(ステップ6)、リーダライタ2において、読み取りタグ40からリーダライタ2に非接触送信された検出結果に基づいて、配管本体10から液体の漏洩が発生しているかどうかが判断されることになる(ステップ7)。具体的には、読み取りタグ40からリーダライタ2に非接触送信された検出結果において、検知用配線33a,33b間が非導通状態である場合は配管本体10から液体の漏洩が発生していないと判断され、検知用配線33a,33b間が導通状態である場合は配管本体10から液体の漏洩が発生していると判断されることになる。
【0046】
このように本形態においては、一対の検知用配線33a,33b間の導通状態が非接触送信されることで配管本体10からの液体の漏洩が検知されることになるため、電源に接続された測定器等をセンサに接続する必要がなく、敷設が容易になる。また、プラント等においては、配管どうしが混み合うこと等により立ち入りが難しい場所が多いため、一対の検知用配線33a,33b間の導通状態が非接触送信されることで配管本体10からの液体の漏洩が検知される構成の有用性は高くなる。
【0047】
ここで、一対の検知用配線33a,33bのそれぞれが、アルミクラフト紙30が配管本体10に巻き付けられたグラスウール20の周囲に巻き付けられた場合に配管本体10の長さ方向に延びる配線部33a-1,33b-1と、それと交差する方向に延びる配線部33a-2,33b-2とを具備し、配線部33a-1,33a-2と配線部33b-1,33b-2とがそれぞれ間隔d1,d2を隔てて対向していることによる特有の効果について説明する。
【0048】
図6は、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1において、一対の検知用配線33a,33bのそれぞれが、配管本体10の長さ方向に延びる配線部33a-1,33b-1と、それと交差する方向に延びる配線部33a-2,33b-2とを具備し、配線部33a-1,33a-2と配線部33b-1,33b-2とがそれぞれ間隔d1,d2を隔てて対向していることによる特有の効果を説明するための図である。
【0049】
上述したように、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1においては、配管本体10から液体の漏洩が生じた場合、一対の検知用配線33a,33b間が漏洩した水分によって短絡することで導通状態となり、この導通状態が検出されることで配管本体10から液体の漏洩が検知されることになる。その際、上述したように、図1及び図2に示した漏洩検知機能付き配管1においては、アルミクラフト紙30が配管本体10に巻き付けられたグラスウール20の周囲に巻き付けられた場合に配管本体10の長さ方向に延びる配線部33a-1,33b-1と、それと交差する方向に延びる配線部33a-2,33b-2とを具備し、配線部33a-1,33a-2と配線部33b-1,33b-2とがそれぞれ間隔d1,d2を隔てて対向しているため、図6に示すように、配管本体10の長さ方向とそれと交差する方向との全域において、配管本体10から液体の漏洩が生じた場合に液体の漏洩による水分3によって一対の検知用配線33a,33b間が短絡しやすくなり、液体の漏洩を検知できる範囲を広げることができる。この効果は、本形態の一対の検知用配線33a,33bのように、それぞれが櫛歯状となっており、櫛歯状の歯となる配線部33a-2,33b-2が互い違いになるように配置されているものに限らない。本形態の一対の検知用配線33a,33bのように、それぞれが櫛歯状となっており、櫛歯状の歯となる配線部33a-2,33b-2が互い違いになるように配置されているものにおいては、配線部33a-2,33b-2の本数を増やせばそれだけ一対の検知用配線33a,33b間を短絡させる領域を細かく設定することができるが、一対の検知用配線33a,33bの配管本体10の長さ方向に延びる配線部33a-1,33b-1と、それと交差する方向に延びる配線部33a-2,33b-2とについて、配管本体10の用途や設置向き、太さ等に応じてその本数や間隔を適宜設定することで、配管本体10の一部や長さ方向の全域のみにて液体の漏洩を検知するものと比べて、配管本体10の長さ方向とそれと交差する方向との全域において、配管本体10からの液体の漏洩を検知できる可能性は高くなる。
【0050】
また、本形態においては、一対の検知用配線33a,33bが、配管本体の10に巻き付けられたグラスウール20の周囲に巻き付けられたアルミクラフト紙30のグラスウール20への巻き付け面に設けられているため、検知用配線33a,33bが露出しておらず性能の劣化を抑制することができる。また、一対の検知用配線33a,33bが、グラスウール20を外部からの湿気から保護するためにグラスウール20の周囲に巻き付けられたアルミクラフト紙30に設けられているため、新たな部材を用いることなく簡易な構成で配管本体10からの液体の漏洩を検知することができる。
【0051】
なお、アルミクラフト紙30に形成される一対の検知用配線は、それぞれ配管本体10の長さ方向に延びる第1の配線部とそれと交差する方向に延びる第2の配線部とを具備し、第1の配線部及び第2の配線部どうしが所定の間隔を隔てて対向していれば、上述したような形態に限らない。
【0052】
図7は、図1に示したアルミクラフト紙30に形成される一対の検知用配線の他の例を示す図である。
【0053】
図1に示したアルミクラフト紙30に形成される一対の検知用配線としては、図7(a)に示すように、一対の検知用配線133a,133bの第2の配線部133a-2,133b-2が、配管本体10の長さ方向に延びる第1の配線部133a-1,133b-1に斜めに交差しているものであってもよい。
【0054】
また、図7(b)に示すように、一対の検知用配線233a,233bの第2の配線部233a-2,233b-2が、配管本体10の長さ方向に延びる第1の配線部233a-1,233b-1に斜めに交差し、さらに、途中で屈曲しているものであってもよい。
【0055】
さらには、図7(c)に示すように、一対の検知用配線333a,333bの第1の配線部333a-1,333b-1が、配管本体10の長さ方向に一直線に延びるのではなく、一対の検知用配線333a,333bがクラフト紙の対向する2つの端辺間を互いに沿いながら往復するように延びていくものであってもよい。
【0056】
なお、上述した実施の形態においては、一対の検知用配線33a,33b,133a,133b,233a,233b,333a,333bの第1の配線部33a-1,33b-1,133a-1,133b-1,233a-1,233b-1,333a-1,333b-1どうし、及び第2の配線部33a-2,33b-2,133a-2,133b-2,233a-2,233b-2,333a-2,333b-2どうしが一定の間隔を隔てて対向しているが、これらの間隔は一定でなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 漏洩検知機能付き配管
2 リーダライタ
3 水分
10 配管本体
20 グラスウール
30 アルミクラフト紙
31 クラフト紙
32 アルミ箔
33,33a,33b,133a,133b,233a,233b,333a,333b 検知用配線
33a-1,33a-2,33b-1,33b-2,133a-1,133a-2,133b-1,133b-2,233a-1,233a-2,233b-1,233b-2,333a-1,333a-2,333b-1,333b-2 配線部
34a,34b,45a,45b 接続用端子
40 読み取りタグ
41 ベース基材
42 ICチップ
43 アンテナ
44a,44b 補助配線
46a,46b リード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7