IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241008BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20241008BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20241008BHJP
   B65H 37/00 20060101ALI20241008BHJP
   F26B 13/08 20060101ALI20241008BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B05C9/14
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J29/00 H
B65H5/06 Z
B65H37/00
F26B13/08 A
F26B25/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021008344
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112531
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 裕尚
(72)【発明者】
【氏名】小菅 啓之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐登
(72)【発明者】
【氏名】山口 竣平
(72)【発明者】
【氏名】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】塩原 浩
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142085(JP,A)
【文献】特開2008-143711(JP,A)
【文献】特開2008-137730(JP,A)
【文献】特開2020-062799(JP,A)
【文献】特開2011-025614(JP,A)
【文献】特開2011-230465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0244147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B05C 9/14
F26B 25/00
F26B 13/08
B65H 5/06
B65H 37/00
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向にシートを搬送する搬送部と、
前記シートに液体を吐出する吐出部と、
前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、
加熱された前記シートが排出される排出部と、
入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定し、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部の動作を制御し、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御し、
前記加熱部は、
加熱される搬送ローラーと、
前記搬送方向と直交する幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられるローラーであって、前記搬送ローラーとの間でシートをニップするヒートローラーと、
前記ヒートローラーを回転可能に支持するホルダーと、
前記制御部の制御のもと、複数の前記ヒートローラーをまとめて前記幅方向に移動させる移動機構部と、
を備え、
前記移動機構部は、複数の前記ホルダーが取り付けられるリニアスライダーを備え、
前記制御部は、前記シートが前記加熱部を通っている間に複数の前記ヒートローラーをまとめて前記幅方向に移動させることで、前記乾燥領域を前記搬送方向と交差する斜め方向に直線状且つ帯状に延びる様に形成し、
更に前記制御部は、前記シートに形成される複数の直線状且つ帯状の前記乾燥領域を、隣り合う二本の前記乾燥領域が前記幅方向においてオーバーラップする様に形成する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
搬送方向にシートを搬送する搬送部と、
前記シートに液体を吐出する吐出部と、
前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、
加熱された前記シートが排出される排出部と、
入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定し、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部の動作を制御し、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御し、
前記加熱部は、
加熱される第1搬送ローラーと、
前記搬送方向と直交する幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられるローラーであって、前記第1搬送ローラーとの間でシートをニップする第1ヒートローラーと、
前記第1ヒートローラーを回転可能に支持する第1ホルダーと、
前記制御部の制御のもと、複数の前記第1ヒートローラーをまとめて前記幅方向に移動させる第1移動機構部と、
加熱される第2搬送ローラーと、
前記搬送方向と直交する幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられるローラーであって、前記第2搬送ローラーとの間でシートをニップする第2ヒートローラーと、
前記第2ヒートローラーを回転可能に支持する第2ホルダーと、
前記制御部の制御のもと、複数の前記第2ヒートローラーをまとめて前記幅方向に移動させる第2移動機構部と、
を備え、
前記第1移動機構部は、複数の前記第1ホルダーが取り付けられる第1リニアスライダーを備え、
前記第2移動機構部は、複数の前記第2ホルダーが取り付けられる第2リニアスライダーを備え、
前記制御部は、前記シートが前記加熱部を通っている間に複数の前記第1ヒートローラーをまとめて前記幅方向に移動させるとともに複数の前記第2ヒートローラーをまとめて前記幅方向に移動させることで、前記乾燥領域を前記搬送方向と交差する斜め方向に直線状且つ帯状に延びる様に、且つ全体が網目状となる様に形成する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記排出部は、前記搬送方向と直交する幅方向に移動可能なカーソルを備え、
前記カーソルは、前記排出部の前記シートと接触することで該シートを前記幅方向に移動させる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、
前記排出部は、
前記シートを載置する排出トレイと、
前記排出トレイにおける前記搬送方向の上流に位置し、前記シートの端部を揃える整合板と、
前記排出トレイ上の前記シートを前記搬送方向の上流へ引き戻すと共に前記整合板と接触させるパドルと、
を備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、
前記制御部は、前記加熱部の能力に応じ、前記吐出部における前記液体の吐出量を変更する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、
前記制御部は、前記吐出部における前記液体の吐出量に応じ、前記加熱部による加熱量を変更する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、
装置内部の温度を測定する温度測定部が設けられ、
前記制御部は、前記温度測定部によって測定された温度が温度閾値より高い場合、前記加熱部を動作させない、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、
装置内部の湿度を測定する湿度測定部が設けられ、
前記制御部は、前記湿度測定部によって測定された湿度が湿度閾値より低い場合、前記加熱部を動作させない、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法及び液体吐出装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の画像形成装置は、用紙のうち含水量の多い領域の温度の方が含水量の少ない領域の温度よりも高くなるように、温度調整部が用紙の温度分布を調整することで用紙のデカールを抑制する。全体的に含水量が多い用紙には高温の温風を当て、全体的に含水量の少ない用紙には温風を当てないなどの調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-40225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、用紙の全体を乾燥させることになるので、乾燥のために多くのエネルギーを消費する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明に係る液体吐出装置は、搬送方向にシートを搬送する搬送部と、前記シートに液体を吐出する吐出部と、前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、加熱された前記シートが排出される排出部と、入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定し、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部の動作を制御し、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御することを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決する為の、本発明に係る液体吐出装置の制御方法は、搬送方向にシートを搬送する搬送部と、前記シートに液体を吐出する吐出部と、前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、加熱された前記シートが排出される排出部と、入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定する工程と、前記吐出部から前記シートに前記液体を吐出させる工程と、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部による前記シートの加熱動作を制御する工程と、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する為の、本発明に係る液体吐出装置の制御プログラムは、搬送方向にシートを搬送する搬送部と、前記シートに液体を吐出する吐出部と、前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、加熱された前記シートが排出される排出部と、入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定するステップと、前記吐出部から前記シートに前記液体を吐出させるステップと、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部による前記シートの加熱動作を制御するステップと、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御するステップと、をコンピューターに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の記録システムの全体図。
図2】実施形態1の記録システムの主要部のブロック図。
図3】実施形態1の記録システムのパンチユニットを表す斜視図。
図4】実施形態1の記録システムの加熱部を表す縦断面図。
図5】実施形態1の記録システムの排出部を表す縦断面図。
図6】実施形態1の記録システムの記録ヘッド、加熱部及び用紙を表す平面図。
図7】実施形態1の記録システムにおいて実行される各処理の流れを表すフローチャート。
図8】実施形態1の変形例1の記録システムにおける記録ヘッド及び加熱部と用紙とを表す平面図。
図9】実施形態2の記録システムの記録ヘッド、加熱部、パンチユニット及び用紙を表す平面図。
図10A】実施形態1の変形例2の記録システムにおける加熱部を表す正面図。
図10B】実施形態1の変形例3の記録システムにおける加熱部を表す正面図。
図11】実施形態3の記録システムの記録ヘッド、加熱部、用紙及び搬送ローラーを表す平面図。
図12】実施形態4の記録システムの記録ヘッド、加熱部、用紙及びカーソルを表す平面図。
図13】実施形態5の記録システムにおける加熱部を表す正面図。
図14】実施形態5の変形例1の記録システムの加熱部及び用紙を表す平面図。
図15】実施形態5の変形例2の記録システムの加熱部及び用紙を表す平面図。
図16】実施形態5の変形例3の記録システムの加熱部及び用紙を表す平面図。
図17】実施形態5の変形例4の記録システムの加熱部及び用紙を表す平面図。
図18】実施形態6の記録システムの加熱部及び用紙を表す平面図。
図19】実施形態7の記録システムの加熱部及び用紙を表す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様に係る液体吐出装置は、搬送方向にシートを搬送する搬送部と、前記シートに液体を吐出する吐出部と、前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、加熱された前記シートが排出される排出部と、入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定し、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部の動作を制御し、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御することを特徴とする。
本態様によれば、前記シートの全体が前記未乾燥領域となる構成に比べて、前記シートに前記乾燥領域が形成されることで、前記シートの前記搬送方向の力に対する剛性が高められるので、前記シートが前記排出部に排出された場合、前記シートの一部が座屈することを抑制できる。さらに、前記シートには加熱されない領域が存在するので、前記シートの全体を前記加熱部によって加熱する構成に比べて、前記シートの加熱に用いられる消費エネルギーを低減できる。
【0010】
第2の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様において、前記制御部は、前記加熱部の能力に応じ、前記吐出部における前記液体の吐出量を変更することを特徴とする。
本態様によれば、前記液体の吐出量が多い場合に前記加熱部による前記乾燥領域の乾燥が不足することを抑制でき、前記シートの剛性を適切に向上させることができる。
【0011】
第3の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様において、前記制御部は、前記吐出部における前記液体の吐出量に応じ、前記加熱部による加熱量を変更することを特徴とする。
本態様によれば、前記吐出部における前記液体の吐出量に応じ、前記加熱部による加熱量を変更するので、記録品質を維持しつつ、前記乾燥領域を適切に形成することができ、前記シートの剛性を適切に向上させることができる。
【0012】
第4の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つにおいて、前記乾燥領域と前記未乾燥領域とが、前記搬送方向と直交する幅方向に並ぶことを特徴とする。
本態様によれば、前記搬送方向の力に対する前記シートの剛性を高めることができる。
【0013】
第5の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つにおいて、前記乾燥領域と前記未乾燥領域とが、前記搬送方向に並ぶことを特徴とする。
本態様によれば、前記シートの前記搬送方向における下流側又は上流側の部分に前記乾燥領域が形成される。これにより、前記シートの下流端部又は上流端部が、前記排出部又は他の載置部に接触した場合、前記搬送方向の力に対する前記シートの剛性が高められているので、前記シートの端部の座屈を抑制できる。
【0014】
第6の態様に係る液体吐出装置は、第5の態様において、前記排出部の前記シートに対して後処理を行う後処理部が設けられ、前記加熱部は、前記搬送方向において前記吐出部と前記排出部との間に配置され、前記乾燥領域は、前記シートにおいて、前記搬送方向の中央より下流に偏在することを特徴とする。
本態様によれば、前記シートの中央より下流の部分において、前記搬送方向の力に対する剛性が高められるので、前記シートの下流端部が前記排出部と接触した場合の前記シートの座屈を抑制できる。
【0015】
第7の態様に係る液体吐出装置は、第5の態様において、前記排出部は、前記搬送方向の上流に前記シートの端部を揃える整合板が設けられ、前記排出部の前記シートを前記搬送方向の上流へ引き戻すと共に前記整合板と接触させるパドルと、前記排出部の前記シートに対して後処理を行う後処理部と、が設けられ、前記加熱部は、前記搬送方向において前記吐出部と前記排出部との間に配置され、前記乾燥領域は、前記シートにおいて、前記搬送方向の中央より上流に偏在することを特徴とする。
本態様によれば、前記シートの中央より上流の部分において、前記搬送方向の力に対する剛性が高められるので、前記シートの上流端部が前記整合板と接触した場合の前記シートの座屈を抑制できる。
【0016】
第8の態様に係る液体吐出装置は、第7の態様において、前記制御部は、前記搬送方向及び前記搬送方向と直交する幅方向において、前記パドルと前記シートとが接触する位置が前記乾燥領域に含まれるように、前記加熱部による前記シートの加熱動作を制御することを特徴とする。
本態様によれば、前記パドルと前記シートとが接触する位置が前記乾燥領域に含まれることで、前記シートにおける前記パドルと接触する部位の剛性が高められるので、前記パドルから前記シートに付与される荷重を強くしても、前記シートの座屈を抑制できる。
【0017】
第9の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1つにおいて、前記加熱部は、前記搬送方向と直交する幅方向に移動可能に設けられ、前記制御部は、前記シートの前記乾燥領域が形成される位置に合わせて前記加熱部の前記幅方向の移動を制御することを特徴とする。
本態様によれば、前記加熱部を前記幅方向に移動させることで、前記シートにおける前記乾燥領域が形成される部位を変更可能となるので、前記シートの材質が変わるなどして前記シートの剛性を高めたい部位が変わったとしても対応することができる。
【0018】
第10の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第9の態様のいずれか1つにおいて、前記制御部は、入力された制御情報に基づいて、前記搬送方向又は前記搬送方向と直交する幅方向における前記乾燥領域の位置の変更、及び前記加熱部による加熱の有無の変更の一方を実行させることを特徴とする。
本態様によれば、前記制御情報に合わせて、前記シートの剛性を高めたい部位を変更することができる。
【0019】
第11の態様に係る液体吐出装置は、第10の態様において、前記加熱部は、前記シートに対して接離可能に設けられたヒートローラーを有し、前記制御部は、前記制御情報に基づいて、前記ヒートローラーと前記シートとの接触の有無を切り替える制御を行うことを特徴とする。
本態様によれば、前記シートの前記搬送方向の端部だけでなく、前記シートの前記搬送方向の一部から前記ヒートローラーの接触を開始し、あるいは、前記シートの前記搬送方向の一部において前記ヒートローラーを離脱させることが可能となる。これにより、前記シートの前記搬送方向における前記乾燥領域の位置を自由に設定することができる。
【0020】
第12の態様に係る液体吐出装置は、第11の態様において、前記加熱部は、前記ヒートローラーと、前記ヒートローラーと共に前記シートをニップするローラーとを有し、前記制御部は、前記ヒートローラー及び前記ローラーの一方を前記幅方向に移動させることにより、前記幅方向における前記乾燥領域の位置を変更することを特徴とする。
本態様によれば、前記ヒートローラーと前記ローラーとによってニップされることで前記シートが加圧されるので、前記シートの加熱のみを行う構成に比べて、前記シートの前記乾燥領域の剛性を高めることができる。
【0021】
第13の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第12の態様のいずれか1つにおいて、前記シートに対してせん断処理を行うせん断処理部が設けられ、前記制御部は、前記シートの前記せん断処理部によりせん断処理が行われる領域に前記乾燥領域を形成させ、前記シートの前記せん断処理部によりせん断処理が行われない領域に前記未乾燥領域を形成させることを特徴とする。
本態様によれば、前記乾燥領域において前記シートのせん断が行われる。前記乾燥領域では、前記未乾燥領域に比べて前記シートに含まれる前記液体の水分量が低下していることで、前記シートにおけるせん断方向の力に対する剛性が高められているので、せん断不良が生じることを抑制できる。
【0022】
第14の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第13の態様のいずれか1つにおいて、前記搬送部は、前記搬送方向の前記加熱部より下流において前記シートを搬送する回転体が設けられ、前記シートに前記回転体を投影した場合、前記回転体は、前記乾燥領域の内側に位置することを特徴とする。
本態様によれば、前記回転体は、前記シートを搬送する場合、前記乾燥領域の内側において前記シートと接触する。前記シートの前記乾燥領域では、付着する前記液体の量が前記未乾燥領域に比べて少ないので、前記液体が前記シートから前記回転体に転写されることを抑制できる。
【0023】
第15の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第14の態様のいずれか1つにおいて、前記排出部は、前記搬送方向と直交する幅方向に移動可能なカーソルが設けられ、前記カーソルは、前記排出部の前記シートと接触することで該シートを前記幅方向に移動させ、前記制御部は、前記シートの前記搬送方向の一部において、前記幅方向の一端から他端まで前記乾燥領域を形成させることを特徴とする。
本態様によれば、前記シートの前記搬送方向の一部において、前記幅方向の一端から他端まで前記乾燥領域が形成される。これにより、前記幅方向に作用する力に対する前記シートの剛性が高められるので、前記カーソルが前記シートの前記幅方向の端部に接触した場合の前記シートの座屈を抑制できる。
【0024】
第16の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第15の態様のいずれか1つにおいて、装置内部の温度を測定する温度測定部が設けられ、前記制御部は、前記温度測定部によって測定された温度が温度閾値より高い場合、前記加熱部を動作させないことを特徴とする。
本態様によれば、前記装置内部の温度が前記温度閾値より高い場合、前記加熱部を用いなくても前記シートの乾燥が促進される。このため、前記シートの温度が前記温度閾値より高い場合に前記加熱部を動作させないことで、前記液体吐出装置における消費エネルギーを抑制できる。
【0025】
第17の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第16の態様のいずれか1つにおいて、装置内部の湿度を測定する湿度測定部が設けられ、前記制御部は、前記湿度測定部によって測定された湿度が湿度閾値より低い場合、前記加熱部を動作させないことを特徴とする。
本態様によれば、前記装置内部の湿度が前記湿度閾値より低い場合、前記加熱部を用いなくても前記シートの乾燥が促進される。このため、前記シートの湿度が前記湿度閾値より低い場合に前記加熱部を動作させないことで、前記液体吐出装置における消費エネルギーを抑制できる。
【0026】
第18の態様に係る液体吐出装置は、第1の態様から第17の態様のいずれか1つにおいて、前記排出部は、前記搬送方向と直交する幅方向に並ぶ凹部及び凸部が設けられ、前記凸部は、前記シートの前記乾燥領域と対向され、前記凹部は、前記シートの前記未乾燥領域と対向されることを特徴とする。
前記排出部へ排出された前記シートには、前記未乾燥領域が形成されている。このため、前記シートの前記液体が、前記排出部に付着する可能性がある。
ここで、本態様によれば、前記排出部に前記凹部及び前記凸部が形成されることで、前記排出部と前記シートとの接触面積が低減される。さらに、前記凹部に比べて前記シートと接触する可能性が高い前記凸部は、前記シートの前記乾燥領域と対向されるので、前記排出部に前記液体が付着することを抑制できる。
【0027】
第19の態様に係る液体吐出装置の制御方法は、搬送方向にシートを搬送する搬送部と、前記シートに液体を吐出する吐出部と、前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、加熱された前記シートが排出される排出部と、入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定する工程と、前記吐出部から前記シートに前記液体を吐出させる工程と、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部による前記シートの加熱動作を制御する工程と、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御する工程と、を有することを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様に係る液体吐出装置と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0028】
第20の態様に係る液体吐出装置の制御プログラムは、搬送方向にシートを搬送する搬送部と、前記シートに液体を吐出する吐出部と、前記液体が吐出された前記シートを加熱する加熱部と、加熱された前記シートが排出される排出部と、入力された情報に基づいて、前記搬送部、前記吐出部及び前記加熱部を制御する制御部と、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、前記吐出部における前記液体の吐出量を特定するステップと、前記吐出部から前記シートに前記液体を吐出させるステップと、前記シートの前記液体が乾燥されない未乾燥領域と、前記シートの前記液体が前記未乾燥領域に比べて乾燥される乾燥領域とが前記シートに形成されるように、前記加熱部による前記シートの加熱動作を制御するステップと、前記乾燥領域及び前記未乾燥領域が形成された前記シートが前記排出部に排出されるように、前記搬送部の搬送動作を制御するステップと、をコンピューターに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様に係る液体吐出装置と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0029】
以下、本発明に係る液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法及び液体吐出装置の制御プログラムの一例である各実施形態について、具体的に説明する。
【0030】
[実施形態1]
図1には、液体吐出装置の一例である記録システム1が示される。記録システム1は、シートの一例である用紙Pに対し、液体の一例であるインクQを吐出することで記録を行うインクジェット方式の装置として構成される。
【0031】
各図において表すX-Y-Z座標系では、X方向が装置幅方向であり、Y方向が装置奥行き方向であり、Z方向が装置高さ方向である。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する。Y方向は、用紙Pの幅方向の一例である。
記録システム1を正面から見て、装置幅方向における中央に対して左と右を区別する場合、左を+X方向とし、右を-X方向とする。装置奥行き方向における中央に対して手前と奥を区別する場合、手前を+Y方向とし、奥を-Y方向とする。装置高さ方向における中央に対して上と下とを区別する場合、上を+Z方向とし、下を-Z方向とする。
【0032】
記録システム1は、+X方向に向かって順に、記録ユニット2と、中間ユニット4と、後処理ユニット30とを有する。なお、記録システム1では、記録ユニット2、中間ユニット4及び後処理ユニット30が互いに機械的及び電気的に接続される。中間ユニット4は、記録ユニット2から送り込まれた用紙Pを後処理ユニット30へ搬送する。
なお、記録システム1は、後述する画像形成部10において情報が記録された用紙Pに後述する後処理を行うように構成される。
記録システム1において用紙Pが搬送される経路を搬送経路Kとする。
【0033】
記録システム1は、さらに、ユーザーによって操作される操作部15(図2)と、記録システム1の各種の情報が表示される表示部17(図2)とを備えていてもよい。本実施形態では、一例として、操作部15及び表示部17が記録ユニット2に設けられる。
操作部15及び表示部17は、一例として、1つのタッチパネルから成り、記録システム1の各部の操作を実行可能に構成されると共に、各種の情報を設定可能に構成される。各種の情報の中には、用紙Pのサイズが含まれる。
用紙Pの搬送方向は、矢印Tで図示される。なお、以後の説明では、用紙Pの搬送方向を単に搬送方向と称する。搬送方向は一定ではなく、搬送経路Kにおける用紙Pの位置によって水平方向に対する角度が変わる。
【0034】
記録ユニット2は、搬送される用紙Pに各種の情報を記録する。用紙Pは、シート状に形成される。また、記録ユニット2は、画像形成部10と、スキャナー部12と、カセット収容部14と、電源16と、搬送部19とを備えていてもよい。
画像形成部10は、一例として、記録ヘッド20と、制御部24とを含んで構成されていてもよい。
スキャナー部12は、不図示の原稿の情報を読み取る。
カセット収容部14は、複数の用紙Pを収容する複数の収容カセット18を有する。
記録ヘッド20は、一例として、ラインヘッドとして構成される。また、記録ヘッド20は、不図示の複数のノズルから成る吐出部22を備える。
吐出部22は、搬送される用紙PにインクQを吐出することで記録を行う。
【0035】
図2に示されるように、コンピューターとして機能する制御部24は、CPU(Central Processing Unit)25と、メモリー26と、各時点に基づいて時間又は時刻を計時可能なタイマー27と、吐出量見積部28と、不図示のストレージとを備える。また、制御部24は、記録システム1の各部における各種の動作を制御する。
制御部24は、制御部24に入力された情報に基づいて、搬送部19、吐出部22、後述するパンチユニット50及び加熱部40を制御する。また、制御部24は、画像データに基づいて、吐出部22におけるインクQの吐出を制御する。
【0036】
メモリー26は、記憶部の一例であり、各種のデータを記憶する。メモリー26には、CPU25が実行するプログラムPRを含む各種データが格納されている。換言すると、メモリー26は、コンピューターにおいて読み取り可能なプログラムPRが格納された記録媒体の一例である。記録媒体の他の例としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどがある。また、メモリー26の一部において、プログラムPRの展開が可能である。
プログラムPRは、記録システム1における後述する各ステップをCPU25に実行させるためのプログラムである。
【0037】
吐出量見積部28は、吐出部22におけるインクQの吐出量を見積もる。具体的には、吐出量見積部28は、用紙Pの単位面積当たりの画素数である記録密度情報を、予め記憶された記録密度とインクQの吐出量との関係を表す不図示のテーブルに当てはめることで、吐出部22におけるインクQの吐出量の最大値を見積もる。換言すると、制御部24は、吐出部22におけるインクQの吐出量を特定する。なお、以後の説明では、吐出量見積部28において見積もられたインクQの吐出量をVとする。吐出量Vは、インクQの吐出量のうち最大量に限らず、吐出量見積部28において見積もられた量である。
【0038】
記録システム1は、温度センサー21及び湿度センサー23が設けられる。
温度センサー21は、温度測定部の一例であり、記録システム1の装置内部の温度を測定する。なお、本実施形態では、温度センサー21が記録ユニット2の内部に設けられる。温度センサー21において得られた温度情報は、制御部24に送信される。
湿度センサー23は、湿度測定部の一例であり、記録システム1の装置内部の湿度を測定する。なお、本実施形態では、湿度センサー23が記録ユニット2の内部に設けられる。湿度センサー23において得られた湿度情報は、制御部24に送信される。
【0039】
図1に示されるように、搬送部19は、記録システム1の全体に設けられている。また、搬送部19は、不図示の複数のローラー対及び複数のモーターを含んで構成され、搬送方向に用紙Pを搬送する。具体的には、搬送部19は、用紙Pを収容カセット18から記録ヘッド20の記録領域へ搬送し、さらに、該記録領域から中間ユニット4を経て後処理ユニット30へ搬送する。搬送部19による用紙Pの搬送動作は、制御部24によって制御される。
【0040】
後処理ユニット30は、筐体32と、排出部33と、加熱部40と、パンチユニット50と、用紙センサー62(図2)と、搬送ローラー対65、66とを含んで構成される。筐体32の内部には、搬送部19によって用紙Pが搬送される搬送経路Kが形成される。中間ユニット4から受け入れた用紙Pは、搬送経路Kに沿って搬送され、排出部33に排出される。
【0041】
パンチユニット50は、一例として、筐体32のZ方向の中央より-Z方向の下部に設けられる。なお、搬送経路Kの一部で且つパンチユニット50と対向する部位は、一例として、X方向に沿う。これにより、用紙Pにおけるせん断処理される部位は、ほぼ水平方向に沿って配置される。
用紙センサー62(図2)は、搬送方向におけるパンチユニット50より上流に設けられる。用紙センサー62は、一例として、不図示の出射部及び受光部を備える。そして、用紙センサー62は、出射部からの光が受光部において受光されたか否かを判定することで、用紙センサー62における用紙Pの通過時点及び搬送経路Kにおける用紙Pの位置を検出する。
【0042】
図2に示されるように、排出部33は、排紙トレイ34(図5)と、パドル部61と、カーソル部67と、ステープラー69と、整合板106(図1)とを含んで構成される。また、排出部33は、後述する加熱部40によって加熱された用紙Pが排出される部位である。排紙トレイ34は、排出された用紙Pが載置される。
【0043】
図5に示されるように、排紙トレイ34は、搬送方向と直交するY方向に並ぶ複数の凹部37及び凸部35が形成される。換言すると、排出部33は、凹部37及び凸部35が設けられる。
凸部35は、排紙トレイ34の+Z方向の端部から+Z方向に突出され且つ搬送方向に延びるリブ状の部位である。また、凸部35は、用紙Pの後述する乾燥領域SAとZ方向に対向し且つ接触する。本実施形態では、一例として、1つの乾燥領域SAに対して2つの凸部35が接触する。
凹部37は、Y方向に隣り合う凸部の間に位置する。また、凹部37は、用紙Pの後述する未乾燥領域SBとZ方向に間隔をあけて対向する。
【0044】
図1及び図2に示されるように、整合板106は、排紙トレイ34における-X方向の端部から直立する。また、整合板106は、複数の用紙Pの端部を揃える。
パドル部61は、排出された用紙Pを整合板106に向けて押し付ける。
カーソル部67は、排紙トレイ34上に複数の用紙Pが積載された場合、複数の用紙PのY方向の端部を揃える。
ステープラー69は、排紙トレイ34に積層された複数枚の用紙Pに不図示のステープル針を打針することで用紙束を形成する。
【0045】
図3に示されるように、パンチユニット50は、せん断処理を行うせん断処理部の一例である。パンチユニット50は、ユニット本体51と、台座部としてのダイ52と、不図示の駆動部とを備える。パンチユニット50は、せん断処理の一例として、1つの用紙PにおけるY方向の2箇所で貫通孔Aを形成する。
ユニット本体51は、パンチ部材54と、パンチ部材54を支持する支持部53とを備える。
【0046】
パンチ部材54は、中心軸がZ方向に沿う円筒状に形成される。パンチ部材54の-Z方向の端部には、不図示の刃部が形成される。また、パンチ部材54は、一例として、Y方向に間隔をあけて2本設けられる。
不図示の駆動部は、モーター及びカムを含んで構成され、2本のパンチ部材54を-Z方向及び+Z方向の一方に駆動する。
パンチ部材54は、不図示の駆動部によって-Z方向に駆動される場合、インクQが吐出された用紙Pに-Z方向のせん断力を付与することで、貫通孔Aを形成する。
【0047】
搬送ローラー対65は、搬送方向におけるパンチユニット50より上流に設けられる。搬送ローラー対66は、搬送方向におけるパンチユニット50より下流に設けられる。搬送ローラー対65、66は、回転されることで用紙Pを搬送方向の下流に搬送する。
なお、実施形態1では、パンチユニット50を用いた処理は行われない。
【0048】
図4に示されるように、加熱部40は、一例として、インクQが吐出された用紙Pの一部を加熱することで乾燥させる。また、加熱部40は、一例として、用紙Pを支持する支持板42と、支持板42又は用紙PとZ方向に対向するダクト部44と、加熱された空気をダクト部44に送り込むファンヒーター48とを備える。
【0049】
ダクト部44は、ダクト本体45と複数のシャッター部材46とを備える。
ダクト本体45は、Y方向に延びる角筒状に形成される。ダクト本体45のY方向の長さは、用紙PのY方向の長さより長い。ダクト本体45における用紙Pと対向する部位には、複数の流出口45Aが形成される。
複数の流出口45Aは、Y方向に間隔をあけて並ぶ。また、複数の流出口45Aは、複数のシャッター部材46によって個別に開閉可能である。複数のシャッター部材46の開閉動作は、不図示のモーターが制御部24(図2)によって制御されることで行われる。
このように、加熱部40は、ファンヒーター48からダクト本体45に送り込まれた加熱された空気を、開放状態の流出口45Aから用紙Pへ吹き付けるように構成される。本実施形態では、一例として、用紙PにおけるY方向の両端部及び中央部の合計4箇所が、送風により加熱される。
【0050】
図6に示されるように、用紙Pにおいて、加熱部40によってインクQが乾燥されない領域を未乾燥領域SBと称する。
一方、用紙Pにおいて、加熱部40による加熱でインクQが未乾燥領域SBに比べて乾燥される領域を乾燥領域SAと称する。なお、本明細書において乾燥とは、何らの処理を行わない場合に比べてインクQに含まれる水分が減少することを意味する。
乾燥領域SAは、Z方向から見て、Y方向の寸法がX方向の寸法より長い矩形状に形成される。乾燥領域SAは、Y方向に間隔をあけて4箇所形成される。未乾燥領域SBは、4箇所の乾燥領域SAの間に3箇所形成される。このように、乾燥領域SAと未乾燥領域SBとが、Y方向に並ぶ。
【0051】
加熱部40では、一例として、2段階で加熱量が変更可能である。加熱部40における用紙Pの単位時間当たりの加熱量DA、DBについて、加熱量DAは、加熱量DBより多い。
【0052】
ここで、実施形態1の制御部24の制御についてまとめる。
制御部24は、吐出部22におけるインクQの吐出量Vを既述の方法により特定する。さらに、制御部24は、未乾燥領域SBと、乾燥領域SAとが用紙Pに形成されるように、加熱部40の動作を制御する。さらに、制御部24は、乾燥領域SA及び未乾燥領域SBが形成された用紙Pが排出部33に排出されるように、搬送部19の搬送動作を制御する。
【0053】
制御部24は、吐出部22におけるインクQの吐出量に応じ、加熱部40による加熱量を変更する。
また、制御部24は、温度センサー21によって測定された温度の値が、予め設定された閾値より低い場合、加熱部40を動作させない。高温状態では、用紙PのインクQの自然乾燥が進行すると考えられるためである。
さらに、制御部24は、湿度センサー23によって測定された湿度の値が、予め設定された閾値より低い場合、加熱部40を動作させない。低湿状態では、用紙PのインクQの自然乾燥が進行すると考えられるためである。
【0054】
次に、実施形態1の記録システム1の作用について説明する。
図7は、用紙PへのインクQの吐出量に応じて用紙Pの加熱が選択される場合の各処理の流れを表すフローチャートである。なお、記録システム1を構成する各部については、図1から図6までを参照するものとして、個別の図番の記載を省略する。図7に表す各処理は、CPU25がメモリー26からプログラムPRを読み出し且つ展開して実行することにより行われる。
【0055】
ステップS10において、CPU25は、温度センサー21から温度情報を取得すると共に湿度センサー23から湿度情報を取得する。そして、ステップS12に移行する。
ステップS12において、CPU25は、用紙Pのサイズ情報を取得する。そして、ステップS14に移行する。
ステップS14において、CPU25は、画像情報を取得する。そして、ステップS16に移行する。
ステップS16において、CPU25は、吐出量見積部28において吐出量Vの見積りを行わせる。換言すると、制御部24は、吐出量Vを特定する。そして、ステップS18に移行する。
ステップS18において、CPU25は、用紙Pの搬送を開始する。そして、ステップS20に移行する。
【0056】
ステップS20において、CPU25は、吐出部22を駆動させることで、吐出量Vが得られるように、吐出部22から用紙PにインクQを吐出させる。そして、ステップS22に移行する。
【0057】
ステップS22において、CPU25は、得られた吐出量V、温度情報及び湿度情報に基づいて、加熱部40が必要か否かを判断する。換言すると、CPU25は、得られた吐出量V、温度、及び湿度の各値を、予め設定された第1閾値と比べることで、用紙Pの加熱が必要か否かを判断する。加熱部40が必要の場合(S22:Yes)、ステップS24に移行する。加熱部40が不要の場合(S22:No)、ステップS32に移行する。
なお、一例として、用紙Pのサイズが小さいことで、用紙Pからはみ出る部分の加熱部40については、予めシャッター部材46を閉状態とする。
【0058】
ステップS24において、CPU25は、ステップS16において得られた吐出量Vに応じ、予め設定された基準加熱量に対して、加熱量の変更が必要か否かを判断する。加熱量を変更する場合(S24:Yes)、ステップS26に移行する。加熱量を変更しない場合(S24:No)、ステップS28に移行する。
ステップS26において、CPU25は、加熱部40を動作させることで用紙Pを加熱させる。具体的には、吐出量Vの値が既述の第1閾値より大きく且つ第2閾値より小さい場合、加熱量を基準加熱量に対して減少させる。吐出量Vの値が第2閾値より大きい場合、加熱量を増加させる。そして、ステップS30に移行する。
ステップS28において、CPU25は、加熱部40を動作させることで、加熱量が基準加熱量となるように用紙Pを加熱させる。なお、ステップS28は、吐出量Vの値が第2閾値と等しい場合に相当する。そして、ステップS30に移行する。
なお、ステップS26及びステップS28は、いずれも、未乾燥領域SBと乾燥領域SAとが用紙Pに形成されるように、加熱部40による用紙Pの加熱動作を制御するステップである。
【0059】
ステップS30において、CPU25は、用紙センサー62からの出力に基づいて、用紙Pの全体が加熱部40を通過したか否かを判断することで、用紙Pの加熱が終了したか否かを判断する。用紙Pの加熱が終了した場合(S30:Yes)、ステップS32に移行する。用紙Pの加熱が終了していない場合(S30:No)、ステップS24に移行する。
ステップS32において、CPU25は、搬送部19による用紙Pの搬送を継続することで、用紙Pを排出部33に排出させる。そして、ステップS34に移行する。
ステップS34において、CPU25は、操作部15に設定されている用紙Pの処理枚数の情報に基づいて、次の用紙Pの処理があるか否かを判断する。次の用紙Pの処理が無い場合(S34:Yes)、プログラムPRを終了する。次の用紙Pの処理がある場合(S34:No)、ステップS10に移行する。
このようにして、用紙Pが加熱部40によって加熱された場合、用紙Pには、乾燥領域SAと、未乾燥領域SBとが形成される。
【0060】
以上、説明した通り、記録システム1によれば、インクQが吐出された用紙Pでは、加熱部40による加熱が行われない領域が未乾燥領域SBとなり、加熱部40による加熱が行われた領域が乾燥領域SAとなる。
ここで、用紙Pの全体が未乾燥領域SBとなる構成に比べて、用紙Pに乾燥領域SAが形成されることで、用紙Pの搬送方向の力に対する剛性が高められるので、用紙Pが排出部33に排出された場合、用紙Pの一部が座屈することを抑制できる。さらに、用紙Pには加熱されない領域が存在するので、用紙Pの全体を加熱部40によって加熱する構成に比べて、用紙Pの加熱に用いられる消費エネルギーを低減できる。なお、消費エネルギーは、本実施形態において消費電力と言い換えることができる。
【0061】
記録システム1によれば、吐出部22におけるインクQの吐出量Vに応じ、加熱部40による加熱量を変更するので、記録品質を維持しつつ、乾燥領域SAを適切に形成することができ、用紙Pの剛性を適切に向上させることができる。
記録システム1によれば、搬送方向の力に対する用紙Pの剛性を高めることができる。
【0062】
記録システム1によれば、装置内部の温度が温度閾値より高い場合、加熱部40を用いなくても自然乾燥により用紙Pの乾燥が促進される。このため、用紙Pの温度が温度閾値より高い場合に加熱部40を動作させないことで、記録システム1における消費エネルギーを抑制できる。
記録システム1によれば、装置内部の湿度が湿度閾値より低い場合、加熱部40を用いなくても自然乾燥により用紙Pの乾燥が促進される。このため、用紙Pの湿度が湿度閾値より低い場合に加熱部40を動作させないことで、記録システム1における消費エネルギーを抑制できる。
【0063】
排出部33へ排出された用紙Pシートには、未乾燥領域SBが形成されている。このため、用紙PのインクQが、排出部33に付着する可能性がある。
ここで、記録システム1によれば、排出部33に凹部37及び凸部35が形成されることで、用紙Pは凸部35と接触する。これにより、排出部33と用紙Pとの接触面積が低減される。さらに、凹部37に比べて用紙Pと接触する可能性が高い凸部35は、用紙Pの乾燥領域SAと対向されるので、排出部33にインクQが付着することを抑制できる。
記録システム1の制御方法及び記録システム1の制御プログラムにおいても、上記の効果と同様の効果が得られる。
【0064】
図8には、実施形態1の変形例1の記録システム1が示される。制御部24は、加熱部40の能力に応じ、吐出部22におけるインクQの吐出量Vを変更する。吐出部22から吐出されるインクQの量が多すぎると、加熱部40の能力を超えてしまい、用紙Pに適切な乾燥領域SAを形成できない。このため、吐出量Vが予め設定された基準吐出量より多くなる場合、全体的且つ一律に、記録密度としての印字デューティーを低下させる。つまり、インクQの吐出量Vを減少させる。
【0065】
実施形態1の変形例の記録システム1によれば、インクQの吐出量Vが多い場合に加熱部40による乾燥領域SAの乾燥が不足することを抑制でき、用紙Pの剛性を適切に向上させることができる。
【0066】
図10Aには、実施形態1の変形例2の記録システム1における加熱部70が示される。
加熱部70は、インクQが吐出された用紙PのY方向の一部を加熱することで乾燥させる。具体的には、加熱部70は、搬送ローラー72と、ヒートローラー76と、ヒーター74と、移動機構部78とを備える。また、加熱部70は、電源16(図1)から電力供給される。
搬送ローラー72は、円筒状の軸部72Bと、軸部72Bに対して拡径された1つの拡径部72Aとを有し、Y方向に沿った不図示の軸の周りに回転可能に設けられる。拡径部72AのY方向の長さは、用紙PのY方向の長さより長い。
【0067】
ヒートローラー76は、後述する移動機構部78によって駆動されることで、用紙P及び搬送ローラー72に対して接離可能となっている。ヒートローラー76は、円筒状の軸部76Bと、軸部76Bの一部において拡径された4つの拡径部76Aとを有し、Y方向に沿った不図示の軸の周りに回転可能に設けられる。4つの拡径部76AのY方向の長さは、それぞれ用紙PのY方向の長さより短い。また、4つの拡径部76Aは、Y方向に間隔をあけて配置される。拡径部76Aの外径は、一例として、拡径部72Aの外径と同程度の大きさである。
【0068】
ヒーター74は、Y方向に延びる棒状に形成され、軸部76Bの内側に配置される。また、ヒーター74は、電源16から電力供給されることで発熱し、ヒートローラー76を加熱する。これにより、4つの拡径部76Aが加熱された状態となる。
ヒートローラー76は、4つの拡径部76Aが搬送ローラー72と共に用紙Pを挟んだ状態で回転されることで、用紙PのY方向のうち4箇所の部位を加熱しながら、用紙Pを搬送する。換言すると、加熱部70は、用紙Pを加圧しながら加熱する。そして、加熱された用紙Pの一部は、水分が蒸発することで乾燥状態となる。
移動機構部78は、不図示のモーター及びギヤを含んで構成され、軸部76Bを移動させることで、ヒートローラー76を用紙P及び搬送ローラー72に対して接離させる。
【0069】
変形例2の記録システム1において、制御部24は、入力された制御情報に基づいて、搬送方向における乾燥領域SAの位置の変更、及び加熱部70による加熱の有無の変更の一方を実行させる。さらに、制御部24は、入力された制御情報に基づいて、ヒートローラー76と用紙Pとの接触の有無を切り替える制御を行う。
例えば、用紙Pに対して加熱部70による加熱を行う制御情報が入力された場合、制御部24は、移動機構部78の駆動を制御することで、ヒートローラー76を用紙Pに接触させる。また、用紙Pに対して加熱部70による加熱を行わない制御情報が入力された場合、制御部24は、移動機構部78の駆動を制御することで、ヒートローラー76を用紙Pから離れた位置へ移動させる。
【0070】
加熱部70を有する変形例2の記録システム1によれば、制御情報に合わせて、用紙Pの剛性を高めたい部位を変更することができる。また、変形例2の記録システム1によれば、用紙Pの搬送方向の端部だけでなく、用紙Pの搬送方向の一部からヒートローラー76の接触を開始し、あるいは、用紙Pの搬送方向の一部においてヒートローラー76を離脱させることが可能となる。これにより、用紙Pの搬送方向における乾燥領域SAの位置を自由に設定することができる。
【0071】
図10Bには、実施形態1の変形例3の記録システム1における加熱部80が示される。
加熱部80は、加熱部70(図10A)のヒーター74が、軸部76Bではなく、軸部72Bの内側に配置された構成を有する。このように、搬送ローラー72を加熱し、搬送ローラー72とヒートローラー76とを接触させることで、ヒートローラー76を間接的に加熱してもよい。
【0072】
[実施形態2]
次に、実施形態2の記録システム1について、添付図面を参照して説明する。なお、実施形態1の記録システム1の各部と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
実施形態2の記録システム1は、実施形態1の記録システム1において、パンチユニット50を使用する点が異なる。パンチユニット50を使用すること以外の構成については、基本的に実施形態1の構成と同様である。
【0073】
図9に示されるように、パンチユニット50は、用紙Pに対してせん断処理を行うせん断処理部の一例である。
加熱部40は、用紙Pの貫通孔Aの形成位置に合わせて、加熱量DAの領域が設定される。
制御部24は、加熱部40を用いて、用紙Pのパンチユニット50によりせん断処理が行われる領域に乾燥領域SAを形成させ、用紙Pのパンチユニット50によりせん断処理が行われない領域に未乾燥領域SBを形成させる。
【0074】
次に、実施形態2の記録システム1の作用について説明する。
実施形態2の記録システム1によれば、乾燥領域SAにおいて用紙Pのせん断が行われる。乾燥領域SAでは、未乾燥領域SBに比べて用紙Pに含まれるインクQの水分量が低下していることで、用紙Pにおけるせん断方向の力に対する剛性が高められているので、せん断不良が生じることを抑制できる。
【0075】
[実施形態3]
次に、実施形態3の記録システム1について、添付図面を参照して説明する。なお、実施形態1の変形例1の記録システム1の各部と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
実施形態3の記録システム1は、実施形態1の変形例1の記録システム1において、加熱部40(図1)に代えて加熱部80を有し、さらに、搬送ローラー対65(図1)に代えて、搬送ローラー86を有する点が異なる。他の構成ついては、基本的に変形例1の構成と同様である。
【0076】
図11に示されるように、搬送ローラー86は、搬送方向における加熱部82より下流に設けられる。また、搬送ローラー86は、一例として、円筒状の軸部86Bと、軸部86Bから径方向に拡径された4つの拡径部86Aとを有する。
拡径部86Aは、回転体の一例である。また、拡径部86Aは、用紙Pに拡径部86Aを投影した場合、乾燥領域SAの内側に位置する。
【0077】
次に、実施形態3の記録システム1の作用について説明する。
実施形態3の記録システム1によれば、拡径部86Aは、用紙Pを搬送する場合、乾燥領域SAの内側において用紙Pと接触する。ここで、用紙Pの乾燥領域SAでは、付着するインクQの量が、未乾燥領域SBのインクQの量に比べて少ないので、インクQが用紙Pから拡径部86Aに転写されることを抑制できる。
【0078】
[実施形態4]
次に、実施形態4の記録システム1について、添付図面を参照して説明する。なお、既述の各実施形態及び各変形例と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
実施形態4の記録システム1は、搬送部19(図1)と、吐出部22と、加熱部82と、排出部33と、制御部24(図2)とを備える。他の構成ついては、基本的に実施形態1の構成と同様である。
【0079】
図12には、記録ヘッド20、吐出部22、加熱部82、排出部33及び用紙Pが示される。
加熱部82は、吐出部22における吐出量Vが予め設定された設定量を超える場合、用紙Pの搬送方向の一部において、Y方向の一端から他端までを加熱する。本実施形態では、一例として、用紙Pの搬送方向の2箇所において加熱部82による加熱が行われる。
ヒートローラー84は、不図示の移動機構部によって、用紙Pに対して接離可能とされている。
【0080】
排出部33は、搬送方向と直交するY方向に移動可能なカーソル部88が設けられた点が異なる。
カーソル部88は、用紙Pに対して-Y方向に位置するカーソル88Aと、用紙Pに対して+Y方向に位置するカーソル88Bとを有する。
カーソル88A及びカーソル88Bは、不図示のラック及びピニオンから成る機構部によって、Y方向に沿って互いに接近する方向と互いに離れる方向とに移動可能とされる。そして、カーソル88A及びカーソル88Bは、排出部33の複数の用紙Pと接触することで、複数の用紙PをY方向に移動させると共に、複数の用紙PにおけるY方向の両端部の位置を揃える。
【0081】
制御部24は、用紙Pの搬送方向の一部において、Y方向の一端から他端まで加熱部82を用いて乾燥領域SCを形成させる。なお、用紙Pにおける乾燥領域SC以外の領域は、未乾燥領域SDとなる。乾燥領域SCは、一例として、2箇所形成される。
2つの乾燥領域SAは、一例として、用紙Pにおけるカーソル88Aとカーソル88Bとで挟まれる領域Mの内側に位置する。
【0082】
次に、実施形態4の記録システム1の作用について説明する。
実施形態4の記録システム1によれば、用紙Pの搬送方向の一部において、Y方向の一端から他端まで乾燥領域SCが形成される。これにより、用紙Pの全体が未乾燥領域SDとされる場合に比べて、Y方向に作用する力に対する用紙Pの剛性が高められるので、カーソル88A、88Bが用紙PのY方向の端部に接触した場合の用紙Pの座屈を抑制できる。
【0083】
[実施形態5]
次に、実施形態5の記録システム1について、添付図面を参照して説明する。なお、既述の各実施形態及び各変形例と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
実施形態5の記録システム1は、実施形態1の変形例3の記録システム1において、加熱部80に代えて加熱部90が設けられた点が異なる。他の構成ついては、基本的に実施形態1の変形例3の構成と同様である。
【0084】
図13には、加熱部90が示される。
加熱部90は、一例として、4つのヒートローラー92と、ヒートローラー92をY軸回りに回転可能に支持する4つのホルダー94と、ローラーの一例としての搬送ローラー72と、搬送ローラー72を加熱する熱源としてのヒーター74と、移動機構部95とを有する。
ヒートローラー92は、搬送ローラー72を介してヒーター74の熱量を受けることで用紙Pを加熱可能となる。換言すると、ヒートローラー92は、間接的に加熱が行われる加熱ローラーである。
搬送ローラー72は、ヒートローラー92と共に用紙Pをニップする。
【0085】
移動機構部95は、一例として、リニアスライダー93(図14)を含んで構成される。また、移動機構部95は、一例として、用紙P及び搬送ローラー72に対して、4つのヒートローラー92を一体的に接離可能に構成される。
4組のヒートローラー92及びホルダー94は、リニアスライダー93に取り付けられており、制御部24からの指示に応じて、それぞれが単独でY方向の位置を変更可能に設けられる。
制御部24は、4つのヒートローラー92をY方向に移動させることにより、Y方向における乾燥領域SAの位置を変更可能である。
【0086】
次に、実施形態5の記録システム1の作用について説明する。
実施形態5の記録システム1によれば、ヒートローラー92と搬送ローラー72とによってニップされることで用紙Pが加圧されるので、用紙Pの加熱のみを行う構成に比べて、用紙Pの乾燥領域SAの剛性を高めることができる。
【0087】
図14には、実施形態5の変形例1の記録システム1における加熱部90と、用紙Pとが示される。
加熱部90の4つのヒートローラー92は、搬送方向と直交する幅方向であるY方向に移動可能に設けられる。なお、ホルダー94の図示は省略する。
制御部24(図2)は、用紙Pの乾燥領域SEが形成される位置に合わせて、加熱部90の4つのヒートローラー92のY方向の移動を制御する。
【0088】
実施形態5の変形例1の記録システム1では、用紙Pが加熱部90を通っている間に、4つのヒートローラー92がまとまってY方向に徐々に移動されることで、用紙Pに4つの乾燥領域SEと、5つの未乾燥領域SFとが形成される。乾燥領域SEは、搬送方向と交差する斜め方向に直線状且つ帯状に延びる。このように、加熱部90のヒートローラー92をY方向に移動させることで、用紙Pにおける乾燥領域SEが形成される部位を変更可能となるので、用紙Pの材質が変わるなどして用紙Pの剛性を高めたい部位が変わったとしても、対応することができる。
【0089】
図15には、実施形態5の変形例2の記録システム1における加熱部96と、用紙Pとが示される。
加熱部96は、3つのヒートローラー92と、リニアスライダー93と、3つのヒートローラー98と、リニアスライダー99とを含んで構成される。
ヒートローラー98は、ヒートローラー92と同様の構成であり、Y方向に移動可能に設けられる。リニアスライダー99は、リニアスライダー93と同様の構成である。なお、ホルダー94の図示は省略する。
【0090】
3つのヒートローラー92及びリニアスライダー93は、3つのヒートローラー98及びリニアスライダー99に対して搬送方向の下流に位置する。3つのヒートローラー92は、まとまって+Y方向に移動される。3つのヒートローラー98は、まとまって-Y方向に移動される。
用紙Pが加熱部96を通っている間に、3つのヒートローラー92が+Y方向に移動され、3つのヒートローラー98が-Y方向に移動されることで、用紙Pには、乾燥領域SG1、SG2、SG3、SH1、SH2、SH3が形成される。なお、乾燥領域SG1、SG2、SG3、SH1、SH2、SH3以外の領域をまとめて未乾燥領域SJとする。
【0091】
乾燥領域SG1、SG2、SG3、SH1、SH2、SH3は、それぞれが搬送方向と交差する斜め方向に直線状且つ帯状に延びる。乾燥領域SG1、SG2、SG3は、ほぼ平行に並ぶ。乾燥領域SH1、SH2、SH3は、ほぼ平行に並ぶ。また、乾燥領域SG1、SG2、SG3と、乾燥領域SH1、SH2、SH3とは、互いに交差する。
このように、加熱部96を用いて用紙Pを加熱することで、用紙Pに網目状の乾燥領域を形成できる。用紙Pは、網目状の乾燥領域が形成されることで、X方向及びY方向の両方において剛性が高められる。
【0092】
図16には、実施形態5の変形例3の記録システム1における加熱部100と、用紙Pとが示される。
加熱部100は、2つのヒートローラー102と、リニアスライダー103とを含んで構成される。2つのヒートローラー102は、一例として、Y方向にまとまって同じ方向に移動可能である。なお、2つのヒートローラー102は、リニアスライダー103に取り付けられた不図示のホルダーに回転可能に支持される。
【0093】
用紙Pが加熱部100を通っている間に、2つのヒートローラー102が同期されながら+Y方向及び-Y方向に往復移動されることで、用紙Pには、乾燥領域SK1、SK2と3つの未乾燥領域SLとが形成される。
乾燥領域SK1、SK2は、X方向を進行方向としてY方向に山谷を繰り返す波型に形成される。用紙Pは、波型の乾燥領域SK1、SK2が形成されることで、X方向及びY方向の両方において剛性が高められる。
なお、乾燥領域SK1と乾燥領域SK2は、一例として、Y方向に長さL1でオーバーラップする。このオーバーラップされた領域では、他の領域に比べて、用紙Pの剛性がさらに高められる。
【0094】
図17には、実施形態5の変形例4の記録システム1における加熱部100と、用紙Pとが示される。
実施形態5の変形例4の加熱部100は、変形例3とは異なり、2つのヒートローラー102がY方向において互いに逆方向に移動されることで、乾燥領域SK1、乾燥領域SK2と3つの未乾燥領域SLとが形成される。
なお、2つのヒートローラー102は、逆方向に移動されるが同期されているため、Y方向の外側に凸となる山部と、Y方向の内側に凹となる谷部とが、Y方向のほぼ同じ位置にある。これにより、用紙Pに形成された乾燥領域SK1と乾燥領域SK2は、用紙PのY方向の中央を通りX方向に延びる不図示の中央線に対して、線対称の関係にある。また、乾燥領域SK1と乾燥領域SK2とは、Y方向に長さL2だけ離れている。
このように、線対称の乾燥領域SK1、SK2が形成されることで、用紙Pの剛性がY方向の一方と他方で均等に高められる。
【0095】
[実施形態6]
次に、実施形態6の記録システム1について、添付図面を参照して説明する。なお、既述の各実施形態及び各変形例と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
実施形態6の記録システム1は、実施形態1の変形例2の記録システム1において、形成される加熱領域の配置が異なる。他の構成ついては、基本的に実施形態1の変形例2の構成と同様である。
【0096】
図18に示される実施形態6の記録システム1において、パドル部61、カーソル部88及びステープラー69(図2)は、排出部33の用紙Pに対して後処理を行う後処理部の一例である。
加熱部70は、搬送方向において吐出部22と排出部33との間に配置される。加熱部70が加熱することで、用紙Pには、一例として、4つの乾燥領域SM1と、1つの未乾燥領域SNとが形成される。
4つの乾燥領域SM1と1つの未乾燥領域SNとは、搬送方向に並ぶ。具体的には、4つの乾燥領域SM1は、用紙Pにおいて、搬送方向の中央より下流に偏在する。換言すると、搬送方向の中央より上流には、未乾燥領域SNが偏在する。なお、4つの乾燥領域SM1は、用紙PにおけるY方向の両端部に1箇所ずつと、中央部の2箇所の合計4箇所に位置する。4つの乾燥領域SM1は、Y方向の寸法がX方向の寸法より長い矩形状に形成される。
【0097】
次に、実施形態6の記録システム1の作用について説明する。
実施形態6の記録システム1によれば、用紙Pの搬送方向における下流側の部分に乾燥領域SM1が形成される。これにより、用紙Pの下流端部が、排出部33又は他の載置部に接触した場合、搬送方向の力に対する用紙Pの剛性が高められているので、用紙Pの下流端部の座屈を抑制できる。
【0098】
[実施形態7]
次に、実施形態7の記録システム1について、添付図面を参照して説明する。なお、既述の各実施形態及び各変形例と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
実施形態7の記録システム1は、実施形態1の変形例2の記録システム1において、形成される加熱領域の配置が異なる。他の構成ついては、基本的に実施形態1の変形例2の構成と同様である。
【0099】
図19に示される実施形態7の記録システム1において、ステープラー69(図2)は、排出部33の用紙Pに対して後処理を行う後処理部の一例である。
加熱部70は、搬送方向において吐出部22と排出部33との間に配置される。加熱部70が加熱することで、用紙Pには、一例として、4つの乾燥領域SM2と、1つの未乾燥領域SNとが形成される。
4つの乾燥領域SM2と1つの未乾燥領域SNとは、搬送方向に並ぶ。具体的には、4つの乾燥領域SM2は、用紙Pにおいて、搬送方向の中央より上流に偏在する。換言すると、搬送方向の中央より下流には、未乾燥領域SNが偏在する。なお、4つの乾燥領域SM2は、用紙PにおけるY方向の両端部に1箇所ずつと、中央部の2箇所の合計4箇所に位置する。4つの乾燥領域SM2は、Y方向の寸法がX方向の寸法より長い矩形状に形成される。
【0100】
排出部33は、一例として、1つの整合板106及び4つのパドル108が設けられる。
整合板106は、排出部33における搬送方向の上流に位置する。整合板106は、搬送方向に所定の厚さを有し、Y方向に延在される。そして、整合板106は、用紙Pの搬送方向の上流端部を揃える。
4つのパドル108は、パドル部61(図1)を構成する。また、4つのパドル108は、Y方向に間隔をあけて配置され、排出部33の用紙Pを搬送方向の上流へ引き戻すと共に整合板106と接触させる。
【0101】
制御部24(図2)は、搬送方向及びY方向において、パドル108と排出部33に排出された用紙PとがZ方向に接触する4つの位置が、乾燥領域SM2に1つずつ含まれるように、加熱部70による用紙Pの加熱動作を制御する。
【0102】
次に、実施形態7の記録システム1の作用について説明する。
実施形態7の記録システム1によれば、用紙Pの搬送方向における上流側の部分に乾燥領域SM2が形成される。これにより、用紙Pの上流端部が整合板106に接触した場合、搬送方向の力に対する用紙Pの剛性が高められているので、用紙Pの上流端部の座屈を抑制できる。
実施形態7の記録システム1によれば、パドル108と用紙Pとが接触する位置が乾燥領域SM2に含まれることで、用紙Pにおけるパドル108と接触する部位の剛性が高められるので、パドル108から用紙Pに付与される荷重を強くしても、用紙Pの座屈を抑制できる。
【0103】
本発明の実施形態1から実施形態7までに係る各実施形態及び各変形例の記録システム1、記録システム1の制御方法及び記録システム1の制御プログラムは、以上のべたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や組合せ、省略等を行うことも勿論可能である。
【0104】
実施形態1の記録システム1において、温度センサー21及び湿度センサー23のいずれか一方のみを備えていてもよい。また、排出部33において凹部37及び凸部35が設けられていなくてもよい。
【0105】
用紙Pに記録される情報の記録密度が低い場合、吐出部22からのインクQの吐出量Vが低いため、用紙Pの加熱を行わない制御を行ってもよい。
乾燥領域を形成可能な第1ローラー対と、未乾燥領域のみとなる第2ローラー対とを両方配置しておき、乾燥モードでは第1ローラー対を使用し、非乾燥モードでは第2ローラー対を使用する制御を行ってもよい。
【0106】
搬送経路Kにおいて、両面印刷のために用紙Pをスイッチバックさせるスイッチバック経路と、スイッチバック経路にて用紙Pを加熱する加熱部と、スイッチバック経路への用紙Pの侵入量を測定する測定部とを設ける。そして、測定部において測定された用紙Pの侵入量が多い場合に加熱部を動作させて加熱を行い、用紙Pの侵入量が少ない場合に加熱を行わないモード切り替えを行ってもよい。
【0107】
設定される温度閾値、湿度閾値がそれぞれ2つ以上ある多段階の制御を行ってもよい。そして、各温度範囲、各湿度範囲に合わせて用紙Pの加熱量を変更してもよい。温度閾値が1つの場合、ヒーターのON、OFFのみで制御してもよい。加熱量及び吐出量を変更する場合、それぞれ独立して変更してもよい。
また、CPU25は、吐出量見積部28が見積もった吐出量Vを用いずに、加熱部40により加熱が必要か否かまたは、加熱量の変更が必要か否かを判断してもよいし、吐出量見積部28が見積もった吐出量Vに係わらずこれらを判断しなくてもよい。また、吐出量見積部28が見積もった吐出量Vを用いずに、未乾燥領域SBと乾燥領域SAとが用紙Pに形成されるようにCPU25が各ステップを実行させてもよい。この場合、吐出量見積部28が見積もった吐出量Vは、吐出部22の駆動に用いられる。
【0108】
搬送ローラーに対してヒートローラーを接離させる機構は、モーター及びカムに限らず、ソレノイドを用いてもよい。
用紙Pに温風を吹き付ける方式では、シャッター部材により温風の流出位置を変更するものに限らず、流出口自体をY方向に移動させてもよい。
ヒートローラーの幅方向の移動は、無端ベルトとプーリーとモーターの組合せや、ソレノイドを用いてもよい。
【0109】
シートは、用紙Pに限らず、フィルムや布などであってもよい。
パンチ部材54は、貫通孔Aの形状が円形以外の形状となる外形を有するものであってもよい。
貫通孔Aの数は、2つに限らず、1つ又は3つ以上でもよい。
用紙Pの1枚当たりの各乾燥領域の数、各未乾燥領域の数、及び加熱量が変更される箇所の数は、それぞれ各実施形態の数とは異なる数に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…記録システム、2…記録ユニット、4…中間ユニット、10…画像形成部、
12…スキャナー部、14…カセット収容部、15…操作部、16…電源、17…表示部、
18…収容カセット、19…搬送部、20…記録ヘッド、21…温度センサー、
22…吐出部、23…湿度センサー、24…制御部、25…CPU、26…メモリー、
27…タイマー、28…吐出量見積部、30…後処理ユニット、32…筐体、
33…排出部、34…排紙トレイ、35…凸部、37…凹部、40…加熱部、
42…支持板、44…ダクト部、45…ダクト本体、45A…流出口、
46…シャッター部材、48…ファンヒーター、50…パンチユニット、
51…ユニット本体、52…ダイ、53…支持部、54…パンチ部材、61…パドル部、
62…用紙センサー、65…搬送ローラー対、66…搬送ローラー対、67…カーソル部、
69…ステープラー、70…加熱部、72…搬送ローラー、72A…拡径部、
72B…軸部、74…ヒーター、76…ヒートローラー、76A…拡径部、76B…軸部、
78…移動機構部、80…加熱部、86…搬送ローラー、86A…拡径部、86B…軸部、
88…カーソル部、88A…カーソル、88B…カーソル、90…加熱部、
92…ヒートローラー、93…リニアスライダー、94…ホルダー、95…移動機構部、
96…加熱部、98…ヒートローラー、99…リニアスライダー、100…加熱部、
102…ヒートローラー、103…リニアスライダー、106…整合板、108…パドル、
A…貫通孔、K…搬送経路、L1…長さ、L2…長さ、Q…インク、SA…乾燥領域、
SB…未乾燥領域、SC…乾燥領域、SD…未乾燥領域、SE…乾燥領域、
SF…未乾燥領域、SG1…乾燥領域、SG2…乾燥領域、SG3…乾燥領域、
SH1…乾燥領域、SH2…乾燥領域、SH3…乾燥領域、SJ…未乾燥領域、
SK1…乾燥領域、SK2…乾燥領域、SL…未乾燥領域、SM1…乾燥領域、
SM2…乾燥領域、SN…未乾燥領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19