(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】給電制御装置、給電制御プログラム及び給電制御システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241008BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20241008BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2021009012
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
(72)【発明者】
【氏名】吉田 咲子
(72)【発明者】
【氏名】山田 築
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 義正
(72)【発明者】
【氏名】今村 朋範
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-064572(JP,A)
【文献】特開2018-142063(JP,A)
【文献】特開2010-119246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向に車両が走行する複数の走行レーンであって、互いに幅が異な
り、災害時には幅が大きい走行レーンに公共性が高い車両が走行する複数の走行レーンにおいて、災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンであって、災害発生時に、走行レーンを走行する車両のうち、
前記公共性が高い車両が走行する走行レーンへの電力供給を優先させる制御情報を生成するプロセッサ、
を備える給電制御装置。
【請求項2】
各走行レーンには、前記車両に電力を供給する給電装置が設置され、
前記プロセッサは、各走行レーンにおける給電比率を、前記給電装置を管理する給電管理装置に送信する、
請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、通常状態では各走行レーンの給電比率を均等に設定する制御情報を生成して各走行レーンの給電を制御する、
請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンにおける給電比率を、他の走行レーンの給電比率と比して大きくする前記制御情報を生成する、
請求項3に記載の給電制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記災害が沈静化した場合、各走行レーンの前記給電比率を前記通常状態の比率に戻す、
請求項4に記載の給電制御装置。
【請求項6】
プロセッサに、
同一方向に車両が走行する複数の走行レーンであって、互いに幅が異な
り、災害時には幅が大きい走行レーンに公共性が高い車両が走行する複数の走行レーンにおいて、災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンであって、災害発生時に、走行レーンを走行する車両のうち、
前記公共性が高い車両が走行する走行レーンへの電力供給を優先させる制御情報を生成する、
ことを実行させる給電制御プログラム。
【請求項7】
各走行レーンには、前記車両に電力を供給する給電装置が設置され、
前記プロセッサに、
各走行レーンにおける給電比率を、前記給電装置を管理する給電管理装置に送信する、
ことを実行させる請求項6に記載の給電制御プログラム。
【請求項8】
前記プロセッサに、
通常状態では各走行レーンの給電比率を均等に設定する制御情報を生成して各走行レーンの給電を制御する、
ことを実行させる請求項6に記載の給電制御プログラム。
【請求項9】
前記プロセッサに、
災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンにおける給電比率を、他の走行レーンの給電比率と比して大きくする前記制御情報を生成する、
ことを実行させる請求項8に記載の給電制御プログラム。
【請求項10】
前記プロセッサに、
前記災害が沈静化した場合、各走行レーンの前記給電比率を前記通常状態の比率に戻す、
ことを実行させる請求項9に記載の給電制御プログラム。
【請求項11】
同一方向に車両が走行する複数の走行レーンであって、互いに幅が異な
り、災害時には幅が大きい走行レーンに公共性が高い車両が走行する複数の走行レーンと、
災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンであって、災害発生時に、走行レーンを走行する車両のうち、
前記公共性が高い車両が走行する走行レーンへの電力供給を優先させる制御情報を生成する第1のプロセッサを有する給電制御装置と、
を備える給電制御システム。
【請求項12】
各走行レーンには、前記車両に電力を供給する給電装置が設置され、
前記第1のプロセッサは、各走行レーンにおける給電比率を、前記給電装置を管理する給電管理装置に送信する、
請求項11に記載の給電制御システム。
【請求項13】
前記第1のプロセッサは、通常状態では各走行レーンの給電比率を均等に設定する制御情報を生成して各走行レーンの給電を制御する、
請求項11に記載の給電制御システム。
【請求項14】
前記第1のプロセッサは、災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンにおける給電比率を、他の走行レーンの給電比率と比して大きくする前記制御情報を生成する、
請求項13に記載の給電制御システム。
【請求項15】
前記第1のプロセッサは、前記災害が沈静化した場合、各走行レーンの前記給電比率を前記通常状態の比率に戻す、
請求項14に記載の給電制御システム。
【請求項16】
前記給電制御装置の制御のもと、前記車両に対して給電を行う給電装置と、
前記給電装置の給電処理に基づいて算出される給電効率をもとに、当該給電装置が設置される位置において災害が発生しているか否かを判定する第2のプロセッサを備える災害地特定装置と、
をさらに備える請求項11に記載の給電制御システム。
【請求項17】
各走行レーンには、前記車両に電力を供給する給電装置が設置され、
前記第2のプロセッサは、前記給電効率が予め設定されている閾値以下の場合に、前記車両へ給電を行った地点において災害が発生していると判定する、
請求項16に記載の給電制御システム。
【請求項18】
前記閾値は、災害の種別に応じて複数設定される、
請求項17に記載の給電制御システム。
【請求項19】
前記第2のプロセッサは、給電効率と、複数の閾値とに基づいて災害の種別を判定する、
請求項18に記載の給電制御システム。
【請求項20】
前記第2のプロセッサは、車両が走行するレーンに堆積する堆積物によって低下する給電効率に基づいて災害の発生の有無を判定する、
請求項17に記載の給電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電制御装置、給電制御プログラム及び給電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、災害時、ハイブリッド走行モードやEV走行モードで走行可能な車両のうち、緊急性の高い車両が優先して給電設備を使用できるように給電設備が制御されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が同一方向に進行する複数の走行レーンであって、レーンの幅が互いに異なる複数の走行レーンが設置される場合がある。このような走行レーンでは、例えば、幅が広い走行レーンを、緊急性の高い車両や、搬送用の大型の車両等の公共性の高い車両が走行することが想定される。これら公共性の高い車両は、災害が発生した際にも、充電しながら走行して被災地へ移動することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、災害時等に、公共性の高い車両が走行できる状態を維持することができる給電制御装置、給電制御プログラム及び給電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る給電制御装置は、同一方向に車両が走行する複数の走行レーンであって、互いに幅が異なる複数の走行レーンにおいて、災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンへの電力供給を優先させる制御情報を生成するプロセッサ、を備える。
【0007】
また、本開示に係る給電制御プログラムは、プロセッサに、同一方向に車両が走行する複数の走行レーンであって、互いに幅が異なる複数の走行レーンにおいて、災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンへの電力供給を優先させる制御情報を生成する、ことを実行させる。
【0008】
また、本開示に係る給電制御システムは、同一方向に車両が走行する複数の走行レーンであって、互いに幅が異なる複数の走行レーンと、災害に関する情報を取得した場合に、幅が大きい走行レーンへの電力供給を優先させる制御情報を生成する第1のプロセッサを有する給電制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、公共性の高い車両が走行できる状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る給電制御システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る車両(車両制御装置)の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る給電制御システムにおける車両と走行レーンの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る給電制御システムが行う給電制御処理を説明するシーケンス図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る給電制御システムを示す概略図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る給電制御システムが行う災害判定処理を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一又は対応する部分には同一の符号を付す。また、本開示は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態)
まず、一実施形態に係る給電制御システムについて説明する。
図1は、一実施形態に係る給電管理装置を備える給電制御システムを示す概略図である。
図2は、一実施形態に係る車両(車両制御装置)の構成を説明するためのブロック図である。
図3は、一実施形態に係る給電制御システムにおける車両と走行レーンの一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、この一実施形態による給電制御システム1は、走行レーン管理装置20、車両30、及び給電管理装置40を備える。この一実施形態による給電制御システム1においては、走行レーン管理装置20、各車両30、及び給電管理装置40が、ネットワーク10によって互いに通信可能に接続されている。ネットワーク10は、走行レーン管理装置20、車両30、及び給電管理装置40の相互間で通信可能な、インターネット回線網や携帯電話回線網等から構成される。本実施の形態において、車両30は、ハイブリッド走行モードやEV走行モードで走行可能な車両であるものとする。車両30は、給電管理装置40が管理する給電装置41から供給される電力によって充電される。
【0014】
走行レーン管理装置20は、走行レーンを走行する車両30の隊列を制御するとともに、走行レーンにおける給電態様を制御するための情報を給電管理装置40に送信する。走行レーン管理装置20は、制御情報作成部21、制御部22及び記憶部23を備える。走行レーン管理装置20は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を含む一つ又は複数のコンピュータ等を用いて構成される。走行レーン管理装置20は、走行制御装置に相当する。
【0015】
制御情報作成部21は、受信した災害に関する情報に基づいて、走行レーンにおける給電を制御するための走行レーン制御情報を作成する。
【0016】
制御部22は、走行レーン管理装置20の各部の動作を統括的に制御する。
【0017】
記憶部23は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて構成され、各種プログラム及び各種データが書き込み及び読み出し可能に格納されている。この記録媒体としては、光ディスク、フラッシュメモリ、磁気ディスク等の記憶媒体、及びこれらの記憶媒体のドライブ装置を有して構成される。
【0018】
また、記憶部23は、制御情報作成部21が制御情報を作成する際に用いる給電制御情報を記憶する。この給電制御情報は、通常状態及び災害発生時において、各走行レーンに割り当てる給電比率を含む。ここでいう「通常」とは、事故や災害等によって、車両30の走行に支障がない状態をさす。
給電比率は、例えば、電力供給対象の走行レーンへ供給可能な総電力に対して割り当てられる電力の比率である。通常状態では各走行レーンに対して同等の比率が設定され、災害時には、走行レーンの大きさに応じて比率が設定される。災害時における給電比率は、走行する車両30の大きさが大きい走行レーンほど、給電が優先されるように設定される。
【0019】
本実施の形態では、車両30と給電装置41との間で、非接触充電が実施される。車両30に設けられる受信部31と、給電管理装置40に接続する給電装置41とが通信することによって、給電信号が車両30に送信される。受信部31及び給電装置41は、例えば、それぞれコイル、スイッチング回路及び整流平滑回路を用いて構成され、磁界共鳴方式によって給電信号を送受信する。これにより、車両30と、給電装置41とは非接触の状態で通信する。給電装置41は、給電区間を長くとるうえで、走行レーンに沿って延びていることが好ましい。なお、本実施の形態では、電磁波を利用して給電、及び情報を送信する例を説明するが、光を利用して給電/情報送信する構成としてもよい。
また、受信部31は、車両30のバッテリの蓄電残量が上限値に達している場合は、給電信号の入力を受け付けないようにしてもよい。蓄電残量は、例えばSOC(State Of Charge)である。
【0020】
給電装置41は、車両が走行する複数の車線(走行レーン)に設けられ、給電管理装置40と電気的に接続する。また、本実施の形態において、給電装置41は、当該給電装置41上に位置する車両30を検知する検知機能や、当該車両30の情報を受信する受信機能を備えてもよい。この検知機能及び受信機能は、例えばループアンテナを用いて構成される。例えば、検知機能は、車両30を検知した際には給電管理装置40に検知信号を送信する。なお、給電用のコイル等によって車両の検知が可能であれば、そのコイルを給電用と共通に検知用として用いてもよい。
【0021】
続いて、車両30の構成について
図2を参照して説明する。車両30は、受信部31、並びに、通信部32、GPS(Global Positioning System)部33、入出力部34、ECU(Electronic Control Unit)35を備える。また、車両30には、各部に電力を供給するバッテリ36が設けられる。このバッテリ36は、充電可能に構成される。
本実施の形態では、通信部32、GPS部33、入出力部34及びECU35によって車両制御装置300を構成する。車両制御装置300は、CPU、FPGA、ROM、及びRAM等からなる一つ又は複数のコンピュータ等を用いて構成される。
【0022】
受信部31は、給電装置41からの給電信号を受信する。なお、受信部31は、光等の給電装置41からエネルギーを取得する構成としてもよいし、給電装置41に自身の情報を電磁波に乗せて送信してもよい。受信部、取得部及び送信部は、一体ではなく別体で設けてもよい。受信部31が受信した給電信号が、電力としてバッテリ36に供給される。
【0023】
通信部32は、ネットワーク10を介した無線通信によって、走行レーン管理装置20との間で通信を行う。通信部32は、走行レーン管理装置20から、車両30の運転を支援する運転支援情報を受信する。なお、運転支援情報は、規制や渋滞等の道路交通情報を含む。また、通信部32が、給電管理装置40に自身の情報を送信する構成としてもよい。
【0024】
GPS部33は、GPS衛星からの電波を受信して、車両30の位置を検出する。検出された位置は、車両30の位置情報として、外部(走行レーン管理装置20)に出力されるか、又は記憶部に格納される。
【0025】
また、入出力部34は、タッチパネルディスプレイや、スピーカ、マイク等から構成される。入出力部34は、ECU35による制御に従って、タッチパネルディスプレイの画面上に文字や図形等を表示したり、スピーカから音を出力したりして、運転支援に関する情報等の所定の情報を入出力可能に構成される。また、入出力部34は、車両30の利用者等がタッチパネルディスプレイを操作したり、マイクに向けて音声を発したりすることによって、ECU35に所定の情報を入力可能に構成される。
【0026】
ECU35は、CPU、FPGA、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。ECU35は、車両30の各部の電気的な動作を統括的に制御する。ECU35は、入力されたデータや予め記憶しているデータ及びプログラムを使用して演算を行い、その演算結果を制御指令信号として出力するように構成されている。
【0027】
なお、車両30は、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶媒体、及びこれらの記憶媒体のドライブ装置を含む記憶部や、車両30に近付く物体を検知するセンサ等を備える。記憶部には、ECU35が車両30の各部の作動を統括的に制御するために必要なオペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションのプログラムが格納されている。
【0028】
また、車両30には、車両30を駆動するための制御機構及び操作機構を備えている。具体的に、車両30は、駆動機構として、パワートレイン及び駆動輪とを備える。パワートレインは、駆動力を発生して出力軸から出力する動力源と、動力源が出力した駆動力を駆動輪に伝達する動力伝達機構と、を備えている。
また、操作機構は、シフトレバーや、アクセルペダル等によって構成される。
【0029】
給電管理装置40は、給電装置41に接続し、給電装置41が各車両30から取得した情報を受信し、受信した情報に基づいて車両30への給電を制御する。給電管理装置40は、CPU、FPGA、ROM、及びRAM等からなる一つ又は複数のコンピュータ等を用いて構成される。
【0030】
また、給電管理装置40は、制御部40aを備える。
制御部40aは、給電管理装置40の各部の動作を統括的に制御する。制御部40aは、走行レーン管理装置20から取得した制御情報をもとに、各走行レーンに設置される給電装置41への給電を制御する。
【0031】
ここで、本実施の形態では、同一方向に車両30が進行する走行レーンが設けられる道路50を例に説明する。道路50は、第1走行レーン51、第2走行レーン52及び第3走行レーン53を備え、各走行レーンの幅が互いに異なる。ここでいう幅とは、車両30の進行方向であって、走行レーンの長手方向と直交する方向の長さを指す。具体的には、第1走行レーン51、第2走行レーン52及び第3走行レーン53が順に並び、この順でレーンの幅が大きくなっている。なお、
図3に示す幅の関係は一例であり、道路50の規模や通行する車両30に応じて設定される。
各走行レーンには、通常状態において、種別を問わず、車両30が走行する。車両の種別としては、緊急性の高い車両と、それ以外の車両とに大きく分けられる。緊急性は、医療、物資搬送等の公共性が高いほど、高くなる。また、車両30は、例えば小型、中型及び大型は、車両30の重量(積載可能重量を含む)によって分類される。本実施の形態において、緊急性の高い車両は大型車に分類する。例えば、
図3では、大型の車両30を30L、中型の車両30を30M、小型の車両30を30Sとしている。
【0032】
給電装置41は、各走行レーンにおいて、予め設定された間隔で複数設けられる。給電装置41は、例えば、数km間隔で設けられる。なお、
図3では、給電装置41の設置領域が、車両30よりも小さい(短い)例について図示しているが、車両30よりも長くしたり、給電装置41を隣接させて給電範囲を調整したりすることができる。
【0033】
続いて、給電制御システム1が行う走行制御処理について、
図4を参照して説明する。
図4は、一実施形態に係る給電制御システムが行う走行制御処理を説明するシーケンス図である。
【0034】
まず、走行レーン管理装置20の制御部22は、災害に関する情報(以下、災害情報という)の受信の有無を判断する(ステップS101)。災害情報は、例えば、国や地方自治体の防災センター等から配信される。制御部22は、災害情報を受信していないと判断した場合(ステップS101:No)、受信確認を繰り返す。これに対し、制御部22は、災害情報を受信したと判断した場合(ステップS101:Yes)、ステップS102に移行する。なお、災害情報を取得する前は、走行レーンにおける給電制御(給電比率)は、通常状態であるものとする。すなわち、各走行レーンには、電力供給の比率が均等になっている。
【0035】
ステップS102において、制御情報作成部21は、受信した災害情報に基づいて、災害地の走行レーンにおける給電比率を含む走行レーン制御情報を作成する。ここで設定される給電比率は、最も幅が広い走行レーン(例えば
図3では第3走行レーン)に対する給電が最大となるように設定される。ここで、
図3に示す例においては、例えば、第1走行レーン51、第2走行レーン52、第3走行レーン53の順で給電割合が大きくなるように設定してもよいし、第3走行レーン53の給電割合が最も大きく、第1走行レーン51及び第2走行レーン52の給電割合を同じに設定してもよい。
【0036】
制御部22は、ステップS102において作成された走行レーン制御情報を、給電管理装置40に送信する(ステップS103)。この際、走行レーン制御情報は、災害エリアの給電装置41を管轄する給電管理装置40に送信される。
【0037】
給電管理装置40は、走行レーン制御情報を受信したか否かを判断する(ステップS104)。制御部40aは、走行レーン制御情報を受信していないと判断した場合(ステップS104:No)、走行レーン制御情報の受信確認を繰り返す。これに対し、制御部40aは、走行レーン制御情報を受信したと判断した場合(ステップS104:Yes)、ステップS105に移行する。
【0038】
ステップS105において、制御部40aは、走行レーン制御情報にしたがい、各走行レーンの給電制御を変更する。制御部40aは、各走行レーンへ供給する電力の比率を、給電比率にしたがって制御する。これにより、最も道幅の広い第3走行レーン53に対して優先的に電力が供給されるようになる。この際、被災して車両30が走行しない走行レーンには電力を供給しないようにしてもよい。
【0039】
ステップS105の制御によって、例えば、緊急性の高い車両30(車両30L)が、被災地等へ向かうために、最も幅が広い走行レーン(
図3では第3走行レーン53)を走行すれば、安定した電力供給のもとで走行することができる。
【0040】
その後、制御部22は、災害が沈静化し、災害による不具合等が解消した旨の解消情報を受信したか否かを判断する(ステップS106)。ここで、制御部22は、解消情報を受信していないと判断した場合(ステップS106:No)、受信確認を繰り返す。これに対し、制御部22は、解消情報を受信したと判断すると(ステップS106:Yes)、ステップS107に移行する。
【0041】
ステップS107において、制御部22は、走行レーンに対する給電比率を均等に再設定するとともに、この設定した給電比率を含む解除情報を給電管理装置40に送信する。
【0042】
制御部40aは、解除情報を受信したか否かを判断する(ステップS108)。制御部40aは、解除情報を受信していないと判断した場合(ステップS108:No)、受信確認を繰り返す。これに対し、制御部40aは、解除情報を受信したと判断した場合(ステップS108:Yes)、ステップS109に移行する。
【0043】
ステップS109において、制御部40aは、各走行レーンにおける給電装置41への給電比率を通常の比率(ここでは均等)に戻す。
【0044】
以上説明した本実施の形態では、走行レーン管理装置20が、互いに幅が異なる複数の走行レーンに対して、走行レーンによらず均等に給電される通常状態において、災害が発生した場合に、最も幅が広い走行レーンへの給電を優先するように制御する。本実施の形態によれば、災害時、緊急性の高い車両30が、被災地等へ向かうために、最も幅が広い走行レーンを走行すれば、安定した電力供給のもとで走行することができる。その結果、災害時等に、公共性の高い車両が走行できる状態を維持することができる。
【0045】
なお、実施の形態では、各車両30が、運転者の操作に従う手動運転によって走行する例について説明したが、走行レーン管理装置によって、各車両30が走行する走行レーン、速度が制御される車両30が自動運転によって走行する場合にも適用できる。
【0046】
(変形例)
図5は、変形例に係る給電制御システムを示す概略図である。変形例に係る給電制御システム1Aは、実施の形態に係る給電制御システム1の構成に対し、給電管理装置40に代えて給電管理装置40Aを備え、さらに災害地特定装置60を備える。以下、実施の形態とは異なる部分(給電管理装置40A及び災害地特定装置60、並びに処理内容)について説明する。なお、本変形例では、給電管理装置40Aが、車両30の通信部32から、時刻と対応付いたSOCの情報を受信する。
【0047】
給電管理装置40Aは、給電装置41に接続し、給電装置41が各車両30からSOC等の情報を受信するとともに、車両30への給電を制御する。給電管理装置40Aは、CPU、FPGA、ROM、及びRAM等からなる一つ又は複数のコンピュータ等を用いて構成される。給電装置41は、取得した送信情報を、給電管理装置40Aに出力する。
【0048】
また、給電管理装置40Aは、給電効率算出部40b及び制御部40cを備える。
【0049】
給電効率算出部40bは、給電対象の車両30から取得したSOCに基づいて、単位時間当たりの給電率(給電効率)を算出する。給電効率算出部40bは、公知の給電効率の算出方法を採用することができる。
【0050】
制御部40cは、給電管理装置40Aの各部の動作を統括的に制御する。
【0051】
災害地特定装置60は、給電管理装置40Aから各車両30の給電効率に関する情報を受信し、受信した情報に基づいて、給電地点において災害が発生しているか否かを判断し、災害地の特定を行う。さらに、災害地特定装置60は、例えば災害を特定した地点を管轄する地域センター等へ、災害情報を発信する。
【0052】
災害地特定装置60は、災害判定部61、制御部62及び記憶部63を備える。災害地特定装置60は、CPU、FPGA、ROM、及びRAM等を含む一つ又は複数のコンピュータ等を用いて構成される。
【0053】
災害判定部61は、給電管理装置40Aから取得した給電効率に基づいて、当該給電管理装置40Aが管理する地域に災害が発生しているか否かを判定する。
【0054】
ここで、走行レーン上に堆積物が堆積し、この堆積物が車両30と給電装置41との間に介在すると、電磁波の強度(伝送効率)が低下し、この強度低下によって給電効率が低下する。堆積物としては、水等の液体、氷(雪)、土砂、火山灰、及び、倒壊した構造物等が挙げられる。この際、給電効率の低下度合いに応じて複数の閾値を設定し、各閾値に基づいて災害の度合いを判定するようにしてもよいし、給電効率の低下率が堆積物間で異なる場合、堆積物ごとに閾値を設定してもよい。堆積物の種別に応じて閾値を設定する場合、災害判定部61は、給電効率と各閾値とを比較して、災害の種別(例えば、洪水等)を判定する。
【0055】
制御部62は、災害地特定装置60の各部の動作を統括的に制御する。
【0056】
記憶部63は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて構成され、各種プログラム及び各種データが書き込み及び読み出し可能に格納されている。この記録媒体としては、光ディスク、フラッシュメモリ、磁気ディスク等の記憶媒体、及びこれらの記憶媒体のドライブ装置を有して構成される。
【0057】
また、記憶部63は、災害判定部61が災害発生の有無を判定する際に用いる閾値を記憶する。閾値は、例えば、堆積物による給電効率の低下率に基づいて設定される給電効率の下限値である。閾値は、例えば、給電装置41の機種ごとに複数設定されてもよいし、堆積物の種別に起因する給電効率の低下率に基づいて複数設定されてもよい。
また、堆積物等によっては、電磁波の強度を増大させる場合がある。このような堆積物によって給電効率が異常に高くなる場合が想定される際には、閾値に上限値を設け、災害判定部61に、該上限値を超えた場合にも災害が発生していると判定させてもよい。
【0058】
続いて、災害地特定装置60における災害判定処理について説明する。
図6は、変形例に係る給電制御システムが行う災害判定処理を説明するシーケンス図である。
図6では、一例として、水害を判定する例について説明する。
【0059】
給電管理装置40Aは、車両30を検知した給電装置41に電力を供給して、当該給電装置41から車両30へ給電処理を実行させる(ステップS201)。給電管理装置40Aは、例えば給電装置41を介して、給電開始時のSOCをその時刻とともに取得する。給電管理装置40Aは、給電処理を終了すると、例えば給電装置41を介して、給電終了時のSOCをその時刻とともに取得する。なお、給電開始時及び給電終了時のSOCは、まとめて給電管理装置40Aに送信されるようにしてもよい。この際、給電中にSOCが上限値に達した場合、充電終了時刻は、SOCが上限値に達した時刻となる。
【0060】
その後、給電効率算出部40bが給電効率を算出する(ステップS202)。例えば、給電対象の車両30から、給電直前の時刻におけるSOCと、給電終了直後の時刻におけるSOCとを取得する。給電効率算出部40bは、取得した各時刻とSOCとに基づいて、単位時間当たりの給電率(SOCの増加率)を算出し、これを給電効率とする。
【0061】
給電管理装置40Aは、算出された給電効率を含む給電情報を災害地特定装置60に送信する(ステップS203)。給電情報には、給電効率のほか、当該給電効率の算出対象の給電装置41の位置に関する情報が含まれる。
【0062】
災害地特定装置60は、給電情報を受信したか否かを判断する(ステップS204)。災害地特定装置60は、給電情報を受信していないと判断すると(ステップS204:No)、給電情報の受信の有無を繰り返す。災害地特定装置60は、給電情報を受信したと判断すると(ステップS204:Yes)、ステップS205に移行する。
【0063】
ステップS205において、災害地特定装置60は、給電効率に基づいて水害発生の有無を判断する。具体的には、災害判定部61が、給電管理装置40Aから取得した給電効率に基づいて、当該給電管理装置40Aが管理する地点において水害が発生しているか否かを判定する。さらに、災害判定部61は、判定対象の給電装置41の位置(地点)に基づいて水害地域を推定する。
【0064】
具体的に、災害判定部61は、給電効率と、記憶部63に記憶されている閾値とを比較し、給電効率が閾値未満である場合に、給電する給電装置41の配設地点、又はその地点を含む地域において、災害が発生していると判定する。さらに、災害判定部61は、給電装置41ごとの判定結果に基づいて、災害地域を推定する。例えば、給電装置41の配設地点ごとにエリアが対応付けられており、災害判定部61は、災害が発生していると判定した給電装置41が複数ある場合は、各給電装置41のエリアを合わせた災害地域を設定する。災害判定部61の判定結果によって災害地が特定される。
【0065】
また、災害判定部61は、給電効率が閾値よりも低い給電装置41の数や連続性によって災害発生の有無を判定してもよい。災害判定部61は、例えば、給電管理装置40が管理するすべての給電装置41のうち、所定数以上の給電装置41について災害が発生していると判定した場合に、当該給電管理装置40が管理しているエリアにおいて災害が発生していると判定する。また、災害判定部61は、災害が発生していると判定され、かつ配設位置が互いに隣り合う給電装置41の数(連続数)が所定数以上である場合に、当該給電管理装置40が管理しているエリアにおいて災害が発生していると判定する。ここでの「互いに隣り合う」とは、同一の走行レーンにおいて隣り合うこと、または、複数の走行レーンを含んで最も近い距離で隣り合うことである。
【0066】
災害地特定装置60は、災害判定部61の判定結果に基づいて、水害発生情報を生成する(ステップS206)。災害地特定装置60は、水害発生情報として、災害判定部61が判定した水害発生地域を含む情報を生成する。なお、閾値の設定によって水害の度合いが判定されている場合には、その情報も水害発生情報に含まれる。
【0067】
災害地特定装置60は、走行レーン管理装置20や、水害地域を管理する地域センター等に、水害発生情報を配信する(ステップS207)。地域センターは、水害発生情報を受信すると、当該地域の地域センターに情報を配信したり、防災放送によって水害が発生している旨を報知したり、通行禁止エリアを設定したり、その地域の給電装置41の動作を停止させたりする。
【0068】
走行レーン管理装置20は、水害が発生したエリアに対し、実施の形態と同様の給電制御を実施する(
図4参照)。具体的には、最も幅の広い走行レーンの給電を優先する制御を実施する。この際、最も大きい幅の走行レーンが水没して車両30が走行できない場合は、次に幅が広い走行レーンの給電を優先させる。なお、水没した走行レーンへは、供給電力を低減してもよいし、供給しないように(オフに)してもよい。
【0069】
以上説明した本変形例では、実施の形態と同様に、走行レーン管理装置20が、互いに幅が異なる複数の走行レーンに対して、走行レーンによらず均等に給電される通常状態において、災害が発生した場合に、最も幅が広い走行レーンへの給電を優先するように制御する。本変形例によれば、災害時、緊急性の高い車両30が、被災地等へ向かうために、最も幅が広い走行レーンを走行すれば、安定した電力供給のもとで走行することができる。その結果、災害時等に、公共性の高い車両が走行できる状態を維持することができる。
【0070】
また、本変形例では、車両30と給電装置41との間に介在する堆積物の有無によって変化する、非接触充電の給電効率を用いて、災害の発生の有無を判定する。本変形例によれば、車両30に給電を行う給電装置41から情報を取得することによって、当該給電装置41の設置位置における災害の有無を推定できるため、新たな設備を導入することなく災害地を特定することができる。これにより、地域の担当者が現場に足を運ぶことなく、災害の発生を特定することができる。さらに、堆積物による給電効率の低下率の差異を用いることができれば、水害や土砂災害等の災害種別を判定し、その災害を該当地域に発信できる。
【0071】
また、本変形例では、各給電装置41の設置から、災害が発生した走行レーンを特定することができるため、被災した走行レーンへの給電を低減又はオフにすることによって、走行レーンへの給電の割り振りを適切に行い、電力を効率よく供給することができる。また、被災した走行レーンでは、走行する車両30の数が極端に減少するため、その走行レーンへの供給電力を低減又はオフにすることによって、無駄に消費される電力を抑制できる。
【0072】
また、本変形例において、災害判定部61が、給電効率が閾値よりも低い給電装置41の数や連続性によって災害発生の有無を判定することによって、給電装置41の故障と、災害発生とを区別して判定することができる。これにより、一層正確に災害発生の有無を判定することができる。
【0073】
なお、本変形例において、給電管理装置40Aが給電効率算出部40bを有しない構成とし、災害地特定装置60が車両30からSOCの情報を取得して、災害判定部61が給電効率を算出してもよい。
【0074】
(記録媒体)
一実施形態において、給電制御システムによる処理方法を実行可能なプログラムを、コンピュータその他の機械又は装置(以下、コンピュータなど、という)が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、当該コンピュータ等が災害特定システムの各装置の制御部として機能する。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データ又はプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータなどから読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちのコンピュータなどから取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disk)、BD、DAT、磁気テープ、フラッシュメモリ等のメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスク、ROM等がある。さらに、SSDは、コンピュータなどから取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータ等に固定された記録媒体としても利用可能である。
【0075】
(その他の実施形態)
また、一実施形態による給電制御システムにおいては、「部」は、「回路」等に読み替えることができる。例えば、通信部は、通信回路に読み替えることができる。
【0076】
また、一実施形態による給電制御システムの各装置に実行させるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0077】
さらなる効果、変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本開示のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 給電制御システム
10 ネットワーク
20 走行レーン管理装置
21 制御情報作成部
22、40a、40c、62 制御部
23、63 記憶部
30 車両
31 受信部
32 通信部
33 GPS部
34 入出力部
35 ECU
36 バッテリ
40、40A 給電管理装置
40b 給電効率算出部
41 給電装置
51 第1走行レーン
52 第2走行レーン
53 第3走行レーン
60 災害地特定装置
61 災害判定部