(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】二重構造容器、及びその製造方法、並びにプリフォーム
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20241008BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20241008BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 210
B29C49/22
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2021009619
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 萩人
(72)【発明者】
【氏名】阿久沢 典男
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕喜
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216081(JP,A)
【文献】特開2021-001023(JP,A)
【文献】特開2020-193020(JP,A)
【文献】特開2019-112089(JP,A)
【文献】特開2021-172405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0152122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B29C 49/22
B29C 49/06
B65D 25/14
B65D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層容器と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、前記外層容器から剥離可能な収容部を含む内層容器とを備える二重構造容器であって、
前記収容部の上端側の少なくとも一部に、前記内層容器の内口部と前記外層容器の口部との間に向かって、前記内口部の下端から折り返すように膨出して、前記外層容器の内面に接する膨出部が形成され、
前記収容部が、前記膨出部を介して前記内口部に連接していることを特徴とする二重構造容器。
【請求項2】
前記膨出部の厚みが、少なくとも前記外層容器の内面と接している部分において、50~200μmである請求項1に記載の二重構造容器。
【請求項3】
前記内口部の下端側における前記内口部の外周面と、前記口部の内周面との間の径方向に沿った離間距離が、3~5mmである請求項1又は2に記載の二重構造容器。
【請求項4】
前記内口部の外周面に、周方向に沿って張り出す規制リングが設けられており、前記規制リングによって前記膨出部の膨出高さが規制されている請求項1~3のいずれか一項に記載の二重構造容器。
【請求項5】
前記口部の内周面の少なくとも一部に、軸方向に延在する突条部が設けられており、前記突条部によって前記膨出部の膨出高さが規制されている請求項1~3のいずれか一項に記載の二重構造容器。
【請求項6】
外層容器と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、前記外層容器から剥離可能な収容部を含む内層容器とを備える二重構造容器をブロー成形するためのプリフォームであって、
前記外層容器の口部となる口部形成領域と、延伸されて前記外層容器の肩部、胴部、及び底部に成形される延伸領域とを含む有底筒状に成形された外層プリフォームと、
前記内層容器の内口部となる内口部形成領域と、延伸されて前記収容部に成形される延伸領域とを含む有底筒状に成形された内層プリフォームと
を備え、
前記内層プリフォームの前記内口部形成領域が、前記外層プリフォームの前記口部形成領域の径方向内側に、所定の間隔を以て保持された状態で、前記外層プリフォームの内側に、前記内層プリフォームが挿入され、
前記内口部形成領域の下端側における前記内口部形成領域の外周面と、前記口部形成領域の内周面との間の径方向に沿った離間距離が、3~5mmであることを特徴とするプリフォーム。
【請求項7】
前記内口部形成領域の下端側の外周面に、周方向に沿って張り出す規制リングが設けられている請求項6に記載のプリフォーム。
【請求項8】
前記口部形成領域の内周面の少なくとも一部に、軸方向に延在する突条部が設けられている請求項6に記載のプリフォーム。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載のプリフォームをブロー成形することによって前記二重構造容器を製造する二重構造容器の製造方法であって、
前記内層プリフォームの前記延伸領域が前記収容部に成形されるに際し、
前記内口部形成領域の下端に連なる前記延伸領域との接続部を含む延伸開始部位を、前記内口部に対して薄肉に延伸させるとともに、
延伸された前記延伸開始部位の少なくとも一部を、前記内口部形成領域の下端から折り返されるように膨出させて、前記内層プリフォームの前記内口部形成領域と前記外層プリフォームの前記口部形成領域との間に膨出状に入り込ませることによって、
前記収容部の上端側に、前記内層容器の前記内口部と前記外層容器の前記口部との間に向かって、前記内口部の下端から折り返すように膨出して、前記外層容器の内面に接する膨出部を形成し、
前記膨出部を介して前記内口部に連接するように前記収容部を成形することを特徴とする二重構造容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重構造容器、及びその製造方法、並びにプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性変形可能な外層容器と、内容物の減少に伴って収縮変形する内層容器とからなる二重構造容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような二重構造容器にあっては、圧搾して内容物を吐出させた後に、内層容器への空気の流入を遮断することによって、内容物の品質保持を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の二重構造容器にあっては、圧搾して内容物を吐出させた後に、外層容器と内層容器との間に空気が流入することによって、収縮変形した内層容器が外層容器から剥離していきながら、圧搾された外層容器が元の形状に復元するようにしている。このため、外層容器と内層容器との間への空気の流入が妨げられないようにする必要がある。
【0005】
このような事情に鑑みて、本発明者らは、この種の二重構造容器において、外層容器と内層容器との間への空気の流入が妨げられないようにすべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る二重構造容器は、外層容器と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、前記外層容器から剥離可能な収容部を含む内層容器とを備える二重構造容器であって、前記収容部の上端側の少なくとも一部に、前記内層容器の内口部と前記外層容器の口部との間に向かって、前記内口部の下端から折り返すように膨出して、前記外層容器の内面に接する膨出部が形成され、前記収容部が、前記膨出部を介して前記内口部に連接している構成としてある。
【0007】
また、本発明に係るプリフォームは、外層容器と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、前記外層容器から剥離可能な収容部を含む内層容器とを備える二重構造容器をブロー成形するためのプリフォームであって、前記外層容器の口部となる口部形成領域と、延伸されて前記外層容器の肩部、胴部、及び底部に成形される延伸領域とを含む有底筒状に成形された外層プリフォームと、前記内層容器の内口部となる内口部形成領域と、延伸されて前記収容部に成形される延伸領域とを含む有底筒状に成形された内層プリフォームとを備え、前記内層プリフォームの前記内口部形成領域が、前記外層プリフォームの前記口部形成領域の径方向内側に、所定の間隔を以て保持された状態で、前記外層プリフォームの内側に、前記内層プリフォームが挿入され、前記内口部形成領域の下端側における前記内口部形成領域の外周面と、前記口部形成領域の内周面との間の径方向に沿った離間距離が、3~5mmである構成としてある。
【0008】
また、本発明に係る二重構造容器の製造方法は、上記プリフォームをブロー成形することによって前記二重構造容器を製造する二重構造容器の製造方法であって、前記内層プリフォームの前記延伸領域が前記収容部に成形されるに際し、前記内口部形成領域の下端に連なる前記延伸領域との接続部を含む延伸開始部位の少なくとも一部を、前記内口部に対して薄肉に延伸させるとともに、延伸された前記延伸開始部位を、前記内口部形成領域の下端から折り返されるように膨出させて、前記内層プリフォームの前記内口部形成領域と前記外層プリフォームの前記口部形成領域との間に膨出状に入り込ませることによって、前記収容部の上端側に、前記内層容器の前記内口部と前記外層容器の前記口部との間に向かって、前記内口部の下端から折り返すように膨出して、前記外層容器の内面に接する膨出部を形成し、前記膨出部を介して前記内口部に連接するように前記収容部を成形する方法としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内容物を吐出させた後、圧搾された外層容器が元の形状に復元する際に、収容部の上端側に形成された膨出部が容易に変形して外層容器の内面との間に通気可能な隙間が形成され、外層容器と内層容器との間への空気の流入が妨げられることなく、外層容器を元の形状に良好に復元させることが可能な二重構造容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る二重構造容器の一例を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るプリフォームの一例を模式的に示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る二重構造容器の製造方法の一工程を模式的に示す説明図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る二重構造容器の製造方法の一工程を模式的に示す説明図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係るプリフォームの一例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る二重構造容器の一例を模式的に示す縦断面図、
図2は、
図1のA-A断面図であり、いずれも断面にあらわれる肉厚を適宜誇張して描写している。
【0013】
これらの図に示す容器1は、圧搾して内容物を吐出させるに際し、弾性変形によって元の形状に復元可能な外層容器2と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、外層容器2から剥離可能な収容部32を含む内層容器3とを備えている。
なお、
図1には、収容部32が収縮変形した状態を、二点鎖線で模式的に示している。
【0014】
外層容器2は、口部21、肩部22、胴部23、及び底部24を含む所定の容器形状に成形されて、容器1の外郭を形成している。
【0015】
外層容器2の口部21は、図示しない吐出キャップが装着される円筒状の部位である。口部21の開口端側には、吐出キャップを打栓によって装着するための嵌合部21aが設けられているが、吐出キャップの装着手段は、これに限定されない。例えば、螺着によって装着するようにしてもよい。
【0016】
また、嵌合部21aの下方には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング21bが設けられており、ネックリング21bの直下から、概ね同一径で円筒状に垂下する首下部21cを含めて口部21というものとする。そして、このような口部21の下端は、胴部23に向かって拡径して口部21と胴部23との間をつなぐ肩部22に連接している。
【0017】
ここで、容器1の上下左右及び縦横の方向については、口部21側を上にした
図1に示す状態で規定するものとし、後述するプリフォーム10についても同様に、口部形成領域20a側を上にした
図2に示す状態で、上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0018】
内層容器3は、収容部32が、外層容器2の肩部22、胴部23、及び底部24の内面に剥離可能に接合されるとともに、収容部32の上方に連接された内口部31が、外層容器2の口部21の径方向内側に、所定の間隔を以て保持された状態で、外層容器2の内側に配設されている。
【0019】
図示する例では、内口部31の外周面に、周方向に沿って張り出すフランジ部31aが設けられている。このフランジ部31aが、外層容器2の口部21の内周面に周方向に沿って設けられた段部21dに係止されて、外層容器2の口部21の径方向内側に、内口部31が保持されるようにしている。その際、フランジ部31aの周縁に、切り欠き部31bを形成することで、外層容器2の口部21の内周面との間に通気路Vが形成されるようにしているが、これに限定さない。例えば、外層容器2の口部21の内周面に縦溝を刻設するなどして、フランジ部31aの周縁との間に通気路Vが形成されるようにしてもよい。
【0020】
外層容器2の口部21に装着される吐出キャップは、例えば、吐出口側を下にして容器1を圧搾したときに、吐出口が開放されて内容物を吐出させることができ、容器1を圧搾する力を弱めると、吐出口が閉塞して内層容器3への空気の流入を遮断する一方で、外層容器2と内層容器3との間に空気を流入させることができ、かつ、外層容器2と内層容器3との間に流入した空気の漏出を抑止できるものであれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0021】
このような吐出キャップを装着することで、容器1を圧搾して内容物を吐出させた後に、外層容器2と内層容器3との間に空気が流入することによって、内容物が減少して収縮変形した内層容器3の収容部32が外層容器2から剥離していきながら、圧搾された外層容器2が元の形状に復元するようになる。これにより、内容物が収容された内層容器3への空気の侵入を遮断し、内容物と空気との接触を低減することで、内容物の品質保持を可能にしているが、外層容器2と内層容器3との間への空気の流入が妨げられてしまうと、外層容器2が元の形状に復元しなくなってしまう。
【0022】
本実施形態において、内層容器3の内口部31は、外層容器2の口部21の径方向内側に、所定の間隔を以て保持された状態で、容器1の軸方向に沿って、外層容器2の口部21と重なり合うように、内層容器3の内口部31の高さ(容器1の軸方向に沿った内口部31の長さ)と、外層容器2の口部21の高さ(容器1の軸方向に沿った口部21の長さ)とが、吐出キャップを装着した際にリークなどの問題が生じないように、概ね等しくなるように形成されているのが好ましい。
【0023】
そして、内層容器3の収容部32は、後述する内層プリフォーム30の延伸領域30bが、内口部31に対して薄肉となるように延伸されることによって成形されるが、収容部32の上端側には、内口部31と外層容器2の口部21との間に向かって、内口部31の下端から折り返すように膨出して、外層容器2の内面に接する膨出部32aが形成されている。そして、収容部32は、このような膨出部32aを介して内口部31に連接するように成形されている。
なお、膨出部32aは、収容部32の上端側の周方向の全周にわたって形成されるようにすることができるが、収容部32の上端側の少なくとも一部に形成されるようにしてもよい。
【0024】
以上のような本実施形態によれば、圧搾された外層容器2が元の形状に復元するに際し、膨出部32aが容易に変形して、外層容器2の内面との間に通気可能な隙間が形成されるようにすることができる。その結果、外層容器2と内層容器3との間への空気の流入が妨げられることなく、外層容器2を元の形状に良好に復元させることが可能になる。
【0025】
収容部32の上端側に形成された膨出部32aが容易に変形するのは、内口部31に対して薄肉となるように延伸されて形成されていることに起因するが、膨出部32aの厚みは、少なくとも外層容器2の内面と接している部分において、50~200μmであるのが好ましい。
【0026】
また、膨出部32aは、内層容器3の内口部31と外層容器2の口部21との間に入り込むように膨出した形状に形成されており、内層容器3の内口部31の下端側における内口部31の外周面と、外層容器2の口部21の内周面との間の径方向に沿った離間距離L1によって、膨出部32aの径方向の膨出幅が規制されている。膨出部32aが容易に変形できるようにする上で、当該離間距離L1を3~5mmとして、膨出部32aの径方向の膨出幅を規制するのが好ましい。
【0027】
また、図示する例では、内層容器3の内口部31の外周面に、周方向に沿ってフランジ状に張り出す規制リング31cを設けることで、容器1の軸方向に沿った膨出部32aの膨出高さを規制している。膨出部32aが容易に変形できるようにする上で、内層容器3の内口部31の下端と規制リング31cの下面との間の軸方向に沿った離間距離L2が1~3mmとなるように、内層容器3の内口部31の下端側に規制リング31cを設けることによって、膨出部32aの膨出高さを規制するのが好ましい。
【0028】
このような規制リング31cを設けるにあたり、規制リング31cの周縁は、外層容器2の口部21の内周面に当接していてもよく、離れていてもよい。規制リング31cの周縁が、外層容器2の口部21の内周面に当接するように規制リング31cを設ける場合には、前述したフランジ部31aと同様に、規制リング31cの周縁に切り欠き部を形成したり、外層容器2口部21の内周面に縦溝を刻設したりするなどして、通気路が形成されるようにすることができる。
【0029】
次に、このような容器1を製造対象とする本実施形態に係る二重構造容器の製造方法について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係るプリフォームの一例を模式的に示す縦断面図、
図4は、
図3のB-B断面図であり、いずれも断面にあらわれる肉厚を適宜誇張して描写している。
【0031】
これらの図に示すプリフォーム10は、外層プリフォーム20と、外層プリフォーム20の内側に挿入された内層プリフォーム30とを備えている。
【0032】
外層プリフォーム20は、後述するようにしてブロー成形する際に、概ねそのままの状態で外層容器2の口部21となる口部形成領域20aと、延伸されて外層容器2の肩部22、胴部23、及び底部24に成形される延伸領域20bとを含む有底筒状に成形されている。内層プリフォーム30も同様に、概ねそのままの状態で内層容器3の内口部31となる内口部形成領域30aと、延伸されて内層容器3の収容部32に成形される延伸領域30bとを含む有底筒状に成形されている。
【0033】
外層プリフォーム20の口部形成領域20aには、嵌合部21a、ネックリング21b、段部21dが設けられている。内層プリフォーム30の内口部形成領域30aには、切り欠き部31bが形成されたフランジ部31a、規制リング31cが設けられている。そして、外層プリフォーム20の内側に内層プリフォーム30が挿入されると、外層プリフォーム20の口部形成領域20aに設けられた段部21dに、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aに設けられたフランジ部31aが係止される。このとき、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aが、外層プリフォーム20の口部形成領域20aの径方向内側に、所定の間隔を以て保持されており、この状態が容器1に成形された後も維持される。
【0034】
なお、容器1と共通する構成については、特に断りのない限り、プリフォーム10においても同一の符号を以て示している。
【0035】
プリフォーム10が備える外層プリフォーム20と内層プリフォーム30とは、熱可塑性樹脂を使用して射出成形、又は圧縮成形などによって、所定の形状に成形される。熱可塑性樹脂としては、ブロー成形が可能な任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸,ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステルが使用でき、特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好適に使用できる。これらの樹脂は二種以上混合してもよく、他の樹脂をブレンドしてもよい。ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン-エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用できる。
また、外層プリフォーム20と内層プリフォーム30とは、単層に成形するに限らず、必要に応じて、ガスバリア層などを含む多層に成形することもできる。
【0036】
プリフォーム10は、外層プリフォーム20と内層プリフォーム30のそれぞれが、加熱により軟化させてブロー成形が可能な状態とされてから、
図5に示すように、ブロー成形型100にセットされ、必要に応じて図示しない延伸ロッドにより軸方向(縦方向)に延伸されつつ、プリフォーム10内に吹き込まれたブローエアーによって軸方向及び周方向(横方向)に延伸される。
【0037】
プリフォーム10を加熱するに際しては、例えば、赤外線ヒータなどにより外層プリフォーム20を外側から加熱するとともに、高周波誘導加熱により発熱させた棒状の高周波誘導発熱体300をプリフォーム10内に挿通して、内層プリフォーム30を内側から加熱するなどすればよい。このとき、外層プリフォーム20を加熱するには、特に図示しないが、口部形成領域20aを遮蔽体で覆うなどして、延伸領域20bが選択的に加熱されるようにする。内層プリフォーム30を加熱するには、例えば、
図6に示すように、ブローエアーを吹き込むブローノズルとしての役割と、プリフォーム10を支持する治具としての役割とを兼ねるマンドレル200の形状を、内口部形成領域30aの内周面を覆い隠すことができるように適宜設計し、マンドレル200を貫通して挿入された高周波誘導発熱体300によって、延伸領域30bが選択的に加熱されるようにする。
【0038】
このようにして、プリフォーム10をブロー成形することにより、外層プリフォーム20の口部形成領域20aは、その下端側の延伸領域20bとの接続部を除いて延伸されずに、概ねそのままの状態で外層容器2の口部21となる。そして、外層プリフォーム20の延伸領域20bが、口部形成領域20aとの接続部を起点として延伸されて、ブロー成形型100のキャビティ形状が転写されることによって、外層容器2の肩部22、胴部23、及び底部24に成形される。
【0039】
また、内層プリフォーム30にあっては、内口部形成領域30aが、その下端側の延伸領域30bとの接続部を除いて延伸されずに、概ねそのままの状態で内層容器3の内口部31となる。そして、延伸領域30bが、内口部形成領域30aとの接続部を起点として延伸されて、収容部32に成形される。
【0040】
このようにして、内層プリフォーム30の延伸領域30bが収容部32に成形されるに際し、内口部形成領域30aの下端に連なる延伸領域30bとの接続部を含む延伸開始部位の少なくとも一部が、内口部31に対して薄肉に延伸されるとともに、内方から押圧され、内口部形成領域30aの下端から折り返されるように膨出して、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aと外層プリフォーム20の口部形成領域20aとの間に膨出状に入り込む。これによって、収容部32の上端側に、内層容器3の内口部31と外層容器2の口部21との間に向かって、内口部31の下端から折り返すように膨出して、外層容器2の内面に接する膨出部32aが形成され、このような膨出部32aを介して内口部31に連接するように収容部32が成形される。
【0041】
このとき、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aと外層プリフォーム20の口部形成領域20aとの間に、延伸された延伸開始部位が膨出状に入り込む空間が確保されるようにして、収容部32の上端側に形成される膨出部32aの径方向の膨出幅を規制することにより、膨出部32aが良好に形成されるようにするのが好ましい。このような観点から、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aのうち、フランジ部31aよりも下側の領域の傾斜(縮径率)を適宜調整して、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aの下端側における内口部形成領域30aの外周面と、外層プリフォーム20の口部形成領域20aの内周面との間の径方向に沿った離間距離L3を3~5mmとして、収容部32の上端側に形成される膨出部32aの径方向の膨出幅を規制するのが好ましい。
【0042】
また、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aと外層プリフォーム20の口部形成領域20aとの間に、延伸された延伸開始部位が入り込み過ぎてしまうと、そのようにして形成された膨出部32aは、変形し難いものとなってしまう虞がある。このような観点から、図示する例では、内口部形成領域30aの外周面に、周方向に沿ってフランジ状に張り出す規制リング31cを設けている。このような規制リング31cを設けることで、延伸された延伸開始部位が、内口部形成領域30aの下端から折り返すように膨出する際に、規制リング31cの下面に当接し、延伸された延伸開始部位の膨出が規制されることによって、収容部32の上端側に形成される膨出部32aの膨出高さを規制することができる。
【0043】
このような規制リング31cを内口部形成領域30aに設けて、延伸された延伸開始部位の膨出を規制するにあたり、内口部形成領域30aの下端と規制リング31cの下面との間の軸方向に沿った離間距離L4が1~3mmとなるように、内口部形成領域30aの下端側に規制リング31cを設けることによって、収容部32の上端側に形成される膨出部32aの膨出高さを規制するのが好ましい。
【0044】
また、このような規制リング31cを設けるにあたり、規制リング31cの周縁が、外層プリフォーム20の口部形成領域20aの内周面に当接するように設けることによって、ブロー成形時に、内口部形成領域30aの下端側が拡径するように変形してしまうのを抑止するようにしてもよい。このようにすることで、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aと外層プリフォーム20の口部形成領域20aとの間に、延伸された延伸開始部位が膨出状に入り込む空間を設計通りに確保することができる。
【0045】
なお、このような態様とする場合には、規制リング31cが空気の流通の妨げとならないように、規制リング31cの周縁に切り欠き部を形成したり、外層プリフォーム20の口部形成領域20aの内周面に縦溝を刻設したりするなどして、通気路が形成されるようにすることができる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、内容物を吐出させた後、圧搾された外層容器2が元の形状に復元する際に、収容部32の上端側に形成された膨出部32aが容易に変形して外層容器2の内面との間に通気可能な隙間が形成され、外層容器2と内層容器3との間への空気の流入が妨げられることなく、外層容器2を元の形状に良好に復元させることが可能な二重構造容器が提供される。
【0047】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係るプリフォームの一例を模式的に示す縦断面図、
図8は、
図7のC-C断面図であり、いずれも断面にあらわれる肉厚を適宜誇張して描写している。
【0048】
前述した第一実施形態にあっては、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aに規制リング31cを設けることで、成形された容器1において、収容部32の上端側に形成される膨出部32aの膨出高さを規制できるようにしている。これに対して、本実施形態では、規制リング31cに代えて、外層プリフォーム20の口部形成領域20aの内周面の少なくとも一部に、軸方向に沿って延在する突条部21eを設けることにより、収容部32の上端側に形成される膨出部32aの膨出高さが規制されるようにした点が、第一実施形態と相違する。このような第一実施形態との相違点を中心に、本実施形態について以下に説明する。
【0049】
図示する例において、外層プリフォーム20の口部形成領域20aの内周面の対向する部位には、中心軸周りに回転対象(2回対称)となるように、突条部21eが三条ずつ設けられており、これらの突条部21eは、口部形成領域20aの下端側から延伸領域20bの上端側に至る範囲に、口部形成領域20aと延伸領域20bとの境界を跨いで軸方向に沿って延在するように設けられている。
【0050】
このようなプリフォーム10をブロー成形する際に、突条部21eが設けられていない部位では、前述したのと同様にして、内層プリフォーム30の延伸開始部位が延伸されるとともに、内口部形成領域30aの下端から折り返されるように膨出することによって、収容部32の上端側に膨出部32aが形成される。
【0051】
これに対して、突条部21eが設けられた部位にあっては、突条部21eによって、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aと外層プリフォーム20の口部形成領域20aとの間隔が狭められるため、延伸された延伸開始部位が、内口部形成領域30aの下端から折り返されなくなる。そして、これに引っ張られるようにして、延伸された延伸開始部位が、突条部21eが設けられていない部位で、内口部形成領域30aの下端から折り返されるように膨出する際の膨出量が抑制されることになり、これによって、収容部32の上端側に形成される膨出部32aの膨出高さを規制することができる。
【0052】
このようにして、収容部32の上端側に膨出部32aの膨出高さを規制するにあたり、突条部21eの形状、寸法、条数、さらには、突条部21eが設けられた部位の中心角θ1、突条部21eが設けられていない部位の中心角θ2などは、突条部21eが設けられていない部位において、延伸された延伸開始部位が、内層プリフォーム30の内口部形成領域30aと外層プリフォーム20の口部形成領域20aとの間に入り込み過ぎてしまわないようにして、形成された膨出部32aが変形し難くならないように適宜調整することができる。
【0053】
また、本実施形態において、外層プリフォーム20の口部形成領域20aの内周面の少なくとも一部に、軸方向に沿って延在するように設けられた突条部21eは、ブロー成形によって消失せずに、成形された容器1の対応する部位、すなわち、外層容器2の口部21の内周面の少なくとも一部に残る。その結果、外層容器2の口部21の内周面の少なくとも一部に、軸方向に延在するように突条部21eが設けられ、これによって、内層プリフォーム30の延伸開始部位が薄肉となるように延伸されずに、相対的に厚肉に成形された部分での空気流路を確保することもできる。
【0054】
以上の通り、本実施形態は、上記の点で、第一実施形態と相違するが、これ以外の構成は、第一実施形態と共通するため、第一実施形態と共通する構成については、重複する説明は省略する。
【0055】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0056】
例えば、前述した実施形態では、容器1の全体が概ね円筒状となるように形成された例を図示して説明したが、容器1の具体的な形状は特に限定されない。
【0057】
また、前述した実施形態では、外層容器2が弾性変形可能とされ、圧搾により内容物を吐出するようにした例について説明したが、本発明は、外層容器2が弾性変形せずに、圧力差によって内層容器3の収容部32から内容物を吐出(吸引)するようにした二重構造容器にも適用できる。そのような場合にあっても、外層容器2と内層容器3との間への空気の流入が妨げられることがないため、内容物が減少するのに伴って、内層容器3の収容部32が収縮変形しながら、外層容器2から確実に剥離していくようにすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 容器(二重構造容器)
2 外層容器
20 外層プリフォーム
20a 口部形成領域
20b 延伸領域
21 口部
3 内層容器
30 内層プリフォーム
30a 内口部形成領域
30b 延伸領域
31 内口部
32 収容部