(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】パーキング機構、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20241008BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
(21)【出願番号】P 2021012964
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】松尾 秀明
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0362964(US,A1)
【文献】特開2011-241878(JP,A)
【文献】特開2012-102816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と連動して主軸線を中心として回転するパーキングギヤと、
前記パーキングギヤの歯部に対向する噛合部を有し前記主軸線と平行な第1回転軸線周りに回転可能なパーキングポールと、
前記主軸線と直交する第1方向に沿って延び前記第1方向に沿って動作するカムロッドと、
前記カムロッドに取り付けられ前記パーキングポールのカム接触部に接触し、前記カムロッドの動作に伴い前記第1方向に沿って移動することで前記パーキングポールを前記第1回転軸線周りに回転させて前記噛合部を前記パーキングギヤ側に移動させるカムと、
前記パーキングポール側に開口し前記カムを支持するU字状のスリーブと、
前記パーキングポールのストッパ接触部に接触することで前記パーキングポールの前記カムロッド側への移動を制限するポールストッパと、を備え、
前記カムロッドは、前記スリーブ内に挿通され、
前記ポールストッパは、前記パーキングポールと前記カムロッドとの間に配置さ
れ、
前記スリーブおよび前記ポールストッパを収容するハウジングを備え、
前記ポールストッパは、前記ハウジングの内側面に固定され、
前記スリーブは、前記主軸線と平行に延びる固定ネジによって前記ハウジングの内側面に固定され、
前記固定ネジの締結時の回転方向において前記スリーブが前記ポールストッパに接触する、パーキング機構。
【請求項2】
車両の車輪と連動して主軸線を中心として回転するパーキングギヤと、
前記パーキングギヤの歯部に対向する噛合部を有し前記主軸線と平行な第1回転軸線周りに回転可能なパーキングポールと、
前記主軸線と直交する第1方向に沿って延び前記第1方向に沿って動作するカムロッドと、
前記カムロッドに取り付けられ前記パーキングポールのカム接触部に接触し、前記カムロッドの動作に伴い前記第1方向に沿って移動することで前記パーキングポールを前記第1回転軸線周りに回転させて前記噛合部を前記パーキングギヤ側に移動させるカムと、
前記パーキングポール側に開口し前記カムを支持するU字状のスリーブと、
前記パーキングポールのストッパ接触部に接触することで前記パーキングポールの前記カムロッド側への移動を制限するポールストッパと、を備え、
前記カムロッドは、前記スリーブ内に挿通され、
前記ポールストッパは、前記パーキングポールと前記カムロッドとの間に配置され、
前記スリーブの前記第1方向の位置の全領域は、前記パーキングポールの前記第1方向の位置に重なる
、パーキング機構。
【請求項3】
車両の車輪と連動して主軸線を中心として回転するパーキングギヤと、
前記パーキングギヤの歯部に対向する噛合部を有し前記主軸線と平行な第1回転軸線周りに回転可能なパーキングポールと、
前記主軸線と直交する第1方向に沿って延び前記第1方向に沿って動作するカムロッドと、
前記カムロッドに取り付けられ前記パーキングポールのカム接触部に接触し、前記カムロッドの動作に伴い前記第1方向に沿って移動することで前記パーキングポールを前記第1回転軸線周りに回転させて前記噛合部を前記パーキングギヤ側に移動させるカムと、
前記パーキングポール側に開口し前記カムを支持するU字状のスリーブと、
前記パーキングポールのストッパ接触部に接触することで前記パーキングポールの前記カムロッド側への移動を制限するポールストッパと、を備え、
前記カムロッドは、前記スリーブ内に挿通され、
前記ポールストッパは、前記パーキングポールと前記カムロッドとの間に配置され、
前記噛合部が前記パーキングギヤの歯部に噛み合うロック状態において、前記ポールストッパは、前記カムより前記第1方向の他方側に位置
し、
前記カムロッドの長さ方向から見て、前記カムロッドは、前記スリーブと前記ポールストッパとにより囲まれる包囲領域内を通過し、
前記カムロッドの長さ方向から見て、前記主軸線の軸方向と直交する方向における前記包囲領域と前記カムロッドの寸法の差分は、前記主軸線の軸方向における前記包囲領域と前記カムロッドの寸法の差分より、小さい
、パーキング機構。
【請求項4】
前記カムロッドは、前記カムロッドの長さ方向から見て、前記スリーブと前記ポールストッパとにより閉塞された領域を通過する、請求項1
から3のいずれか一項に記載のパーキング機構。
【請求項5】
前記カムロッドは、前記カムロッドの長さ方向と直交し前記ポールストッパを通過する断面において、前記スリーブと前記ポールストッパとに囲まれる、請求項1
から4のいずれか一項に記載のパーキング機構。
【請求項6】
前記第1回転軸線に沿って延び前記パーキングポールを支持するポールシャフトと、
前記第1方向に直交する第2回転軸線周りに回転して連結される前記カムロッドを前記第1方向に沿って駆動するマニュアルシャフトと、を備え、
前記ポールシャフトおよび前記マニュアルシャフトは、前記スリーブに対して、前記第1方向の一方側に位置する、請求項1~
5の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項7】
前記ポールストッパは、前記スリーブに対して、前記第1方向の他方側に位置する、請求項
6に記載のパーキング機構。
【請求項8】
前記パーキングポールの各部は、前記第1方向の一方側から他方側に向かって、前記第1回転軸線、前記噛合部、前記カム接触部、前記ストッパ接触部の順に並ぶ、請求項
4~7の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項9】
前記パーキングポールは、パーキングポール本体部を有し、
前記ストッパ接触部は、前記パーキングポール本体部からパーキングギヤ側に窪む凹形状である、請求項1~
8の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項10】
前記ストッパ接触部は、円弧状の凹形状である、請求項9に記載のパーキング機構。
【請求項11】
前記パーキングポールは、パーキングポール本体部を有し、
前記カム接触部は、前記パーキングポール本体部から前記スリーブ側に突出する、請求項1~
8の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項12】
前記カムロッドは、前記車両の進行方向に対して傾斜する方向に延びる、請求項1~
11の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項13】
オイルが貯留される領域に収容され、
前記スリーブは、前記オイルの油面より重力方向の上側に配置される、請求項1~
12の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項14】
前記ポールストッパは、円柱形状を有する、請求項1~
13の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項15】
請求項1~
14の何れか一項に記載のパーキング機構と、
前記車両を駆動する動力部と、
前記動力部に接続された伝達機構部と、を備え、
前記パーキング機構は、前記伝達機構部に取り付けられる、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキング機構、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駆動する駆動装置には、パーキング機構が搭載される。特許文献1には、パーキングロッドでカムを移動させることにより、パーキングポールをパーキングギヤ側に押し出し、パーキングギヤとパーキングポールとをロックさせるパーキング機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、駆動装置のさらなる小型化が進んでいる。これにともない、駆動装置のハウジング内に配置されるパーキング機構の小型化が求められている。従来のパーキング機構は、パークロッドとパーキングポールとが互いに直交して配置されているためハウジング内で大きな収容スペースが必要となるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、小型化が可能なパーキング機構および駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパーキング機構の一つの態様は、車両の車輪と連動して主軸線を中心として回転するパーキングギヤと、前記パーキングギヤの歯部に対向する噛合部を有し前記主軸線と平行な第1回転軸線周りに回転可能なパーキングポールと、前記主軸線と直交する第1方向に沿って延び前記第1方向に沿って動作するカムロッドと、前記カムロッドに取り付けられ前記パーキングポールのカム接触部に接触し、前記カムロッドの動作に伴い前記第1方向に沿って移動することで前記パーキングポールを前記第1回転軸線周りに回転させて前記噛合部を前記パーキングギヤ側に移動させるカムと、前記パーキングポール側に開口し前記カムを支持するU字状のスリーブと、前記パーキングポールのストッパ接触部に接触することで前記パーキングポールの前記カムロッド側への移動を制限するポールストッパと、を備える。前記カムロッドは、前記スリーブ内に挿通される。前記ポールストッパは、前記パーキングポールと前記カムロッドとの間に配置される。
【0007】
本発明の駆動装置の一つの態様は、上述のパーキング機構と、前記車両を駆動する動力部と、前記動力部に接続された伝達機構部と、を備える。前記パーキング機構は、前記伝達機構部に取り付けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、小型化が可能な駆動装置およびパーキング機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置を模式的に示す概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のパーキング機構の斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のパーキング機構の一部の分解図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のロック状態のパーキング機構の断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のアンロック状態のパーキング機構の断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のパーキング機構を上側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態のパーキング機構の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本実施形態の駆動装置1が水平な路面上に位置する図示しない車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
【0011】
各図において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。本実施形態では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、駆動装置1が搭載される車両の前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。Y軸方向は、後述する主軸線J1の軸方向に相当する。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。本実施形態において、+Y側は、軸方向一方側に相当し、-Y側は、軸方向他方側に相当する。各図に適宜示す主軸線J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。
【0012】
図1は、駆動装置1を模式的に示す概念図である。本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0013】
駆動装置1は、モータ(動力部)2と、減速装置4および差動装置5を含むギヤ部(伝達機構部)3と、パーキング機構8と、ハウジング6と、オイルOと、を備える。モータ2は、車両を駆動する。ギヤ部3は、モータ2に接続される。パーキング機構8は、ギヤ部3に取り付けられる。
【0014】
ハウジング6は、モータ2を収容するモータ収容部61と、ギヤ部3およびパーキング機構8を収容するギヤ収容部62と、モータ収容部61とギヤ収容部62との間に設けられる隔壁61cと、を有する。
【0015】
ギヤ収容部62内には、オイルOが貯留される。オイルOは、ギヤ部3によってかき上げられてギヤ部3の歯面の潤滑性を高める。また、オイルOは、モータ2に供給されてもよい。この場合、オイルOは、モータを冷却する。
【0016】
ギヤ収容部62の内壁部には、ギヤ部3によってかき上げられたオイルを受け止めるキャッチタンク(図示略)が設けられていてもよい。この場合、キャッチタンクには、受け止めたオイルをハウジング6内の各部に案内するための流路が繋がる。キャッチタンクは、重力方向の上側に向かって開口する。このため、キャッチタンクの開口方向によって、駆動装置1の使用時の重力方向に対する姿勢が確認できる。
【0017】
モータ収容部61には、ブリーザ装置69が設けられる。すなわち、ハウジング6は、ブリーザ装置69を有する。ブリーザ装置69は、ハウジング6の内外を連通させる。ブリーザ装置69は、重力方向の上側に設けられる。これにより、オイルOが、ブリーザ装置69から漏出することを抑制できる。ブリーザ装置69の配置によって、駆動装置1の使用時の重力方向に対する姿勢が確認できる。
【0018】
モータ2は、ロータ2aと、ステータ2cと、を備える。本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。したがって、ステータ2cは、ロータ2aの径方向外側を囲む。ロータ2aは、水平方向に延びる主軸線J1を中心として回転可能する。ロータ2aは、主軸線J1を中心として軸方向に沿って延びるモータシャフト2bを有する。
【0019】
モータシャフト2bは、主軸線J1を中心として回転する。モータシャフト2bは、ハウジング6のモータ収容部61とギヤ収容部62とに跨って延びる。モータシャフト2bの左側の端部は、ギヤ収容部62の内部に突出する。モータシャフト2bの左側の端部には、ギヤ部3の後述する第1のギヤ41が固定される。
【0020】
ギヤ部3は、ハウジング6のギヤ収容部62に収容される。ギヤ部3は、モータ2に接続される。より詳細には、ギヤ部3は、モータシャフト2bの軸方向一方側で接続される。ギヤ部3は、減速装置4と、差動装置5と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0021】
減速装置4は、モータ2に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
【0022】
第1のギヤ41は、モータシャフト2bの左側の端部に固定される。第1のギヤ41は、モータシャフト2bとともに、主軸線J1を中心に回転する。中間シャフト45は、主軸線J1と平行な中間軸線J2に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸線J2を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に、軸方向に互いに間隔をあけて固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43とは、中間シャフト45を介して互いに接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸線J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。
【0023】
モータ2から出力されるトルクは、モータシャフト2b、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて適宜変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0024】
差動装置5は、減速装置4を介してモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、主軸線J1と平行な差動軸線J3を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
【0025】
なお、車軸55は、車両の進行方向に対して直交する方向(すなわち、車両の幅方向)に沿って延びる。したがって、車軸55の延びる方向によって、駆動装置1が搭載された状態における車両の進行方向が推定される。
【0026】
パーキング機構8は、ギヤ部3の駆動を制限する。パーキング機構8は、電動アクチュエータ9によって駆動される。パーキング機構8の状態は、動力源である電動アクチュエータ9によって、モータシャフト2bの回転が阻止されるロック状態と、モータシャフト2bの回転が許容されるアンロック状態と、の間で切り替えられる。パーキング機構8は、車両のギヤがパーキングである場合に、ロック状態となり、車両のギヤがパーキング以外である場合に、アンロック状態となる。車両のギヤがパーキング以外である場合とは、例えば、車両のギヤがドライブ、ニュートラル、リバースなどである場合を含む。
【0027】
図2は、パーキング機構8の斜視図である。
以下の説明において、上下方向(Z軸方向)を第1方向と呼び、車両前後方向(X軸方向)を第2方向と呼ぶ場合がある。すなわち、第1方向と第2方向とは、互いに直交する方向である。第1方向および第2方向は、主軸線J1と直交する。また、下側を第1方向の一方側と呼び、上側を第1方向の他方側と呼ぶ。
【0028】
パーキング機構8は、パーキングギヤ10と、ポールシャフト29と、パーキングポール20と、カムロッド30と、カム35と、コイルバネ39と、スリーブ80と、ポールストッパ85と、マニュアルシャフト90と、フランジ部91と、弾性部材95と、電動アクチュエータ9と、を有する。
【0029】
図1に示すように、パーキングギヤ10は、モータシャフト2bの外周面に固定される。パーキングギヤ10は、軸方向において、第1のギヤ41と隔壁61cとの間に配置される。
【0030】
図2に示すように、本実施形態のパーキングギヤ10は、主軸線J1を中心とする円環状であり、モータシャフト2bの外周面に嵌合される。パーキングギヤ10は、モータシャフト2bとともに回転する。すなわち、パーキングギヤ10は、車両の車輪と連動して主軸線J1を中心として回転する。パーキングギヤ10の外周には、周方向に沿って並ぶ複数の歯部11が設けられる。歯部11は、径方向外側に突出する。
【0031】
ポールシャフト29は、主軸線J1と平行な第1回転軸線AX1に沿って延びる。すなわち、ポールシャフト29は、モータシャフト2bと平行なシャフトである。ポールシャフト29は、パーキングポール20を回転可能に支持する。
【0032】
ポールシャフト29には巻きバネ29aが装着される。巻きバネ29aは、コイル状のバネ本体とバネ本体の両端部から延び出るバネ端部とを有する。巻きバネ29aのバネ端部には、ポールシャフト29が挿入される。巻きバネ29aの一方のバネ端部は、ハウジング6の内側面に設けられるバネ掛け部(図示略)に掛けられる。また、巻きバネ29aの他方のバネ端部は、パーキングポール20に設けられるバネ掛け孔20hに掛けられる。巻きバネ29aは、パーキングポール20に対して、先端をスリーブ80側に退避させる方向の弾性力を加える。
【0033】
パーキングポール20は、パーキングギヤ10の側部に配置される。パーキングポール20は、主軸線J1の軸方向を厚さ方向とする板状である。パーキングポール20は、基端部22と、基端部22から上側に延びるパーキングポール本体部21と、カム接触部23と、ストッパ接触部24と、噛合部25と、を有する。
【0034】
パーキングポール本体部21は、上下方向に沿って延びる。パーキングポール本体部21は、主軸線J1の軸方向から見て、パーキングギヤ10とスリーブ80との間に配置される。パーキングポール本体部21は、パーキングギヤ10側を向くギヤ対向面21aと、スリーブ80側を向くスリーブ対向面21bと、を有する。本実施形態において、噛合部25は、ギヤ対向面21aに位置し、カム接触部23およびストッパ接触部24は、スリーブ対向面21bに位置する。また、噛合部25、カム接触部23、およびストッパ接触部24は、基端部22側(すなわち下側)から先端側(すなわち上側)に向かってこの順に並ぶ。
【0035】
基端部22には、第1回転軸線AX1を中心とする支持孔22hが設けられる。支持孔22hには、ポールシャフト29が挿入される。これにより、パーキングポール20は、基端部22においてポールシャフト29に支持され、ポールシャフト29により第1回転軸線AX1周りに回転可能となる。すなわち、パーキングポール20は、第1回転軸線AX1周りに回転可能である。
【0036】
噛合部25は、パーキングポール本体部21のギヤ対向面21aからパーキングギヤ10側に突出する。噛合部25は、パーキングギヤ10の歯部11に対向する。パーキングポール20が、ポールシャフト29回りを回転することで、噛合部25は、パーキングギヤ10に対して近接および離間する方向に移動する。ロック状態のパーキング機構8において、噛合部25は、パーキングギヤ10の歯部11同士の間に嵌る。すなわち、ロック状態で、噛合部25は、パーキングギヤ10の歯部11に噛み合う。解除状態のパーキング機構8において、噛合部25は、歯部11の間から退避する。
【0037】
カム接触部23は、パーキングポール本体部21のスリーブ対向面21bからスリーブ80側に突出する。カム接触部23は、スリーブ80の開口と対向する。カム接触部23は、カムロッド30と対向する。カム接触部23は、カム35が上側に移動することでカム35に接触する。カム接触部23は、ロック状態のパーキング機構8においてカム35に接触し、アンロック状態のパーキング機構8においてカム35から離間する。
【0038】
ストッパ接触部24は、パーキングポール本体部21のスリーブ対向面21bであってカム接触部23の上側に位置する。ストッパ接触部24は、パーキングポール本体部21からパーキングギヤ10側に窪む凹形状である。ストッパ接触部24は、ロック状態のパーキング機構8においてポールストッパ85から離間し、アンロック状態のパーキング機構8においてポールストッパ85に接触する。本実施形態によれば、ストッパ接触部24がパーキングギヤ10側に窪む凹状であるため、アンロック状態において、ポールストッパ85をパーキングギヤ10側に近接して配置できる。これにより、パーキング機構8を第2方向(X軸方向)に小型化できる。
【0039】
パーキングポール20は、カム接触部23においてカム35からパーキングギヤ10側に向かう力を付与され、噛合部25においてパーキングギヤ10の歯部11に噛み合う。また、パーキングポール20は、ストッパ接触部24において、スリーブ80側への移動が制限される。
【0040】
本実施形態のパーキングポール20の各部は、下側から上側に向かって、第1回転軸線AX1、噛合部25、カム接触部23、ストッパ接触部24の順に並ぶ。本実施形態によれば、カム接触部23と第1回転軸線AX1との距離は、噛合部25と第1回転軸線AX1との距離より大きい。このため、てこの原理により、カム接触部23においてカム35から付与される力より、噛合部25を歯部11の間に挿入させる力を大きくすることができ、噛合部25をスムーズに歯部11の間に挿入できる。また本実施形態によれば、ストッパ接触部24は、パーキングポール本体部21の先端にもうけられ、第1回転軸線AX1からの距離を他の部位より大きく確保できる。このため、アンロック状態のパーキング機構において、ストッパ接触部24からポールストッパ85に付与する力を小さくすることができ、ポールストッパ85を小型化することができる。
【0041】
マニュアルシャフト90は、第2回転軸線AX2に沿って延びる。第2第2回転軸線AX2は、第2方向(X軸方向)に延びる軸線である。したがって、マニュアルシャフト90は、モータシャフト2bおよびポールシャフト29と直交する方向に延びる。
【0042】
マニュアルシャフト90は、ハウジング6の内外に延びる。マニュアルシャフト90は、ハウジング6の内部でフランジ部91を介してカムロッド30に接続される。マニュアルシャフト90は、ハウジング6の外部で電動アクチュエータ9に接続される。マニュアルシャフト90は、電動アクチュエータ9の動力によって第2回転軸線AX2周りを回転する。
【0043】
図3は、パーキング機構8の一部の分解図である。
フランジ部91は、マニュアルシャフト90の外周面に固定される。フランジ部91は、第2回転軸線AX2に対して径方向外側に延びる。フランジ部91は、第2回転軸線AX2と直交する板状である。フランジ部91は、マニュアルシャフト90とともに第2回転軸線AX2周りに回転する。
【0044】
フランジ部91は、第2回転軸線AX2の径方向外側を向く外側面91cを有する。フランジ部91の外側面91cには、第1溝部91aおよび第2溝部91bが設けられる。第1溝部91aおよび第2溝部91bは、第2回転軸線AX2の周方向に沿って並ぶ。第1溝部91aおよび第2溝部91bは、第2回転軸線AX2の径方向外側に開口する。
【0045】
フランジ部91には、厚さ方向に貫通する連結孔91hが設けられる。連結孔91hには、カムロッド30の下端部が通される。これにより、カムロッド30の下端部は、連結孔91hを中心として回転可能である。
【0046】
弾性部材95は、板バネ部96と、ローラ97と、を有する。板バネ部96は、板面が主軸線J1の軸方向を向く板状である。板バネ部96は、上下方向に延びている。板バネ部96の下端部は、ネジ98によってハウジング6の内側面に固定されている。板バネ部96の上端部は、マニュアルシャフト90の側部に位置する。板バネ部96の上端部は、ネジ98で固定された板バネ部96の下端部を支点として、主軸線J1の軸方向に弾性変位可能である。
【0047】
板バネ部96は、基部96aと、一対の腕部96b,96cと、を有する。基部96aは、例えば、板バネ部96の下側部分である。基部96aには、板バネ部96をハウジング6に固定するネジ98が挿入される貫通孔が設けられる。一対の腕部96b,96cは、基部96aの上側の端部から上側に延びている。一対の腕部96b,96cは、第2方向(X軸方向)に間隔を空けて並んで配置されている。
【0048】
ローラ97は、第2方向(X軸方向)に延びる回転軸回りに回転可能である。ローラ97は、板バネ部96の上端部に取り付けられている。ローラ97は、第2方向(X軸方向)に延びている。ローラ97は、一対の腕部96b,96cの上端部同士を繋ぐ軸部と、軸部が通される回転部と、を有する。ローラ97は、回転部において板バネ部96に対して回転する。ローラ97は、フランジ部91の外側面91cに接触する。ローラ97は、フランジ部91の第2回転軸線AX2周りの回転に伴い、外側面91cのうち第1溝部91aと第2溝部91bとの間を転がりながら移動する。
【0049】
ローラ97は、第1溝部91aおよび第2溝部91bに嵌ることが可能である。これにより、弾性部材95は、第1溝部91a又は第2溝部91bに対して引っ掛かり、フランジ部91を第2回転軸線AX2周りに位置決めする。
【0050】
ローラ97は、ロック状態のパーキング機構8において第1溝部91aに嵌り、アンロック状態のパーキング機構8において第2溝部91bに嵌る。ロック状態とアンロック状態との間でパーキング機構8の状態が切り替わる際に、板バネ部96が弾性変形しながら、ローラ97が第1溝部91aと第2溝部91bとの間で移動する。
【0051】
カムロッド30は、連結端部30aと、中継部30bと、ロッド本体30cと、筒状キャップ38と、を有する。カムロッド30において、連結端部30aと中継部30bとの間には第1折曲部31が設けられ、中継部30bとロッド本体30cとの間には第2折曲部32が設けられる。カムロッド30は、第1折曲部31および第2折曲部32において折り曲げられた断面円形の棒状である。
【0052】
連結端部30aは、第2方向(X軸方向)に沿って延びる。連結端部30aは、フランジ部91の連結孔91hに挿入される。連結端部30aの外周には、連結端部30aの長さ方向に並ぶ2つの係止突起33を有する。2つの係止突起33は、フランジ部91の両面側に配置される。これにより、連結端部30aは、フランジ部91に連結される。すなわち、カムロッド30は、連結端部30aにおいて、フランジ部91を介し、マニュアルシャフト90に連結される。上述したように、マニュアルシャフト90は、電動アクチュエータ9に接続されて第2回転軸線AX2周りに回転する。カムロッド30は、マニュアルシャフト90によって上下方向に沿って駆動する。
【0053】
中継部30bは、主軸線J1の軸方向に沿って延びる。中継部30bの一端は連結端部30aに接続される。また、中継部30bの他端はロッド本体30cの下端に接続される。
【0054】
図2に示すように、ロッド本体30cは、上下方向(第1方向)に沿って延びる。すなわち、カムロッド30は、ロッド本体30cにおいて、上下方向に沿って延びる。ロッド本体30cは、スリーブ80の内部を通過する。すなわち、カムロッド30は、ロッド本体30cにおいて、スリーブ80に挿通される。これにより、ロッド本体30cは、スリーブ80によってガイドされる。また、カムロッド30は、フランジ部91の第2回転軸線AX2に沿う回転に伴い上下方向に沿って動作する。
【0055】
ロッド本体30cの外周面には、係止突起33が設けられる。ロッド本体30cには、コイルバネ39とカム35と筒状キャップ38とが通される。
【0056】
コイルバネ39は、カム35の下側に位置する。コイルバネ39の下端は、係止突起33に接触する。一方で、コイルバネ39の上端は、カム35の下端面に接触する。コイルバネ39は、自然長に対し圧縮された状態で係止突起33とカム35の間に配置される。コイルバネ39は、カム35に対し上側に力を付与する。
【0057】
筒状キャップ38は、ロッド本体30cに固定される。筒状キャップ38は、カム35の上側に位置する。筒状キャップ38の下端は、カム35の上端面に接触する。筒状キャップ38は、カム35の上側への移動を制限する。
【0058】
図3に示すように、カム35は、上下方向から見て環状である。カム35には、ロッド本体30cが通過する貫通孔35hが設けられる。貫通孔35hの内径は、ロッド本体30cの外径より大きい。カム35の駆動範囲の上端部には、筒状キャップ38が配置される。筒状キャップ38は、カム35の上側への移動を制限する。一方で、カム35の下端は、コイルバネ39の上端と接触する。コイルバネ39は、カム35の下側への移動に伴い圧縮される。カム35は、コイルバネ39の反発力より強い力を下側に受けた場合に、ロッド本体30cに対して下側に移動する。
【0059】
カム35は、外周面において、パーキングポール20のカム接触部23に接触する。カム35の外周面には、第1円錐面35aと第2円錐面35bとが設けられる。第1円錐面35aおよび第2円錐面35bは、同軸上に配置されそれぞれ下側から上側に向かうに従い徐々に外径を小さくする円錐状のテーパ面である。第2円錐面35bは、第1円錐面35aの上側に位置する。第2円錐面35bの下端の外径と第1円錐面35aの上端の外径とは、互いに一致する。第1円錐面35aのテーパ角は、第2円錐面35bのテーパ角と比較して十分に小さい。第2円錐面35bのテーパ角は、ロック状態からアンロック状態への移行時に、スリーブ80とカム接触部23との間からカム35が円滑に離脱できる十分な角度とされる。なお、第1円錐面35aは、円錐状ではなく円柱状の円柱面であってもよい。
【0060】
図4はロック状態のパーキング機構8の断面図であり、
図5はアンロック状態のパーキング機構8の断面図である。
カム35は、カムロッド30に取り付けられ、カムロッド30とともに上下方向に移動する。
図4に示すように、ロック状態のパーキング機構8において、カム35は可動範囲の上端部に位置し、第1円錐面35aにおいてカム接触部23に接触する。一方で、
図5に示すように、アンロック状態のパーキング機構8において、カム35およびカムロッド30は、可動範囲の下端部に位置する。これにより、カム35は、パーキングポール20のカム接触部23に第2円錐面35bにおいて接触する。
【0061】
ロック状態とアンロック状態との間でパーキング機構8の状態が切り替わる際に、カム35は、カムロッド30の動作に伴い上下方向に沿って移動する。このとき、カム35は、第2円錐面35bにおいてカム接触部23と摺動する。これにより、カム35は、パーキングポール20を第1回転軸線AX1周りに回転させて、噛合部25をパーキングギヤ10側に移動させる。
【0062】
従来構造(例えば、特許文献1)のカムおよびカムロッドの動作方向は、パーキングポールの回転軸線と同方向であった。すなわち、従来構造のカムおよびカムロッドは、パーキングギヤの軸方向に動作するものであった。このため、従来構造のパーキング機構は、カムおよびカムロッドの動作範囲を確保するため、パーキングギヤの軸方向に大型化していた。
【0063】
これに対し、本実施形態のカム35の動作方向は、パーキングポール20の回転軸線(第1回転軸線AX1)と直交する。このため、パーキング機構8は、主軸線J1の軸方向へ動作機構を配置する必要がない。すなわち、本実施形態によれば、パーキング機構8全体として、主軸線J1の軸方向への大型化を抑制することができる。
【0064】
図6は、パーキング機構8を上側から見た平面図である。
スリーブ80は、上下方向に沿って延びる。スリーブ80は、スリーブ本体82と、スリーブ本体82に対しパーキングギヤ10の反対側に位置する固定部83と、を有する。固定部83は、主軸線J1と直交する平面に沿う板状である。
【0065】
スリーブ本体82は、上下方向から見てU字状である。すなわち、スリーブ80は、パーキングポール20側に開口するU字状である。ここで、スリーブ本体82の内側面に囲まれる領域を開口内部81と呼ぶ。スリーブ本体82の開口内部81は、パーキングポール20側に開口する。
【0066】
図2に示すように、スリーブ本体82の開口内部81は、上下方向に沿って延びる中心線Lに沿って延びる。開口内部81には、小径部81aとテーパ部81bと大径部81cとが設けられる。小径部81a、テーパ部81b、および大径部81cは、上下方向に沿って延びる中心線に沿って、上側から下側に向かってこの順で並ぶ。小径部81aは、カムロッド30を外側から囲む。大径部81cは、小径部81aより中心線Lに対する直径が大きい領域である。大径部81cは、カム35を外側から囲む。したがって、大径部81cの内側には、カム35の可動領域が設けられる。テーパ部81bは、大径部81cと小径部81aとを滑らかに繋ぐ。
【0067】
図4および
図5に示すように、スリーブ80の開口内部81には、カムロッド30およびカム35が配置される。スリーブ80の開口内部81の内側面には、カム35の外周面が接触する。また、スリーブ80の開口内部81の内側面には、カムロッド30の一部が接触してもよい。これにより、スリーブ80は、カム35およびカムロッド30を支持し、カム35およびカムロッド30の上下方向の動作をガイドする。
【0068】
図2に示すように、ポールストッパ85は、主軸線J1の軸方向に沿って延びる円柱状である。ポールストッパ85は、カムロッド30と直交して配置される。ポールストッパ85は、スリーブ80の上側に配置される。
【0069】
図5に示すアンロック状態のパーキング機構8において、ポールストッパ85は、パーキングポール20のストッパ接触部24に接触する。これにより、ポールストッパ85は、パーキングポール20のカムロッド30側への移動を制限する。
【0070】
図6に示すように、ポールストッパ85は、カムロッド30に対してパーキングポール20側に位置し、カムロッド30と直交して配置される。したがって、ポールストッパ85は、パーキングポール20とカムロッド30との間に配置される。
【0071】
上述したように、カムロッド30は、スリーブ80の開口内部81を挿通する。このため、カムロッド30は、上下方向から見て、スリーブ80の開口方向以外への移動がスリーブ80の内側面によって規制される。本実施形態によれば、ポールストッパ85は、カムロッド30に対しスリーブ80の開口側に配置される。このため、カムロッド30の倒れは、スリーブ80とポールストッパ85によって抑制される。すなわち、カムロッド30は、ポールストッパ85によってスリーブ80からの離脱が抑制される。
【0072】
また本実施形態によれば、ポールストッパ85が、スリーブ80の開口側を覆いカムロッド30のパーキングポール20側への移動を抑制することで、振動などによってカムロッド30が、スリーブ80の開口内部81でがたつくことを抑制できる。
【0073】
特に本実施形態では、パーキング機構8は、ハウジング6のオイルOが貯留される領域に収容されるものの、スリーブ80が、オイルOの油面より重力方向の上側に配置される。このため、本実施形態のスリーブ80、オイルOに浸漬されておらずカムロッド30との間のがたつきが騒音となり易い。本実施形態によれば、ポールストッパ85によって、カムロッド30のスリーブ80に対するがたつきが抑制されるため、オイルOに浸漬されない場合でも、がたつきに起因する騒音を十分に抑制できる。
【0074】
さらに、本実施形態のカムロッド30は、
図2に示すように、車両の進行方向である第2方向(X軸方向)に対して直交する方向に沿って延びる。したがって、カムロッド30は、車両の加減速によって慣性力を受けやすく、カムロッド30との間のがたつきが騒音となり易い。本実施形態によれば、ポールストッパ85によって、カムロッド30のスリーブ80に対するがたつきが抑制されるため、車両の加減速によって慣性力を受けやすい構成であっても、がたつきに起因する騒音を十分に抑制できる。
【0075】
なお、カムロッド30が車両の加減速によって慣性力を受けやすくなるのは、カムロッド30が車両の進行方向に対して傾斜する場合である。ここで、「車両の進行方向に対して傾斜する」とは、車両の進行方向に平行でないことを意味し、本実施形態に示すように車両の進行方向と直交する方向に延びている場合を含む。なお、本実施形態に示すように、カムロッド30が車両の進行方向と直交する方向に沿って延びる場合に、車両の加減速によって慣性力をより一層受けやすい。
【0076】
図6に示すように、カムロッド30は、カムロッド30の長さ方向から見て、スリーブ80とポールストッパ85とにより閉塞された領域を通過する。これにより、カムロッド30は、スリーブ80から離脱することを確実に抑制する。
【0077】
図7は、カムロッド30の長さ方向と直交しポールストッパ85を通過するパーキング機構8の断面図である。カムロッド30は、
図7に示す断面において、スリーブ80とポールストッパ85とに囲まれる。これにより、カムロッド30は、スリーブ80から離脱することを確実に抑制する。
【0078】
図7において、主軸線J1の軸方向を第3方向D3と呼ぶ。また、主軸線J1の軸方向と直交する方向は、第2方向D2である。上述したように、第2方向D2は、X軸と平行な方向である。また、第3方向D3は、Y軸と平行な方向である。
図7に示すように、カムロッド30の長さ方向から見て、スリーブ80の開口内部81とポールストッパ85で囲まれる領域を包囲領域Sと呼ぶこととする。さらに、包囲領域Sの第2方向D2における寸法を第2方向寸法P2と呼び、包囲領域Sの第3方向D3における寸法を第3方向寸法P3と呼ぶ。カムロッド30の直径dは、第2方向寸法P2および第3方向寸法P3より小さい。カムロッド30は、スリーブ80とポールストッパ85とにより囲まれる包囲領域S内を通過する。
【0079】
本実施形態において、カムロッド30の長さ方向(上下方向)から見て、第2方向D2(主軸線J1の軸方向と直交する方向)における包囲領域Sとカムロッド30の寸法の差分(P2-d)は、第3方向D3(すなわち、主軸線J1の軸方向)における包囲領域Sとカムロッド30の寸法の差分(P3-d)より、小さい。
【0080】
本実施形態において、カムロッド30と包囲領域Sの内側面との間には、カムロッド30が傾いた場合であっても、カム35がスリーブ80の開口内部81にスムーズに侵入させることができる程度の十分な隙間が設けられる。
【0081】
カムロッド30は、第3方向D3の両側において、スリーブ80の内側面と対向する。このため、隙間の第3方向D3の成分は、第3方向D3の両側にそれぞれ十分な大きさが必要となる。結果的に、第3方向D3における包囲領域Sとカムロッド30の寸法の差分(P3-d)は、比較的大きくする必要がある。
【0082】
カムロッド30は、第2方向D2の一方側ではポールストッパ85に対向し、他方側ではスリーブ80に対向する。隙間の第2方向D2の成分のうち、スリーブ80とカムロッド30とが対向する一方側では、カム35をスリーブ80の開口内部81にスムーズにガイドするために十分な大きさを必要とする。これに対し、隙間の第2方向D2の成分のうち、ポールストッパ85とカムロッド30とが対向する他方側では、カム35とポールストッパ85の干渉が問題とならず、隙間を十分に確保する必要がない。この点について、以下に詳しく説明する。
【0083】
図5に示すロック状態のパーキング機構8において、カム35は可動領域内の上端まで達し、ポールストッパ85に最も近接するが、互いに接触することがない。すなわち、カム35およびカムロッド30の可動範囲において、カム35とポールストッパ85との干渉が生じない。このため、
図7に示すように、ポールストッパ85とカムロッド30とを第2方向D2において近接して配置でき、隙間の第2方向D2の成分を小さくすることができる。結果的に、第2方向D2における包囲領域Sとカムロッド30の寸法の差分(P2-d)は、比較的小さくすることができる。
【0084】
本実施形態によれば、ロック状態において、ポールストッパ85は、カム35より上側(第1方向の他方側)に位置する。このようにポールストッパ85を配置することで、ポールストッパ85とカム35とが干渉することがなく、上述した隙間の第2方向D2の成分を小さくすることができる。結果的に、パーキング機構8の第2方向D2の小型化を図ることができる。
【0085】
図2に示すように、本実施形態によれば、スリーブ80とポールストッパ85とがそれぞれ個別に設けられる。このため、スリーブの一部にポールストッパを設ける場合と比較して、スリーブ80およびポールストッパ85の形状を単純化することができる。結果的にポールストッパ85の剛性を高めて、パーキングポール20がポールストッパ85に衝突した場合の損傷を抑制し易い。また、ポールストッパ85の形状を単純化することができるため、ポールストッパ85を小型化しても十分な強度を確保でき、パーキング機構8の小型化に寄与できる。
【0086】
より具体的には、本実施形態において、ポールストッパ85は、円柱形状である。このため、ポールストッパ85の外周面にはエッジがなく、ポールストッパ85とパーキングポール20とが衝突した場合であっても、衝突力が局所的に集中することが抑制され、これらに損傷が生じることを抑制できる。さらに、パーキングポール20のストッパ接触部24は、円弧状の凹形状である。このため、ストッパ接触部24は、ポールストッパ85に対してエッジ当たりすることがない。結果的に、衝突時の衝突力の集中が抑制され、ポールストッパ85およびパーキングポール20に損傷が生じることを抑制できる。
【0087】
本実施形態によれば、スリーブ80とポールストッパ85とが別部材である。このため、これらが単一部材である場合と比較して、ポールストッパ85の配置の自由度を高めることができる。本実施形態のポールストッパ85は、スリーブ80に対して、上側(第1方向の他方側)に位置する。このため、ポールストッパ85がスリーブ80の下側に配置される場合と比較して、ポールストッパ85をカム35の動作範囲から確実に離して配置できる。結果的に、ポールストッパ85をカムロッド30に近づけてもカム35に干渉しにくくでき、パーキング機構8を第2方向(X軸方向)に小型化できる。
【0088】
図4および
図5に示すように、スリーブ80の上下方向の位置の全領域は、パーキングポール20の上下方向の位置に重なる。このため、スリーブ80がパーキングポール20に対して上側又は下側に突出してされることがなく、パーキング機構8の上下方向の寸法を小型化できる。
【0089】
次に、スリーブ80およびポールストッパ85のハウジング6に対する固定構造について説明する。
図6に示すように、ハウジング6の内側面には、ネジ穴6aと嵌合穴6bとが設けられる。ネジ穴6aおよび嵌合穴6bは、共に主軸線J1と平行に延び同方向に開口する。一方でスリーブ80の固定部83には、板厚方向に貫通する固定孔83hが設けられる。固定孔83hには、ネジ穴6aに締結される固定ネジ84が挿入される。スリーブ80は、主軸線J1と平行に延びる固定ネジ84によってハウジング6の内側面に固定される。また、ポールストッパ85は、嵌合穴6bに嵌合される。これにより、ポールストッパ85は、ハウジング6の内側面に固定される。
【0090】
図2に示すように、固定ネジ84の挿入方向から見て、スリーブ本体82とポールストッパ85とは、時計回りの方向に並んで配置される。また、スリーブ本体82とポールストッパ85とは、互いに接触する。言い換えると、固定ネジ84の締結時の回転方向においてスリーブ80がポールストッパ85に接触する。本実施形態によれば、1つの固定ネジ84を締結することで、スリーブ80を固定ネジ84の回転方向に位置決めできる。このため、複数の固定ネジ84を必要とすることがなく、パーキング機構8の部品点数を削減できるとともにパーキング機構8の組み立て工程を簡素化できる。なお本実施形態において、ハウジング6は、スリーブ80およびポールストッパ85などのパーキング機構8の各構成を収容する。ここで、ハウジング6は、パーキング機構8の一部と見做すことができる。この場合、パーキング機構8は、ハウジング6を備える。
【0091】
本実施形態において、ポールシャフト29およびマニュアルシャフト90は、スリーブ80に対して、下側(第1方向の一方側)に位置する。ポールシャフト29の周囲ではパーキングポール20がポールシャフト29の周方向に回転し、マニュアルシャフト90の周囲ではフランジ部91がマニュアルシャフト90の周方向に回転する。本実施形態によれば、パーキング機構8の駆動部をスリーブ80の下側に集中して配置される。駆動部の周囲は、駆動部との干渉を抑制するために十分なスペースを設ける必要がある。本実施形態によれば、駆動部を集中して配置することで、干渉抑制のためのスペースを分散して配置する必要がなく、全体としてパーキング機構8の収容スペースを小型化できる。
【0092】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0093】
例えば、上述の実施形態とは異なる構成として、マニュアルシャフトがパーキングポールよりも上側に配置される構成も採用可能である。この場合、カムの姿勢やポールのストッパの位置が、上述の実施形態と比較して上下反転して配置されていてもよい。その他に、パーキングポールのカム接触部、ストッパ接触部、および噛合部25のうち何れか1つが、パーキングポールの長さ方向において回転軸線を挟んで反対側に配置されていてもよい。このように、パーキングポールの各部(カム接触部、ストッパ接触部、および噛合部)、スリーブ、およびカムなどの相対的な位置関係は、適宜変更可能である。
【0094】
また、動力部は、モータでなくてもよい。動力部は、例えば、エンジンであってもよい。ギヤ部(伝達機構部)の構造は、特に限定されない。以上に本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…駆動装置、2…モータ(動力部)、3…ギヤ部(伝達機構部)、6…ハウジング、8…パーキング機構、10…パーキングギヤ、11…歯部、20…パーキングポール、21…パーキングポール本体部、23…カム接触部、24…ストッパ接触部、25…噛合部、29…ポールシャフト、30…カムロッド、35…カム、80…スリーブ、84…固定ネジ、85…ポールストッパ、90…マニュアルシャフト、98…ネジ、AX1…第1回転軸線、AX2…第2回転軸線、J1…主軸線、O…オイル、S…包囲領域