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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両の後部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B62D25/20 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021014440
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117760
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】寺田 栄
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 三穂
(72)【発明者】
【氏名】遊間 貴史
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198751(WO,A1)
【文献】特開2013-252819(JP,A)
【文献】実開平06-044679(JP,U)
【文献】実開平04-065678(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンの一部を構成し、車両の前後方向に延びる左右一対のリアフレームと、左右一対のサスペンションと、左右一対の前側車体取付部および後側車体取付部が設けられたサスペンション支持部材と、を備え、
前記リアフレームには、前記サスペンション支持部材を介して前記サスペンションが取り付けられるサスペンション取付部を備え、
前記サスペンション取付部は、左右一対の前記前側車体取付部が左右それぞれに対応して取り付けられる左右一対の前側サスペンション取付部と、左右一対の前記後側車体取付部が左右それぞれに対応して取り付けられる左右一対の後側サスペンション取付部と、を備え、
前記リアフレームの前後方向における、前記後側サスペンション取付部を含めた前方領域は、前後方向に直交する断面形状が矩形状であり、
前記リアフレームの後端から前記後側サスペンション取付部よりも後側に離間した後側位置の手前までの後方領域は、前記断面形状が5以上の角部を備える多角形状であり、
前記リアフレームの前後方向の少なくとも前記後方領域の前端から前記前方領域の後端までの中間領域は、前方に向かうにつれ徐々に前記断面形状が前記多角形状から前記矩形形状に変化する構成とし、
前記角部は、前記リアフレームの外観形状において入隅となる凹角部と出隅となる凸角部とを備え、前記凹角部と前記凸角部とは、これら2種類の角部のうち、同じ種類の角部が前記後方領域の周方向において、3つ以上連続しないように交互に配設され、
前記リアフレームの前記後方領域は、前後方向の直交断面視において左右一対の側面部と、前記側面部の上端部から断面内側に延びる上面部と、前記上面部の断面内側端部に接続し上方に突出する上方突出部と、前記側面部の下端部から断面内側に延びる下面部と、前記下面部の断面内側端部に接続し下方に突出する下方突出部と、を備えた略クロス形状であることを特徴とする
車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記リアフレームの前記中間領域は、前記後方領域の前端から前方へ向かうほど、前記上方突出部および前記下方突出部の車幅方向寸法が大きくなるように前記断面形状が略クロス形状から矩形形状に変化することを特徴とする
請求項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
前記後方領域における前記角部の成す角度が略直角となるよう構成されたことを特徴とする
請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
左右一対の前記リアフレーム間に車体フロアを備え、
前記車体フロアは、車両の前後方向の前記後方領域に相当する部位が、車両側面視断面において凹部と凸部とが交互に並ぶ蛇腹断面形状に形成されたことを特徴とする
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
前記リアフレームにおける、前記サスペンション取付部よりも前方部位には、車両前方に向かうほど下方に延びる傾斜部を備え、
前記傾斜部は、前記リアフレームの該傾斜部よりも前方部位に対して前側屈曲部を介して傾斜して形成されるとともに、前記リアフレームの該傾斜部よりも後方部位に対して後側屈曲部を介して傾斜して形成され、
前記前側屈曲部および前記後側屈曲部は、前記傾斜部よりも前記後方部位に比して、前後方向荷重に対する剛性が高くなるよう設定されたことを特徴とする
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
前記リアフレームは、該リアフレームの後端から前記前方領域の後端まで該リアフレームの上面が略水平に形成されたことを特徴とする
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
前記リアフレームの前記後方領域に、前後方向の周辺部位よりも凹状となるビードが設けられることを特徴とする
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャビンの一部を構成し、車両の前後方向に延びる左右一対のリアフレームと、左右一対のサスペンションと、リアフレームに取付けられ、サスペンションを支持する左右一対のサスペンション支持部材と、を備えた車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リアフレームの後方に前後方向に延びる荷重吸収部としてのクラッシュカンが設けられた車体後部において、車体の後面衝突(以下、「後突」とも称する)時に車体に対して後方から入力される荷重(すなわち、後突荷重)に対し、該車体のエネルギー吸収量を向上するための工夫がなされている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の後部車体構造は、リアフレームの下方に設けられたサスペンション支持部材としてのサブフレームの後部に、前後方向に延びる荷重吸収部(54)を備え、該荷重吸収部(54)が、クラッシュカンと同様に、前後方向に直交する断面視で矩形状よりも稜線が多い略クロス(十字)形状に形成されることで、後突時における車体後部のエネルギー吸収量を向上させている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の後部車体構造は、サブフレームの後部に荷重吸収部(54)を備えることで車体重量が嵩むため、改善の余地がある。
【0005】
ところで、一般に断面クロス形状のフレームは断面矩形状のフレームと比して断面二次モーメントが低い。このため、断面クロス形状にするという構成を、キャビンを構成するリアフレームに適用すると、リアフレームにおける、サスペンション支持部材を介してサスペンションが取り付けられるサスペンション取付部の剛性が低下し、結果として車体剛性が低下することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-111069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リアフレームにおけるサスペンション取付部の剛性確保と後突時のエネルギー吸収量向上とを両立することができる車両の後部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両の後部車体構造は、キャビンの一部を構成し、車両の前後方向に延びる左右一対のリアフレームと、左右一対のサスペンションと、左右一対の前側車体取付部および後側車体取付部が設けられたサスペンション支持部材と、を備え、前記リアフレームには、前記サスペンション支持部材を介して前記サスペンションが取り付けられるサスペンション取付部を備え、前記サスペンション取付部は、左右一対の前記前側車体取付部が左右それぞれに対応して取り付けられる左右一対の前側サスペンション取付部と、左右一対の前記後側車体取付部が左右それぞれに対応して取り付けられる左右一対の後側サスペンション取付部と、を備え、前記リアフレームの前後方向における、前記後側サスペンション取付部を含めた前方領域は、前後方向に直交する断面形状が矩形状であり、前記リアフレームの後端から前記後側サスペンション取付部よりも後側に離間した後側位置の手前までの後方領域は、前記断面形状が5以上の角部を備える多角形状であり、前記リアフレームの前後方向の少なくとも前記後方領域の前端から前記前方領域の後端までの中間領域は、前方に向かうにつれ徐々に前記断面形状が前記多角形状から前記矩形形状に変化する構成とし、前記角部は、前記リアフレームの外観形状において入隅となる凹角部と出隅となる凸角部とを備え、前記凹角部と前記凸角部とは、これら2種類の角部のうち、同じ種類の角部が前記後方領域の周方向において、3つ以上連続しないように交互に配設され、前記リアフレームの前記後方領域は、前後方向の直交断面視において左右一対の側面部と、前記側面部の上端部から断面内側に延びる上面部と、前記上面部の断面内側端部に接続し上方に突出する上方突出部と、前記側面部の下端部から断面内側に延びる下面部と、前記下面部の断面内側端部に接続し下方に突出する下方突出部と、を備えた略クロス形状であることを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、リアフレームにおけるサスペンション取付部の剛性確保と後突時のエネルギー吸収量の向上とを両立することができる。
【0010】
具体的に、前記構成によれば、前記リアフレームの前記後方領域は、5以上の角部を備えている。すなわち、前記後方領域は、角部に沿って前後方向に延びる5以上の稜線部を備えるため、車両の後突時に、軸圧縮によるエネルギー吸収量を向上させることができる。
【0011】
一方、前記リアフレームの前後方向における、サスペンション部材からの荷重入力点であるサスペンション取付部を有する前記前側領域は、前記断面形状が前記矩形形状(矩形断面)として剛性を確保し、結果として車体剛性を確保することができる。
【0012】
さらに、中間領域については、前方に向かうにつれ徐々に前記断面形状が前記多角形状から前記矩形形状に変化することで、前記前側領域と前記後側領域との夫々において奏する効果を損なうことなく互いを繋ぐことができる。
【0013】
従って、リアフレームにおけるサスペンション取付部の剛性確保と後突時のエネルギー吸収量の向上とを両立することができる。
【0014】
また上述したように、前記リアフレームの外観形状において入隅となる凹角部と出隅となる凸角部とを備え、前記凹角部と前記凸角部とは、これら2種類の角部のうち、同じ種類の角部が前記後方領域の周方向において、3つ以上連続しないように交互に配設されることで、前記リアフレームの後方領域は、軸圧縮に対して蛇腹形状に変形し易くなるため、後突時に前記後方領域の潰れストロークを確保することができ、結果として、後突時のエネルギー吸収量をより一層確保することができる。
【0015】
さらにまた、本発明のリアフレームは、上述したように後方領域が断面略クロス形状に形成されたものであるため、前後方向の略全長に亘って断面矩形状に形成された従来のリアフレームと比して後突に対するエネルギー吸収量を向上させることができる。
【0016】
しかも、本発明のリアフレームは、前後方向の略全長に亘って断面矩形状に形成された従来のリアフレームに対して大幅に形状を変更せずとも、例えば、後方領域が断面略クロス形状になるようにパネル材に対してプレス成形する等により生産できるため、複雑な加工を必要とせずに得ることができる。
【0017】
この発明の態様として、前記リアフレームの前記中間領域は、前記後方領域の前端から前方へ向かうほど、前記上方突出部および前記下方突出部の車幅方向寸法が大きくなるように前記断面形状が略クロス形状から矩形形状に変化することを特徴とする。
【0018】
前記構成によれば、中間領域における形状変化に伴って該中間領域における、前記上方突出部又は前記下方突出部の前後両端に形成される稜線が上下方向となるため、該中間領域における、前記上方突出部又は前記下方突出部の前後両端に形成される稜線が例えば、車幅方向となる場合のように、車両の後突時にリアフレームの上方への曲げ変形を誘発しないため、安定してエネルギー吸収量を向上することができる。
【0019】
この発明の態様として、前記後方領域における前記角部の成す角度が略直角となるよう構成されたことを特徴とする。
【0020】
このように、前記後方領域を前記断面多角形状とすることで、軸圧縮に対して圧縮エネルギー吸収量の向上に寄与する前記角部、すなわち、角部に沿って前後方向に延びる稜線部を多数設けることができつつ、前記角部の成す角度が略直角となるよう構成することで、車両の後突時に前記後方領域が蛇腹形状に変形しやすくなるため、結果として、エネルギー吸収量をより一層確保することができる。
【0021】
ここで、前記角部の成す角度は、該角部に隣接する二つの辺の成す角度を示し、後述するように、該角部が入隅である場合は、該角部の外角(リアフレームを外側から視たときの角度)を示し、該角部が出隅である場合は、該角部の内角(リアフレームを内側から視たときの角度)を示すものとする。
【0022】
ここで、前記角部の成す角度が略直角には、厳密に直角に限定せず、例えば、型の抜き勾配等製造上の観点等からRを付したものや、直角に対して若干大きい角度又は若干小さい角度も含み、後方領域が軸圧縮に対して蛇腹変形を引き起こすことが可能な範囲の角度も含む。具体的には、略直角には、80度以上110度以下の角度も含むものとする
【0023】
の発明の態様として、左右一対の前記リアフレーム間に車体フロアを備え、前記車体フロアは、車両の前後方向の前記後方領域に相当する部位が、車両側面視断面において凹部と凸部とが交互に並ぶ蛇腹断面形状に形成されたことを特徴とする。
【0024】
前記構成によれば、後突時、蛇腹断面形状の凹部と凸部とを潰すように車体フロアを変形でき、リアフレームの軸方向の圧縮変形を促進することができる。さらに、車両の後突時に車体フロア自体が蛇腹を潰すように変形することによるエネルギー吸収も含めて、車体後部のトータルのエネルギー吸収量を向上させることができる。
【0025】
この発明の態様として、前記リアフレームにおける、前記サスペンション取付部よりも前方部位には、車両前方に向かうほど下方に延びる傾斜部を備え、前記傾斜部は、前記リアフレームの該傾斜部よりも前方部位に対して前側屈曲部を介して傾斜して形成されるとともに、前記リアフレームの該傾斜部よりも後方部位に対して後側屈曲部を介して傾斜して形成され、前記前側屈曲部および前記後側屈曲部は、前記傾斜部よりも前記後方部位に比して、前後方向荷重に対する剛性(軸方向の圧縮に対する剛性)が高くなるよう設定されたことを特徴とする。
【0026】
前記構成によれば、車両の後突時に前記リアフレームの前側屈曲部と後側屈曲部とにおける変形が抑制されるため、リアフレームの延在方向に荷重が安定して入力され、エネルギー吸収量を安定して向上させることができる。
【0027】
この発明の態様として、前記リアフレームは、該リアフレームの後端から前記前方領域の後端まで該リアフレームの上面が略水平に形成されたことを特徴とする。
【0028】
前記構成によれば、リアフレーム後端に圧縮荷重が入力される際、上面部が略水平のため曲げ変形を誘発しないため、安定してエネルギー吸収量を向上させることができる。
【0029】
この発明の態様として、前記リアフレームの前記後方領域に、前後方向の周辺部位よりも凹状となるビードが設けられることを特徴とする。
【0030】
前記構成によれば、前記リアフレームの前記後方領域の軸圧縮変形を促進し、エネルギー吸収量を向上させることができる。
【0031】
ここで、前記ビードは、前記後方領域の断面周方向の全体に限らず、一部のみに形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0032】
上記構成によれば、リアフレームにおけるサスペンション取付部の剛性確保と後突時のエネルギー吸収量向上とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施形態の後部車体構造の平面図。
図2】本実施形態の後部車体構造の底面図。
図3】本実施形態の後部車体構造の右側面図。
図4図1中のA-A線矢視断面図。
図5図1のB-B線に沿う要部矢視断面。
図6】車体左側に備えた本実施形態のリアフレームおよびその周辺の要部を左上方から視た斜視図。
図7】車体左側に備えた本実施形態のリアフレームおよびその周辺の要部を左下方から視た斜視図。
図8】(a)は図2中のC-C線に沿う拡大断面図、(b)は図2中のD-D線に沿う拡大断面図、(c)は図2中のE-E線に沿う拡大断面図、(d)は図2中のF-F線に沿う拡大断面図。
図9】車体左側に備えた本実施形態のリアフレームおよびその周辺の要部を右上方から視た斜視図。
図10】(a)は本実施形態の後部車体構造に備えたリアフレームの後突時の変形モードを模式的に示した側面図、(b)は従来の後部車体構造に備えたリアフレームの後突時の変形モードを模式的に示した側面図。
図11】(a)は本発明の他の実施形態の後部車体構造に備えたリアフレームの要部を模式的に示した平面図、(b)は同左側面図、(c)は同底面図、(d)は図11(b)中のG-G線に沿う拡大断面図、(e)は図11(b)のリアフレームの後突時の変形モードを模式的に示した左側面図。
図12】(a)は変形例1のリアフレームの図8(d)対応図、(b)は変形例2のリアフレームの図8(d)対応図、(c)は変形例3のリアフレームの図8(d)対応図、(d)は変形例4のリアフレームの図8(d)対応図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Frは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印Wは車幅方向、矢印Rは車両右方、矢印Lは車両左方を夫々示すものとする。
【0035】
主に図1図2に示すように、本実施形態の車両の下部には、車室の底面を形成する車体フロア1が設けられている。なお、本発明の車室(キャビン)には、車室(乗員室)と連続する荷室も含まれる。
【0036】
車体フロア1は、乗員室の床面を形成するフロアパネル2(図9参照)と、フロアパネル2の後端から前低後高状に傾斜して立ち上がるキックアップ部3(図3図5図9参照)と、キックアップ部3の上端から後方に延びるリアフロア4(リアフロアパネル4)(図1図2参照)とを備えている。
【0037】
図1図2に示すように、リアフロア4の前部4F(以下、「リアフロア前部4F」と称する)は、下方に燃料タンク(図示省略)が配置される。図1図2図4に示すように、リアフロアの後部4R(以下、「リアフロア後部4R」と称する)は、平面視中央部が下方に窪むスペアタイヤパンとして、該平面視中央部に凹部4Raが形成されている。
【0038】
上述のリアフロア4の両サイドには、車両前後方向に延びるリアフレーム10(「リアサイドフレーム10」とも称する)が接続固定されている。
【0039】
主に図5図6図8(a)~(d)に示すように、リアフレーム10は、車体強度部材であって、リアフロア4の上面より上側に位置するリアフレームアッパ11と、リアフロア4の下面より下側に位置するリアフレームロア12とを有している。図8(a)~(d)に示すように、リアフレーム10は、リアフレームアッパ11とリアフレームロア12との間に、車両前後方向に延びる閉断面空間10sが形成されている。
【0040】
なお、図1図2に示すように、リアフレームアッパ11とリアフレームロア12とは、共に車両前後方向に沿って配設された複数の鋼板(例えば、41u,41d,42u,42d…)から成り、隣接する鋼板の外縁同士を接合固定することで一体に形成される。
【0041】
図3図5図9に示すように、リアフレーム10は、車両前後方向におけるリアフロア前部4Fに対応する部位に、前低後高状に傾斜する傾斜部13Sが形成されている。図9に示すように、リアフレーム10は、傾斜部13Sよりも前方部位(以下、「前方部位13F」と称する)が、リアフレーム10の前端までフロアパネル2と略同じ高さにおいて車両前後方向に略水平に延びている。リアフレーム10の前端は、車両前後方向におけるキックアップ部3に対応する部位に位置し、フロアパネル2の両サイドに接合固定されたサイドシル7(厳密にはサイドシルインナ7a)の後端に接続されている。
【0042】
一方、リアフレーム10は、傾斜部13Sよりも後方部位(以下、「後方部位13R」と称する)がリアフロア4の後端までリアフロア4と略同じ高さにおいて車両前後方向に略水平に延びている。
【0043】
図5図9に示すように、傾斜部13Sと前方部位13Fとの境界部、すなわち、傾斜部13Sの前端には、前側屈曲部14fが形成されるとともに、傾斜部13Sと後方部位13Rとの境界部、すなわち、傾斜部13Sの後端には、後側屈曲部14rが形成されている。
【0044】
図3図4図7に示すように、リアフレーム10の後方部位13Rにおける車幅方向外側には、リアホイールハウス6が設けられている。図4に示すように、リアホイールハウス6は、車体後部の荷室の側方において上下方向および前後方向に延びる側壁パネル5の下方に備えている。リアホイールハウス6は、リアホイールハウスアウタ6b(図3参照)とリアホイールハウスインナ6aとを接合して構成されている。
【0045】
なお、図3中の符号90は、側壁パネル5およびリアホイールハウス6の車幅方向外側へ位置し、車体後部側面の外板を形成するリアフェンダパネルを示し、図4中の符号91はリアフロア後部4Rの後端から縦壁状に立ち上がるリアエンドパネルを示し、符号91aはリアエンドパネル91の上部において車幅方向に延びる閉断面空間を有するリアエンドメンバを示している。
【0046】
図1図2図4図9に示すように、リアフロア前部4Fとリアフロア後部4Rとの境界部には、前側リアクロスメンバ8が配設されている。
【0047】
図4に示すように、前側リアクロスメンバ8は、リアクロスメンバアッパ8Uとリアクロスメンバロア8Dとを備えており、それぞれリアフロア4に対して上下各側から接合固定されている。
【0048】
両者は、リアフロア前部4Fとリアフロア後部4Rとの境界部において、前後方向に一致するように配設されており、何れも車幅方向に延びて両サイドのリアフレーム10と車幅方向に連結している。具体的には、リアクロスメンバアッパ8Uとリアクロスメンバロア8Dは、両サイドのリアフレーム10の後方部位13Rの前部に接合されている(図1図2図9参照)。
【0049】
図4に示すように、リアクロスメンバアッパ8Uは、車幅方向に直交する断面がハット形状に形成されるとともに、リアクロスメンバロア8Dは、車幅方向に直交する断面が逆ハット形状に形成され、何れもリアフロア4との間に車幅方向に延びる閉断面空間8Us,8Dsが形成されている。
【0050】
さらに、図2図4に示すように、リアフロア後部4Rの前後方向の中間位置には、凹部4Raを横切るように車幅方向に延びる後側リアクロスメンバ9がリアフロア後部4Rの下面側から接合されている。後側リアクロスメンバ9は、両サイドのリアフレーム10と車幅方向に連結している。後側リアクロスメンバ9は、車幅方向に直交する断面が逆ハット形状に形成され、リアフロア後部4Rとの間に車幅方向に延びる閉断面空間9sが形成されている。
【0051】
また、図5図7に示すように、両サイドのリアフレーム10の後端には、衝撃エネルギー吸収部材としてのクラッシュカン51が取り付けられ(車体左側のみ図示)、これら左右のクラッシュカン51の間には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント52(図7参照)が横架されている。
なお、図1図4は、クラッシュカン51およびバンパレインフォースメント52の図示を省略している。
【0052】
クラッシュカン51は、図6図7に示すように、車両前後方向である軸方向に直交する断面が略クロス形状に形成され、車体後方から衝突荷重が入力時に軸方向(前後方向)に折り畳まれるように蛇腹形状に潰れ変形して衝突荷重を吸収するようになっている。
【0053】
また、図1図3に示すように、リアフレーム10には、サスペンション15がサブフレーム16を介して取り付けられている。
【0054】
サスペンション15は、アッパアーム150、前側ロアアーム151、後側ロアアーム152、緩衝部材としてのダンパ153およびコイルスプリング154(図3参照)等を備え、ダンパ153はリアホイールハウス6内に設けられている(同図参照)。
【0055】
図2に示すように、サブフレーム16は、左右のサイドメンバ161と前側クロスメンバ部162と後側クロスメンバ部163と、左右のガセット164を備え、左右対称に形成されている。左右一対のサイドメンバ161には、前端部に前側車体取付部17(前側マウント部)が、後端部に後側車体取付部18(後側マウント部)が、夫々設けられている。
【0056】
そして、サブフレーム16の左右のサイドメンバ161の前側が前側車体取付部17を介して左右のリアフレーム10の前側サスペンション取付部22(前側取付けポイント)に取り付けられる一方で、左右のサイドメンバ161の後部が後側車体取付部18を介して左右のリアフレーム10の後側サスペンション取付部21(後側取付けポイント)に取り付けられる。
【0057】
図2に示すように、前側サスペンション取付部22は、リアフレーム10の前後方向におけるリアクロスメンバロア8Dとの接合部分に位置し、後側サスペンション取付部21は、リアフレーム10の前後方向における後側リアクロスメンバ9との接合部分に位置する。
また、図2図3に示すように、サスペンション15に備えたコイルスプリング154は、車体側のリアフレーム10とサスペンション15側の後側ロアアーム152との間で張架されている。
【0058】
なお、図2に示すように、左右のサイドメンバ161は、前後方向に延びているが、コイルスプリング154との干渉を避けるために前後両端部から中央部がリアフレーム10に対して車幅方向内側へ迂回するように延びている。図2図3に示すように、リアフレーム10の前後方向における後側サスペンション取付部21と前側サスペンション取付部22との間には、コイルスプリング154を上方から支持するバネ座23が設けられている。
【0059】
続いて、上述したリアフレーム10についてさらに詳述するが、以下の説明において、図1図7に示すように、リアフレーム10の前後方向における、後側サスペンション取付部21から前端に至るまでの領域を前方領域25に設定する。
【0060】
さらに、リアフレーム10の前後方向における、後端から後側サスペンション取付部21の後側手前までの領域を、後方領域27に設定し、リアフレーム10の前後方向の少なくとも後方領域27の前端部から前方領域25の後端までの領域を、中間領域26に設定する。
また、両サイドのリアフレーム10は、左右対称に形成されているため、以下の説明では特に示す場合を除いて、車体左側のリアフレーム10について説明する。
【0061】
リアフレーム10の前方領域25は、前後方向に直交する断面形状が矩形状となるように前後方向に連続して形成され、断面矩形状部とも称される。
【0062】
本実施形態のリアフレーム10の前方領域25は、図8(b)に示すように、前後方向の略全体における前後方向に直交する断面について、リアフレームアッパ11が断面ハット形状に形成される一方で、リアフレームロア12が、逆ハット形状に形成されており、リアフロア4を挟み込むように互いに接合することで断面略矩形状に形成されている。
【0063】
但し、図8(a)に示すように、リアフレーム10の前後方向における、リアホイールハウスインナ6aに対して車幅方向内側で隣接する部分は、リアホイールハウスインナ6aに接合されている。
具体的に、リアフレーム10のリアホイールハウスインナ6aとの隣接部分に相当するリアフレームアッパ11は、左側面部を備えておらず、上面部11uの左端(車幅外端)から上方に延びる左端フランジ部11a(車幅外端フランジ部)が形成されている。すなわち、当該部位のリアフレームアッパ11は、車両前後方向に直交する断面がハット形状に形成されていない。
【0064】
一方、リアフレーム10のリアホイールハウスインナ6aとの隣接部分に相当するリアフレームロア12は、左側面部12lの上端から左方(車幅外側)へ延出する車幅外端フランジを備えておらず、該左側面部12lが上面部11uよりも上方へ延出された上方延出部分12aが形成されている。すなわち、当該部位のリアフレームロア12は、車両前後方向に直交する断面が逆ハット形状に形成されていない。
【0065】
そして、リアフレームアッパ11の左端フランジ部11aとリアホイールハウスインナ6aの下端とでリアフレームロア12の左側面部12lの上方延出部分12aを挟み込むようにして互いに接合されている。
【0066】
図6図7図8(a)に示すように、リアフレーム10の後方領域27は、前後方向に直交する断面形状が、矩形状の角部の数である4よりも多い数、すなわち、5以上の角部35を備える多角形状となるように前後方向に連続して断面多角形状部として形成される。
【0067】
本実施形態において、リアフレーム10の後方領域27は、前後方向の全長に亘って前後方向に直交する断面形状が略クロス形状で形成されている。
【0068】
具体的に、図8(d)に示すように、後方領域27は、前後方向に延びる軸心に対して上下各側へ突出する上側突出部31および下側突出部32と、左右各側へ突出する左側突出部33および右側突出部34とを備え、これら4つの突出部31,32,33,34における、周方向において隣接する突出部の断面内側端部(閉断面空間10sの側の端部)同士を互いに接続したような形状としている。
【0069】
上側突出部31は、前後方向の直交断面視で車幅方向に延びる上側上面部31aと、上側上面部31aの右端部から閉断面空間10sの側(下方)に延びる上側右面部31bと、上側上面部31aの左端部から閉断面空間10sの側(下方)に延びる上側左面部31cとを備えている。
【0070】
下側突出部32は、前後方向の直交断面視で車幅方向に延びる下側下面部32aと、下側下面部32aの右端部から閉断面空間10sの側(上方)に延びる下側右面部32bと、下側下面部32aの左端部から閉断面空間10sの側(上方)に延びる下側左面部32cとを備えている。
【0071】
左側突出部33は、前後方向に直交する断面視で上下方向に延びる左側左面部33aと、左側左面部33aの上端部から閉断面空間10sの側(右方)に延びる左側上面部33bと、左側左面部33aの下端部から閉断面空間10sの側(右方)に延びる左側下面部33cとを備えている。
【0072】
右側突出部34は、前後方向の直交断面視で上下方向に延びる右側右面部34aと、右側右面部34aの上端部から閉断面空間10sの側(左方)に延びる右側上面部34bと、右側右面部34aの下端部から閉断面空間10sの側(左方)に延びる右側下面部34cとを備えている。
【0073】
このように、本実施形態においては、リアフレーム10の後方領域27は、前後方向に直交する断面形状が略クロス形状で形成されているため、12の角部35を備えることができる。
【0074】
さらに、後方領域27における、これら12の角部35は、リアフレーム10の外観形状において入隅となる凹角部35aと、出隅となる凸角部35bとを6つずつ備え、凹角部35aと凸角部35bとは、リアフレーム10の周方向において極力分散して配設された形状とすることができる。
具体的には、凹角部35aと凸角部35bとは、夫々が、リアフレーム10の周方向において3以上連続して配設されない範囲で交互に配設されている。
【0075】
加えて、図8(d)に示すように、後方領域27における全ての角部35は、成す角度が略直角となるように形成される。具体的には、凹角部35aの外角αo(リアフレーム10を外側から視たときの角度)と凸角部35bの内角αi(リアフレーム10を内側(閉断面空間10s側)から視たときの角度)とは、何れも略直角となるように形成される。
【0076】
ここで、角部35の成す角度が略直角とは、厳密に直角である場合に限定せず、例えば、リアフレーム10を構成する鋼板をプレス成形する型の抜き勾配等、リアフレーム10の製造上の観点等からRを付したものや、直角に対して若干大きい角度又は若干小さい角度も含み、直角である場合と略程度に後方領域27が軸圧縮に対して蛇腹変形を引き起こすことが可能な範囲の角度も含む。具体的には、略直角には、80度以上110度以下の角度も含むものとする。
【0077】
また、図6に示すように、後方領域27には、上述した角部35に沿って前後方向に延びる稜線部36(36a,36b)が形成されている。すなわち、後方領域27は、前後方向に直交する断面が、略クロス形状に形成されていることに起因して合計12の稜線部36が形成され、凹角部35aに対応する凹稜線部36aと凸角部35bに対応する凸稜線部36bとが周方向に極力分散して形成されている。
【0078】
また、図1図7に示すように、本実施形態においては、リアフレーム10(リアフレームアッパ11およびリアフレームロア12)の前後方向における後方領域27に相当する部分の鋼板41u,41dは、前方領域25に相当する部分の鋼板(例えば、図2中の鋼板42d)と比して板厚が例えば、例えば、7割から9割程度薄く形成されている。例えば、鋼板42dの板厚が約1.8mmで形成されているのに対して鋼板41u,41dの板厚が約1.6mmで形成されている。
この点においても、後方領域27は、前後方向の荷重に対して潰れやすく形成されている。
【0079】
また、図5図7図8(c)に示すように、リアフレーム10の中間領域26は、前方に向かうにつれ徐々に前記断面形状が多角形状としての略クロス形状から略矩形形状に変化するように形成され、断面変形部とも称される。
【0080】
具体的に、図6図7に示すように、リアフレーム10の中間領域26は、断面形状が略クロス形状である後方領域27の前端から前方へ向かうほど上側突出部31および下側突出部32の車幅方向寸法Xが徐々に大きくなるように形成される。
【0081】
これにより、前方領域25において、上側突出部31の上側右面部31bと右側突出部34の右側右面部34aと、下側突出部32の下側右面部32bとが上下方向に略一致(略面一)になるとともに、上側突出部31の上側左面部31cと左側突出部33の左側左面部33aと、下側突出部32の下側左面部32cとが上下方向に略一致(略面一)になる。
【0082】
また、図1図5に示すように、後方領域27の後部には、前後方向の周辺部位よりも凹状のビード44が設けられている。ビード44は、リアフレーム10の前後方向のビード形成箇所の直交断面視において、周方向の少なくとも一部に形成されていればよく、本実施形態におけるビード44は、上側突出部31の上側上面部31a(図1参照)、下側突出部32の下側下面部32a、右側突出部34の右側下面部34cおよび左側突出部33の左側下面部33c(図2参照)の夫々において車幅方向に直線形状に延びている。
【0083】
このビード44により、後方領域27を軸方向に圧縮変形する際の起点をコントロールし易くなり、後方領域27の軸圧縮変形を促進し、エネルギー吸収量を向上させることができる。
【0084】
但し、図5に示すように、リアフレーム10は、中間領域26および後方領域27の前後方向に亘って、すなわち、該リアフレーム10の後端から後側サスペンション取付部21に亘って、後方領域27に設けた上述したビード44を除いて上側上面部31a(上面)が車両側面視で略直線形状に形成されている。
【0085】
本実施形態のリアフレーム10は、中間領域26および後方領域27が、該後方領域27に設けた上述したビード44を除いて、該リアフレーム10の後端から前方領域25の後端、すなわち後側サスペンション取付部21に亘って上側上面部31a(上面)が略水平に形成されている(図5参照)。
【0086】
この構成により、リアフレーム10の後端に圧縮荷重が入力された際、ビード44において後方領域27の圧縮変形を確実に誘発できるとともに、後方領域27が、ビード44以外の略水平な上側上面部31aにおいて折れ変形が誘発されないため、後方領域27を安定して軸方向に圧縮変形させることができる。
【0087】
ここで、車両側面視で略直線形状とは、前後方向に水平である場合に限らず、例えば、前後方向の少なくとも一部が後方ほど徐々に低くなるように若干傾斜している場合も含み、車両側面視で直線形状であればよい。すなわち、車両側面視で略直線形状とは、リアフレーム10の中間領域26および後方領域27が、前後方向荷重に対して意図しない折れ変形を誘発しない形状変化がない構成であればよい。
【0088】
また、リアフレーム10の傾斜部13Sにおける、前側屈曲部14fおよび後側屈曲部14rは、後方部位13Rに比して、前後方向荷重に対する剛性(軸方向の圧縮に対する剛性)が高くなるよう設定されている。
【0089】
本実施形態においては、図9に示すように、リアフレームアッパ11の前後方向における、傾斜部13Sから該傾斜部13Sの前後周辺部位に亘って、これら領域を構成するリアフレームアッパ11側の鋼板42u(図1図9参照)に、補強板としてのパッチ43を閉断面空間10s側から当てている。これにより、リアフレーム10における前側屈曲部14fおよび後側屈曲部14rの夫々の周辺部位を含めて後突荷重に対して補強している。
【0090】
リアフレーム10における前側屈曲部14fおよび後側屈曲部14rを、その周辺部位を含めて補強する手段は、上述したように、パッチ43を当てることにより補強することに限定せず、鋼板42uを超高張力鋼板のような高剛性部材とする、鋼板42uに補強ビードを形成する、或いは、該鋼板42uの板厚をさらに厚くする等の手段を採用してもよい。
【0091】
また、図1図2図4に示すように、リアフロア後部4R(車体フロアの後部)における、前後方向の後方領域27に相当する部位は、車両側面視断面において複数の凹部45aと凸部45bとが交互に並ぶ断面蛇腹形状に形成されている。凹部45aと凸部45bとは、図1図2に示すように、タイヤパンとしてのリアフロア後部4Rの凹部4Raの車幅方向の略全長に亘って車幅方向に直線形状に延びている。
【0092】
図1図7に示すように、上述した実施形態の車両の後部車体構造は、キャビンの一部を構成し、車両の前後方向に延びる左右一対のリアフレーム10と、左右一対のサスペンション15と、リアフレーム10に取付けられ、サスペンション15を支持する左右一対のサブフレーム16(サスペンション支持部材)と、を備え、リアフレーム10の前後方向における、サブフレーム16を介してサスペンション15が取り付けられる後側サスペンション取付部21(サスペンション取付部)を含めた前方領域25は、前後方向に直交する断面形状が矩形状であり、リアフレーム10の後端から後側サスペンション取付部21の後側手前までの後方領域27は、前記断面形状が5以上の角部35を備える多角形状であり、リアフレーム10の前後方向の少なくとも後方領域27の前端から前方領域25の後端までの中間領域26は、前方に向かうにつれ徐々に前記断面形状が多角形状から矩形形状に変化することを特徴とする。
【0093】
前記構成によれば、リアフレーム10における後側サスペンション取付部21の剛性確保と後突時のエネルギー吸収量の向上とを両立することができる。
【0094】
具体的に、前記構成によれば、リアフレーム10の後方領域27は、5以上の角部35を備えている。すなわち、後方領域27は、角部35に沿って前後方向に延びる5以上の稜線部36(図6図7参照)を備えるため、車両の後突時に、軸圧縮によるエネルギー吸収量を向上させることができる。
【0095】
一方、リアフレーム10の前後方向における、サスペンション15からの荷重入力点である後側サスペンション取付部21を有する前方領域25は、断面二次モーメントが高い矩形断面として剛性を確保し、結果として車体剛性を確保することができる。
【0096】
さらに、中間領域26については、前方に向かうにつれ徐々に前記断面形状が多角形状から矩形形状に変化することで、前方領域25と後方領域27との断面形状が互いに異なることによる影響を緩和して繋ぐことができる。
【0097】
従って、リアフレーム10における後側サスペンション取付部21の剛性確保と後突時のエネルギー吸収量の向上とを両立することができる。
【0098】
この発明の態様として、図8(d)に示すように、後方領域27における角部35の成す角度αi,αoが略直角となるよう構成されたことを特徴とする。
【0099】
前記構成によれば、リアフレーム10の後方領域27の断面形状が多角形状とすることに起因して該後方領域27の角部35、すなわち、角部35に沿って前後方向に延びる稜線部36を増やすことができる。これら稜線部36が、後方領域27が軸圧縮する際の抵抗となるため、車両の後突時にリアフレーム10に対して後方から入力される荷重に対して後方領域27における反力の立上がりを確保して圧縮エネルギーの吸収量を向上させることができる。
【0100】
さらに、上述したように、後方領域27における角部35の成す角度αi,αoが略直角となるよう構成することで、後方領域27は、軸圧縮する際に蛇腹形状に変形し易くなる。このため、軸圧縮に対する抵抗となる稜線部36を多数設けながらも後突時にリアフレーム10の後方領域27の潰れストロークを確保することができる(すなわち、後方領域27を潰しきることができる)。
従って、後突時のエネルギー吸収量をより一層確保することができる。
【0101】
この発明の態様として、図8(d)に示すように、角部35は、リアフレーム10の外観形状において入隅となる凹角部35aと出隅となる凸角部35bとを備え、凹角部35aと凸角部35bとは、これら2種類の角部35a,35bのうち、同じ種類の角部が後方領域27の周方向において、3つ以上連続しないように交互に配設されたことを特徴とする。
【0102】
前記構成によれば、リアフレーム10の後方領域27は、軸圧縮に対して蛇腹形状に変形し易くなるため、後突時に後方領域27の潰れストロークを確保することができ、結果として、後突時のエネルギー吸収量をより一層確保することができる。
【0103】
この発明の態様として、図8(d)に示すように、リアフレーム10の後方領域27は、前後方向の直交断面視において、左側左面部33aおよび右側右面部34a(左右一対の側面部)と、左側左面部33aの上端部から閉断面空間10sの側(断面内側)に延びる左側上面部33b(上面部)と、右側右面部34aの上端部から閉断面空間10sの側に延びる右側上面部34b(上面部)と、左側上面部33bおよび右側上面部34bの車幅方向内端部(断面内側端部)に接続し上方に突出する上側突出部31と、左側左面部33aの下端部から閉断面空間10sの側に延びる左側下面部33c(下面部)と、右側右面部34aの下端部から閉断面空間10sの側に延びる右側下面部34c(下面部)と、左側下面部33cおよび右側下面部34cの車幅方向内端部(断面内側端部)に接続し下方に突出する下側突出部32と、を備えた略クロス形状であることを特徴とする。
【0104】
前記構成によれば、本実施形態のリアフレーム10は、後方領域27が断面略クロス形状に形成されたものであるため、前後方向の略全長に亘って断面略矩形状の断面形状に形成された従来のリアフレームと比して後突に対するエネルギー吸収量を向上させることができる。
【0105】
具体的には、図10(b)に示すように、従来のリアフレーム100は、後突時に、後部が前後方向に殆ど潰れないため、該後部においてエネルギー吸収が抑制され、後側屈曲部14rにおいて上方へ大きく突き出すように屈曲変形する。
【0106】
これに対して、図10(a)に示すように、本実施形態のリアフレーム10は、後突時に、後方領域27をしっかりと前後方向に圧縮変形して潰しきることができるため、該後方領域27においてエネルギー吸収量を確保することができる一方で、前方領域25においては潰れずに後突前の形状(断面矩形状)を維持することができる。
【0107】
また、本実施形態のリアフレーム10は、前後方向の略全長に亘って断面略矩形状に形成された従来のリアフレーム100に対して大幅に形状を変更せずとも、例えば、後方領域27が断面略クロス形状になるように鋼板をプレス加工する等により生産できるため、複雑な加工を必要とせずに得ることができる。
【0108】
この発明の態様として、図6図7図8(b)(c)(d)に示すように、リアフレーム10の中間領域26は、後方領域27の前端から前方へ向かうほど、上側突出部31および下側突出部32の車幅方向寸法X(図6図7参照)が徐々に大きくなるように前記断面形状が略クロス形状から矩形形状に変化することを特徴とする。
【0109】
前記構成によれば、中間領域26は、車両前方に向かうほど断面クロス形状から矩形状へ移行するが、その際、例えば、図11(b)(d)に示すように、左側突出部33および右側突出部34の上下方向寸法Yが徐々に大きくなるように変形する場合、或いは、本実施形態のように下側突出部32及び上側突出部31の車幅方向寸法X(図6図7参照)が徐々に大きくなるように変形する場合等が考えられる。
【0110】
前者のリアフレーム10Aの場合は、このような中間領域26Aの形状変化に伴って、図11(a)(c)に示すように、該中間領域26Aにおける、上側突出部31又は下側突出部32の前後両端には、車幅方向に延びる稜線181r,181fが形成される。これら車幅方向に延びる稜線181r,181fは、車両の後突時に上下に折れ易くなる。さらに、この折れによって傾斜部13Sの前側屈曲部14fの折れが誘発され、結果として図11(e)に示すように、リアフレーム10が後側屈曲部14rを折れ起点として上方へ跳ね上がるような折れモードとなることが懸念される(図11(e))中のハッチングを付した矢印参照。
【0111】
一方、後者のリアフレーム10の場合、すなわち、本実施形態のリアフレーム10においては、図6図7に示すように、中間領域26の形状変化に伴って該中間領域26における、左側突出部33および右側突出部34の前後両端には、上下方向に延びる稜線81r,81fが形成される(左側突出部33のみ図示)。これら上下方向に延びる稜線81r,81fは、車幅方向に延びる稜線181r,181fと異なり、車両の後突時にリアフレーム10の曲げ変形を誘発しないため、安定してエネルギー吸収量を向上することができる。
【0112】
この発明の態様として、図4に示すように、左右一対のリアフレーム10間にリアフロア後部4R(車体フロアの後部)を備え、リアフロア後部4Rは、車両の前後方向の後方領域27に相当する部位が、車両側面視断面において凹部45aと凸部45bとが交互に並ぶ蛇腹断面形状に形成されたことを特徴とする。
【0113】
前記構成によれば、車両の後突時にリアフロア後部4Rにおける、凹部45aと凸部45bとで形成された部分を蛇腹形状に潰すように変形できるため、リアフレーム10の後方領域27が蛇腹形状に変形することを、リアフロア後部4Rによって阻害されることを抑制でき、リアフレーム10の軸方向の圧縮変形を促進することができる。さらに、車両の後突時にリアフロア後部4R自体が蛇腹形状に圧縮変形することで、後突時の車体後部のトータルのエネルギー吸収量を向上させることができる。
【0114】
この発明の態様として、図3図5に示すように、リアフレーム10における、後側サスペンション取付部21よりも前方部位には、車両前方に向かうほど下方に延びる傾斜部13Sを備え、図5に示すように、傾斜部13Sは、リアフレーム10の該傾斜部13Sよりも前方部位13Fに対して前側屈曲部14fを介して傾斜して形成されるとともに、リアフレーム10の該傾斜部13Sよりも後方部位13Rに対して後側屈曲部14rを介して傾斜して形成され、前側屈曲部14fおよび後側屈曲部14rは、後方部位13Rと比して前後方向荷重に対する剛性(軸方向の圧縮に対する剛性)が高くなるよう設定されたことを特徴とする。
【0115】
具体的には、上述したように、リアフレームアッパ11の前後方向における、傾斜部13Sから該傾斜部13Sの前後周辺部位に亘って、これら領域を構成するリアフレームアッパ11側の鋼板42u(図1図9参照)に、補強板としてのパッチ43を閉断面空間10s側から当てている(図9参照)。
【0116】
前記構成によれば、リアフレーム10の前部は、荷室フロアとしてのリアフロア後部4Rの高さからキャビンのフロアパネル2の高さになるように、車両前方に向かうほど下方に傾斜する傾斜部13Sが設けられている。この傾斜部13Sによって形成される前側屈曲部14fおよび後側屈曲部14rは、車体の後突時にリアフレーム10の折れ起点となることが懸念される。
【0117】
このため、傾斜部13Sの前側屈曲部14fおよび後側屈曲部14rの剛性を高めることで、車体の後突時に、リアフレーム10の後方領域27が軸方向に完全に圧縮変形する前に、リアフレーム10が、傾斜部13Sの前側屈曲部14fおよび後側屈曲部14rを起点として折れることを抑制することができる。
【0118】
従って、リアフレーム10の後方領域27を安定して軸圧縮させることができ、結果としてリアフレーム10のエネルギー吸収量を十分に確保することができる。
【0119】
この発明は、上述した実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
本実施形態のリアフレーム10の後方領域27は、前後方向に直交する断面形状が略クロス形状で形成したが、本発明の後方領域は、この構成に限定せず、前後方向に直交する断面形状が他の多角形状で構成してもよい。
【0120】
具体的には、図12(a)に示す変形例1の後方領域27Aのように、断面クロス形状の一部を変形した断面形状で形成してもよい。
変形例1の後方領域27Aは、前後方向に直交する断面視において、上述した本実施形態の後方領域27(図8(d)参照)における、互いに隣接する左側突出部33および下側突出部32の間部分についても突出形成し、左側左面部33Aaが下端に至るまで上下方向に略直線形状に形成するとともに、下側下面部32Aaが左端に至るまで車幅方向に略直線形状に形成したものである。
【0121】
変形例1の後方領域27Aは、前後方向に直交する断面視において、左側左面部33Aaと下側下面部32Aaとのコーナー部が閉断面空間10sの側に凹んでいない断面形状としているため、断面クロス形状の後方領域27と比して断面二次モーメントを確保することができる。
【0122】
さらに、変形例1の後方領域27Aは、上述したように、左側左面部33Aaが下側下面部32Aaの高さに至るまで下方へ直線形状に延びているため、左側左面部33Aaに、例えば、ヒッチメンバー(「トーバー」とも称する)のような車体装備品(図示省略)を必要に応じてボルトB等の締結具を用いて取り付け可能な取付け面を確保することができる。
なお、図12(a)中の符号110は、リアフレーム10に取付け可能にヒッチメンバーに備えたサイドブラケットを示す。
【0123】
また、本発明の後方領域は、図12(b)に示す変形例2の後方領域27B、又は図12(c)に示す変形例3の後方領域27Cのように、上面の左右各側に上側突出部31B,31Cを備えるとともに、下面の左右各側に下側突出部32B,32Cとを備えた断面略H字形状で形成してもよい。
変形例2の後方領域27Bは、左右一対の上側突出部31B,31Cがリアフレームアッパ11とリアフレームロア12とで形成されているのに対して、変形例3の後方領域27Cは、左右一対の上側突出部31Cの全体がリアフレームアッパ11Cのみで形成されている。
【0124】
変形例2、3の後方領域27B,27Cは、上面および下面の車幅方向の中央部のみが閉断面空間10sの側に凹んでおり、左右各側の側面について閉断面空間10sの側に凹んでいない断面形状としているため、変形例1の後方領域27A(図12(a)参照)と同様に断面クロス形状の後方領域27(図8(d)参照)と比して断面二次モーメントを確保することができる。
【0125】
さらに、図12(b)に示すように、変形例2の後方領域27Bは、前後方向に直交する断面視で左右の側面部33Ba,34Baが後方領域27の上下方向の全長に亘って略直線形状に延びているため、変形例1の後方領域27Aと同様に車体装備品を必要に応じてボルトB等の締結具を用いて取り付け可能な取付け面を確保することができる。
【0126】
また、本発明の後方領域は、図12(d)に示す変形例4の後方領域27Dのように、断面略葉っぱ形状で形成してもよい。
具体的に、変形例4の後方領域27Dは、断面略H字形状の変形例2、3の後方領域27B,27Cと同様に、上方の左右各側に上側突出部31Dを備えるとともに、下方の左右各側に下側突出部32Dとを備えた断面略葉っぱ形状で形成されているが、これら4つの突出部31D,32Dは、何れも先端が鋭角状に突出する突形状に形成されている。
【0127】
さらに、変形例4の後方領域27Dは、左側面にも左側へ突出する左側突出部33Dが形成されるとともに、右側面にも右側へ突出する右側突出部34Dが形成されている。
【0128】
このように、変形例4の後方領域27Dは、前後方向の直交断面視において、6つの鋭角状の突出部31D,32D,33D,34Dを備えた構成であるため、出隅である凹角部35Daと入隅である凸角部35Dbとを交互に備えた構成とすることができる。従って、本実施形態の断面クロス形状の後方領域27と同様に前後方向荷重に対して安定して蛇腹形状に変形させ易い断面形状とすることができる。
【符号の説明】
【0129】
4R…リアフロア後部(車体フロア)
10,10A…リアフレーム
10s…閉断面空間(断面内側)
13S…傾斜部
13F…傾斜部よりも前方部位
13R…傾斜部よりも後方部位
14f…前側屈曲部
14r…後側屈曲部
15…サスペンション
16…サブフレーム(サスペンション支持部材)
17…前側車体取付部
18…後側車体取付部
21…後側サスペンション取付部(サスペンション取付部、後側サスペンション取付部
22…前側サスペンション取付部(サスペンション取付部、前側サスペンション取付部)
25…前方領域
26,26A…中間領域
27,27A,27B,27C,27D…後方領域
31a…上側突出部の上側上面部(リアフレームの上面)
32…下側突出部
33a…左側左面部(左側の側面部)
33b…左側上面部(上面部)
33c…左側下面部(下面部)
34a…右側右面部(右側の側面部)
34b…右側上面部(上面部)
34c…右側下面部(下面部)
35…角部
35a…凹角部
35b…凸角部
44…ビード
45a…凹部
45b…凸部
X…下側突出部及び上側突出部の車幅方向寸法
αi,αo…角部の成す角度
図1
図2
図3
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図10
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図12