(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】スクリュ位置設定方法及びスクリュ式射出装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241008BHJP
B29C 45/50 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/50
(21)【出願番号】P 2021014505
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】大串 拓也
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昭男
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140610(JP,A)
【文献】特開2018-134775(JP,A)
【文献】特開2011-104817(JP,A)
【文献】特開2006-205393(JP,A)
【文献】特開2001-079904(JP,A)
【文献】特開2000-108177(JP,A)
【文献】特開昭61-158417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュと、該スクリュを軸方向に沿って移動させるためのボールねじ機構と、該ボールねじ機構を駆動するためのサーボモータと、前記スクリュと共に移動可能な可動側停止部材と、前記スクリュが機械後退限位置に到達した際に前記可動側停止部材が接触するよう設けられた固定側停止部材とを備えるスクリュ式射出装置におけるスクリュ位置設定方法であって、
前記スクリュを設定移動速度で後退移動させて、前記可動側停止部材が前記固定側停止部材に接触した位置を前記スクリュの機械後退限位置として設定する機械後退限位置設定工程と、
前記スクリュを前記機械後退限位置から設定オフセット量前進移動させた位置を前記スクリュの制御後退限位置として設定する制御後退限位置設定工程とを備える
ことを特徴とするスクリュ位置設定方法。
【請求項2】
前記機械後退限位置設定工程における前記可動側停止部材と前記固定側停止部材との接触は、前記スクリュの設定移動トルクリミットを用いた条件、及び、該可動側停止部材と該固定側停止部材との接触を検知可能な接触検知手段による検知結果を用いた条件の一方又は双方に基づいて行われる
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリュ位置設定方法。
【請求項3】
前記スクリュの設定移動トルクリミットを用いた条件は、前記スクリュの実移動トルクが前記設定移動トルクリミットに到達することを含む
ことを特徴とする請求項2に記載のスクリュ位置設定方法。
【請求項4】
前記機械後退限位置設定工程及び前記制御後退限位置設定工程は、前記スクリュ式射出装置の制御部により自動で実行制御される
ことを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載のスクリュ位置設定方法。
【請求項5】
前記機械後退限位置設定工程及び前記制御後退限位置設定工程の少なくとも一方において、前記スクリュの実移動トルクを所定の異常判断トルクと比較することで、前記スクリュの移動状況を監視する
ことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載のスクリュ位置設定方法。
【請求項6】
前記制御後退限位置設定工程において、前記スクリュの実移動時間を、前記スクリュの設定移動速度と前記設定オフセット量とから算出される設定移動時間と比較することで、前記スクリュの移動状況を監視する
ことを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載のスクリュ位置設定方法。
【請求項7】
前記制御後退限位置設定工程において設定した前記制御後退限位置を前記スクリュの原点として設定する
ことを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載のスクリュ位置設定方法。
【請求項8】
スクリュと、該スクリュを軸方向に沿って移動させるためのボールねじ機構と、該ボールねじ機構を駆動するためのサーボモータと、前記スクリュと共に移動可能な可動側停止部材と、前記スクリュが機械
後退限位置に到達した際に前記可動側停止部材が接触するよう設けられた固定側停止部材とを備えるスクリュ式射出装置であって、
前記スクリュを設定移動速度で後退移動させて、前記可動側停止部材が前記固定側停止部材に接触した位置を前記スクリュの機械後退限位置として設定する機械後退限位置設定制御と、
前記スクリュを前記機械後退限位置から設定オフセット量前進移動させた位置を前記スクリュの制御後退限位置として設定する制御後退限位置設定制御と
を実行可能な制御部を更に備える
ことを特徴とするスクリュ式射出装置。
【請求項9】
前記スクリュ式射出装置は、固定フレームと、前記スクリュを回転可能な状態で支持し、前記ボールねじ機構によって前記固定フレームに対して進退可能に構成された可動フレームとを備える2プレート式射出装置であり、
前記固定側停止部材は、前記可動フレームを境とした前記固定フレームとは反対側に、該固定フレームに対して相対移動不能に設けられており、
前記可動側停止部材は、前記可動フレー
ムに設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載のスクリュ式射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ式射出装置におけるスクリュ位置設定方法、及び、該スクリュ位置設定方法を実行可能なスクリュ式射出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金型に形成された金型キャビティに対して溶融樹脂を射出充填させる射出装置として、樹脂材料の可塑化、計量及び射出を行うためのスクリュと、スクリュを収容する加熱バレルと、スクリュを加熱バレル内において軸方向に沿って移動させるためのボールねじ機構と、該ボールねじ機構を駆動するためのサーボモータとを備える電動のスクリュ式射出装置が広く用いられている(特許文献1)。このようなスクリュ式射出装置では、通常、サーボモータに内蔵されたエンコーダ等の回転角度センサによりサーボモータの回転角度や回転数を検出することで、加熱バレル内におけるスクリュの軸方向の位置を検出乃至制御しているため、その運転開始前に、加熱バレル内におけるスクリュの、軸方向の制御上の基準となる位置を設定する作業が必要となる。
【0003】
このようなスクリュの位置を設定する方法として、特許文献1には、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、任意の位置からスクリュ100を前進させることでスクリュ100の先端102を加熱バレル110の先端側の内壁112に接触させ、その後、
図8(c)に示すように、所定距離Lだけスクリュ100を後退させ、その位置をスクリュ100の制御上の基準となる位置として設定する方法が開示されている。このような特許文献1の方法によれば、スクリュ式射出装置を構成する各部品の公差に関係なく、基準となる位置にあるときのスクリュ100の先端102と加熱バレル110の先端側の内壁112との間の隙間を所定距離Lとすることができるため、スクリュの後退限位置を基準として制御する場合と比較して、各部品の公差に起因する成形安定性の低下を防止することができる。
【0004】
ところで、近年、1つの射出装置(メイン射出装置)を備える汎用の射出成形機を用いて、複数色又は複数種類の樹脂材料を使用した積層成形品の成形を可能とするために、金型や該射出成形機の固定盤又は可動盤に、小型のスクリュ式射出装置をサブ射出装置として後付けする改造が行われている(特許文献2)。このような後付け用のスクリュ式射出装置においては、射出成形機の制御盤の改造等を不要とするために、独立した専用の制御盤を有するか、又は、射出成形機の制御盤内にユニット接続可能な制御ユニットを組み込むことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-192694号公報
【文献】特開2003-053770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のような後付け用のスクリュ式射出装置においては、金型や、射出成形機から取り外される際、制御盤や制御ユニットとのサーボモータの動力線及びエンコーダ線、また、加熱バレル外周面に配置される加熱ヒータの動力線等の電気的な接続が解除される。ここで、一般的には、サーボモータのエンコーダは、予め設定される制御上の基準となる絶対位置を記憶して、同絶対位置を基準に回転軸の回転角度や回転数を制御するアブソリュート型である。そのため、エンコーダ線を外してサーボモータ及び制御盤や制御ユニットとの電気的な接続が解除されると、制御装置や制御ユニットが、記憶しているエンコーダの絶対位置情報と、実際のサーボモータの回転軸に係る、エンコーダから発信される位置情報との整合性の確認ができなくなる。このように、スクリュの基準となる位置を一度設定したとしても、サーボモータのエンコーダのエンコーダ線の接続を解除すると、接続復旧後に、制御装置や制御ユニットが、実際のサーボモータの回転軸に係るエンコーダから発信される位置情報との整合性が確認できる新たなエンコーダの絶対位置を設定する必要がある。また、このようなエンコーダの絶対位置の設定に係る問題は、点検作業や部品交換等のためにサーボモータのエンコーダ線の接続を解除した場合等においても生じ得るものであるため、メイン射出装置がスクリュ式射出装置である場合には、同様の問題が生じるおそれがある。
【0007】
そして、このように、サーボモータのエンコーダ線の、制御装置との接続が解除された場合には、その都度、スクリュの基準となる位置を設定する必要があるが、通常、メイン射出装置においては、サーボモータのエンコーダ線の、制御装置との接続を解除する頻度が少ないため、このようなスクリュの位置設定をユーザが行うことは稀である。必要があれば、射出成形機メーカの作業員が現場を訪れ、設定作業を行うことが多い。このような従来の運用は、後付け用のスクリュ式射出装置においては、これを頻繁に着脱するような生産計画を立て難く、また、複数台の射出成形機を所有するユーザにおいては、スクリュの定期点検や定期交換を計画する際の障害になるため、ユーザ側における生産計画の自由度が制限されるおそれがあるという問題がある。このため、このような問題を解決するために、ユーザ側において実行可能な程度に簡単で、かつ、確実に、制御上の基準となるスクリュの位置を設定することが可能な方法が望まれている。
【0008】
この点に関し、特許文献1の方法では、比較的簡単にスクリュの基準となる位置を設定することが可能であるものの、スクリュの先端や加熱バレルの先端側の内壁に樹脂材料が付着している状態でスクリュの基準となる位置を設定すると、樹脂材料の付着位置や付着量が設定の都度一定ではなく、本来の接触箇所に樹脂材料を噛み込んで、正確な位置の設定ができない虞がある。このため、特許文献1の方法では、スクリュの基準となる位置の設定の都度、加熱バレルの先端の射出ノズル等を取り外し、加熱バレルの先端を開放した状態での、スクリュの先端及び加熱バレルの先端側の内壁の念入りな清掃作業が必要となる。このため、特許文献1の方法は、上述した問題を解決する方法としては不十分である。
【0009】
また、特許文献1の方法において、上記清掃作業を行わずに、スクリュの基準となる位置の設定の都度、新たな樹脂材料を供給し、該樹脂材料と共に残留樹脂を射出ノズルから金型内又はトレイ等に排出(パージ)させる方法も挙げられる。しかしながら、このようなパージは、スクリュの基準となる位置が特定されていなければ実行することができず、この方法を採る場合においても、上述した問題を解決する方法としては不十分である。
【0010】
さらに、特許文献1の方法において、加熱バレルをヒートアップさせ、残留樹脂を可塑化(溶融)させた後に、スクリュ100の先端102を加熱バレル110の先端側の内壁112に接触させ、少量の残留樹脂を射出ノズルから強制的に押し出す方法も挙げられる。しかしながら、このようなパージは、押し出される残留樹脂の量が少量であるため、金型内の樹脂流路内に付着したり、金型内の可動部の摺動隙間や凹部等に入り込んだりするおそれがあり、金型の不具合や不良品の要因になるという問題がある。また、射出ノズルを金型の樹脂注入口から離脱可能なノズルタッチ機構を備える射出装置であっても、例えば特許文献2のような後付け用のスクリュ式射出装置においては、様々な姿勢や位置に配置されるため、パージされた樹脂を受けるためのトレイ等の仮置きや回収等に非常に手間がかかるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、残留樹脂が存在する場合であっても制御上の基準となるスクリュの位置を簡単かつ確実に設定することが可能なスクリュ位置設定方法及びスクリュ式射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るスクリュ位置設定方法は、スクリュと、該スクリュを軸方向に沿って移動させるためのボールねじ機構と、該ボールねじ機構を駆動するためのサーボモータと、前記スクリュと共に移動可能な可動側停止部材と、前記スクリュが機械後退限位置に到達した際に前記可動側停止部材が接触するよう設けられた固定側停止部材とを備えるスクリュ式射出装置におけるスクリュ位置設定方法であって、前記スクリュを設定移動速度で後退移動させて、前記可動側停止部材が前記固定側停止部材に接触した位置を前記スクリュの機械後退限位置として設定する機械後退限位置設定工程と、前記スクリュを前記機械後退限位置から設定オフセット量前進移動させた位置を前記スクリュの制御後退限位置として設定する制御後退限位置設定工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るスクリュ位置設定方法において、前記機械後退限位置設定工程における前記可動側停止部材と前記固定側停止部材との接触は、前記スクリュの設定移動トルクリミットを用いた条件、及び、該可動側停止部材と該固定側停止部材との接触を検知可能な接触検知手段による検知結果を用いた条件の一方又は双方に基づいて行われても良い。
【0014】
この場合において、前記スクリュの設定移動トルクリミットを用いた条件は、前記スクリュの実移動トルクが前記設定移動トルクリミットに到達することを含んでいても良い。
【0015】
また、本発明に係るスクリュ位置設定方法において、前記機械後退限位置設定工程及び前記制御後退限位置設定工程は、前記スクリュ式射出装置の制御部により自動で実行制御されても良い。
【0016】
本発明に係るスクリュ位置設定方法は、前記機械後退限位置設定工程及び前記制御後退限位置設定工程の少なくとも一方において、前記スクリュの実移動トルクを所定の異常判断トルクと比較することで、前記スクリュの移動状況を監視しても良い。
【0017】
また、本発明に係るスクリュ位置設定方法は、前記制御後退限位置設定工程において、前記スクリュの実移動時間を、前記スクリュの設定移動速度と前記設定オフセット量とから算出される設定移動時間と比較することで、前記スクリュの移動状況を監視しても良い。
【0018】
さらに、本発明に係るスクリュ位置設定方法は、前記制御後退限位置設定工程において設定した前記制御後退限位置を前記スクリュの原点として設定しても良い。
【0019】
また、本発明に係るスクリュ式射出装置は、スクリュと、スクリュを軸方向に沿って移動させるためのボールねじ機構と、該ボールねじ機構を駆動するためのサーボモータと、前記スクリュと共に移動可能な可動側停止部材と、前記スクリュが機械前進限位置に到達した際に前記可動側停止部材が接触するよう設けられた固定側停止部材とを備えるスクリュ式射出装置であって、前記スクリュを設定移動速度で後退移動させて、前記可動側停止部材が前記固定側停止部材に接触した位置を前記スクリュの機械後退限位置として設定する機械後退限位置設定制御と、前記スクリュを前記機械後退限位置から設定オフセット量前進移動させた位置を前記スクリュの制御後退限位置として設定する制御後退限位置設定制御とを実行可能な制御部を更に備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るスクリュ式射出装置は、固定フレームと、前記スクリュを回転可能な状態で支持し、前記ボールねじ機構によって前記固定フレームに対して進退可能に構成された可動フレームとを備える2プレート式射出装置であり、前記固定側停止部材は、前記可動フレームを境とした前記固定フレームとは反対側に、該固定フレームに対して相対移動不能に設けられており、前記可動側停止部材は、前記可動フレーム側に設けられていても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、残留樹脂が存在する場合であっても制御上の基準となるスクリュの位置を簡単かつ確実に設定することが可能なスクリュ位置設定方法及びスクリュ式射出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る射出成形機の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】本実施形態に係るスクリュ式射出装置の構成を概略的に示す一部切欠き断面図である。
【
図3】スクリュが機械後退限位置に位置する状態を示す一部切欠き断面図である。
【
図4】スクリュが制御後退限位置に位置する状態を示す一部切欠き断面図である。
【
図5】本実施形態に係るスクリュ位置設定方法におけるスクリュの移動状況を示す線図である。
【
図6】本実施形態に係る機械後退限位置設定工程を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る制御後退限位置設定工程及び制御前進限位置設定工程を示すフローチャートである。
【
図8】特許文献1のスクリュ位置設定方法を示す図であり、
図8(a)は、スクリュを前進させている状態を示す図であり、
図8(b)は、スクリュの先端を加熱バレルの先端側の内壁に接触させた状態を示す図であり、
図8(c)は、スクリュを所定距離後退させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0024】
[スクリュ式射出装置]
まず、本実施形態に係るスクリュ式射出装置について、
図1及び
図2を用いて説明する。なお、以下の説明では、本実施形態に係るスクリュ式射出装置30として、メイン射出装置3を備える射出成形機2に適宜の支持部材20を用いて後付けすることが可能な小型のサブ射出装置を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0025】
射出成形機2は、例えば、
図1に示すように、主材料用のメイン射出装置3と、ベース11に固設された固定盤4及びエンドプラテン8と、固定盤4及びエンドプラテン8の間において固定盤4に対して進退可能に設けられた可動盤5と、固定盤4に取り付けられた固定金型6と、可動盤5に取り付けられた可動金型7と、固定盤4、可動盤5及びエンドプラテン8の四隅を貫通して設けられた4本のタイバー9と、可動盤5及びエンドプラテン8の間に設けられ、可動盤5を固定盤4に対して進退させる型締機構10とを備えている。なお、射出成形機2は、
図1に示す構成に限定されず、種々の公知の射出成形機を採用することが可能である。
【0026】
本実施形態に係るスクリュ式射出装置30は、
図2に示すように、固定フレーム32と可動フレーム33とを備える2プレート方式のインラインスクリュ式射出装置(2プレート式射出装置)であり、メイン射出装置3よりも小型に構成されている。
【0027】
具体的には、スクリュ式射出装置30は、ハウジング31と、ハウジング31に固設された固定フレーム32と、固定フレーム32に対して進退可能に設けられた可動フレーム33と、可動フレーム33を固定フレーム32に対して進退させる可動フレーム駆動機構34と、樹脂材料を可塑化させるスクリュ35aを有するシリンダアッセンブリ35と、スクリュ35aを回転させる可塑化スクリュ駆動機構36と、スクリュ35aと共に移動可能な可動側停止部材39と、スクリュ35aが後述する機械後退限位置に到達した際に可動側停止部材39が接触するよう設けられた固定側停止部材38と、可動フレーム駆動機構34及び可塑化スクリュ駆動機構36を制御する制御部(図示せず)とを備えている。
【0028】
ハウジング31は、シリンダアッセンブリ35の先端部が突出した状態で上記各構成を収容するよう構成されている。本実施形態において、ハウジング31は、シリンダアッセンブリ35の先端部(射出ノズル)が固定金型6又は可動金型7の樹脂注入口(図示せず)に離脱不能となるよう、支持部材20に対して相対移動不能に固定されたビルトインタイプである。ただし、これに限定されず、ハウジング31は、シリンダアッセンブリ35の先端部(射出ノズル)が固定金型6又は可動金型7の樹脂注入口(図示せず)に対して離脱可能となるよう、支持部材20に対して相対移動可能な構成(ノズルタッチ機構を有する構成)であっても良い。
【0029】
可動フレーム駆動機構34は、ボールねじナット34b及びボールねじ軸34dからなる一対のボールねじ機構と、一対のボールねじ機構を駆動するための射出用サーボモータ34aと、射出用サーボモータ34aの出力軸及び各ボールねじ軸34dに取り付けられた複数の射出プーリ34eと、複数の射出プーリ34eに掛け渡されたプーリベルト34fとを備えている。
【0030】
ボールねじ機構は、後述する加熱バレル35c内において、スクリュ35aを軸方向に沿って移動させるよう構成されている。ボールねじナット34bは、可動フレーム33に埋設されており、ボールねじ軸34dは、一端部がベアリング34cを介して固定フレーム32に連結され、他端部がボールねじナット34bに螺合されている。射出用サーボモータ34aは、固定フレーム32の前面側(後述する加熱バレル35c側)に設けられている。なお、
図2では、図中右側のボールねじナット34b、ベアリング34c及び射出プーリ34eについては図示を省略している。
【0031】
射出用サーボモータ34aには、スクリュ位置検出手段として機能する射出用エンコーダ(図示せず)が設けられている。射出用エンコーダは、射出用サーボモータ34aの出力軸の回転変位(角度/アナログ量)を電気的なパルス信号(デジタル量)に変換する装置であり、該パルス信号を制御部に出力するよう構成されている。
【0032】
以上の構成を有する可動フレーム駆動機構34は、射出用サーボモータ34aの回転力をプーリベルト34f及び複数の射出プーリ34eを介して一対のボールねじ軸34dに伝達させ、一対のボールねじ軸34dを正方向又は逆方向に回転させることにより、可動フレーム33及びこれに連結されるスクリュ35aを固定フレーム32に対して進退させるよう構成されている。
【0033】
シリンダアッセンブリ35は、スクリュ35aと、該スクリュ35aを収容する筒状の加熱バレル35cとを備えている。加熱バレル35cは、先端部がハウジング31の外側に延出するよう固定フレーム32に固定されている。スクリュ35aは、先端部側の所定領域にフライト35bが設けられ、基端部がベアリング35dを介して可動フレーム33に連結されている。加熱バレル35cは、先端部に射出ノズルを有しており、図示しないホッパ(材料供給口)を介してペレット状の樹脂材料を投入可能に構成されている。また、加熱バレル35cは、外周に配置された加熱手段(図示せず)によって加熱されるよう構成されており、スクリュ35aのフライト35bが設けられた所定領域が加熱バレル35c内に位置するよう配置されている。また、スクリュ35aの先端部には、可塑化した溶融樹脂を加熱バレル35cの射出ノズルから射出する際の逆流を防止するためのチェックリング35eが設けられている。なお、シリンダアッセンブリ35は、
図2に示す構成に限定されず、種々の公知の構成を採用することが可能である。
【0034】
可塑化スクリュ駆動機構36は、可動フレーム33に設けられた可塑化用サーボモータ36aと、可塑化用サーボモータ36aの出力軸及びスクリュ35aに取り付けられた複数の可塑化プーリ36bと、複数の可塑化プーリ36bに掛け渡されたプーリベルト36cとを備えている。この可塑化スクリュ駆動機構36は、可塑化用サーボモータ36aの回転力をプーリベルト36c及び複数の可塑化プーリ36bを介してスクリュ35aに伝達させることにより、スクリュ35aを回転させるよう構成されている。なお、可塑化スクリュ駆動機構36は、
図2に示す構成に限定されず、種々の公知の構成を採用することが可能である。
【0035】
固定側停止部材38及び可動側停止部材39は、所定の強度を有するブロック部材、例えば、ボールねじ軸34dが挿通可能な貫通孔が形成された円筒状部材である。固定側停止部材38は、各ボールねじ軸34dと同軸となるように、該ボールねじ軸34dの後端側(すなわち、可動フレーム33を境とした固定フレーム32とは反対側)に一対固設されている。具体的には、固定側停止部材38は、スクリュ式射出装置30の最大計量ストローク時の後退位置(仕様上のスクリュ35aの限界後退位置)よりも更に後退した位置、かつ、可動側停止部材39が固定側停止部材38に接触するまで可動フレーム33及びこれに連結されるスクリュ35aを後退させた際に、各構成部材間において意図しない機械的な干渉や不具合が生じない位置において、固定フレーム32に対して相対移動不能に、例えば、ハウジング31に設けられている。可動側停止部材39は、各ボールねじ軸34dと同軸となるように、可動フレーム33に一対固設されている。固定側停止部材38及び可動側停止部材39の少なくとも一方には、これら両部材38,39の接触を検知可能な接触検知手段(図示せず)が設けられている。このような接触検知手段としては、例えば近接センサが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0036】
また、可動側停止部材39は、先に説明したように、各ボールねじ軸34dと同軸となるように、可動フレーム33に配置させることが好ましい。しかしながら、スペースの制約等でそれが困難な場合は、各ボールねじ軸34dの回転軸のできるだけ近傍に配置させてもよい。その場合、固定側停止部材38も、可動側停止部材39の位置に対応させて、ハウジング31に配置されればよい。
【0037】
制御部は、例えば、CPU、各種制御プログラム等を格納するROM(不揮発性記憶媒体)、演算結果等を格納する読み書き可能なRAM(揮発性記憶媒体)、ハードディスク等の記憶部及びタイマ等を備えるコンピュータであり、ROM等に格納された制御プログラムをCPUで実行させることにより、可動フレーム駆動機構34及び可塑化スクリュ駆動機構36等に関する各種処理を実行するよう構成されている。
【0038】
制御部は、後述する方法により設定されたスクリュ35aの位置(制御後退限位置)と、射出用エンコーダから取得したパルス信号(射出用サーボモータ34aの回転角度や回転数)と、予め設定されたボールねじ軸34dのリード情報(ボールねじ軸34dの1回転あたりのボールねじナット34bの軸方向の移動量)とに基づいて、スクリュ35aの現在位置を検出可能に構成されている。これにより、制御部は、所定の制御プログラムに基づいて射出用サーボモータ34aを制御することで、スクリュ35aの進退方向の移動に関する各種制御を実行するよう構成されている。
【0039】
また、制御部は、射出用サーボモータ34aの負荷電流を検出可能に構成されており、この検出した負荷電流に基づいて、スクリュ35aの実移動トルク(回転トルク)を算出可能に構成されている。なお、制御部により算出する実移動トルクは、瞬間的なトルクであるとしても良いし、所定時間あたりの平均トルクであるとしても良い。一方、制御部は、スクリュ35aの実移動トルクの上限値(移動トルクリミット)を予め設定することにより、射出用サーボモータ34aの回転速度制御下においても、任意のタイミング及び動作工程において、スクリュ35aの実移動トルクがその上限値以上に上昇しないように抑制することが可能である。
【0040】
以上の構成を備えるスクリュ式射出装置30は、後述する制御前進限位置にスクリュ35aを位置させた状態において、可塑化スクリュ駆動機構36によってスクリュ35aを回転させることで、加熱バレル35cの図示しないホッパから投入された樹脂材料をスクリュ35aの先端側に向けて搬送し、この搬送過程において、加熱バレル35cの外周に配置された加熱ヒータ(図示せず)による加熱及びスクリュ35aの回転によるせん断熱によって樹脂材料を可塑化(溶融)させるよう構成されている(可塑化制御)。また、スクリュ式射出装置30は、可塑化制御(スクリュ35aの回転)と並行して、スクリュ35aの先端部と加熱バレル35cの先端側の内壁との間の空間(貯留部)に貯留される樹脂量の増加に伴うスクリュ35aの後退を、所定の後退抵抗力(背圧)を付与させた状態で許容させ、スクリュ35aが所定の計量完了位置まで後退した際(すなわち、貯留部に1回の射出充填に必要な樹脂量が貯留された際)に、スクリュ35aの回転及び移動を停止させるよう構成されている(計量制御)。さらに、スクリュ式射出装置30は、計量制御後に、可動フレーム駆動機構34によってスクリュ35aを所定の射出速度で前進させると共に(射出速度制御)、金型キャビティ内が樹脂材料で満たされたタイミング又は位置(VP切換点)でスクリュ35aの前進を圧力制御に切り替え、所定の射出圧力で制御前進限位置までのスクリュ35aの前進動作を維持させるよう構成されている(射出圧力制御及び保圧制御)。なお、1成形サイクルにおいて実行されるこれら可塑化制御、計量制御、射出速度制御、射出圧力制御及び保圧制御は、いずれも公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0041】
また、本実施形態に係るスクリュ式射出装置30は、可塑化制御、計量制御、射出速度制御、射出圧力制御及び保圧制御を実行する上で必要となるスクリュ35aの、制御上の基準となる位置を自動又は手動で設定可能に構成されている。すなわち、スクリュ式射出装置30は、タッチパネル等の操作入力手段(図示せず)を介して入力された各種情報に基づいて自動でスクリュ35aの、制御上の基準となる位置を設定する処理を実行するか、又は、操作入力手段を介して入力された操作者の操作に基づいて同処理を実行するよう構成されている。
【0042】
具体的には、スクリュ式射出装置30の制御部は、
図3に示すように、まず、任意の位置からスクリュ35aを低速(設定移動速度)で後退移動させて、可動側停止部材39が固定側停止部材38に接触した位置をスクリュ35aの機械後退限位置として設定するよう構成されている(機械後退限位置設定制御)。ここで、固定側停止部材38と可動側停止部材39との接触は、スクリュ35aの設定移動トルクリミットに基づいて検出しても良いし、接触検知手段による検知によって検出しても良い。また、これらスクリュ35aの設定移動トルクリミットと接触検知手段による検知との双方の条件を満たした際に、固定側停止部材38と可動側停止部材39とが接触したと判定しても良い。
【0043】
ここで、スクリュ35aの設定移動トルクリミットに基づいて判定する方法としては、例えば、予め設定した設定移動トルクリミットを機能させた状態で、スクリュ35aの実移動トルクをリアルタイムで監視し、可動側停止部材39が固定側停止部材38に当接することにより、実移動トルクが設定移動トルクリミットに到達した際に、固定側停止部材38と可動側停止部材39とが接触したと判定する方法や、実移動トルクが設定移動トルクリミットに到達してから更に所定の設定時間を経過した際に、固定側停止部材38と可動側停止部材39とが接触したと判定する方法等が挙げられる。
【0044】
なお、本明細書において、機械後退限位置とは、スクリュ35aの機械上の限界後退位置をいい、より具体的には、スクリュ式射出装置30の最大計量ストローク時の後退位置(仕様上のスクリュ35aの限界後退位置)よりも更に後退した位置、かつ、可動側停止部材39が固定側停止部材38に接触するまで可動フレーム33及びこれに連結されるスクリュ35aを後退させた際に、各構成部材間において意図しない機械的な干渉や不具合が生じない位置をいう。
【0045】
ここで、スクリュ35aを低速(設定移動速度)で後退移動させるのは、可動側停止部材39を固定側停止部材38に接触させる、所謂、当て止めを行うため、両部材の接触時の衝撃を抑制するためである。また、先に説明したように、サーボモータのエンコーダのエンコーダ線の接続を解除すると、接続復旧後に、制御装置や制御ユニットが、実際のサーボモータの回転軸に係るエンコーダから発信される位置情報と、制御装置(制御ユニット)側で記憶している以前のエンコーダの絶対位置との整合性が確認できないため、制御装置(制御ユニット)側が接続復旧後の、加熱バレル35c内におけるスクリュ35aの軸方向の位置を認識できない状態で、スクリュ35aを後退させる必要がある。そのため、スクリュ35aを後退移動させる際の設定移動速度は、できるだけ低速であることが好ましい。
【0046】
また、制御部は、
図4に示すように、この機械後退限位置からスクリュ35aを所定の設定オフセット量L´だけ低速で前進移動させた後、この位置で停止させ、この停止位置をスクリュ35aの制御後退限位置として設定するよう構成されている(制御後退限位置設定制御)。なお、この制御後退限位置は、スクリュ式射出装置30の最大計量ストローク時の後退位置(仕様上のスクリュ35aの限界後退位置)のことをいい、計量制御時等において固定側停止部材38や可動側停止部材39等が衝突して破損しないよう、機械後退限位置よりも前進した位置に設定される。
【0047】
設定オフセット量L´は、この制御後退限位置からスクリュ35aを最大計量ストローク分前進させた際に、スクリュ35aの先端部と加熱バレル35cの先端側の内壁とが接触しない範囲において適宜設定することができる。具体的には、設定オフセット量L´は、制御後退限位置からスクリュ35aを最大計量ストローク分前進させた際に、スクリュ35aの先端部と加熱バレル35cの先端側の内壁との間の空間に入り込んだ可塑化樹脂が、成形品質の低下等を引き起こさない程度に小さい距離に設定されることが好ましい。このような観点から、設定オフセット量L´は、例えば2mm程度に設定することができる。
【0048】
さらに、制御部は、この制御後退限位置からスクリュ35aを所定の計量ストローク量だけ低速で前進移動させた後、この位置で停止させ、この停止位置をスクリュ35aの制御前進限位置として設定するよう構成されている(制御前進限位置設定制御)。なお、この制御前進限位置は、スクリュ35aの制御上の限界前進位置のことをいい、本実施形態においては、成形サイクルにおけるスクリュ35aの開始位置(可塑化制御の開始時におけるスクリュ35aの位置)及び終了位置(保圧制御の終了時におけるスクリュ35aの位置)であるものとする。
【0049】
そのため、制御前進限位置設定制御は、制御後退限位置設定制御が完了した後、スクリュ35aを所定の計量ストローク量だけ低速で前進移動させても、先に説明したように、加熱バレル35c内の残留樹脂が射出ノズルから排出されて金型外へ排出(パージ)されても、あるいは、金型内の樹脂流路内に排出されても問題がない状態になったことが確認されてから行われる。
【0050】
本実施形態において、制御部は、制御後退限位置においてスクリュ35aの位置情報を初期化(すなわち、射出用エンコーダのゼロ点調整を実行)し、該制御後退限位置をスクリュ35aの、制御上の基準となる位置(原点)として設定するよう構成されている。ただし、これに限定されず、制御上の基準となるスクリュ35aの位置(原点/射出用エンコーダのゼロ点)は任意に設定することが可能であり、例えば機械後退限位置や制御前進限位置を原点として設定することも可能である。
【0051】
また、制御部は、機械後退限位置設定制御、制御後退限位置設定制御及び制御前進限位置設定制御において、スクリュ35aの実移動トルクを予め設定された任意の異常判断トルク(例えば、設定トルク+5%程度)とリアルタイムで比較することで、スクリュ35aの移動状況を監視し、異常を検知するよう構成されている。また、制御部は、スクリュ35aの移動について異常を検知した場合には、スクリュ35aの移動を停止し、例えばエラーメッセージの表示や警報等の種々の方法により、異常を報知するよう構成されている。なお、制御部により比較する実移動トルク及び異常判断トルクは、瞬間的なトルクであるとしても良いし、所定時間あたりの平均トルクであるとしても良い。
【0052】
[スクリュ位置設定方法]
次に、本実施形態に係るスクリュ位置設定方法について、
図5~
図7を用いて説明する。本実施形態に係るスクリュ位置設定方法は、スクリュ式射出装置30を、金型や射出成形機2の固定盤4又は可動盤5に取り付けた後、取り付けを行ったメーカ側において実行することも可能であるし、ユーザ側において任意のタイミングで実行することも可能である。また、本実施形態に係るスクリュ位置設定方法は、シリンダアッセンブリ35(加熱バレル35c)内に残留樹脂が存在しない状態(パージした後)はもちろん、残留樹脂が存在する状態においても問題なく実行することが可能である。なお、
図5は、機械後退限位置設定工程、制御後退限位置設定工程及び制御前進限位置設定工程におけるスクリュ35aの移動状況を示す線図であり、時間を縦軸、距離を横軸として図示している。
図6及び
図7は、それぞれ、機械後退限位置設定工程を示すフローチャート、並びに、制御後退限位置設定工程及び制御前進限位置設定工程を示すフローチャートである。
【0053】
[機械後退限位置設定工程]
本実施形態に係るスクリュ位置設定方法では、まず、機械後退限位置設定工程が実行される。機械後退限位置設定工程は、射出用サーボモータ34aを逆回転させることでスクリュ35aを設定移動速度で後退移動させて、可動側停止部材39が固定側停止部材38に接触した位置をスクリュ35aの機械後退限位置として設定する工程である。
【0054】
具体的には、機械後退限位置設定工程では、
図5及び
図6に示すように、まず、任意の位置からスクリュ35aを低速(設定移動速度)で後退移動させる(S1)。また、スクリュ35aを後退移動させている間、設定移動トルクリミットを機能させた状態で、スクリュ35aの実移動トルクをリアルタイムで監視すると共に、接触検知手段を機能させる。そして、可動側停止部材39が固定側停止部材38に当接することにより、実移動トルクが設定移動トルクリミットに到達した際、及び/又は、接触検知手段により接触が検知された際に、固定側停止部材38と可動側停止部材39とが接触したと判定する(S2)。そして、固定側停止部材38と可動側停止部材39とが接触したと判定した際に、射出用サーボモータ34aを停止させ(S3)、この停止位置をスクリュ35aの機械後退限位置として設定する(S4)。
【0055】
また、機械後退限位置設定工程では、上記後退移動と並行して、スクリュ35aを後退移動させている間、スクリュ35aの実移動トルクをリアルタイムで算出しながら、算出した実移動トルクが所定の異常判断トルクを超えるか否かをリアルタイムで判定する(S5)。そして、この判定において実移動トルクが所定の異常判断トルクを超えると判定された場合には、射出用サーボモータ34aを停止させて(S6)、エラーメッセージの表示や警報等の種々の方法により異常を報知する(S7)。なお、この異常判定により異常が検知された場合には、制御後退限位置確認工程に移行することなく、スクリュ位置設定を終了する。
【0056】
なお、上記後退移動時の速度、上記移動設定トルクリミットや上記異常判断トルク等は、予め設定され、機械後退限位置設定工程が自動で実行制御されることが好ましいが、作業者の手動操作により実行される場合は、作業者が都度これらを入力するように構成されても良い。
【0057】
[制御後退限位置設定工程]
本実施形態に係るスクリュ位置設定方法では、機械後退限位置設定工程が完了した後に、制御後退限位置設定工程が実行される。制御後退限位置設定工程は、スクリュ35aを機械後退限位置から設定オフセット量L´だけ前進移動させた位置をスクリュ35aの制御後退限位置として設定する工程である。
【0058】
具体的には、制御後退限位置設定工程では、
図5及び
図7に示すように、まず、スクリュ35aが機械後退限位置において停止している状態において射出用サーボモータ34aを正回転させることで、スクリュ35aを低速で前進移動させる(S8)。また、スクリュ35aを前進移動させている間、スクリュ35aの移動量を計測し、スクリュ35aの移動量が所定の設定オフセット量L´に到達したか否かを判定する(S9)。そして、スクリュ35aの移動量が所定の設定オフセット量L´に到達したと判定した際に、射出用サーボモータ34aを停止させ(S10)、この停止位置をスクリュ35aの制御後退限位置として設定する(S11)。
【0059】
また、制御後退限位置設定工程では、上記前進移動と並行して、スクリュ35aを前進移動させている間、スクリュ35aの実移動トルクをリアルタイムで算出しながら、算出した実移動トルクが所定の異常判断トルクを超えるか否かをリアルタイムで判定する(S16)。そして、この判定において実移動トルクが所定の異常判断トルクを超えると判定された場合には、射出用サーボモータ34aを停止させて(S17)、エラーメッセージの表示や警報等の種々の方法により異常を報知する(S18)。なお、この異常判定により異常が検知された場合には、制御前進限位置確認工程に移行することなく、スクリュ位置設定を終了する。
【0060】
なお、制御後退限位置設定工程においても、射出用サーボモータ34aに移動トルクリミットが設定されることが好ましい。また、上記前進移動時の速度、上記移動設定トルクリミット、上記設定オフセット量L´や上記異常判断トルク等は、予め設定され、制御後退限位置設定工程が自動で実行制御されることが好ましいが、作業者の手動操作により実行される場合は、作業者が都度これらを入力するように構成されても良い。
【0061】
[制御前進限位置設定工程]
本実施形態に係るスクリュ位置設定方法では、制御後退限位置設定工程が完了した後に、制御前進限位置設定工程が実行される。制御前進限位置設定工程は、スクリュ35aを制御後退限位置から所定の計量ストローク量だけ前進移動させた位置をスクリュ35aの制御前進限位置として設定する工程である。なお、先に説明したように、制御前進限位置設定制御が行われる前提は、制御後退限位置設定制御が完了後、且つ、加熱バレル35c内の残留樹脂が射出ノズルから排出されて金型外へ排出(パージ)されても、あるいは、金型内の樹脂流路内に排出されても問題がない状態になったことが確認されることである。
【0062】
具体的には、制御前進限位置設定工程では、
図5及び
図7に示すように、まず、スクリュ35aが制御後退限位置において停止している状態において射出用サーボモータ34aを正回転させることで、スクリュ35aを低速で前進移動させる(S12)。また、スクリュ35aを前進移動させている間、スクリュ35aの移動量を計測し、スクリュ35aの移動量が所定の計量ストローク量に到達したか否かを判定する(S13)。そして、スクリュ35aの移動量が所定の計量ストローク量に到達したと判定した際に、射出用サーボモータ34aを停止させ(S14)、この停止位置をスクリュ35aの制御前進限位置として設定する(S15)。
【0063】
この制御前進限位置設定工程においても、制御後退限位置設定工程と同様に、スクリュ35aの実移動トルクの異常判定処理(S16~S18)を実行する。また、制御前進限位置設定工程においても、射出用サーボモータ34aに移動トルクリミットが設定されることが好ましい。さらに、上記前進移動時の速度、上記移動設定トルクリミットや上記異常判断トルク等は、予め設定され、制御後退限位置設定工程が自動で実行制御されることが好ましいが、作業者の手動操作により実行される場合は、作業者が都度これらを入力するように構成されても良い。
【0064】
[本実施形態に係るスクリュ位置設定方法の利点]
以上説明したとおり、本実施形態に係るスクリュ位置設定方法は、スクリュ35aを設定移動速度で後退移動させて、可動側停止部材39が固定側停止部材38に接触した位置をスクリュ35aの機械後退限位置として設定する機械後退限位置設定工程と、スクリュ35aを機械後退限位置から設定オフセット量前進移動させた位置をスクリュ35aの制御後退限位置として設定する制御後退限位置設定工程とを備えている。
【0065】
このように、本実施形態に係るスクリュ位置設定方法は、機械的ストッパ(固定側停止部材38及び可動側停止部材39)によって当て止めをしてからスクリュ35aを規定量(設定オフセット量)だけ前進させて制御後退限位置を設定するものであるから、複雑な操作を行うことなく、スクリュ35aの位置設定を簡単に実行することが可能となると共に、準備時間を短縮することが可能となる。
【0066】
また、上記当て止めにおいて、スクリュ35aを前進移動させるのではなく、スクリュ35aを後退移動させるため、スクリュ35aの先端と加熱バレル35cの先端側の内壁との間に残留樹脂が存在する場合であっても、スクリュ35aの位置設定を正確に実施することが可能となる。
【0067】
さらに、スクリュ35aを機械的な前進限位置まで前進させずにスクリュ35aの位置設定が可能であるため、スクリュ35aの位置設定後、新たに樹脂材料を供給して固定金型6又は可動金型7に残留樹脂を押し出すことで、加熱バレル31c内の残留樹脂を加熱バレル31c外に容易に排出(パージ)することが可能となる。特に、このようなパージ方法によれば、新たな樹脂材料と共に残留樹脂をパージすることが可能となるため、少量の残留樹脂のみを強制的に押し出してパージする方法と比較して、金型内の摺動部や凹部に樹脂が残留しにくく、これに起因する動作不良や成形品の不良が発生しにくいという利点がある。このような利点は、特に射出ノズルを金型の樹脂注入口から離脱不能なビルトインタイプにおいて顕著である。また、射出ノズルを金型の樹脂注入口から離脱可能なノズルタッチ機構を備える射出装置においても、パージされた樹脂を受けるためのトレイ等の仮置きや回収等の手間を削減可能であるという利点がある。
【0068】
そして、本実施形態に係るスクリュ位置設定方法によれば、スクリュの位置設定を簡単かつ確実に実行することが可能となることにより、ユーザ側においてもスクリュの位置を設定することが可能となる。
【0069】
また、例えば後付け用のスクリュ式射出装置等、小型の射出装置においては、取り付け及び取り外しの頻度が高い。すなわち、メイン射出装置と比較すると使用されない状態が発生し、継続した稼働管理が難しい。これに対して、本実施形態に係るスクリュ位置設定方法によれば、運転開始前のスクリュ位置設定時にスクリュ35aの移動状況を監視し、異常を検知するよう構成されているため、成形開始前に、意図しないトラブルを未然に防ぎ、継続した稼働管理がなされるメイン射出装置と同等の運転信頼性を確保することが可能となる。
【0070】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0071】
上述した実施形態では、スクリュ35aが加熱バレル35cに収容されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、スクリュ式射出装置30が取り付けられる金型等にホットランナを設け、該ホットランナにスクリュ35aを直接収容させる構成としても良い。
【0072】
上述した実施形態では、サブ射出装置におけるスクリュ位置設定方法を例に挙げて説明したが、これに限定されず、本発明に係るスクリュ位置設定方法は、種々のスクリュ式射出装置について実施することが可能である。
【0073】
上述した実施形態では、機械後退限位置設定工程、制御後退限位置設定工程及び制御前進限位置設定工程が、スクリュ式射出装置の制御部により自動で実行制御されるものとして説明したが、これに限定されず、作業者が、工程毎に必要な入力や確認を行う手動操作により実行されても良い。
【0074】
上述した実施形態では、スクリュ35aの設定移動トルクリミットを用いた条件、及び、固定側停止部材38と可動側停止部材39との接触を検知可能な接触検知手段による検知結果を用いた条件の一方又は双方に基づいて、固定側停止部材38と可動側停止部材39との接触を検出するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、ロードセル等の圧力検知手段により固定側停止部材38と可動側停止部材39との接触を検知する構成等、種々の構成を採用することが可能である。
【0075】
上述した実施形態では、固定側停止部材38及び可動側停止部材39がそれぞれ一対のブロック部材であるものとして説明したが、これに限定されず、スクリュ35aが機械後退限位置に到達した際に互いに接触する構成であれば、種々の構成を採用することが可能である。また、固定側停止部材38及び可動側停止部材39は、他の構成要素と一体となった構成でも良い。さらに、固定側停止部材38及び可動側停止部材39の取付位置についても、種々の位置とすることが可能である。
【0076】
上述した実施形態では、機械後退限位置設定工程、制御後退限位置設定工程及び制御前進限位置設定工程のそれぞれにおいて、スクリュ35aの実移動トルクを所定の異常判断トルクと比較することで、スクリュ35aの移動状況を監視するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、実移動トルクに基づくスクリュ35aの移動状況の監視は、機械後退限位置設定工程、制御後退限位置設定工程及び制御前進限位置設定工程のいずれか1つ又は2つにおいてのみ行われるとしても良いし、機械後退限位置設定工程、制御後退限位置設定工程及び制御前進限位置設定工程のいずれにおいても行われないとしても良い。
【0077】
また、スクリュ35aの実移動トルクに基づいてスクリュ35aの移動状況を監視する制御に代えて、又はこれと共に、スクリュ35aの実移動時間に基づいてスクリュ35aの移動状況を監視する制御を実行する構成としても良い。この場合において、制御部は、制御後退限位置設定制御(制御後退限位置設定工程)においては、機械後退限位置から制御後退限位置に至るまでのスクリュ35aの実移動時間を計測し、この実移動時間を、スクリュ35aの設定移動速度と上記設定オフセット量L´(機械後退限位置から制御後退限位置までの距離)とから算出される設定移動時間と比較することで、スクリュ35aの移動状況を監視するよう構成されるとしても良い。また、制御部は、制御前進限位置設定制御(制御前進限位置設定工程)においては、制御後退限位置から制御前進限位置に至るまでのスクリュ35aの実移動時間を計測し、この実移動時間を、スクリュ35aの設定移動速度と上記所定の計量ストローク量(制御後退限位置から制御前進限位置までの距離)とから算出される設定移動時間と比較することで、スクリュ35aの移動状況を監視するよう構成されるとしても良い。さらに、制御部は、これらに代えて、又はこれらと共に、スクリュ35aの設定移動速度とその時点での距離とに基づいてリアルタイムにスクリュ35aの実移動時間を計測し、この実移動時間を、スクリュ35aの設定移動速度とその時点での距離とから算出される理論上の移動時間とリアルタイムで比較することで、スクリュ35aの移動状況をリアルタイムで監視するよう構成されるとしても良い。
【0078】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0079】
30 スクリュ式射出装置、32 固定フレーム、33 可動フレーム、34a 射出用サーボモータ(サーボモータ)、34b ボールねじナット(ボールねじ機構)、34d ボールねじ軸(ボールねじ機構)、35a スクリュ、38 固定側停止部材、39 可動側停止部材、L´ 設定オフセット量