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特許7567523車両のドアハンドル構造及びその組付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両のドアハンドル構造及びその組付け方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20241008BHJP
   E05B 79/06 20140101ALI20241008BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20241008BHJP
   E05B 81/06 20140101ALI20241008BHJP
   E05B 81/16 20140101ALI20241008BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
E05B85/16 D
E05B79/06 C
E05B79/22 A
E05B81/06
E05B81/16
B60J5/04 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021015643
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118863
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】倉本 英介
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0102773(US,A1)
【文献】特開2020-094455(JP,A)
【文献】特開2015-206259(JP,A)
【文献】特開2019-157424(JP,A)
【文献】特開2018-115544(JP,A)
【文献】特開2020-037846(JP,A)
【文献】特開2012-246669(JP,A)
【文献】特開平10-266643(JP,A)
【文献】実公昭57-004222(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルから出没可能なレバーを一端に固定し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、
上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、
上記レバーを収容して上記ドアパネルに固定されるブラケットと、を備え、
上記レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、
上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、
上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、
上記ドアパネルは上記レバーを収容する開口部と、当該開口部の縁部が折曲げ形成されたフランジ部と、を備え、
上記ブラケットは、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記フランジ部に上記開口部の外側から当接する当接部と、
上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第1締結部と、
上記レバーの上記回動支軸から遠ざかる他端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第2締結部と、を備え、
上記ドアパネルは上記第2締結部との締結位置を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向において調整する位置調整部を備えたことを特徴とする
車両のドアハンドル構造。
【請求項2】
ドアパネルから出没可能なレバーを一端に固定し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、
上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、
上記レバーを収容して上記ドアパネルに固定されるブラケットと、を備え、
上記レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、
上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、
上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、
上記ドアパネルは上記レバーを収容する開口部と、当該開口部の縁部が折曲げ形成されたフランジ部と、を備え、
上記ブラケットは、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記フランジ部に上記開口部の外側から当接する当接部と、
上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第1締結部と、
上記レバーの上記回動支軸から遠ざかる他端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第2締結部と、を備え、
上記ドアパネルは上記第2締結部との締結位置を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向において調整する位置調整部を備えた車両のドアハンドル構造の組付け方法において、
上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記フランジ部に上記開口部の外側から上記当接部を当接させる当接工程と、
上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記第1締結部を締結する第1締結部締結工程と、
上記当接部を上記フランジ部に当接させるように、上記位置調整部を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向の位置で調整する位置調整工程と、
上記位置調整部と上記第2締結部とを締結する第2締結部締結工程とを備えることを特徴とする
車両のドアハンドル構造の組付け方法。
【請求項3】
上記ドアパネルは、ドアアウタパネルと、該ドアアウタパネルのドア内側に位置するレインフォースメントとを備え、
上記開口部および上記フランジ部は上記ドアアウタパネルに形成されており、
上記ブラケットは上記レインフォースメントに固定されており、
上記位置調整部は上記レインフォースメントに切起こし形成された切起こし部にて構成された
請求項1に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項4】
上記ブラケットに設けられた当接部は上下方向に間隔を隔てて一対設けられた
請求項1または3に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項5】
上記切起こし部には上記第2締結部を締結する締結部材が配設される凹溝が形成される一方、
上記レインフォースメントには、上記締結部材を締結操作する孔部が形成された
請求項3に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項6】
上記当接部の上記開口部側には上記フランジ部の縁部と対向する段差が形成された
請求項1、3、4、5の何れか一項に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項7】
上記レインフォースメントは上記ブラケットを取付ける取付け開口部を有しており、
上記ブラケットの上記第1締結部は、当該ブラケットの一端において上記レインフォースメントに締結される取付け片部と、該取付け片部と協働して上記取付け開口部の口縁を挟持する爪部と、を備えた
請求項5に記載の車両のドアハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアハンドルレバーの格納時に、当該ドアハンドルレバーとドアアウタパネルとが面一になるような車両のドアハンドル構造及びその組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、ドアハンドルレバー(いわゆるレバー)をドアアウタパネルと同一面になるように格納するフラッシュサーフェイス(flush surface)構造の車両のドアハンドル構造が知られている。
【0003】
ハンドルユニットをドアパネルに組付ける際、製造の過程において部品に製作誤差が発生すると、ドアパネルとドアハンドルレバーとの間の隙がばらつき、見映えが悪化したり、ドアハンドルレバーとドアパネルとが接触するなど、レバー作動に不具合が生じる問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-94455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、ドアパネルとレバーとの間の隙を一定に確保し、レバーの突出時に該レバーとドアパネルとの接触を防止すると共に、見映えの向上を図ることができる車両のドアハンドル構造及びその組付け方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両のドアハンドル構造は、ドアパネルから出没可能なレバーを一端に固定し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、上記レバーを収容して上記ドアパネルに固定されるブラケットと、を備え、上記レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、上記ドアパネルは上記レバーを収容する開口部と、当該開口部の縁部が折曲げ形成されたフランジ部と、を備え、上記ブラケットは、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記フランジ部に上記開口部の外側から当接する当接部と、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第1締結部と、上記レバーの上記回動支軸から遠ざかる他端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第2締結部と、を備え、上記ドアパネルは上記第2締結部との締結位置を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向において調整する位置調整部を備えたものである。
【0007】
上述のドアパネルは、車体外板を構成するドアアウタパネルと、このドアアウタパネルの内側に位置するレインフォースメントとの両者で構成してもよい。
【0008】
上記構成によれば、ブラケットの当接部と、ドアパネルのフランジ部とが確実に当接されるように上述の第2締結部が位置調整部と締結される。このため、回動支軸の近傍においてレバーとドアパネルとの間の隙を一定に保つことができ、レバーの格納位置、把持位置、開放位置の何れの位置においても、レバーとドアパネルとの接触を防止すると共に、見映えの向上を図ることができる。
【0009】
特に、ドアパネルのフランジ部とレバーの上記一端側との間の隙は、レバーが車両外方へ突出する際、レバーがフランジ部に近づくように変位するが、回動支軸の近傍において、レバーとドアパネルとの間の隙を一定に保つことで、レバー回動時に当該レバーがドアパネルと干渉しない。
【0010】
この発明による車両のドアハンドル構造の組付け方法は、ドアパネルから出没可能なレバーを一端に固定し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、上記レバーを収容して上記ドアパネルに固定されるブラケットと、を備え、上記レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、上記ドアパネルは上記レバーを収容する開口部と、当該開口部の縁部が折曲げ形成されたフランジ部と、を備え、上記ブラケットは、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記フランジ部に上記開口部の外側から当接する当接部と、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第1締結部と、上記レバーの上記回動支軸から遠ざかる他端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第2締結部と、を備え、上記ドアパネルは上記第2締結部との締結位置を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向において調整する位置調整部を備えた車両のドアハンドル構造の組付け方法において、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記フランジ部に上記開口部の外側から上記当接部を当接させる当接工程と、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記第1締結部を締結する第1締結部締結工程と、上記当接部を上記フランジ部に当接させるように、上記位置調整部を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向の位置で調整する位置調整工程と、上記位置調整部と上記第2締結部とを締結する第2締結部締結工程とを備えるものである。
【0011】
上記構成によれば、当接工程で、レバーの回動支軸に近接する一端側において、フランジ部に開口部の外側から当接部を当接させる。また、第1締結部締結工程で、レバーの回動支軸に近接する一端側において、第1締結部を締結する。さらに、位置調整工程で、当接部をフランジ部に当接させるように、位置調整部を一端側と他端側とを結ぶ方向の位置で調整する。また、第2締結部締結工程で、位置調整部と第2締結部とを締結する。
【0012】
このように、ドアパネルのフランジ部と、ブラケットの当接部とが確実に当接されるので、レバーとドアパネルのフランジ部との間の隙を一定に保つことができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ドアパネルは、ドアアウタパネルと、該ドアアウタパネルのドア内側に位置するレインフォースメントとを備え、上記開口部および上記フランジ部は上記ドアアウタパネルに形成されており、上記ブラケットは上記レインフォースメントに固定されており、上記位置調整部は上記レインフォースメントに切起こし形成された切起こし部にて構成されたものである。
【0014】
切起こし部とは、一般に、屈曲起点となる一部を板材に連結した状態のままで、他部をプレス加工等による打抜きラインに沿って板材から分離し、打抜きと同時に他部を屈曲して切り起こす加工にて形成される部位を示す。
【0015】
上記構成によれば、位置調整部をレインフォースメントから切起こし形成した切起こし部により構成したので、当該切起こし部に所定の弾性力をもたせることができ、また切起こし部はレインフォースメントと一体であって、別部材によるものではないため、簡単な構造により位置調整部を形成することができる。
特に、上記切起こし部の端部はフリーで、一端方向、他端方向に変形可能であるから、充分な位置調整機能を確保することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記ブラケットに設けられた当接部は上下方向に間隔を隔てて一対設けられたものである。
上記構成によれば、一対の当接部間には間隔が設けられているので、ブラケットに対してヒンジアームおよびレバーを外方から差込んで組付ける際、レバーと当接部とが干渉しない。
【0017】
因に、フランジ部に対して開口部の外側から当接する当接部をブラケットに設ける場合、フランジ部に沿うU字状の当接部を設けることが考えられるが、この場合にはヒンジアームおよびレバーをブラケットの孔に差込んで外側から組付ける際、レバー端部がU字状の当接部と干渉して組付け困難となる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記切起こし部には上記第2締結部を締結する締結部材が配設される凹溝が形成される一方、上記レインフォースメントには、上記締結部材を締結操作する孔部が形成されたものである。
【0019】
上記構成によれば、凹溝に配設した締結部材でブラケットの第2締結部を切起こし部に締結する際、レインフォースメントのドア内側がラッチレインで覆われていても、上記孔部から締結部材を操作して、第2締結部の締結を行なうことができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記当接部の上記開口部側には上記フランジ部の縁部と対向する段差が形成されたものである。
上記構成によれば、レバーを把持位置または、それ以上外方へ回動した際の見映えの向上を図ることができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記レインフォースメントは上記ブラケットを取付ける取付け開口部を有しており、上記ブラケットの上記第1締結部は、当該ブラケットの一端において上記レインフォースメントに締結される取付け片部と、該取付け片部と協働して上記取付け開口部の口縁を挟持する爪部と、を備えたものである。
【0022】
上記構成によれば、取付け片部と爪部との間で、レインフォースメントの取付け開口部の口縁を挟持すると共に、第2締結部に対してサブアセンブリした締結部材を切起こし部の凹溝に配設すると、ブラケットをレインフォースメントに対して仮止めすることができる。この結果、ブラケットの組付け性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ドアパネルとレバーとの間の隙を一定に確保し、レバーの突出時に該レバーとドアパネルとの接触を防止すると共に、見映えの向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の車両のドアハンドル構造を備えた車両の側面図。
図2図1の要部拡大側面図。
図3】レインフォースメントの配置構造を示す内側面図。
図4】レバーの格納状態を示す図1のA-A線矢視断面図。
図5】レバーおよびヒンジアームの斜視図。
図6図5からレバーを取り除いた状態で示す斜視図。
図7】レバーを含むブラケットの外側面図。
図8】レバーのインナカバーとヒンジアームを示す外側面図。
図9】インナカバーの外側面図。
図10】駆動装置を示す平面図。
図11】レバーの把持位置を示す平面図。
図12】レバーの開放位置を示す平面図。
図13】スイッチ押圧位置を仮想線で示す平面図。
図14】車両のドアハンドル構造を、ドアアウタパネルを取外して示す外側面図。
図15図14からレバーおよびヒンジアームを取外した状態の外側面図。
図16図15の斜視図。
図17】レインフォースメントに対するブラケットの取付け構造を示す内側面図。
図18図17の分解斜視図。
図19】(a)は図14のB-B線に沿う要部の矢視断面図、(b)は図14のC-C線に沿う要部の矢視断面図。
図20図14のD-D線に沿う要部の矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ドアパネルとレバーとの間の隙を一定に確保し、レバーの突出時に該レバーとドアパネルとの接触を防止すると共に、見映えの向上を図るという目的を、ドアパネルから出没可能なレバーを一端に固定し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、上記レバーを収容して上記ドアパネルに固定されるブラケットと、を備え、上記レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、上記ドアパネルは上記レバーを収容する開口部と、当該開口部の縁部が折曲げ形成されたフランジ部と、を備え、上記ブラケットは、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記フランジ部に上記開口部の外側から当接する当接部と、上記レバーの上記回動支軸に近接する一端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第1締結部と、上記レバーの上記回動支軸から遠ざかる他端側において、上記ブラケットと上記ドアパネルとを締結する第2締結部と、を備え、上記ドアパネルは上記第2締結部との締結位置を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向において調整する位置調整部を備えるという構成にて実現した。
【実施例
【0026】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のドアハンドル構造及びその組付け方法を示し、図1は当該ドアハンドル構造を備えた車両の側面図、図2図1の要部拡大側面図、図3はレインフォースメントの配置構造を示す内側面図である。
【0027】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
また、本発明の車両のドアハンドル構造及びその組付け方法は、4ドアタイプの車両のフロントドア、リヤドアやリフトゲート等にも適用できるが、以下の実施例においては2ドアタイプの車両のドアハンドルに適用した構造について述べる。
【0028】
図1に示すように、車室前方部において上下方向に延びるヒンジピラー1と、車両下部において車両前後方向に延びるサイドシル2と、ヒンジピラー1の上端から後方かつ上方に向けて斜め方向に延びるフロントピラー3と、フロントピラー3の後端に連続して車両後方に延びるルーフサイドレール4と、ルーフサイドレール4とサイドシル2とを略上下方向に連結する後部ピラー5と、を備えている。
【0029】
上述のヒンジピラー1、サイドシル2、フロントピラー3、ルーフサイドレール4および後部ピラー5で囲繞されたドア開口部6を形成している。
上述のヒンジピラー1に上下一対のドアヒンジ7,7を介して開閉可能に取付けたサイドドア8により、上記ドア開口部6を開閉すべく構成している。
【0030】
図1図2に示すように、サイドドア8はドア本体9とドアウインド部材としてのドアウインドガラス10とを有しており、図2図3に示すように、ドア本体9はドアアウタパネル11と、図示しないドアインナパネルと、ドアアウタパネル11の車幅方向内側かつ後部側に設けられたレインフォースメント12と、を備えている。
この実施例では、上述のドアアウタパネル11と、レインフォースメント12と、でドアパネルを構成している。
【0031】
図3に示すように、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の後部上側には、後述するレバー20を収容する開口部13(レバー開口部)と、当該開口部13の縁部を全周にわたるバーリング加工により折曲げ形成したフランジ部14と、を備えている。
【0032】
また、図3に示すように、レインフォースメント12の上部および下部には上部開口12a、下部開口12bがそれぞれ形成されると共に、これら上下の各開口12a,12b間には、後述するブラケット50を取付けるための開口部12c(ブラケット開口部)が形成されている。
【0033】
図4はレバー20の格納状態を示す図1のA-A線矢視断面図、図5はレバー20およびヒンジアーム30の斜視図、図6図5からレバー20を取り除いた状態で示す斜視図、図7はレバー20を含むブラケット50の外側面図、図8はレバー20のインナカバー22とヒンジアーム30を示す外側面図、図9はインナカバー22の外側面図である。
【0034】
また、図10は駆動装置40を示す平面図、図11はレバー20の把持位置を示す平面図、図12はレバー20の開放位置を示す平面図、図13はスイッチ70の押圧位置を仮想線αで示す平面図である。
【0035】
図4に示すように、車両のドアハンドル構造は、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の開口部13から出没可能なレバー20(詳しくはドアハンドルレバー)と、該レバー20を有するスワンネック(swan-neck)構造のヒンジアーム30と、レバー20がドアアウタパネル11から突出するようにヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備えている。また、レバー20を収容しドアパネルとしてのレインフォースメント12に固定されるブラケット50を備えている。
【0036】
上述のレバー20は、図4図5に示すアウタカバー21と、図4図9に示すインナカバー22との周縁部を凹凸嵌合および接合固定したもので、該レバー20およびドアアウタパネル11の開口部13は側面視で車両前後方向に長い長円形状に形成されている。
【0037】
図9に示すように、上述のインナカバー22の前側には、組付け時にヒンジアーム30を挿通させる開口23(アーム開口)が形成されている。当該開口23の前部口縁には、図4図9に示す前側壁部24が形成されている。
【0038】
また、図9に示すように、インナカバー22の底壁22a中央には、当該インナカバー22の長手方向に延びるセンタリブ25が形成されている。また該センタリブ25の上下にはインナカバー22の長手方向に延びる上下のサイドリブ26,26が形成されている。さらに、これら上下の各サイドリブ26,26の後端を上下方向に連結する後側壁部27が設けられている。ここで、上述の各リブ25,26および後側壁部27はインナカバー22の底壁22aから外方に突出するものである。
【0039】
図5に示すように、上述のインナカバー22外側におけるヒンジアーム30が挿通する開口23(図9参照)の前部には、ブラケット50の対向壁(図示せず)と当接して前記レバー20の揺動時に支点となる舌片形状の突出部28が形成されている。
【0040】
また、図5に示すように、上述の開口23(図9参照)の車幅方向内側には、ヒンジアーム30を離間して囲繞する筒部29が形成されている。
上述のヒンジアーム30は、図4に示すように、一端(この実施例では後端)に上述のレバー20を有し、該レバー20がドアアウタパネル11から突出するように回動させる回動支軸としてのヒンジピン31を備えている。このヒンジピン31は上述のブラケット50に固定され上下方向に指向している。
【0041】
また、上述のヒンジアーム30は、図4に示すように、ヒンジピン31を枢支する枢支部32と、この枢支部32からスワンネック形状のネック部33を介して後方に延びるレバー支持部34と、枢支部32から上記ネック部33とは反対側の前方に延びる延出部35と、を一体的に備えている。上述のレバー支持部34は、アウタカバー21とインナカバー22とから成るレバー20の内部に配置されている。
【0042】
図4に示すように、ヒンジアーム30の延出部35には、駆動装置40をアセンブリするモータベース41が取付けられている。
また、図4に示すように、上述のヒンジピン31と同軸上には、クランクプレート60が設けられている。このクランクプレート60の後側かつ車幅方向外側には、レバー20およびヒンジアーム30が把持位置(図11参照)に回動した時、ヒンジアーム30のネック部33と当接係止される縦壁61が一体形成されている。
【0043】
さらに、上述のクランクプレート60の車幅方向内端部には、ドアラッチ(図示せず)を解除するレリーズワイヤ62が固定されている。このクランクプレート60はバネ力が大きいコイルスプリング(図示せず)により常時反レリーズ方向にバネ付勢されている。
【0044】
一方、上述のヒンジピン31にはトーションスプリング36が巻回されており、このトーションスプリング36の一端36aが図4に示すクランクプレート60に係止され、トーションスプリング36の他端36bが図5に示すように、ヒンジアーム30の延出部35に係止されている。これにより、該トーションスプリング36によりレバー20を常時格納方向にバネ付勢している。
このトーションスプリング36のバネ力は、クランクプレート60を反レリーズ方向に付勢するコイルスプリング(図示せず)に対して、小さく設定されている。
【0045】
図4図6に示すように、上述のレバー支持部34は、レバー20の当該レバー支持部34に対する揺動方向に抵抗を生じる付勢手段としての板バネ37を備えている。
すなわち、上述のレバー支持部34のアウタカバー21と対向する側に、板バネ37を係止する前後一対の係止凹部34a,34aを凹設形成し、これら一対の係止凹部34a,34a間に上記板バネ37を、車幅方向外方に突出して湾曲するように配置している。この板バネ37の車幅方向外端部は、上述のアウタカバー21に当接している。
【0046】
これにより、レバー20がレバー支持部34に対して揺動可能に構成されても、通常使用時においてレバー20が、がたつくことなく、レバー20の操作性を維持するように構成している。
【0047】
次に、図10を参照してヒンジアーム30の他端側(延出部35側参照)に動力を伝達する駆動装置40の構成について説明する。図4図11図12図13では便宜上、図示省略したが、この駆動装置40はヒンジピン31と同軸上に固定したセクタギヤG1を備えている。このセクタギヤG1はヒンジピン31に嵌合されると共に、上述のブラケット50に取付けられていて、位置不変に形成されている。
【0048】
上述のモータベース41にはモータ42が取付けられている。モータ42の回転軸43には出力ギヤG2が嵌合されている。モータベース41に設けられた軸44にはピニオンギヤG3を備えたアイドルギヤG4が設けられている。また、モータベース41に設けられた別の軸45には、ピニオンギヤG5を備えた従動ギヤG6が設けられている。
【0049】
図10に示すように、出力ギヤG2はアイドルギヤG4と噛合している。ピニオンギヤG3は従動ギヤG6と噛合している。ピニオンギヤG5はセクタギヤG1と噛合している。これにより、モータ42を駆動して、その回転軸43および出力ギヤG2を、図10の反時計方向に回転させると、各ギヤG2,G4,G3,G6をこの順に介してピニオンギヤG5が図10の反時計方向に回転する。
【0050】
ピニオンギヤG5が図10の反時計方向に回転すると、セクタギヤG1は位置不変であるから、各要素G2~G6から成る歯車列46(gear train)と、モータ42と、モータベース41とは、セクタギヤG1の扇形状に沿ってレバー20突出方向に移動し、ヒンジアーム30を介してレバー20を突出させる。
【0051】
上述のレバー20は、そのアウタカバー21がドアアウタパネル11と面一になる格納位置(図4参照)と、駆動装置40によりレバー20がドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(図11参照)と、この把持位置よりもさらに突出する開放位置(図12参照)と、の間で回動可能に構成されている。
【0052】
図4に示す格納位置から図11に示す把持位置までの間は、駆動装置40によりレバー20を回動することができる。また、ヒンジアーム30が図4に示す格納位置から図11に示す把持位置に達するまでの間においては、クランクプレート60は動くことなく、バネ力の強いコイルスプリング(図示せず)により反レリーズ方向に付勢されている。
【0053】
図11に示す把持位置においては、レバー20がドアアウタパネル11から外方に突出してユーザが当該レバー20を把持できるので、図11に示す把持位置から図12に示す開放位置へはユーザによりレバー20を開放することができる。
【0054】
図11に示すように、ヒンジアーム30が把持位置に達すると、当該ヒンジアーム30のネック部33がクランクプレート60の縦壁61に当接するので、図示しないコイルスプリングのバネ力に抗してレバー20が開放方向に回動操作されると、クランクプレート60がレリーズ方向に回動し、レリーズワイヤ62を介してドアラッチを解除する。
【0055】
ところで、上述のブラケット50は、図4に示すように、開口部13と連通するレバー20の格納空間52と、ヒンジアーム30の挿通孔53とを備えている。
また、上述のブラケット50は、図7に示すように、前側取付け部54と、上側取付け部55と、下側取付け部56と、後側取付け部57と、を備えている。
【0056】
図7図3に示すように、ブラケット50の前側取付け部54はレインフォースメント12の開口部12c周縁の前側取付け座12dに締結固定される。同様に上側、下側の各取付け部55,56はレインフォースメント12の開口部12c周縁の上側取付け座12e、下側取付け座12fにそれぞれ締結固定される。
【0057】
図3図4に示すように、レインフォースメント12の開口部12cにおける後側周縁には、車幅方向外方に延びる切起こし部12gが一体形成されており、図7に示すブラケット50の後側取付け部57は、上記切起こし部12gに締結固定される。
上述の切起こし部12gは、レインフォースメント12がドアアウタパネル11側またはインナパネル側に向かって突出して形成される。
【0058】
一方、図4に示すように、レバー20の後端部、詳しくは、インナカバー22の後端部と対向するブラケット50の後端側の車幅方向内側にはスイッチ70が配置されている。
このスイッチ70は、当該スイッチ70の押圧操作時にONとなり、モータ42への通電を行なうものである。
【0059】
また、図4に示すように、上記スイッチ70の前側近傍におけるブラケット50にはキーシリンダ15が配置されている。
さらに、図4に示すように、レバー20の格納位置において、ヒンジアーム30のネック部33とキーシリンダ15との間のブラケット50の所定位置には、ヒンジアーム30を図11に示す把持位置で仮保持する仮保持機構80が配置されている。
【0060】
図13に示すように、上記レバー20はヒンジアーム30のレバー支持部34に対して揺動可能に設けられているので、格納位置にあるレバー20の後端部を外方から押圧すると、図13に仮想線αで示すように、レバー20の後端部が車幅方向内側に揺動変位して、スイッチ70をONにするスイッチ押圧位置となる。
【0061】
なお、図6において、38はレバー20のインナカバー22とブラケット50との間をシールする部材であり、このシール部材38は図6のみに図示し、他図においては便宜上、その図示を省略している。
【0062】
要するに、ドアアウタパネル11から出没可能なレバー20を一端に固定し、該レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出するように回動させるヒンジピン31を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、上記レバー20を収容してレインフォースメント12に固定されるブラケット50と、を備え、上記レバー20が上記ドアアウタパネル11と面一になる格納位置(図4参照)と、上記駆動装置40により上記レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(図11参照)と、上記把持位置(図11参照)よりもさらに突出する開放位置(図12参照)と、の間で回動可能に構成され、上記ドアアウタパネル11は上記レバー20を収容する開口部13と、当該開口部13の縁部が折曲げ形成されたフランジ部14と、を備えたものである。
【0063】
図14は車両のドアハンドル構造を、ドアアウタパネル11を取外して示す外側面図、図15図14からレバー20およびヒンジアーム30を取外した状態の外側面図、図16図15の斜視図、図17はレインフォースメント12に対するブラケット50の取付け構造を示す内側面図である。
また、図18図17の分解斜視図、図19(a)は図14のB-B線に沿う要部の矢視断面図、図19(b)は図14のC-C線に沿う要部の矢視断面図である。
【0064】
図14図15に示すように、上述のブラケット50の格納空間52における車幅方向外端部周縁には、前側当接部58a,58b、上側当接部58c,58d、下側当接部58e,58f、後側当接部58gが一体形成されている。
【0065】
上述の各当接部58a~58gのうち前側当接部58a,58bと後側当接部58gとの3点で、ドアアウタパネル11のフランジ部14に対するブラケット50の車幅方向の位置決めを行なっている。
【0066】
また、上述の全ての当接部58a~58gによりフランジ部14に対する輪郭方向の位置決めを行なっている。このうち、当接部58c~58fは図20に示すように、上下方向の位置決めを行なっている。
【0067】
特に、上述の各当接部58a~58gのうちレバー20のヒンジピン31に近接する一端側(この実施例では前端側)の前側当接部58a,58bは、フランジ部14前端側に開口部13の外側から当接して、ブラケット50とドアアウタパネル11のフランジ部14との位置決めを行なうものである(図19参照)。
【0068】
図14図15に示すように、上述の前側当接部58a,58bは、長円形状のフランジ部14における前側半円部の上下各コーナ部に対向すべく、上下方向に間隔を隔てて一対設けられている。
【0069】
図15に示すように、上述のブラケット50の格納空間52の車幅方向端部は、車両方向外方から見てレバー20と対応すべく長円形状に形成されており、上述の上側当接部58c,58dは、この長円形状の長手方向(つまり、車両前後方向)に間隔を隔てて複数設けられている。
同様に、上述の下側当接部58e,58fは、上記長円形状の長手方向(つまり、車両前後方向)に間隔を隔てて複数設けられている。
【0070】
図14図15に示すように、上述の後側当接部58gは、長円形状のフランジ部14における後側半円部の中央に対向すべく設けられている。
また、図7に示すように、上記ブラケット50は、上述のレバー20のヒンジピン31に近接する一端側(この実施例では前端側)において、当該ブラケット50とレインフォースメント12とを締結する第1締結部としての前側取付け部54、上側取付け部55、下側取付け部56を備えている。
【0071】
さらに、図7に示すように、上記ブラケット50は、レバー20のヒンジピン31から遠ざかる他端側(この実施例では後端側)において、当該ブラケット50とレインフォースメント12とを締結する第2締結部としての後側取付け部57を備えている。
【0072】
図18に示すように、レインフォースメント12は第2締結部としての後側取付け部57との締結位置を、上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向(この実施例では車両前後方向)において調整する位置調整部としての切起こし部12gを備えている。
【0073】
図19(b)に示すように、上述のレインフォースメント12はその後端部においてドアアウタパネル11の後端部内面に当接して前後方向に延びる外壁部12hと、この外壁部12hの前端から車幅方向内方に延びる縦壁部12iと、該縦壁部12iの車幅方向内端から車両前方に延びる内壁部12jとを備えている。
【0074】
そして、上述の切起こし部12gは開口部12cのプレス加工による打抜き加工時に、レインフォースメント12に切起こし形成し、上記内壁部12jの前端から車幅方向外方に延びるように形成されたものである。
上述の切起こし部12gは所定の弾性を有し、当該切起こし部12gの車幅方向外端部は、フリーで、車両前後方向に変形可能であるから、充分な位置調整機能を確保する。
【0075】
図18に示すように、上述の切起こし部12gには第2締結部としての後側取付け部57(図7図19参照)を締結する締結部材としてのボルトB2が配設される凹溝12kが形成されている。
【0076】
また、図18に示すように、上述の凹溝12kと連通するように、レインフォースメント12の内壁部12jと切起こし部12gとに跨がって切欠き部12mが形成されている。この切欠き部12mはボルトB2の頭部の車幅方向への挿入配置を許容するものである。
【0077】
図17に仮想線で示すように、上述のレインフォースメント12の車幅方向内側には、ラッチ(図示せず)の支持剛性を高めるラッチレイン90が設けられている。このため、上記ボルトB2を車幅方向内側から締付け操作することができない。
【0078】
そこで、図19(b)に示すように、レインフォースメント12における後側取付け部57の他端側(車両後方側)には、ボルトB2を締結操作する孔部12nが開口形成されている。具体的には、該孔部12nはレインフォースメント12の上記縦壁部12iに形成されると共に、この孔部12nはカバー部材としてのホールカバー16で覆われている。
【0079】
このように、レインフォースメント12のドア内側がラッチレイン90(図17参照)で覆われていても、上述の孔部12nから締結部材であるボルトB2を操作して、第2締結部としての後側取付け部57の締結を可能としたものである。
【0080】
ブラケット50が合成樹脂製である関係上、上述の後側取付け部57にはボルトB2を螺合する金属製のインサートナットが設けられるが、図面では当該インサートナットの図示を省略している。
【0081】
図7図14図17に示すように、第1締結部としての前側取付け部54、上側取付け部55および下側取付け部56は、締結部材であるボルトB1を用いて、対応する前側取付け座12d、上側取付け座12eおよび下側取付け座12fにそれぞれ締結される。
【0082】
図19(a)に示すように、前側当接部58aの開口部13側にはフランジ部14の縁部と対向する切欠き形状の段差58hが形成されている。なお、図示しないが他方の前側当接部58bの開口部13にも、フランジ部14の縁部と対向する部位にも切欠き形状の段差58hが形成されている。
【0083】
これにより、図19(a)に示すように、レバー20を把持位置(図11参照)、または、それ以上外方へ回動操作した際の見映えの向上を図るように構成している。
【0084】
図7図16に示すように、上述のレインフォースメント12はブラケット50を取付ける開口部12c(取付け開口部)を有しており、上述の前側取付け部54は、当該ブラケット50の一端(この実施例では前端)においてレインフォースメント12に締結される取付け片部54aと、この取付け片部54aと協働して上記開口部12cの口縁を挟持する上下一対の爪部54b,54cと、を備えている。
【0085】
これにより、取付け片部54aと爪部54b,54cとの間で、レインフォースメント12の開口部12cの口縁を挟持すると共に、第2締結部としての後側取付け部57に対してサブアセンブリしたボルトB2を切起こし部12gの凹溝12kに配設すると、ブラケット50をレインフォースメント12に対して仮止めし、当該ブラケット50の組付け性向上を図るように構成している。
【0086】
次に、車両のドアハンドル構造の組付け方法について説明する。
まず、図18に示すように、ブラケット50に対して、レバー20を備えたヒンジアーム30、駆動装置40、仮保持機構80、キーシリンダ15、スイッチ70を組付けて、ブラケットユニット50Uを構成する。
【0087】
次に、上述のブラケットユニット50Uをレインフォースメント12の開口部12cに対向させた後に、ブラケット50を開口部12cに仮止めする。すなわち、図16に示すように、取付け片部54a(図7参照)と上下一対の爪部54b,54cとの間で開口部12cの前側口縁を挟持し、かつ後側取付け部57に予めサブアセンブリされたボルトB2を切起こし部12gの凹溝12kに配設することで、ブラケット50をレインフォースメント12に対して仮止めする(仮止め工程)。
【0088】
この仮止め工程により、作業者がブラケット50から手を放しても、ブラケットユニット50Uは下方に落下しないので、組付け作業の円滑化を図ることができる。
【0089】
次に、図4図19(a)に示すように、レバー20をドアアウタパネル11の開口部13内に配設すると共に、レバー20のヒンジピン31に近接する一端側(この実施例では前端側)において、フランジ部14に開口部13の外側(車幅方向前側)から上下一対の前側当接部58a,58bを当接させる(当接工程)。
【0090】
次に、レバー20のヒンジピン31に近接する一端側(前端側)において、第1締結部である前側取付け部54、上側取付け部55および下側取付け部56を、ボルトB1を用いて、レインフォースメント12の対応する前側取付け座12d、上側取付け座12eおよび下側取付け座12fにそれぞれ締結する(第1締結部締結工程)。
【0091】
次に、上下一対の前側当接部58a,58bがフランジ部14に当接するように、位置調整部である切起こし部12gを上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向(この実施例では車両前後方向)の位置で調整する(位置調整工程)。この位置調整工程により、上下一対の前側当接部58a,58bがフランジ部14に確実に当接する。
【0092】
次に、図19(b)に示すように、位置調整部である切起こし部12gと後側取付け部57とを、ボルトB2を用いて締結する(第2締結部締結工程)。
詳しくは、ブラケット50の上下一対の前側当接部58a,58bを車両前側のフランジ部14に開口部13外側から当接させ、切起こし部12gに配設したボルトB2で後側取付け部57を介してブラケット50を後方に引き寄せる。このため、フランジ部14と前側当接部58a,58bとの間に微少クリアランスがあっても、ブラケット50の後方への引き寄せにより、ゼロクリアランスとすることができ、レバー20とドアアウタパネル11のフランジ部14との間の隙を一定に保つことができる。
【0093】
このように、上記実施例の車両のドアハンドル構造は、ドアパネル(ドアアウタパネル11)から出没可能なレバー20を一端に固定し、該レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように回動させる回動支軸(ヒンジピン31)を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、上記レバー20を収容して上記ドアパネル(レインフォースメント12)に固定されるブラケット50と、を備え、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)と面一になる格納位置(図4参照)と、上記駆動装置40により上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出してユーザが把持できる把持位置(図11参照)と、上記把持位置(図11参照)よりもさらに突出する開放位置(図12参照)と、の間で回動可能に構成され、上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)は上記レバー20を収容する開口部13と、当該開口部13の縁部が折曲げ形成されたフランジ部14と、を備え、上記ブラケット50は、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、上記フランジ部14に上記開口部13の外側から当接する当接部(前側当接部58a,58b)と、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、上記ブラケット50と上記ドアパネル(レインフォースメント12)とを締結する第1締結部(前側、上側、下側の各取付け部54,55,56)と、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)から遠ざかる他端側において、上記ブラケット50と上記ドアパネル(レインフォースメント12)とを締結する第2締結部(後側取付け部57)と、を備え、上記ドアパネル(レインフォースメント12)は上記第2締結部(後側取付け部57)との締結位置を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向(この実施例では車両前後方向)において調整する位置調整部(切起こし部12g)を備えたものである(図4図7図11図12図14図19参照)。
【0094】
この構成によれば、ブラケット50の当接部(前側当接部58a,58b)と、ドアパネル(ドアアウタパネル11)のフランジ部14とが確実に当接されるように上述の第2締結部(後側取付け部57)が位置調整部(切起こし部12g)と締結される。このため、回動支軸(ヒンジピン31)の近傍においてレバー20とドアパネル(ドアアウタパネル11)との間の隙を一定に保つことができ、レバー20の格納位置、把持位置、開放位置の何れの位置においても、レバー20とドアパネル(ドアアウタパネル11)との接触を防止すると共に、見映えの向上を図ることができる。
【0095】
特に、ドアパネル(ドアアウタパネル11)のフランジ部14とレバー20の上記一端側との間の隙は、レバー20が車両外方へ突出する際、レバー20がフランジ部14に近づくように変位するが、回動支軸(ヒンジピン31)の近傍において、レバー20とドアパネル(ドアアウタパネル11)との間の隙を一定に保つことで、レバー20の回動時に当該レバー20がドアパネル(ドアアウタパネル11)と干渉しない。
【0096】
この発明による車両のドアハンドル構造の組付け方法は、ドアパネル(ドアアウタパネル11)から出没可能なレバー20を一端に固定し、該レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように回動させる回動支軸(ヒンジピン31)を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、上記レバー20を収容して上記ドアパネル(レインフォースメント12)に固定されるブラケット50と、を備え、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)と面一になる格納位置(図4参照)と、上記駆動装置40により上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出してユーザが把持できる把持位置(図11参照)と、上記把持位置(図11参照)よりもさらに突出する開放位置(図12参照)と、の間で回動可能に構成され、上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)は上記レバー20を収容する開口部13と、当該開口部13の縁部が折曲げ形成されたフランジ部14と、を備え、上記ブラケット50は、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、上記フランジ部14に上記開口部13の外側から当接する当接部(前側当接部58a,58b)と、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、上記ブラケット50と上記ドアパネル(レインフォースメント12)とを締結する第1締結部(前側、上側、下側の各取付け部54,55,56)と、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)から遠ざかる他端側において、上記ブラケット50と上記ドアパネル(レインフォースメント12)とを締結する第2締結部(後側取付け部57)と、を備え、上記ドアパネル(レインフォースメント12)は上記第2締結部(後側取付け部57)との締結位置を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向(この実施例では車両前後方向)において調整する位置調整部(切起こし部12g)を備えた車両のドアハンドル構造の組付け方法において、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、上記フランジ部14に上記開口部13の外側から上記当接部(前側当接部58a,58b)を当接させる当接工程と、上記レバー20の上記回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、上記第1締結部(前側、上側、下側の各取付け部54,55,56)を締結する第1締結部締結工程と、上記当接部(前側当接部58a,58b)を上記フランジ部14に当接させるように、上記位置調整部(切起こし部12g)を上記一端側と上記他端側とを結ぶ方向の位置で調整する位置調整工程と、上記位置調整部(切起こし部12g)と上記第2締結部(後側取付け部57)とを締結する第2締結部締結工程とを備えるものである(図4図7図11図12図14図19参照)。
【0097】
この構成によれば、当接工程で、レバー20の回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、フランジ部14に開口部13の外側から当接部(前側当接部58a,58b)を当接させる。また、第1締結部締結工程で、レバー20の回動支軸(ヒンジピン31)に近接する一端側において、第1締結部(取付け部54,55,56)を締結する。さらに、位置調整工程で、当接部(前側当接部58a,58b)をフランジ部14に当接させるように、位置調整部(切起こし部12g)を一端側と他端側とを結ぶ方向の位置で調整する。また、第2締結部締結工程で、位置調整部(切起こし部12g)と第2締結部(後側取付け部57)とを締結する。
【0098】
このように、ドアパネル(ドアアウタパネル11)のフランジ部14と、ブラケット50の当接部(前側当接部58a,58b)とが確実に当接されるので、レバー20とドアパネル(ドアアウタパネル11)のフランジ部14との間の隙を一定に保つことができる。
【0099】
また、この発明の一実施形態においては、上記ドアパネルは、ドアアウタパネル11と、該ドアアウタパネル11のドア内側に位置するレインフォースメント12とを備え、上記開口部13および上記フランジ部14は上記ドアアウタパネル11に形成されており、上記ブラケット50は上記レインフォースメント12に固定されており、上記位置調整部は上記レインフォースメント12に切起こし形成された切起こし部12gにて構成されたものである(図16図18参照)。
【0100】
この構成によれば、位置調整部をレインフォースメント12から切起こし形成した切起こし部12gにより構成したので、当該切起こし部12gに所定の弾性力をもたせることができ、また切起こし部12gはレインフォースメント12と一体であって、別部材によるものではないため、簡単な構造により位置調整部を形成することができる。
【0101】
特に、上記切起こし部12gの端部はフリーで、一端方向、他端方向に変形可能であるから、充分な位置調整機能を確保することができる。
さらに、この発明の一実施形態においては、上記ブラケット50に設けられた当接部(前側当接部58a,58b)は上下方向に間隔を隔てて一対設けられたものである(図7参照)。
【0102】
この構成によれば、一対の当接部(前側当接部58a,58b)間には間隔が設けられているので、ブラケット50に対してヒンジアーム30およびレバー20を外方から差込んで組付ける際、レバー20と当接部58a,58bとが干渉しない。
【0103】
因に、フランジ部14に対して開口部13の外側から当接する当接部をブラケット50に設ける場合、フランジ部14に沿うU字状の当接部を設けることが考えられるが、この場合にはヒンジアーム30およびレバー20をブラケット50の孔に差込んで外側から組付ける際、レバー端部がU字状の当接部と干渉して組付け困難となる。
【0104】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記切起こし部12gには上記レインフォースメント12を締結する締結部材(ボルトB2)が配設される凹溝12kが形成される一方、上記第2締結部(後側取付け部57)の他端側には、上記締結部材(ボルトB2)を締結操作する孔部12nが形成されたものである(図18図19参照)。
【0105】
この構成によれば、凹溝12kに配設した締結部材(ボルトB2)でブラケット50の第2締結部(後側取付け部57)を切起こし部12gに締結する際、レインフォースメント12のドア内側がラッチレイン90(図17参照)で覆われていても、上記孔部12nから締結部材(ボルトB2)を操作して、第2締結部(後側取付け部57)の締結を行なうことができる。
【0106】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記当接部(前側当接部58a,58b)の上記開口部13側には上記フランジ部14の縁部と対向する段差58hが形成されたものである(図19(a)参照)。
この構成によれば、レバー20を把持位置または、それ以上外方へ回動した際の見映えの向上を図ることができる。
【0107】
また、この発明の一実施形態においては、上記レインフォースメント12は上記ブラケット50を取付ける取付け開口部12cを有しており、上記ブラケット50の上記第1締結部(前側取付け部54参照)は、当該ブラケット50の一端において上記レインフォースメント12に締結される取付け片部54aと、該取付け片部54aと協働して上記取付け開口部12cの口縁を挟持する爪部54b,54cと、を備えたものである(図7図16参照)。
【0108】
この構成によれば、取付け片部54aと爪部54b,54cとの間で、レインフォースメント12の取付け開口部12cの口縁を挟持すると共に、第2締結部(後側取付け部57)に対してサブアセンブリした締結部材(ボルトB2)を切起こし部12gの凹溝12kに配設すると、ブラケット50をレインフォースメント12に対して仮止めすることができる。この結果、ブラケット50の組付け性の向上を図ることができる。
【0109】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のドアパネルは、レインフォースメント12を含むドアアウタパネル11に対応し、
以下同様に、
位置調整部は、切起こし部12gに対応し、
回動支軸は、ヒンジピン31に対応し、
第1締結部は、前側取付け部54、上側取付け部55、下側取付け部56に対応し、
第2締結部は、後側取付け部57に対応し、
当接部は、前側当接部58a,58bに対応し、
締結部材は、ボルトB2に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0110】
例えば、上記実施例においては、車両のドアハンドル構造及びその組付け方法を、2ドアタイプの車両のドアハンドルに適用した構造を例示したが、これは4ドアタイプの車両のフロントドア、リヤドアにおけるドアハンドルまたはリフトゲートにおけるドアハンドルに適用してもよい。
また、上記実施例においては、スワンネック構造のヒンジアームを例示したが、上記レバーはシーソー構造と成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明は、ドアハンドルレバーの格納時に、当該ドアハンドルレバーとドアアウタパネルとが面一になる車両のドアハンドル構造及びその組付け方法について有用である。
【符号の説明】
【0112】
11…ドアアウタパネル
12…レインフォースメント
12c…取付け開口部
12g…切起こし部(位置調整部)
12k…凹溝
12n…孔部
13…開口部
14…フランジ部
20…レバー
30…ヒンジアーム
31…ヒンジピン(回動支軸)
40…駆動装置
50…ブラケット
54…前側取付け部(第1締結部)
54a…取付け片部
54b,54c…爪部
55…上側取付け部(第1締結部)
56…下側取付け部(第1締結部)
57…後側取付け部(第2締結部)
58a,58b…前側当接部(当接部)
58h…段差
B2…ボルト(締結部材)
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