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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両のドアハンドル構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20241008BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20241008BHJP
   E05B 81/06 20140101ALI20241008BHJP
   E05B 81/16 20140101ALI20241008BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
E05B85/16 D
E05B79/22 A
E05B81/06
E05B81/16
B60J5/04 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021015644
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118864
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】倉本 英介
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0102773(US,A1)
【文献】特開2020-094455(JP,A)
【文献】特開2015-206259(JP,A)
【文献】特開2019-157424(JP,A)
【文献】特開2018-115544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルから出没可能なレバーを一端に備え、
上記レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、
上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、
上記レバーは、
当該レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、
上記駆動装置により該レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、
上記レバーが上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間を回動可能に構成され、
上記レバーは、上記回動支軸に設けられる付勢手段により格納方向に付勢されており、
上記駆動装置は、上記把持位置における上記レバーを突出させる力が、上記格納位置から当該レバーを突出させ始める突出初期位置のレバーを突出させる力に対して、大きくなるように設定されたことを特徴とする
車両のドアハンドル構造。
【請求項2】
上記駆動装置は、モータを備えており、該駆動装置は上記把持位置においては上記モータの出力を必要とせず把持位置を保持する
請求項1に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項3】
上記ヒンジアームの一端に上記レバーを保持し、上記回動支軸を介して上記ヒンジアームの他端に上記駆動装置を備えると共に、上記回動支軸を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持するブラケットを設け、
上記駆動装置は、モータと、該モータの回転力が伝達される出力軸と、基端が当該出力軸に固定され、遊端が上記ブラケットに当接して摺動可能なクランクと、を備えた
請求項1に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項4】
上記ブラケットには、上記レバーが把持位置から開放位置に移行する時、上記クランクの向きをレバー格納位置の向きに変更するクランク向き変更部が備えられた
請求項3に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項5】
上記回支軸は上下に延び、該回支軸の前方に駆動装置が位置し、上記クランクは、上記レバーの格納位置において、当該クランクから車両後方かつ車幅方向に向けて延びる突部を備え、上記ブラケットは上記クランクの遊端が当接する当接壁と、該当接壁の後方において車幅方向に延びる縦壁と、を備え、上記クランク向き変更部は上記縦壁である
請求項4に記載の車両のドアハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアハンドルレバーの格納時に、当該ドアハンドルレバーとドアアウタパネルとが面一になるような車両のドアハンドル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、ドアハンドルレバー(いわゆるレバー)をドアアウタパネルと面一になるように格納するフラッシュサーフェイス(flush surface)構造の車両のドアハンドル構造が知られている。
【0003】
該特許文献1に開示された車両のドアハンドル構造は、ドアハンドルレバーを、上下方向に延びる軸で支持し、この軸に設けたバネにより上記ドアハンドルレバーを格納方向に付勢すると共に、当該レバーの軸近傍に設けた凸部をオルタネイト機構により操作して、該レバーを突出させるように構成したシーソー式のドアハンドル構造である。
【0004】
上述のオルタネイト機構に代えて電動モータにて駆動されるアームを設け、このアームを介してドアハンドルレバーをドアパネルから出没可能に構成することも可能である。
【0005】
この場合、ドアハンドルレバーを突出させる程、軸に設けたバネのバネ反力が大きくなる。電動モータの出力(発生トルク)は一定であるから、ドアハンドルレバーを格納位置から把持位置に突出させた時、大きくなったバネ反力により、上記電動モータには負荷が付勢されるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-94455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、レバーが突出する程、格納方向への付勢力が大きくなっても、駆動装置に対する負荷の低減を図ることができる車両のドアハンドル構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両のドアハンドル構造は、ドアパネルから出没可能なレバーを一端に備え、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、上記レバーは、当該レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置により該レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記レバーが上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間を回動可能に構成され、上記レバーは、上記回動支軸に設けられる付勢手段により格納方向に付勢されており、上記駆動装置は、上記把持位置における上記レバーを突出させる力が、上記格納位置から当該レバーを突出させ始める突出初期位置のレバーを突出させる力に対して、大きくなるように設定されたものである。
【0009】
上記構成によれば、レバーが突出する程、上記付勢手段により当該レバーが格納方向に向かう付勢力が大きくなるが、把持位置においてレバーを突出させる力が、突出初期位置においてレバーを突出させる力に対して大きくなるため、駆動装置に対する負荷の低減を図り、負荷をかけずに作動させることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記駆動装置は、モータを備えており、該駆動装置は上記把持位置においては上記モータの出力を必要とせず把持位置を保持するものである。
上記構成によれば、レバーの把持位置を保持する機構を別途設けることなく、当該把持位置を保持することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジアームの一端に上記レバーを保持し、上記回動支軸を介して上記ヒンジアームの他端に上記駆動装置を備えると共に、上記回動支軸を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持するブラケットを設け、上記駆動装置は、モータと、該モータの回転力が伝達される出力軸と、基端が当該出力軸に固定され、遊端が上記ブラケットに当接して摺動可能なクランクと、を備えたものである。
【0012】
上記構成によれば、レバーが突出する程、上記クランクがブラケットとの間で突っ張る力が大きくなる。クランクがブラケットとの間で突っ張る力は、レバーを突出させる力となるので、レバーが突出する程、付勢手段の反力が大きくなるが、この反力と突っ張り力とが拮抗し、モータに対する負荷の増大を抑制することができる。
また、把持位置において、クランクが基端とブラケットとの間において突っ張ることにより、モータからの出力によらず把持位置を維持できる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ブラケットには、上記レバーが把持位置から開放位置に移行する時、上記クランクの向きをレバー格納位置の向きに変更するクランク向き変更部が備えられたものである。
【0014】
上記構成によれば、レバーが開放位置から格納位置に戻る時、クランク向き変更部にてクランクの向きをレバー格納位置の向きに変更するので、クランクに負荷をかけない。
詳しくは、開放位置におけるレバーから手を放すと、ヒンジアームを常時反レリーズ方向に付勢するコイルスプリングのバネ力により、上記レバー、ヒンジアーム等が元位置(格納位置)に戻るが、上述のクランク向き変更部にてクランクをイニシャル位置(格納位置)に変更させておくことで、クランクとブラケットとの衝突を回避し、クランク基部の損傷を防止することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記回支軸は上下に延び、該回支軸の前方に駆動装置が位置し、上記クランクは、上記レバーの格納位置において、当該クランクから車両後方かつ車幅方向に向けて延びる突部を備え、上記ブラケットは上記クランクの遊端が当接する当接壁と、該当接壁の後方において車幅方向に延びる縦壁と、を備え、上記クランク向き変更部は上記縦壁である。
上記構成によれば、簡単な加工でクランク基部の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、レバーが突出する程、格納方向への付勢力が大きくなっても、駆動装置に対する負荷の低減を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の車両のドアハンドル構造を備えた車両の側面図。
図2図1の要部拡大側面図。
図3】レインフォースメントの配置構造を示す内側面図。
図4】レバー格納状態を示す図1のA-A線矢視断面図。
図5】駆動装置を示す平面図。
図6】付勢手段による付勢構造を示す平面図。
図7】ヒンジアームを備えたブラケットの斜視図。
図8】レバーの突出初期位置を示す平面図。
図9】レバーの把持位置を示す平面図。
図10】レバーの開放位置を示す平面図。
図11】レバーのスイッチ押圧位置を示す平面図。
図12】(a)は図4の要部拡大図、(b)は図9の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
レバーが突出する程、格納方向への付勢力が大きくなっても、駆動装置に対する負荷の低減を図るという目的を、ドアパネルから出没可能なレバーを一端に備え、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、上記レバーは、当該レバーが上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置により該レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記レバーが上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間を回動可能に構成され、上記レバーは、上記回動支軸に設けられる付勢手段により格納方向に付勢されており、上記駆動装置は、上記把持位置における上記レバーを突出させる力が、上記格納位置から当該レバーを突出させ始める突出初期位置のレバーを突出させる力に対して、大きくなるように設定されるという構成にて実現した。
【実施例
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のドアハンドル構造を示し、図1は当該ドアハンドル構造を備えた車両の側面図、図2図1の要部拡大側面図、図3はレインフォースメントの配置構造を示す内側面図である。
【0020】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
また、本発明の車両のドアハンドル構造は、4ドアタイプの車両のフロントドア、リヤドアやリフトゲート等にも適用できるが、以下の実施例においては2ドアタイプの車両のドアハンドルに適用した構造について説明する。
【0021】
図1に示すように、車室前方部において車両の上下方向に延びるヒンジピラー1と、車両下部において車両前後方向に延びるサイドシル2と、ヒンジピラー1の上端から後方かつ上方に向けて斜め方向に延びるフロントピラー3と、フロントピラー3の後端に連続して車両後方に延びるルーフサイドレール4と、ルーフサイドレール4とサイドシル2とを略上下方向に連結する後部ピラー5と、を備えている。
【0022】
上述のヒンジピラー1、サイドシル2、フロントピラー3、ルーフサイドレール4および後部ピラー5で囲繞されたドア開口部6を形成している。
上述のヒンジピラー1に上下一対のドアヒンジ7,7を介して開閉可能に取付けたサイドドア8により、上記ドア開口部6を開閉すべく構成している。
【0023】
図1図2に示すように、サイドドア8はドア本体9とドアウインド部材としてのドアウインドガラス10とを有しており、図2図3に示すように、ドア本体9はドアアウタパネル11と、図示しないドアインナパネルと、ドアアウタパネル11の車幅方向内側かつ後部側に設けられたレインフォースメント12と、を備えている。
この実施例では、上述のドアアウタパネル11と、レインフォースメント12と、でドアパネルを構成している。
【0024】
図3に示すように、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の後部上側には、後述するレバー20を収容する開口部13(レバー開口部)と、当該開口部13の縁部を全周にわたるバーリング加工により折曲げ形成したフランジ部14と、を備えている。
【0025】
また、図3に示すように、レインフォースメント12の上部および下部には上部開口12a、下部開口12bがそれぞれ形成されると共に、これら上下の各開口12a,12b間には、後述するブラケット50を取付けるための開口部12c(ブラケット開口部)が形成されている。
【0026】
図4はレバー20の格納状態を示す図1のA-A線矢視断面図、図5は駆動装置を示す平面図、図6は付勢手段による付勢構造を示す平面図、図7はヒンジアームを備えたブラケットの斜視図、図8はレバーの突出初期位置を示す平面図、図9はレバーの把持位置を示す平面図である。
【0027】
また、図10はレバーの開放位置を示す平面図、図11はレバーのスイッチ押圧位置を示す平面図、図12(a)は図4の要部拡大図、図12(b)は図9の要部拡大図である。
【0028】
図4に示すように、車両のドアハンドル構造は、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の開口部13から出没可能なレバー20(詳しくは、ドアハンドルレバー)と、該レバー20を有するスワンネック(swan-neck)構造のヒンジアーム30と、レバー20がドアアウタパネル11から突出するようにヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備えている。また、レバー20を収容しドアパネルとしてのレインフォースメント12に固定されるブラケット50を備えている。
【0029】
上述のレバー20は、図4に示すように、アウタカバー21と、インナカバー22との周縁部を凹凸嵌合および接合固定したもので、該レバー20およびドアアウタパネル11の開口部13は車両側面視で車両前後方向に長い長円形状に形成されている。
【0030】
上述のヒンジアーム30は、図4に示すように、一端(この実施例では後端)に上述のレバー20を有し、該レバー20がドアアウタパネル11から突出するように回動させる回動支軸としてのヒンジピン31を備えている。このヒンジピン31は上述のブラケット50に固定され上下方向に指向している。
【0031】
また、上述のヒンジアーム30は、図4に示すように、ヒンジピン31を枢支する枢支部32と、この枢支部32からスワンネック形状のネック部33を介して車両後方に延びて上記レバー20を支持するレバー支持部と、枢支部32から上記ネック部33とは反対側の車両前方に延びる延出部35と、を一体的に備えている。上述のレバー支持部は、アウタカバー21とインナカバー22とから成るレバー20の内部に配置されている。
【0032】
図4に示すように、ヒンジアーム30の延出部35には、駆動装置40をアセンブリするモータベース41が取付けられている。
また、図4に示すように、上述のヒンジピン31と同軸上には、クランクプレート60が設けられている。このクランクプレート60の後側かつ車幅方向外側には、レバー20およびヒンジアーム30が把持位置(図9参照)に回動した時、ヒンジアーム30のネック部33と当接係止される縦壁61が一体形成されている。
【0033】
さらに、上述のクランクプレート60の車幅方向内端部には、ドアラッチ(図示せず)を解除するレリーズワイヤ62が固定されている。このクランクプレート60はバネ力が大きいコイルスプリング(図示せず)により常時反レリーズ方向にバネ付勢されている。
【0034】
一方、上述のヒンジピン31には、図6に示すように、付勢手段としてのトーションスプリング36が巻回されており、このトーションスプリング36の一端36aが、クランクプレート60に係止され、トーションスプリング36の他端36bが、ヒンジアーム30の延出部35に係止されている。これにより、該トーションスプリング36によりレバー20を常時格納方向にバネ付勢している。
このトーションスプリング36のバネ力は、クランクプレート60を反レリーズ方向に付勢するコイルスプリング(図示せず)に対して、小さく設定されている。
【0035】
次に、図5を参照してヒンジアーム30の他端側(延出部35側参照)に動力を伝達する駆動装置40の構成について説明する。
上述のモータベース41にはモータ42が取付けられている。モータ42の回転軸43には出力ギヤG11が嵌合されている。モータベース41に設けられた軸44にはピニオンギヤG12を備えた従動ギヤG13が設けられている。また、モータベース41に設けられた出力軸47には、セクタギヤG14が設けられている。
【0036】
図5に示すように、出力ギヤG11は従動ギヤG13と噛合している。ピニオンギヤG12はセクタギヤG14と噛合している。これにより、モータ42を駆動して、その回転軸43および出力ギヤG11を、図5の時計方向に回転させると、各ギヤG11,G13,G12をこの順に介してセクタギヤG14が図5の時計方向に回転する。
【0037】
上述の出力軸47は、モータ42の回転力が各要素G11~G14から成る歯車列46(gear train)を介して伝達される軸である。当該出力軸47にはクランク48の基端が嵌合固定されている。
上述のクランク48の遊端に設けた軸部48aにはローラ49が回転自在に設けられている。
【0038】
図4に示すように、上述のブラケット50において、駆動装置40のクランク48と対応する位置には、クランク48遊端のローラ49を当接させて当該クランク遊端を摺動可能と成す当接壁50Aと、レバー20が把持位置(図9参照)から開放位置(図10参照)に移行する時、クランク48の向きをレバー格納位置(図4参照)の向きに変更するクランク向き変更部としての縦壁50Bと、を備えている。
【0039】
ここで、上述の当接壁50Aは車両前後方向に延びる壁部であり、また、上述の縦壁50Bは、当接壁50Aの後方において車幅方向に延びる壁部であって、当接壁50Aおよび縦壁50Bは何れも上述のブラケット50に一体形成されている。
【0040】
図5に示すように、上述のクランク48の基端近傍には、レバー20の格納位置において、当該クランク48から車両後方かつ車幅方向外方に向けて延びる突部48bが一体形成されている。図9に示すように、この突部48bはレバー20の把持位置において上記縦壁50Bに当接する。
【0041】
上述の駆動装置40はモータ42を駆動すると、歯車列46を介してモータ回転力が出力軸47に伝達され、クランク48が図4図5の時計方向に回動するので、クランク48遊端のローラ49がブラケット50の当接壁50Aに当接した時点から、当該クランク48の突っ張り力により、モータベース41、延出部35を介してヒンジアーム30をレバー突出方向に回動させるものである。
【0042】
上述のレバー20は、そのアウタカバー21がドアアウタパネル11と面一になる格納位置(図4参照)と、駆動装置40によりレバー20がドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(図9参照)と、この把持位置よりもさらに突出する開放位置(図10参照)と、の間で回動可能に構成されている。
【0043】
図4に示す格納位置から図9に示す把持位置までの間は、駆動装置40によりレバー20を回動することができる。また、ヒンジアーム30が図4に示す格納位置から図9に示す把持位置に達するまでの間においては、クランクプレート60は動くことなく、バネ力の強いコイルスプリング(図示せず)により反レリーズ方向に付勢されている。
【0044】
図9に示す把持位置においては、レバー20がドアアウタパネル11から外方に突出してユーザが当該レバー20を把持できるので、図9に示す把持位置から図10に示す開放位置へはユーザによりレバー20を開放することができる。
【0045】
図9に示すように、ヒンジアーム30が把持位置に達すると、当該ヒンジアーム30のネック部33がクランクプレート60の縦壁61に当接するので、図示しないコイルスプリングのバネ力に抗してレバー20が開放方向に回動操作されると、クランクプレート60がレリーズ方向に回動し、レリーズワイヤ62を介してドアラッチを解除する。
【0046】
レバー20が図9に示す把持位置から図10に示す開放位置に移行すると、クランク48の突部48bが当接するクランク向き変更部としての縦壁50Bにより、クランク48の向きはレバー格納位置の向きに変更され、図10に示すように、クランク48遊端のローラ49はブラケット50の当接壁50Aから車幅方向内方へ離間する。
【0047】
ところで、上述のブラケット50は、図4に示すように、開口部13と連通するレバー20の格納空間52と、ヒンジアーム30の挿通孔53とを備えている。
また、上述のブラケット50は、図7に示すように、前側取付け部54と、上側取付け部55と、下側取付け部56と、後側取付け部57と、を備えている。
【0048】
図7図3に示すように、ブラケット50の前側取付け部54はレインフォースメント12の開口部12c周縁の前側取付け座12dに締結固定される。同様に上側、下側の各取付け部55,56はレインフォースメント12の開口部12c周縁の上側取付け座12e、下側取付け座12fにそれぞれ締結固定される。
【0049】
図3図4に示すように、レインフォースメント12の開口部12cにおける後側周縁には、車幅方向外方に延びる切起こし部12gが一体形成されており、図7に示すブラケット50の後側取付け部57は、上記切起こし部12gに締結固定される。
【0050】
一方、図4図11に示すように、レバー20の後端部、詳しくは、インナカバー22の後端部と対向するブラケット50の後端側の車幅方向内側にはスイッチ70が配置されている。
このスイッチ70は、当該スイッチ70の押圧操作時にONとなり、モータ42への通電を行なうものである。
【0051】
また、図4に示すように、上記スイッチ70の前側近傍におけるブラケット50にはキーシリンダ15が配置されている。
図11に示すように、上記レバー20はヒンジアーム30のレバー支持部に対して揺動可能に設けられているので、格納位置にあるレバー20の後端部を外方から押圧すると、図11に示すように、レバー20の後端部が車幅方向内側に揺動変位して、スイッチ70をONにするスイッチ押圧位置となる。
【0052】
要するに、ドアアウタパネル11から出没可能なレバー20を一端に備え、上記レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出するように回動させるヒンジピン31を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備え、上記レバー20は、当該レバー20が上記ドアアウタパネル11と面一になる格納位置(図4参照)と、上記駆動装置40により該レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(図9参照)と、上記レバー20が上記把持位置よりもさらに突出する開放位置(図10参照)と、の間を回動可能に構成され、上記レバー20は、上記ヒンジピン31に設けられるトーションスプリング36により格納方向に付勢されたものである。
【0053】
しかも、上述の駆動装置40は、図12(b)に示す把持位置におけるレバー20を突出させる力(突っ張り力AF)が、図12(a)に示す格納位置からレバー20を突出させ始める突出初期位置(図8参照)のレバー20を突出させる力(突っ張り力AF)に対して、大きくなるように設定されている。ここに、突出初期位置とは、図8に示すように、ドアアウタパネル11からレバー20の一部であるアウタカバー21の後部が突出した位置のことである。
【0054】
詳しくは、ブラケット50の当接壁50Aと平行なラインを基準ラインL1とし、クランク48の基端中央部と遊端中央部とを結ぶ線を変位ラインL2とし、これら各ラインL1,L2の成す角度をクランク角CAとする。
【0055】
図12(a)に示す格納位置ではクランク角CAは約38度となり、図8に示す突出初期位置ではクランク角CAは約47度となり、図12(b)で示す把持位置ではクランク角CAは約68度となる。
【0056】
上述のクランク角CAが大きくなる程、クランク48のローラ49が当接壁50Aに当接して、モータベース41を介してヒンジアーム30の延出部35をレバー突出方向(図示の反時計方向)へ押し出す力、すなわち、突っ張り力AFが次第に大きくなる。これにより、図8の突出初期位置での突っ張り力AFに対して、図12(b)の把持位置での突っ張り力AFが大きくなるように設定したものである。
【0057】
さらに具体的には、図12(a)に示すレバー20の格納状態からモータ42を駆動して、クランク48を回動することで、図8に示す突出初期状態を経てヒンジアーム30をレバー突出方向に回動させる。
【0058】
ヒンジアーム30がレバー突出方向に回動すると、トーションスプリング36のバネ反力RF(図12(a)参照)は徐々に大きくなる。
モータ42の発生トルク、つまり、クランク48を回動させる力が一定であっても、クランク角CAが大きくなると、ヒンジアーム30をレバー突出方向に回動させる力、すなわち、突っ張り力AFが大きくなるので、上述のバネ反力RFに打ち勝ってヒンジアーム30をレバー突出方向に突出させることができる。
【0059】
図12(b)に示す把持位置において、クランク角CAが90度に近くなると(この実施例では、68度)、モータ42の発生トルクがなくても(換言すれば、モータ42への通電を遮断しても)、クランク48の突っ張り力AFでヒンジアーム30を把持位置に保持することができる。
すなわち、把持位置において、クランク48が当接壁50Aとの間で突っ張ることにより、モータ42電源をオフにしても、把持位置を保持することができる。
【0060】
なお、上述のクランク角CAが、85度程度乃至90度になると、レバー20に対して格納方向への荷重が入力された場合、クランク48が逆転作動(図示の反時計方向への回動)できなくなるため、クランク角CAは最大80度未満が好ましい。
【0061】
また、上記駆動装置40は、モータ42を備えており、該駆動装置40は上記把持位置においては上記モータ42の出力を必要とせず把持位置を保持するものである。これにより、レバー20の把持位置を保持する機構を別途設けることなく、当該把持位置を保持するように構成している。
【0062】
さらに、上記回支軸(ヒンジピン31)は上下に延び、該回支軸(ヒンジピン31)の前方に駆動装置40が位置し、上記クランク48は、上記レバー20の格納位置において、当該クランク48から車両後方かつ車幅方向に向けて延びる突部48bを備え、上記ブラケット50は上記クランク48の遊端が当接する当接壁50Aと、該当接壁50Aの後方において車幅方向に延びる縦壁50Bと、を備え、上記クランク向き変更部は上記縦壁50Bである。これにより、簡単な加工でクランク48基部の損傷を抑制すべく構成したものである。
【0063】
図9に示す把持位置のレバー20がユーザにより開放位置(図10参照)に操作されると、クランク48の突部48bと縦壁50Bとの相対位置関係により、クランク48は図10に示すようにレバー格納位置の向きに変更される。
【0064】
以上詳述したように、上記実施例の車両のドアハンドル構造は、ドアパネル(ドアアウタパネル11)から出没可能なレバー20を一端に備え、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように回動させる回動支軸(ヒンジピン31)を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備え、上記レバー20は、当該レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)と面一になる格納位置(図4参照)と、上記駆動装置40により該レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出してユーザが把持できる把持位置(図9参照)と、上記レバー20が上記把持位置よりもさらに突出する開放位置(図10参照)と、の間を回動可能に構成され、上記レバー20は、上記回動支軸(ヒンジピン31)に設けられる付勢手段(トーションスプリング36)により格納方向に付勢されており、上記駆動装置40は、上記把持位置における上記レバー20を突出させる力が、上記格納位置から当該レバー20を突出させ始める突出初期位置(図8参照)のレバー20を突出させる力に対して、大きくなるように設定されたものである(図4図8図10図12参照)。
【0065】
この構成によれば、レバー20が突出する程、上記付勢手段(トーションスプリング36)により当該レバー20が格納方向に向かう付勢力が大きくなるが、把持位置においてレバー20を突出させる力が、突出初期位置においてレバー20を突出させる力に対して大きくなるため、駆動装置40に対する負荷の低減を図り、当該駆動装置40に負荷をかけずに作動させることができる。
【0066】
また、この発明の一実施形態においては、上記駆動装置40は、モータ42を備えており、該駆動装置40は上記把持位置においては上記モータ42の出力を必要とせず把持位置を保持するものである。
この構成によれば、レバー20の把持位置を保持する機構を別途設けることなく、当該把持位置を保持することができる。
【0067】
また、この発明の一実施形態においては、上記ヒンジアーム30の一端に上記レバー20を保持し、上記回動支軸(ヒンジピン31)を介して上記ヒンジアーム30の他端に上記駆動装置40を備えると共に、上記回動支軸(ヒンジピン31)を介して上記ヒンジアーム30を回動可能に支持するブラケット50を設け、上記駆動装置40は、モータ42と、該モータ42の回転力が伝達される出力軸47と、基端が当該出力軸47に固定され、遊端が上記ブラケット50に当接して摺動可能なクランク48と、を備えたものである(図5図12参照)。
【0068】
この構成によれば、レバー20が突出する程、上記クランク48がブラケット50との間で突っ張る力が大きくなる。クランク48がブラケット50との間で突っ張る力は、レバー20を突出させる力となるので、レバー20が突出する程、付勢手段(トーションスプリング36)の反力が大きくなるが、この反力と突っ張り力とが拮抗し、モータ42に対する負荷の増大を抑制することができる。
また、把持位置において、クランク48が基端とブラケット50との間において突っ張ることにより、モータ42からの出力によらず把持位置を維持できる。
【0069】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記ブラケット50には、上記レバー20が把持位置(図9参照)から開放位置(図10参照)に移行する時、上記クランク48の向きをレバー格納位置の向きに変更するクランク向き変更部(縦壁50B)が備えられたものである(図7図10参照)。
【0070】
この構成によれば、レバー20が開放位置(図10参照)から格納位置(図4参照)に戻る時、クランク向き変更部(縦壁50B)にてクランク48の向きをレバー格納位置の向きに変更するので、クランク48に負荷をかけない。
【0071】
詳しくは、開放位置におけるレバー20から手を放すと、ヒンジアーム30を常時反レリーズ方向に付勢するコイルスプリングのバネ力により、上記レバー20、ヒンジアーム30等が元位置(格納位置)に戻るが、上述のクランク向き変更部(縦壁50B)にてクランク48をイニシャル位置(格納位置)に変更させておくことで、クランク48とブラケット50との衝突を回避し、クランク基部の損傷を防止することができる。
【0072】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記回支軸(ヒンジピン31)は上下に延び、該回支軸(ヒンジピン31)の前方に駆動装置40が位置し、上記クランク48は、上記レバー20の格納位置において、当該クランク48から車両後方かつ車幅方向に向けて延びる突部48bを備え、上記ブラケット50は上記クランク48の遊端が当接する当接壁50Aと、該当接壁50Aの後方において車幅方向に延びる縦壁50Bと、を備え、上記クランク向き変更部は上記縦壁50Bである。
この構成によれば、簡単な加工でクランク48基部の損傷を抑制することができる。
【0073】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のドアパネルは、実施例のドアアウタパネル11に対応し、
以下同様に、
回動支軸は、ヒンジピン31に対応し、
付勢手段は、トーションスプリング36に対応し、
クランク向き変更部は、ブラケット50の縦壁50Bに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施例においては、車両のドアハンドル構造を、2ドアタイプの車両のドアハンドルに適用した構造を例示したが、これは4ドアタイプの車両のフロントドア、リヤドアにおけるドアハンドルまたはリフトゲートにおけるドアハンドルに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、ドアハンドルレバーの格納時に、当該ドアハンドルレバーとドアアウタパネルとが面一になる車両のドアハンドル構造について有用である。
【符号の説明】
【0076】
11…ドアアウタパネル(ドアパネル)
20…レバー
30…ヒンジアーム
31…ヒンジピン(回動支軸)
36…トーションスプリング(付勢手段)
40…駆動装置
42…モータ
47…出力軸
48…クランク
50…ブラケット
50A…当接壁
50B…縦壁(クランク向き変更部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12