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特許7567549車両用電池ユニットの温度調整装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両用電池ユニットの温度調整装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20241008BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241008BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20241008BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241008BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241008BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20241008BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20241008BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20241008BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20241008BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6568
H01M10/6557
H01M10/6571
H01M10/658
B60K11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021028494
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129711
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 嵩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
(72)【発明者】
【氏名】富岡 沙絵子
(72)【発明者】
【氏名】梶本 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】吉原 久未
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-056690(JP,A)
【文献】特開2008-258199(JP,A)
【文献】特開2013-254637(JP,A)
【文献】特開2013-033723(JP,A)
【文献】特開2019-160442(JP,A)
【文献】特開2018-106958(JP,A)
【文献】特開2013-113408(JP,A)
【文献】特開平08-321329(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52-10/667
H01M 50/20
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に扁平な直方体形状をなし、該第1方向に対向しかつ最大面積部である一対の第1の面部を有する複数の電池セルが、前記第1方向に並んで配置された車両用電池ユニットの温度調整装置であって、
前記第1方向と直交する第2方向の一方側に配置された冷却器と、
前記第2方向の他方側に配置されかつオン/オフ可能な加温器と、
前記冷却器と一対の前記第1の面部の一方との間に跨がってそれぞれ配置される複数の冷却用熱伝導材と、
前記加温器と一対の前記第1の面部の他方との間に跨がってそれぞれ配置される複数の加温用熱伝導材と、
複数の前記電池セルの間の位置でかつ前記第1方向に相隣接する前記冷却用熱伝導材と前記加温用熱伝導材との間の位置に配置された断熱機構と、を備えることを特徴とする車両用電池ユニットの温度調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電池ユニットの温度調整装置において、
前記冷却器は、冷却液が流通する冷却ジャケットであり、
前記冷却器と各前記電池セルとの間を、伝熱状態と断熱状態とに切換可能な切換機構を更に備えることを特徴とする車両用電池ユニットの温度調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用電池ユニットの温度調整装置において、
前記切換機構は、前記冷却器と各前記冷却用熱伝導材との間を伝熱状態と断熱状態とに切り換えるように構成されていることを特徴とする車両用電池ユニットの温度調整装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用電池ユニットの温度調整装置において、
前記切換機構は、各前記冷却用熱伝導材と該冷却用熱伝導材と相隣接する各前記第1の面部との間を伝熱状態と断熱状態とにそれぞれ切り換えるように構成されていることを特徴とする車両用電池ユニットの温度調整装置。
【請求項5】
第1方向に扁平な直方体形状をなし、該第1方向に対向しかつ最大面積部である一対の第1の面部を有する複数の電池セルが、前記第1方向に並んで配置された車両用電池ユニットの温度調整装置であって、
前記第1方向に直交する第2方向の一方側に配置された冷却器と、
前記第2方向の他方側に配置されかつオン/オフ可能な加温器と、
前記冷却器及び前記加温器の両方を前記第1の面部に熱的に接続可能な複数の熱伝導材と、
前記冷却器と各前記熱伝導材との間に設けられ、該冷却器と各該熱伝導材との間を伝熱状態と断熱状態とに切換可能な切換機構と、を備え、
前記電池ユニットの温度と目標温度との差の絶対値が所定値より大きいときに、前記電池セルの温度を調整する際に、前記電池セルを冷却するときには、前記加温器をオフにした状態で、前記切換機構を伝熱状態に切り換える一方、前記電池セルを加温するときには、前記加温器をオンにした状態で、前記切換機構を断熱状態に切り換えることを特徴とする車両用電池ユニットの温度調整装置。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1つに記載の車両用電池ユニットの温度調整装置の制御方法であって、
前記電池ユニットの温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程で取得された温度と目標温度との差の絶対値が所定値より大きいときに、前記電池セルの温度を調整する温度調整工程とを含み、
前記温度調整工程は、前記電池セルを冷却するときには、前記加温器をオフにした状態で、前記切換機構を伝熱状態に切り換える一方、前記電池セルを加温するときには、前記加温器をオンにした状態で、前記切換機構を断熱状態に切り換える工程であることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両用電池ユニットの温度調整装置及びその制御方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車載機器の多くが電動化されており、大容量の電池を備える車両が多くなっている。電池の寿命は、電池の温度の要因が大きく、電池の温度を適切に制御することは、電池の長寿命化を図る上で重要である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載には、単位蓄電部(電池セル)を加温するヒータ(加温器)と単位蓄電部を冷却する冷却器(冷却器)との両方を備え、ヒータと冷却器との両方を用いて単位蓄電部の温度を調整する蓄電装置が開示されている。この特許文献1に記載の蓄電装置では、ヒータ及び冷却器の熱は、それぞれ単位蓄電部の最大面積部以外の部分に伝熱するように構成されている。
【0004】
また、特許文献2には、積層された電池セルの間に伝熱板をそれぞれ配置して、電池セルの最大面積部から冷却器に熱を伝えることで、電池セルの冷却効率を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-106958号公報
【文献】国際公開2013/061869号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電池セルの温度を適切な温度に維持するためには、特許文献1のように加温器と冷却器との両方を有することが好ましい。また、電池セルの温度調整の効率を向上させるためには、特許文献2のように、電池セルの最大面積部と伝熱板とを接触させて、加温器の熱を電池セルに、電池セルの温度を冷却器に伝熱することが好ましい。
【0007】
しかしながら、これらを単純に組み合わせると、加温器からの熱が冷却器に流れるようになり、かえって電池セルの温度調整の効率が低下してしまうおそれがある。
【0008】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の電池セルを有する車両用電池ユニットにおいて、電池ユニットの温度調整を高効率化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、第1方向に扁平な直方体形状をなし、該第1方向に対向しかつ最大面積部である一対の第1の面部を有する複数の電池セルが、前記第1方向に並んで配置された車両用電池ユニットの温度調整装置を対象として、前記第1方向と直交する第2方向の一方側に配置された冷却器と、前記第2方向の他方側に配置されかつオン/オフ可能な加温器と、前記冷却器と前記一対の第1の面部の一方との間に跨がってそれぞれ配置される複数の冷却用熱伝導材と、前記加温器と前記一対の第1の面部の他方との間に跨がってそれぞれ配置される複数の加温用熱伝導材と、前記複数の電池セルの間の位置でかつ前記第1方向に相隣接する前記冷却用熱伝導材と前記加温用熱伝導材との間の位置に配置された断熱機構と、を備える、という構成とした。
【0010】
この構成によると、電池セルの熱を、冷却用熱伝導材を介して、最大面積部である第1の面部から冷却器に伝熱することができ、加温器の熱を、加温用熱伝導材を介して、第1の面部から電池セルに伝熱することができる。また、冷却用熱伝導材と加温用熱伝導材との間には断熱機構が設けられているため、加温器からの熱が冷却器に流れることを抑制することができる。したがって、電池ユニットの温度調整を高効率化することができる。
【0011】
前記車両用電池ユニットの温度調整装置の一実施形態では、前記冷却器は、冷却液が流通する冷却ジャケットであり、前記冷却器と前記各電池セルとの間を、伝熱状態と断熱状態とに切換可能な切換機構を更に備える。
【0012】
すなわち、冷却器が冷却ジャケットで構成されている場合、冷却液の流量を調整することで冷却性能を増減することはできるが、オフ状態にはしにくい。前記の構成では、切換機構により、冷却器と各電池セルとの間を断熱状態にできるため、電池セルの熱が冷却器に流れることを抑制することができる。これにより、加温器で電池セルを加温するときには、冷却器と各電池セルとの間を断熱状態にすることで、電池セルを効率的に加温することができる。この結果、電池ユニットの温度調整をより高効率化することができる。
【0013】
前記一実施形態において、前記切換機構は、前記冷却器と前記各冷却用熱伝導材との間を伝熱状態と断熱状態とに切り換えるように構成されている、という構成でもよい。
【0014】
この構成によると、電池ユニットが第1方向に大型化することを抑制することができる。
【0015】
前記一実施形態において、前記切換機構は、前記各冷却用熱伝導材と該冷却用熱伝導材と相隣接する前記各第1の面部との間を伝熱状態と断熱状態とにそれぞれ切り換えるように構成されている、という構成でもよい。
【0016】
この構成によると、電池ユニットが第2方向に大型化することを抑制することができる。また、電池セルの発火時には、切換機構を断熱状態に切り換えることで、電池セル間の断熱性能を向上させることができ、類焼を抑制することができる。
【0017】
ここに開示された技術の他の態様では、第1方向に扁平な直方体形状をなし、該第1方向に対向しかつ最大面積部である一対の第1の面部を有する複数の電池セルが、前記第1方向に並んで配置された車両用電池ユニットの温度調整装置を対象として、前記第1方向に直交する第2方向の一方側に配置された冷却器と、前記第2方向の他方側に配置されかつオン/オフ可能な加温器と、前記冷却器及び前記加温器の両方を前記第1の面部に熱的に接続可能な複数の熱伝導材と、前記冷却器と前記各熱伝導材との間に設けられ、該冷却器と該各熱伝導材との間を伝熱状態と断熱状態とに切換可能な切換機構と、を備える、という構成とした。
【0018】
この構成によると、加温器をオフにしかつ切換機構を伝熱状態にすれば、電池セルを効率的に冷却することができ、加温器をオンにしかつ切換機構を断熱状態にすれば、電池セルを効率的に加温することができる。したがって、電池ユニットの温度調整を高効率化することができる。また、冷却器と加温器との共通の伝熱板とすることで、電池ユニットが第1方向に大型化することを抑制することができる。
【0019】
ここに開示された技術は、車両用電池ユニットの温度調整装置の制御方法をも対象とする。具体的には、切換機構を有する温度調整装置の制御方法を対象として、前記電池ユニットの温度を取得する温度取得工程と、前記温度取得工程で取得された温度と目標温度との差の絶対値が所定値より大きいときに、前記電池セルの温度を調整する温度調整工程とを含み、前記温度調整工程は、前記電池セルを冷却するときには、前記加温器をオフにした状態で、前記切換機構を伝熱状態に切り換える一方、前記電池セルを加温するときには、前記加温器をオンにした状態で、前記切換機構を断熱状態に切り換える工程である、という構成とした。
【0020】
この構成によると、加温器の熱が冷却器に流れることを抑制することができるとともに、電池セルの冷却時に該電池セルが加温器により加温されることも抑制することができる。したがって、電池ユニットの温度調整を高効率化することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、電池ユニットの温度調整を高効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態1に係る温度調整装置を示す概略図である。
図2図2は、電池ユニットの一部を示す分解斜視図である。
図3図3は、電池ユニットの温度調整装置を示す平面図である。
図4図4は、電池ユニットの劣化特性を示すグラフである
図5図5は、温度調整装置による温度調整の処理動作を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態2に係る温度調整装置の切換用熱伝導材を示す斜視図である。
図7図7は、実施形態2に係る温度調整装置の切換機構の動作を示す図であり、(a)は断熱状態を示し、(b)は伝熱状態を示す。
図8図8は、実施形態2に係る温度調整装置による温度調整の処理動作を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態3に係る温度調整装置の切換機構の動作を示す図であり、(a)は断熱状態を示し、(b)は伝熱状態を示す。
図10図10は、実施形態4に係る温度調整装置を示す平面図である。
図11図11は、実施形態4に係る温度調整装置の切換機構の動作を示す図であり、(a)は断熱状態を示し、(b)は加温状態を示し、(c)は冷却状態を示す。
図12図12は、実施形態4に係る温度調整装置による温度調整の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において、前後方向、左右方向、及び上下方向は、説明を簡単にするために便宜上特定しているだけであり、実際の使用状態を限定するものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1は、電池ユニット1の温度調整装置100を概略的に示す。電池ユニット1は、車両用の電池ユニットである。複数(ここでは3つ)の電池モジュール10を有している。各電池モジュール10は、4つの電池セル11(図2等参照)をそれぞれ有している。各電池セル11は、例えば、12Vのリチウムイオン電池で構成されており、最大で48Vの電力を供給可能に構成されている。
【0025】
温度調整装置100は、各電池モジュール10にそれぞれ設けられている。温度調整装置100は、各電池モジュール10を冷却する冷却器110と、各電池モジュール10を加温するヒータ120とを有する。冷却器110は冷却ジャケットであり、冷却器110内には冷却液が流通する流通路が形成されている。冷却器110は、冷却液を冷却器110に供給するポンプ111にそれぞれ接続されている。ポンプ111から吐出された冷却液は、冷却器111を通った後、ラジエータ112を通ってポンプ111に戻る。ヒータ120は、オン/オフ可能なヒータである。ヒータ120は、温度調整可能に構成されている。温度調整システムは、冷却器110の他、冷却用のファン130を有している。ファン130は、車両走行風を電池ユニット1に供給することで各電池モジュール10をそれぞれ冷却する。
【0026】
温度調整装置100は、ポンプ111、ヒータ120、及びファン130を、それぞれ制御する制御ユニット140を有する。制御ユニット140は、各電池モジュール10に設けられた温度センサ(図示省略)が計測した電池モジュール10の温度に関する情報を取得する。制御ユニット140は、電池モジュール10の温度に応じて、ポンプ111の回転数を制御して、冷却器110に供給する冷却液の量を調整する。制御ユニット140は、電池モジュール10の温度に応じて、ヒータ120に設定温度に応じた電力を供給する。制御ユニット140は、電池モジュール10の温度に応じて、ファン130の回転数を制御して、電池ユニット1に供給する車両走行風の量を調整する。
【0027】
図2及び図3に示すように、各電池セル11は、前後方向(第1方向)に扁平な直方体形状をなしている。各電池セル11は、前後方向に対向する一対の第1の面部12をそれぞれ有する。一対の第1の面部12は、最大面積部となっている。各電池セル11は、前後方向に直交する左右方向(第2方向)に対向する一対の第2の面部13をそれぞれ有する。また、各電池セル11は、前後方向及び左右方向の両方に直交する上下方向に対向する一対の第3の面部14をそれぞれ有する。上側の第3の面部14には、2つの端子15がそれぞれ設けられている。
【0028】
電池モジュール10を構成する各電池セル11は、前後方向に並んで配置されている。各電池セル11は、筐体20内に収容されるとともに、該筐体20に支持されている。筐体20は、前後方向に対向する一対の第1の側壁21と、第2方向に対向する一対の第2の側壁22とを有する。
【0029】
冷却器110は、電池モジュール10の右側(第2方向の一方側)に設けられている。ヒータ120は、電池モジュール10の左側(第2方向の他方側)に設けられている。冷却器110と各電池セル11とは、複数の冷却用熱伝導材113により熱的に接続されている。ヒータ120と各電池セル11とは、複数の加温用熱伝導材121により熱的に接続されている。冷却用及び加温用熱伝導材113,121は、銅やアルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されている。
【0030】
各冷却用熱伝導材113は、冷却器110と前側の第1の面部12との間に跨がってそれぞれ配置されている。具体的には、各冷却用熱伝導材113は、前側の第1の面部12に密接する冷却用接触面部113aと、左側端部に設けられかつ冷却器110と密接する冷却用伝熱面部113bとをそれぞれ有する。冷却用接触面部113aは、第2の側壁22を貫通して、筐体20内に侵入している。冷却用伝熱面部113bは、右側面が冷却器110と密接している。冷却用伝熱面部113bの左側面は、筐体20の第2の側壁22と接触していてもよいし、該第2の側壁22から離間していてもよい。
【0031】
各加温用熱伝導材121は、ヒータ120と左側の第1の面部12との間に跨がってそれぞれ配置されている。具体的には、各加温用熱伝導材121は、後側の第1の面部12と密接する加温用接触面121aと、右側端部に設けられかつヒータ120と密接する加温用伝熱面121bとをそれぞれ有する。加温用接触面121aは、第2の側壁22を貫通して、筐体20内に侵入している。加温用伝熱面部121bは、左側面がヒータ120と密接している。加温用伝熱面部121bの右側面は、筐体20の第2の側壁22と接触していてもよいし、該第2の側壁22から離間していてもよい。
【0032】
このように、冷却用熱伝導材113と加温用熱伝導材121とが配置されることで、電池セル11の1つ1つに、冷却用熱伝導材113及び加温用熱伝導材121が配置されるようになる。
【0033】
図2及び図3に示すように、前後方向において、冷却用熱伝導材113と加温用熱伝導材121との間には、断熱材30がそれぞれ配置されている。また、断熱材30は、電池モジュール10の前側端において、冷却用熱伝導材113と第1の側壁21との間に配置され、電池モジュール10の後側端において、加温用熱伝導材121と第1の側壁21との間に配置されている。この断熱材30により、冷却用熱伝導材113と加温用熱伝導材121との間、第1の側壁21と冷却用熱伝導材113との間、及び第1の側壁21と加温用熱伝導材121との間では、熱交換が行われにくくなる。これにより、各電池セル11の熱が、各冷却用熱伝導材113を介して冷却器110に移動しやすくなる一方、ヒータ120の熱が、各加温用熱伝導材121を介して電池セル11に移動しやすくなる。断熱材30は、例えば、発泡ポリスチレンや木材で構成されている。
【0034】
ここで、電池ユニット1を高寿命化させるためには、一般に電池セル11の温度管理が重要である。特に、本実施形態1のように、電池セル11にリチウムイオン電池を採用している場合、図4に示すように、高温時及び低温時の両方において劣化が加速するおそれがある。具体的には、リチウムイオン電池の劣化の指標として、ハイレート劣化と温度劣化とがある。電池セル11の温度が低いときには、負極での反応速度が低下する。このため、急速充電(ハイレート充電)により、電析が発生しやくなる。したがって、ハイレート劣化が発生しやすくなる。一方で、負極での反応速度が低下すれば、反応に用いることができる負極の容量は確保されるため温度劣化は発生しくい。電池セル11の温度が高いときには、負極での反応速度が上昇する。これにより、ハイレート劣化は発生しにくくなる。一方で、負極での反応速度が上昇すれば、反応に用いることができる負極の容量が急速に減少するため温度劣化が発生しやすくなる。また、電池セル11の温度が高いときには、端子付近の金属抵抗が上昇するため、これによっても劣化が進みやすくなる。
【0035】
したがって、図4に示すように、本実施形態1に係る電池セル11は、適切な温度範囲がある。本実施形態1に係る温度調整装置100は、この適切な温度範囲を目標温度範囲として、各電池セル11の温度が目標温度範囲になるように冷却器110、ヒータ120、及びファン130を制御するようにした。尚、目標温度範囲は、例えば、43℃~47℃である。
【0036】
温度調整装置100による温度調整制御について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。このフローチャートは、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0037】
まず、ステップS101において、温度調整装置100は、電池モジュール10の温度Tmを取得する。
【0038】
次に、ステップS102において、温度調整装置100は、温度Tmと目標温度との差の絶対値を計算して、差の絶対値が所定値αよりも大きいか否かを判定する。温度調整装置100は、差の絶対値が所定値αよりも大きいYESのときには、ステップS103に進む。一方で、温度調整装置100は、差の絶対値が所定値α以下であるNOのときには、リターンしてステップS101に戻る。尚、目標温度は、例えば、図4に示す目標温度範囲の中央値であり、45℃程度である。また、所定値αは、例えば、2℃である。
【0039】
前記ステップS103では、温度調整装置100は、冷却が必要であるか否かを判定する。温度調整装置100は、温度Tmが目標温度よりも高いときには、冷却が必要と判定する。温度調整装置100は、冷却が必要はYESのときにはステップS104に進む。一方で、温度調整装置100は、冷却ではなく加温が必要なNOのときにはステップS106に進む。
【0040】
前記ステップS104では、温度調整装置100は、ヒータ120をオフ状態にする。
【0041】
次のステップS105では、温度調整装置100は、ファン130及びポンプ111の回転数を設定する。温度調整装置100は、温度Tmと目標温度との差に応じてファン130及びポンプ111の回転数を設定する。温度調整装置100は、ここで設定した回転数でもって、ファン130及びポンプ111を作動させる。尚、ファン130の回転数とポンプ111の回転数とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
一方で、前記ステップS106では、温度調整装置100は、ヒータ120をオンにするか、又はヒータ120の設定温度を上昇させる。温度調整装置100は、ヒータ120がオフ状態であるときには、ヒータ120をオン状態にする。一方で、温度調整装置100は、ヒータ120が既にオン状態であるときには、ヒータ120の設定温度を上昇させる。温度調整装置100は、温度Tmと目標温度との差に応じて、ヒータ120の温度を設定する。
【0043】
前記ステップS105及びS106の後に進むステップS107では、温度調整装置100は、温度Tmが目標温度に等しくなったか否かを判定する。温度調整装置100は、例えば、温度Tmが目標温度の±1℃以内であれば、温度Tmが目標温度に等しいと判定する。温度調整装置100は、温度Tmが目標温度に等しいYESのときには、ステップS108に進む一方で、温度Tmが目標温度に等しくないNOのときには、前記ステップS104で設定した回転数でのファン130及びポンプ111の作動、又は前記S105で設定した設定温度でのヒータ120の作動を継続させる。
【0044】
前記ステップS108では、温度調整装置100は、ファン130及びポンプ111の回転数を低減させるか、又は、ヒータ120をオフ若しくはヒータ120の設定温度を低減させる。温度調整装置100は、前記ステップ105において、ファン130及びポンプ111の回転数を設定したときには、ファン130及びポンプ111の回転数を低減させる。一方で、温度調整装置100は、前記ステップ106において、ヒータ120をオンにしたときには、ヒータ120をオフ若しくはヒータ120の設定温度を低減させる。尚、温度調整装置100は、例えば、外気温に応じて、ヒータ120をオフするか、ヒータ120の設定温度を低減させるかを設定してもよい。すなわち、外気温が比較的高いときには、ヒータ120をオフにして、外気温が比較的低いときには、ヒータ120の設定温度を低減するに留めるようにしてもよい。温度調整装置100は、ステップS108の後はリターンする。
【0045】
以上のようにして、温度調整装置100は、電池モジュール10(厳密には、電池セル11)の温度を適切な範囲に維持する。本実施形態1では、前後方向に相隣接する冷却用熱伝導材113と加温用熱伝導材121との間の位置に、断熱材30がそれぞれ配置されているため、加温用熱伝導材11から冷却用熱伝導材113に熱が移動するのを抑制することができる。これにより、電池セル11の冷却及び加温を効率的に行うことができる。したがって、電池ユニット1の温度調整を高効率化することができる。
【0046】
また、本実施形態1では、前後方向の端に位置する冷却用熱伝導材113と筐体20の第1の側壁21との間、及び加温用熱伝導材121と筐体20の第1の側壁21との間にも断熱材30が配置されている。これにより、冷却器110と筐体20の熱交換及びヒータ120と筐体20との熱交換が抑制されるため、電池ユニット1の温度調整を高効率化することができる。
【0047】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0048】
実施形態2では、冷却器110側の構成が前記実施形態1とは異なる。具体的には、図6及び図7に示すように、冷却器110と各冷却用熱伝導材113との間に、平板形状の補助熱伝導材214と、波板形状の切換用熱伝導材215とが配置されている。また、冷却器110は筐体220内に収容されている。筐体220内において、冷却器110と第2の側壁222との間には、冷却器110を電池モジュール10に向かって移動させる電磁ソレノイド216が設けられている。尚、各冷却用伝熱面部113bは、各電池セル11の右側の第2の面部13とは、左右方向に離間している。
【0049】
補助熱伝導材214は、冷却用熱伝導材113と同じ素材で構成されている。補助熱伝導材214は、全ての各冷却用伝熱面部113bに跨がって配置され、各冷却用伝熱面部113bと密接している。
【0050】
切換用熱伝導材215は、冷却用熱伝導材113と同じ素材で構成されている。切換用熱伝導材215は、図6に示すように、波頂部分に断熱材215aがそれぞれ配置されている。断熱材215aは、片面にだけ設けられていても良いし、両面に設けられていてもよい。切換用熱伝導材215は、その表面の法線方向の外力を受けたときに、すなわち、電磁ソレノイド216により、冷却器110が電池モジュール10側に押し付けられる力を受けたときに、波板形状から平板形状に変形可能に構成されている。
【0051】
図7(a)に示すように、電磁ソレノイド216が引き方向(オフ状態)に制御されて、切換用熱伝導材215が波板形状であるときには、冷却器110と補助熱伝導材214との間に空気層が形成される。また、切換用熱伝導材215と補助熱伝導材214との間は、断熱材215aにより断熱される。これにより、冷却器110と補助熱伝導材214とが断熱状態となって、冷却器110と各冷却用熱伝導材113との間、延いては、冷却器110と各電池セル11との間が断熱状態になる。一方で、図7(b)に示すように、電磁ソレノイド216が延ばし方向(オン状態)に制御されて、切換用熱伝導材215が平板形状に変形したときには、切換用熱伝導材215が、冷却器110及び補助熱伝導材214の両方と密接する。これにより、冷却器110と補助熱伝導材214とが伝熱状態となって、冷却器110と各電池セル11との間が伝熱状態になる。このことから、切換用熱伝導材215及び電磁ソレノイド216は、冷却器110と各冷却用熱伝導材113との間、延いては、冷却器110と各電池セル10との間を、伝熱状態と断熱状態とに切換可能な切換機構を構成する。
【0052】
図8は、本実施形態2における温度調整装置200による温度調整制御を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定時間毎に実行される。
【0053】
まず、ステップS201において、温度調整装置200は、電池モジュール10の温度Tmを取得する。
【0054】
次に、ステップS202において、温度調整装置200は、温度Tmと目標温度との差の絶対値を計算して、差の絶対値が所定値αよりも大きいか否かを判定する。温度調整装置200は、差の絶対値が所定値αよりも大きいYESのときには、ステップS203に進む。一方で、温度調整装置200は、差の絶対値が所定値α以下であるNOのときには、リターンしてステップS201に戻る。尚、目標温度は、前記実施形態1と同様に、45℃程度であり、所定値αも、前記実施形態1と同様に、2℃である。
【0055】
前記ステップS203では、温度調整装置200は、冷却が必要であるか否かを判定する。温度調整装置200は、温度Tmが目標温度よりも高いときには、冷却が必要と判定する。温度調整装置200は、冷却が必要はYESのときにはステップS204に進む。一方で、温度調整装置200は、冷却ではなく加温が必要なNOのときにはステップS207に進む。
【0056】
前記ステップS204では、温度調整装置200は、ヒータ120をオフ状態にする。
【0057】
次のステップS205において、温度調整装置200は、ファン130及びポンプ111の回転数を設定する。温度調整装置200は、温度Tmと目標温度との差に応じてファン130及びポンプ111の回転数を設定する。温度調整装置200は、ここで設定した回転数でもって、ファン130及びポンプ111を作動させる。尚、ファン130の回転数とポンプ111の回転数とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
次いでステップS206において、温度調整装置200は、電磁ソレノイド216をオン状態にして、前記切換機構を伝熱状態に切り換える。
【0059】
一方で、前記ステップS207では、温度調整装置200は、ヒータ120をオンにするか、又はヒータ120の設定温度を上昇させる。温度調整装置200は、ヒータ120がオフ状態であるときには、ヒータ120をオン状態にする。一方で、温度調整装置200は、ヒータ120が既にオン状態であるときには、ヒータ120の設定温度を上昇させる。温度調整装置200は、温度Tmと目標温度との差に応じて、ヒータ120の温度を設定する。
【0060】
次のステップS208において、温度調整装置200は、電磁ソレノイド216をオフ状態にして、前記切換機構を断熱状態に切り換える。
【0061】
前記ステップS206及びS208の後に進むステップS209では、温度調整装置200は、温度Tmが目標温度に等しくなったか否かを判定する。温度調整装置200は、例えば、温度Tmが目標温度の±1℃以内であれば、温度Tmが目標温度に等しいと判定する。温度調整装置200は、温度Tmが目標温度に等しいYESのときには、ステップS208に進む一方で、温度Tmが目標温度に等しくないNOのときには、前記ステップS204で設定した回転数でのファン130及びポンプ111の作動、又は前記S205で設定した設定温度でのヒータ120の作動を継続させる。
【0062】
前記ステップS210では、温度調整装置200は、ファン130及びポンプ111の回転数を低減させるか、又は、ヒータ120をオフ若しくはヒータ120の設定温度を低減させる。温度調整装置120は、前記ステップ205において、ファン130及びポンプ111の回転数を設定したときには、ファン130及びポンプ111の回転数を低減させる。一方で、温度調整装置200は、前記ステップ207において、ヒータ120をオンにしたときには、ヒータ120をオフ若しくはヒータ120の設定温度を低減させる。尚、温度調整装置200は、例えば、外気温に応じて、ヒータ120をオフするか、ヒータ120の設定温度を低減させるかを設定してもよい。すなわち、外気温が比較的高いときには、ヒータ120をオフにして、外気温が比較的低いときには、ヒータ120の設定温度を低減するに留めるようにしてもよい。温度調整装置200は、ステップS210の後はリターンする。
【0063】
本実施形態2のように、冷却器110が冷却ジャケットで構成されている場合、冷却液の流量を調整することで冷却性能を増減するはできるが、オフ状態にはしにくい。本実施形態2では、前記切換機構により、冷却器110と各電池セル11との間を断熱状態にできるため、電池セル11の熱が冷却器110に流れることを効果的に抑制することができる。これにより、ヒータ120で電池セル11を加温するときには、冷却器110と各電池セル11との間を断熱状態にすることで、電池セル11を効率的に加温することができる。この結果、電池ユニット1の温度調整をより高効率化することができる。
【0064】
また、平板形状の補助熱伝導材214を用いることで、電磁ソレノイド216をオン状態としたときに、切換用熱伝導材215に均等に力が入力されやすくなる。これにより、切換用熱伝導材215の波板形状から平板形状への変形を円滑にすることができる。
【0065】
(実施形態3)
以下、実施形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0066】
本実施形態3は、電池セル11同士の間の構成が実施形態1及び2とは異なる。具体的には、図9に示すように、各冷却用熱伝導材113と各電池セル11の第1の面部12との間には、波板形状の切換用熱伝導材315がそれぞれ配置されている。また、筐体320内において、後側の部分には、各電池セル11を前側に向かって押圧する電磁ソレノイド316が配置されている。電磁ソレノイド316と加温用熱伝導材121との間には断熱材30が配置されている。
【0067】
切換用熱伝導材315は、電池セル11と接触する波頂部分に断熱材(図示省略)がそれぞれ配置されている。切換用熱伝導材315は、その表面の法線方向の外力を受けたときに、すなわち、電磁ソレノイド316により、後側から前側に向かう力を受けたときに、波板形状から平板形状に変形可能に構成されている。
【0068】
図9(a)に示すように、電磁ソレノイド316が引き方向(オフ状態)に制御されて、各切換用熱伝導材315が波板形状であるときには、各冷却用熱伝導材113と各電池セル11との間に空気層が形成される。また、各切換用熱伝導材315と各電池セル11との間は、断熱材により断熱される。これにより、各冷却用熱伝導材113と各電池セル11とが断熱状態となって、冷却器110と各電池セル11とが断熱状態になる。一方で、図9(b)に示すように、電磁ソレノイド316が延ばし方向(オン状態)に制御されて、切換用熱伝導材315が平板形状に変形したときには、切換用熱伝導材315が、冷却用熱伝導材113及び電池セル11の両方と密接する。これにより、各切換用熱伝導材315と各電池セル11とが伝熱状態となって、冷却器110と各電池セル11とが伝熱状態になる。このことから、切換用熱伝導材315及び電磁ソレノイド316は、各冷却用熱伝導材113と各電池セル11との間、延いては、冷却器110と各電池セル10との間を、伝熱状態と断熱状態とに切換可能な切換機構を構成する。
【0069】
尚、切換機構が、断熱状態から伝熱状態に切り換えるときには、冷却用熱伝導材113及び加温用熱伝導材121も前後方向に移動する。図示は省略しているが、筐体320の第2の側壁322には、各熱伝導材113,121を前後方向にスライドさせるためのスライド孔が設けられている。また、図示を省略しているが、各電池セル11は、バスバーばねにより互いに電気的に接続されている。バスバーばねが伸び縮みすることで、切換機構により、伝熱状態と断熱状態とのどちらに切り換えられても、各電池セル11は、互いに電気的に接続された状態となる。
【0070】
このような構成であっても、前記切換機構により、冷却器110と各電池セル11との間を断熱状態にできるため、電池セル11の熱が冷却器110に流れることを効果的に抑制することができる。これにより、ヒータ120で電池セル11を加温するときには、冷却器110と各電池セル11との間を断熱状態にすることで、電池セル11を効率的に加温することができる。この結果、電池ユニット1の温度調整をより高効率化することができる。
【0071】
また、電池セル11の発火時には、前記切換機構を断熱状態に切り換えることで、電池セル11間の断熱性能を向上させることができ、類焼を抑制することができる。
【0072】
尚、この温度調整装置300の温度調整制御は、前記実施形態2で示したフローチャートを採用することができる。
【0073】
(実施形態4)
以下、実施形態4について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1~3と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施形態4に係る温度調整装置400は、図11に示すように、前記実施形態1~3とは異なり、冷却器110及びヒータ120の両方が筐体420内に収容されている。温度調整装置400は、冷却器110及びヒータ120の両方が、共通の熱伝導部材410を介して、電池セル11と熱的に接続可能になっている。熱伝導材410は、電池セル11の第1の面部12と前後方向に対向する主面部411と、主面部411の右側の端部から前後方向に延びた冷却側面部412と、主面部411の左側の端部から前後方向に延びた加温側面部413とを有する。各主面部411と各電池セル11の第1の面部12との間には、波板形状の第1切換用熱伝導材415がそれぞれ配置されている。冷却側面部412は、補助熱伝導材414とそれぞれ接触している。冷却器110と補助熱伝導材414との間には、第2切換用熱伝導材416が配置されている。加温側面部413はヒータ120とそれぞれ接触している。各冷却側面部412及び各加温側面部413と各電池セル11の第2の面部13とは、左右方向にそれぞれ離間している。
【0075】
また、筐体420内において、後側の部分には、各電池セル11を前側に向かって押圧する第1電磁ソレノイド417が配置されている。筐体420内において、冷却器110と第2の側壁422との間には、冷却器110を電池モジュール10に向かって移動させる第2電磁ソレノイド418が設けられている。
【0076】
第1切換用熱伝導材415の構成は、前記第3実施形態における切換用熱伝導材と同じである。第1切換用熱伝導材415は、その表面の法線方向の外力を受けたときに、すなわち、第1電磁ソレノイド417により、後側から前側に向かう力を受けたときに、波板形状から平板形状に変形可能に構成されている。
【0077】
第2切換用熱伝導材416の構成は、前記第2実施形態における切換用熱伝導材と同じである。第2切換用熱伝導材416は、その表面の法線方向の外力を受けたときに、すなわち、第2電磁ソレノイド418により、冷却器110が電池モジュール10側に押し付けられる力を受けたときに、波板形状から平板形状に変形可能に構成されている。
【0078】
補助熱伝導材414の構成は、前記第2実施形態における補助熱伝導材と同じである。補助熱伝導材214は、全ての冷却側面部412に跨がって配置されている。
【0079】
本実施形態4に係る温度調整装置400は、電池セル11が冷却器110及びヒータ120の両方と熱的に接続されない断熱状態と、電池セル11がヒータ120と熱的に接続される加温状態と、電池セル11が冷却器110と熱的に接続される冷却状態とに切換可能である。具体的には、図11(a)に示すように、第1電磁ソレノイド417及び第2電磁ソレノイド418の両方が引き方向(オフ状態)に制御されて、各第1切換用熱伝導材415及び第2切換用熱伝導材416が波板形状であるときには、各熱伝導材410と各電池セル11との間、及び補助熱伝導材414と冷却器110との間に空気層がそれぞれ形成される。また、各第1切換用熱伝導材415と各電池セル11との間、及び第2切換用熱伝導材断熱材416と補助熱伝導材414との間は、第1及び第2切換用熱伝導材415,416に設けられた断熱材により断熱される。これにより、各熱伝導材410と各電池セル11との間、及び各熱伝導材410と冷却器111との間が断熱状態となって、冷却器110及びヒータ120の両方と各電池セル11とが断熱状態になる。図11(b)に示すように、第1電磁ソレノイド417が延ばし方向(オン状態)に制御されて、第1切換用熱伝導材415が平板形状に変形したときには、第1切換用熱伝導材415が、熱伝導材410及び電池セル11の両方と密接する。これにより、各電池セル11がヒータ120と熱的に接続される。一方で、第2電磁ソレノイド418は引き方向に制御されているため、第2切換用熱伝導材416は波板形状のままであり、各熱伝導材410と冷却器111との間は断熱状態になっている。このため、この状態では、加温のみが可能になる。図11(c)に示すように、第1電磁ソレノイド417及び第2電磁ソレノイド418の両方が延ばし方向に制御されると、第1切換用熱伝導材415及び第2切換用熱伝導材416の両方が平板形状に変形する。このときには、第1切換用熱伝導材415が、熱伝導材410及び電池セル11の両方と密接し、第2切換用熱伝導材416が、冷却器110及び補助熱伝導材414の両方と密接する。これにより、冷却器110と各電池セル11とが熱的に接続される。この状態では、冷却が可能になる。このことから、第1切換用熱伝導材415、第2切換用熱伝導材416、第1電磁ソレノイド417、及び第2電磁ソレノイド416は、冷却器110と各電池セル10との間を、伝熱状態と断熱状態とに切換可能な切換機構を構成する。特に、本実施形態4では、切換機構は、断熱状態、加温状態、及び冷却状態に切り換え可能である。
【0080】
尚、切換機構が、断熱状態から加温状態や冷却状態に切り換えるときには、熱伝導材410も前後方向に移動する。図示は省略しているが、筐体420には、各熱伝導材410を前後方向にスライドさせるためのスライド孔が設けられている。また、図示を省略しているが、各電池セル11は、バスバーばねにより互いに電気的に接続されている。バスバーばねが伸び縮みすることで、切換機構により、伝熱状態と断熱状態とのどちらに切り換えられても、各電池セル11は、互いに電気的に接続された状態となる。
【0081】
次に、本実施形態4に係る温度調整装置400による温度調整制御について、図12のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0082】
まず、ステップS401において、温度調整装置400は、電池モジュール10の温度Tmを取得する。
【0083】
次に、ステップS402において、温度調整装置400は、温度Tmと目標温度との差の絶対値を計算して、差の絶対値が所定値αよりも大きいか否かを判定する。温度調整装置400は、差の絶対値が所定値αよりも大きいYESのときには、ステップS404に進む。一方で、温度調整装置400は、差の絶対値が所定値α以下であるNOのときには、ステップS403に進む。尚、目標温度は、前記実施形態1と同様に、45℃程度であり、所定値αも、前記実施形態1と同様に、2℃である。
【0084】
前記ステップS403では、温度調整装置400は、第1電磁ソレノイド417及び第2電磁ソレノイド418の両方をオフ状態にして、断熱状態に切り換える。これにより、電池セル11が冷却器110による冷却もヒータ120による加温もされなくなり、適切な温度を維持することができる。
【0085】
一方で、前記ステップS404では、温度調整装置400は、冷却が必要であるか否かを判定する。温度調整装置400は、温度Tmが目標温度よりも高いときには、冷却が必要と判定する。温度調整装置400は、冷却が必要はYESのときにはステップS405に進む。一方で、温度調整装置400は、冷却ではなく加温が必要なNOのときにはステップS408に進む。
【0086】
前記ステップS405では、温度調整装置400は、ヒータ120をオフ状態にする。
【0087】
次のステップS406において、温度調整装置400は、ファン130及びポンプ111の回転数を設定する。温度調整装置400は、温度Tmと目標温度との差に応じてファン130及びポンプ111の回転数を設定する。温度調整装置400は、ここで設定した回転数でもって、ファン130及びポンプ111を作動させる。尚、ファン130の回転数とポンプ111の回転数とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0088】
次いでステップS407において、温度調整装置400は、第1電磁ソレノイド417及び第2電磁ソレノイド418の両方をオン状態にして、冷却状態に切り換える。
【0089】
一方で、前記ステップS408では、温度調整装置400は、ヒータ120をオンにするか、又はヒータ120の設定温度を上昇させる。温度調整装置400は、ヒータ120がオフ状態であるときには、ヒータ120をオン状態にする。一方で、温度調整装置400は、ヒータ120が既にオン状態であるときには、ヒータ120の設定温度を上昇させる。温度調整装置400は、温度Tmと目標温度との差に応じて、ヒータ120の温度を設定する。
【0090】
次のステップS409において、温度調整装置400は、第1電磁ソレノイド417をオフ状態にし、かつ第2電磁ソレノイド418をオフ状態にして、加温状態に切り換える。
【0091】
前記ステップS407及びS409の後に進むステップS410では、温度調整装置400は、温度Tmが目標温度に等しくなったか否かを判定する。温度調整装置400は、例えば、温度Tmが目標温度の±1℃以内であれば、温度Tmが目標温度に等しいと判定する。温度調整装置400は、温度Tmが目標温度に等しいYESのときには、ステップS411に進む一方で、温度Tmが目標温度に等しくないNOのときには、前記ステップS407で設定した回転数でのファン130及びポンプ111の作動、又は前記S408で設定した設定温度でのヒータ120の作動を継続させる。
【0092】
前記ステップS411では、温度調整装置400は、ファン130及びポンプ111の回転数を低減させるか、又は、ヒータ120をオフ若しくはヒータ120の設定温度を低減させる。温度調整装置120は、前記ステップ406において、ファン130及びポンプ111の回転数を設定したときには、ファン130及びポンプ111の回転数を低減させる。一方で、温度調整装置400は、前記ステップ408において、ヒータ120をオンにしたときには、ヒータ120をオフ若しくはヒータ120の設定温度を低減させる。尚、温度調整装置400は、例えば、外気温に応じて、ヒータ120をオフするか、ヒータ120の設定温度を低減させるかを設定してもよい。すなわち、外気温が比較的高いときには、ヒータ120をオフにして、外気温が比較的低いときには、ヒータ120の設定温度を低減するに留めるようにしてもよい。温度調整装置400は、ステップS410の後はリターンする。
【0093】
本実施形態4では、前記切換機構により、冷却器110と各電池セル11との間を断熱状態にできるため、電池セル11の熱が冷却器110に流れることを効果的に抑制することができる。これにより、ヒータ120で電池セル11を加温するときには、冷却器110と各電池セル11との間を断熱状態にすることで、電池セル11を効率的に加温することができる。この結果、電池ユニット1の温度調整をより高効率化することができる。
【0094】
また、前記切換機構により、各電池セル11が冷却器110及びヒータ120の両方と断熱された状態にすることができる。このため、電池セル11が適切な温度であるときには、各電池セル11を冷却器110及びヒータ120の両方と断熱状態にすることで、各電池セル11を適切な温度に維持しやすくなる。
【0095】
さらに、電池セル11の発火時には、前記切換機構を断熱状態に切り換えることで、電池セル11間の断熱性能を向上させることができ、類焼を抑制することができる。
【0096】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0097】
例えば、前述の実施形態4では、各熱伝導材410と各電池セル11との間に、第1切換用熱伝導材415がそれぞれ配置されていた。これに限らず、第1切換用熱伝導材415と第1電磁ソレノイド417を省略してもよい。この場合には、各熱伝導材410と各電池セル11の第1の面部12とを密接させるようにする。
【0098】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
ここに開示された技術は、第1方向に扁平な直方体形状をなし、該第1方向に対向しかつ最大面積部である一対の第1の面部と、前記第1方向に直交する第2方向に対向する一対の第2の面部とを有する複数の電池セルが、前記第1方向に並んで配置された車両用電池ユニットの温度調整装置として有用である。
【符号の説明】
【0100】

1 電池ユニット
11 電池セル
12 第1の面部
13 第2の面部
30 断熱材(断熱機構)
100 温度調整装置
110 冷却器
113 冷却用熱伝導材
120 ヒータ(加温器)
121 加温用熱伝導材
215 切換用熱伝導材(切換機構)
216 電磁ソレノイド(切換機構)
315 切換用熱伝導材(切換機構)
316 電磁ソレノイド(切換機構)
410 熱伝導材
415 第1切換用熱伝導材(切換機構)
416 第2切換用熱伝導材(切換機構)
417 第1電磁ソレノイド(切換機構)
418 第2電磁ソレノイド(切換機構)
図1
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