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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241008BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20241008BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/34 U
B65D77/20 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021030659
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131627
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 和佳子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 貴世
(72)【発明者】
【氏名】中田 清
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-158763(JP,A)
【文献】特開2000-264367(JP,A)
【文献】特開平09-066586(JP,A)
【文献】特開2003-095350(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108070330(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 81/34
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と底部とを有するカップと、前記胴部に設けられた開口部を閉じる蓋材とを備える容器であって、
前記胴部及び前記底部は、第1紙基材層と、前記第1紙基材層の少なくとも一方の面側に設けられた第1シーラント層とを有する第1積層体を構成材料としており、
前記胴部の前記開口部は、前記第1シーラント層が表出するようにして前記第1積層体が折り返されたフランジ部を備え、
前記蓋材は、基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面側に設けられたシーラントフィルム層とを有する第2積層体を構成材料としており、
前記シーラントフィルム層は、ベース層と、前記フランジ部に接合される第2シーラント層とを有し、
前記第1シーラント層は、ポリプロピレン樹脂を含有し、前記ポリプロピレン樹脂のMFRの値が30g/10min以上50g/10min以下であり、
前記ベース層は、ポリエチレン系樹脂により構成され、
前記第2シーラント層は、ポリエチレン系樹脂が主成分であり、粘着付与剤又はポリスチレン系の樹脂を含んでいること、
を特徴とする容器。
【請求項2】
前記第2積層体の前記基材層は、第2紙基材層であり、
前記蓋材の総質量の半分以上を前記第2紙基材層が占めること
を特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記カップの前記フランジ部と、前記蓋材との封緘強度は8kPa以上であること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋材を有したカップから構成される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙カップ等の器は、紙基材にシーラント層を設けた積層体が用いられており、シーラント層には、ヒートシール性や、積層体の柔軟性を確保する観点から主にポリエチレン(PE)樹脂が用いられてきた。
昨今、このような容器について電子レンジを用いて加熱する使用形態が要望されており、上述のようなポリエチレン樹脂をシーラント層とした積層体では耐熱性が不十分であった。そこで、ポリエチレン樹脂よりも耐熱性が高いポリプロピレン樹脂をシーラント層に用いた紙カップが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-95350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の紙カップは、カップの開口部をヒートシールにより開封可能に蓋材により閉じた場合、閉じられた蓋材が開口部から剥がれなかったり、紙剥けしたりする問題が生じる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決すべく、良好な剥離特性を有する蓋材を有した容器及び蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
第1の発明は、胴部(11)と底部(12)とを有するカップ(10)と、前記胴部に設けられた開口部を閉じる蓋材(20)とを備える容器(1)であって、前記胴部及び前記底部は、第1紙基材層(101)と、前記第1紙基材層の少なくとも一方の面側に設けられた第1シーラント層(102)とを有する第1積層体(100)を構成材料としており、前記胴部の前記開口部は、前記第1シーラント層が表出するようにして前記第1積層体が折り返されたフランジ部(13)を備え、前記蓋材は、基材層(201)と、前記基材層の少なくとも一方の面側に設けられたシーラントフィルム層(202)とを有する第2積層体(200)を構成材料としており、前記シーラントフィルム層は、ベース層(202A)と、前記フランジ部に接合される第2シーラント層(202B)とを有し、前記第1シーラント層は、ポリプロピレン系樹脂を含有し、前記ポリプロピレン系樹脂のMFRの値が15g/10min以上60g/10min以下であり、前記ベース層は、ポリエチレン系樹脂により構成され、前記第2シーラント層は、ポリエチレン系樹脂が主成分であり、粘着付与剤又はポリスチレン系の樹脂を含んでいること、を特徴とする容器。
である。
【0008】
第2の発明は、前記第2積層体(200)の前記基材層(201)は、第2紙基材層であり、前記蓋材の総質量の半分以上を前記第2紙基材層が占めることを特徴とする第1の発明の容器(1)である。
【0009】
第3の発明は、前記カップの前記フランジ部(13)と、前記蓋材(20)との封緘強度は8kPa以上であること、を特徴とする第1の発明又は第2の発明の容器(1)である。
【0010】
第4の発明は、カップ(10)の開口部を閉じる蓋材(20)であって、前記蓋材は、第2紙基材層(201)と、前記第2紙基材層の一方の面側に設けられたシーラントフィルム層(202)とを有する第2積層体(200)を構成材料としており、前記シーラントフィルム層は、ベース層(202A)と、前記開口部に接合される第2シーラント層(202B)とを有し、前記ベース層は、ポリエチレン系樹脂により構成され、前記第2シーラント層は、ポリエチレン系樹脂が主成分であり、粘着付与剤又はポリスチレン系の樹脂を含み、前記蓋材の総質量の半分以上を前記第2紙基材層が占めることを特徴とする蓋材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な剥離特性を有する蓋材を有した容器及び蓋材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の容器の斜視図である。
図2】フランジ部にヒートシールされた蓋材及びカップの断面図である。
図3】カップに用いられる第1積層体の層構成を説明する図である。
図4】蓋材に用いられる第2積層体の層構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の蓋材を有した容器について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、実施形態の容器の斜視図である。
図2は、フランジ部にヒートシールされた蓋材及びカップの断面図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、胴部11、蓋材20は、後述するように、複数の層を有する第1積層体、第2積層体により構成されるが、図2では、胴部11、蓋材20の層構成を、カップの内方側に位置する第1シーラント層102、第2シーラント層202Bのみを記載し、その他の層を省略している。
【0014】
(容器)
容器1は、図1に示すように、カップ10、蓋材20を備え、カップ10の収容部内に、例えば、食品等の内容物を収容して、蓋材20により密封することができる。本実施形態の容器1は、電子レンジを用いることにより、カップ10内に収容された内容物をカップ10に入れたまま加熱調理することができる。そのため、カップ10及び蓋材20のそれぞれには、加熱しても発砲したり、溶解したりするなどの現象を発生させないために、耐熱性を有する材料により構成される。
【0015】
(カップ10)
カップ10は、胴部11、底部12、フランジ部13により形成された、円錐台状に形成された器である。カップ10は、第1紙基材層101を含む第1積層体100を構成材料として、胴部11、底部12、フランジ部13が形成されている。なお、第1積層体100の詳細については、後述する。
胴部11は、カップ10の円錐台の周側面を形成する筒状の部分であり、筒状の一方の端縁に底部12が配置され、他方の端縁にフランジ部13が形成されている。
底部12は、カップ10の底部を構成する部材であり、胴部11とは別部材により構成されている。
【0016】
フランジ部13は、カップ10の開口部の縁に形成され、図2に示すように、胴部11を構成する第1積層体100の端縁をカップ10の外方側へ向けて折り返した部分である。そのため、フランジ部13は、胴部11と一体に形成されている。
このように、胴部11にフランジ部13を設けることにより、カップ10の開口部の剛性を高くすることができ、カップ10を持ち運ぶ際にカップ10が変形してしまうのを抑制することができる。また、フランジ部13を設けることにより、蓋材20をカップ10に接合しやすくすることができる。
ここで、第1積層体100の一方の表面には第1シーラント層102(後述する)が設けられており、胴部11、底部12を構成する第1積層体100は、図2に示すように、カップ10の内方側に第1シーラント層102が位置するように配置される。そのため、胴部11の端縁を折り返すことによって形成されるフランジ部13の表面には第1シーラント層102が表出する。
【0017】
(蓋材20)
蓋材20は、カップ10の開口部を密閉する部材であり、カップ10に設けられたフランジ部13に再剥離可能に接合される。蓋材20は、第2積層体200を構成材料として形成されており、図2に示すように、第2積層体200の一方の表面に設けられた第2シーラント層202Bがカップ10側に位置するようにしてカップ10のフランジ部13に接合される。なお、第2積層体200の詳細は後述する。
ここで、フランジ部13の表面には、上述したように第1積層体100の第1シーラント層102が表出しているので、この第1シーラント層102と、蓋材を構成する第2積層体200の第2シーラント層202Bとがヒートシールされることより、カップ10の開口部を蓋材20により剥離可能に密閉することができる。
【0018】
蓋材20とカップ10(フランジ部13)との接合をより確実にする観点から、図2に示す断面において、フランジ部13上における蓋材20との接合幅tは、1mm以上4mm以下であることが望ましい。接合幅tが1mm未満であると、蓋材20の接合面積が狭くなり過ぎてしまい、蓋材20をカップ10に安定して接合させることができず、封緘強度が低下してしまうので望ましくない。また、接合幅tが4mmを超えると、フランジ部13の幅寸法も大きくする必要があり、それに伴いカップ10の外形も大きくなり過ぎてしまい望ましくない。また、蓋材20の接合面積が大きくなり過ぎて、蓋材20の剥離が困難になる場合もあるので望ましくない。
【0019】
(第1積層体)
次に、カップ10を構成する第1積層体100について説明する。
図3は、カップに用いられる第1積層体の層構成を説明する図である。
第1積層体100は、カップ10の胴部11、底部12、フランジ部13を構成する部材であり、カップ10の内方側から順に、第1シーラント層102、第1紙基材層101、表面樹脂層103が積層されている。
【0020】
第1紙基材層101は、第1積層体100のベースとなる紙製の基材であり、例えば、ノーコート紙や、クラフト紙、出所のわかる再生紙等を適用することができる。第1紙基材層101の坪量は、カップ10を良好に成形する観点から、150g/m以上350g/m以下であることが望ましく、180g/m以上240g/m以下であることがより望ましい。仮に、第1紙基材層101の坪量が150g/m未満であると、成型したカップの座屈強度が得られず、スタックした時の押し圧でカップの一部が折れると、カップ同士が詰まって取り出せなくなったり、ちょっとした落下でフランジが変形したりして取扱いが難しくなるため好ましくない。また、第1紙基材層101の坪量が350g/mよりも大きいと、フランジ部のカール加工が高速で安定加工できなくなるため好ましくない。
【0021】
第1シーラント層102は、カップ10の最も内方側に位置する層であり、加熱による接着特性を有するヒートシール性を有する。第1シーラント層102には、良好な耐熱性とヒートシール性とを兼ね備える観点から、ポリプロピレン(PP)樹脂を主成分としている。第1シーラント層102に用いられるポリプロピレン樹脂の種類は、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが例示できる。プロピレンの一部を他のモノマーに置き換えた共重合ポリプロピレンであってもよい。本発明においては、高い耐熱性を得る観点から、ホモポリマーを用いることが好ましい。
また、第1シーラント層102を形成するポリプロピレン樹脂のMFR(メルトフローレート)の値は、15g/10min以上60g/10min以下であることが望ましく、30g/10min以上50g/10min以下であることがより望ましく、35g/10min以上45g/10min以下であることが更に望ましい。
【0022】
仮に、MFRの値が15g/10min未満である場合、第1紙基材層101に対して押出成形により第1シーラント層102を形成する場合において、溶融時の樹脂の流動性が低く、第1紙基材層101との密着性が低下してしまうので望ましくない。また、仮に、MFRの値が60g/10minよりも大きい場合、押し出された樹脂がダイの有効幅よりも狭くなるネックインの現象が生じて第1積層体100を形成するのが困難になる場合があり、また、加熱時の発泡、溶融などの現象が生じてしまう場合もあるので望ましくない。
【0023】
第1シーラント層102は、加熱により隙間なくヒートシールされる観点から、その厚みは、15μm以上50μm以下であることが望ましく、20μm以上40μm以下であることがより望ましい。第1シーラント層102の厚みが15μm以上であれば、例えば、第1積層体100を用いて胴部11を作製するときに、胴部11の端縁同士の接合においてヒートシール強度を十分に維持することができる。また、十分な耐ピンホール性を確保することもできる。
また、第1シーラント層102の厚みを50μm以下とすることで、胴部原反のコシを保ちつつ、プラスチック使用量を最小限に抑えることができる。また、打ち抜き加工により胴部11、底部12のブランクを作成する場合に、バリの発生や、抜き不良が生じてしまうのを極力抑制することができる。
第1シーラント層102には、例えば、ホモポリマータイプのポリプロピレン樹脂であり、MFRの値が42g/10minとなるサンアロマー社製のPHA03Aを用いることができる。
【0024】
表面樹脂層103は、カップ10の最も外方側に位置する層であり、第1紙基材層101の外方側の面を保護する。また、表面樹脂層103は、加熱による接着特性を有するヒートシール性を有する。表面樹脂層103は、第1積層体100のカールを防止する観点から、第1シーラント層102と同等の材料で、同等の厚みにより同様の方法で形成されるのが望ましい。
なお、第1紙基材層101の外方側の面には、印刷等を施してもよく、その場合、印刷内容を視認できるようにする観点から、表面樹脂層103は、透明又は略透明であることが望ましい。
【0025】
(第2積層体)
次に、蓋材20を構成する第2積層体200について説明する。
図4は、蓋材に用いられる第2積層体の層構成を説明する図である。
第2積層体200は、図4に示すように、カップ10の内方側から順に、シーラントフィルム層202、接着剤層205、第1樹脂層203、接着剤層205、第2紙基材層201、接着剤層205、印刷層206、第2樹脂層204が積層されている。
【0026】
第2紙基材層201は、第2積層体200のベースとなる紙製の基材であり、例えば、ノーコート紙や、コート紙、上質等を適用することができる。また、第2紙基材層201の坪量は、カップ10から剥離可能な蓋材20としての柔軟性を確保する観点から、40g/m以上100g/m以下であることが望ましく、70g/m以上90g/m以下であることがより望ましい。仮に、第1紙基材層101の坪量が40g/m未満であると、蓋材20の厚みが薄いため、意図しない方向にカールしてしまうので好ましくない。また、第1紙基材層101の坪量が100g/mよりも大きいと、蓋材20の厚みが厚くなり過ぎてしまい蓋材20としての柔軟性が低下してしまい、容器1の開封の作業性が低下してしまうので望ましくない。
ここで、この第2積層体200から形成される蓋材20は、全体の総質量に対して半分以上を第2紙基材層201が占めるように形成されている。これにより、蓋材20(第2積層体200)は、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0027】
シーラントフィルム層202は、蓋材20の最もカップ10側に位置する層である。シーラントフィルム層202は、第1樹脂層203側から順に、ベース層202A、第2シーラント層202Bが積層されたフィルムである。シーラントフィルム層202は、例えば、第1樹脂層203に対してラミネート接着剤による接着剤層205を介してドライラミネート法により接合される。なお、使用されるラミネート接着剤は、従来公知のものを使用することができ、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、イソシアネート系等の接着剤を使用することができる。
ベース層202Aは、シーラントフィルム層202の基礎となる基材であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を適用することができるが、特にポリエチレン系樹脂を用いることが望ましい。
【0028】
第2シーラント層202Bは、蓋材20の最もカップ10側に位置する層であり、加熱による接着特性を有するヒートシール性を有する。第2シーラント層202Bは、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、更に、粘着付与剤又はポリスチレン系の樹脂を含んでいる。ここで、主成分とは、対象となる層(ここでは第2シーラント層202B)中の含有量が質量比で41%以上であることをいい、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上の割合で含む成分をいう。
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)などが例示できる。これらのホモポリマーのみならず、エチレンの一部を他のモノマーに置き換えた共重合ポリオレフィンであってもよい。具体的には、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)が例示できる。第2シーラント層202B中のポリエチレン系樹脂の含有量は、41質量%以上95質量%であることが好ましい。
【0029】
粘着付与剤としては、脂環式系炭化水素樹脂(脂環式樹脂)を含む脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ロジン類、ポリテルペン系樹脂等が挙げられる。
脂肪族系炭化水素樹脂としては、例えば、ブテン-1、ブタジエン、イソブチレン、1,3-ペンタジエン等の炭素原子数4~5のモノオレフィンまたはジオレフィンを主成分とする重合体、シクロペンタジエンやスペントC4~C5留分中のジエン成分を環化二量体化後重合させた樹脂等の環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を環内水添した樹脂等が挙げられる。芳香族系炭化水素樹脂としては、例えば、α-メチルトルエン、ビニルトルエン、インデン等のビニル芳香族系炭化水素を主成分とした樹脂等が挙げられる。ロジン類としては、例えば、ロジン、重合ロジン、ロジングリセリンエステル、ロジングリセリンエステルの水添物、ロジングリセリンエステルの重合物、ロジンペンタエリストリトールエステル、ロジンペンタエリストリトールエステルの水添物、ロジンペンタエリストリトールエステルの重合物等が挙げられる。ポリテルペン系樹脂としては、例えば、水添テルペン樹脂、テルペン-フェノール共重合樹脂、ジペンテン重合体、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、α-ピネン-フェノール共重合樹脂等が挙げられる。更に前記以外の合成樹脂系の粘着付与剤、例えば、酸変性C5石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等も例示できる。
また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体、スチレンとアクリロニトリル、メチルメタアクリレートなどの共重合体或いはそれらのゴム変性物等のスチレンを主体とした樹脂であり、具体的にはポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(ゴム配合ポリスチレン)、AS樹脂(SAN)、ABS、SMA(スチレン-無水マレイン酸重合体)などが用いられる。
第2シーラント層202B中の粘着付与剤又はポリスチレン系樹脂の含有量は、被着体への良好な接着性や好適な成膜性を得やすいことから、1~30質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましい。
【0030】
第2シーラント層202Bは、加熱により隙間なくヒートシールされる観点から、その厚みは、5μm以上20μm以下であることが望ましく、8μm以上15μm以下であることがより望ましい。第2シーラント層202Bの厚みが、5μm以上であれば、例えば、カップ10のフランジ部13に蓋材20をヒートシールする場合に、フランジ部13と蓋材20との接合強度(封緘強度)を十分に確保することができる。また、第2シーラント層202Bの厚みを20μm以下とすることで、プラスチック使用量を最小限に抑え、蓋材20に使用される化石燃料由来の材料を極力減らすことができる。
ここで、フランジ部13と蓋材20との封緘強度は、蓋材による密閉性を十分に確保する観点から8kPa以上であることが望ましい。封緘強度が8kPa未満であると、蓋材による密閉性が不十分であったり、蓋材20の一部がフランジ部13から剥がれたりするので望ましくない。
【0031】
なお、シーラントフィルム層202は、ベース層202Aと第2シーラント層202Bとの間に所定の機能を有した中間層を設けるようにしてもよい。例えば、中間層を設けることにより、ベース層202Aと第2シーラント層202Bとの密着性を向上させたり、シーラントフィルム層202の全体の厚みを調整したりしてもよい。中間層は、ベース層202Aと第2シーラント層202Bとの密着性を向上させるのであれば、例えば、LLDPEや、LDPE等により構成することができる。また、シーラントフィルム層202の全体の厚みを調整するのであれば、例えば、ベース層202Aと同一の樹脂により構成することができる。なお、中間層は、要求される機能等の必要に応じて複数設けられていてもよい。
【0032】
第1樹脂層203は、第2紙基材層201とシーラントフィルム層202との間に設けられた樹脂の層であり、例えば、PET樹脂フィルム(厚み12μm)により構成され、このフィルムを第2紙基材層201に対してラミネート接着剤による接着剤層205を介してドライラミネート法により接合される。第1樹脂層203は、上記PET樹脂や、PBT樹脂等のポリエステル樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等を用いることができる。第1樹脂層203は、延伸プラスチックフィルムであることが好ましく、2軸延伸のプラスチックフィルムであることがより好ましく、例えば、2軸延伸PETフィルムや2軸延伸PBTフィルム、OPP、ONY等を用いることができる。
第1樹脂層203の厚みは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。また、第1樹脂層203の厚みは、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることより好ましい。仮に第1樹脂層203の厚みが5μm未満であると、他の材料との貼り合わせ工程における加工適性が悪く、仮に貼り合わせができたとしても後工程や使用時において樹脂が剥離又は破断するなどして蓋材としての機能を果たすことができなくなるため好ましくない。また、仮に第1樹脂層203の厚みが50μmよりも大きいと、熱の伝播がし難くなるためシールの安定領域が狭まったり、樹脂の剛性が強すぎて蓋材としての柔軟性を損なったりするため好ましくない。
【0033】
第2樹脂層204は、第2紙基材層201の第1樹脂層203とは反対側の面に設けられた樹脂の層であり、例えば、上述の第1樹脂層203と同様のPET樹脂フィルム(厚み12μm)により構成される。第2樹脂層204は、第2紙基材層201に対してラミネート接着剤による接着剤層205を介してドライラミネート法により接合される。
第2樹脂層204は、上記PET樹脂や、PBT樹脂等のポリエステル樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等を用いることができる。第2樹脂層204は、延伸プラスチックフィルムであることが好ましく、2軸延伸のプラスチックフィルムであることがより好ましく、例えば、2軸延伸PETフィルムや2軸延伸PBTフィルム、OPP、ONY等を用いることができる。
第2樹脂層204の厚みは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。また、第2樹脂層204の厚みは、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることより好ましい。仮に第2樹脂層204の厚みが5μm未満であると、寸法安定性が悪いため印刷基材として適さず、強度も低いことから他の材料との貼り合わせ工程における加工適性が悪くなるため好ましくない。また、仮に第2樹脂層204の厚みが50μmよりも大きいと、熱の伝播がし難くなるためシールの安定領域が狭まったり、樹脂の剛性が強すぎて蓋材としての柔軟性を損なったりするため好ましくない。
このように、第2紙基材層201を挟むようにして第1樹脂層203及び第2樹脂層204を設けることにより、第2積層体200を枚葉状にした場合に、第2紙基材層201の表裏に存在する樹脂量をほぼ均等にすることができ、第2積層体200にカールが生じてしまうのを大幅に抑制することができる。
第2樹脂層204は、蓋材20の最も外方側に位置する層であり、第2紙基材層201の外方側の面を保護する。本実施形態の第2樹脂層204は、内方側の面に、容器1の収容物の情報等を表示する印刷層206が設けられている。そのため、第2樹脂層204は、第2紙基材層201に対して接着剤層205を介して印刷層206が設けられた面が接合することとなる。第2樹脂層204は、印刷層206の印刷内容を視認できるようにする観点から、透明又は略透明であることが望ましい。
なお、印刷層206は、上述の説明では、第2樹脂層204の内方側の面に設けられる例を示したがこれに限定されるものでなく、第2紙基材層201の外方側の面に設けられるようにしてもよい。この場合、第2樹脂層204は、第2紙基材層201に設けられた印刷層206に対して接着剤層205を介して接合される。
【0034】
ここで、シーラントフィルム層202は、蓋材20のカップ10との剥離特性をより良好にする観点から、主に以下の態様のいずれかで形成されるのが望ましい。
【0035】
(シーラントフィルム層202の第1の態様)
第1態様のシーラントフィルム層202は、カップ10側から順に第2シーラント層202B、ベース層202Aが積層される2層構成である。
本態様のベース層202Aは、ポリエチレン系樹脂が用いられるのが望ましい。
本態様の第2シーラント層202Bは、カップ10(第1積層体100)の第1シーラント層102とのヒートシール性と、剥離容易性とをバランスよく確保する観点から、ポリエチレン系樹脂を主成分として、粘着付与剤が含まれている。第2シーラント層202Bの厚みは、ベース層202Aの厚みの15%以上35%以下であることが望ましい。仮に、第2シーラント層202Bの厚みがベース層202Aの厚みの15%未満である場合、カップ10の第1シーラント層102とヒートシールする際に、第2シーラント層202Bが破断してしまい、良好な剥離特性を得られなくなるので好ましくない。また、仮に、第2シーラント層202Bの厚みがベース層202Aの厚みの35%よりも大きい場合、材料コストが高くなるから好ましくない。
【0036】
第2シーラント層202Bの主成分となるポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく、この場合、被着体への密着を良好にする観点からMFRは、7g/10minより大きいことが望ましい。
また、第2シーラント層202Bに含まれる粘着付与剤には、脂環式樹脂とロジンエステル系樹脂の少なくとも一方が含まれている。本発明において、粘着付与剤は、シール性を調整するために第2シーラント層202Bに添加される。粘着付与剤は、脂環式樹脂とロジンエステル系樹脂との混合物からなるものを使用することが好ましい。この粘着付与剤は、第2シーラント層202Bの全体質量に対して1~30質量%含まれているのが望ましい。
なお、第2シーラント層202Bには、上記材料の他、アンチブロッキング剤や、スリップ剤などが添加されていてもよい。
【0037】
(シーラントフィルム層202の第2の態様)
第2態様のシーラントフィルム層202は、カップ10側から順に第2シーラント層202B、ベース層202Aが積層される2層構成である。
本態様のベース層202Aは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、低密度ポリエチレン(LDPE)とを含んでおり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の含有量が低密度ポリエチレン(LDPE)の含有量よりも多くなるのが望ましい。
本態様の第2シーラント層202Bは、カップ10(第1積層体100)の第1シーラント層102とのヒートシール性と、剥離容易性とをバランスよく確保する観点から、ポリエチレン(PE)系樹脂を主成分として、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン系樹脂が含まれている。また、第2シーラント層202Bは、含有量が多い方から順に、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン系樹脂であることが望ましい。
なお、第2シーラント層202Bには、上記材料の他、アンチブロッキング剤や、スリップ剤が添加されていてもよい。
【0038】
(第2積層体の別な形態)
第2積層体200は、上述の第1樹脂層203の代わりにバリア性樹脂層を設けてもよい。すなわち、第2積層体200は、カップ10側から順に、シーラントフィルム層202、接着剤層205、バリア性樹脂層、接着剤層205、第2紙基材層201、接着剤層205、印刷層206、第2樹脂層204が積層されるようにしてもよい。これにより、第2積層体200に酸素及び水蒸気のバリア性を付与することができる。バリア性樹脂層は、PET等の樹脂フィルムに金属酸化物が蒸着されたフィルムを用いることができる。蒸着層に適用される無機酸化物としては、上記の金属の金属酸化物である、酸化アルミニウムや酸化チタン等の他、シリコン(Si)の酸化物であるシリカが例示できる。特に、包装体用としては、酸化アルミニウムの蒸着膜を備えることが好ましい。金属酸化物を蒸着した例として、大日本印刷株式会社製のIB-PET(厚み12μm)を挙げることができる。
【0039】
また、第2積層体200は、蓋材20の用途に応じて、第2樹脂層204を省略してもよい。すなわち、第2積層体200は、カップ10側から順に、シーラントフィルム層202、接着剤層205、第1樹脂層203、接着剤層205、第2紙基材層201、印刷層206が積層されるようにしてもよい。この場合、第2紙基材層201の表裏で樹脂の量が相違するので、第2紙基材層201が枚葉状であるとカールが発生してしまい使用困難になるが、第2積層体200を巻取供給してインラインでそのままカップにヒートシールするようにすれば、このような形態でも蓋材として使用することができる。
【0040】
更に、第2積層体200は、蓋材20の用途に応じて、第1樹脂層203を省略し、かつ、第2紙基材層201を紙以外の基材、すなわち樹脂により形成される基材層としてもよい。この場合、第2積層体200は、カップ10側から順に、シーラントフィルム層202、接着剤層205、基材層、接着剤層205、印刷層206、第2樹脂層204が積層される。
このとき、基材層は、用途に応じて材料を選択することができ、PET樹脂フィルム(例えば、厚さ12μm)や、二軸延伸ナイロンフィルム(例えば、厚み15μm)を用いることができる。
【0041】
(シーラントフィルム層の選定)
次に、蓋材20を構成する第2積層体200に設けられたシーラントフィルム層202の選定について説明する。蓋材に対応する試験体として、層構成及び材料が相違するシーラントフィルム層を有する8種類の試験体(試験体1~8)を準備して、上述のカップ10のフランジ部13に各試験体をヒートシールして、試験体とカップ(フランジ部)との封緘状態及び剥離特性について評価を行った。この評価において、封緘強度及び剥離特性のいずれの評価も良好であった試験体のシーラントフィルム層が、蓋材20に適用される。
【0042】
各試験体は、厚さ12μmのPET樹脂フィルムにシーラントフィルム層のベース層側をドライラミネート法により接合している。
カップ10の構成する第1積層体100は、第1紙基材層101に坪量220g/mのカップ原紙を用い、第1シーラント層102及び表面樹脂層103に、ホモポリマータイプのポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、PHA03A、MFR=42g/10min)を用いて、第1紙基材層101の各面にそれぞれ厚さ20μmで形成した。
【0043】
各試験体を、上記カップ10のフランジ部13に対して、150℃又は160℃で1秒間、0.3MPaで押圧してヒートシールして、各試験体のフランジ部に対する封緘強度と、シール後の各試験体をフランジ部から剥がした場合の剥離特性を評価した。各試験体に用いられたシーラントフィルム層の詳細と、評価結果とを、以下の表1にまとめる。
ここで、封緘強度は、上述したように8kPa以上であると、カップ10に対して蓋材(試験体)が十分にヒートシールされ、密閉性を十分に確保することができる。封緘強度の測定は、封緘強度の測定装置(サン科学製、SEAL TESTER FKT-100J)を用いて行った。測定装置を用いて、カップ10の底部12に針を刺して空気を流し込み、カップと蓋材(試験体)とのヒートシール部において破裂又はエア抜けが発生するまでの最大圧力を測定する。測定装置は、圧力設定が0.07MPaであり、エア流量は10秒間で0.013MPaの圧力がかかるように設定した。
また、剥離特性の評価は、カップにヒートシールした試験体を被験者が手で剥がして容易に剥離できたか否かの官能評価である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、試験体1のシーラントフィルム層は、厚さ30μmの東レフィルム加工株式会社製のイージーピールフィルム・7601EAを用いており、ベース層、第2シーラント層が順に積層された2層構成である。ベース層には、ポリエチレン樹脂が用いられ、第2シーラント層には、ポリエチレン樹脂にポリブテン樹脂が添加された樹脂が用いられている。なお、試験体1の剥離形態は、「凝集」タイプである。ここで、「凝集」タイプとは、第2シーラント層の内部での破壊により試験体(蓋材)とカップとが剥離する形態をいう。
試験体1の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が8kPa未満であり、十分な封緘強度が得られなかった。剥離特性については、試験体1のカップへの貼り付きが弱すぎる、いわゆる仮着の状態であった。
また、試験体1の160℃によるヒートシールでも、封緘強度が8kPa未満であり、十分な封緘強度が得られなかった。剥離特性については、試験体1のカップへの貼り付きが弱すぎる、いわゆる仮着の状態であった。
【0046】
試験体2のシーラントフィルム層は、厚さ30μmの東レフィルム加工株式会社製のイージーピールフィルム・7601EDを用いており、ベース層、第2シーラント層が順に積層された2層構成である。ベース層には、ポリエチレン樹脂が用いられ、第2シーラント層には、ポリエチレン樹脂にポリブテン樹脂が添加された樹脂が用いられている。なお、試験体2の剥離形態は、「凝集」タイプである。
試験体2の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が8kPa未満であり、十分な封緘強度が得られなかった。剥離特性については、試験体1のカップへの貼り付きが弱すぎる、いわゆる仮着の状態であった。
また、試験体2の160℃によるヒートシールでも、封緘強度が8kPaであり、十分な封緘強度が得られたが、剥離特性については、試験体1のカップへの貼り付きが弱すぎる、いわゆる仮着の状態であった。
【0047】
試験体3のシーラントフィルム層は、厚さ30μmであり、ベース層、第2シーラント層が順に積層された2層構成である。ベース層には、ポリエチレン系樹脂が用いられ、第2シーラント層には、ポリエチレン系樹脂に粘着付与剤が含まれた樹脂が用いられている。なお、この試験体3のシーラントフィルム層は、上述のシーラントフィルム層202の第1の態様に該当するシーラントフィルム層である。なお、試験体3の剥離形態は、「界面」タイプである。ここで、「界面」タイプとは、第2シーラント層とカップ側の第1シーラント層との接合界面における破壊により試験体(蓋材)とカップとが剥離する形態をいう。
試験体3の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が10kPaであり、十分な封緘強度が得られ、また、剥離特性についても、被験者により容易に試験体3をカップから剥離可能であり、良好であることが確認された。
また、試験体3の160℃によるヒートシールでは、封緘強度が9kPaであり、十分な封緘強度が得られており、また、剥離特性についても、被験者により容易に試験体3をカップから剥離可能であり、良好であることが確認された。
【0048】
試験体4のシーラントフィルム層は、厚さ30μmであり、ベース層、第2シーラント層が順に積層された2層構成である。ベース層には、ポリエチレン系樹脂を用い、第2シーラント層には、ポリエチレン系樹脂に、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン系樹脂等が含まれる樹脂が用いられている。なお、この試験体4のシーラントフィルム層は、上述のシーラントフィルム層202の第2の態様に該当するシーラントフィルム層である。また、試験体4の剥離形態は、「凝集」タイプである。
試験体4の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が9kPaであり、十分な封緘強度が得られ、また、剥離特性についても、被験者により容易に試験体4をカップから剥離可能であり、良好であることが確認された。
また、試験体4の160℃によるヒートシールでは、封緘強度が10kPaであり、十分な封緘強度が得られたが、剥離特性については、被験者により容易に試験体4をカップから剥離可能であり、良好であることが確認された。なお、剥離した面に繊維状のシーラント材料、いわゆるヒゲが若干残存するのが確認されたが、実用上、問題ないレベルであった。
【0049】
試験体5のシーラントフィルム層は、厚さ50μmであり、ベース層、第2シーラント層が順に積層された2層構成である。ベース層には、ポリプロピレン樹脂を用い、第2シーラント層には、高密度ポリエチレン(HDPE)と、ポリプロピレン樹脂が用いられている。なお、試験体5の剥離形態は、「凝集」タイプである。
試験体5の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が8kPaであり、十分な封緘強度が得られた。しかし、剥離特性については、試験体5をカップから剥離させた時に、カップのフランジ部に設けられた第1シーラント層の樹脂(ポリプロピレン樹脂)の一部が試験体側に残存した状態(PP伸び)が確認された。
試験体5の160℃によるヒートシールでも、封緘強度が11kPaであり、十分な封緘強度が得られた。しかし、剥離特性については、試験体5をカップから剥離させた時に、カップのフランジ部に設けられた第1シーラント層の樹脂(ポリプロピレン樹脂)の一部が試験体側に残存した状態(PP伸び)が確認された。
【0050】
試験体6のシーラントフィルム層は、厚さ50μmであり、ベース層、複数の中間層、第2シーラント層が順に積層された多層構成である。ベース層には、高密度ポリエチレン(HDPE)を用い、中間層には、高密度ポリエチレン(HDPE)を用い、第2シーラント層には、高密度ポリエチレン(HDPE)と、ポリプロピレン樹脂が用いられている。なお、試験体6の剥離形態は、「凝集」タイプである。
試験体6の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が11kPaであり、十分な封緘強度が得られたが、剥離特性については、試験体6をカップから剥離させた時に、試験体が裂けて一部がカップ側に残存してしまう、いわゆる紙剥けの現象が確認された。
試験体6の160℃によるヒートシールでは、封緘強度が14kPaであり、十分な封緘強度が得られた。しかし、剥離特性については、試験体6をカップから剥離させた時に、カップのフランジ部に設けられた第1シーラント層の樹脂(ポリプロピレン樹脂)の一部が試験体側に残存した状態(PP伸び)が確認された。
【0051】
試験体7のシーラントフィルム層は、厚さ30μmの三井化学東セロ株式会社製のTAF650Cを用いており、ベース層、中間層、第2シーラント層が順に積層された3層構成である。ベース層には、特殊なポリエチレン樹脂を用い、中間層には、ホモポリマータイプのポリプロピレン樹脂を用い、第2シーラント層には、ポリエチレン樹脂に、ポリプロピレン樹脂が添加された樹脂が用いられている。ここで、ベース層の特殊なポリエチレン樹脂には、中間層のホモポリマータイプのポリプロピレン樹脂との密着性を構造させるために、ポリエチレン樹脂にポリマーアロイ(相溶化剤)を添加したもの、或いは、ポリエチレン樹脂にランダムタイプのポリプロピレン樹脂を添加したものが用いられる。なお、試験体7の剥離形態は、「凝集」タイプである。
試験体7の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が9kPaであり、十分な封緘強度が得られたが、剥離特性については、試験体7をカップから剥離させた時に、試験体が裂けて一部がカップ側に残存してしまう、いわゆる紙剥けの現象が確認された。
試験体7の160℃によるヒートシールでは、封緘強度が15kPaを超え、十分な封緘強度が得られたが、剥離特性については、カップから試験体7を剥離することができなかった(剥離不可)。
【0052】
試験体8のシーラントフィルム層は、厚さ30μmの東レフィルム加工株式会社製の9501Eを用いており、ベース層、第2シーラント層が順に積層された2層構成である。ベース層には、ポリプロピレン樹脂を用い、第2シーラント層には、ポリエチレン樹脂に、ポリプロピレン樹脂が添加された樹脂が用いられている。なお、試験体8の剥離形態は、「凝集」タイプである。
試験体8の150℃によるヒートシールでは、封緘強度が14kPaであり、十分な封緘強度が得られたが、剥離特性については、試験体8をカップから剥離させた時に、カップのフランジ部に設けられた第1シーラント層の樹脂(ポリプロピレン樹脂)の一部が試験体側に残存した状態(PP伸び)が確認された。
試験体8の160℃によるヒートシールでは、封緘強度が15kPaを超え、十分な封緘強度が得られたが、剥離特性については、カップから試験体7を剥離することができなかった(剥離不可)。
【0053】
上記評価結果より、8つの試験体のうち試験体3及び4のシーラントフィルム層、すなわち、上述のシーラントフィルム層202の第1の態様及び第2の態様が、封緘強度、剥離特性いずれもが良好であることが確認された。
【0054】
(蓋材とカップとの封緘強度、開封強度の評価)
次に、上記試験体3、4のシーラントフィルム層を有する蓋材(実施例1、2)を実際に作製し、カップ10のフランジ部13にヒートシールして、封緘強度、開封強度、剥離特性について評価を行った。評価結果を、以下の表2にまとめる。
評価に用いたカップ10は、上述のシーラントフィルム層の選定に用いたカップと同様のものを用いた。評価に用いた各実施例及び比較例の蓋材は、カップ10のフランジ部13に対して、150℃、160℃、170℃、又は、180℃で1秒間、0.3MPaで押圧してヒートシールされる。
【0055】
封緘強度の測定は、上述のシーラントフィルム層の選定において行った封緘強度の測定と同様の方法により行った。
開封強度は、カップにヒートシールされた蓋材を剥がす際に必要な力である。開封強度の測定は、フォースゲージ(日本電産シンポ製、FGPX-5)を用いて蓋材を上にしてカップを配置し、剥離角度(蓋材の上面に対する角度)を45度としたときにおける開封の際の強度をフォースゲージにより測定した。なお、測定に当たり、アタッチメントとしてフィルムチャック(日本電産シンポ製、6FC-20)を用いた。開封強度は、一般に6.0N以上18N以下であれば実用上十分である。仮に、開封強度が6.0N未満であると、蓋材がカップから剥がれ易くなり過ぎてしまい、意図しないのに蓋材が剥がれてしまうといった問題を生じるので望ましくない。また、仮に、開封強度が18Nよりも大きい場合、カップから蓋材が剥がれなくなったり、剥がれたとしても蓋材や、カップが破損したりしてしまう恐れがあるので好ましくない。
剥離特性の評価は、上述の第2シーラント層の選定において行った剥離特性の評価と同様の方法により行い、容易にカップから蓋材を剥離できた場合を〇とし、蓋材のカップへの貼り付きが弱すぎたり、逆に強すぎて剥がれなかったりした場合を×とした。
なお、封緘強度及び開封強度は、各実施例、比較例の蓋材を3枚ずつ用意して各強度を測定し、その平均値を測定結果とした。
【0056】
【表2】
【0057】
本評価に用いられる実施例1、2及び比較例の各蓋材を構成する第2積層体は、カップの内方側から順に、シーラントフィルム層、第1樹脂層、第2紙基材層、第2樹脂層が積層された構成である。
ここで、第1樹脂層、第2紙基材層、第2樹脂層は、実施例1、2及び比較例において同様に構成されている。すなわち、第1樹脂層は、厚さ12μmのPET樹脂フィルムにより構成され、第2紙基材層は、坪量80g/mのノーコート紙により構成され、第2樹脂層は、厚さ12μmのPET樹脂フィルムにより構成されている。各実施例及び比較例の第1樹脂層、第2紙基材層、第2樹脂層は、それぞれドライラミネート法によりラミネート接着剤による接着剤層を介して接合されている。なお、第2樹脂層の第2紙基材層側には所定の印刷層が形成されている。
【0058】
実施例1の蓋材は、上述の試験体3に用いられたシーラントフィルム層(シーラントフィルム層202の第1の態様)を備える。すなわち、実施例1のシーラントフィルム層は、ベース層にポリエチレン樹脂が用いられ、第2シーラント層にポリエチレン樹脂に粘着付与剤が添加された樹脂が用いられた厚さ30μmの2層構成により形成されている。実施例1のシーラントフィルム層は、第1樹脂層に対してドライラミネート法によりラミネート接着剤による接着剤層を介して接合されている。
表2の評価結果に示すように、実施例1の蓋材は、150℃によるヒートシールでは、封緘強度が9.7kPaであり、開封強度が7.1Nであり、十分な封緘強度及び開封強度を有していることが確認された。また、剥離特性についても、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
また、160℃によるヒートシールでは、封緘強度が9.0kPaであり、開封強度が7.3Nであり、十分な封緘強度及び開封強度を有していることが確認された。また、剥離特性については、カップ側のポリプロピレン樹脂の蓋材側への残存が僅かに認められたが、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
170℃によるヒートシールでは、封緘強度が9.0kPaであり、開封強度が7.0Nであり、十分な封緘強度及び開封強度を有していることが確認された。また、剥離特性についても、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
180℃によるヒートシールでは、封緘強度が10.7kPaであり、開封強度が8.4Nであり、十分な封緘強度及び開封強度を有していることが確認された。また、剥離特性についても、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
【0059】
実施例2の蓋材は、上述の試験体4に用いられたシーラントフィルム層(シーラントフィルム層202の第2の態様)を備える。すなわち、実施例2のシーラントフィルム層は、ベース層にポリエチレン樹脂を用い、第2シーラント層にポリエチレン樹脂にポリプロピレン樹脂、ポリスチレン系樹脂等が添加された樹脂が用いられた厚さ30μmの2層構成により形成されている。実施例2のシーラントフィルム層は、第1樹脂層に対してドライラミネート法によりラミネート接着剤による接着剤層を介して接合されている。
実施例2の蓋材は、150℃によるヒートシールでは、封緘強度が7.3kPaであり、開封強度が6.5Nであり、十分な開封強度を有していることは確認されたが、封緘強度については、8kPaを下回っており、十分でないことが確認された。また、剥離特性については、被験者により蓋材をカップから剥離可能であるが、蓋材のカップへの貼り付きが弱すぎて、製品として適用するのは不十分であると確認され、評価は「×」となった。
しかし、160℃によるヒートシールでは、封緘強度が8.0kPaであり、開封強度が7.3Nであり、十分な封緘強度及び開封強度を有していることが確認された。剥離特性については、カップ側のポリプロピレン樹脂の蓋材側への残存が僅かに認められたが、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
また、170℃によるヒートシールでは、封緘強度が9.0kPaであり、開封強度が8.0Nであり、十分な封緘強度及び開封強度を有していることが確認された。また、剥離特性についても、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
180℃によるヒートシールでは、封緘強度が9.7kPaであり、開封強度が8.7Nであり、十分な封緘強度及び開封強度を有していることが確認された。また、剥離特性についても、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
【0060】
比較例の蓋材は、LDPEとα―オレフィンコポリマーとのブレンド樹脂10μmと、ポリエチレン樹脂30μmとを用いて、第1樹脂層に共押し出し法により形成されたシーラントフィルム層を備える。すなわち、比較例のシーラントフィルム層は、ベース層にポリエチレン樹脂を用い、第2シーラント層に上述のブレンド樹脂(イージーピール樹脂)が用いられた厚さ40μmの2層構成により形成されている。
比較例の蓋材は、150℃によるヒートシールでは、封緘強度が2.7kPaであり、開封強度が3.1Nであり、十分な封緘強度及び開封強度が得られなかった。剥離特性については、被験者により蓋材をカップから剥離可能であるが、蓋材のカップへの貼り付きが弱すぎて、製品として適用するのは不十分であると確認され、評価は「×」となった。
また、160℃によるヒートシールでは、封緘強度が3.0kPaであり、開封強度が3.1Nであり、いずれも十分な封緘強度及び開封強度が得られなかった。剥離特性については、被験者により蓋材をカップから剥離可能であるが、蓋材のカップへの貼り付きが弱すぎて、製品として適用するのは不十分であると確認され、評価は「×」となった。
170℃によるヒートシールでは、封緘強度が4.0kPaであり、開封強度が3.5Nであり、いずれも十分な封緘強度及び開封強度が得られなかった。剥離特性については、被験者により蓋材をカップから剥離可能であるが、蓋材のカップへの貼り付きが弱すぎて、製品として適用するのは不十分であると確認され、評価は「×」となった。
180℃によるヒートシールでは、封緘強度が5.3kPaであり、開封強度が5.0Nであり、いずれも十分な封緘強度及び開封強度が得られなかった。一方、剥離特性については、被験者により容易に蓋材をカップから剥離可能であり、実用上問題がないことが確認され、評価が「〇」となった。
【0061】
以上より、実施例1の蓋材は、150℃~180℃の温度帯域におけるヒートシールにより、封緘強度、開封強度、剥離特性がいずれも良好であることが確認された。また、実施例2の蓋材は、160℃~180℃の温度帯域におけるヒートシールにより、封緘強度、開封強度、剥離特性がいずれも良好であることが確認された。
これに対して、比較例の蓋材は、いずれの温度帯域のヒートシールにおいても、十分な封緘強度、開封強度、剥離特性を得ることができないことが確認された。
【符号の説明】
【0062】
1 容器
10 カップ
11 胴部
12 底部
13 フランジ部
20 蓋材
100 第1積層体
101 第1紙基材層
102 第1シーラント層
103 表面樹脂層
200 第2積層体
201 第2紙基材層
202 シーラントフィルム層
202A ベース層
202B 第2シーラント層
203 第1樹脂層
204 第2樹脂層
205 接着剤層
206 印刷層
図1
図2
図3
図4