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特許7567571制御装置、車両、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】制御装置、車両、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021037730
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137976
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 大輝
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-059228(JP,A)
【文献】特開2015-226397(JP,A)
【文献】特開2020-188545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御装置であって、
所定の条件を満たしているか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、所定の条件を満たしていると判定した場合に、前記機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える制御を行う制御部と、
を備え
前記制御部は、
主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、主のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように主のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行うと共に、従のDCDCコンバータの電圧指示値を主のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御し、
主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、従のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように従のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行う、
制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第一DCDCコンバータに係る温度が上昇して第一温度に達した場合に所定の条件を満たしていると判定すると共に、前記制御部は、電力供給を優先させる主のDCDCコンバータを前記第一DCDCコンバータから前記第二DCDCコンバータに切り替える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第一DCDCコンバータに係る温度が低下して前記第一温度より低い第二温度に達した場合に所定の条件を満たしていると判定すると共に、前記制御部は、電力供給を優先させる主のDCDCコンバータを前記第二DCDCコンバータから前記第一DCDCコンバータに切り替える、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
従のDCDCコンバータの出力電力を徐々に上昇させた後、主のDCDCコンバータの出力電力を低下させて電力供給を優先させるDCDCコンバータを切り替える請求項1~3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
電力供給を優先させるDCDCコンバータを切り替える場合、従のDCDCコンバータの電圧指示値を徐々に上昇させた後、従のDCDCコンバータの電圧指示値が主のDCDCコンバータの電圧指示値に達した場合に、主のDCDCコンバータの電圧指示値を従のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御する請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の制御装置と、
前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々に対して電力を供給する高圧バッテリと、
前記機器に電力を供給すると共に、前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々から電力の供給を受ける補機バッテリと、
を備える車両。
【請求項7】
機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御方法であって、
所定の条件を満たしているか否かを判定し、
所定の条件を満たしていると判定された場合に、前記機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える制御を行い、
主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、主のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように主のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行うと共に、従のDCDCコンバータの電圧指示値を主のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御し、
主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、従のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように従のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行う、
処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項8】
機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御プログラムであって、
所定の条件を満たしているか否かを判定し、
所定の条件を満たしていると判定された場合に、前記機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える制御を行い、
主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、主のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように主のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行うと共に、従のDCDCコンバータの電圧指示値を主のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御し、
主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、従のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように従のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行う、
処理をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置、車両、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のDCDCコンバータを協調制御する電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5387651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方のDCDCコンバータばかり使用すると、当該DCDCコンバータにストレスが偏り早期に故障する可能性がある。
【0005】
本発明は、複数のDCDCコンバータをバランス良く利用することで、早期の故障の発生を抑制する制御装置、車両、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の制御装置は、機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御装置であって、所定の条件を満たしているか否かを判定する判定部と、前記判定部が、所定の条件を満たしていると判定した場合に、前記機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、主のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように主のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行うと共に、従のDCDCコンバータの電圧指示値を主のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御し、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、従のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように従のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行う
【0007】
請求項1に記載の制御装置は、第一DCDCコンバータと、第二DCDCコンバータとを制御する。第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータは、各々同一の機器に対して電力を供給可能に構成されている。当該制御装置においては、判定部が所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしていると判定した場合に、制御部は、機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える。当該制御装置によれば、所定の条件を契機に、優先的に使用するDCDCコンバータを切り替えることにより、各DCDCコンバータをバランス良く利用することができ、早期の故障の発生を抑制することができる。目標値とは、例えば、機器に供給するバッテリの基準の電圧値が挙げられる。請求項1に記載の制御装置によれば、主のDCDCコンバータの出力が最大になった場合、従のDCDCコンバータによるフィードバック制御により機器の電圧を維持することができる。
【0008】
請求項2に記載の制御装置は、請求項1に記載の制御装置において、前記判定部は、前記第一DCDCコンバータに係る温度が上昇して第一温度に達した場合に所定の条件を満たしていると判定すると共に、前記制御部は、電力供給を優先させる主のDCDCコンバータを前記第一DCDCコンバータから前記第二DCDCコンバータに切り替える。
【0009】
請求項2に記載の制御装置は、第一DCDCコンバータに係る温度が上昇して第一温度に達した場合に第二DCDCコンバータに切り替えることで、当該第一DCDCコンバータに使用が偏ることを抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の制御装置は、請求項2に記載の制御装置において、前記判定部は、前記第一DCDCコンバータに係る温度が低下して前記第一温度より低い第二温度に達した場合に所定の条件を満たしていると判定すると共に、前記制御部は、電力供給を優先させる主のDCDCコンバータを前記第二DCDCコンバータから前記第一DCDCコンバータに切り替える。
【0011】
請求項3に記載の制御装置では、第一DCDCコンバータに係る温度が低下して第二DCDCコンバータから第一DCDCコンバータに切り替わる条件となる第二温度が第一温度よりも低い温度に設定されている。つまり、当該制御装置によれば、第一DCDCコンバータから第二DCDCコンバータに切り替わる条件と、第二DCDCコンバータから第一DCDCコンバータに切り替わる条件との間に温度による差が設けられている。そのため、当該制御装置によれば、両DCDCコンバータが頻繁に切り替わるハンチングを抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載の制御装置は、請求項1~3の何れか1項に記載の制御装置において、前記制御部は、従のDCDCコンバータの出力電力を徐々に上昇させた後、主のDCDCコンバータの出力電力を低下させて電力供給を優先させるDCDCコンバータを切り替える。
【0013】
請求項4に記載の制御装置によれば、従のDCDCコンバータの出力を徐々に上昇させて主のDCDCコンバータに切り替えることにより、DCDCコンバータの切替時において機器に供給される電力の急変を抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の制御装置は、請求項4に記載の制御装置において、前記制御部は、電力供給を優先させるDCDCコンバータを切り替える場合、従のDCDCコンバータの電圧指示値を徐々に上昇させた後、従のDCDCコンバータの電圧指示値が主のDCDCコンバータの電圧指示値に達した場合に、主のDCDCコンバータの電圧指示値を従のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御する。
【0015】
請求項5に記載の制御装置によれば、各DCDCコンバータの電圧指示値に基づいて、DCDCコンバータの切り替え制御を行うことにより、機器の電圧の急変を抑制し、機器の動作の安定性を確保することができる。
【0018】
請求項6に記載の車両は、請求項1~5の何れか1項に記載の制御装置と、前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々に対して電力を供給する高圧バッテリと、前記機器に電力を供給すると共に、前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々から電力の供給を受ける補機バッテリと、を備える車両。
【0019】
請求項6に記載の車両によれば、所定の条件を契機に、優先的に使用するDCDCコンバータを切り替えることにより、一方のDCDCコンバータに使用が偏ることを抑制しつつ、補機バッテリの電圧の安定化を図ることができる。
【0020】
請求項7に記載の制御方法は、機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御方法であって、所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしていると判定された場合に、前記機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える制御を行い、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、主のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように主のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行うと共に、従のDCDCコンバータの電圧指示値を主のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御し、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、従のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように従のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行う、処理をコンピュータが実行する。
【0021】
請求項7に記載の制御方法は、第一DCDCコンバータと、第二DCDCコンバータとを制御する方法である。上述のように、第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータは、各々同一の機器に対して電力を供給可能に構成されている。当該制御方法においては、コンピュータが所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしていると判定した場合に、機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える。当該制御方法によれば、所定の条件を契機に、優先的に使用するDCDCコンバータを切り替えることにより、各DCDCコンバータをバランス良く利用することができ、早期の故障の発生を抑制することができる。
【0022】
請求項8に記載の制御プログラムは、機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御プログラムであって、所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしていると判定された場合に、前記機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える制御を行い、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、主のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように主のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行うと共に、従のDCDCコンバータの電圧指示値を主のDCDCコンバータの電圧指示値よりも低い値となるように制御し、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、主のDCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、従のDCDCコンバータの出力電圧が目標値となるように従のDCDCコンバータの電圧指示値のフィードバック制御を行う、処理をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【0023】
請求項8に記載の制御プログラムは、コンピュータに第一DCDCコンバータと、第二DCDCコンバータとの制御を実行させる。上述のように、第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータは、各々同一の機器に対して電力を供給可能に構成されている。当該プログラムによれば、コンピュータが所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしていると判定した場合に、機器に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータを切り替える。当該プログラムによれば、コンピュータが所定の条件を契機に、優先的に使用するDCDCコンバータを切り替えることにより、各DCDCコンバータをバランス良く利用することができ、早期の故障の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数のDCDCコンバータをバランス良く利用することで、早期の故障の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態に係る車両及び電力供給システムの概略構成図である。
図2】第1の実施形態のECUにおけるROMの構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態のECUにおけるCPUの機能構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態における電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態における電力制御処理の流れを示すフローチャート(図4の続き)である。
図6】第1の実施形態における遷移処理の流れを示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態における遷移処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
(構成)
図1に示されるように、第1の実施形態の電力供給システム10は、車両12に搭載されている。車両12は、EV(Electric Vehicle)又はHV(Hybrid Vehicle)が例示される。本実施形態の車両12は、電力供給システム10により電力が供給される。この車両12は、車両12の各部を動作させる機器である補機類32、及び補機類32を含む車両12の各部を制御するECU群34を含んでいる。
【0028】
電力供給システム10は、制御装置としてのECU20、高圧バッテリ22、DCDCコンバータ24及び補機バッテリ28を含んで構成されている。ECU20の詳細については後述する。また、本実施形態のDCDCコンバータ24は第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を含む。
【0029】
高圧バッテリ22は、車両12の駆動に関わる走行モータ等を動作させるための高電圧のバッテリであり、例えばリチウム電池やニッケル水素電池などの充放電可能な二次電池で構成されている。高圧バッテリ22は、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26に接続されている。
【0030】
第一DCDCコンバータ25は、高圧バッテリ22が出力する電力を、補機バッテリ28及び補機類32に供給する機能を有している。第一DCDCコンバータ25は、入力側に高圧バッテリ22が接続され、出力側に補機バッテリ28及び補機類32が接続されている。電力供給の際、第一DCDCコンバータ25は、入力電圧である高圧バッテリ22の出力電圧を、ECU20からの指示に基づく所定の電圧に降圧して、補機バッテリ28及び補機類32に向けて出力する。
【0031】
第二DCDCコンバータ26は第一DCDCコンバータ25と同様の機能を有している。すなわち、第二DCDCコンバータ26は、高圧バッテリ22が出力する電力を、補機バッテリ28及び補機類32に供給する機能を有している。第二DCDCコンバータ26は、入力側に高圧バッテリ22が接続され、出力側に補機バッテリ28及び補機類32が接続されている。電力供給の際、第二DCDCコンバータ26は、入力電圧である高圧バッテリ22の出力電圧を、ECU20からの指示に基づく所定の電圧に降圧して、補機バッテリ28及び補機類32に向けて出力する。
【0032】
なお、本実施形態の電力供給システム10では、後述するECU20により、補機類32に優先的に電力を供給するDCDCコンバータ24の制御が行われている。
【0033】
補機バッテリ28は、補機類32を動作させることができるバッテリであり、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池で構成されている。補機バッテリ28は、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26の双方に接続されており、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26の各々から電力の供給を受けることが可能である。また、補機バッテリ28は、車両12の補機類32に接続されており、補機類32に対して電力を供給する。
【0034】
ECU20は、例えばマイコンで構成され、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を制御する機能を有している。これにより、ECU20は、高圧バッテリ22の電力を、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を介して補機バッテリ28及び補機類32に給電する。
【0035】
ECU20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、入出力I/F(Inter Face)20D及び通信I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、入出力I/F20D及び通信I/F20Eは、内部バス20Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0036】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0037】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。図2に示されるように、本実施形態のROM20Bには、制御プログラム100及び設定データ110が記憶されている。
【0038】
制御プログラム100は、ECU20を制御するためのプログラムである。制御プログラムにより制御されるECU20が第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を制御する。
【0039】
設定データ110は、各DCDCコンバータにおけるフィードバック制御用の制御パラメータを記憶している。また、設定データ110は、第一DCDCコンバータ25から第二DCDCコンバータ26への切り替え条件となる第一温度、及び第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25への切り替え条件となる第二温度の設定値がそれぞれ記憶されている。
【0040】
図1に示されるように、RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
入出力I/F20Dは、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26のそれぞれと通信するためのインタフェースである。
【0041】
通信I/F20Eは、ECU群34と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、例えば、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。通信I/F20Eは、外部バス20Hに対して接続されている。これにより、ECU20は、通信I/F20Eを介して、車両12の各部の動作状況を取得することができる。
【0042】
なお、ECU20は、ROM20Bに加えて又はROM20Bに代えて記憶部としてのストレージを含んでいてもよい。このストレージは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成される。
【0043】
図3に示されるように本実施形態のECU20では、CPU20Aが、制御プログラム100を実行することで、取得部200、判定部210及び制御部220として機能する。
【0044】
取得部200は、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26のそれぞれの状態を取得する機能を有している。ここで、各DCDCコンバータ24から取得される状態は、各DCDCコンバータ24の出力電圧、及び冷却水温を含む。また、取得部200は補機バッテリ28の電圧を取得する。さらに、取得部200は、ECU群34から車両12における補機類32を含む各部の作動状態を取得することができる。
【0045】
判定部210は、優先されるDCDCコンバータ24を切り替えるための所定の条件を満たしているか否かを判定する機能を有している。この所定の条件には、第一DCDCコンバータ25から第二DCDCコンバータ26に切り替わる条件となる切替条件1と、第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25に切り替わる条件と切替条件2と、がある。本実施形態の判定部210は、第一DCDCコンバータ25の冷却水温が上昇して第一温度に達した場合に切替条件1を満たしていると判定する。また、判定部210は、第一DCDCコンバータ25に係る温度が低下して第一温度よりも一定値Tだけ低い第二温度に達した場合に切替条件2を満たしていると判定する。
【0046】
ここで、Tの値を小さくし過ぎると、後述する遷移処理において、優先されるDCDCコンバータ24が頻繁に入れ替わる。そのため、Tの値は、優先されるDCDCコンバータ24が頻繁に入れ替わらず、また、優先されるDCDCコンバータ24が第一DCDCコンバータ25又は第二DCDCコンバータ26の何れかに偏り過ぎないような値に設定する。判定部210は、新たに切替条件1又は切替条件2を満たしたと判定した場合、制御フラグを変更する。具体的に判定部210は、切替条件1を満たした場合に制御フラグを0から1に変更し、切替条件2を満たした場合に制御フラグを1から0に変更する。
【0047】
制御部220は、各DCDCコンバータ24の出力を制御する電力制御処理を行う。ここで、優先的に電力を供給するDCDCコンバータ24を主のDCDCコンバータ24と称し、主のDCDCコンバータ24に優先されるDCDCコンバータ24を従のDCDCコンバータ24と称する。本実施形態の制御部220は、各DCDCコンバータ24に対して電圧指示値を調整することにより出力する電力の調整を行っている。通常時における制御部220は、従のDCDCコンバータ24に対し、主のDCDCコンバータ24よりも所定値Vだけ低い電圧指示値を設定することにより、主のDCDCコンバータ24の出力が優先されるように制御している。
【0048】
ここで、Vの値を大きくし過ぎると、補機類32の負荷が増大し第一DCDCコンバータ25の出力が不足した場合に第二DCDCコンバータ26の出力により支えられる電圧が低くなってしまう。また、Vの値を小さくし過ぎると、2つのDCDCコンバータ24の出力のばらつき次第で出力の優劣が崩れ、当初想定するDCDCコンバータ24による優先出力が不可能となる。このため、本実施形態では、上記の問題が生じ難い範囲にVを設定している。
【0049】
また、制御部220は、DCDCコンバータ24を切り替える場合に遷移処理を実行する。遷移処理の詳細については後述する。
【0050】
(制御の流れ)
本実施形態のECU20において実行される処理の流れについて、図4図6のフローチャートを用いて説明する。ECU20における処理は、CPU20Aが、上述した取得部200、判定部210及び制御部220として機能することにより実現される。なお、各図においては、「DCDCコンバータ」を「DDC」、「フィードバック制御」を「FB制御」と略している。
【0051】
まず、図4及び図5の電力制御処理について説明する。制御方法としての電力制御処理は、各DCDCコンバータ24の電圧指示値を設定することにより出力を制御している。
【0052】
図4のステップS100において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を初期値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を初期値に設定する。
【0053】
ステップS101において、CPU20Aは制御フラグが1であるか否かの判定を行う。CPU20Aは制御フラグが1であると判定した場合(ステップS101でYESの場合)、結合子Aに従って図5のステップS108に進む。一方、CPU20Aは制御フラグが1ではないと判定した場合(ステップS101でNOの場合)、ステップS102に進む。
【0054】
ステップS102において、CPU20Aは切替条件1が成立しているか否かの判定を行う。本実施形態において、切替条件1は、第一DCDCコンバータ25の冷却水温が予め設定した第一温度に達した場合に設定されている。CPU20Aは切替条件1が成立していると判定した場合(ステップS102でYESの場合)、結合子Bに従って図5のステップS109に進む。一方、CPU20Aは切替条件1が成立していないと判定した場合(ステップS102でNOの場合)、ステップS103に進む。
【0055】
ステップS103において、CPU20Aは制御フラグを0に設定する。
ステップS104において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上か否かの判定を行う。CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上と判定した場合(ステップS104でYESの場合)、ステップS106に進む。一方、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上ではない、すなわち、最大値未満であると判定した場合(ステップS104でNOの場合)、ステップS105に進む。
【0056】
ステップS105において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値に設定する。そして、結合子Dに従ってステップS101に戻る。
【0057】
ステップS106において、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいか否かの判定を行う。CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいと判定した場合(ステップS106でYESの場合)、ステップS105に進む。一方、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さくない、すなわち、第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値以上であると判定した場合(ステップS106でNOの場合)、ステップS107に進む。
【0058】
ステップS107において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を最大値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定する。そして、結合子Dに従ってステップS101に戻る。
【0059】
図5のステップS108において、CPU20Aは切替条件2が成立しているか否かの判定を行う。本実施形態において、切替条件2は、第一DCDCコンバータ25の冷却水温が予め設定した温度であって第一温度よりも低い第二温度に達した場合に設定されている。CPU20Aは切替条件2が成立していると判定した場合(ステップS108でYESの場合)、結合子Cに従って図4のステップS103に進む。一方、CPU20Aは切替条件2が成立していないと判定した場合(ステップS108でNOの場合)、ステップS109に進む。
【0060】
ステップS109において、CPU20Aは制御フラグを1に設定する。
ステップS110において、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が最大値以上か否かの判定を行う。CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が最大値以上と判定した場合(ステップS110でYESの場合)、ステップS112に進む。一方、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が最大値以上ではない、すなわち、最大値未満であると判定した場合(ステップS110でNOの場合)、ステップS111に進む。
【0061】
ステップS111において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を第二DCDCコンバータ26の電圧指示値-Vとなる値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定する。そして、結合子Dに従って図4のステップS101に戻る。
【0062】
ステップS112において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値-Vとなる値より小さいか否かの判定を行う。CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値-Vとなる値より小さいと判定した場合(ステップS112でYESの場合)、ステップS111に進む。一方、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値-Vとなる値より小さくない、すなわち、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値-Vとなる値以上であると判定した場合(ステップS112でNOの場合)、ステップS113に進む。
【0063】
ステップS113において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を最大値に設定する。そして、結合子Dに従ってステップS101に戻る。
【0064】
以上のように、電力制御処理の作用をまとめると以下のとおりである。主のDCDCコンバータ24の出力に余裕がある通常時は、主のDCDCコンバータ24の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うことで補機類32への電圧を維持する(ステップS105、ステップS111参照)。
【0065】
一方、主のDCDCコンバータ24の出力が最大に達した過負荷時は、主のDCDCコンバータ24の電圧指示値を最大としつつ、従のDCDCコンバータ24の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うことで補機類32への電圧を維持する(ステップS107、ステップS113参照)。過負荷時になると補機類32の電圧が低下するものの、その後に補機類32の負荷が低下すれば、補機類32の電圧は主のDCDCコンバータ24の電圧指示値(つまり、最大値)に近づく。これにより、フィードバック制御を行っている従のDCDCコンバータ24の電圧指示値が低下し、通常時の制御に戻る(ステップS106、ステップS112参照)。
【0066】
また、電力制御処理では、切替条件1を満たした場合に優先するDCDCコンバータ24を第一DCDCコンバータ25から第二DCDCコンバータ26に切り替え、切替条件2を満たした場合に優先するDCDCコンバータ24を第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25に切り替える。この切替時においては、以下の遷移処理が実行される。
【0067】
次に、図6を用いて優先するDCDCコンバータ24を第一DCDCコンバータ25から第二DCDCコンバータ26に切り替える場合の遷移処理について説明する。なお、第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25に切り替える場合については、フローチャート上の第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を入れ替えれば足りるため、説明を割愛する。
【0068】
図6のステップS200において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値以上であるか否かの判定を行う。CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値以上であると判定した場合(ステップS200でYESの場合)、ステップS201に進む。一方、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値以上ではない、すなわち、第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値よりも小さいと判定した場合(ステップS200でNOの場合)、ステップS202に進む。
【0069】
ステップS201において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を前回の設定値+αに設定する。前回の設定値の初期値は、上述した電力制御処理のステップS105及びステップS107において設定した値である。また、加算値αは、各DCDCコンバータ24の電圧指示値と比べて十分に小さい値、例えば、1/10よりも小さい値に設定されている。そして、ステップS200に戻る。
【0070】
ステップS202において、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が最大値以上か否かの判定を行う。CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が最大値以上であると判定した場合(ステップS202でYESの場合)、ステップS204に進む。一方、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が最大値以上ではない、すなわち、最大値未満であると判定した場合(ステップS202でNOの場合)、ステップS203に進む。
【0071】
ステップS203において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を第二DCDCコンバータ26の電圧指示値-Vとなる値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定する。そして、CPU20Aは遷移処理を終了させる。
【0072】
ステップS204において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を最大値に設定する。そして、CPU20Aは遷移処理を終了させる。
【0073】
(実施形態のまとめ)
本実施形態の電力供給システム10において、ECU20は、補機類32に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を制御するように構成されている。本実施形態のECU20では、判定部210が所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件を満たしていると判定した場合に、制御部220が補機類32に対して優先的に電力を供給するDCDCコンバータ24を切り替える。本実施形態によれば、所定の条件を契機に、優先的に使用するDCDCコンバータ24を切り替えることにより、第一DCDCコンバータ25と第二DCDCコンバータ26とをバランス良く利用することができ、早期の故障の発生を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態の車両12としては、所定の条件を契機に、優先的に使用するDCDCコンバータ24を切り替えることにより、補機バッテリ28の電圧の安定化を図ることができる。
【0075】
本実施形態のECU20は、第一DCDCコンバータ25を優先的に使用している場合に、第一DCDCコンバータ25の冷却水温が上昇して第一温度に達した場合、優先使用するDCDCコンバータ24を第二DCDCコンバータ26に切り替える。これにより、電力供給システム10において、第一DCDCコンバータ25に使用が偏ることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態のECU20では、第一DCDCコンバータ25の冷却温度が低下して、第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25に切り替わる第二温度が第一温度よりも低い温度に設定されている。本実施形態によれば、第一DCDCコンバータ25から第二DCDCコンバータ26に切り替わる条件と、第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25に切り替わる条件との間に温度による差を設けることにより、両DCDCコンバータ24が頻繁に切り替わるハンチングを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態のECU20は、主のDCDCコンバータ24の電圧指示値が最大値に満たない場合、主のDCDCコンバータ24の電圧指示値が補機バッテリ28の電圧の目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、従のDCDCコンバータ24の電圧指示値を主のDCDCコンバータ24の電圧指示値よりも低い値となるように制御している。一方、主のDCDCコンバータ24の電圧指示値が最大値に達した場合、主のDCDCコンバータ24の電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、従のDCDCコンバータ24の電圧指示値が補機バッテリ28の電圧の目標値となるようにフィードバック制御を行う。
【0078】
このように、本実施形態によれば、主のDCDCコンバータ24の出力が最大になった場合、従のDCDCコンバータ24によりの電圧指示値が補機バッテリ28の電圧の目標値となるようフィードバック制御を行うことにより、補機類32の電圧を維持することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、DCDCコンバータ24の遷移処理を行う場合、従のDCDCコンバータ24の出力を徐々に上昇させて主のDCDCコンバータ24に切り替えることにより、DCDCコンバータ24の切替時において補機類32に供給される電力の急変を抑制することができる。
【0080】
特に、本実施形態では、各DCDCコンバータ24の電圧指示値に基づいて、DCDCコンバータ24の切り替え制御を行うことにより、補機類32の電圧の急変を抑制している。これにより、補機類32の動作の安定性を確保することができる。
【0081】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、第1の実施形態と遷移処理の流れが異なる。なお、本実施形態の電力供給システム10の構成は第1の実施形態と同様であり、同一の符号は同一の構成を示しており、詳細な説明は割愛する。
【0082】
以下、図7を用いて本実施形態の遷移処理について説明する。なお、同図は優先するDCDCコンバータ24を第一DCDCコンバータ25から第二DCDCコンバータ26に切り替える場合の例である。なお、第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25に切り替える場合については、フローチャート上の第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を入れ替えれば足りるため、説明を割愛する。
【0083】
図7のステップS300において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値+αでフィードバック制御を行うように設定する。なお、加算値αは、上述のように、各DCDCコンバータ24の電圧指示値と比べて十分に小さい値、例えば、1/10よりも小さい値に設定されている。
【0084】
ステップS301において、CPU20Aはカウンタを0に設定する。
ステップS302において、CPU20Aはカウンタが一定値t以上になったか否かの判定を行う。CPU20Aはカウンタが一定値t以上になったと判定した場合(ステップS302でYESの場合)、ステップS304に進む。一方、CPU20Aはカウンタが一定値t以上ではない、すなわち、カウンタが一定値t未満であると判定した場合(ステップS302でNOの場合)、ステップS303に進む。
【0085】
ステップS303において、CPU20Aはカウンタに1制御周期を加算する。そしてステップS302に戻る。
【0086】
ステップS304において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値-Vとなる値でフィードバック制御を行うと共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値+αでフィードバック制御を行うように設定する。
【0087】
ステップS305において、CPU20Aはカウンタを0に設定する。
ステップS306において、CPU20Aはカウンタが一定値t以上になったか否かの判定を行う。CPU20Aはカウンタが一定値t以上になったと判定した場合(ステップS306でYESの場合)、ステップS308に進む。一方、CPU20Aはカウンタが一定値t以上ではない、すなわち、カウンタが一定値t未満であると判定した場合(ステップS306でNOの場合)、ステップS307に進む。
【0088】
ステップS307において、CPU20Aはカウンタに1制御周期を加算する。そしてステップS306に戻る。
【0089】
ステップS308において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値-Vとなる値でフィードバック制御を行うと共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定する。
【0090】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、本実施形態によれば、電圧指示値を上げる場合及び下げる場合の双方においてフィードバック制御が行われるため、DCDCコンバータ24を切り替える場合における補機類32の電圧の急変をさらに抑制することができる。
【0091】
(変形例)
上記の実施形態では、DCDCコンバータ24が切り替わる契機となる「所定の条件」として、第一DCDCコンバータ25の冷却温度に対して閾値を設けた。具体的には、第一DCDCコンバータ25から第二DCDCコンバータ26に切り替わる切替条件1の閾値として第一温度を設け、第二DCDCコンバータ26から第一DCDCコンバータ25に切り替わる切替条件2の閾値として第二温度を設けた。しかし、DCDCコンバータ24が切り替わる契機となる「所定の条件」は、この限りではない。
【0092】
例えば、変形例1では、「所定の条件」として、第一DCDCコンバータ25の素子温度に対する閾値を設けることができる。この場合、上記の実施形態と同様に、切替条件1の閾値として第一温度が設けられ、切替条件2の閾値として第二温度が設けられる。本変形例においても、上記の実施形態と同様に、両DCDCコンバータ24が頻繁に切り替わるハンチングを抑制することができる。
【0093】
また例えば、変形例2では、第一DCDCコンバータ25の素子温度と、第二DCDCコンバータ26の素子温度との関係に基づく「所定の条件」を設定することができる。この場合、例えば、第一DCDCコンバータ25の素子温度が第二DCDCコンバータ26の素子温度を超えた場合を切替条件1とすることができる。一方、第一DCDCコンバータ25の素子温度が第二DCDCコンバータ26の素子温度‐Tを下回った場合を切替条件2とすることができる。なお、上述のように、Tの値は、優先されるDCDCコンバータ24が第一DCDCコンバータ25又は第二DCDCコンバータ26の何れかに偏り過ぎないような値に設定することで、上記の実施形態と同様に、両DCDCコンバータ24が頻繁に切り替わるハンチングを抑制することができる。
【0094】
また例えば、変形例3では、車両12における任意の負荷となる補機類32の作動及び停止を「所定の条件」として設定することができる。この場合、任意の負荷が作動した場合を切替条件1とし、任意の負荷が停止した場合を切替条件2とすることができる。本変形例によれば、任意の負荷を好適に選択することにより、具体的には作動する補機類32の組み合わせを好適に選択することにより、一方のDCDCコンバータ24に使用が偏ることを抑制することができる。
【0095】
[備考]
なお、上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0096】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、ECU20における制御プログラム100は、ROM20Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0097】
上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
12 車両
20 ECU(制御装置)
22 高圧バッテリ
24 DCDCコンバータ
25 第一DCDCコンバータ
26 第二DCDCコンバータ
28 補機バッテリ
32 補機類(機器)
100 制御プログラム
210 判定部
220 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7