(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H02K41/02 Z
(21)【出願番号】P 2021046242
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】船場 樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 太一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 晋
(72)【発明者】
【氏名】原 光雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章友
(72)【発明者】
【氏名】小山内 健太
(72)【発明者】
【氏名】伴 兼一郎
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-172585(JP,A)
【文献】特開2004-364440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸(X)に沿って延在する固定子(30)と、
前記第1軸に沿って延在するとともに前記固定子と径方向に対向するように配置され、前記第1軸に沿った極の間隔が前記固定子の極の間隔と異なる可動子(40)と
を備え、
前記固定子及び前記可動子の少なくとも一方は、
前記第1軸に沿って並設された複数の永久磁石(34,43,53,61,62)と、
前記第1軸に沿って並設された複数のヨーク部(33,42,52)と
を有し、
前記永久磁石は、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられ、前記第1軸に沿った両端部から前記第1軸に沿った中央における径方向端部に向かって磁化された、または、その逆方向に磁化された極異方性磁石であるリニアモータ。
【請求項2】
前記永久磁石(34,43,53)は、1つの極に対して1つ設けられた請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記極異方性磁石である前記永久磁石は、前記固定子及び前記可動子の両方に設けられた請求項1または請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記可動子は、前記第1軸に沿って延びる軸部(41)を有し、
前記軸部と前記ヨーク部(42)とは一体成形品(44)である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記ヨーク部同士の間に配置される前記極異方性磁石である前記永久磁石(43)は、ボンド磁石である請求項4に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記可動子は、前記第1軸に沿って延びる軸部(51)を有し、
前記軸部と前記ヨーク部(52)とは別体の成形品である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアモータとしては、例えば、第1軸に沿って延在する固定子と、第1軸に沿って延在するとともに固定子と径方向に対向するように配置され第1軸に沿った極の間隔が固定子の極の間隔と異なる可動子とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このリニアモータにおける固定子及び可動子の少なくとも一方は、それぞれ第1軸に沿って並設された複数の永久磁石と複数のヨーク部とを有している。そして、永久磁石は1つの極に対して2つ設けられ、それら2つの永久磁石は互いに逆向きの方向に磁化され、ヨーク部はそれら永久磁石の間に介在されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなリニアモータでは、永久磁石は1つの極に対してヨーク部を挟んで2つ設けられ、それら2つの永久磁石は互いに反発する方向に磁化されているため、部品点数が多くなるとともに組み付けが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、組み付け性を良好としつつ部品点数を低減可能としたリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するリニアモータ(10)は、第1軸(X)に沿って延在する固定子(30)と、前記第1軸に沿って延在するとともに前記固定子と径方向に対向するように配置され、前記第1軸に沿った極の間隔が前記固定子の極の間隔と異なる可動子(40)とを備え、前記固定子及び前記可動子の少なくとも一方は、前記第1軸に沿って並設された複数の永久磁石(34,43,53)と、前記第1軸に沿って並設された複数のヨーク部(33,42,52)とを有し、前記永久磁石は、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられ、前記第1軸に沿った両端部から前記第1軸に沿った中央における径方向端部に向かって磁化された、または、その逆方向に磁化された極異方性磁石である。
【0008】
同構成によれば、永久磁石は、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられ、第1軸に沿った両端部から第1軸に沿った中央における径方向端部に向かって磁化された、または、その逆方向に磁化された極異方性磁石であるため、部品点数を低減できる。すなわち、上記構成では、例えば、永久磁石が1つの極に対して2つの範囲に設けられてヨーク部がそれら永久磁石の間に介在された構成に比べて、少なくとも永久磁石の間に介在されるヨーク部が不要となり、部品点数を低減することができる。また、例えば、1つの極を構成しつつ互いに反発する方向に磁化された2つの永久磁石を組み付ける構成に比べて、組み付け性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】一実施形態における固定子の一部分解斜視図。
【
図3】一実施形態における可動子の一部分解斜視図。
【
図4】一実施形態におけるリニアモータの一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、リニアモータ10の一実施形態を
図1~
図4に従って説明する。
図1に示すように、リニアモータ10は、ハウジング20と、固定子30と、可動子40とを備えている。
【0011】
ハウジング20は、第1軸Xに沿って延在する筒状のケース21と、ケース21の両端部を閉塞する円盤状のエンドハウジング22と、エンドハウジング22の中央に設けられる筒状の滑り軸受23とを有する。
【0012】
固定子30は、第1軸Xに沿って延在する。固定子30は、全体が筒状に形成され、ケース21の内周面に固定されている。
詳しくは、
図1、
図2及び
図4に示すように、固定子30は、それぞれ第1軸Xに沿って並設された複数のインシュレータ31と、複数のコイル32と、複数の第1ヨーク部33と、複数の第1永久磁石34とを有している。
【0013】
インシュレータ31は、絶縁性の樹脂材よりなる。インシュレータ31は、筒部31aと、筒部31aの両端から径方向外側に延びるフランジ部31bとを有している。
コイル32は、インシュレータ31の筒部31aに巻回され、フランジ部31b同士の間に介在されている。本実施形態のコイル32は、6個設けられ、U相、V相、W相、-U相、-V相、-W相のコイル32とされ、図示しない駆動回路から位相の異なる三相の駆動電流が供給される。
【0014】
第1ヨーク部33は、軟磁性材料よりなる。本実施形態の1つの第1ヨーク部33は、重ねられた2枚の円盤状のコアシート33aからなる。第1ヨーク部33は、各コイル32の両端側にインシュレータ31のフランジ部31bと接触するように設けられている。すなわち、第1ヨーク部33は、7個設けられ、それぞれの間にコイル32が挟まれるように設けられている。そして、1つのコイル32と1つの第1ヨーク部33とは、固定子30の1つの極を構成し、固定子30は6極とされている。
【0015】
第1永久磁石34は、筒状に形成され、コイル32の内側であって、詳しくはインシュレータ31の筒部31aの内側に配置されている。第1永久磁石34は、1つの極に対して第1軸Xに沿った連続した1つの範囲に1つ設けられている。
【0016】
図4に示すように、第1永久磁石34は、第1軸Xに沿った両端部から第1軸Xに沿った中央における径方向端部、詳しくは径方向内側端部に向かって磁化された極異方性磁石である。すなわち、第1永久磁石34は、第1軸Xに沿った両端部がS極とされ、第1軸Xに沿った中央における径方向内側端部がN極とされている。
【0017】
固定子30は、第1ヨーク部33の外周がケース21の内周面に固定されている。
可動子40は、第1軸Xに沿って延在するとともに固定子30と径方向に対向するように配置され、第1軸Xに沿った極の間隔が固定子30の極の間隔と異なるように設定されている。
【0018】
詳しくは、
図1、
図3及び
図4に示すように、可動子40は、第1軸Xに沿って延びる軸部41と、それぞれ第1軸Xに沿って並設された複数の第2ヨーク部42と、複数の第2永久磁石43とを有している。
【0019】
軸部41と第2ヨーク部42とは一体成形品44である。軸部41と第2ヨーク部42とを有する一体成形品44は、軟磁性材料よりなる。第2ヨーク部42は、軸部41から径方向外側に延びている。第2ヨーク部42は、第1軸Xに沿って10個並設されている。
【0020】
第2永久磁石43は、筒状に形成され、軸部41の径方向外側であって第2ヨーク部42同士の間に挟まれるように設けられている。第2永久磁石43は、第1軸Xに沿って9個並設されている。本実施形態の第2永久磁石43は、ボンド磁石である。すなわち、第2永久磁石43は、微小な磁石粒が樹脂等に混ぜ合わされて成形される磁石であって、第2ヨーク部42同士の間を埋めるように成形されている。なお、第2永久磁石43は、一体成形品44に対して破損させずに分解することが不可能であるが、
図3では、1つの第2永久磁石43を模式的に分解して図示している。
【0021】
図4に示すように、第2永久磁石43は、第1軸Xに沿った中央における径方向端部、詳しくは径方向外側端部から第1軸Xに沿った両端部に向かって磁化された極異方性磁石である。すなわち、第2永久磁石43は、第1軸Xに沿った中央における径方向外側端部がS極とされ、第1軸Xに沿った両端部がN極とされている。これにより、第2ヨーク部42の径方向外側端部は、N極となる。
【0022】
上記構成によって、1つの第2永久磁石43と1つの第2ヨーク部42とは、可動子40の1つの極を構成している。第2永久磁石43は、1つの極に対して第1軸Xに沿った連続した1つの範囲に1つ設けられている。そして、可動子40の第1軸Xに沿った極の間隔は、固定子30の極の間隔と異なるように設定されている。本実施形態では、固定子30の6つの極の間隔と、可動子40の5つの極の間隔とが同じとなるように設定されている。すなわち、可動子40の第1軸Xに沿った1つの極の間隔は、固定子30の1つの極の間隔の1.2倍に設定されている。
【0023】
図1に示すように、可動子40は、軸部41の両端側が滑り軸受23によって第1軸Xに沿った方向に移動可能に支持されている。
次に、上記のように構成されたリニアモータ10の作用について説明する。
【0024】
図示しない駆動回路からコイル32に三相の駆動電流が供給されると、固定子30にて可動子40を移動させる移動磁界が発生されて可動子40が第1軸Xに沿って移動される。
【0025】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)第1永久磁石34は、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられ、第1軸Xに沿った両端部から第1軸Xに沿った中央における径方向端部に向かって磁化された極異方性磁石である。また、第2永久磁石43は、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられ、第1軸Xに沿った中央における径方向端部から第1軸Xに沿った両端部に向かって磁化された極異方性磁石である。よって、部品点数を低減することができる。すなわち、上記構成では、例えば、永久磁石が1つの極に対して2つの範囲に設けられてヨーク部がそれら永久磁石の間に介在された従来の構成に比べて、少なくとも永久磁石の間に介在されるヨーク部が不要となり、部品点数を低減することができる。また、例えば、1つの極を構成しつつ互いに反発する方向に磁化された2つの永久磁石を組み付ける構成に比べて、組み付け性が良好となる。
【0026】
(2)第1永久磁石34は、1つの極に対して1つ設けられるため、1つの極に対して連続した1つの範囲に2つ以上設けられる構成に比べて、部品点数を低減することができる。また、第2永久磁石43は、1つの極に対して1つ設けられるため、1つの極に対して連続した1つの範囲に2つ以上設けられる構成に比べて、部品点数を低減することができる。
【0027】
(3)極異方性磁石である第1永久磁石34及び第2永久磁石43は、固定子30及び可動子40の両方に設けられる。よって、固定子30及び可動子40のいずれか一方に設けた場合に比べて高効率のリニアモータ10としつつ、固定子30及び可動子40の両方で部品点数を低減できるとともに組み付け性が良好となる。
【0028】
(4)軸部41と第2ヨーク部42とは一体成形品44であるため、軸部41と第2ヨーク部42とが別体の構成に比べて、部品点数を低減できる。
(5)軸部41と一体成形品44である第2ヨーク部42同士の間に配置される極異方性磁石である第2永久磁石43は、ボンド磁石であるため、例えば、焼結磁石とした場合に比べて、第2ヨーク部42同士の間に容易に設けることができる。
【0029】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、軸部41と第2ヨーク部42とは一体成形品44であるとしたが、これに限定されず、軸部と第2ヨーク部とを別体の成形品としてもよい。
【0030】
例えば、
図5に示すように、軸部51と第2ヨーク部52とを別体の成形品としてもよい。また、この例では、極異方性磁石である第2永久磁石53は、ボンド磁石ではなく、焼結磁石とされている。そして、第2ヨーク部52と第2永久磁石53は、軸部51に交互に外嵌されて固定されている。このようにすると、例えば、軸部51に対して第2ヨーク部52と第2永久磁石53とを容易に順次、組み付けることが可能となる。なお、この場合、軸部51は非磁性体にて構成してもよい。
【0031】
・上記実施形態では、第1永久磁石34及び第2永久磁石43は、1つの極に対して1つ設けられるとしたが、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられていれば、1つの極に対して2つ以上設けられていれもよい。
【0032】
例えば
図6に示すように、第1永久磁石61は、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられるとともに2つ設けられ、その範囲において第1軸Xに沿った両端部から第1軸Xに沿った中央における径方向端部に向かって磁化された極異方性磁石としてもよい。すなわち、第1永久磁石61は、上記実施形態の第1永久磁石34を第1軸Xに沿った中央で分割した構成としてもよい。
【0033】
例えば
図6に示すように、第2永久磁石62は、1つの極に対して連続した1つの範囲に設けられるとともに2つ設けられ、その範囲において第1軸Xに沿った中央における径方向端部から第1軸Xに沿った両端部に向かって磁化された極異方性磁石としてもよい。すなわち、第2永久磁石62は、上記実施形態の第2永久磁石43を第1軸Xに沿った中央で分割した構成としてもよい。
【0034】
このようにしても、例えば、永久磁石が1つの極に対して2つの範囲に設けられてヨーク部がそれら永久磁石の間に介在された従来の構成に比べて、永久磁石の間に介在されるヨーク部が不要となり、部品点数を低減することができる。また、例えば、1つの極を構成しつつ互いに反発する方向に磁化された2つの永久磁石を組み付ける構成に比べて、組み付け性が良好となる。
【0035】
・上記実施形態では、極異方性磁石である第1永久磁石34及び第2永久磁石43は、固定子30及び可動子40の両方に設けられるとしたが、少なくとも一方に設けられる構成であれば、変更してもよい。すなわち、固定子30及び可動子40のいずれか一方は極異方性磁石である第1永久磁石34または第2永久磁石43を有していない構成としてもよい。例えば、可動子40は、第2永久磁石43を有さず、軟磁性材料よりなる突極のみの構成としてもよい。また、例えば、可動子40は、極異方性磁石である第2永久磁石43を有さず、極異方性磁石以外の永久磁石を有した構成としてもよい。また、例えば、固定子30においても、極異方性磁石である第1永久磁石34を有さず、極異方性磁石以外の永久磁石を有した構成としてもよい。
【0036】
・上記実施形態では、固定子30は6極とされているとしたが、これに限定されず、他の極数としてもよい。また、上記実施形態では、可動子40の第1軸Xに沿った極の間隔は、固定子30の極の間隔の1.2倍に設定されているとしたが、これに限定されず、例えば固定子の極数等に応じて極の間隔を変更してもよい。また、上記実施形態では、可動子40は、10個の第2ヨーク部42と、それら第2ヨーク部42同士の間に挟まれる9個の第2永久磁石43とを有する構成としたが、これに限定されず、それぞれ他の個数としてもよい。
【0037】
・上記実施形態では、1つの第1ヨーク部33は、重ねられた2枚の円盤状のコアシート33aからなるとしたが、これに限定されず、他の構成の第1ヨーク部33としてもよい。
【0038】
・上記実施形態では、第1永久磁石34は、第1軸Xに沿った両端部から第1軸Xに沿った中央における径方向端部に向かって磁化された極異方性磁石であるとしたが、その逆方向に磁化された極異方性磁石としてもよい。
【0039】
・上記実施形態では、第2永久磁石43は、第1軸Xに沿った中央における径方向端部から第1軸Xに沿った両端部に向かって磁化された極異方性磁石であるとしたが、その逆方向に磁化された極異方性磁石としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…リニアモータ、30…固定子、33…第1ヨーク部(ヨーク部)、34,61…第1永久磁石(永久磁石)、40…可動子、41,51…軸部、42,52…第2ヨーク部(ヨーク部)、43,53,62…第2永久磁石(永久磁石)、44…一体成形品、X…第1軸。