(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241008BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241008BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241008BHJP
G16Y 20/30 20200101ALI20241008BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241008BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02J7/00 V
B60L3/00 S
G16Y10/40
G16Y20/30
H02J3/32
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H02J13/00 301K
(21)【出願番号】P 2021053235
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中尾 健司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 慶幸
(72)【発明者】
【氏名】木野村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 優也
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0283912(US,A1)
【文献】国際公開第2017/013754(WO,A1)
【文献】特開2012-080748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
G16Y10/00-40/60
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の充放電制御を行なう第1制御装置と、
表示装置の表示制御を行なう第2制御装置と
、
外部コンピュータと通信可能に構成される通信装置と、
ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、
前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、所定の処理を実行する第3制御装置と、
を備え
る制御システムであって、
前記第2制御装置は、第1制御モードと第2制御モードとの各制御モードで動作可能に構成され、
前記第3制御装置は、前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、前記第2制御装置の制御モードを切り替えるように構成され、
前記第1制御モードで動作する前記第2制御装置は、
前記通信装置が前記外部コンピュータからエネルギーマネジメントの要請を受信すると、前記第1制御装置が
前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行したと仮定した場合の、前記蓄電装置の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、前記エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、前記表示装置に表示さ
せ、前記画面が表示された後、前記要請を承諾するか否かを示す情報が前記入力装置に入力されると、前記第3制御装置は、前記外部コンピュータに対して、前記要請を承諾するか否かを示す通知を行ない、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータから前記エネルギーマネジメントの要請を受信すると、所定の条件に基づいて前記要請を承諾するか否かを判断した後、前記外部コンピュータに対して、その判断結果を示す通知を行ない、
前記所定の条件は、前記蓄電装置の蓄電残量の下限値を指定し、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記第1制御装置が前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行すると前記蓄電装置の蓄電残量が前記下限値を下回ることが予測される場合には、前記要請を拒否する旨判断する、制御システム。
【請求項2】
蓄電装置の充放電制御を行なう第1制御装置と、
表示装置の表示制御を行なう第2制御装置と、
外部コンピュータと通信可能に構成される通信装置と、
ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、
前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、所定の処理を実行する第3制御装置と、
を備える制御システムであって、
前記第2制御装置は、第1制御モードと第2制御モードとの各制御モードで動作可能に構成され、
前記第3制御装置は、前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、前記第2制御装置の制御モードを切り替えるように構成され、
前記第1制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータからエネルギーマネジメントの要請を受信すると、前記第1制御装置が前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行したと仮定した場合の、前記蓄電装置の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、前記エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、前記表示装置に表示させ、前記画面が表示された後、前記要請を承諾するか否かを示す情報が前記入力装置に入力されると、前記第3制御装置は、前記外部コンピュータに対して、前記要請を承諾するか否かを示す通知を行ない、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータから前記エネルギーマネジメントの要請を受信すると、所定の条件に基づいて前記要請を承諾するか否かを判断した後、前記外部コンピュータに対して、その判断結果を示す通知を行ない、
前記所定の条件は、前記蓄電装置の蓄電残量の上限値を指定し、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記第1制御装置が前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行すると前記蓄電装置の蓄電残量が前記上限値を超えることが予測される場合には、前記要請を拒否する旨判断する
、制御システム。
【請求項3】
蓄電装置の充放電制御を行なう第1制御装置と、
表示装置の表示制御を行なう第2制御装置と、
外部コンピュータと通信可能に構成される通信装置と、
ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、
前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、所定の処理を実行する第3制御装置と、
を備える制御システムであって、
前記第2制御装置は、第1制御モードと第2制御モードとの各制御モードで動作可能に構成され、
前記第3制御装置は、前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、前記第2制御装置の制御モードを切り替えるように構成され、
前記第1制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータからエネルギーマネジメントの要請を受信すると、前記第1制御装置が前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行したと仮定した場合の、前記蓄電装置の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、前記エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、前記表示装置に表示させ、前記画面が表示された後、前記要請を承諾するか否かを示す情報が前記入力装置に入力されると、前記第3制御装置は、前記外部コンピュータに対して、前記要請を承諾するか否かを示す通知を行ない、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータから前記エネルギーマネジメントの要請を受信すると、所定の条件に基づいて前記要請を承諾するか否かを判断した後、前記外部コンピュータに対して、その判断結果を示す通知を行ない、
前記所定の条件は、要求報酬額を指定し、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記第1制御装置が前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行したときに生じる報酬額が前記要求報酬額以上である場合には、前記要請を承諾する旨判断する
、制御システム。
【請求項4】
車両に搭載された蓄電装置の充放電制御を行なう第1制御装置と、
表示装置の表示制御を行なう第2制御装置と、
外部コンピュータと通信可能に構成される通信装置と、
ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、
前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、所定の処理を実行する第3制御装置と、
を備える制御システムであって、
前記第2制御装置は、第1制御モードと第2制御モードとの各制御モードで動作可能に構成され、
前記第3制御装置は、前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、前記第2制御装置の制御モードを切り替えるように構成され、
前記第1制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータからエネルギーマネジメントの要請を受信すると、前記第1制御装置が前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行したと仮定した場合の、前記蓄電装置の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、前記エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、前記表示装置に表示させ、前記画面が表示された後、前記要請を承諾するか否かを示す情報が前記入力装置に入力されると、前記第3制御装置は、前記外部コンピュータに対して、前記要請を承諾するか否かを示す通知を行ない、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータから前記エネルギーマネジメントの要請を受信すると、所定の条件に基づいて前記要請を承諾するか否かを判断した後、前記外部コンピュータに対して、その判断結果を示す通知を行ない、
前記第2制御モードで動作する前記第2制御装置は、前記第1制御装置が前記エネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行すると走行計画どおりに前記車両が走行できなくなることが予測される場合には、前記要請を拒否する旨判断する
、制御システム。
【請求項5】
蓄電装置の充放電制御を行なう第1制御装置と、
表示装置の表示制御を行なう第2制御装置と、
外部コンピュータと通信可能に構成される通信装置と、
ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、
前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、所定の処理を実行する第3制御装置と、
を備える制御システムであって、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置がエネルギーマネジメントの要請に従って前記蓄電装置の充放電制御を実行したと仮定した場合の、前記蓄電装置の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、前記エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、前記表示装置に表示させ、
前記第2制御装置は、前記通信装置が前記外部コンピュータから前記エネルギーマネジメントの要請を受信すると、前記表示装置に前記画面を表示させるように構成され、
前記画面が表示された後、前記要請を承諾するか否かを示す情報が前記入力装置に入力されると、前記第3制御装置は、前記外部コンピュータに対して、前記要請を承諾するか否かを示す通知を行ない、
前記第2制御装置は、前記蓄電装置のSOCと前記蓄電装置を備える車両の航続可能距離とを含む第1選択肢から選択された1以上の前記第1パラメータの予測推移と、報酬単価と報酬積算額とを含む第2選択肢から選択された1以上の前記第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、前記表示装置に表示させるように構成され、
前記第3制御装置は、前記入力装置に対するユーザの入力に基づいて、前記第1選択肢から1以上の前記第1パラメータを選択するとともに、前記第2選択肢から1以上の前記第2パラメータを選択するように構成される
、制御システム。
【請求項6】
前記エネルギーマネジメントの要請は、前記蓄電装置の放電を要請し、
前記第1パラメータは前記蓄電装置のSOCであり、前記第2パラメータは報酬単価である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記要請が承諾される場合には、前記第1制御装置の遠隔操作が許可され、前記要請が拒否される場合には、前記第1制御装置の遠隔操作が禁止される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム及び表示装置に関し、特に、エネルギーマネジメント技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力市場(たとえば、需給調整市場)又は電気事業者(たとえば、電力会社)からのエネルギーマネジメントの要請に応えた需要家に対して報酬(インセンティブ)が支払われる仕組みが知られている。特開2019-165547号公報(特許文献1)は、電力供給要請があった場合に、要請期間において蓄電装置の放電を実行する制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置のユーザは、エネルギーマネジメントの要請(たとえば、電力供給要請)に従って蓄電装置の充放電を実行することにより、報酬を受け取ることができる。しかしながら、蓄電装置のユーザは、状況によっては、要請どおりに蓄電装置の充放電を行なって報酬を受け取ることよりも、別の用途で蓄電装置を使用することを望むかもしれない。ユーザは、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットを理解した上で、要請に応じるか否かを決断できることが望ましい。そこで、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットをユーザに分かりやすいかたちで示すユーザインタフェースが求められる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットをユーザに分かりやすいかたちで示すことができる制御システム及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係る制御システムは、蓄電装置と、表示装置と、蓄電装置の充放電制御を行なう第1制御装置と、表示装置の表示制御を行なう第2制御装置とを備える。第2制御装置は、第1制御装置がエネルギーマネジメントの要請に従って蓄電装置の充放電制御を実行したと仮定した場合の、蓄電装置の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、表示装置に表示させる。
【0007】
上記制御システムにおいて、表示装置が表示する上記画面(以下、「予測画面」とも称する)は、エネルギーマネジメントの要請に従って蓄電装置の充放電制御が実行されたと仮定した場合の第1及び第2パラメータの各予測推移を同じ時間軸上に示す。第1パラメータは、蓄電装置の蓄電残量に関するパラメータである。第2パラメータは、エネルギーマネジメントに対する報酬額に関するパラメータである。ユーザは、予測画面から、蓄電装置を利用したい時間帯に蓄電装置にどの程度の電力が残っているかを容易に把握できる。また、ユーザは、予測画面から、エネルギーマネジメントの要請に応えたときの報酬額を確認できる。これにより、ユーザは、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットとを比較考量しやすくなる。そして、ユーザは、上記要請に応えるか否かを的確に判断しやすくなる。
【0008】
上記エネルギーマネジメントに対する報酬額には、ユーザがエネルギーマネジメントを行なったときに得られるインセンティブの額のほか、ユーザがエネルギーマネジメントを行なわないときに科されるペナルティの額も含まれる。ユーザがエネルギーマネジメントを行なうことでペナルティを免れることは、ユーザがエネルギーマネジメントを行なうことによってそのペナルティの額に等しい報酬を受け取ることと実質的に同じといえるからである。なお、ユーザがエネルギーマネジメントを行なわない場合に、ユーザがエネルギーマネジメントを行なった場合よりも高額の電気料金を支払うことになる形態では、その高額の電気料金はペナルティに相当する。
【0009】
上記制御システムは、外部コンピュータと通信可能に構成される通信装置と、ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、入力装置に対するユーザの入力に基づいて、所定の処理を実行する第3制御装置とをさらに備えてもよい。第2制御装置は、通信装置が外部コンピュータからエネルギーマネジメントの要請を受信すると、表示装置に予測画面を表示させるように構成されてもよい。そして、第3制御装置は、予測画面が表示された後、エネルギーマネジメントの要請を承諾するか否かを示す情報が入力装置に入力されると、外部コンピュータに対して、エネルギーマネジメントの要請を承諾するか否かを示す通知を行なうように構成されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、ユーザが、予測画面を見て、エネルギーマネジメントの要請に応えるか否かを決定した後、入力装置を操作して、要請の承諾/拒否のいずれかを選択することにより、承諾/拒否のいずれかを外部コンピュータに回答することが可能になる。なお、第1~第3制御装置は、1つのユニットに一緒に実装されてもよいし、複数のユニットに分かれて実装されてもよい。
【0011】
外部コンピュータは、電力網を管理するコンピュータであってもよい。エネルギーマネジメントは、電力網の需給調整であってもよい。第1制御装置は、蓄電装置が電力網に電気的に接続された状態で、外部コンピュータからの充放電指令に従って蓄電装置の充放電制御を実行するように構成されてもよい。
【0012】
上記第2制御装置は、第1制御モードと第2制御モードとの各制御モードで動作可能に構成されてもよい。上記第3制御装置は、入力装置に対するユーザの入力に基づいて、第2制御装置の制御モードを切り替えるように構成されてもよい。第1制御モードで動作する第2制御装置は、通信装置が外部コンピュータからエネルギーマネジメントの要請を受信すると、表示装置に予測画面を表示させるように構成されてもよい。第2制御モードで動作する第2制御装置は、通信装置が外部コンピュータからエネルギーマネジメントの要請を受信すると、所定の条件に基づいて要請を承諾するか否かを判断した後、外部コンピュータに対して、その判断結果を示す通知を行なうように構成されてもよい。
【0013】
上記構成によれば、エネルギーマネジメント可否判断(すなわち、エネルギーマネジメントの要請に応えるか否かの判断)をユーザが行なう第1制御モードと、エネルギーマネジメント可否判断を自動で行なう第2制御モードとを、ユーザが切り替えることが可能になる。これにより、ユーザの利便性が向上する。
【0014】
上記所定の条件は、蓄電装置の蓄電残量の下限値を指定してもよい。第2制御モードで動作する第2制御装置は、第1制御装置がエネルギーマネジメントの要請に従って蓄電装置の充放電制御を実行すると蓄電装置の蓄電残量が下限値を下回ることが予測される場合には、要請を拒否する旨判断するように構成されてもよい。
【0015】
上記構成によれば、エネルギーマネジメントによって蓄電装置の蓄電残量が減り過ぎることを抑制できる。蓄電装置の蓄電残量の下限値は、ユーザによって任意の値に設定されてもよいし、自動的に所定の値に設定されてもよい。
【0016】
上記所定の条件は、蓄電装置の蓄電残量の上限値を指定してもよい。第2制御モードで動作する第2制御装置は、第1制御装置がエネルギーマネジメントの要請に従って蓄電装置の充放電制御を実行すると蓄電装置の蓄電残量が上限値を超えることが予測される場合には、要請を拒否する旨判断するように構成されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、エネルギーマネジメントによって蓄電装置の蓄電残量が増え過ぎることを抑制できる。上限値は、ユーザによって任意の値に設定されてもよいし、自動的に所定の値に設定されてもよい。また、上記所定の条件は、蓄電装置の蓄電残量の下限値及び上限値の両方を指定してもよい。
【0018】
上記所定の条件は、要求報酬額を指定してもよい。第2制御モードで動作する第2制御装置は、第1制御装置がエネルギーマネジメントの要請に従って蓄電装置の充放電制御を実行したときに生じる報酬額が要求報酬額以上である場合には、要請を承諾する旨判断するように構成されてもよい。こうした構成によれば、高額報酬のエネルギーマネジメントに参加しやすくなる。要求報酬額は、ユーザによって任意の値に設定されてもよいし、自動的に所定の値に設定されてもよい。
【0019】
上述したいずれかの制御システムにおいて、蓄電装置は車両に搭載されてもよい。第2制御モードで動作する第2制御装置は、第1制御装置がエネルギーマネジメントの要請に従って蓄電装置の充放電制御を実行すると走行計画どおりに車両が走行できなくなることが予測される場合には、要請を拒否する旨判断するように構成されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、エネルギーマネジメントによって走行計画どおりに車両が走行できなくなることを抑制できる。
【0021】
第2制御装置は、蓄電装置のSOCと蓄電装置を備える車両の航続可能距離とを含む第1選択肢から選択された1以上の第1パラメータの予測推移と、報酬単価と報酬積算額とを含む第2選択肢から選択された1以上の第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を、表示装置に表示させるように構成されてもよい。第3制御装置は、入力装置に対するユーザの入力に基づいて、第1選択肢から1以上の第1パラメータを選択するとともに、第2選択肢から1以上の第2パラメータを選択するように構成されてもよい。
【0022】
上記構成によれば、ユーザが、複数の候補(たとえば、蓄電装置のSOC、及び車両の航続可能距離)から、表示装置に表示させる第1パラメータを選ぶことが可能になる。また、ユーザが、複数の候補(たとえば、報酬単価及び報酬積算額)から、表示装置に表示させる第2パラメータを選ぶことも可能になる。表示装置は、複数の第1パラメータ(又は、複数の第2パラメータ)を同時に予測画面上に表示してもよい。
【0023】
第1及び第2パラメータの決め方は、上記に限られず任意である。たとえば、エネルギーマネジメントの要請が、蓄電装置の放電を要請する場合において、第1パラメータが蓄電装置のSOCであり、第2パラメータが報酬単価であってもよい。なお、SOC(State Of Charge)は、蓄電残量を示し、たとえば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0024】
上述したいずれかの制御システムは、電動車両に搭載されてもよい。電動車両は、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行するように構成される車両である。電動車両には、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車両)、及びPHV(プラグインハイブリッド車両)のほか、FC車(燃料電池自動車)、レンジエクステンダーEVなども含まれる。
【0025】
上述したいずれかの制御システムにおいて、エネルギーマネジメントの要請が承諾される場合には、第1制御装置の遠隔操作が許可され、エネルギーマネジメントの要請が拒否される場合には、第1制御装置の遠隔操作が禁止されてもよい。
【0026】
上記構成によれば、たとえば外部コンピュータが、第1制御装置を遠隔操作することにより、承諾された要請に従う蓄電装置の充放電制御を行なうことが可能になる。
【0027】
本開示の第2の観点に係る表示装置は、エネルギーマネジメントの要請に従って蓄電装置の充放電制御が実行されたと仮定した場合の、蓄電装置の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面を表示するように構成される。
【0028】
上記表示装置によっても、前述した制御システムと同様、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットをユーザに分かりやすいかたちで示すことが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットをユーザに分かりやすいかたちで示すことができる制御システム及び表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の実施の形態に係る制御システムが搭載された車両の構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る電力システムの構成を示す図である。
【
図3】
図1に示したECUの詳細構成を示す図である。
【
図4】
図3に示した第2制御部がユーザ選択モードで動作するときにECUによって実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示した処理において表示される予測画面の一例を示す図である。
【
図6】
図5に示した予測画面について説明するための図である。
【
図7】
図3に示した第2制御部が自動選択モードで動作するときにECUによって実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示した処理において表示される入力画面の一例を示す図である。
【
図9】VPP要請に応える充放電スケジュールに従って実行される蓄電装置の充放電制御を示すフローチャートである。
【
図10】
図5に示した予測画面の第1変形例を示す図である。
【
図11】
図5に示した予測画面の第2変形例を示す図である。
【
図12】第2変形例において、VPP要請信号が要請する放電が拒否された場合の予測画面を示す図である。
【
図13】
図8に示した入力画面の第1変形例を示す図である。
【
図14】
図8に示した入力画面の第2変形例を示す図である。
【
図15】
図8に示した入力画面の第3変形例を示す図である。
【
図16】
図8に示した入力画面の第4変形例を示す図である。
【
図17】
図7に示した処理の変形例を示す図である。
【
図18】
図3に示した制御システムの構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0032】
図1は、この実施の形態に係る制御システムが搭載された車両50の構成を示す図である。
図1を参照して、車両50は、走行用の電力を蓄電するバッテリ130を備える。車両50は、バッテリ130に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。この実施の形態に係る車両50は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(EV)である。
【0033】
バッテリ130は、たとえばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池のような二次電池を含んで構成される。この実施の形態では、二次電池として、複数のリチウムイオン電池を含む組電池を採用する。組電池は、複数の二次電池(一般に「セル」とも称される)が互いに電気的に接続されて構成される。なお、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。この実施の形態に係るバッテリ130は、本開示に係る「蓄電装置」の一例に相当する。
【0034】
車両50は、電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する)150を備える。ECU150は、バッテリ130の充電制御及び放電制御を行なうように構成される。また、ECU150は、車両50の外部との通信を制御するように構成される。
【0035】
車両50は、バッテリ130の状態を監視する監視モジュール131をさらに備える。監視モジュール131は、バッテリ130の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。監視モジュール131は、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、及び通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU150は、監視モジュール131の出力に基づいてバッテリ130の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。
【0036】
EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)40は、車両外部の給電設備に相当する。EVSE40の本体には、電源回路41が内蔵されている。EVSE40の本体には、充電ケーブル42が接続される。充電ケーブル42は、常にEVSE40の本体に接続されていてもよいし、EVSE40の本体に対して着脱可能であってもよい。充電ケーブル42は、先端にコネクタ43を有し、内部に電力線を含む。
【0037】
車両50は、接触充電のためのインレット110及び充放電器120を備える。インレット110は、車両50の外部から供給される電力を受電するように構成される。インレット110は、充電ケーブル42のコネクタ43が接続可能に構成される。EVSE40の本体につながる充電ケーブル42のコネクタ43が車両50のインレット110に接続(プラグイン)されることによって、車両50がプラグイン状態になる。
【0038】
この実施の形態に係るEVSE40は、交流電力を供給するAC方式の給電設備である。詳細は後述するが、EVSE40は逆潮流に対応している。なお、
図1には、EVSE40の給電方式に対応するインレット110及び充放電器120のみを示しているが、車両50は、複数種の給電方式(たとえば、AC方式及びDC方式)に対応できるように複数のインレットを備えてもよい。
【0039】
充放電器120は、インレット110とバッテリ130との間に位置する。充放電器120は、インレット110からバッテリ130までの電力経路の接続/遮断を切り替えるリレーと、電力変換回路と(いずれも図示せず)を含んで構成される。電力変換回路は、双方向にAC/DC変換を行なうように構成される。電力変換回路は、EVSE40から供給される交流電力を直流電力に変換してバッテリ130へ出力するとともに、バッテリ130から供給される直流電力を交流電力に変換してインレット110へ出力するように構成される。電力変換回路としては、たとえば双方向インバータを採用できる。充放電器120は、整流回路、力率改善(Power Factor Correction)回路、絶縁回路、変圧器(たとえば、絶縁トランス)、及びフィルタ回路の少なくとも1つをさらに含んでもよい。充放電器120に含まれるリレー及び電力変換回路の各々は、ECU150によって制御される。
【0040】
車両50は、充放電器120の状態を監視する監視モジュール121をさらに備える。監視モジュール121は、充放電器120の状態を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。この実施の形態では、監視モジュール121が、上記電力変換回路に入力される電圧及び電流と、上記電力変換回路から出力される電圧及び電流とを検出するように構成される。監視モジュール121は、バッテリ130の充電電力及び放電電力を検出可能に構成される。
【0041】
プラグイン状態の車両50では、外部充電(すなわち、車両外部から供給される電力によってバッテリ130を充電すること)と外部給電(すなわち、車両50から車両外部へ給電を行なうこと)とが可能になる。外部充電のための電力は、たとえばEVSE40からインレット110に供給される。充放電器120は、インレット110が受電した電力をバッテリ130の充電に適した電力に変換し、変換された電力をバッテリ130へ出力するように構成される。外部給電のための電力は、バッテリ130から充放電器120に供給される。充放電器120は、バッテリ130から供給される電力を外部給電に適した電力に変換し、変換された電力をインレット110へ出力するように構成される。外部充電及び外部給電のいずれかが実行されるときには充放電器120のリレーが閉状態(接続状態)にされ、外部充電及び外部給電のいずれも実行されないときには充放電器120のリレーが開状態(遮断状態)にされる。
【0042】
ECU150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、記憶装置153、及びタイマ154を含んで構成される。ECU150はコンピュータであってもよい。プロセッサ151はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、ECU150における各種制御が実行される。ただし、ECU150における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。なお、ECU150が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
【0043】
タイマ154は、設定時刻の到来をプロセッサ151に知らせるように構成される。タイマ154に設定された時刻になると、タイマ154からプロセッサ151へその旨を知らせる信号が送信される。この実施の形態では、タイマ154としてタイマ回路を採用する。ただし、タイマ154は、ハードウェア(タイマ回路)ではなく、ソフトウェアによって実現されてもよい。また、ECU150は、ECU150に内蔵されるリアルタイムクロック(RTC)回路(図示せず)を利用して現在時刻を取得できる。
【0044】
車両50は、走行駆動部140と、入力装置161と、メータパネル162と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」と称する)170と、通信機器180と、駆動輪Wとをさらに備える。なお、車両50の駆動方式は、
図1に示される前輪駆動に限られず、後輪駆動又は4輪駆動であってもよい。
【0045】
走行駆動部140は、図示しないPCU(Power Control Unit)とMG(Motor Generator)とを含み、バッテリ130に蓄えられた電力を用いて車両50を走行させるように構成される。PCUは、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)と(いずれも図示せず)を含んで構成される。PCUは、ECU150によって制御される。MGは、たとえば三相交流モータジェネレータである。MGは、PCUによって駆動され、駆動輪Wを回転させるように構成される。PCUは、バッテリ130から供給される電力を用いてMGを駆動する。また、MGは、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ130に供給するように構成される。SMRは、バッテリ130からMGまでの電力経路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両50の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0046】
入力装置161は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。入力装置161は、ユーザによって操作され、ユーザの操作に対応する信号をECU150へ出力する。入力装置161の例としては、各種スイッチ、各種ポインティングデバイス、キーボード、タッチパネルが挙げられる。入力装置161は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0047】
メータパネル162は、車両50に関する情報を表示するように構成される。メータパネル162は、たとえば車両50に搭載された各種センサによって計測された車両50に関する各種情報を表示する。メータパネル162に表示される情報は、外気温、車両50の走行速度、バッテリ130のSOC、車両50の電費、及び車両50の走行距離の少なくとも1つを含んでもよい。メータパネル162は、タッチパネルディスプレイであってもよい。メータパネル162は、ECU150によって制御される。ECU150は、所定の条件が成立する場合に、ユーザに対するメッセージ又は警告灯をメータパネル162に表示させてもよい。
【0048】
NAVI170は、プロセッサと、記憶装置と、タッチパネルディスプレイと、GPS(Global Positioning System)モジュールと(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。タッチパネルディスプレイは、ユーザからの入力を受け付けたり、地図及びその他の情報を表示したりする。GPSモジュールは、GPS衛星からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVI170は、GPS信号を用いて車両50の位置を特定することができる。NAVI170は、車両50の現在位置から目的地までの走行ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行ない、経路探索により見つかった走行ルートを地図上に表示するように構成される。
【0049】
通信機器180は、各種通信I/F(インターフェース)を含んで構成される。通信機器180は、後述するサーバ30(
図2参照)と無線通信するための通信I/Fを含む。通信機器180は、DCM(Data Communication Module)を含んでもよい。通信機器180は、5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。ECU150は、通信機器180を通じて車両50の外部の通信装置と通信を行なうように構成される。この実施の形態に係る通信機器180は、本開示に係る「通信装置」の一例に相当する。
【0050】
図2は、この実施の形態に係る電力システムの構成を示す図である。
図2に示される電力システム1は、VGI(Vehicle Grid Integration)システムである。電力システム1は、VPP(仮想発電所)として機能する。VPPは、IoT(モノのインターネット)を利用した高度なエネルギーマネジメント技術により多数の分散型エネルギーリソース(以下、「DER(Distributed Energy Resources)」とも称する)を束ね、これらDERを遠隔・統合制御することによってあたかも1つの発電所のように機能させる仕組みである。DERの例としては、各需要家が保有するエネルギーリソース(以下、「DSR(Demand Side Resources)」とも称する)が挙げられる。電力システム1では、VPPを実現するためのDSRとして、車両50(すなわち、蓄電装置を備える電動車両)を採用する。たとえば、車両50はPOV(個人が所有する車両)である。また、EVSE40は、車両50のユーザの自宅に設置された家庭用のEVSEである。
【0051】
この実施の形態では、電力系統PGと、サーバ10,30と、スマートメータ11と、複数のEVSE(EVSE40のみ図示)と、複数のDSR(車両50のみ図示)とによって、電力システム1が構築される。電力システム1に含まれる電動車両及びEVSEの数は、各々独立して任意であり、10個以上であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0052】
携帯端末80は、車両50のユーザが携帯する携帯端末に相当する。この実施の形態では、各携帯端末80として、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。ただしこれに限られず、各携帯端末80としては、任意の携帯端末を採用可能であり、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ)、又は電子キーなども採用可能である。
【0053】
図2に示す車両50はEVSE40と電気的に接続されている。EVSE40の本体につながれた充電ケーブル42のコネクタ43が車両50のインレット110に接続されることで、車両50とEVSE40との間での通信が可能になるとともに、EVSE40と車両50との間で電力の授受を行なうことが可能になる。これにより、外部充電及び外部給電の準備が完了する。車両50に搭載された通信機器180は、充電ケーブル42を介してEVSE40と通信するように構成される。EVSE40と車両50との通信方式は任意であり、たとえば、CAN(Controller Area Network)であってもよいし、PLCであってもよい。
【0054】
EVSE40の本体に内蔵される電源回路41は、スマートメータ11を介して電力系統PGと電気的に接続されている。たとえば、電力系統PGから電源回路41及び充電ケーブル42を経由して車両50へ電力が供給されることで、バッテリ130の外部充電が行なわれる。また、車両50がEVSE40に対して外部給電を行なうことによって、車両50から充電ケーブル42及び電源回路41を経由して電力系統PGへ電力を逆潮流させることができる。電源回路41は、電力系統PGから供給される電力を外部充電に適した電力に変換するとともに、車両50から供給される電力を逆潮流に適した電力に変換する。
【0055】
スマートメータ11は、EVSE40から車両50に供給された電力量を計測するように構成される。また、スマートメータ11は、車両50からEVSE40に逆潮流された電力量も計測するように構成される。スマートメータ11は、所定時間経過ごと(たとえば、30分経過ごと)に電力使用量を計測し、計測した電力使用量を記憶するとともにサーバ10へ送信するように構成される。また、サーバ10は、サーバ30へスマートメータ11の計測値を随時送信する。サーバ10は、定期的に送信してもよいし、サーバ30からの要求に応じて送信してもよい。
【0056】
車両50に搭載された通信機器180は、サーバ30と無線通信するように構成される。この実施の形態に係るサーバ30は、本開示に係る「外部コンピュータ」の一例に相当する。通信機器180とサーバ30との間でやり取りされる信号は暗号化されていてもよい。さらに、この実施の形態では、車両50に搭載された通信機器180と携帯端末80とが相互に無線通信するように構成される。ECU150は、無線通信により携帯端末80を制御して、ユーザに対する報知を携帯端末80に行なわせることができる。通信機器180と携帯端末80との通信は、Bluetooth(登録商標)のような近距離通信(たとえば、車内及び車両周辺の範囲での直接通信)であってもよい。
【0057】
携帯端末80には所定のアプリケーションソフトウェア(以下、単に「アプリ」と称する)がインストールされている。携帯端末80は、車両50のユーザによって携帯され、上記アプリを通じてサーバ30と情報のやり取りを行なうことができる。ユーザは、たとえば携帯端末80のタッチパネルディスプレイ(図示せず)を通じて、上記アプリを操作できる。また、携帯端末80のタッチパネルディスプレイは、車両50のユーザに対して報知可能に構成される。
【0058】
サーバ10は、送配電事業者に帰属するサーバである。この実施の形態では、電力会社が発電事業者及び送配電事業者を兼ねる。図示しない発電所及び送配電設備によって電力網(すなわち、電力系統PG)が構築されている。送配電設備は、送電線、変電所、及び配電線を含み、発電所から供給される電力の送電及び配電を行なうように構成される。発電所の例としては、火力発電所、水力発電所、原子力発電所、及び自然変動電源(太陽光発電設備、風力発電設備等)が挙げられる。
【0059】
電力会社は、サーバ10、スマートメータ11、及び電力系統PGを保守及び管理する。電力会社は、たとえば電力を使用する需要家(たとえば、個人又は会社)と取引を行なうことにより利益を得ることができる。EVSE40は、スマートメータ11を介して電力系統PGに接続されている。この実施の形態では、電力会社が、電力系統PGを運用する系統運用者に相当する。
【0060】
DERを束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者は、「アグリゲータ」と称される。電力会社は、たとえばアグリゲータと連携することにより、電力系統PGの電力調整(たとえば、需給調整)を行なうことができる。電力会社又はアグリゲータが各需要家に電力系統PGの電力調整を要請し、各需要家がその要請に応じて電力系統PGの電力調整を行なう。こうした仕組みは、一般に「DR(デマンドレスポンス)」と称される。以下、電力系統PGの電力調整の要請を、「VPP要請」とも称する。VPP要請は、充電促進の要請(上げDR)であってもよいし、充電抑制の要請(下げDR)であってもよいし、放電要請(下げDR)であってもよい。VPP要請は、本開示に係る「エネルギーマネジメントの要請」の一例に相当する。
【0061】
サーバ10及び30の各々は、電力系統PGを管理する管理コンピュータに相当する。サーバ30は、アグリゲータに帰属するサーバである。自動車メーカがアグリゲータを兼ねてもよい。自動車メーカは、自らが製造した各車両の情報を入手しやすい。電力システム1に含まれる各車両はサーバ30に登録される。そして、各車両からサーバ30へ車両の情報(たとえば、車両の位置、充電ケーブルの接続状態、及び蓄電量など)が逐次送信される。サーバ30は、制御装置31と、記憶装置32と、通信装置33とを含んで構成される。制御装置31は、コンピュータであってもよい。制御装置31は、プロセッサを含み、所定の情報処理を行なうとともに通信装置33を制御するように構成される。記憶装置32は、各種情報を保存可能に構成される。通信装置33は各種通信I/Fを含む。制御装置31は、通信装置33を通じて外部と通信するように構成される。
【0062】
サーバ30は、サーバ10、車両50、及び携帯端末80の各々と通信可能に構成される。この実施の形態では、アグリゲータの端末(サーバ30)が、電力会社の端末(サーバ10)及び車両ユーザの端末(通信機器180及び携帯端末80)の各々と通信可能に構成される。しかしこれに限られず、電力システム1は、電力会社に連絡するサーバと、車両ユーザに連絡するサーバとを別々に含んでもよい。これらのサーバは、異なる電気事業者(たとえば、上位/下位アグリゲータ)に管理されてもよい。
【0063】
サーバ10が電力調整を行なうときには、まず、複数のアグリゲータの中から、電力調整に必要な数のアグリゲータを選び、選ばれたアグリゲータにVPP要請を行なう。そして、サーバ30は、サーバ10のVPP要請に応えるために必要な数のVPP協力車両を選定する。VPP協力車両は、VPP(要請された電力調整)に参加する車両である。VPP協力車両は、予めアグリゲータと契約を結んだユーザに帰属する複数の車両(車両50を含む)の中から選定される。この契約を結んだユーザは、アグリゲータからの要請に従う充放電を行なうことによって所定の報酬(インセンティブ)を受け取ることができる。他方、要請に従わなかったユーザには、上記契約によって所定のペナルティが科されることがある。
【0064】
この実施の形態では、上記VPP協力車両の選定が終了すると、サーバ30が、各VPP協力車両の充放電スケジュールを決定し、各VPP協力車両のユーザへVPP要請信号を送信する。VPP要請信号は、要請される電力調整の種類(たとえば、充電促進、充電抑制、又は放電)と、VPP要請期間(より特定的には、要請される電力調整の開始時刻及び終了時刻)と、VPP要請期間における充放電スケジュール(たとえば、充放電電力の推移)と、報酬情報とを含む。この実施の形態に係るVPP要請信号は、VPP要請期間においてサーバ30が遠隔操作によってVPP協力車両を充放電制御できるようにVPP協力車両を待機させることを、VPP協力車両のユーザに要請する。そして、VPP協力車両に設定されたVPP要請期間の開始時刻が到来すると、サーバ30は、そのVPP協力車両へ充放電指令(より特定的には、VPP協力車両に充放電制御を行なわせる指令)を送信することにより、サーバ10が要請する電力調整を行なう。上記報酬情報は、サーバ30からの要請に応えたユーザに与えられるインセンティブを示す。
【0065】
サーバ30は、所定の電力量計によってVPP協力車両ごとの電力調整量を計測する。所定の電力量計は、スマートメータ11であってもよいし、車両50に搭載された電力量計(たとえば、監視モジュール121及び131)であってもよい。電力量計の設置場所は任意である。EVSE40に電力量計が内蔵されてもよい。持運び可能な充電ケーブルに電力量計を付けてもよい。
【0066】
サーバ30は、各ユーザのインセンティブ情報をユーザIDで区別して管理する。インセンティブ情報は、たとえばインセンティブ獲得額を含む。インセンティブ獲得額は、VPP要請に応じて電力調整を行なうことによってユーザが獲得した報酬の合計額である。サーバ30は、たとえば「報酬額=インセンティブ単価×電力調整量」のような式に従って、電力調整に対する報酬額を算出してもよい。この実施の形態では、インセンティブ単価が市場価格に連動している。このため、インセンティブ単価は時間帯によって変わる。また、この実施の形態では、インセンティブポイント制度を採用する。すなわち、インセンティブ獲得額は点数(ポイント数)でカウントされる。ポイント数が高いことは、価値が高いことを意味する。ポイントは、仮想通貨のように扱われてもよいし、換金可能であってもよい。また、ポイントを品物又は権利(たとえば、ポイント数に見合ったサービスを受けられる権利)に変換できるようにしてもよい。ただし、インセンティブの仕組みは、上記インセンティブポイント制度に限られず、契約で任意に決めることができる。
【0067】
この実施の形態では、サーバ30とEVSE40との間では通信が行なわれないが、サーバ30とEVSE40とは相互通信可能に構成されてもよい。サーバ30はEVSE40を経由して車両50と通信するように構成されてもよい。EVSE40は、EVSE管理用クラウドと通信可能に構成されてもよい。EVSE40とEVSE管理用クラウドとの通信プロトコルは、OCPP(Open Charge Point Protocol)であってもよい。
【0068】
図3は、車両50のECU150の詳細構成を示す図である。
図1及び
図2とともに
図3を参照して、ECU150は、第1制御部511、第2制御部512、及び第3制御部513を含む。この実施の形態では、第1制御部511、第2制御部512、第3制御部513が、それぞれ本開示に係る「第1制御装置」、「第2制御装置」、「第3制御装置」の一例に相当する。この実施の形態に係るECU150においては、
図1に示したプロセッサ151と、プロセッサ151により実行されるプログラム(たとえば、記憶装置153に記憶されるプログラム)とによって、上記各部が具現化される。ただしこれに限られず、上記各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0069】
車両50に搭載された各種センサの検出値はECU150に入力される。車両50には、前述した監視モジュール121及び131のほか、図示しない位置センサ、車速センサ、アクセルセンサ、外気温センサ、及び充電ケーブル接続検出回路なども搭載されている。ECU150は、必要に応じて、これらの検出値を制御に用いる。また、ECU150は、車両50の状態(たとえば、充電ケーブルの接続状態、及びバッテリ130のSOCを含む)をサーバ30へ逐次送信する。たとえば、サーバ30は、VPP要請期間において、車両50から受け取った情報を参照しながら車両50を遠隔操作する。
【0070】
第1制御部511は、バッテリ130の充放電制御を行なうように構成される。第2制御部512は、メータパネル162、NAVI170、及び携帯端末80の各々の表示制御を行なうように構成される。第3制御部513は、入力装置161、NAVI170、及び携帯端末80の各々に対するユーザの入力に基づいて、所定の処理を実行するように構成される。
【0071】
第2制御部512は、ユーザ選択モード(第1制御モード)と自動選択モード(第2制御モード)との各制御モードで動作可能に構成される。第3制御部513は、所定の入力装置(以下、「モード入力装置」と称する)に対するユーザの入力に基づいて、第2制御部512の制御モード(ユーザ選択モード/自動選択モード)を切り替えるように構成される。この実施の形態では、入力装置161をモード入力装置とする。ただしこれに限られず、入力装置161に代えて又は加えて、NAVI170及び携帯端末80の少なくとも一方がモード入力装置として採用されてもよい。
【0072】
たとえば、ユーザがモード入力装置を通じてユーザ選択モードを選択すると、第2制御部512はユーザ選択モードで動作するようになる。
図4は、第2制御部512がユーザ選択モードで動作するときにECU150によって実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば第2制御部512がユーザ選択モードで動作しているときに車両50がVPP要請信号を受信すると、開始される。この実施の形態では、車両50がVPP協力車両として選定されると、サーバ30が、車両50の通信機器180へVPP要請信号を送信する。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0073】
図1~
図3とともに
図4を参照して、S11では、第2制御部512が、所定の対象期間における充放電スケジュールを決定するとともに、その対象期間における第1及び第2パラメータの推移を予測する。この実施の形態では、現時点(すなわち、車両50がVPP要請信号を受信したタイミング)から所定時間(たとえば、24時間)が経過するまでの期間を、対象期間とする。対象期間には、VPP要請期間が含まれる。第1パラメータは、バッテリ130の蓄電残量に関するパラメータである。この実施の形態では、バッテリ130のSOCを、第1パラメータとして採用する。第2パラメータは、エネルギーマネジメントに対する報酬額に関するパラメータである。この実施の形態では、VPP要請に応えたユーザに付与されるインセンティブの単価を、第2パラメータとして採用する。
【0074】
ここで説明する例では、VPP要請信号が要請するエネルギーマネジメントが、放電である。上記S11の処理により、VPP要請期間では、VPP要請信号が要請する放電が実行され、VPP要請期間以外では、バッテリ130のSOCを所定の目標値(たとえば、80%)に近づける充電が実行されるように、対象期間における充放電スケジュール(充放電電力の推移)が決定される。
【0075】
S12では、第2制御部512が予測画面を所定の表示装置(以下、「画面表示装置」と称する)に表示させる。予測画面は、VPP要請信号の要請に従って第1制御部511がバッテリ130の充放電制御を実行したと仮定した場合の、上記対象期間における第1及び第2パラメータの各予測推移を同じ時間軸上に示す画面である。画面表示装置は、たとえば、入力装置161、NAVI170、及び携帯端末80の少なくとも1つである。上記のように、この実施の形態では、第2制御部512がユーザ選択モードで動作しているときに、通信機器180がサーバ30からVPP要請信号を受信すると、第2制御部512が画面表示装置に予測画面を表示させる。
【0076】
図5は、予測画面の一例を示す図である。
図5を参照して、この予測画面は、グラフM11と、メッセージM12と、「はい」ボタンM13と、「いいえ」ボタンM14とを表示して、VPP要請の承諾/拒否のいずれかを選択することをユーザに促す。
【0077】
グラフM11は、VPP要請信号の要請に従って第1制御部511がバッテリ130の充放電制御を実行したと仮定した場合の第1及び第2パラメータの各予測推移を同じ時間軸上に示している。より具体的には、
図5中のグラフM11は、
図4のS11で決定された充放電スケジュールに従って第1制御部511が対象期間においてバッテリ130の充放電制御を実行したと仮定した場合の、対象期間における電池残量(バッテリ130のSOC)の予測推移(線L1)と対象期間におけるインセンティブ単価の予測推移(線L2)とを同じ時間軸上に示している。
【0078】
メッセージM12は、「はい」ボタンM13及び「いいえ」ボタンM14に関する説明を示している。ユーザは、たとえば画面に触れることによって、「はい」ボタンM13と「いいえ」ボタンM14とのいずれかのボタンを選択することができる。なお、これらのボタンは、タッチパネルディスプレイに表示された仮想的なボタンに限られず、物理的なボタンであってもよい。
【0079】
図6は、
図5に示した予測画面について説明するための図である。
図6に示すように、予測画面がタッチパネルディスプレイに表示される場合には、ユーザは、グラフM11に触れることによって、対象期間内の任意の時刻における電池残量及びインセンティブ単価(たとえば、
図6中の吹出しM1)を予測画面上に表示させることができる。なお、時刻の指定は、タッチパネル以外のポインティングデバイスによって行なわれてもよいし、数値入力によって行なわれてもよい。
【0080】
ユーザは、上記予測画面から、バッテリ130を利用したい時間帯にバッテリ130にどの程度の電力が残っているかを容易に把握できる。たとえば、ユーザが24時00分に車両50に乗って出発することを予定している場合には、ユーザは、24時00分におけるバッテリ130のSOCが車両50の走行のために十分であるか否かを確認する。そして、24時00分におけるバッテリ130のSOCが十分であるとユーザが判断した場合には、ユーザは、「はい」ボタンM13を選択することで、VPP要請を承諾することができる。「はい」ボタンM13が選択されたことは、VPP要請を承諾したことを示す情報が所定の入力装置(たとえば、画面表示装置のタッチパネル)に入力されたことを意味する。他方、24時00分におけるバッテリ130のSOCが不十分であるとユーザが判断した場合には、ユーザは、「いいえ」ボタンM14を選択することで、VPP要請を拒否することができる。「いいえ」ボタンM14が選択されたことは、VPP要請を拒否したことを示す情報が所定の入力装置(たとえば、画面表示装置のタッチパネル)に入力されたことを意味する。
【0081】
再び
図1~
図3とともに
図4を参照して、S13では、VPP要請が承諾されたか否かを、第3制御部513が判断する。第3制御部513は、ユーザによって「はい」ボタンM13が選択されると、S13においてYESと判断し、ユーザによって「いいえ」ボタンM14が選択されると、S13においてNOと判断する。さらに、S12において予測画面が表示されてから、いずれのボタンも選択されずに所定時間(たとえば、100秒)が経過した場合にも、S13においてNOと判断される。
【0082】
S13においてYESと判断されると、第3制御部513は、S14において、サーバ30に対して要請承諾を示す通知を行なう。そして、第3制御部513が、S15において対象期間の充放電スケジュールを第1制御部511に設定した後、
図4に示す一連の処理が終了する。これにより、サーバ30による第1制御部511の遠隔操作が許可される。なお、対象期間の充放電スケジュールは、上記S11で決定された充放電スケジュールである。この実施の形態に係る対象期間はVPP要請期間よりも広い。VPP要請期間は、承諾されたVPP要請に従う電力調整(たとえば、バッテリ130の放電)が実行される期間に相当する。
【0083】
S13においてNOと判断されると、第3制御部513は、S16において、サーバ30に対して要請拒否を示す通知を行なう。要請拒否の通知を受けたサーバ30は、車両50の選定を取り消して、車両50の代わりのVPP協力車両を選定してもよい。そして、充放電スケジュールが第1制御部511に設定されることなく(S17)、
図4に示す一連の処理が終了する。この実施の形態では、VPP要請に応える充放電スケジュールが第1制御部511に設定されることで、第1制御部511の遠隔操作が許可される。このため、上記充放電スケジュールが設定されない場合(S17)には、サーバ30による第1制御部511の遠隔操作が禁止される。
【0084】
なお、バッテリ130の充放電制御は、所定のSOC範囲(以下、「動作SOC範囲」と称する)内で行なわれる。動作SOC範囲は10%~90%であってもよい。たとえば、バッテリ130の放電中にバッテリ130のSOCが動作SOC範囲の下限値に達した場合には、第1制御部511によってバッテリ130の放電が停止される。前述のS11において、動作SOC範囲内で行なわれる充放電スケジュールを第2制御部512が作成できない場合には、車両50はVPP要請に応えることができないため、S13においてNOと判断される。
【0085】
以上、ユーザ選択モードについて説明した。続けて、自動選択モードについて説明する。ユーザがモード入力装置を通じて自動選択モードを選択すると、第2制御部512は自動選択モードで動作するようになる。
図7は、第2制御部512が自動選択モードで動作するときにECU150によって実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば第2制御部512が自動選択モードで動作しているときに車両50がVPP要請信号を受信すると、開始される。以下では、VPP要請信号が要請するエネルギーマネジメントが放電である例について説明する。
【0086】
図1~
図3とともに
図7を参照して、S21では、第3制御部513が所定の表示装置に入力画面を表示させる。この実施の形態では、所定の表示装置を前述の画面表示装置と同じにする。詳細は後述するが、入力画面は、ユーザからの入力を受け付ける画面である。
【0087】
S22では、ユーザからの入力が完了したか否かを判断する。ユーザからの入力が完了するまで、画面表示装置が入力画面を表示してユーザからの入力を受け付ける。ユーザからの入力が完了した場合(S22にてYES)には、第3制御部513は、S23において、ユーザが入力した値に基づいてVPP参加条件を設定する。続けて、S24において、第2制御部512は、対象期間における充放電スケジュールを決定するとともに、対象期間における電池残量(バッテリ130のSOC)の推移を予測する。ここでの対象期間は、たとえば
図4の処理における前述の対象期間と同じである。また、S24における充放電スケジュールの決め方は、前述した
図4のS11と同じである。続けて、S25において、第2制御部512は、S24で推定された電池残量の予測推移に基づいて、VPP参加条件が成立するか否かを判断する。
【0088】
VPP参加条件が成立する場合(S25にてYES)には、第2制御部512は、S26において、サーバ30に対して要請承諾を示す通知を行なう。そして、第2制御部512が、S27において、S24で決定された対象期間の充放電スケジュールを第1制御部511に設定した後、
図7に示す一連の処理が終了する。これにより、サーバ30による第1制御部511の遠隔操作が許可される。
【0089】
VPP参加条件が成立しない場合(S25にてNO)には、第2制御部512は、S28において、サーバ30に対して要請拒否を示す通知を行なう。そして、上記充放電スケジュールが第1制御部511に設定されることなく(S29)、
図7に示す一連の処理が終了する。この場合、第1制御部511の遠隔操作が禁止される。
【0090】
上記のように、第2制御部512が自動選択モードで動作しているときに、通信機器180がサーバ30からVPP要請信号を受信すると、第2制御部512は、所定の条件(VPP参加条件)に基づいてVPP要請を承諾するか否かを判断(S25)した後、サーバ30に対して、その判断結果を示す通知を行なう(S26及びS28)。
【0091】
図8は、
図7のS21において表示される入力画面の一例を示す図である。
図7とともに
図8を参照して、この入力画面は、メッセージM21と、入力欄M22と、「決定」ボタンM23とを表示する。メッセージM21は、VPP参加条件の入力をユーザに促す。入力欄M22は、VPP実施中のバッテリ130のSOCの下限値が入力されるスペースである。ただし、この実施の形態では、入力欄M22に入力可能な数値が、前述した動作SOC範囲の下限値よりも高い値に限定される。ユーザが、入力欄M22に数値を入力した後、「決定」ボタンM23を押すと、
図7のS22においてYESと判断される。たとえば、入力欄M22に「30%」と入力され、「決定」ボタンM23が押されると、S23において、VPP実施中のバッテリ130のSOCが30%を下回らないことが、VPP参加条件として設定される。そして、S25では、VPP実施中(VPP要請期間)のバッテリ130のSOCが30%を下回らないか否かが判断される。そして、VPP実施中のバッテリ130のSOCの最小値が30%以上であることが予測される場合には、VPP参加条件が成立する(S25にてYES)と判断され、処理がS26に進む。他方、VPP実施中のバッテリ130のSOCが30%を下回ることが予測される場合には、VPP参加条件が成立しない(S25にてNO)と判断され、処理がS28に進む。
【0092】
このように、上記VPP参加条件は、バッテリ130のSOCの下限値を指定する。そして、自動選択モードで動作する第2制御部512は、第1制御部511がVPP要請に従ってバッテリ130の充放電制御を実行するとバッテリ130のSOCが下限値を下回ることが予測される場合には、VPP要請を拒否する旨判断する。こうした構成によれば、エネルギーマネジメントによってバッテリ130の蓄電残量が減り過ぎることを抑制できる。ユーザは、下限値に対応する電力をバッテリ130に残すことができる。下限値に対応する電力は、ユーザが安心できる程度の走行余力を車両50に残す電力であってもよいし、停電時にユーザが利用するための電力であってもよい。
【0093】
以上、自動選択モードについて説明した。この実施の形態に係るECU150は、エネルギーマネジメントの要請に応えるか否かの判断をユーザが行なうユーザ選択モードと、エネルギーマネジメントの要請に応えるか否かの判断を自動で行なう自動選択モードとを、ユーザが切り替えることができるように構成される。ユーザは、たとえば、初期においてはユーザ選択モードを採用して、自ら予測画面を見て、エネルギーマネジメントの要請に応えるか否かの判断を慎重に行ない、ある程度の傾向がつかめたら、自動選択モードに切り替えて、エネルギーマネジメントの要請に応えるか否かの判断を自動で行なうようにしてもよい。
【0094】
第2制御部512は、ユーザ選択モードで動作しているときの履歴データを用いた学習により、VPP参加条件を更新するように構成されてもよい。自動判断で用いられる判断基準(VPP参加条件)が、ユーザ判断の履歴データを用いた学習により更新されることで、ユーザ判断に準ずる態様で自動判断が行なわれやすくなる。履歴データは、第1パラメータの予測推移と、第2パラメータの予測推移と、要請を承諾したか否かを示す情報とを含んでもよい。第2制御部512は、統計的な分析により、VPP参加条件に基づく自動判断が、ユーザ判断と同等の結果になるように、VPP参加条件を設定してもよい。第2制御部512は、履歴データを用いた学習により、ユーザ判断の傾向を把握できる。AI(人工知能)を利用して学習精度を高めてもよい。
【0095】
図9は、VPP要請に応える充放電スケジュールに従って実行されるバッテリ130の充放電制御を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、車両50がプラグイン状態であるときに、第1制御部511に設定された充放電スケジュールの開始時刻(対象期間の開始時刻)が到来すると、開始される。対象期間(VPP要請期間を含む)においては、サーバ30から車両50へ充放電指令が送信される。なお、第1制御部511に充放電スケジュールが設定されていない場合には、
図9に示す処理は実行されない。
【0096】
図1~
図3とともに
図9を参照して、S31では、第1制御部511が、サーバ30から受信した充放電指令に従ってバッテリ130の充放電制御を行なう。そして、続くS32では、設定された充放電スケジュールの終了時刻が到来したか否かを、第1制御部511が判断する。充放電スケジュールの終了時刻が到来するまでS31及びS32の処理が繰り返される。そして、充放電スケジュールの終了時刻が到来すると(S32にてYES)、第1制御部511が、S33においてサーバ30に対して終了通知を行なう。その後、第1制御部511が、S34において充放電スケジュールをリセットすると、
図9に示す一連の処理は終了する。S34における充放電スケジュールのリセットにより、第1制御部511は、充放電スケジュールが設定されていない状態になる。これにより、第1制御部511の遠隔操作が禁止される。
【0097】
上記のように、車両50は、第1制御部511に設定された充放電スケジュールに従う充放電(すなわち、承諾された充放電)を、サーバ30からの指令に従い、プラグイン状態で実行する。サーバ30は、上記
図9に示す処理により、第1制御部511に設定された充放電スケジュールに従ってバッテリ130の充放電が実行されるよう、プラグイン状態の車両50を遠隔操作により制御する。電力系統PGとバッテリ130とが電気的に接続された状態でバッテリ130の充放電制御が実行される。VPP要請信号が要請するエネルギーマネジメントが放電である例では、上記遠隔操作により、VPP要請期間において外部給電が実行される。
【0098】
以上説明したように、この実施の形態に係る制御システムは、車両50に搭載され、バッテリ130と、画面表示装置(たとえば、入力装置161、NAVI170、及び携帯端末80の少なくとも1つ)と、ECU150とを備える。ECU150は、バッテリ130の充放電制御を行なう第1制御部511と、画面表示装置の表示制御を行なう第2制御部512とを備える。第2制御部512は、予測画面(すなわち、第1制御部511がエネルギーマネジメントの要請に従ってバッテリ130の充放電制御を実行したと仮定した場合の、バッテリ130の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す画面)を、画面表示装置に表示させる。ユーザは、予測画面から、バッテリ130を利用したい時間帯にバッテリ130にどの程度の電力が残っているかを容易に把握できる。また、ユーザは、予測画面から、エネルギーマネジメントの要請に応えたときの報酬額を確認できる。これにより、ユーザは、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットとを比較考量しやすくなる。そして、ユーザは、上記要請に応えるか否かを的確に判断しやすくなる。
【0099】
上記実施の形態では、対象期間(VPP要請期間を含む)においてサーバ30から車両50へ充放電指令が送信される。そして、対象期間においては、バッテリ130の充放電制御が遠隔操作によって行なわれる。しかし、こうした構成に限られず、VPP要請期間内の充放電制御のみが遠隔操作で行なわれて、VPP要請期間外の充放電制御は、遠隔操作(外部コンピュータからの指令)によらず、ECU150のローカル制御によって実行されてもよい。
【0100】
さらに、VPP要請期間において車両50が遠隔操作されることも必須ではない。たとえば、
図4のS15又は
図7のS27で第1制御部511に設定された充放電スケジュールの開始時刻が到来すると、第1制御部511が、その充放電スケジュールに従ってバッテリ130の充放電制御を実行してもよい。
【0101】
予測画面は、
図5に示した画面に限られず、適宜変更可能である。たとえば、
図5に示す予測画面は、予測推移を線グラフで示しているが、予測推移の表示態様は任意である。たとえば、予測画面は散布図で予測推移を示してもよい。
図5に示す予測画面では、第1パラメータがバッテリ130のSOCであり、第2パラメータがインセンティブ単価(報酬単価)である。しかし、予測画面に示される第1及び第2パラメータの各々は、適宜変更可能である。
図5に示した予測画面は、以下に示すように変更されてもよい。
【0102】
図10は、
図5に示した予測画面の第1変形例を示す図である。
図10を参照して、この予測画面は、
図5に示したグラフM11の代わりにグラフM11Aを表示するとともに、「SOC」ボタンM15と、「航続可能距離」ボタンM16と、「インセンティブ単価」ボタンM17と、「インセンティブ積算額」ボタンM18とをさらに表示している。ユーザは、ボタン操作によって、各ボタンに対応する項目(バッテリ130のSOC、車両50の航続可能距離、インセンティブ単価、及びインセンティブ積算額)の表示/非表示を切り替えることができる。なお、バッテリ130のSOC、及び車両50の航続可能距離の各々は、第1パラメータに相当する。バッテリ130のSOCが高くなるほど、車両50の航続可能距離は長くなる。また、インセンティブ単価及びインセンティブ積算額の各々は、第2パラメータに相当する。
【0103】
第1変形例に係る予測画面は、上記各ボタンによって「表示」が選択された項目を同じ時間軸上に示す。たとえば、
図10に示すグラフM11Aは、VPP要請に従って第1制御部511がバッテリ130の充放電制御を実行したと仮定した場合の、対象期間における車両50の航続可能距離の予測推移(線L3)と対象期間におけるインセンティブ単価の予測推移(線L41)と対象期間におけるVPP要請のインセンティブ積算額の予測推移(線L42)とを同じ時間軸上に示している。
図10に示す例では、4つの項目のうちSOC(バッテリ130のSOC)が非表示にされている。ただし、ユーザは、「SOC」ボタンM15を操作して、SOCを非表示から表示に切り替えることができる。
【0104】
上記のように、
図10に示す変形例では、第3制御部513が、所定の入力装置(たとえば、画面表示装置のタッチパネル)に対するユーザの入力に基づいて、バッテリ130のSOCと車両50の航続可能距離とを含む第1選択肢から1以上の第1パラメータを選択するとともに、インセンティブ単価(報酬単価)とインセンティブ積算額(報酬積算額)とを含む第2選択肢から1以上の第2パラメータを選択するように構成される。そして、第2制御部512は、第1選択肢から選択された1以上の第1パラメータの予測推移と、第2選択肢から選択された1以上の第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す予測画面(
図10)を、画面表示装置に表示させるように構成される。こうした構成によれば、予測画面上に示される第1及び第2パラメータを、ユーザが所定の候補から任意に選ぶことが可能になる。また、ユーザは、複数の第1パラメータ(又は、複数の第2パラメータ)を同時に確認することもできる。
【0105】
図11は、
図5に示した予測画面の第2変形例を示す図である。
図11を参照して、この変形例では、対象期間内に、充電促進が要請される第1時間帯と、充電抑制が要請される第2時間帯と、放電が要請される第3時間帯とが含まれる。放電が要請されない時間帯のうち、電気料金が所定の基準料金以下である時間帯では充電促進が要請され、電気料金が所定の基準料金を超える時間帯では充電抑制が要請される。この変形例では、
図4のS11において、第1時間帯ではVPP要請に従う充電が実行され、第2時間帯ではVPP要請に従って充電が禁止され、第3時間帯ではVPP要請に従う放電が実行されるように、対象期間における充放電スケジュール(充放電電力の推移)が決定される。この充放電スケジュールに従って第1制御部511がバッテリ130の充放電制御を実行することで、車両50は、要請された充電促進、充電抑制、及び放電の全てに応えることができる。ただし、ユーザは、予測画面が表示された後に充放電スケジュールを変更することができる。
【0106】
図11に示す予測画面は、
図5に示したグラフM11の代わりにグラフM11Bを表示するとともに、「充電促進」ボタンM15Aと、「充電抑制」ボタンM16Aと、「放電」ボタンM17Aとをさらに表示している。ユーザは、ボタン操作によって、各ボタンに対応するエネルギーマネジメントの要請(充電促進、充電抑制、及び放電)の許諾/拒否を切り替えることができる。
【0107】
第2変形例に係る予測画面は、上記各ボタンによって許諾されたエネルギーマネジメントの要請に応えたと仮定した場合の第1及び第2のパラメータの各予測推移を同じ時間軸上に示す。たとえば、
図11に示すグラフM11Bは、上記充放電スケジュールに従ってバッテリ130が充放電される(すなわち、要請される充電促進、充電抑制、及び放電の全てに応える)と仮定した場合の、対象期間における電池残量(バッテリ130のSOC)の予測推移(線L51)と対象期間における電気料金単価の予測推移(線L61)と対象期間におけるVPP要請のインセンティブ単価の予測推移(線L7)とを同じ時間軸上に示している。電気料金単価の予測推移(線L61)に関しては、充電が実行されていない部分が破線で示されている。なお、電気料金単価は、第2パラメータに相当する。電気料金単価の代わりに、電気料金積算額が採用されてもよい。
【0108】
図12は、上記第2変形例において、VPP要請信号が要請する放電が拒否された場合の予測画面を示す図である。
図12を参照して、
図11に示した予測画面において、「放電」ボタンM17Aが操作され、放電が許諾から拒否に変更された場合には、第3時間帯において放電が実行されないように、対象期間における充放電スケジュールが変更される。変更された充放電スケジュールに従って第1制御部511がバッテリ130の充放電制御を実行することで、車両50は、要請された充電促進及び充電抑制に応えることができる。そして、
図11に示したグラフM11Bは、
図12に示すグラフM11Cに変わる。グラフM11Cは、上記変更された充放電スケジュールに従ってバッテリ130が充放電される(すなわち、要請される充電促進及び充電抑制に応える)と仮定した場合の、対象期間における電池残量(バッテリ130のSOC)の予測推移(線L52)と対象期間における電気料金単価の予測推移(線L62)とを同じ時間軸上に示している。
【0109】
上記第2変形例に係る予測画面は、たとえば
図4のS12において表示される。ユーザによって要請の一部(たとえば、充電促進、充電抑制、及び放電のいずれか1つ)が拒否されて、「はい」ボタンM13が選択された場合には、S14において、承諾された要請と拒否された要請との両方がサーバ30に通知される。たとえば、
図12に示した状態で「はい」ボタンM13が選択された場合には、充電促進及び充電抑制の要請が許諾され、放電の要請が拒否される。そして、S15においては、ユーザによって承諾された充放電スケジュール(すなわち、ユーザが承諾した要請に応える充放電スケジュール)が、第1制御部511に設定される。
【0110】
入力画面は、
図8に示した画面に限られず、適宜変更可能である。
図13は、
図8に示した入力画面の第1変形例を示す図である。
図7とともに
図13を参照して、第1変形例に係る入力画面は、たとえばVPP要請信号が要請するエネルギーマネジメントが放電である場合に表示される。
図13に示す入力画面は、
図8に示した入力欄M22の代わりに入力欄M22A及びM22Bを表示するとともに、VPP要請期間を示す欄M24をさらに表示している。入力欄M22Aは、走行開始時刻が入力されるスペースである。入力欄M22Bは、走行開始時刻におけるバッテリ130のSOCの下限値が入力されるスペースである。たとえば、入力欄M22Aに「24時00分」、入力欄M22Bに「30%」と入力され、「決定」ボタンM23が押されると、S23において、24時00分におけるバッテリ130のSOCが30%を下回らないことが、VPP参加条件として設定される。そして、S25では、24時00分におけるバッテリ130のSOCが30%を下回らないか否かが判断される。そして、24時00分におけるバッテリ130のSOCが30%以上である場合には、VPP参加条件が成立する(S25にてYES)と判断され、処理がS26に進む。他方、24時00分におけるバッテリ130のSOCが30%を下回る場合には、VPP参加条件が成立しない(S25にてNO)と判断され、処理がS28に進む。
【0111】
図14は、
図8に示した入力画面の第2変形例を示す図である。
図7とともに
図14を参照して、この入力画面は、
図8に示したメッセージM21、入力欄M22、及び「決定」ボタンM23に加えて、「VPP実施しない」ボタンM25をさらに表示している。ユーザによって「VPP実施しない」ボタンM25が押された場合には、
図7のS25においてNOと判断される。
【0112】
図15は、
図8に示した入力画面の第3変形例を示す図である。
図7とともに
図15を参照して、第3変形例に係る入力画面は、たとえばVPP要請信号が要請するエネルギーマネジメントが充電促進である場合に表示される。
図15に示す入力画面は、
図8に示した入力欄M22の代わりに入力欄M22Cを表示している。入力欄M22Cは、VPP実施中のバッテリ130のSOCの上限値が入力されるスペースである。ただし、この変形例では、入力欄M22Cに入力可能な数値が、前述した動作SOC範囲の上限値よりも低い値に限定される。たとえば、入力欄M22Cに「80%」と入力され、「決定」ボタンM23が押されると、
図7のS23において、VPP実施中のバッテリ130のSOCが80%を超えないことが、VPP参加条件として設定される。そして、S25では、VPP実施中のバッテリ130のSOCが80%を超えないか否かが判断される。そして、VPP実施中のバッテリ130のSOCの最大値が80%以下であることが予測される場合には、VPP参加条件が成立する(S25にてYES)と判断され、処理がS26に進む。他方、VPP実施中のバッテリ130のSOCが80%を超えることが予測される場合には、VPP参加条件が成立しない(S25にてNO)と判断され、処理がS28に進む。
【0113】
上記第3変形例に係るVPP参加条件は、バッテリ130のSOCの上限値を指定する。そして、自動選択モードで動作する第2制御部512は、第1制御部511がVPP要請に従ってバッテリ130の充放電制御を実行するとバッテリ130のSOCが上限値を超えることが予測される場合には、VPP要請を拒否する旨判断する。こうした構成によれば、エネルギーマネジメントによってバッテリ130の蓄電残量が増え過ぎることを抑制できる。バッテリ130の蓄電残量が増え過ぎないことで、バッテリ130の劣化が抑制される。なお、VPP参加条件は、バッテリ130の蓄電残量の下限値及び上限値の両方を指定してもよい。
【0114】
図16は、
図8に示した入力画面の第4変形例を示す図である。
図7とともに
図16を参照して、この入力画面は、
図8に示した入力欄M22の代わりに入力欄M22Dを表示している。入力欄M22Dには、ユーザが今回のVPPに参加すること(すなわち、エネルギーマネジメントの要請に応えること)によって獲得する報酬の希望額(要求報酬額)が入力される。たとえば、入力欄M22Dに「1000ポイント」と入力され、「決定」ボタンM23が押されると、
図7のS23において、今回の要請に応えたユーザに付与される報酬の額が1000ポイント以上であることが、VPP参加条件として設定される。そして、S25では、VPP要請信号が示す報酬額が1000ポイント以上であるか否かが判断される。そして、VPP要請信号が示す報酬額が1000ポイント以上である場合には、VPP参加条件が成立する(S25にてYES)と判断され、処理がS26に進む。他方、VPP要請信号が示す報酬額が1000ポイントに満たない場合には、VPP参加条件が成立しない(S25にてNO)と判断され、処理がS28に進む。
【0115】
上記第4変形例に係るVPP参加条件は、要求報酬額を指定する。そして、自動選択モードで動作する第2制御部512は、第1制御部511がVPP要請に従ってバッテリ130の充放電制御を実行したときに生じる報酬額が上記希望額(要求報酬額)以上である場合には、要請を承諾する旨判断する。こうした構成によれば、高額報酬のエネルギーマネジメントに参加しやすくなる。
【0116】
上記では、入力画面の変形例について説明したが、入力画面が表示されることは必須ではない。VPP参加条件は、ユーザからの入力によらずに設定されてもよい。ECU150は、第2制御部512が自動選択モードで動作するときに、
図7に示した処理に代えて、以下に説明する
図17に示す処理を実行してもよい。
【0117】
図17は、
図7に示した処理の変形例を示す図である。
図17に示す処理は、S21、S22、S23、及びS25(
図7)に代えて、S21A、S23A、及びS25Aを採用していること以外は、
図7に示した処理に準ずる。以下、
図7に示した処理との相違点を中心に、
図17に示す処理について説明する。
【0118】
S21Aでは、第2制御部512が走行計画を取得する。走行計画は、たとえば出発予定時刻と走行予定距離とを含む。走行計画は、予めNAVI170に設定されてもよい。たとえば、ユーザがNAVI170に出発予定時刻(走行開始時刻)及び目的地を入力すると、NAVI170が、GPS信号に基づいて車両50の現在位置を検出するとともに、現在位置から目的地までの走行ルートを決定する。そして、NAVI170は、決定された走行ルートに従い、現在位置から目的地までの走行距離(すなわち、走行予定距離)を算出する。第2制御部512は、S21AにおいてNAVI170から走行計画を取得してもよい。また、NAVI170に走行計画が設定されていない場合には、第2制御部512は、走行計画の設定をユーザに要求してもよい。
【0119】
続けて、S23Aにおいて、第2制御部512がVPP参加条件を設定する。出発予定時刻がVPP要請期間の終了時刻よりも後である場合には、出発予定時刻における車両50の航続可能距離が走行予定距離以上であることが、VPP参加条件として設定される。また、
図17には示されていないが、出発予定時刻がVPP要請期間の終了時刻よりも前である場合(出発予定時刻がVPP要請期間内である場合を含む)には、VPP参加条件は不成立と判断され、処理がS28に進む。
【0120】
続けて、S24において、第2制御部512は、対象期間における充放電スケジュールを決定するとともに、対象期間における電池残量(バッテリ130のSOC)の推移を予測する。そして、S25Aでは、出発予定時刻における車両50の航続可能距離が走行予定距離以上であるか否かが判断される。出発予定時刻におけるバッテリ130のSOCが高いほど、出発予定時刻における車両50の航続可能距離は長くなる。そして、出発予定時刻における車両50の航続可能距離が走行予定距離以上である場合には、VPP参加条件が成立する(S25AにてYES)と判断され、処理がS26に進む。他方、出発予定時刻における車両50の航続可能距離が走行予定距離よりも短い場合には、VPP参加条件が成立しない(S25AにてNO)と判断され、処理がS28に進む。
【0121】
上記変形例において、自動選択モードで動作している第2制御部512は、第1制御部511がVPP要請に従ってバッテリ130の充放電制御を実行すると走行計画どおりに車両50が走行できなくなることが予測される場合には、要請を拒否する旨判断する。こうした構成によれば、エネルギーマネジメントによって走行計画どおりに車両50が走行できなくなることを抑制できる。より具体的には、エネルギーマネジメントによってバッテリ130の蓄電残量が減り過ぎて走行計画どおりに車両50が走行できなくなることが抑制される。また、出発予定時刻がVPP要請期間の終了時刻よりも前である場合には車両50はVPPに参加しないため、車両50がエネルギーマネジメントを行なうために足どめされて出発予定時刻(走行計画の出発時刻)に出発できなくなることも抑制される。
【0122】
携帯端末80が予測画面を表示するように構成されてもよい。たとえば、車両50に実装された第2制御部512及び第3制御部513の機能が、携帯端末80に実装されてもよい。
図18は、
図3に示した制御システムの構成の変形例を示す図である。
【0123】
図18を参照して、この変形例に係る携帯端末80Aは、第2制御部512A及び第3制御部513Aを備える。この変形例に係る車両50AはECU150Aを備え、ECU150Aには第1制御部511Aが含まれる。第1制御部511A、第2制御部512A、及び第3制御部513Aは、それぞれ
図3に示したECU150の第1制御部511、第2制御部512、及び第3制御部513に準ずる機能を有する。この変形例では、第1制御部511A、第2制御部512A、第3制御部513Aが、それぞれ本開示に係る「第1制御装置」、「第2制御装置」、「第3制御装置」の一例に相当する。
【0124】
携帯端末80Aは、制御装置81と、タッチパネルディスプレイ82と、通信装置83とを備える。制御装置81は、コンピュータであってもよい。制御装置81は、プロセッサを含み、所定の情報処理を行なう。また、制御装置81は、通信装置83を通じて外部と無線通信するように構成される。制御装置81は、第2制御部512A及び第3制御部513Aを含む。第2制御部512A及び第3制御部513Aは、たとえば、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0125】
携帯端末80Aは、車両50Aのユーザに携帯され、ユーザインタフェースとして機能する。携帯端末80Aにおいては、タッチパネルディスプレイ82がモード入力装置及び画面表示装置として機能する。車両50AがVPP協力車両として選定されると、サーバ30から携帯端末80AへVPP要請信号が送信される。
【0126】
第2制御部512Aがユーザ選択モードで動作しているときに、携帯端末80Aが上記VPP要請信号を受信すると、
図4に示した処理が実行され、第2制御部512Aが予測画面(たとえば、
図5及び
図10~
図12参照)をタッチパネルディスプレイ82に表示させる(S12)。この場合、車両50Aのユーザは、予測画面を見て、要請を承諾するか否かを決定することができる。そして、車両50Aのユーザが携帯端末80Aに対して要請承諾の入力を行なうと(S13にてYES)、携帯端末80Aは、サーバ30に対して要請承諾の通知を行なう(S14)。その後、携帯端末80Aは、車両50AへVPP要請信号を送信する(
図18)。他方、車両50Aのユーザが携帯端末80Aに対して要請拒否の入力を行なうと(S13にてNO)、携帯端末80Aが、サーバ30に対して要請拒否の通知を行なう(S16)。
【0127】
第2制御部512Aが自動選択モードで動作しているときに、携帯端末80Aが上記VPP要請信号を受信すると、
図7に示した処理が実行される。そして、要請が承諾されると(S25にてYES)、携帯端末80Aは、サーバ30に対して要請承諾の通知を行なう(S26)。その後、携帯端末80Aは、車両50AへVPP要請信号を送信する(
図18)。他方、要請が拒否されると(S25にてNO)、携帯端末80Aが、サーバ30に対して要請拒否の通知を行なう(S28)。
【0128】
上記変形例に係る携帯端末80Aは、エネルギーマネジメントの要請に従ってバッテリ130の充放電制御が実行されたと仮定した場合の、バッテリ130の蓄電残量に関する第1パラメータの予測推移と、エネルギーマネジメントに対する報酬額に関する第2パラメータの予測推移とを同じ時間軸上に示す予測画面を表示するように構成される。こうした表示装置(携帯端末80A)によれば、エネルギーマネジメントの要請に応えることのメリットとデメリットをユーザに分かりやすいかたちで示すことが可能になる。
【0129】
第2制御部512(
図3)及び第2制御部512A(
図18)の各々が複数の制御モードで動作可能に構成されることは必須ではなく、第2制御部512及び第2制御部512Aの各々は常にユーザ選択モードで動作してもよい。
【0130】
電力網の管理コンピュータを含む電力システムの構成は、
図2に示した構成に限られない。たとえば、サーバ30の機能をサーバ10に搭載し、サーバ30を割愛してもよい。サーバ10は、電力網の管理コンピュータとして機能し得る。電力会社は、事業別に分社化されていてもよい。発電事業者と送配電事業者とが異なる会社であってもよい。車両50は、発電事業者又は送配電事業者とインセンティブ契約を結んだユーザに帰属する車両であってもよい。電力網は、インフラストラクチャとして整備された大規模な電力網(電力系統)に限られず、マイクログリッドであってもよい。VPP要請信号を送信するコンピュータは、電力市場(たとえば、需給調整市場)のサーバであってもよい。
【0131】
車両の構成は、
図1に示した構成に限られない。たとえば、車両は、非接触充電可能に構成されてもよい。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、POVに限られず、MaaS(Mobility as a Service)車両であってもよい。車両は、自動運転可能に構成されてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、無人で走行可能な車両(たとえば、無人搬送車(AGV)又は農業機械)であってもよい。
【0132】
車両は、DC(直流)充電可能に構成されてもよい。車両は、DC方式のEVSEを用いてエネルギーマネジメントの要請に応えてもよい。充放電器120の電力変換回路は、車両ではなくEVSEに搭載されていてもよい。外部コンピュータ(たとえば、サーバ30)は、EVSEに搭載された電力変換回路を遠隔操作することにより、エネルギーマネジメントを行なってもよい。
【0133】
車両は、EVに限られず、PHVであってもよい。PHVでは、電動モータによる航続可能距離(蓄電残量に対応する距離)と内燃機関による航続可能距離(燃料残量に対応する距離)との合計距離が、第1パラメータとして採用されてもよい。また、合計距離に代えて又は加えて、電動モータによる航続可能距離が、第1パラメータとして採用されてもよい。
【0134】
車両は、外部充電及び外部給電のうち外部充電のみ可能に構成され、充電に関するエネルギーマネジメントの要請(たとえば、充電促進又は充電抑制の要請)のみに応えるように構成されてもよい。車両は、逆潮流に対応しないEVSEを用いて、充電に関するエネルギーマネジメントの要請に応えてもよい。
【0135】
エネルギーマネジメントに使用される蓄電装置は、車両以外の電力調整リソースに搭載されていてもよい。電力調整リソースは、車両以外の移動体(船、飛行機、ドローン、歩行ロボット、ロボットクリーナ、宇宙探査機等)であってもよいし、定置式のESS(Energy Storage System)であってもよい。
【0136】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
1 電力システム、10,30 サーバ、31 制御装置、32 記憶装置、33 通信装置、40 EVSE、50,50A 車両、80,80A 携帯端末、81 制御装置、82 タッチパネルディスプレイ、83 通信装置、110 インレット、120 充放電器、121,131 監視モジュール、130 バッテリ、150,150A ECU、151 プロセッサ、152 RAM、153 記憶装置、154 タイマ、161 入力装置、162 メータパネル、170 NAVI、180 通信機器、511,511A 第1制御部、512,512A 第2制御部、513,513A 第3制御部、PG 電力系統。