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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
   G04R 60/10 20130101AFI20241008BHJP
   G04C 10/00 20060101ALI20241008BHJP
   G04C 9/00 20060101ALI20241008BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20241008BHJP
   G04G 17/04 20060101ALI20241008BHJP
   G04B 5/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G04R60/10
G04C10/00 C
G04C9/00 301A
G04G21/04
G04G17/04
G04B5/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021056847
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154023
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮原 史明
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-286428(JP,A)
【文献】特開2011-208945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 60/10
G04C 10/00
G04C 9/00
G04G 21/04
G04G 17/04
G04B 1/02- 1/08
G04B 5/00ー 5/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心にして回動する回転錘を有し、前記回転錘の回動による機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する発電装置と、
時刻を計時する計時装置と、
長波標準電波を受信可能に構成され、前記回転軸の軸方向から見た平面視で、前記回転錘の外周縁の回転軌跡よりも前記回転錘の半径方向の内側に配置されたアンテナと、を備え、
前記回転錘は、前記平面視で前記アンテナと重なることが可能な位置に配置される開口部、または、切欠部を有し、回転位置に関わらず前記平面視で前記アンテナ全体を覆うことがない
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子時計において、
前記アンテナは、アンテナコア部およびコイル部を備え、
前記コイル部は、前記回転錘の回転位置に関わらず、前記平面視で前記回転錘と重なる面積の比率が50%以下である
ことを特徴とする電子時計。
【請求項3】
請求項2に記載の電子時計において、
前記回転錘は、錘部および前記錘部を支持する腕部を有し、
前記腕部は、前記平面視で前記コイル部と交差可能に構成されている
ことを特徴とする電子時計。
【請求項4】
請求項3に記載の電子時計において、
前記錘部は、前記回転錘の回転位置に関わらず、前記平面視で前記コイル部を覆うことがない
ことを特徴とする電子時計。
【請求項5】
請求項1からは請求項4のいずれか一項に記載の電子時計において、
前記回転錘は、非磁性部材を用いて形成される
ことを特徴とする電子時計。
【請求項6】
請求項5に記載の電子時計において、
前記非磁性部材は、タングステンである
ことを特徴とする電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、時刻情報を含む標準電波を受信可能なアンテナを有し、かつ、回転錘を用いて発電する発電機構を備えた電子時計が開示されている。
【0003】
特許文献1では、平面視において、回転錘の外周縁の回転軌跡よりも回転錘の半径方向の外側にアンテナを配置する、つまり、回転錘がどの位置にいても、回転錘と重ならない位置にアンテナを配置している。これにより、アンテナで標準電波を受信している最中に回転錘が回転したとしても、標準電波が回転錘によって遮断されることがないので、アンテナで標準電波を確実に受信できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-3993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、回転錘の外周縁の回転軌跡よりも回転錘の半径方向の外側にアンテナを配置しているので、アンテナを配置するスペースを余計に設ける必要があり、時計が大型化してしまうといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電子時計は、回転軸を中心にして回動する回転錘を有し、前記回転錘の回動による機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する発電装置と、時刻を計時する計時装置と、長波標準電波を受信可能に構成され、前記回転軸の軸方向から見た平面視で、前記回転錘の外周縁の回転軌跡よりも前記回転錘の半径方向の内側に配置されたアンテナと、を備え、前記回転錘は、前記平面視で前記アンテナと重なることが可能な位置に配置される開口部、または、切欠部を有し、回転位置に関わらず前記平面視で前記アンテナ全体を覆うことがないことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態に係る電子時計の概略を示す正面図。
図2】第1実施形態の電子時計の概略構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態の受信回路の概略構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態のアンテナを示す平面図。
図5図4とは反対側の方向から見たアンテナを示す平面図。
図6】第1実施形態の回転錘およびアンテナの概略を示す平面図。
図7】第1実施形態の回転錘およびアンテナの概略を示す断面図。
図8】コイル部の重なり率とアンテナ同調周波数変動率との関係を示す図。
図9】第2実施形態の回転錘およびアンテナの概略を示す平面図。
図10】第3実施形態の回転錘およびアンテナの概略を示す平面図。
図11】第4実施形態の回転錘およびアンテナの概略を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子時計1を示す平面図である。
図1に示すように、電子時計1は、表示手段10と、りゅうず6と、Aボタン7と、Bボタン8と、アンテナ21と、外装ケース100と、ムーブメント200(図6参照)とを備えたアナログ式の腕時計である。
【0009】
外装ケース100は、ケーシング110と、カバーガラス120と、図示略の裏蓋とを備えている。
ケーシング110は、ステンレス鋼、真鍮、チタン等の金属部材で構成されている。このケーシング110は、略円筒状に形成され、内周面が平面略円形に形成されている。カバーガラス120は、ケーシング110の表面側に装着されている。裏蓋は、ケーシング110と同様な金属材で構成され、ケーシング110の裏面開口に固定されている。
【0010】
表示手段10は、時針11、分針12、秒針13、文字板14を備える。そして、電子時計1は、長波標準電波を受信し、受信した時刻情報に基づいて時針11、分針12、秒針13の指示位置を補正可能な時計である。
ここで、文字板14としては、例えば合成樹脂やセラミック等の非導電性素材から形成されていることが好ましく、これにより、後述するカバーガラス120側から進入する長波標準電波が阻害されず、後述するアンテナ21にて良好に受信させることができる。
【0011】
ムーブメント200は、外装ケース100の内部に収納されている。そして、ムーブメント200は、後述するアンテナ21、回路部30、蓄電手段40、整流回路50、および、発電装置60等を備えて構成されている。
【0012】
[電子時計の回路構成]
次に、本実施形態の電子時計1の回路構成について説明する。
図2は、電子時計1の概略構成を示すブロック図であり、図3は、受信回路23の概略構成を示すブロック図である。
図2図3に示すように、電子時計1は、表示手段10と、アンテナ21と、同調回路22と、受信回路23と、回路部30と、水晶振動子31と、蓄電手段40と、整流回路50と、発電装置60とを備える。
【0013】
[アンテナ]
図4は、アンテナ21を示す平面図であり、図5は、図4とは反対側の方向から見たアンテナ21を示す平面図である。
図4図5に示すように、アンテナ21は、アンテナコア部211およびアンテナ枠212に、コイル213を巻いて構成されており、必要に応じて、耐食性に優れるカチオン電着塗装等で絶縁を施したものである。そして、アンテナコア部211において、コイル213が巻かれた部分はコイル部214とされている。
【0014】
アンテナコア部211は、例えば、磁性箔材としてのコバルト系のアモルファス金属箔(例;Co50wt%以上のアモルファスシート)を型で打ち抜くか、エッチングで成形したものを10~30枚程接着して重ね合わせ、焼鈍等の熱処理を行って磁気特性を安定化させたものである。
アンテナ枠212は、合成樹脂製の部材であり、アンテナコア部211を保持している。
【0015】
コイル213は、長波標準電波(40~77.5kHz)を受信する場合は、20mH程度のインダクタンス値が必要となる。このため、本実施形態では、コイル213は、直径0.1mm程度のウレメット線を数百ターンほど巻いて構成されている。
また、コイル213の巻き方としては、特に限定されず、乱巻きなどでもよいが、特に整列巻きが好ましい。整列巻きを採用すれば、コイル線材間の無駄な空間が無くなり、同じインダクタンス値を得るためのコイル体積を小さくできる。
【0016】
このようなアンテナ21は、外装ケース100の中心に対して9時方向に配置されている。一方、外装ケース100の3時側にはりゅうず6が配置されている。
そして、本実施形態では、りゅうず6は3時位置に配置され、Aボタン7およびBボタン8は、それぞれ2時位置、4時位置に配置されている。
すなわち、本実施形態では、アンテナ21と、りゅうず6、Aボタン7、および、Bボタン8とは、外装ケース100の平面中心位置を挟んで互いに反対側に配置されている。
【0017】
[同調回路]
図2図3に戻って、同調回路22は、アンテナ21に対して並列に接続された2つのコンデンサー22A,22Bを備えて構成され、一方のコンデンサー22Bがスイッチ22Cを介してアンテナ21に接続されている。
【0018】
[受信回路]
受信回路23は、増幅回路231と、バンドパスフィルター232と、復調回路233と、AGC回路234と、デコード回路235とを備えている。
増幅回路231は、アンテナ21によって受信された長波標準電波信号を増幅する。バンドパスフィルター232は、増幅された長波標準電波信号から所望の周波数成分のみを抜き出す。復調回路233は、長波標準電波信号を平滑化し復調する。AGC(Automatic Gain Control)回路234は、増幅回路231のゲインコントロールを行ない長波標準電波信号の受信レベルが一定になるように制御する。デコード回路235は、復調された長波標準電波信号をデコードして出力する。
【0019】
そして、受信回路23で受信され信号処理された時刻情報は、図示略の記憶回路に出力されて記憶される。
また、本実施形態では、受信回路23は、予め設定されたスケジュールや、りゅうず6、Aボタン7、Bボタン8等による受信操作によって、制御回路32から出力される受信制御信号に基づいて時刻情報の受信を開始する。
【0020】
[回路部]
回路部30は、制御回路32と、表示部駆動回路33とを有する。
制御回路32は、水晶振動子31から発振された基準クロックに基づいて時刻を計時するとともに、受信回路23で信号処理された時刻情報に基づいて現在時刻を修正する。表示部駆動回路33は、制御回路32にて計時された時刻に基づいて、表示手段10の駆動を制御する。なお、回路部30は、本開示の計時装置の一例である。
【0021】
蓄電手段40は、発電装置60で発電された電力を蓄電し、当該電力を回路部30等に供給する所謂二次電池である。
整流回路50は、発電装置60で発電された電流を整流し、蓄電手段40に供給する。
【0022】
[発電装置]
発電装置60は、発電機61と、回転錘62とを有し、回転錘62の回動による機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する。
発電機61は、発電用ローター、発電用ステーター、および、発電用コイル等を有する一般的な発電機であり、回転錘62の回転による機械的エネルギーを動力にして発電用ローターを回転させることで発電する。
【0023】
[回転錘]
図6は、本実施形態の回転錘62およびアンテナ21の概略を示す平面図であり、図7は、回転錘62およびアンテナ21の概略を示す断面図である。なお、図6では、外装ケース100を省略している。
図6図7に示すように、回転錘62は、略半円形に構成され、腕部621と、錘部622と、回転軸Oとを有する。
【0024】
腕部621は、錘部622を支持する部材である。本実施形態では、腕部621は、加工性の高いSUS301、SUS304、真鍮等の非磁性部材を用いて形成されている。そのため、腕部621の加工精度を高くすることができる。
また、本実施形態では、腕部621は、回転錘62の外周縁6222の回転軌跡が描く円Qの直径に沿って設けられている。
【0025】
錘部622は、腕部621の両端部を結ぶ円弧帯状の部材であり、回転軸Oを中心に回動可能に構成されている。本実施形態では、錘部622は、円弧状とされた内周縁6221および外周縁6222を有する。
また、本実施形態では、錘部622は、非磁性部材であるタングステンを用いて形成されている。これにより、回転錘62の錘部622が比重の大きいタングステンを用いて形成されるので、回転錘62の回転による機械的エネルギーを大きくすることができる。
このように、本実施形態では、回転錘62を構成する腕部621および錘部622が非磁性部材を用いて形成されているので、回転錘62によるアンテナ21の同調周波数の変動への影響を小さくすることができる。
【0026】
また、回転錘62は、腕部621と錘部622とで規定される開口部623を有している。本実施形態では、開口部623は、半円形状とされ、後述するように、回転軸Oの軸方向から見た平面視でアンテナ21と重なることが可能な位置に形成されている。
【0027】
[回転錘およびアンテナの配置]
次に、本実施形態の回転錘62およびアンテナ21の配置について説明する。
図6に示すように、本実施形態では、アンテナ21は、平面視で回転錘62の外周縁6222の回転軌跡が描く円Qよりも回転錘62の半径方向の内側に配置されている。より具体的には、アンテナ21は、錘部622の内周縁6221の回転軌跡が描く円Rよりも回転錘62の半径方向の内側に配置されている。これにより、本実施形態では、アンテナ21を回転錘62の外周縁6222の回転軌跡が描く円Qよりも回転錘62の半径方向の外側に配置する場合に比べて、電子時計1を小型化することができる。さらに、錘部622は、回転錘62の回転位置に関わらず、平面視でアンテナ21を覆うことがない。そのため、アンテナ21の同調周波数の変動を小さくすることができる。
【0028】
そして、回転錘62の開口部623は、平面視でアンテナ21と重なることが可能な位置に配置されている。これにより、本実施形態では、アンテナ21のコイル部214は、回転錘62の回転位置に関わらず、平面視で回転錘62と重なる面積の比率が10%以下となるように構成されている。
【0029】
ここで、回転錘62が平面視でアンテナ21と重なる位置に配置される場合、平面視で腕部621とアンテナ21のコイル部214とが交差する。具体的には、腕部621は、当該腕部621の長手方向に沿った辺と、コイル部214の長手方向に沿った辺とが成す鋭角もしくは直角の角度が45°以上、かつ、90°以下、より好ましくは、60°以上、かつ、90°以下となるように構成されている。より具体的には、平面視で、コイル部214における回転軸O側の角部に、腕部621における開口部623側の辺が重なった際に、コイル部214における回転軸O側の辺と、腕部621における開口部623側の辺とが成す鋭角が45°以上、より好ましくは60°以上になるように、腕部621は構成されている。すなわち、本実施形態では、腕部621は、平面視でコイル部214と交差可能に構成されている。これにより、コイル部214と腕部621とが平行に重ならないので、コイル部214から発生する磁界を打ち消す渦電流の発生を抑制することができる。そのため、アンテナ21の受信性能の低下を抑制することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、図4図6に示すように、平面視で、アンテナ21のアンテナコア部211の両端形状は、錘部622の内周縁6221に沿って湾曲した形状を有している。これにより、アンテナ21で発生する磁界をコイル部214に対して錘部622とは反対側に多くすることができるので、アンテナコア部211を錘部622の内縁に沿って配置してもアンテナ同調周波数の変動率を小さくすることができる。さらに、アンテナ21をムーブメント200の外縁に沿って配置できるため、アンテナ21や電子時計1の構成部品の配置自由度を向上させることができる。
【0031】
[コイル部と回転錘との重なりによるアンテナ同調周波数への影響]
図8は、コイル部214と回転錘62との重なりによるアンテナ同調周波数への影響を示す図である。具体的には、図8は、コイル部214に腕部621に相当する厚さ0.5mmの金属を近づけた際のアンテナ同調周波数の変動を示している。
図8に示すように、平面視で回転錘62と重なるコイル部214の面積の比率、すなわち、コイル部214の重なり率が50%であれば、アンテナ同調周波数の変動率を2%程度に抑えることができる。そして、アンテナ同調周波数の変動が2%程度であれば、長波標準電波を受信する際に必要なアンテナ21の受信感度を確保できる。すなわち、コイル部214の重なり率が50%以下であれば、アンテナ21の同調周波数の変動を約2%以下にすることができる。
【0032】
そして、本実施形態では、前述したように、コイル部214は、回転錘62の位置に関わらず、平面視で回転錘62と重なる面積の比率が10%以下となるように構成されている。これにより、アンテナ21を回転錘62の外周縁6222の回転軌跡が描く円Qよりも回転錘62の半径方向の内側に配置しても、アンテナ21の同調周波数の変動を約0.6%以下にすることができ、アンテナ21による長波標準電波の受信への影響を抑制できる。
なお、コイル部214の重なり率が50%よりも大きい場合には、長波標準電波を受信する際に必要なアンテナ21の受信感度を確保することが難しい。また、コイル部214の重なり率を5%以上にすることで、回転錘62の腕部621の強度を高くすることができるため、例えば、落下衝撃などの強い衝撃が加わった際の回転錘62の変形や破損を防止することができる。
【0033】
[第1実施形態の作用効果]
このような本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、回転錘62は、平面図でアンテナ21と重なることが可能な位置に開口部623を有し、回転位置に関わらずアンテナ21全体を覆うことがない。これにより、アンテナ21を回転錘62の外周縁6222の回転軌跡が描く円Qよりも回転錘62の半径方向の内側に配置しても、アンテナ21の同調周波数の変動を小さくすることができる。そのため、アンテナ21による長波標準電波の受信への影響を抑制でき、かつ、電子時計1を小型化することができる。
さらに、回転錘62は、アンテナ21によって配置位置を規制されないので、回転錘62の径を大きくすることができる。そのため、発電装置60による発電効率を向上することができる。
【0034】
本実施形態では、アンテナ21のコイル部214は、回転錘62の回転位置に関わらず、平面図で回転錘62と重なる面積が50%以下なので、アンテナ21の同調周波数の変動を小さくすることができる。
【0035】
本実施形態では、平面図でアンテナ21のコイル部214と腕部621とが交差して配置される、つまり、コイル部214と腕部621とが平行に重ならないので、コイル部214から発生する磁界を打ち消す渦電流の発生を抑制することができる。そのため、アンテナ21の受信性能の低下を抑制できる。
【0036】
本実施形態では、回転錘62の錘部622は、回転錘62の回転位置に関わらず、平面視でコイル部214を覆うことがないので、アンテナ21の同調周波数の変動を小さくすることができる。
【0037】
本実施形態では、回転錘62は、非磁性部材を用いて形成されるので、回転錘62によるアンテナ21の同調周波数の変動への影響を小さくすることができる。
【0038】
本実施形態では、回転錘62の錘部622を形成する非磁性部材が、比重の大きいタングステンであるため、回転錘62の回転による機械的エネルギーを大きくすることができる。そのため、発電装置60による発電効率を向上することができる。
【0039】
本実施形態では、回転錘62の腕部621が、加工性の高いSUS301、SUS304、真鍮等を用いて形成されるので、腕部621の加工制度を高くすることができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係る電子時計1Aを図面に基づいて説明する。
第2実施形態の電子時計1Aは、回転錘62Aに円弧状の開口部623Aが設けられる点で前述した第1実施形態と相違する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0041】
図9は、本実施形態の回転錘62Aおよびアンテナ21の概略を示す平面図である。なお、図9では、外装ケース100を省略している。
図9に示すように、回転錘62Aは、前述した第1実施形態と同様に、略半円形に構成され、腕部621Aと、錘部622Aと、回転軸Oとを有する。
【0042】
腕部621Aは、前述した第1実施形態と同様に錘部622Aを支持する部材である。
本実施形態では、腕部621Aは、回転錘62Aの外周縁6222Aの回転軌跡が描く円Qの直径に沿って設けられる腕本体部624Aと、当該腕本体部624Aから半円状に延出される錐体部625Aとを有している。これにより、腕部621Aの重量を錐体部625Aの分だけ大きくできるので、回転錘62Aの回動による機械的エネルギーを大きくすることができる。そのため、発電装置60による発電効率を向上できる。
【0043】
錘部622Aは、腕本体部624Aの両端部を結ぶ円弧帯状の部材であり、回転軸Oを中心に回動可能に構成されている。本実施形態では、錘部622Aは、前述した第1実施形態と同様に非磁性部材であるタングステンを用いて形成されている。
【0044】
また、回転錘62Aは、腕部621Aと錘部622Aとで規定される開口部623Aを有している。本実施形態では、開口部623Aは、円弧状とされている。
また、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様に、アンテナ21は、平面視で回転錘62Aの錘部622Aの外周縁6222Aの回転軌跡が描く円Qよりも回転錘62Aの半径方向の内側に配置されている。具体的には、アンテナ21は、開口部623Aの内周側円弧よりも半径方向の外側に配置され、かつ、回転錘62Aの内周縁6221Aの回転軌跡が描く円Rと重なる位置に配置されている。これにより、回転錘62Aの開口部623Aは、平面視でアンテナ21と重なることが可能な位置に配置されている。そして、本実施形態では、アンテナ21のコイル部214は、回転錘62Aの位置に関わらず、平面視で回転錘62Aと重なる面積の比率が20%以下となるように構成されている。
【0045】
[第2実施形態の作用効果]
このような本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、回転錘62Aは、平面図でアンテナ21と重なることが可能な位置に開口部623Aを有している。そのため、前述した第1実施形態と同様に、アンテナ21による長波標準電波の受信への影響を抑制でき、かつ、電子時計1Aを小型化することができる。
【0046】
本実施形態では、腕部621Aは、腕本体部624Aと、当該腕本体部624Aから半円状に延出される錐体部625Aとを有している。これにより、腕部621Aの重量を錐体部625Aの分だけ大きくできるので、回転錘62Aの回動による機械的エネルギーを大きくすることができる。そのため、発電装置60による発電効率を向上できる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態に係る電子時計1Bを図面に基づいて説明する。
第3実施形態の電子時計1Bは、回転錘62Bに放射状に形成される第2腕部626Bが設けられ、開口部623Bが8個設けられる点で前述した第1、2実施形態と相違する。なお、第3実施形態において、第1、2実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図10は、本実施形態の回転錘62Bおよびアンテナ21の概略を示す平面図である。なお、図10では、外装ケース100を省略している。
図10に示すように、回転錘62Bは、前述した第1、2実施形態と同様に、略半円形に構成され、腕部621Bと、錘部622Bと、回転軸Oとを有する。
【0049】
腕部621Bは、前述した第1、2実施形態と同様に錘部622Bを支持する部材である。
本実施形態では、腕部621Bは、回転錘62Bの外周縁6222Bの回転軌跡が描く円Qの直径に沿って設けられる第1腕部624Bと、当該第1腕部624Bから半円状に延出される錐体部625Bと、当該錐体部625Bから放射状に形成される第2腕部626Bとを有している。これにより、腕部621Bは放射状に形成される第2腕部626Bを有するので、腕部621Bの強度を高くすることができる。
【0050】
錘部622Bは、第1腕部624Bの両端部および第2腕部626Bの先端部を結ぶ円弧帯状の部材であり、回転軸Oを中心に回動可能に構成されている。本実施形態では、錘部622Bは、前述した第1実施形態と同様に非磁性部材であるタングステンを用いて形成されている。
【0051】
また、回転錘62Bは、腕部621Bと錘部622Bとで規定される開口部623Bを有している。本実施形態では、開口部623Bは、放射状に形成される第2腕部626Bを挟むように8個形成されている。
また、本実施形態では、前述した第1、2実施形態と同様に、アンテナ21は、平面視で回転錘62Bの錘部622Bの外周縁6222Bの回転軌跡が描く円Qよりも回転錘62Bの半径方向の内側に配置されている。より具体的には、アンテナ21は、錘部622Bの内周縁6221Bの回転軌跡が描く円Rよりも回転錘62Bの半径方向の内側に配置されている。そして、回転錘62Bの開口部623Bは、平面視でアンテナ21と重なることが可能な位置に配置されている。これにより、本実施形態では、アンテナ21のコイル部214は、回転錘62Bの位置に関わらず、平面視で回転錘62Bと重なる面積の比率が30%以下となるように構成されている。
【0052】
また、本実施形態では、回転錘62Bが平面視でアンテナ21と重なる位置に配置される場合、平面視で第2腕部626Bとアンテナ21のコイル部214とが交差する。すなわち、本実施形態では、第2腕部626Bは、平面視でコイル部214と交差可能に構成されている。そのため、コイル部214と第2腕部626Bとが平行に重ならないので、コイル部214から発生する磁界を打ち消す渦電流の発生を抑制することができる。そのため、アンテナ21の同調周波数の変動を小さくすることができる。
【0053】
[第3実施形態の作用効果]
このような本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、回転錘62Bは、平面図でアンテナ21と重なることが可能な位置に開口部623Bを有している。そのため、前述した第1、2実施形態と同様に、アンテナ21による長波標準電波の受信への影響を抑制でき、かつ、電子時計1Bを小型化することができる。
【0054】
本実施形態では、平面図でアンテナ21のコイル部214と第2腕部626Bとが交差して配置される、つまり、コイル部214と第2腕部626Bとが平行に重ならないので、コイル部214から発生する磁界を打ち消す渦電流の発生を抑制することができる。そのため、アンテナ21の受信性能の低下を抑制できる。
【0055】
本実施形態では、腕部621Bは放射状に形成される第2腕部626Bを有するので、腕部621Bの強度を高くすることができる。
【0056】
[第4実施形態]
次に、本開示の第4実施形態に係る電子時計1Cを図面に基づいて説明する。
第4実施形態の電子時計1Cは、回転錘62Cは切欠き部627Cを有する点で前述した第1~3実施形態と相違する。なお、第4実施形態において、第1~3実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0057】
図11は、本実施形態の回転錘62Cおよびアンテナ21の概略を示す平面図である。なお、図11では、外装ケース100を省略している。
図11に示すように、回転錘62Cは、前述した第1~3実施形態と同様に、略半円形に構成され、腕部621Cと、錘部622Cと、回転軸Oとを有する。
【0058】
腕部621Cは、前述した第1~3実施形態と同様に錘部622Cを支持する部材である。
本実施形態では、腕部621Cは、回転錘62Cの錘部622Cの外周縁6222Cの回転軌跡が描く円Qの半径に沿って設けられている。
【0059】
錘部622Cは、腕部621Cの先端部に設けられる円弧帯状の部材であり、回転軸Oを中心に回動可能に構成されている。本実施形態では、錘部622Cは、前述した第1実施形態と同様に非磁性部材であるタングステンを用いて形成されている。
【0060】
また、回転錘62Cは、腕部621Cと錘部622Cとで規定される切欠き部627Cを有している。本実施形態では、切欠き部627Cは、腕部621Cを挟んで2個形成されている。
また、本実施形態では、前述した第1~3実施形態と同様に、アンテナ21は、平面視で回転錘62Cの錘部622Cの外周縁6222Cの回転軌跡が描く円Qよりも回転錘62Cの半径方向の内側に配置されている。より具体的には、アンテナ21は、錘部622Cの内周縁6221Cの回転軌跡が描く円Rよりも回転錘62Cの半径方向の内側に配置されている。そして、回転錘62Cの切欠き部627Cは、平面視でアンテナ21と重なることが可能な位置に配置されている。これにより、本実施形態では、アンテナ21のコイル部214は、回転錘62Cの位置に関わらず、平面視で回転錘62Cと重なる面積の比率が10%以下となるように構成されている。
【0061】
さらに、本実施形態では、回転錘62Cが平面視でアンテナ21と重なる位置に配置される場合、平面視で腕部621Cとアンテナ21のコイル部214とが交差する。すなわち、本実施形態では、腕部621Cは、平面視でコイル部214と交差可能に構成されている。そのため、コイル部214と腕部621Cとが平行に重ならないので、コイル部214から発生する磁界を打ち消す渦電流の発生を抑制することができる。そのため、アンテナ21の受信性能の低下を抑制できる。
【0062】
[第4実施形態の作用効果]
このような本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、回転錘62Cは、平面図でアンテナ21と重なることが可能な位置に切欠き部627Cを有している。そのため、前述した第1~3実施形態と同様に、アンテナ21による長波標準電波の受信への影響を抑制でき、かつ、電子時計1Cを小型化することができる。
【0063】
本実施形態では、平面図でアンテナ21のコイル部214と腕部621Cとが交差して配置される、つまり、コイル部214と腕部621Cとが平行に重ならないので、コイル部214から発生する磁界を打ち消す渦電流の発生を抑制することができる。そのため、アンテナ21の受信性能の低下を抑制できる。
【0064】
[変形例]
なお、本開示は前述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
【0065】
前記各実施形態では、錘部622、622A、622B、622Cは、タングステンを用いて形成されていたが、これに限定されない。例えば、錘部は、SUS301、SUS304、真鍮等の非磁性部材を用いて形成されていてもよい。
同様に、前記各実施形態では、腕部621、621A、621B、621Cは、SUS301、SUS304、真鍮等の非磁性部材を用いて形成されていたが、これに限定されない。例えば、腕部は、タングステンを用いて形成されていてもよい。
さらに、錘部と腕部とは同じ部材を用いて一体に形成されていてもよい。
【0066】
前記各実施形態では、アンテナ21は平面視で9時方向に配置されていたが、これに限定されない。例えば、アンテナは平面視で6時方向や12時方向等に配置されていてもよい。
【0067】
前記各実施形態では、アンテナ21は、長波標準電波を受信可能に構成されていたが、これに限定されない。例えば、アンテナは、GPS信号やラジオの電波等を受信可能に構成されていてもよい。
【0068】
[本開示のまとめ]
本開示の電子時計は、回転軸を中心にして回動する回転錘を有し、前記回転錘の回動による機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する発電装置と、時刻を計時する計時装置と、長波標準電波を受信可能に構成され、前記回転軸の軸方向から見た平面視で、前記回転錘の外周縁の回転軌跡よりも前記回転錘の半径方向の内側に配置されたアンテナと、を備え、前記回転錘は、前記平面視で前記アンテナと重なることが可能な位置に配置される開口部、または、切欠部を有し、回転位置に関わらず前記平面視で前記アンテナ全体を覆うことがないことを特徴とする。
これにより、回転錘は、平面図でアンテナと重なることが可能な位置に開口部、または、切欠部を有し、回転位置に関わらずアンテナ全体を覆うことがないので、アンテナを回転錘の外周縁の回転軌跡よりも回転錘の半径方向の内側に配置しても、アンテナの同調周波数の変動を小さくすることができる。そのため、アンテナによる長波標準電波の受信への影響を抑制でき、かつ、電子時計を小型化することができる。
【0069】
本開示の電子時計において、前記アンテナは、アンテナコア部およびコイル部を備え、前記コイル部は、前記回転錘の回転位置に関わらず、前記平面視で前記回転錘と重なる面積の比率が50%以下であってもよい。
これにより、アンテナのコイル部は、回転錘の回転位置に関わらず、平面図で回転錘と重なる面積が50%以下なので、アンテナの同調周波数の変動を小さくすることができる。
【0070】
本開示の電子時計において、前記回転錘は、錘部および前記錘部を支持する腕部を有し、前記腕部は、前記平面視で前記コイル部と交差可能に構成されていてもよい。
これにより、平面図でアンテナのコイル部と腕部とが交差して配置される、つまり、コイル部と腕部とが平行に重ならないので、コイル部から発生する磁界を打ち消す渦電流の発生を抑制することができる。そのため、アンテナの受信性能の低下を抑制できる。
【0071】
本開示の電子時計において、前記錘部は、前記回転錘の回転位置に関わらず、前記平面視で前記コイル部を覆うことがなくてもよい。
これにより、回転錘の錘部は、回転錘の回転位置に関わらず、平面視でコイル部を覆うことがないので、アンテナの同調周波数の変動を小さくすることができる。
【0072】
本開示の電子時計において、前記回転錘は、非磁性部材を用いて形成されていてもよい。
これにより、回転錘は、非磁性部材を用いて形成されるので、回転錘によるアンテナの同調周波数の変動への影響を小さくすることができる。
【0073】
本開示の電子時計において、前記非磁性部材は、タングステンであってもよい。
これにより、回転錘を形成する非磁性部材が、比重の大きいタングステンであるため、回転錘の回転による機械的エネルギーを大きくすることができる。そのため、発電機構による発電効率を向上することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B,1C…電子時計、6…りゅうず、7…Aボタン、8…Bボタン、10…表示手段、11…時針、12…分針、13…秒針、14…文字板、21…アンテナ、22…同調回路、22A…コンデンサー、22B…コンデンサー、22C…スイッチ、23…受信回路、30…回路部(計時装置)、31…水晶振動子、32…制御回路、33…表示部駆動回路、40…蓄電手段、50…整流回路、60…発電装置、61…発電機、62,62A,62B,62C…回転錘、100…外装ケース、110…ケーシング、120…カバーガラス、200…ムーブメント、211…アンテナコア部、212…アンテナ枠、213…コイル、214…コイル部、231…増幅回路、232…バンドパスフィルター、233…復調回路、234…AGC回路、235…デコード回路、621,621A,621B,621C…腕部、622,622A,622B,622C…錘部、623,623A,623B…開口部、624A…腕本体部、624B…第1腕部、625A,625B…錐体部、626B…第2腕部、627C…切欠き部、6221,6221A,6221B,6221C…内周縁、6222,6222A,6222B,6222C…外周縁。
図1
図2
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図10
図11