(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】対象物制御装置
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20241008BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20241008BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20241008BHJP
E05F 15/77 20150101ALI20241008BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
E05B49/00 K
B60R25/24
E05F15/73
E05F15/77
G01S13/58 200
(21)【出願番号】P 2021062956
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】関谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 領
(72)【発明者】
【氏名】礒野 友輔
(72)【発明者】
【氏名】柴田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】角谷 祐次
(72)【発明者】
【氏名】篠田 卓士
(72)【発明者】
【氏名】関澤 高俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 恒人
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-132119(JP,A)
【文献】特開2017-40083(JP,A)
【文献】特開2020-165950(JP,A)
【文献】特開2020-122726(JP,A)
【文献】特開2016-184813(JP,A)
【文献】特開2018-66207(JP,A)
【文献】特開2008-138440(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123661(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/202670(WO,A1)
【文献】特開2008-310382(JP,A)
【文献】特開2021-26396(JP,A)
【文献】特表2017-517062(JP,A)
【文献】実開平2-97463(JP,U)
【文献】特開2022-63473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05F 15/00-15/79
B60R 25/00-99/00
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G06T 7/20-7/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10)であって、
前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、
前記送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、
前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、を備え、
前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられる対象物制御装置。
【請求項2】
前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部(16)を備える、請求項1に記載の対象物制御装置。
【請求項3】
前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内である場合に、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、請求項2に記載の対象物制御装置。
【請求項4】
前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準とするエリア内において、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、請求項2又は3に記載の対象物制御装置。
【請求項5】
前記送受信部は、電波が受信された際に、受信電波に応じた受信信号を一時的に保持する受信バッファ(14)を備える、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の対象物制御装置。
【請求項6】
前記受信バッファは、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内となったことに応じて、受信信号の一時的な保持を実行する、請求項5に記載の対象物制御装置。
【請求項7】
前記対象物は、車両であって、
ユーザによって実行指示される制御は、車両ドアの解錠、車両ドアの開扉、車両トランクの解錠、車両トランクの開扉、及び車両に搭載された車載装置の動作開始の少なくとも1つである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の対象物制御装置。
【請求項8】
前記送受信部は、電波を介して信号を送受信するために、車両の外周近傍に設けられた複数のアンテナを有する、請求項7に記載の対象物制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ユーザがなんら動作することなく、ドアを自動的に開動作させることができるドア制御装置が開示されている。このドア制御装置は、カメラ、画像制御部、車両側制御部などを備える。画像制御部は、カメラによって撮影されたユーザの画像データに基づき、荷物などでユーザの手が塞がっているか否かを判断する。荷物などでユーザの手が塞がっていると判断すると、画像制御部は、車両側制御部にドア開許可信号を出力する。車両側制御部は、ドア開許可信号に応じて、ドアの開動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のドア制御装置では、ユーザの手が荷物などで塞がっていることを判断するためにカメラを用いている。そのため、部品点数の増加や、コストの上昇を招く。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、部品点数の増加やコストの上昇を極力抑制しつつ、対象物に対するユーザによる制御の実行指示を検出して、対象物において、指示に対応する制御を行うことが可能な対象物制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示による対象物制御装置(10)は、
対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、
送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、
前記送受信部が受信した反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、を備え、
ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられることを特徴とする。
【0007】
スマートフォンなどの情報端末を鍵として用いて、車両のドアや建物のドアなどのロックを解除したり、ドアを自動的に開扉したりするシステムが普及しつつある。このようなシステムでは、通常、制御される対象物(車両や建物)に、情報端末との無線通信を介して情報端末から認証用データを取得して正規のユーザの情報端末であることを認証したり、無線通信信号の送受信結果から、情報端末の位置を確認したりすることができる無線信号の送受信部及び制御装置が設けられる。
【0008】
本開示による対象物制御装置(10)は、情報端末(20)と無線通信を行うために、対象物に設置された送受信部(12~15)を利用して、ユーザによる制御の実行指示を検出する。具体的には、送受信部は、情報端末との無線通信に加えて、送信した電波がユーザの体で反射された反射電波も受信する。ジェスチャ検出部(18)が、その反射電波に基づいてユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する。そして、ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出を、対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いる。従って、本開示による対象物制御装置によれば、従来技術のように、特別な部品の追加を必要とせずに、対象物に対するユーザによる制御の実行指示を検出することができる。また、ユーザの体によって反射される反射電波を用いてユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するので、カメラのように所定位置で正面を向いたユーザしか検出しないといった制限を緩和することができる。
【0009】
上記括弧内の参照番号は、本開示の理解を容易にすべく、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、なんら本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【0010】
また、上述した特徴以外の、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術的特徴に関しては、後述する実施形態の説明及び添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の車両制御システムを構成する車両制御装置及び情報端末が有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図2】ユーザがかかとを上げつつタップを踏むジェスチャを行ったときに、ユーザの体までの距離を示す距離データ、ユーザの体が動く速度を示す速度データ、および信号強度を示す信号強度データを複数回算出した結果をまとめたグラフである。
【
図3】ユーザがお辞儀をするジェスチャを行ったときに、ユーザの体までの距離を示す距離データ、ユーザの体が動く速度を示す速度データ、および信号強度を示す信号強度データを複数回算出した結果をまとめたグラフである。
【
図4】第1実施形態に係る車両制御装置において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る車両制御装置のジェスチャ検出部が、ユーザの体で反射された反射電波に基づいて、ユーザが所定の反復動作を行ったことを、対象物に対するユーザによる制御の実行を指示するジェスチャとして検出するための処理を示すフローチャートである。
【
図6】ユーザが、反復動作として、かかと上げタップを行ったときの、時間の経過に伴う複数の速度値の変化を示すグラフである。
【
図7】
図6のグラフに示される、所定強度以上の信号強度が対応付けられた速度値の内、負の速度値を対象として周波数解析を行った結果を示すグラフである。
【
図8】第3実施形態に係る車両制御装置と、情報端末とを含む車両制御システムの構成を示す構成図である。
【
図9】所定のジェスチャを特徴付ける特性データについて説明するための説明図である。
【
図10】(a)は、送受信部の視線方向に沿って、ユーザが体の一部を前後に動かす動作を示す図であり、(b)は、(a)の動作によって得られるデータの分布傾向を示す図である。
【
図11】(a)は、送受信部の視線方向と垂直な面内方向に、ユーザが体の一部を動かす動作を示す図であり、(b)は、(a)の動作によって得られるデータの分布傾向を示す図である。
【
図12】ユーザが、足でタップを踏む動作、お辞儀をする動作、及び脚部を前後に動かす動作を行った場合の距離値及び速度値の広がり幅の一例を示す図である。
【
図13】(a)、(b)は、ジェスチャの動作の大きさの違いによって、速度値の広がりが変化する一例を示す図である。
【
図14】(a)は、登録特性データの一例を示す図であり、(b)は測定特性データの一例を示す図であり、(c)は、登録特性データをそのまま測定された複数の速度値と対比したケースを示す図であり、(d)は、登録特性データの速度値の広がりを変更して、複数の速度値と対比したケースを示す図である。
【
図15】第3実施形態に係る車両制御装置のジェスチャ検出部、ジェスチャ登録部、及び判定用データ設定部による特性データの抽出、判定用特性データの設定、および判定用特性データに基づくジェスチャが行われたことの検出などの処理を示すフローチャートである。
【
図16】第4実施形態に係る車両制御装置と、情報端末とを含む車両制御システムの構成を示す構成図である。
【
図17】(a)は、2つの送受信部に対して対称的となるユーザのジェスチャによる動作の一例を示す図であり、(b)は、(a)に示すような動作により、反射電波の受信信号から算出される、動作の速さを示す複数の速度値は周期的に正負の符号が反転するように変動することを示す図であり、(c)は、(a)に示すような動作により、複数の速度値の時間変動の位相が180度に近いずれを示すことを表す図である。
【
図18】第4実施形態に係る車両制御装置のジェスチャ検出部及び位置特定部による、ジェスチャが行われたことの検出及びユーザ位置の特定などの処理を示すフローチャートである。
【
図19】第5実施形態に係る車両制御装置と、情報端末とを含む車両制御システムの構成を示す構成図である。
【
図20】ユーザの体からの反射電波の受信強度と、金属製の周辺物体からの反射電波の受信強度との相違の一例を示す図である。
【
図21】第5実施形態に係る車両制御装置のジェスチャ検出部、周辺物体検出部、及び解錠判定部による、ジェスチャが行われたことの検出、周辺物体の検出、及び周辺物体の検出結果に基づく車両ドアの開閉制御の実行可否判断などの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示による対象物制御装置のいくつかの実施形態を、図面を参照して説明する。なお、複数の実施形態に渡って、同一または類似の構成には同じ参照番号を付与することにより、説明を省略または簡略化する場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
以下、本開示による対象物制御装置の第1実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する第1実施形態は、本開示による対象物制御装置を、自動車などの車両の各種の機能を制御する車両制御装置に適用した例を説明する。例えば、車両制御装置は、ユーザからの指示に応じて、車両ドアの解錠、車両ドアの開扉、車両トランクの解錠、車両トランクの開扉、及び車両に搭載された車載装置(例えば、エアコン、エンジンなど)の動作開始などの少なくとも1つを実行することができる。ただし、本開示による対象物制御装置を適用可能な対象物は車両に限られず、例えば、対象物を建物として、本開示の対象物制御装置により、ユーザの指示に応じて、建物のドアの解錠、建物のドアの開扉、建物内の設備の制御などを行うように構成することも可能である。
【0014】
図1に示すように、車両制御装置10は、車両に搭載され、当該車両のユーザによって携帯される情報端末20(例えば、スマートフォン、タブレット、モバイルコンピュータなど)とともに、車両制御システムを構成する。
図1は、車両制御装置10及び情報端末20が有する機能を示す機能ブロック図である。また、
図1には、車両制御装置10が、ユーザの指示に応じて、車両ドアや車両トランクを解錠するように制御する車両制御システムの構成が示されている。
【0015】
車両制御装置10は、例えば、コンピュータを用いて実現され得る。すなわち、車両制御装置10は、CPU、ROM、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどの一般的な構成を有するコンピュータを含む。そして、このコンピュータは、
図1に示す車両制御装置10の機能ブロックの内、例えばROMに格納された各種のプログラムにより、解錠制御部11、位置判定部16、ジェスチャ検出部18、及び解錠判定部19などの機能を実現することができる。ただし、これらの機能の少なくとも一部を、プログラムを実行するコンピュータにより実現するのではなく、ASICなどのハードウェアを用いて実現しても良い。
【0016】
車両制御装置10の解錠制御部11は、信号送信部12に対して、ユーザが車両の近傍に位置しているか否かを判定するため、所定の時間間隔で、電波信号の送信を指示する。情報端末20から、送信した電波信号に応答する電波信号である応答信号が返送されてくると、解錠制御部11は、情報端末20が登録された正規の情報端末であるか確認する。具体的には、解錠制御部11は、情報端末20との通信を介して、情報端末20から認証用データを取得する。情報端末20から取得した認証用データが、事前にサーバなどから取得して格納されている認証用データと合致すると、解錠制御部11は、情報端末20の認証を許可する。このようにして、解錠制御部11は、ユーザが携帯する正規の情報端末20が車両の近傍に近づいたことを検出する。
【0017】
そして、解錠制御部11は、電波信号の送受信結果に基づき、情報端末20の位置の変化を検出するとともにユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するために、継続的に信号送信部12に電波信号を送信するように指示する。解錠制御部11は、後述するように、情報端末20の認証を許可し、かつ取得した情報端末20の位置が車両を基準とする所定のエリア内に属していると判定した場合に、ユーザが行う所定のジェスチャの検出などによる解錠指示に応じて、車両ドアや車両トランクの解錠を実行する。
【0018】
信号送信部12は、解錠制御部11からの電波信号の送信指示に応じて、アンテナ13を介して、電波信号を送信する。アンテナ13は、情報端末20への電波信号の送信及び情報端末20から送信される電波信号の受信に加えて、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能なものである。
【0019】
アンテナ13にて送受信する電波信号として、本実施形態では、高精度な測距を行うことが可能な、いわゆるUWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)通信方式に従う電波信号(インパルス信号)を用いる。ただし、通信方式はUWB-IR通信方式に限られず、例えば、UWB-FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)通信方式を採用することも可能である。
【0020】
また、車両へのユーザの接近を検出するために、UWB通信以外の通信を用いても良い。例えば、ブルートゥース(登録商標)ローエナジー(BLE)通信のアドバタイズ信号を用いて、ユーザの車両への接近を検出してもよい。さらに、BLE通信において、ユーザの情報端末20から認証用データを取得して、認証の可否を判断しても良い。この場合、UWB通信は、BLE通信による情報端末20の認証後に、情報端末20の位置を高精度に検出し、さらに、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するために利用される。
【0021】
例えば、UWB-IR通信方式で用いられるインパルス信号は、パルス幅が極短時間(たとえば2ナノ秒)であって、かつ、500MHz程度あるいはそれ以上の超広帯域を有する信号である。UWB-IR通信に利用できる周波数帯(以降、UWB帯)は、各国の法規により定められている。例えば、日本では、3.4~4.8GHz、7.25~10.25GHzが、UWB-IR通信に利用できる周波数帯として規定され、その中で、7.6~8.4GHzの周波数帯は、屋外利用が認められている。このように、UWB-IR通信に使用される周波数帯は、車両が使用される国に応じて適宜選定されればよい。
【0022】
UWB-IR通信方式で用いられるインパルス信号は、上述したように、超広帯域を有しているので、高い距離分解能で、高精度に情報端末20との距離を測定することができる。また、ユーザの体で反射する反射電波に基づいてユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する際にも、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを判定するために必要となる、ユーザの体までの距離及びユーザの体が動く速度を高分解能で検出することができる。ただし、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出可能な分解能を有している限り、UWB通信以外の通信信号を使用しても良い。
【0023】
なお、
図1には、車両制御装置10内に、1組の信号送信部12及びアンテナ13だけが図示されている。しかし、実際には、情報端末20の位置を検出するなどのために、信号送信部12およびアンテナ13は、後述する受信バッファ14及び信号受信部15とともに、車両の各ドアの近傍、車両のトランクの近傍、あるいは車両の四隅など、車両の複数箇所に設けられている。信号送信部12,アンテナ13、受信バッファ14、および信号受信部15が、請求の範囲における送受信部に相当する。
【0024】
本実施形態の解錠制御部11は、ユーザが車両を基準とする所定のエリア内(例えば、車両の各ドア、トランクから数メートル以内)に存在しているときに、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを、車両の各ドア、トランクの解錠を行うためのユーザ指示として利用する。この場合、ユーザはアンテナ13から数mの範囲に位置するので、アンテナ13が、電波信号を送信してからユーザの体で反射された反射電波の受信を開始するまでの時間は、僅か数ナノ秒に過ぎない。
【0025】
受信バッファ14は、このように、電波信号の送信から、数ナノ秒後にアンテナ13で受信される反射電波による受信信号を一時的に保持するように構成される。この受信バッファ14の受信信号の保持機能は、後述する位置判定部16によってオン、オフすることが可能である。すなわち、位置判定部16は、情報端末20の位置が車両を基準とする所定のエリア内に属することが判定されていない場合には、受信バッファ14の受信信号の保持機能をオフする。一方、位置判定部16は、情報端末20の位置が所定のエリア内に属することが判定されると、受信バッファ14の受信信号の保持機能をオンする。
【0026】
信号受信部15は、アンテナ13から直接、もしくは受信バッファ14を介して、受信信号を受け取る。そして、信号受信部15は、受け取った受信信号を、情報端末20との間で送受信される電波信号による受信信号と、ユーザの体によって反射される電波信号による受信信号とに分離する。情報端末20との間で送受信される電波信号に関しては、情報端末20における内部処理時間が加算されるので、情報端末20との間で送受信される電波信号とユーザの体で反射される電波信号とでは、送信から受信までの電波信号の伝播時間が大きく相違する。この伝播時間の相違に基づいて、信号受信部15は、受け取った受信信号を、情報端末20との間で送受信される電波信号による受信信号と、ユーザの体によって反射される電波信号による受信信号とに分離することができる。
【0027】
そして、信号受信部15は、情報端末20との間で送受信される電波信号及びユーザの体によって反射される電波信号の両方に関して、アンテナ13から電波信号を送信してから、受信するまでの伝播時間を算出する。例えば、伝播時間は、電波信号の送信を開始してから、電波信号の受信を開始するまでの時間として算出することができる。情報端末20との間で送受信される電波信号に関しては、伝播時間の算出において、情報端末20の内部処理時間を考慮する(すなわち、減算する)。また、信号受信部15は、情報端末20との間で送受信される電波信号について、伝播時間の算出に加えてもしくは代えて、受信した電波信号の到来方向を算出しても良い。アンテナ13が、複数のアンテナ素子からなるアンテナアレイとして構成される場合、複数のアンテナ素子にて受信される電波信号の位相差から電波信号の到来方向を算出することができる。信号受信部15は、情報端末20との間で送受信される電波信号に関する伝播時間及び/又は到来方向を位置判定部16に出力する。一方、信号受信部15は、ユーザの体によって反射される電波信号に関しては、反射電波信号の伝播時間の他に、反射電波信号の受信信号そのものを示す受信信号のデータをジェスチャ検出部18に出力する。
【0028】
なお、UWB通信を介して、情報端末20の認証用データが送信される場合は、信号受信部15は、情報端末20の電波の受信信号から得られる複数のインパルス信号からなるパルス系列信号からベースバンドパルス信号を復元する。信号受信部15は、復元したベースバンドパルス信号を解錠制御部11に提供する。これにより、解錠制御部11は、情報端末20からの認証用データを取得することができる。
【0029】
位置判定部16は、車両の複数箇所に設けられた複数の信号受信部15から、情報端末20との間で送受信される電波信号の伝播時間及び/又は到来方向を受け取り、それら複数の伝播時間及び/又は到来方向に基づいて、情報端末20の位置を取得する。例えば、位置判定部16は、情報端末20との間で送受信される電波信号の伝播時間に基づいて、車両の各所に設けられた各々のアンテナ13から情報端末20までの距離を算出する。このように、複数のアンテナ13から情報端末20までの距離が算出できれば、いわゆる三辺測量法などにより、車両に対する情報端末20の位置を求めることができる。あるいは、位置判定部16は、情報端末20から送信される電波信号の複数のアンテナ13の各々への到来方向に基づいて、いわゆる三角測量法などにより、車両に対する情報端末20の位置を求めることも可能である。
【0030】
位置判定部16は、求めた情報端末20の位置が、車両を基準とする所定のエリア内に属しているか否かを判定する。情報端末20の位置が所定のエリア内に属していると判定すると、位置判定部16は、受信バッファ14の受信信号の保持機能をオンする。同時に、位置判定部16は、タッチセンサ17及びジェスチャ検出部18の作動を開始させる。
【0031】
タッチセンサ17は、例えば、車両のドアハンドルに設けられ、ユーザがドアハンドルに触れていることを検出するセンサである。なお、タッチセンサ17に代えて、車両のドアハンドルに、ユーザによって操作可能なボタンを設けても良い。
【0032】
ジェスチャ検出部18は、上述したように、信号受信部15から反射電波信号の伝播時間の他に、反射電波信号の受信信号そのものを示す受信信号のデータを受け取る。なお、反射電波信号の伝播時間は、例えば、電波信号の送信開始から電波信号の受信開始までの時間である。ジェスチャ検出部18は、受信信号に基づいて、ユーザが体を動かしたときの、その動かした体の部分の速度を算出する。例えば、ジェスチャ検出部18は、受信信号に周波数解析を行うことにより、送信した電波信号のドップラーシフトによる周波数変化を検出し、その周波数変化からユーザが動かした体の部分の速度を算出することができる。具体的には、受信信号にフーリエ変換を実施して、受信信号の周波数分布を得る。そして、求めた周波数分布の有意なピークに基づき、ドップラーシフトによる周波数変化を検出する。そして、周波数変化の大きさに基づいて、動いている体の部分の速度を示す速度値を算出することができる。ユーザが所定のジェスチャを行う間に受信された反射電波の受信信号から求めた複数の速度値は、まとめて速度データと称される。速度データに含まれる複数の速度値は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に動かした体の部分の速度の変化に応じた速度範囲に分散する。なお、受信信号の周波数解析を行うために、上述したフーリエ変換以外の手法を用いても良い。
【0033】
加えて、ジェスチャ検出部18は、信号受信部15から受け取った反射電波信号の伝播時間に基づいて、上述した速度値に対応付けられるユーザの体までの距離を示す距離値を算出する。ユーザが所定のジェスチャを行う間に受信された反射電波の伝播時間から求めた複数の距離値は、まとめて距離データと称される。さらに、ジェスチャ検出部18は、受信信号の信号レベルに基づいて、上述した速度値及び距離値に対応付けられる信号強度を算出する。すなわち、速度値、距離値、及び信号強度が相互に対応付けられる。ユーザが所定のジェスチャを行う間に受信された反射電波の受信信号から求めた複数の信号強度は、信号強度データと称される。
【0034】
このようにして、ジェスチャ検出部18は、ユーザの体で反射された反射電波に基づいて、相互に対応付けられる、ユーザの体までの距離を示す距離値、ユーザの体の動く速度を示す速度値、および信号強度を算出することができる。そして、ジェスチャ検出部18は、ユーザがジェスチャを開始してから終了するまでの期間に渡る、距離値の距離データ、速度値の速度データ、及び信号強度の信号強度データの算出結果に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する。
【0035】
図2及び
図3は、上述した距離データ、速度データ、及び信号強度データの算出結果をまとめたグラフである。
図2及び
図3のグラフにおいて、横軸は距離、縦軸は速度、データの濃淡が信号強度を表している。速度は、アンテナ13に接近する動きの速度の符号を正、アンテナ13から離れる動きの速度の符号を負として示している。
【0036】
図2及び
図3のグラフについて説明すると、
図2のグラフは、アンテナ13から約1mの距離に位置するユーザがかかとを上げつつタップを踏むジェスチャを行った場合の、距離データ、速度データ、及び信号強度データの算出結果を示している。また、
図3のグラフは、アンテナ13から約1mの距離に位置するユーザがお辞儀をするジェスチャを行った場合の、距離データ、速度データ、及び信号強度データの算出結果を示している。
【0037】
図2において、約0.7~1.2mの距離範囲、及び約0.2~0.6m/sの正負の速度範囲に、相対的に信号強度の高いデータの集まりが確認できる。これは、ユーザがかかと上げタップを踏むジェスチャを行うことで、ユーザの脚部が前後に移動して、ユーザの脚部がアンテナ13に接近したり、離間したりするためである。また、
図3のグラフにおいては、約0.7~1.5mの距離範囲、及び約0.1~0.3m/sの正の速度範囲に、相対的に信号強度の高いデータの集まりが確認できる。これは、ユーザがお辞儀するジェスチャを行うことで、アンテナ13との距離が短くなるようにユーザの上半身が移動するためである。
【0038】
図2及び
図3のグラフに示すように、ユーザが所定のジェスチャを行う間にユーザの体の各部で反射される反射電波に基づいて算出される、ユーザの体の各部までの距離を示す距離値の距離データ、ユーザの体が動く速度を示す速度値の速度データ、及び、距離値と速度値に対応付けられる信号強度の信号強度データの算出結果から、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出することができる。
【0039】
車両制御装置10の解錠判定部19は、タッチセンサ17による検出結果、およびジェスチャ検出部18による検出結果に基づいて、車両のドアやトランクを解錠するか否かを判定する。例えば、解錠判定部19は、タッチセンサ17によってユーザがドアハンドルに触れていることが検出されると、ユーザはドアを開扉する意志を有しているとみなし、車両のドアを解錠するよう解錠制御部11に指示する。また、解錠判定部19は、ジェスチャ検出部18によってユーザが所定の行ったジェスチャが検出された場合も、車両ドアを解錠するよう解錠制御部11に指示する。解錠制御部11は、解錠判定部19からの解錠指示に応じて、車両ドアの解錠制御を実行する。
【0040】
次に、情報端末20について説明する。情報端末20は、車両制御装置10を搭載する車両に対する電子キーとしての役割を果たす。情報端末20が電子キーとして機能するためには、車両制御装置10が、情報端末20が保有する認証用データに基づいて、情報端末20を認証する必要がある。そのため、車両制御装置10は、情報端末20と無線通信を行い、情報端末20から認証用データを取得して、情報端末20の認証の可否を判定する。情報端末20は、認証用データを、事前にサーバなどから取得して、例えば信号制御部23のメモリなどに保持しておくことができる。なお、認証用データには、有効期限が設定されてもよい。この場合、車両制御装置10は、認証用データが有効期限内であることを条件として、情報端末20を認証する。
【0041】
情報端末20は、
図1に示すように、アンテナ21、信号受信部22、信号制御部23、および信号送信部24を備える。信号制御部23は、たとえばCPU、RAM、およびROM等を備えた、コンピュータを用いて実現され得る。
【0042】
情報端末20が、車両制御装置10のアンテナ13から送信された、電波信号(UWB通信のインパルス信号のパルス系列信号など)を受信可能な範囲内に位置している場合、情報端末20は、アンテナ21において電波信号を受信する。受信した電波信号は信号受信部22に出力される。信号受信部22は、電波信号がUWB通信のインパルス信号である場合、複数のインパルス信号からなるパルス系列信号からベースバンドパルス信号を復元する。そして、信号受信部22は、ベースバンドパルス信号を信号制御部23に出力する。
【0043】
信号制御部23は、信号受信部22によって生成されたベースバンドパルス信号に応答するベースバンドパルス信号の送信を信号送信部24に指示する。信号送信部24は、アンテナ21を介して、指示されたベースバンドパルス信号に対応する複数のインパルス信号からなるパルス系列信号を電波信号として車両制御装置10へ向けて送信する。このような電波信号のやりとりを通じて、車両制御装置10の解錠制御部11は、情報端末20から認証用データを取得する。
【0044】
次に、
図4に示すフローチャートを参照して、車両制御装置10が実行する処理の一例を説明する。
図4のフローチャートは、車両が停止して、車両の各ドアがロックされると、開始される。
【0045】
ステップS100において、解錠制御部11は、前回の電波信号の送信から所定時間が経過したか否かを判定する。まだ所定時間が経過していないと判定すると、解錠制御部11は、所定時間が経過するまで、ステップS100の処理を繰り返し実行する。一方、所定時間が経過したと判定すると、解錠制御部11は、ステップS110の処理に進む。
【0046】
ステップS110において、解錠制御部11は、信号送信部12に対して、電波信号の送信を指示する。この指示に応じて、信号送信部12は、アンテナ13を介して電波信号を送信する。ステップS120では、解錠制御部11は、ステップS110にて送信した電波信号に応答する電波信号を情報端末20から受信したか否かを判定する。
【0047】
情報端末20を携帯するユーザが車両に接近していると、車両制御装置10は、情報端末20から電波信号を受信する。この場合、ステップS120の判定結果が「Yes」となり、解錠制御部11は、ステップS130の処理に進む。一方、情報端末20を携帯するユーザが車両に接近していないと、車両制御装置10は情報端末20から電波信号を受信することはできない。この場合、ステップS120の判定結果が「No」となり、解錠制御部11は、ステップS100の処理に戻る。
【0048】
ステップS130において、解錠制御部11は、車両に接近している情報端末20から無線通信を通じて認証用データを取得するとともに、取得した認証用データに基づいて、情報端末20の認証の可否を判定する。さらに、位置判定部16は、情報端末20との間で送受信される電波信号の伝播時間及び/又は情報端末20から送信された電波信号の到来方向に基づいて、情報端末20の位置を検出する。
【0049】
ステップS140において、解錠制御部11は、情報端末20の認証を許可したか否かを判定するとともに、位置判定部16は、情報端末20の位置が車両を基準とする所定のエリア(エントリエリア)内に属するか否かを判定する。解錠制御部11が情報端末20の認証を許可し、かつ位置判定部16が情報端末20の位置は所定のエリア内に属すると判定した場合、ステップS140の判定結果は「Yes」となり、ステップS150の処理が実行される。一方、解錠制御部11が情報端末20の認証を否認する、及び/又は位置判定部16が情報端末20の位置は所定のエリア外と判定すると、ステップS140の判定結果は「No」となり、ステップS160の処理が実行される。
【0050】
ステップS150では、位置判定部16が、受信バッファ14の保持機能をオンさせるとともに、タッチセンサ17及びジェスチャ検出部18の作動を開始させる。ステップS150の処理が終了すると、ステップS170及びS200の処理が並行して実行される。逆に、ステップS160では、車両制御装置10により認証された正規の情報端末20が所定のエリア内に存在しないので、位置判定部16は、受信バッファ14の保持機能をオフさせるとともに、タッチセンサ17及びジェスチャ検出部18の作動を停止させる。ステップS160の処理が終了すると、ステップS100の処理が再び実行される。
【0051】
ステップS170では、ジェスチャ検出部18が、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出したか否かを判定する。ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出した場合、ステップS180に進んで、ジェスチャ検出部18は、タッチセンサ17の作動を停止させる。ユーザは所定のジェスチャを行ってドアの解錠を指示したので、タッチセンサ17はユーザによって使用されないとみなすことができる。そのため、第三者による意図しないドアの解錠を防止するため、タッチセンサ17の作動を停止させるのである。一方、ステップS170において、ジェスチャ検出部18が、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出しないと判定すると、その後も継続して情報端末20の位置の検出及びユーザが所定のジェスチャを行うことの検出のために、ステップS110の処理に戻る。
【0052】
ステップS190では、解錠判定部19が、ジェスチャ検出部18によるユーザのジェスチャの検出に応じて、車両ドアの解錠を解錠制御部11に指示する。解錠制御部11は、この解錠指示に応じて、車両ドアの解錠制御を実行する。なお、ユーザによるジェスチャを検出した場合には、解錠制御部11は、車両ドアの解錠とともに、車両ドアを自動的に開扉するように制御しても良い。
【0053】
ステップS200では、タッチセンサ17が、ドアハンドルに対するユーザの操作(タッチ)を検出したか否かを判定する。ドアハンドルに対するユーザの操作を検出した場合、ステップS210に進んで、タッチセンサ17は、ジェスチャ検出部18の作動を停止させる。一方、ステップS200において、タッチセンサ17が、ドアハンドルに対するユーザの操作を検出しないと判定すると、ステップS110の処理に戻る。ステップS220では、解錠判定部19が、タッチセンサ17によるドアハンドルに対するユーザの操作の検出に応じて、車両ドアの解錠を解錠制御部11に指示する。解錠制御部11は、この解錠指示に応じて、車両ドアの解錠制御を実行する。
【0054】
上述した実施形態において、ジェスチャ検出部18は、位置判定部16によって判定された情報端末の位置を基準とするエリア内において、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するように構成しても良い。これにより、情報端末20を携帯するユーザ以外の第三者の動きを、ユーザが所定のジェスチャを行ったと誤って検出することを防止することができる。例えば、ジェスチャ検出部18は、位置判定部16によって検出された情報端末20の位置の周辺に、ジェスチャ検出対象エリアを設定する。そして、ジェスチャ検出部18は、ジェスチャ検出対象エリアに対応する範囲で、ユーザの体で反射された反射電波に基づき、ユーザの体までの距離を示す距離データ、ユーザの体が動く速度を示す速度データ、および信号強度を示す信号強度データを算出しても良い。このようにすることで、ユーザのジェスチャを検出するための演算処理負荷を大幅に低減することができる。
【0055】
また、上述した実施形態において、ユーザが行う異なるジェスチャを、上述した距離データ、速度データ、及び信号強度データに基づいて識別して、それぞれ異なる制御の実行指示として対応付けてもよい。例えば、上述したかかと上げタップを踏むジェスチャを車両ドアなどの解錠制御の実行指示として対応付ける一方で、お辞儀するジェスチャを、エアコンなどの車載機器の制御の実行指示として対応付けても良い。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本開示の対象物制御装置の第2実施形態を、図面を参照して説明する。まず、本実施形態の対象物制御装置の技術的課題について説明する。
【0057】
上述した第1実施形態における送受信部は、対象物(例えば、車両)へのユーザ(情報端末20)の接近を検知したり、対象物周辺のユーザ(情報端末20)の位置を検知したりするために、アンテナ13から等方的に広がる電波を送信する。このため、対象物に制御実行を指示するユーザのジェスチャが単純なものである場合、例えば、情報端末20を携帯するユーザが単に対象物の近くを通り過ぎるだけの動作と、対象物に制御実行を指示するためにユーザが行うジェスチャとを正確に識別することは困難を伴う。さらに、ユーザ以外の移動物標(例えば、歩行者や動物)の動きを、対象物に制御実行を指示するユーザのジェスチャと誤って検出してしまう虞もある。
【0058】
そこで、本実施形態では、対象物に制御実行を指示するユーザのジェスチャの誤検出を抑制することが可能な対象物制御装置を提供することを目的とする。この目的達成のため、本実施形態の第1態様~第9態様の対象物制御装置は、以下に示すように構成される。
【0059】
[第1態様]
対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10)であって、
前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、
前記送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、
前記反射電波に基づいて、ユーザが所定の反復動作を行ったことを、前記対象物に対するユーザによる制御の実行を指示するジェスチャとして検出するジェスチャ検出部(18)と、を備える対象物制御装置。
【0060】
第1態様の対象物制御装置によれば、ジェスチャ検出部が、ユーザが所定の反復動作を行ったこと、例えば、ユーザの体の一部を連続して往復運動させる動作(足踏み、足のタップ、足の前後又は左右の振り、手の上下又は左右の振り、など)を行ったことを、対象物に対するユーザの制御実行指示のためのジェスチャ(制御実行指示ジェスチャ)として検出する。このような反復動作は、通常、対象物に制御指示を行おうとしているユーザ以外の車両周辺の移動物標によって行われることはない。このため、ユーザの体で反射された反射電波に基づいて、ユーザが反復動作を行ったことを検出することにより、制御実行指示ジェスチャ以外の動きを、誤って制御実行指示ジェスチャとして検出することを抑制することができる。
【0061】
[第2態様]
前記ジェスチャ検出部は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された前記反射電波に基づいて、ユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を算出し、同様の速度範囲を持つ複数の速度値が周期的に繰り返し発生していることに基づいて、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する、第1態様に記載の対象物制御装置。
【0062】
第2態様の対象物制御装置によれば、ユーザが所定のジェスチャを行っている間のユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を用いることで、ユーザが所定の反復動作を周期的に行ったことを高精度に検出することができる。
【0063】
[第3態様]
前記ジェスチャ検出部は、前記反射電波に基づいて、前記速度値に対応付けられる、ユーザの体までの距離を示す距離値を算出し、同様の速度範囲を持つ複数の速度値が周期的に繰り返し発生していることに基づいてユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する際に、周期的に繰り返し発生している複数の速度値に対応付けられる複数の距離値の広がりが所定の距離幅内に収まっていることを、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する条件とする、第2態様に記載の対象物制御装置。
【0064】
第3態様の対象物制御装置によれば、上記のように、周期的に繰り返し発生している複数の速度値に対応付けられる複数の距離値の広がりが所定の距離幅内に収まっていることを条件として、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出する。ユーザが所定の反復動作を行う間、ユーザは一定の位置に留まることが通常である。従って、上述した距離値に関する条件を適用することで、制御実行指示ジェスチャ以外の動きを誤って制御実行指示ジェスチャとして検出する可能性をより低減することができる。
【0065】
[第4態様]
前記ジェスチャ検出部は、同様の速度範囲を持つ複数の速度値が周期的に繰り返し発生していることに基づいてユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する際に、繰り返し算出される複数の速度値の速度範囲が所定の上限速度及び下限速度によって規定される範囲収まっていることを、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する条件とする、第2態様又は第3態様に記載の対象物制御装置。
【0066】
ユーザが所定の反復動作を行うとき、ユーザは、同様の動きを繰り返すように、反復動作の対象となる体の一部を動かす。人間が体の一部を動かす速度には限界がある。従って、第4態様の対象物制御装置のように、所定の反復動作に見合った上限速度及び下限速度を規定することにより、ユーザが所定の反復動作を行ったことをより確実に検出することができる。
【0067】
[第5態様]
同様の速度範囲を持つ複数の速度値が周期的に繰り返し発生しているかの解析を行う際の周期の長さ、速度範囲の幅、及び、前記複数の距離値の広がりを判定する距離幅の少なくとも1つが、前記所定の反復動作の種類に応じて定められる、第3態様に記載の対象物制御装置。
【0068】
第5態様の対象物制御装置によれば、どのような種類の反復動作を、対象物に対する制御実行を指示するジェスチャとして用いたとしても、ユーザが該当する反復動作を行ったことを高精度に検出することができる。
【0069】
[第6態様]
ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された前記反射電波に基づいて、ユーザの体までの距離を示す複数の距離値を算出し、同様の距離範囲を持つ複数の距離値が周期的に繰り返し発生していることに基づいて、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する、第1態様に記載の対象物制御装置。
【0070】
第6態様の対象物制御装置のように、ユーザが所定のジェスチャを行っている間のユーザの体までの距離を示す複数の距離値を用いても、ユーザが所定の反復動作を周期的に行ったことを検出することは可能である。
【0071】
[第7態様]
前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する情報端末の位置を判定する位置判定部(16)を備え、
前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって情報端末の位置を判定可能な検知エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する、第1態様から第6態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0072】
第7態様の対象物制御装置によれば、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部による情報端末の検知エリア内に制限する。位置判定部による検知エリアは、対象物の周辺に定められるので、対象物の周辺を外れた移動物標による動作を、誤ってユーザによる制御実行指示ジェスチャとして検出することを防ぐことができる。
【0073】
[第8態様]
前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する情報端末の位置を判定する位置判定部(16)を備え、
前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準として設定される検出エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する、第1態様から第6態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0074】
第8態様の対象物制御装置によれば、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準として設定される検出エリアに制限する。これにより、情報端末を携帯するユーザ以外の移動物標の動きを、ユーザによる制御実行指示ジェスチャとして誤って検出することをより確実に防ぐことができる。また、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出するための処理が、検出エリアだけを対象として実行されれば良いので、所定の反復動作を行ったことを検出するための処理負荷を軽減することができる。
【0075】
[第9態様]
前記所定の反復動作として、ユーザの体の一部が前記送受信部に対して接近、離間を繰り返す動作を採用し、
前記ジェスチャ検出部は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された前記反射電波に基づいて、ユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を算出し、同様の速度範囲を持つ複数の速度値が周期的に符号を反転させつつ繰り返し発生していることに基づいて、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する、第1態様から第8態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0076】
所定の反復動作として、ユーザの体の一部が送受信部に対して接近、離間を繰り返す動作を採用することにより、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波に基づき算出される、同様の速度範囲を持つ複数の速度値の符号は周期的に反転する。このように同様の速度範囲を持つ複数の速度値の符号が周期的に反転することで、速度データの中から周期的に変化する複数の速度値を抽出しやすくなる。また、複数の速度値が周期的に符号を反転させつつ繰り返し発生する動きは、ユーザが意図的に行う所定の反復動作以外、ほぼ発生しえないと考えられる。このため、第9態様の対象物制御装置のように、ユーザが行う所定の反復動作として、ユーザの体の一部が送受信部に対して接近、離間を繰り返す動作を採用することにより、より高い精度でユーザが所定の反復動作を行ったことを検出することができる。
【0077】
以下、本実施形態による対象物制御装置を、図面を参照して詳しく説明する。なお、本実施形態においても、対象物制御装置を、自動車などの車両の各種の機能を制御する車両制御装置に適用した例を説明する。ただし、適用対象は車両に限られないことは、第1実施形態と同様である。また、本実施形態に係る車両制御装置10と、情報端末20とを含む車両制御システムの構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
図5は、本実施形態における車両制御装置10のジェスチャ検出部18が、ユーザの体で反射された反射電波に基づいて、ユーザが所定の反復動作を行ったことを、対象物に対するユーザによる制御の実行を指示するジェスチャとして検出するための処理を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS300において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが所定のジェスチャを行う間に受信された複数の反射電波信号の受信信号から、それぞれ、ユーザの体の動きの速さを示す複数の速度値を求めることにより、速度データを算出する。この速度データの算出手法は、第1実施形態で説明した手法と同様であるため、説明を省略する。次に、ステップS310において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが所定のジェスチャを行う間に受信された複数の反射電波信号の伝播時間に基づいて、複数の速度値にそれぞれ対応付けられる、ユーザの体までの距離を示す複数の距離値を求めることにより、距離データを算出する。さらに、ステップS320において、ジェスチャ検出部18は、複数の反射電波信号の受信信号の信号レベルに基づいて、上述した複数の速度値及び複数の距離値にそれぞれ対応付けられる複数の信号強度を求め、信号強度データを算出する。これら距離データの算出手法及び信号強度データの算出手法も、第1実施形態で説明した手法と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
ステップS330では、ステップS300で算出した速度データから、所定の強度以上の信号強度が対応付けられた速度値を抽出し、抽出した速度値が、同様の速度範囲を有しつつ、周期的に繰り返し発生しているか否か、すなわち、周期的な速度値データであるか否かを判定する。例えば、
図6のグラフは、ユーザが、反復動作として、かかと上げタップを行ったときの、時間の経過に伴う複数の速度値の変化を示している。ユーザがかかと上げタップを行うと、前述したように、ユーザの脚部がアンテナ13に接近したり、離間したりを繰り返す。この際、ユーザは、通常、同じリズムでかかと上げタップを繰り返すので、ほぼ一定の周期で、ほぼ同様の速度範囲を有する複数の速度値が算出される。すなわち、周期的な速度値データであるか否かは、繰り返し発生する複数の速度値に周期性があるか、および複数の速度値の速度範囲の幅が所定の範囲幅に収まっているか、などにより判定することができる。
【0081】
複数の速度値に周期性があるか判定するには、例えば、
図6のグラフにおいて、所定の強度以上の信号強度が対応付けられた複数の速度値(正の速度値のみ、負の速度値のみ、または正負の速度値)を対象として、周波数解析を行えば良い。
図7は、
図6のグラフに示される、所定強度以上の信号強度が対応付けられた速度値の内、負の速度値を対象として周波数解析(例えば、FFT)を行った結果を示すグラフである。
図7のグラフに示すような周波数解析結果が得られた場合、例えば、最も高いスペクトルパワーを有するピーク値(
図7では、周波数が1.2Hz付近のピーク値)のスペクトルパワーの大きさが所定の大きさ以上であることに基づいて、複数の速度値は周期性を有すると判定することができる。
【0082】
この際、ピーク値の周波数に、ユーザが行うことが予定される反復動作に対応する周波数範囲による制限を設けてもよい。反復動作の種類に応じて、反復動作を繰り返す際の一反復動作に要する時間(周期)の範囲はおおよそ定めることができる。従って、ユーザが行うことが予定されている反復動作に応じた周波数範囲による制限を設けることで、予定される反復動作以外の動作を、ユーザが所定の反復動作を行ったとして誤って検出することを抑制することができる。
【0083】
また、ジェスチャ検出部18は、複数の速度値の速度範囲の幅が所定の範囲幅に収まっているか判定する際に、周期的な速度値データの速度範囲の幅が、ユーザが行うことが予定されている反復動作の速度範囲の幅に見合っているか否かを判定するようにしてもよい。ユーザが体のどの部位をどのように動かすかによって、すなわち、反復動作の種類に応じて、反復動作を繰り返す際に、ユーザが体の部位を動かす速度の変化は異なるためである。
【0084】
ステップS330において、ジェスチャ検出部18は、周期的な速度値データであると判定すると、ステップS340の処理に進む。一方、ジェスチャ検出部18は、周期的な速度値データではないと判定すると、ステップS370の処理に進む。
【0085】
ステップS340では、周期的な速度値データの速度範囲が、所定の上限速度及び下限速度によって規定される範囲に収まっているか否かを判定する。ユーザが所定の反復動作を行うとき、ユーザは、同様の動きを繰り返すように、反復動作の対象となる体の一部を動かす。人間が体の一部を動かす速度には限界がある。従って、ユーザが行う所定の反復動作に見合った上限速度及び下限速度を定め、周期的な速度値データの速度範囲が上限速度及び下限速度によって規定される範囲に収まっているか否かを判定することにより、ユーザが所定の反復動作を行ったことをより確実に検出することができる。
【0086】
ステップS340において、ジェスチャ検出部18は、周期的な速度値データの速度範囲が所定の上限速度及び下限速度によって規定される範囲に収まっていると判定すると、ステップS350の処理に進む。一方、ジェスチャ検出部18は、周期的な速度値データの速度範囲が所定の上限速度及び下限速度によって規定される範囲に収まっていないと判定すると、ステップS370の処理に進む。
【0087】
ステップS350において、ジェスチャ検出部18は、周期的な速度値データの各速度値に対応付けられる複数の距離値の広がりが所定の距離幅内に収まっているか否かを判定する。ユーザが所定の反復動作を行う間、ユーザは一定の位置に留まることが通常である。周期的な速度値データの各速度値に対応付けられる複数の距離値の広がりが所定の距離幅内に収まっているか否かにより、ユーザが一定の位置に留まっているか否かを判別することができる。従って、ステップS350の判定処理を行うことで、ユーザによる反復動作(制御実行指示ジェスチャ)以外の動作を、ユーザによる反復動作として誤って検出する可能性をより低減することができる。なお、上述した距離幅は、ユーザが行うことが予定されている反復動作の種類に応じて定められても良い。反復動作の種類に応じて、ユーザの体が動く距離範囲は変化し得るためである。
【0088】
ステップS350において、ジェスチャ検出部18は、周期的な速度値データの各速度値に対応付けられる複数の距離値の広がりが所定の距離幅内に収まっていると判定すると、ステップS360の処理に進む。一方、ジェスチャ検出部18は、周期的な速度値データの各速度値に対応付けられる複数の距離値の広がりが所定の距離幅内に収まっていないと判定すると、ステップS370の処理に進む。
【0089】
ステップS360において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが制御実行指示ジェスチャに相当する所定の反復動作を行ったことを検出する。一方、ステップS370において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが制御実行指示ジェスチャに相当する所定の反復動作を行ったことを検出しない。ステップS360又はステップS370の処理を実行後に、ジェスチャ検出部18は、
図5のフローチャートに示す処理を終了する。
【0090】
上述した第2実施形態では、周期的な速度値データを用いて、ユーザが所定の反復動作を周期的に行ったことを検出した。しかし、ユーザが所定の反復動作を周期的に行うと、送受信部とユーザの体との距離を示す距離値も周期的に変化する。このため、ジェスチャ検出部18は、反射電波に基づいて算出した、ユーザの体までの距離を示す複数の距離値の周期的な変化に基づいて、ユーザが所定の反復動作を周期的に行ったことを検出することも可能である。
【0091】
また、上述した第2実施形態において、ジェスチャ検出部18は、位置判定部16によって情報端末20の位置を判定可能な検知エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出するように構成しても良い。位置判定部16による検知エリアは、対象物(車両)の周辺をカバーするように定められる。従って、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部16による情報端末20の検知エリア内に制限することにより、対象物の周辺を外れた移動物標による動作を、ユーザが所定の反復動作を行ったとして誤って検出することを防ぐことができる。
【0092】
あるいは、上述した第2実施形態において、ジェスチャ検出部18は、位置判定部16によって判定された情報端末20の位置を基準として設定される検出エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出するように構成しても良い。すなわち、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部16によって判定された情報端末20の位置を基準として設定される検出エリアに制限する。これにより、情報端末20を携帯するユーザ以外の移動物標の動きを、ユーザが所定の反復動作を行ったとして誤って検出することをより確実に防ぐことができる。また、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出するための処理が、検出エリアだけを対象として実行されれば良いので、所定の反復動作を行ったことを検出するための処理負荷を軽減することができる。
【0093】
また、上述した第2実施形態において、所定の反復動作として、ユーザの体の一部が送受信部に対して接近、離間を繰り返す動作を採用してもよい。そして、ジェスチャ検出部18は、ユーザの体で反射された反射電波に基づいて、ユーザの体の動きの速さを示す速度値を算出し、この速度値が周期的に符号を反転させつつ繰り返し発生していることに基づいて、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出するように構成しても良い。
【0094】
所定の反復動作として、ユーザの体の一部が送受信部に対して接近、離間を繰り返す動作を採用することにより、反射電波に基づき算出される速度値の符号は周期的にかつ明確に反転する。このように速度値の符号が周期的に反転することで、速度データの中から周期的な速度値データを抽出しやすくなる。また、複数の速度値が周期的に符号を反転させつつ繰り返し発生する動きは、ユーザが意図的に行う所定の反復動作以外、ほぼ発生しえないと考えられる。このため、ユーザが行う所定の反復動作として、ユーザの体の一部が送受信部に対して接近、離間を繰り返す動作を採用することにより、より高い精度でユーザが所定の反復動作を行ったことを検出することができる。
【0095】
(第3実施形態)
次に、本開示の対象物制御装置の第3実施形態を、図面を参照して説明する。まず、本実施形態の対象物制御装置の技術的課題について説明する。
【0096】
上述した第1実施形態では、ジェスチャ検出部18が、相互に対応付けられた、複数の速度値、複数の距離値、及び複数の信号強度に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するように構成される。ただし、ユーザが所定のジェスチャを行う場合、同じ種類のジェスチャであっても、ユーザの体格、年齢、性別、運動能力などによって、体を動かす速さや体を動かす距離が異なる可能性がある。このため、同じジェスチャを行ったとしても、ユーザ毎に、反射電波信号から算出される複数の速度値、複数の距離値、及び複数の信号強度は異なる可能性がある。この結果、それぞれのユーザが、所定のジェスチャを行ったとしても、対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示として検出されない虞がある。
【0097】
そこで、本実施形態では、ユーザの体格、年齢、性別、運動能力などの相違に係わらず、各ユーザが所定のジェスチャを行った場合に、対象物に対する制御の実行指示として検出することが可能な対象物制御装置を提供することを目的とする。この目的達成のため、本実施形態の第1態様~第9態様の対象物制御装置は、以下に示すように構成される。
【0098】
[第1態様]
対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10A)であって、
前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、
前記送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、
ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、前記所定のジェスチャを特徴付ける特性データを抽出して登録するジェスチャ登録部(30)と、
前記反射電波の受信信号が、前記ジェスチャ登録部によって登録された特性データに相当する特性を有していることに基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、を備え、
前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられる対象物制御装置。
【0099】
第1態様の対象物制御装置は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、前記所定のジェスチャを特徴付ける特性データを抽出して登録するジェスチャ登録部を備えている。そして、ジェスチャ検出部は、ユーザからの反射電波の受信信号が、ジェスチャ登録部によって登録された特性データに相当する特性を有していることに基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する。従って、ユーザの体格、年齢、性別、運動能力などの相違に係わらず、各ユーザが所定のジェスチャを行ったことを精度良く検出することができる。
【0100】
[第2態様]
前記ジェスチャ登録部は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された前記反射電波の受信信号から、ユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を算出するとともに、前記複数の速度値にそれぞれ対応付けられる複数の受信信号の信号強度を算出し、
前記ジェスチャ登録部は、所定以上の信号強度に対応付けられた速度値、当該速度値の分布の広がり、信号強度のピークの個数、信号強度のピークに対応する速度値、及び信号強度のピークの大きさの少なくとも1つを、前記所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして抽出する第1態様に記載の対象物制御装置。
【0101】
ユーザが所定のジェスチャを行う場合、そのジェスチャを行うときのユーザの体の動きの速さは、ユーザ毎に相違する可能性がある。そこで、第2態様の対象物制御装置は、ユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値に関して、所定以上の信号強度に対応付けられた速度値、当該速度値の分布の広がり、信号強度のピークの個数、信号強度のピークに対応する速度値、及び信号強度のピークの大きさの少なくとも1つを、所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして用いる。これにより、登録した特性データに基づいて、各ユーザが行うジェスチャを精度良く検出することができる。
【0102】
[第3態様]
前記ジェスチャ登録部は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された前記反射電波の受信信号に基づいて、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を算出するとともに、前記複数の距離値にそれぞれ対応付けられる複数の受信信号の信号強度を算出し、
前記ジェスチャ登録部は、所定以上の信号強度に対応付けられた距離値、当該距離値の分布の広がり、信号強度のピークの個数、信号強度のピークに対応する距離値、及び信号強度のピークの大きさの少なくとも1つを、前記所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして抽出する第1態様に記載の対象物制御装置。
【0103】
ユーザが所定のジェスチャを行う場合、そのジェスチャを行っている間に、送受信部とユーザの体との間の距離の変化度合いは、ユーザ毎に相違する可能性がある。そこで、第3態様の対象物制御装置は、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値に関して、所定以上の信号強度に対応付けられた距離値、当該距離値の分布の広がり、信号強度のピークの個数、信号強度のピークに対応する距離値、及び信号強度のピークの大きさの少なくとも1つを、所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして用いる。このようにしても、登録した特性データに基づいて、各ユーザが行うジェスチャを精度良く検出することができる。
【0104】
[第4態様]
前記ジェスチャ登録部によって登録された特性データに基づいて、判定用特性データを設定する判定用特性データ設定部(31)をさらに備え、
前記ジェスチャ検出部は、前記反射電波の受信信号から抽出した特性が、前記判定用特性データ設定部によって設定された判定用特性データに合致しているか否かに基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、第1態様から第3態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0105】
同じユーザであっても、体調の変化や服装の相違によって、必ずしも完全に同一のジェスチャを再現できるとは限らない。また、特性データを登録したユーザとは別のユーザが、類似のジェスチャを行う場合もあり得る。第4態様の対象物制御装置によれば、判定用特性データ設定部が、ジェスチャ登録部によって登録された特性データに基づいて、判定用特性データを設定する。このため、同じ又は別のユーザが行うジェスチャが、登録時のものとは多少異なっていても、登録した特性データそのものではなく判定用特性データを用いることで、同じ又は別のユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出することができる。
【0106】
[第5態様]
前記判定用特性データ設定部は、前記判定用特性データを複数設定する、第4態様に記載の対象物制御装置。
【0107】
これにより、例えば、同一のユーザが所定のジェスチャを行うときのユーザの動きにばらつきがあったり、別のユーザによる動きの大きさや速さが異なっていたりしても、同じ又は別のユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出することができる。
【0108】
[第6態様]
前記基準特性データ設定部は、前記ジェスチャ検出部にて過去に前記反射電波の受信信号から抽出された特性データに基づき、当該特性データをカバーするように前記判定用特性データを設定する、第4態様又は第5態様に記載の対象物制御装置。
【0109】
第6態様の対象物制御装置によれば、基準特性データ設定部は、ジェスチャ検出部にて過去に反射電波の受信信号から抽出された特性データに基づいて、当該特性データをカバーするように判定用特性データを学習する。従って、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する精度を高めることができる。
【0110】
[第7態様]
前記ジェスチャ検出部が、前記反射電波の受信信号から抽出した特性データは、前記ジェスチャ登録部によって登録された特性データに相当しないと判定した場合、前記ジェスチャ登録部は、抽出される特性データを前記所定のジェスチャを特徴付ける新たな特性データとして登録する、第1態様から第6態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0111】
同じ又は別のユーザが、登録時とは異なるジェスチャを行ったりした場合などに、ジェスチャ検出部、反射電波の受信信号から抽出した特性データは、ジェスチャ登録部によって登録された特性データに相当しないと判定する場合がある。そのような場合に、第7態様の対象物制御装置によれば、ジェスチャ登録部は、その判定結果を契機として、所定のジェスチャを特徴付ける新たな特性データを登録する。このため、ユーザを煩わせることなく、所定のジェスチャを特徴付ける特性データの登録を行うことができる。
【0112】
[第8態様]
前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する情報端末の位置を判定する位置判定部(16)を備え、
前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって情報端末の位置を判定可能な検知エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する、第1態様から第7態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0113】
第8態様の対象物制御装置によれば、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部による情報端末の検知エリア内に制限する。位置判定部による検知エリアは、対象物の周辺に定められるので、対象物の周辺を外れた移動物標による動作を、誤ってユーザによる制御実行指示ジェスチャとして検出することを防ぐことができる。
【0114】
[第9態様]
前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する情報端末の位置を判定する位置判定部(16)を備え、
前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準として設定される検出エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが前記所定の反復動作を行ったことを検出する、第1態様から第7態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0115】
第9態様の対象物制御装置によれば、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準として設定される検出エリアに制限する。これにより、情報端末を携帯するユーザ以外の移動物標の動きを、ユーザによる制御実行指示ジェスチャとして誤って検出することをより確実に防ぐことができる。また、ユーザが所定の反復動作を行ったことを検出するための処理が、検出エリアだけを対象として実行されれば良いので、所定の反復動作を行ったことを検出するための処理負荷を軽減することができる。
【0116】
以下、本実施形態による対象物制御装置を、図面を参照して詳しく説明する。なお、本実施形態においても、対象物制御装置を、自動車などの車両の各種の機能を制御する車両制御装置に適用した例を説明する。ただし、適用対象は車両に限られないことは、第1実施形態と同様である。
【0117】
図8は、本実施形態に係る車両制御装置10Aと、情報端末20とを含む車両制御システムの構成を示す構成図である。
図8に示すように、車両制御装置10Aは、第1実施形態の車両制御装置10の構成に対して、ジェスチャ登録部30と、判定用特性データ設定部31とが追加されている。
【0118】
ジェスチャ登録部30は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、ユーザが行う所定のジェスチャを特徴付ける特性データを抽出して登録する。以下に、反射電波の受信信号から特性データを抽出して登録するいくつかの例を説明する。
【0119】
ジェスチャ登録部30は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、ユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を算出するとともに、複数の速度値にそれぞれ対応付けられる複数の受信信号の信号強度を算出する。複数の速度値の算出手法及び複数の信号強度の算出手法は、第1実施形態にて説明した、ジェスチャ検出部18におけるそれぞれの算出手法と同様である。
【0120】
次に、ジェスチャ登録部30は、例えば、所定以上の信号強度に対応付けられた速度値を抽出して、抽出した速度値を、対応付けられる信号強度とともに特性データとして登録する。あるいは、ジェスチャ登録部30は、
図9に示すように、所定以上の信号強度に対応付けられた速度値の分布の広がり(例えば、ピーク半値幅又は最小速度値から最大速度値までの幅)、ピークの個数、最も大きなピークに対応する速度値(例えば、ピーク中央値に対応する速度値)、及びピークの大きさ(ピーク最大値)の少なくとも1つを、所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして登録しても良い。速度値の分布におけるピークは、例えば、ピーク判定閾値以上の信号強度に対応付けられる速度値が所定区間連続して現れる部分をピークとして検出することができる。
【0121】
ユーザが所定のジェスチャを行う場合、そのジェスチャを行うときのユーザの体の動きの速さは、ユーザ毎に相違する可能性がある。上記のように、ユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値に関して、所定以上の信号強度に対応付けられた速度値、その分布の広がり、ピークの個数、最も大きなピークに対応する速度値、及びピークの大きさの少なくとも1つを、所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして用いることにより、登録した特性データに基づいて、各ユーザが行うジェスチャを精度良く検出することができるようになる。
【0122】
あるいは、ジェスチャ登録部30は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号に基づいて、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を算出するとともに、複数の距離値にそれぞれ対応付けられる複数の受信信号の信号強度を算出してもよい。複数の距離値の算出手法及び複数の信号強度の算出手法は、第1実施形態にて説明した、ジェスチャ検出部18におけるそれぞれの算出手法と同様である。
【0123】
次に、ジェスチャ登録部30は、例えば、所定以上の信号強度に対応付けられた距離値を抽出して、抽出した距離値を、対応付けられる信号強度とともに特性データとして登録してもよい。あるいは、ジェスチャ登録部30は、
図9に示すように、所定以上の信号強度に対応付けられた距離値の分布の広がり(例えば、ピーク半値幅又は最小距離値から最大距離値までの幅)、ピークの個数、最も大きなピークに対応する距離値(例えば、ピーク中央値に対応する距離値)、及びピークの大きさ(ピーク最大値)の少なくとも1つを、所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして登録しても良い。距離値の分布におけるピークは、例えば、ピーク判定閾値以上の信号強度に対応付けられる距離値が所定区間連続して現れる部分をピークとして検出することができる。
【0124】
ユーザが所定のジェスチャを行う場合、そのジェスチャを行っている間に、アンテナ13とユーザの体との間の距離の変化度合いは、ユーザ毎に相違する可能性がある。上記のように、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値に関して、所定以上の信号強度に対応付けられた距離値、その分布の広がり、ピークの個数、最も大きなピークに対応する距離値、及びピークの大きさの少なくとも1つを、所定のジェスチャを特徴付ける特性データとして用いることにより、登録した特性データに基づいて、各ユーザが行うジェスチャを精度良く検出することができるようになる。
【0125】
ジェスチャ登録部30は、例えば、情報端末20を通じたユーザの指示に基づいて、ユーザが行う所定のジェスチャを特徴付ける特性データを抽出して登録してもよい。あるいは、ジェスチャ検出部18が、反射電波の受信信号から抽出した特性データは、ジェスチャ登録部30によって登録された特性データに相当しない、より具体的には、後述する判定用特性データ設定部31によって設定された判定用特性データに合致しないと判定した場合に、ジェスチャ登録部30は、抽出される特性データを所定のジェスチャを特徴付ける新たな特性データとして登録してもよい。これにより、同じユーザが、登録時とは異なるジェスチャを行ったり、別のユーザがジェスチャを行ったりした場合などに、ジェスチャ登録部30は、所定のジェスチャを特徴付ける特性データを新たに登録することができる。このため、ユーザを煩わせることなく、ジェスチャ登録部30に所定のジェスチャを特徴付ける特性データの登録を行うことができる。
【0126】
なお、上述したケースにおいて、ジェスチャ登録部30は、行われたジェスチャを特徴付ける特性データを登録しつつ、その旨の通知をユーザの情報端末20に送信してもよい。あるいは、行われたジェスチャを特徴付ける特性データを新たに登録するため、同じジェスチャを再度行うようにユーザに通知してもよい。これにより、ユーザは、ジェスチャを特徴付ける特性データが新たに登録されたこと、あるいは、ジェスチャを特徴付ける特性データを新たに登録するために、再度のジェスチャが必要であることを認識することができ、ユーザが意図しない特性データの登録を防止することができる。
【0127】
ここで、ユーザが行うジェスチャ(動作)に応じて、反射電波の受信信号から、どのような特性が得られるかについて説明する。例えば、
図10(a)に示すように、送受信部の視線方向に沿って、体の一部を前後に動かす動作は、
図10(b)に示すように、距離値の広がりよりも速度値の広がりが大きい分布が得られる傾向がある。これは、例えば、
図10(a)に示すように、ユーザが送受信部の視線方向に沿って脚部を前後させる場合、動き初めと動き終わりの速度は低くなるが、脚部を動かしている途中の速度は高くなるので、速度の変化の範囲が大きくなるためである。一方、ユーザは、片方の脚部を前後させるとき、もう片方の脚部は一定の位置に留まるので、距離の変化は小さくなるためである。
【0128】
また、
図11(a)に示すように、送受信部の視線方向と垂直な面内方向に体の一部を動かす動作は、
図11(b)に示すように、速度値の広がりよりも距離値の広がりが大きい分布が得られる傾向がある。これは、送受信部の視線方向に沿った速度変化が生じにくくなり、かつ多重反射や複数反射位置の距離を測定しているからであると考えられる。
【0129】
さらに、
図12に示すように、ユーザが行うジェスチャの種類によっても、速度値の広がり及び距離値の広がりは異なる。例えば、
図12に示すように、足でタップを踏む動作の距離値の広がりの幅の一例は92.6cm、速度値の広がりの幅の一例は0.56m/sである。ユーザが上体全体を前に動かしてお辞儀する動作の距離値の広がりの幅の一例は200cm、速度値の広がりの幅の一例は0.28m/sである。ユーザが片方の脚部を前後に動かす動作の距離値の広がりの幅の一例は92.7cm、速度値の広がりの幅の一例は1m/sである。
【0130】
これら速度値の広がり及び速度値の広がりの範囲は、個々のユーザの動作の大きさや速度に大きく依存する。動作が大きく、速いほどそれぞれの広がりの幅は大きくなる傾向がある。例えば、ユーザが送受信部の視線方向に沿って片方の脚部を前後させる場合、動作の小さい人であれは、速度値の広がりの幅は、
図13(a)に示すように、0.1~1m/s程度に留まるが、動作の大きい人であれば、速度値の広がりの幅は、
図13(b)に示すように、0.1~2.5m/s程度まで拡大する。
【0131】
このように、ユーザが行う動作の向き、種類、大きさ、速さなどが異なると、その動作を特徴づける特性データも変化する。そのため、本実施形態では、上述したように、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、ユーザが行う所定のジェスチャを特徴付ける特性データを抽出して登録するジェスチャ登録部30を設けている。
【0132】
しかしながら、ユーザが所定のジェスチャを行ったときの反射電波の受信信号の特性を、ジェスチャ登録部30が登録した特性データそのものと対比しても、必ずしも、受信信号の特性が登録した特性データと合致するとは限らない。なぜなら、同じユーザであっても、体調の変化や服装の相違などによって、必ずしも完全に同一のジェスチャを再現できるとは限らないためである。また、車両を使用するユーザが異なると、同じジェスチャであっても、特性データがずれる場合がありえるためである。
【0133】
このような点を考慮して、本実施形態の車両制御装置10Aは、判定用特性データ設定部31を備えている。判定用特性データ設定部31は、ジェスチャ登録部30によって登録された特性データに基づいて、判定用特性データを設定する。この判定用特性データは、ユーザが所定のジェスチャを行ったときの特性データが、登録された特性データと多少ずれても、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出できるようにするためのものである。
【0134】
例えば、ユーザが所定のジェスチャとして、ユーザが送受信部の視線方向に沿って片方の脚部を前後させる動作を行う場合、
図13(a)、(b)を用いて説明したように、同じ動作であっても、ユーザが異なれば、速度値の範囲幅が大きくずれる場合がある。そのため、判定用特性データ設定部31は、あるユーザのジェスチャに応じて登録された特性データに基づいて、その特性データを調整して判定用特性データを設定する。例えば、速度値の広がりを特性データとする場合であって、登録された特性データが0.1~1m/sの広がりを持っている場合、上述した距離値の広がり、ピークの個数などの特性から動作の種類を判定し、その判定した動作の種類に応じて、例えば、0.1~1m/s、0.1~1.5m/s、0.1~2.0m/s、0.1~2.5m/s、0.1~3.0m/sの5つの判定用特性データを設定する。なお、動作の種類に関しては、例えばいくつかの選択肢をユーザの情報端末20に表示させ、その中からユーザに指定させるなどして、動作の種類を示す情報をユーザから取得することも可能である。判定用特性データ設定部31によって設定された判定用特性データは、ジェスチャ検出部18に提供される。
【0135】
ジェスチャ検出部18は、反射電波の受信信号から抽出した特性について、判定用特性データ設定部31によって設定された複数の判定用特性データと対比して、複数の判定用特性データに対する一致率をそれぞれ算出する。そして、ジェスチャ検出部18は、比較結果の中で最も一致率が高い比較結果を選択し、その選択した比較結果の一致率が所定比率を超えている場合、反射電波の受信信号から抽出した特性データは判定用特性データに合致しているとみなし、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する。
【0136】
例えば、
図14(a)は、約0.3~0.8m/sの速度値の広がりを特性データとして登録した例を示している。それに対して、
図14(b)に示すように、反射電波の受信信号から、約0.3~2.5m/sまでの広がりを持つ複数の速度値が得られたとする。この場合、登録された特性データをそのまま測定された複数の速度値と対比すると、
図14(c)に示すように、一致率は14%にすぎない。一方、上述したように、速度の広がりを変化させることで、
図14(d)に示すように、一致率は45.9%まで向上する。なお、
図14(c)、(d)に示す例では、反射電波の受信信号から算出した複数の速度値を、登録した速度値の広がりと対比したが、複数の速度値から速度値の広がりを求めて、速度値の広がり同士を対比してもよい。
【0137】
このように、判定用特性データ設定部31が、登録された特性データに基づいて、複数の判定用特性データを設定することにより、同一のユーザが所定のジェスチャを行うときのユーザの動きにばらつきがあったり、登録を行ったユーザとは別のユーザが所定のジェスチャを行ったりした場合であっても、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出することができる。
【0138】
また、判定用特性データ設定部31は、ジェスチャ検出部18にて過去に反射電波の受信信号から抽出された特性データに基づき、当該特性データをカバーするように判定用特性データを設定する(例えば、設定済みの判定用特性データを修正する、または新たな判定用特性データを追加する)ように構成しても良い。このように構成することにより、判定用特性データ設定部31は、過去に反射電波の受信信号から抽出された特性データを用いて判定用特性データを学習することができる。従って、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する精度を高めることができる。
【0139】
図15は、本実施形態における車両制御装置10Aのジェスチャ検出部18、ジェスチャ登録部30、及び判定用特性データ設定部31による特性データの抽出、判定用特性データの設定、および判定用特性データに基づくジェスチャが行われたことの検出などの処理を示すフローチャートである。以下、
図15のフローチャートを参照して、ジェスチャ検出部18、ジェスチャ登録部30、及び判定用特性データ設定部31の動作を説明する。
【0140】
最初のステップS400では、ジェスチャ登録部30が、ユーザの操作により、又は後述するステップS490の処理により、特性データの登録が指示されたか否かを判定する。特性データの登録が指示されたと判定すると、ジェスチャ登録部30は、ステップS410の処理に進む。一方、特性データの登録が指示されていないと判定すると、ジェスチャ検出部18がステップS440の処理を実行する。
【0141】
ステップS410において、ジェスチャ登録部30は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、ユーザが行った所定のジェスチャを特徴付ける特性データを抽出して登録する。次に、ステップS420において、判定用特性データ設定部31が、登録された特性データに基づいて、判定用特性データを設定する。そして、ステップS430において、判定用特性データ設定部31は、設定した判定用特性データをジェスチャ検出部18へ出力する。
【0142】
ステップS440では、ジェスチャ検出部18が、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、判定用特性データと対比するための特性データを算出する。そして、ジェスチャ検出部18は、ステップS450において、算出した特性データと、判定用特性データとを対比する。ステップS460では、ジェスチャ検出部18が、例えば、算出した特性データと判定用特性データとの一致率に基づいて、算出した特性データが判定用特性データに合致するか否かを判定する。合致していると判定した場合、ジェスチャ検出部18は、ステップS470の処理に進んで、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する。そして、ジェスチャ検出部18は、ステップS480において、その検出結果を解錠判定部19に出力する。一方、合致していないと判定した場合、ジェスチャ検出部18は、ステップS490の処理に進んで、ジェスチャ登録部30に対して、特性データの登録を指示する。なお、ジェスチャ検出部18は、ジェスチャ登録部30に対しての特性データの登録指示を、同様の特性データが複数回抽出されたときに行っても良い。
【0143】
第3実施形態の車両制御装置10Aは、上述したように、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に受信された反射電波の受信信号から、所定のジェスチャを特徴付ける特性データを抽出して登録するジェスチャ登録部30を備えている。そして、ジェスチャ検出部18は、ユーザからの反射電波の受信信号が、ジェスチャ登録部30によって登録された特性データに相当する特性を有していることに基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する。従って、ユーザの体格、年齢、性別、運動能力などの相違に係わらず、各ユーザが所定のジェスチャを行ったことを精度良く検出することができる。
【0144】
上述した第3実施形態において、ジェスチャ検出部18は、位置判定部16によって情報端末20の位置を判定可能な検知エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するように構成しても良い。位置判定部16による検知エリアは、対象物(車両)の周辺をカバーするように定められる。従って、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部16による情報端末20の検知エリア内に制限することにより、対象物の周辺を外れた移動物標による動作を、ユーザが所定のジェスチャを行ったとして誤って検出することを防ぐことができる。
【0145】
あるいは、上述した第3実施形態において、ジェスチャ検出部18は、位置判定部16によって判定された情報端末20の位置を基準として設定される検出エリア内の物標から得られた反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するように構成しても良い。すなわち、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する検出範囲を、位置判定部16によって判定された情報端末20の位置を基準として設定される検出エリアに制限する。これにより、情報端末20を携帯するユーザ以外の移動物標の動きを、ユーザが所定のジェスチャを行ったとして誤って検出することをより確実に防ぐことができる。また、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するための処理が、検出エリアだけを対象として実行されれば良いので、所定のジェスチャを行ったことを検出するための処理負荷を軽減することができる。
【0146】
(第4実施形態)
次に、本開示の対象物制御装置の第4実施形態を、図面を参照して説明する。まず、本実施形態の対象物制御装置の技術的課題について説明する。
【0147】
上述した第1実施形態~第3実施形態のように、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出して、対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示として用いる場合に、ジェスチャを行ったユーザの位置を正確に検出することは重要である。例えば、対象物が車両であって、ジェスチャの検出に応答して車両ドアを解錠して開扉する場合、正確なユーザの位置が検出できていれば、ユーザに最も近い車両ドアを対象として解錠及び開扉することが可能になる。しかしながら、ジェスチャを行うユーザが、必ずしも情報端末20を携帯しているとは限らない。例えば、情報端末20を携帯しているユーザ以外の、同乗者であるユーザが、荷物を車両のトランクに載せるため、あるいは助手席ドアを解錠及び開扉させるために、所定のジェスチャを行うこともありえる。
【0148】
そこで、本実施形態では、情報端末20を携帯しているか否かに拘らず、ジェスチャを行ったユーザの位置を検出して、そのユーザの位置に応じた制御を実行することが可能な対象物制御装置を提供することを目的とする。この目的達成のため、本実施形態の第1態様~第9態様の対象物制御装置は、以下に示すように構成される。
【0149】
[第1態様]
対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10B)であって、
前記対象物に設けられ、携帯可能な情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する複数の送受信部(12~15)と、
前記複数の送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、
前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、
前記複数の送受信部にて受信された反射電波に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定し、その選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定する位置特定部(32)と、を備え
前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物に対する、前記位置特定部によって特定されるユーザ位置に応じた制御の実行指示の検出として用いられる対象物制御装置。
【0150】
第1態様の対象物制御装置は、複数の送受信部にて受信された反射電波に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定し、その選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定する位置特定部を備えている。このため、第1態様の対象物制御装置によれば、情報端末20を携帯しているか否かに拘らず、所定のジェスチャを行ったユーザの位置を検出することができる。従って、ユーザは所定のジェスチャを行うことで、自身の位置に応じた制御の実行を指示することができる。
【0151】
[第2態様]
前記位置特定部は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、前記選定された2つの送受信部にて受信された前記反射電波の受信信号からユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を、前記選定された2つの送受信部ごとに算出し、前記選定された2つの送受信部ごとに算出された前記複数の速度値の時間変動の位相差から、ユーザの位置を特定する、第1態様に記載の対象物制御装置。
【0152】
ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の受信信号からユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を、選定された2つの送受信部ごとに算出すると、電波の送受信に要する伝播時間に相違がある場合、選定された2つの送受信部ごとに算出される複数の速度値の時間変動には、伝播時間の相違に応じた位相差が生じる。従って、この位相差に基づいて、2つの送受信部に対する相対的なユーザの位置を特定することができる。
【0153】
[第3態様]
前記位置特定部は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、前記選定された2つの送受信部にて受信された前記反射電波の受信信号から、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を、前記選定された2つの送受信部ごとに算出し、前記選定された2つの送受信部ごとに算出された前記複数の距離値の時間変動の位相差から、ユーザの位置を特定する、第1態様に記載の対象物制御装置。
【0154】
ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の受信信号から、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を、選定された2つの送受信部ごとに算出すると、電波の送受信に要する伝播時間に相違がある場合、選定された2つの送受信部ごとに算出される複数の速度値の時間変動には、伝播時間の相違に応じた位相差が生じる。従って、この位相差に基づいて、2つの送受信部に対する相対的なユーザの位置を特定することができる。
【0155】
[第4態様]
前記位置特定部は、前記ジェスチャ検出部によってユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出されると、前記選定された2つの送受信部における、ユーザの体で反射される電波の伝播時間の相違から、ユーザの位置を特定する第1態様に記載の対象物制御装置。
【0156】
第4態様の対象物制御装置のように、選定された2つの送受信部における、ユーザの体で反射される電波の伝播時間の相違から、ユーザの位置を特定することも可能である。
【0157】
[第5態様]
前記位置特定部は、前記複数の速度値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定する、第2態様に記載の対象物制御装置。
【0158】
ユーザが、2つの送受信部の間で所定のジェスチャを行うとき、そのジェスチャによる動きが、2つの送受信部に対して対称的となる場合がある。このような場合、2つの送受信部で受信される反射電波の受信信号から算出される複数の速度値の時間変動の位相は、180度に近いずれを示す。このため、複数の速度値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定することができる。
【0159】
[第6態様]
前記位置特定部は、前記複数の距離値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定する、第3態様に記載の対象物制御装置。
【0160】
ユーザが、2つの送受信部の間で所定のジェスチャを行うとき、そのジェスチャによる動きが、2つの送受信部に対して対称的となる場合がある。このような場合、2つの送受信部で受信される反射電波の受信信号から算出される複数の距離値の時間変動の位相は、180度に近いずれを示す。このため、複数の距離値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定することができる。
【0161】
[第7態様]
前記位置特定部は、前記複数の送受信部における、前記反射電波の受信信号の強度及び/又はユーザの体で反射される電波の伝播時間に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定する、第1態様から第6態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0162】
ユーザからの距離に応じて、反射電波の受信信号の強度及び/又はユーザの体で反射される電波の伝播時間が変化するので、反射電波の受信信号の強度及び/又はユーザの体で反射される電波の伝播時間に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定することが可能である。
【0163】
[第8態様]
前記対象物は車両であり、前記車両において行われる制御は、前記位置特定部によって特定されるユーザ位置に最も近い車両の開閉部の開閉である、第1態様から第7態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0164】
この場合、ユーザは、開閉しようとする開閉部(ドア、トランク、ボンネットなど)の近くで所定のジェスチャを行うことによって、開閉部の開閉を指示することができる。
【0165】
[第9態様]
ユーザは、所定のジェスチャにより開閉可能な開閉部を事前に登録することが可能である、第8態様に記載の対象物制御装置。
【0166】
例えば、車両を使用するユーザが、一人で車両に乗車することが多い場合は、助手席側の車両ドアをジェスチャによる開閉可能な開閉部として登録しないことで、ユーザが意図しない開閉部の開閉を防止することができ、セキュリティを高めることができる。
【0167】
以下、本実施形態による対象物制御装置を、図面を参照して詳しく説明する。なお、本実施形態においても、対象物制御装置を、自動車などの車両の各種の機能を制御する車両制御装置に適用した例を説明する。ただし、適用対象は車両に限られないことは、第1実施形態と同様である。
【0168】
図16は、本実施形態に係る車両制御装置10Bと、情報端末20とを含む車両制御システムの構成を示す構成図である。
図16に示すように、車両制御装置10Bは、第1実施形態の車両制御装置10の構成に対して、位置特定部32が追加されている。
【0169】
位置特定部32は、車両の複数箇所(例えば、車両の四隅)に設けられた複数の送受信部にて受信された反射電波に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定し、その選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定する。以下、位置特定部32における、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定する選定手法、及び選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定する特定手法について詳しく説明する。
【0170】
まず、位置特定部32における、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定する選定手法について説明する。位置特定部32は、ジェスチャ検出部18によってユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出されると、相対的にユーザから近い2つの送受信部の選定を行う。例えば、位置特定部32は、複数の送受信部にて受信された反射電波の受信信号の強度及び/又はユーザの体で反射される電波の伝播時間に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定することができる。ユーザから各送受信部までの距離に応じて、反射電波の受信信号の強度及び/又はユーザの体で反射される電波の伝播時間は変化する。このため、反射電波の受信信号強度が相対的に高い2つの送受信部、及び/又はユーザの体で反射される電波の伝播時間が相対的に短い2つの送受信部を選択することにより、位置特定部32は、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定することができる。
【0171】
追加的に、あるいは、代替的に、位置特定部32は、複数の送受信部に関して、ジェスチャ検出部18から、ユーザが所定のジェスチャを行っている間の、ユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を含む速度データの算出結果を取得する。なお、位置特定部32は、自身で速度データの算出を行っても良い。そして、位置特定部32は、複数の速度値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定してもよい。
【0172】
ユーザが、2つの送受信部の間の位置で所定のジェスチャを行うとき、そのジェスチャによる動きが、
図17(a)に例示するように、2つの送受信部に対して対称的となる場合がある。このような場合、2つの送受信部で受信される反射電波の受信信号から算出される複数の速度値は、
図17(b)に例示するように、周期的に正負の符号が反転するように変動するとともに、
図17(c)に示すように、複数の速度値の時間変動の位相が、180度に近いずれを示す。このため、複数の速度値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定することができる。なお、選定される2つの送受信部は、複数の送受信部の車両への配置にもよるが、車両において隣接して配置されている組み合わせに制限されてもよい。
【0173】
もしくは、位置特定部32は、複数の送受信部に関して、ジェスチャ検出部18から、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を含む距離データの算出結果を取得しても良い。位置特定部32は、自身で距離データの算出を行うこともできる。そして、位置特定部32は、複数の距離値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定してもよい。ユーザが、
図17(a)に示すような、2つの送受信部に対して対称的となるジェスチャを行う場合、その2つの送受信部の受信信号からそれぞれ算出される複数の距離値の時間変動も、複数の速度値の時間変動と同様に、180度に近いずれを示す。このため、複数の距離値の時間変動の位相差が最も180度に近い2つの送受信部を、相対的にユーザから近い2つの送受信部として選定することができる。
【0174】
次に、位置特定部32における、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定する特定手法について説明する。例えば、位置特定部32は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の受信信号から算出されたユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値の時間変動の位相差から、ユーザの位置を特定することができる。ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の受信信号からユーザの体の動きの速さの変化に応じた複数の速度値を、選定された2つの送受信部ごとに算出すると、電波の送受信に要する伝播時間に相違がある場合、選定された2つの送受信部ごとに算出される複数の速度値の時間変動には、伝播時間の相違に応じた位相差が生じる。例えば、2つの送受信部のちょうど中間位置でユーザがジェスチャを行った場合には、
図17(c)に示すように、2つの送受信部ごとに算出される複数の速度値の時間変動の位相差は180度となる。180度からの位相差のずれの大きさにより、ユーザがジェスチャを行った位置が、どちらの送受信部にどれだけ近いのかを把握することができる。このようにして、2つの送受信部ごとに算出される複数の速度値の時間変動の位相差に基づいて、2つの送受信部に対する相対的なユーザの位置を特定することができる。
【0175】
あるいは、位置特定部32は、ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の受信信号からそれぞれされた、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値の時間変動の位相差から、ユーザの位置を特定することもできる。ユーザが所定のジェスチャを行っている間に、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の受信信号から、ジェスチャを行っている間に変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を、選定された2つの送受信部ごとに算出すると、電波の送受信に要する伝播時間に相違がある場合、選定された2つの送受信部ごとに算出される複数の距離値の時間変動には、複数の速度値の時間変動と同様に、伝播時間の相違に応じた位相差が生じる。従って、選定された2つの送受信部ごとに算出される複数の距離値の時間変動の位相差に基づいて、2つの送受信部に対する相対的なユーザの位置を特定することができる。
【0176】
さらに、位置特定部32は、選定された2つの送受信部における、ユーザの体で反射される電波の伝播時間の相違から、ユーザの位置を特定することもできる。位置特定部32は、上述した手法の内の少なくとも1つの手法に従って、ユーザの位置を特定する。位置特定部32は、ユーザの位置が特定できると、解錠判定部19に対して、ユーザ位置に応じた制御の実行指示として、ユーザに最も近い車両ドアの開扉もしくは閉扉を指示する。
【0177】
図18は、本実施形態における車両制御装置10Bのジェスチャ検出部18及び位置特定部32による、ジェスチャが行われたことの検出及びユーザ位置の特定などの処理を示すフローチャートである。以下、
図18のフローチャートを参照して、ジェスチャ検出部18、及び位置特定部32の動作を説明する。
【0178】
ステップS500において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが所定のジェスチャを行う間に、複数の送受信部でそれぞれ受信された複数の反射電波信号の受信信号から、ユーザの体の動きの速さを示す複数の速度値を求める。このようにして、ジェスチャ検出部18は、複数の送受信部ごとに速度データを算出する。この速度データの算出手法は、第1実施形態で説明した手法と同様であるため、説明を省略する。次に、ステップS510において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが所定のジェスチャを行う間に、複数の送受信部でそれぞれ受信された複数の反射電波信号の伝播時間に基づいて、複数の速度値にそれぞれ対応付けられる、ユーザが所定のジェスチャを行うことに伴って変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を求める。このようにして、ジェスチャ検出部18は、複数の送受信部ごとに距離データを算出する。さらに、ステップS520において、ジェスチャ検出部18は、複数の送受信部ごとに、複数の反射電波信号の受信信号の信号レベルに基づいて、上述した複数の速度値及び複数の距離値にそれぞれ対応付けられる複数の信号強度を求める。このようにして、ジェスチャ検出部18は、複数の送受信部ごとに信号強度データを算出する。これら距離データの算出手法及び信号強度データの算出手法も、第1実施形態で説明した手法と同様であるため、説明を省略する。
【0179】
そして、ジェスチャ検出部18は、ステップS530において、ユーザがジェスチャを行っている間の、複数の送受信部の距離データ、速度データ、及び信号強度データの算出結果に基づいて、複数の送受信部ごとに、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する検出処理を実行する。ステップS530にて、少なくとも1つの送受信部の距離データ、速度データ、及び信号強度データに基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出されると、ステップS540の判定結果が「Yes」となり、ステップS550に進む。なお、本実施形態では、2つの送受信部での反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定するので、少なくとも2つの送受信部の距離データ、速度データ、及び信号強度データに基づきユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出された場合に、ステップS540の判定結果が「Yes」となるようにしても良い。一方、ステップS530にて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出されないと、ステップS540の判定結果が「No」となり、
図18のフローチャートに示す処理を終了する。
【0180】
ステップS550において、位置特定部32は、複数の送受信部にて受信された反射電波に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定する。さらに、位置特定部32は、ステップS560において、選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定する。そして、位置特定部32は、ステップS570において、解錠判定部19に対してユーザ位置に応じた制御の実行を指示する。
【0181】
第4実施形態の車両制御装置10Bは、上述したように、複数の送受信部にて受信された反射電波に基づいて、相対的にユーザから近い2つの送受信部を選定し、その選定された2つの送受信部にて受信された反射電波の相違に基づき、ユーザの位置を特定する位置特定部32を備えている。このため、第4実施形態の車両制御装置10Bによれば、情報端末20を携帯しているか否かに拘らず、所定のジェスチャを行ったユーザの位置を検出することができる。従って、ユーザは所定のジェスチャを行うことで、自身の位置に応じた制御の実行を指示することができる。
【0182】
上述した第4実施形態の車両制御装置10Bにおいて、ユーザは、所定のジェスチャにより開閉可能な車両ドア、トランク、あるいはボンネットなどを事前に登録することが可能に構成されてもよい。例えば、ユーザにより、所定のジェスチャによって開閉可能な車両ドア、トランク、あるいはボンネットなどが指定された場合、解錠判定部19が、指定された車両ドア、トランク、あるいはボンネットなどを記憶しておく。解錠判定部は、位置特定部32から特定の車両ドア等の開扉を指示されたとき、記憶内容を参照し、開扉を指示された車両ドア等が登録されていなければ、その車両ドア等の開扉を実行しないようにすれば良い。例えば、車両を使用するユーザが、一人で車両に乗車することが多い場合は、助手席側の車両ドアをジェスチャによる開閉可能な車両ドアとして登録しないことで、ユーザが意図しない車両ドア等の開閉を防止することができ、セキュリティを高めることができる。
【0183】
(第5実施形態)
次に、本開示の対象物制御装置の第5実施形態を、図面を参照して説明する。まず、本実施形態の対象物制御装置の技術的課題について説明する。
【0184】
例えば、第1実施形態から第4実施形態で説明したように、本開示の対象物制御装置を車両制御装置として具現化し、ユーザが所定のジェスチャを行ったことに基づき、車両ドアの開扉を行うように構成したとする。その場合、その車両ドアの周囲に金属製の物体などが存在していると、開扉される車両ドアが、その金属製の物体と接触してしまう虞がある。
【0185】
そこで、本実施形態では、ユーザと、ユーザ以外の周辺物体とを識別しつつ、周辺物体の位置を検出して、ユーザが所定のジェスチャを行ったことに応じて、周辺物体を考慮しつつ、対象物の制御を行うことが可能な対象物制御装置を提供することを目的とする。この目的達成のため、本実施形態の第1態様~第4態様の対象物制御装置は、以下に示すように構成される。
【0186】
[第1態様]
対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、開閉部を開閉する制御を行う対象物制御装置(10C)であって、
前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する複数の送受信部(12~15)と、
前記複数の送受信部は、送信した電波がユーザの体および周辺物体で反射した反射電波も受信可能であり、
前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、
前記反射電波の受信強度に基づいてユーザからの反射電波と周辺物体からの反射電波とを識別しつつ、前記周辺物体からの反射電波を利用して前記周辺物体の位置を検出する周辺物体検出部(33)と、を備え
前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物の開閉部を開閉する制御の実行指示の検出として用いられるとともに、前記対象物の開閉部の開閉制御は、前記周辺物体検出部(33)による前記周辺物体の検出結果に応じて変更されうる対象物制御装置。
【0187】
上記のように、第1態様の対象物制御装置は、反射電波の受信強度に基づいてユーザからの反射電波と周辺物体からの反射電波とを識別しつつ、周辺物体からの反射電波を利用して周辺物体の位置を検出する周辺物体検出部(33)を備えている。このため、第1態様の対象物制御装置によれば、ジェスチャ検出部がユーザは所定のジェスチャを行ったことを検出したことに応じて、対象物の開閉部を開閉する開閉制御を行う場合に、周辺物体検出部が開閉部の近傍に周辺物体を検出すると、開閉部の開閉角度を制限したり、開閉部の開閉を中断したり、あるいは開閉を行わなかったりなど、対象物の開閉制御を変更することが可能となる。従って、対象物の開閉部の開閉によって、開閉部が周辺物体と接触することを防止することができる。
【0188】
[第2態様]
前記周辺物体検出部は、前記反射電波の受信強度に基づいてユーザからの反射電波と金属製の前記周辺物体からの反射電波とを識別しつつ、金属製の前記周辺物体からの反射電波を利用して、金属製の前記周辺物体の位置を検出する、第1態様に記載の対象物制御装置。
【0189】
ユーザの体と金属製の物体とでは、電波を反射する際の減衰率が大きく異なる。そのため、反射電波の受信強度に基づいて、ユーザからの反射電波と金属製の周辺物体からの反射電波とを精度良く識別することができる。そして、第2態様の対象物制御装置によれば、金属製の周辺物体が開閉部に接触した場合、対象物が損傷するなどの問題が発生する可能性が高いので、金属製の周辺物体からの反射電波を利用して、金属製の周辺物体の位置を検出し、必要に応じて、対象物の開閉部の開閉制御を変更することができる。
【0190】
[第3態様]
前記周辺物体検出部は、前記周辺物体までの距離と、前記周辺物体からの反射電波の受信強度との関係に基づいて、前記周辺物体の材質を推定する、第1態様に記載の対象物制御装置。
【0191】
周辺物体の材質により、電波を反射する際の減衰率は異なる。このため、周辺物体までの距離と、周辺物体からの反射電波の受信強度とに基づいて、周辺物体の材質を推定することができる。そして、第3態様の対象物制御装置によれば、周辺物体の材質を推定することにより、周辺物体の材質に応じて、対象物の開閉部の開閉制御を適切に変更することができる。
【0192】
[第4態様]
前記周辺物体検出部は、継続的に前記周辺物体の位置を検出するものであり、
前記周辺物体検出部によって検出される前記周辺物体の位置の経時的変化に基づいて、前記周辺物体が対象物に接近しているか否かを判定する接近判定部(S670)を備える、第1態様から第3態様のいずれかに記載の対象物制御装置。
【0193】
第4態様の対象物制御装置は、周辺物体が対象物に接近しているか否かを判定する接近判定部を備えているので、例えば、周辺物体が対象物に接近していることが判定された場合に、ユーザに物体が接近している旨を報知するなどして、ユーザの注意喚起を図ることができる。
【0194】
以下、本実施形態による対象物制御装置を、図面を参照して詳しく説明する。なお、本実施形態においても、対象物制御装置を、自動車などの車両の各種の機能を制御する車両制御装置に適用した例を説明する。ただし、適用対象は車両に限られないことは、第1実施形態と同様である。
【0195】
図19は、本実施形態に係る車両制御装置10Cと、情報端末20とを含む車両制御システムの構成を示す構成図である。
図19に示すように、車両制御装置10Cは、第1実施形態の車両制御装置10の構成に対して、周辺物体検出部33が追加されている。
【0196】
周辺物体検出部33は、車両に設けられた送受信部にて受信された反射電波の受信強度に基づいてユーザからの反射電波と周辺物体からの反射電波とを識別しつつ、周辺物体からの反射電波を利用して、周辺物体の位置を検出する。例えば、周辺物体が金属から形成されている場合、金属製の周辺物体において電波が多重反射する際の減衰率が、ユーザの体で電波が多重反射する際の減衰率よりも小さいので、アンテナ13を含む送受信部にてそれぞれの反射電波が受信されたとき、金属製の周辺物体の反射電波の受信強度は、ユーザの体の反射電波の受信強度よりも大きくなる。
【0197】
図20は、このような受信強度の相違の一例を示している。なお、
図20において、実線は金属製の周辺物体からの反射電波の受信強度を示し、点線はユーザの体からの反射電波の受信強度を示している。また、
図20のグラフでは、反射電波の受信信号におけるピーク強度を受信強度としている。
図20に示すように、金属製の周辺物体からの反射電波の受信強度及びユーザの体からの反射電波の受信強度とも、距離が長くなるにつれて、指数関数的に減少する。しかしながら、いずれの距離においても、金属製の反射物体とユーザの体とでは、受信強度に明確な相違がある。従って、周辺物体検出部33は、反射電波の受信強度に基づいて、ユーザからの反射電波であるか、それとも、金属製の周辺物体からの反射電波であるかを精度良く識別することができる。この際、ユーザ及び周辺物体との距離と受信強度との関係を考慮することで、より一層、ユーザからの反射電波と反射物体からの反射電波とを識別する精度を向上することができる。なお、周辺物体は、金属製の周辺物体に限られない。周辺物体検出部33は、ユーザの体からの反射電波の受信強度との差がある限り、周辺物体からの反射電波を、ユーザの体からの反射電波と識別することができる。
【0198】
そして、周辺物体検出部33は、周辺物体からの反射電波を利用して、反射物体の位置を検出する。例えば、周辺物体検出部33は、車両の複数箇所に設けられた複数の信号受信部15から、情報端末20との間で送受信される電波信号の伝播時間及び/又は到来方向を受け取り、それら複数の伝播時間及び/又は到来方向に基づいて、第1実施形態において説明した三辺測量及び/又は三角測量に従って、周辺物体の位置を検出することができる。周辺物体検出部33による周辺物体の検出結果は、解錠判定部19に与えられる。
【0199】
解錠判定部19は、ジェスチャ検出部18によってユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出されたことに応じて、車両ドアの解錠および自動開閉を行う開閉制御を開始する。ただし、解錠判定部19は、車両ドアの開閉制御を開始するに際して、周辺物体検出部33から取得した周辺物体の検出結果に基づいて、開閉しようとする車両ドアの近傍に周辺物体が検出されているか否か、及び車両に対して接近している周辺物体が検出されているか否かを確認する。例えば、ユーザが、所定のジェスチャを行うことで駐車場に駐車している車両の車両ドアを開扉しようとしている場合に、他の車両が接近してくる場合などに、解錠判定部19は、車両に対して接近している周辺物体が存在すると判定する。そして、解錠判定部19は、車両ドアの近傍に周辺物体が検出されておらず、かつ車両に接近している周辺物体が検出されていないことが確認できると、解錠制御部11に対して、車両ドアの開閉制御の実行を指示する。このように、解錠判定部19は、車両ドアの近傍に周辺物体が検出されておらず、かつ対象物に接近している周辺物体が検出されていないことが確認できて初めて車両ドアの開閉制御の実行を指示するので、車両ドアの開閉によって、車両ドアが周辺物体と接触することを防止することができる。
【0200】
なお、解錠判定部19は、ジェスチャ検出部18がユーザは所定のジェスチャを行ったことを検出したことに応じて、車両ドアの開閉制御を行う場合に、周辺物体検出部33が車両ドアの近傍に周辺物体を検出すると車両ドアの開閉制御の実行を中止するだけでなく、開閉途中で周辺物体が検出された場合には、車両ドアの開閉を途中で中断したり、検出された周辺物体の位置に応じて、周辺物体に接触しないように、車両ドアの開閉角度を制限したりしてもよい。このように、解錠判定部19は、周辺物体検出部33による周辺物体の検出結果に応じて、車両ドアの開閉制御を変更することができる。また、上述した車両ドアの開閉制御は、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出したことに応じて、車両ドアを開扉する場合だけでなく、車両ドアを閉扉する場合にも有効である。
【0201】
図21は、本実施形態における車両制御装置10Cのジェスチャ検出部18、周辺物体検出部33、及び解錠判定部19による、ジェスチャが行われたことの検出、周辺物体の検出、及び周辺物体の検出結果に基づく車両ドアの開閉制御の実行可否判断などの処理を示すフローチャートである。以下、
図21のフローチャートを参照して、ジェスチャ検出部18、周辺物体検出部33及び解錠判定部19の動作を説明する。
【0202】
ステップS600において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが所定のジェスチャを行う間に、複数の送受信部でそれぞれ受信された複数の反射電波の受信信号から、ユーザの体の動きの速さを示す複数の速度値を算出して、速度データを求める。このとき、車両の周辺に周辺物体が存在していると、その周辺物体に関する複数の速度値も算出される。例えば、周辺物体が静止している場合には、算出される複数の速度値はほぼ0m/sであるが、周辺物体が移動している場合には、その移動速度に応じた複数の速度値が算出される。この速度データの算出手法は、第1実施形態で説明した手法と同様であるため、説明を省略する。
【0203】
次に、ステップS610において、ジェスチャ検出部18は、ユーザが所定のジェスチャを行う間に、複数の送受信部でそれぞれ受信された複数の反射電波の伝播時間に基づいて、複数の速度値にそれぞれ対応付けられる、ユーザが所定のジェスチャを行うことに伴って変化するユーザの体までの距離を示す複数の距離値を算出して、距離データを求める。このとき、車両の周辺に周辺物体が存在していると、周辺物体の速度を示す複数の速度値に対応付けられる、周辺物体までの距離を示す複数の速度値も算出される。さらに、ステップS620において、ジェスチャ検出部18は、複数の送受信部ごとに、複数の反射電波の受信信号の信号レベルに基づいて、ユーザからの反射電波に関して、及び周辺物体が存在する場合には、周辺物体からの反射電波に関しても、上述した複数の速度値及び複数の距離値にそれぞれ対応付けられる複数の信号強度を算出して、信号強度データを求める。これら距離データの算出手法及び信号強度データの算出手法も、第1実施形態で説明した手法と同様であるため、説明を省略する。
【0204】
そして、ジェスチャ検出部18は、ステップS630において、上述した距離データ及び信号強度データに基づいて、ユーザの体で反射された反射電波から算出された速度データ、距離データ、及び信号強度データを抽出する。つまり、車両の近傍に周辺物体が存在する場合、ユーザの体で反射された反射電波から算出された速度データ、距離データ、及び信号強度データと、周辺物体で反射された反射電波から算出された速度データ、距離データ、及び信号強度データとを識別して、ユーザの体で反射された反射電波から算出された速度データ、距離データ、及び信号強度データだけを選び出す。そして、ジェスチャ検出部18は、抽出された距離データ、速度データ、及び信号強度データに基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出処理を実行する。
【0205】
次に、ステップS640において、周辺物体検出部33は、距離データ及び信号強度データに基づいて、周辺物体で反射された反射電波から算出された速度データ、距離データ、及び信号強度データを抽出する。そして、周辺物体検出部33は、距離データ、速度データ、及び信号強度データが抽出された場合、周辺物体の位置や、周辺物体が移動して車両に接近していることなどを検出する周辺物体検出処理を実行する。例えば、抽出された速度データがほぼ0m/sである場合には、周辺物体は静止しているとみなすことができる。この場合、複数の送受信部における距離データに基づいて、車両に対する周辺物体の位置を検出する。また、抽出された速度データが0m/sではなく、距離データに含まれる距離値が経時的に変化している場合、周辺物体は移動しているとみなすことができる。この場合、周辺物体検出部33は、周辺物体の位置の検出に加えて、周辺物体の位置の経時的変化に基づいて、周辺物体が車両に接近しているか否かも検出する。
【0206】
ステップS630にて、ユーザの体で反射された反射電波から算出された距離データ、速度データ、及び信号強度データに基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出されると、解錠判定部19においてなされるステップS650の判定結果が「Yes」となり、ステップS660に進む。一方、ユーザが所定のジェスチャを行ったことが検出されないと、解錠判定部19は、
図21のフローチャートに示す処理を終了する。
【0207】
ステップS660において、解錠判定部19は、周辺物体検出部33から取得した周辺物体の検出結果に基づいて、開閉しようとする車両ドアの近傍に周辺物体が検出されているか否かを判定する。車両ドアの近傍に周辺物体が検出されていると判定すると、解錠判定部19は、車両ドアの開閉制御の実行を指示することなく、
図21のフローチャートに示す処理を終了する。これにより、車両ドアの開閉によって、車両ドアが周辺物体と接触することを防止することができる。さらに、解錠判定部19は、ステップS670において、周辺物体検出部33から取得した周辺物体の検出結果に基づいて、周辺物体が車両に接近しているか否かを判定する。解錠判定部19は、周辺物体が車両に接近していないと判定すると、ステップS680に進む。一方、周辺物体が車両に接近していると判定すると、解錠判定部19は、車両ドアの開閉制御の実行を指示することなく、
図21のフローチャートに示す処理を終了する。これにより、移動している周辺物体との接触を未然に防ぐことができる。なお、この際、解錠判定部19は、車両に設けたスピーカにより、またはユーザが携帯する情報端末20への通知により、物体が接近している旨をユーザに報知してもよい。これにより、接近している周辺物体に関してユーザの注意喚起を図ることができる。
【0208】
ステップS680では、車両ドアの近傍に周辺物体が検出されておらず、かつ車両に接近している周辺物体が検出されていないことが確認できたので、解錠判定部19は、解錠制御部11に対して、車両ドアの開閉制御の実行を指示する。
【0209】
以上、説明したように、第5実施形態による対象物制御装置によれば、ジェスチャ検出部18がユーザは所定のジェスチャを行ったことを検出したことに応じて、対象物の開閉部を開閉する開閉制御を行う場合に、周辺物体検出部33が開閉部の近傍に周辺物体を検出すると、開閉部の開閉角度を制限したり、開閉部の開閉を中断したり、あるいは開閉を行わなかったりなど、対象物の開閉制御を変更する。従って、対象物の開閉部の開閉によって、開閉部が周辺物体と接触することを防止することができる。
【0210】
上述した第5実施形態の対象物制御装置において、周辺物体検出部33は、周辺物体までの距離と、周辺物体からの反射電波の受信強度との関係に基づいて、周辺物体の材質を推定することも可能である。周辺物体の材質により、電波を反射する際の減衰率は異なる。このため、周辺物体までの距離と、周辺物体からの反射電波の受信強度とに基づいて、周辺物体の材質を推定することができる。このように、周辺物体の材質を推定することにより、周辺物体の材質に応じて、対象物の開閉部の開閉制御を適切に変更することができるようになる。
【0211】
以上、本開示の好ましい複数の実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0212】
例えば、上述した複数の実施形態は、相互に排他的なものではなく、任意に組み合わせて実施することが可能である。また、各実施形態において説明した対象物制御装置および情報端末の機能ブロックは、他の機能ブロックと組み合わされても良いし、逆に複数のサブブロックに分割されても良い。
【符号の説明】
【0213】
10:車両制御装置、10A:車両制御装置、10B:車両制御装置、10C:車両制御装置、11:解錠制御部、12:信号送信部、13:アンテナ、14:受信バッファ、15:信号受信部、16:位置判定部、17:タッチセンサ、18:ジェスチャ検出部、19:解錠判定部、20:情報端末、21:アンテナ、22:信号受信部、23:信号制御部、24:信号送信部、30:ジェスチャ登録部、31:判定用特性データ設定部、32:位置特定部、33:周辺物体検出部