(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 35/44 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B65D35/44
(21)【出願番号】P 2021063148
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】勝又 淑江
(72)【発明者】
【氏名】大村 寛美
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和道
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167860(JP,A)
【文献】特開2002-068282(JP,A)
【文献】特開平02-045362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0321379(US,A1)
【文献】特開2021-160727(JP,A)
【文献】特開2017-218213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/02
B65D 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出口部を有する頭部と、前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体と、前記チューブ容器本体の注出口部に着脱可能に装着して、前記注出口部を閉鎖するキャップを備えたチューブ容器において、
前記チューブ容器本体の前記注出口部は、主成分として高密度ポリエチレンを含み、
前記キャップは、ポリプロピレンと、高密度ポリエチレンのブレンドポリマーを含み、
前記ブレンドポリマーは、前記ポリプロピレンと前記高密度ポリエチレンとの配合比率を質量比において70:30~25:75とし、
前記ブレンドポリマーの密度が、0.915g/cm
3以上0.930g/cm
3以下であることを特徴とする、チューブ容器。
【請求項2】
前記キャップを構成するポリエチレンが、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含む、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記チューブ容器本体の前記頭部を構成するポリエチレンが、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含む、請求項1または2に記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チューブ容器に関し、より詳細には、注出口部を有する頭部と前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体および前記チューブ容器本体の注出口部に装着して注出口部を閉鎖するキャップを備えたチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ容器は、一般的に、一端が閉塞し、かつ他端が開口した筒状の胴部と、その胴部の開口他端に連接する注出口を有する頭部とを備えた構造を有している。こうしたチューブ容器は、使用時に内容物が漏れ出さないように注出口を閉鎖できるようなキャップを備えている。一般的に、チューブ容器本体の注出口の外周面およびキャップ内周面には、注出口とキャップとが螺合ないし嵌合して注出口を閉鎖できるような構造を有している(特許文献1)。
【0003】
上記のようなチューブ容器本体の頭部(注出口)やキャップはポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いて圧縮成形法や射出成形法によって成形されるのが一般的である。例えば、チューブ容器本体の頭部はポリエチレン等の樹脂が使用され、キャップはポリプロピレン等の樹脂を使用して成形されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-166530号公報
【文献】特開平10-1149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、医薬品包装や食品包装において、ユニバーサルデザイン化傾向の中で、社会的弱者(高齢者、幼児、障害者等)に対しての配慮として、消費者が開封しやすい方式、例えば易開封性が重要視されつつある。その中でも、特に容器等に用いられる易開封性のキャップが重要視されつつある。
一般的に、ポリプロピレン等の樹脂を使用したキャップは、開栓トルクが大きくなり、締まりが硬く、開栓しにくい面を有している。
【0006】
したがって、本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、キャップ成形用金型を従来のポリプロピレン樹脂100質量%でキャップ成形する金型から変更することなく、キャップを開栓する際のトルクを小さく抑えることができ、易開封性に優れたチューブ容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、一実施の形態によるチューブ容器は、注出口部を有する頭部と、前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体と、前記チューブ容器本体の注出口部に着脱可能に装着して、前記注出口部を閉鎖するキャップを備えたチューブ容器において、前記チューブ容器本体の前記注出口部は、主成分として高密度ポリエチレンを含み、前記キャップは、ポリプロピレンと、高密度ポリエチレンのブレンドポリマーを含み、前記ブレンドポリマーは、前記ポリプロピレンと前記高密度ポリエチレンとの配合比率を質量比において70:30~25:75とし、前記ブレンドポリマーの密度が、0.915g/cm3以上0.930g/cm3以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、キャップを開栓する際のトルクを小さく抑えることができ、易開封性に優れたチューブ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態によるチューブ容器の構成を簡略に示す斜視図。
【
図3】本実施の形態によるチューブ容器の胴部を構成する積層シートの部分断面図。
【
図4】本実施の形態によるチューブ容器の胴部を構成する積層シートの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。
図1乃至
図3は一実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示したものである。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。
【0011】
まず、
図1により、本実施の形態によるチューブ容器1について説明する。
本実施の形態によるチューブ容器は、チューブ容器本体10とキャップ20とから構成される。チューブ容器本体10は、頭部11と、胴部12とを備えている。
【0012】
頭部11は、胴部12の一端と連接されており、注出口部14を有している。本実施の形態においては、頭部11は、胴部12の一端部と連接した肩部13と、肩部13に連接している注出口部14とを有している。また、注出口部14の外周面にはキャップを装着するためのネジ部15を設ける。
【0013】
このような構成からなるチューブ容器本体10は、以下のような製造工程を経て得られる。まず、本実施の形態によるチューブ容器用包材(積層シート)30を使用し、
図2に示すように、そのチューブ容器用包材30の両端部を重ね合わせて、その重合部分の外面と内面とをヒートシールしてヒートシール部17を形成して、筒状胴部12を製造する。次いで、上記の筒状胴部12を金型内に装着し、筒状胴部12の一方の開口部に、例えば、圧縮成形法等の通常の方法によって、肩部13および注出口部14を形成する。このようにしてチューブ容器本体10が作製される。またチューブ容器本体10の注出口部14にキャップ20が装着される。
【0014】
その後、チューブ容器本体10の筒状胴部の他方の開口部から、例えば、練り歯磨き、その他の内容物が適量分だけ充填される。さらに、他方の開口部を溶着して底シール部16を形成して、内容物を充填包装したチューブ容器本体10を含む包装製品が得られる。
【0015】
次にチューブ容器本体10を作製するチューブ容器用包材30について述べる。
チューブ容器本体10を作製するチューブ容器用包材30は、
図3に示すように、外面から内面に向かって順に配置された外層31、中間層32、および内層33を備える積層シートで構成されている。また、
図4に示すように、チューブ容器本体10を作製するチューブ容器用包材30は、中間層32と、内層33との間に配置されたバリア層34を更に備えていてもよい。
【0016】
次に、チューブ容器本体10の注出口部14に装着されるキャップ20について説明する。
【0017】
キャップ20は、上記した頭部11の注出口部14に着脱可能に装着して、注出口部14を閉鎖する機能を有する。キャップとしては、
図1に示すような注出口部14の外周面に設けられたネジ部15に螺合するように、キャップ内面に凹溝を備えたスクリュータイプのものであってもよい。
【0018】
キャップ20は、ポリプロピレンおよびポリエチレンのブレンドポリマーを含む樹脂組成物を用いて圧縮成形法や射出成型法等の成形法により一体的に形成することができる。ポリプロピレンとポリエチレンの配合比率(質量%)は、70:30~25:75が好ましく、70:30~50:50がより好ましい。上記の範囲内であると、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド物の状態でのキャップの成形性に優れると共に、従来のポリプロピレン単体での成形用金型から変更することなく、また、長期的な生産適性に優れる。
【0019】
キャップ20を構成する樹脂組成物に用いられるポリプロピレンおよびポリエチレンのブレンドポリマーは、密度が0.915g/cm3以上0.930g/cm3以下の範囲にあることが好ましい。上記の範囲内であると、ポリプロピレンとポリエチレンの相溶性、キャップの耐熱性、キャップを開栓する際のトルクを従来と比較して小さくすることができる観点から、好ましい。
【0020】
キャップ20を構成する樹脂組成物に用いられるポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体や共重合体が挙げられる。これらのポリプロピレンの構造はアイソタクティック構造のものでも、シンジオタクティック構造のものでもよい。ポリプロピレンとしては、プロピレンとそれ以外のオレフィン、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等との共重合体が挙げられ、この共重合体はランダム共重合体であっても、またブロック共重合体であってもよい。
【0021】
本実施の形態において、キャップ20を構成する樹脂組成物に用いられるポリプロピレンは、エチレン含有量が2質量%以上10質量%以下のプロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましい。上記の範囲内であると、ポリプロピレンは、ポリエチレンとの相溶性に優れており、ブレンド物の状態でのキャップの成形性に優れ、キャップを開栓する際のトルクを従来と比較して小さくすることができる。
【0022】
キャップ20を構成する樹脂組成物に用いられるポリプロピレンは、メルトフローレート(温度230℃、荷重21.18N)が3g/10分以上、20g/10分以下の範囲にあるものが好ましい。上記の範囲内であると、キャップ20の成形性、密封性、機械的強度に優れる。
【0023】
キャップ20を構成する樹脂組成物に用いられるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンを主成分として、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物の他、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンのうち、1種を選択したもの、2種を選択したもの、3種を選択したもの、4種を選択したものとすることができる。ブレンドの混合方法は特に限定されず、ドライブレンドやメルトブレンドでもよい。
【0024】
キャップ20を構成する樹脂組成物に用いられるポリエチレンは、密度が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下の範囲にあることが好ましい。上記の範囲内であると、ポリプロピレンとの相溶性、キャップの耐熱性、低温環境下における落下強度を高める観点から、好ましい。そのため、キャップ20を構成する樹脂組成物は、高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。ここで、高密度ポリエチレンとは、密度が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下であり、低圧重合法(チーグラー・ナッタ触媒を用いた気相重合法またはメタロセン触媒を用いた液相重合法)によりエチレンを重合して得られるものを称する。
【0025】
上記したキャップ20を構成する樹脂組成物に用いられるポリエチレンは、化石燃料由来のものを使用してもよいが、環境負荷の低減のためカーボンニュートラル材料として知られるバイオマス由来のポリエチレンを使用してもよい。キャップはチューブ容器に占める質量割合が大きいため、キャップをバイオマス由来のポリエチレンを用いて成形することにより、チューブ容器全体として化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。さらに、バイオマス由来のポリエチレンは、化石燃料由来と比べてヘイズ値が高く、キャップに光を照射した場合、ヘイズが90%以上であり、より高い反射率をもつため、内容物を外部から遮蔽するための着色剤を添加せずに白色で不透明な外観を呈することができる。
【0026】
ここで、バイオマス由来のポリエチレンとは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマー重合体である。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。原料モノマー中のバイオマス由来のエチレンの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。原料モノマーには、化石燃料由来のエチレンが含まれていてもよく、ブチレン、ヘキセン、およびオクテン等のα-オレフィンのモノマーが含まれていてもよい。このような場合であっても、得られた重合体をバイオマスポリエチレンと称する。バイオマス由来のポリエチレンを使用する場合、異なるバイオマス度のポリオレフィンを2種以上含むものであってもよい。
【0027】
また、化石燃料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンとをブレンドする場合、混合方法は特に限定されず、ドライブレンドやメルトブレンドでもよい。また、両者を混合する場合の化石燃料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンとの混合割合は、質量比において1:9~9:1が好ましく、2:8~8:2がより好ましい。
【0028】
例えば、バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
【0029】
本実施の形態において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
【0030】
本実施の形態において、好適に使用できるバイオマス由来のポリエチレンとしては、ブラスケム社製のSHA7260(密度:0.955g/cm3、MFR:20g/10分、バイオマス度94%)、同SHC7260(密度:0.959g/cm3、MFR:7.2g/10分、バイオマス度94%)、同SHD7255LSL(密度:0.954g/cm3、MFR:4.5g/10分、バイオマス度94%)、同SGE7252(密度:0.953g/cm3、MFR:2.2g/10分、バイオマス度96%)等が挙げられる。
【0031】
なお、バイオマス度とは、ASTM-D6866に準拠した放射性炭素(C14)測定法によって得られたC14含有量の値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
【0032】
ポリプロピレンと、ポリエチレンのブレンドポリマーは、ポリプロピレンとポチエチレンの合計100重量部当たり、前記ポリエチレンを1質量部以上99質量部以下の量で使用することが好ましく、10質量部以上80質量部以下の量で使用することがより好ましい。ポリエチレンの配合量が上記範囲内であると、既存の金型を改造することなく、ポリエチレンとの相溶性に優れており、ブレンド物の状態でのキャップ20の成形性に優れ、キャップを開栓する際のトルクを従来と比較して小さくすることができる。また、ポリプロピレンと、ポリエチレンのブレンドポリマーは、ポリプロレンの質量比がポリエチレンの質量比より大きくなっている場合、質量比が大きなポリプロピレン分子中にポリエチレン分子が分散されて存在する。このためポリプロピレンベース基材中にポリエチレン分子が分散された状態となり、白色で不透明な外観を呈することができる。
【0033】
キャップ20は、上記した樹脂組成物を用いて従来公知の方法により製造することができ、例えば圧縮成形法(コンプレッション成形法)や射出成形法(インジェクション成形法)などにより一体的に成形することができる。
【0034】
キャップ20を構成する樹脂組成物には、上記したように、その特性が損なわれない範囲において、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲で添加されることがより好ましい。
【0035】
次に、チューブ容器本体10の頭部11に使用される樹脂組成物について説明する。
【0036】
チューブ容器本体10の頭部11に使用される樹脂組成物は主成分としてポリエチレンを含む。本実施形態において主成分とは、頭部11がポリエチレンのみを用いて形成されたもの他、その特性が損なわれない範囲において、ポリエチレン以外の各種の樹脂や添加剤を含んでいてもよいことを意味する。
【0037】
チューブ容器本体10の頭部11に使用されるポリエチレンとして、密度が0.940g/cm3以上であり、好ましくは0.940g/cm3以上、0.9670g/cm3以下であり、低圧重合法(チーグラー・ナッタ触媒を用いた気相重合法またはメタロセン触媒を用いた液相重合法)によりエチレンを重合して得られるものを称する。なお、ポリエチレンの密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JISK7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。
【0038】
上記したポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、1g/10分以上、30g/10分以下であることが好ましく、2g/10分以上、20g/10分以下であることがより好ましい。MFRが上記範囲内にあるポリエチレンを用いることにより、射出成形や圧縮成形して頭部11を成形した際、得られる頭部11を金型通りに成形することができ、安定した成形性を有することができる。なお、メルトフローレートとは、JIS K7210-1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。
【0039】
上記したポリエチレンは化石燃料由来のものを使用してもよいが、環境負荷の低減のためカーボンニュートラル材料として知られるバイオマス由来のポリエチレンを使用してもよい。頭部はチューブ容器に占める質量割合が大きいため、頭部をバイオマス由来のポリエチレンを用いて成形することにより、チューブ容器全体として化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。さらに、バイオマス由来のポリエチレンは、化石燃料由来と比べてヘイズ値が高く、チューブ容器の外方より光を照射した場合、ヘイズが90%以上であり、より高い反射率をもつため、内容物を外部から遮蔽するための着色剤を添加せずに白色で不透明な外観を呈することができる。また、チューブ容器本体10の頭部11は、従来の化石燃料から得られる原料から製造された頭部と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の頭部を代替することができる。
【0040】
環境負荷低減の観点からは、バイオマス由来のポリエチレンのみを用いることが好ましいと言えるが、製造コスト及びポリプロピレンのみのキャップを作製する際の既存の金型を流用すること等を考慮して、化石燃料由来のポリエチレンと上記したバイオマス由来のポリエチレンとをブレンドしたものを用いてもよい。バイオマス由来のポリエチレンを使用する場合、異なるバイオマス度のポリオレフィンを2種以上含むものであってもよい。また、化石燃料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンとをブレンドする場合、混合方法は特に限定されず、ドライブレンドやメルトブレンドでもよい。また、両者を混合する場合の化石燃料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンとの混合割合は、質量比において1:9~9:1が好ましく、より好ましくは2:8~8:2である。
【0041】
チューブ容器本体の頭部11に使用される樹脂組成物には、上記したポリエチレンが主成分として含まれるものであれば、その特性が損なわれない範囲において、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される。
【0042】
頭部11は、上記した樹脂組成物を用いて従来公知の方法により製造することができ、例えば圧縮成形法(コンプレッション成形法)や射出成形法(インジェクション成形法)などにより一体的に成形することができる。
【0043】
以下、チューブ容器本体10の胴部12を構成するチューブ容器用包材30について説明する。
【0044】
外層31および内層33は、
図3に示すように、中間層32の両面にそれぞれ設けられている。外層31および内層33は、熱によって相互に融着し得るヒートシール性樹脂のフィルムにより形成される層である。積層シート30を丸めてその重ね合わせた端部を溶着して胴部12を製造することから、加熱により溶融して相互に融着することができる樹脂のフィルムを使用することができる。外層31および内層33を形成する材料としては、熱によって融着し得る樹脂(ヒートシール性樹脂)であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、上記したような低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの他、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体樹脂、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)樹脂、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)樹脂、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン・ビニルアルコール樹脂、または、共重合した樹脂メチルペンテン系樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他の樹脂等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
【0045】
外層31および内層33を形成する材料として、ポリエチレンを用いる場合は、環境負荷を低減できる観点から、化石燃料由来のポリエチレン樹脂に代えて、バイオマス由来のポリエチレン樹脂を用いてもよい。バイオマス由来のポリエチレン樹脂としては、上記したものを用いることができるが、フィルム成形用のポリエチレンとして、メルトフローレート(MFR)が、0.1g/10分以上10g/10分以下のものを好適に使用することができる。好適に使用できるバイオマス由来の低密度ポリエチレンとしては、ブラスケム社製のSBC818(密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度96%)、同SBF032HC(密度:0.923g/cm3、MFR:0.32g/10分、バイオマス度95%)、同STN7006(密度:0.924g/cm3、MFR:0.6g/10分、バイオマス度95%)、同SEB853(密度:0.923g/cm3、MFR:2.7g/10分、バイオマス度95%)、同SPB681(密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)等が挙げられる。また、化石燃料由来のポリエチレン樹脂に上記したバイオマス由来のポリエチレン樹脂を混合したものを用いてもよい。外層31および内層33をバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂材料を用いて形成することで、チューブ容器本体10の形成に用いるための化石燃料の使用量をより一層削減し、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、外層31および内層33は一層としているが、二層以上であってもよい。外層31および内層33を二層以上とする場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0047】
外層31および内層33の厚さとしては、それぞれ20μm以上、300μm以下が好ましく、30μm以上、250μm以下がより好ましい。
【0048】
中間層32は、胴部12を構成する積層シート30を支持する機能を有するものであり、積層シート30を支持できるような材料であれば特に制限なく使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコ-ル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、その他等の各種の樹脂や、アルミニウム箔等の金属箔を使用することができる。また、上記した樹脂は、化石燃料由来のものだけでなく、バイオマス由来の樹脂を用いてもよい。例えば、上記したバイオマス由来のポリエチレン樹脂の他、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール成分として使用したバイオマスポリエステルや、ポリ乳酸樹脂、セロハン、でんぷん、セルロース等を使用することができる。
また、中間層32は、二層以上であってもよい。中間層32を二層以上とする場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0049】
中間層32は、上記したような樹脂からなるフィルムを使用することができるが、強度等の観点からは、一軸ないし二軸方向に延伸されたフィルムを用いることが好ましい。以下、樹脂からなるフィルムを、基材フィルムともいう。
【0050】
積層シートは、外層31、中間層32、および内層33以外に、その他の層を少なくとも一層有してもよい。その他の層としては、例えば、ガスバリア層、遮光層、印刷層等を挙げることができる。その他の層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。ガスバリア層を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコ-ル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂等の樹脂を使用することができる。また、水蒸気バリア性を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0051】
また、ガスバリア層として、アルミニウム箔等の金属箔を設けたり、あるいはアルミニウム等の金属の蒸着層、または酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物の蒸着層などを設けてもよい。また、基材フィルム上にポリ塩化ビニリデンやアクリル酸系樹脂等のバリアコーティング剤をコーティングしたバリアコーティングフィルムを中間層として用いてもよい基材フィルムの表面に金属箔や蒸着層を設ける場合、基材フィルムの表面に予め不活性ガスによるプラズマ処理等を施しておいてもよい。このような表面処理により、基材フィルムと、金属箔または蒸着層との密着性が向上し、層間剥離の発生を防止することができる。
【0052】
蒸着層を構成する金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、金(Au)、クロム(Cr)等の金属の蒸着膜を使用することができる。
【0053】
蒸着層を構成する無機酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等を使用することができる。
【0054】
上記の樹脂のフィルムの片面に上記の金属または無機酸化物の蒸着層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。金属または無機酸化物の蒸着層の膜厚としては、使用する材料の種類等によって異なるが、例えば、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下の範囲内で任意に選択して形成することがより好ましい。更に具体的に説明すると、アルミニウムの蒸着膜を設ける場合には、膜厚5nm以上60nm以下が好ましく、10nm以上45nm以下がより好ましい。
【0055】
ガスバリア性を高めるために、上記したような金属ないし金属酸化物の蒸着層を基材フィルムに設けた後、蒸着層上にガスバリア性塗布膜を設けてもよい。ガスバリア性塗布膜としては、一般式R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及びエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体のいずれか一方または両方を含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製する工程、基材フィルムの一方の面に設けた蒸着層の上に、必要ならば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物をコーティングして塗布膜を設ける工程、上記の塗布膜を設けた基材フィルムを、20℃~180℃で、かつ、上記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒~10分間加熱処理して、上記の基材フィルムの一方の面に設けた蒸着層の上に、要すれば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を形成する工程等を包含する製造工程により製造することができる。
【0056】
ガスバリア性塗布膜を形成する一般式R1nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよくさらに、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2~6量体のものを使用される。
【0057】
上記の一般式R1nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を使用することができる。本発明において、好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタン等を挙げることができる。また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独又は2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0058】
また、上記の一般式R1nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、その他等のアルキル基を挙げることができる。また、上記の一般式R1nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、本発明において、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0059】
上記のガスバリア性塗布膜を形成するポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体としては、ポリビニルアルコ-ル系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコ-ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ-ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明においては、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及びエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体のいずれか一方または両方を使用することにより、ガスバリア性塗布膜のガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。特に、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂と、エチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することにより、上記のガスバリア性に加えて、耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性等に著しく優れた積層フィルムを形成することができる。
【0060】
外層31、中間層32、内層33、およびその他の層は、ドライラミネーション法により接着層を介して、あるいは溶融押出しラミネーション法により接着樹脂層を介して互いに積層することができる。
【0061】
接着層は、ドライラミネート法により2層を接着する場合、積層しようとする層の表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成される接着剤層とすることができる。接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。2液硬化型の接着剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で積層体を構成する層の塗布面に塗布することができる。
【0062】
接着層は、サンドラミネート法により2層を接着する場合や溶融押出しラミネート法に使用される接着樹脂層であってもよい。接着樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、上記したポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィンなどを用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。なお、上記したポリエチレン系樹脂としては、上記したバイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用して、バイオマス度をさらに向上させることができる。
【0063】
溶融押出しラミネート法により接着樹脂層を積層する場合には、積層される側の層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成されるアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート剤としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンイミン等からなるアンカーコート剤が挙げられるが、特に、構造中に2以上のヒドロキシル基を有するポリアクリル系又はポリメタクリル系樹脂(ポリオール)と、硬化剤としてのイソシアネート化合物との硬化物であるアンカーコート剤を、好ましく使用することができる。また、これに添加剤としてシランカップリング剤を併用してもよく、また、硝化綿を、耐熱性を高めるために併用してもよい。
【0064】
乾燥後のアンカーコート層は、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.3μm以上0.5μm以下の厚さを有するものがより好ましい。乾燥後の接着剤層は、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上5μm以下の厚さを有するものがより好ましい。接着樹脂層は5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上30μm以下の厚さを有するものがより好ましい。
【0065】
中間層32は、チューブ容器に充填する内容物の種類、包装目的、包装形態、流通形態、販売形態、その他等の条件に応じて、種々の層構成を採用することができる。
【0066】
胴部12は、積層シートを筒状に丸めて、
図2に示すように、胴部12の両端部の外層31と内層33とを重ね合わせ、その重ね合わせ部分をヒートシールしてヒートシール部17を形成して作製される。胴部12は、その一方の開口部の上部に頭部11が連結される。なお、胴部12の両端部は、外層31と内層33とを重ね合わせる方法に限定されるものではなく、内層33同士を重ね合わせてもよい。また、上記したように、インフレーション成形により円筒体に成形した後、この円筒体を所定長さに裁断することで、筒状の胴部としてもよい。
【0067】
ヒートシールする方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール、火炎シールなどの従来公知の方法で行うことができる。
【0068】
胴部12を、上記した注出口部14を有する頭部11と連結する方法は、特に限定されるものではない。一例を挙げると、頭部を圧縮成形法や射出成形法を用いて成形する場合、頭部11を成形する際の金型内に筒状の胴部の一端を挿入しておき、ポリエチレン樹脂組成物を金型内に圧入することにより、頭部11を成形すると共に胴部12の一方の開口に接合させて、チューブ容器本体10を成形することができる。
【0069】
チューブ容器本体10を成形した後、胴部12の頭部11と連結した他方の開放端から内容物を充填し、開口部を溶着して底シール部16を形成する。これにより、内容物が充填包装されたチューブ容器本体10を得ることができる。注出口部14に装着するキャップは、注出口部14の形状に対応して、例えば螺合させるなど、各種の方法により着脱可能に装着される。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
(1)チューブ容器用包材30の準備
基材フィルムとして、片面がコロナ放電処理された厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「EB512」)を使用し、コロナ放電処理面側に、印刷インキを乾燥時の厚さが3μmとなるようにグラビア印刷により塗布した。
次いで、印刷面に乾燥時の塗布量が3g/m2となるように2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント株式会社製、商品名「RU-80/H-5」)を塗布し、バリア層として厚さ12μmのアルミ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池マテリアル株式会社製、商品名「テトライトEXC-B」)を積層し、更にそのアルミ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面に、乾燥時の塗布量が3g/m2となるように2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント株式会社製、商品名「RU-80/H-5」)を塗布し、
ヒートシール性フィルムとして厚さ150μmの低密度ポリエチレンフィルム、大日本印刷株式会社製、商品名「BCO-LZ27N」)のフィルムを積層して積層シートを得た。
次いで、上記積層体の表面側2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、乾燥時の塗布量が3g/m2となるように2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント株式会社製、商品名「RU-80/H-5」)を塗布し、更に、厚さ110μmの帯電防止剤入りの低密度ポリエチレンフィルム(大日本印刷株式会社製、商品名「BCO-LZ27NAS」)を積層
なお、得られたチューブ容器用包材30の層構成は、最外層から最内層に向けて、低密度ポリエチレンフィルム110μm/2液硬化型ウレタン系接着剤層/2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μm/2液硬化型ウレタン系接着剤層/アルミ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレート12μm/2液硬化型ウレタン系接着剤層/低密度ポリエチレンフィルム150μmである。
【0072】
(2)筒状胴部の作製
上記のようにして得られたチューブ容器用包材30を、ボビンカッターを用いて幅126.8mmのスリットに加工し、幅方向の両端を、重ね幅が約1.5mmとなるようにして重ね合わせた後に、ヒートシール温度60℃~120℃にて、重ね合わせた両端どうしを熱融着することにより、筒貼りした円筒状の原反を得た。得られた原反を長さ方向160mmとなるように切断してチューブ容器本体10の胴部12となる筒状胴部を製造した。
【0073】
(3)頭部
筒状胴部12をチューブ容器成形用のマンドレルに装着し、次に筒状胴部の一方の端部に、円錐台形状の肩部13とそれに連続する筒状の注出口部14からなる頭部11を、高密度ポリエチレン(密度0.953g/cm
3、MFR2.2g/10分、ブラスケム株式会社製、商品名「SGE7252」)を使用し、温度270℃において射出成形法にて成形して、
図1に示すようなチューブ容器本体10を作製した。得られたチューブ容器本体の頭部の注出口部は、外径をφ11.4口内径をφ8.9mm、高さを16.5mmとし、注出口部14の側面にはネジ部15を設けた。ネジ部15は0.6mmの間隔で注出口部の側面に3巻き設け(二条ネジ)、ネジ部の高さは1.0mmとした。また、肩部の外径は長径:46.57、短径:31.65mmとした。
【0074】
(4)キャップ
頭部11の注出口部14と螺合するように内面に凹溝を有するキャップ20を成形できる金型に、下記表1に示す組成の樹脂を使用し、温度220℃において射出成形法にて成形して、キャップ20を作製した。ここで、密度はJISR1620(1995)に準拠し、気体置換法(乾式密度計:アキュピックH1340、島津製作所-マイクロメリテックス社製)により求めた値である。具体的には資料を10cm3セルに入る大きさに切断して全量をセルに採取し、繰り返し5回測定して、その平均値を求めた。表1中の数値は質量部を表す。なお、キャップ20の外径は長径:46.2、短径:22.7mmとした。
【0075】
[閉栓試験]
チューブ容器1が各300本用意され、チューブ容器本体10の注出口部14に設けられているネジ部にキャッピングマシーンによってキャップ20を閉栓した。キャップ20の閉栓に支障が生じないかを確認した。
【0076】
その結果、そのすべてのキャップ20において、閉栓の際に、キャップ20の閉栓に支障がなかった。
【0077】
[開栓トルク]
上記のようにして得られたチューブ容器本体10の注出口部14にキャップ20を螺旋し、次いで、筒状胴部の他方の開口部から、内容物として50gのハンドクリ-ムを充填し、次いで、筒状胴部の開口部をヒートシールして、
図1に示すようなチューブ容器1を作製した。なお、キャップ20は設定締めトルク14.7N・cmで閉栓を行った。次いで、チューブ容器1のキャップ20を開栓する際のトルクをトルクメーター(日本電産シンポ株式会社製、型式TNJ-5)により測定した。10回の測定結果の平均値を開栓トルク値とした。結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0078】
[落下試験]
チューブ容器1を常温環境下で1mの高さから加速度を付けずにキャップが下になるように垂直に落下させて、目視にてキャップ外れやキャップの割れがないか確認した。この評価を10回行い下記評価基準にて総合評価を行った。
○:1度も、キャップ外れまたはキャップ割れは認められなかった。
×:1回以上、キャップ外れまたはキャップ割れが認められた。
さらに、チューブ容器1を3℃の環境下で12時間放置した後、1mの高さから加速度を付けずにキャップ20が下になるように垂直に落下させて、目視にてキャップ外れやキャップの割れがないか確認した。この評価を10回行い下記評価基準にて総合評価を行った。
また、チューブ容器1を3℃の環境下で1カ月放置した後、さらに、常温環境下に放置後、1mの高さから加速度を付けずにキャップ20が下になるように垂直に落下させた後に上記と同様の落下試験評価を行った。この評価を3回行った。
また、チューブ容器1を3℃の環境下で2カ月放置した後、さらに、常温環境下に放置後、上記と同様にして落下試験を行った。この評価を3回行い上記と同様にして評価を行った。
さらに、チューブ容器1を3℃の環境下で3カ月放置した後、さらに、常温環境下に放置後、上記と同様にして落下試験を行った。この評価を3回行い上記と同様にして評価を行った。評価の結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0079】
[漏れ性]
チューブ容器本体10の注出口部14にキャップ20を螺旋し、次いで、筒状胴部の他方の開口部から、内容物としてメチレンブルーで着色した水:エタノール=1:1の溶液100mlを充填し、次いで、筒状胴部の開口部をヒートシールして、
図1に示すようなチューブ容器1を作製した。なお、キャップ20閉栓時の設定締めトルク(正トルク)は、60.0N・cmとした。キャップ20開栓時の設定トルク(負トルク)は、35.0N・cmとした。
次いで、チューブ容器1を室温環境下にて24週間放置し、1日ごとに内容物の漏れがないか目視にて確認した。漏れ性の評価基準は以下のとおりとした。
○:2週間経過した後でも、キャップから内容物の漏れは見られなかった。
×:2週間経過前に、キャップから内容物の漏れが見られた。
評価結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0080】
[ヘイズ値]
実施例1及び比較例のキャップについてヘイズ値を測定した。具体的には、株式会社村上色彩技術研究所製のヘイズ測定器「HM-150」を用いて次のような方法で測定した。すなわちキャップに可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合を積層体最表面のマット形成層1に光を垂直に当てることで測定した。なお曇り度(ヘーズ)=散乱光/全光線透過光×100(%)で表している。
評価結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0081】
【0082】
表1中の樹脂の略語は以下の樹脂を示す。
石化PPは、サンアロマー株式会社製、ポリプロピレン、PM921M(密度0.900(g/cm3)、MFR25(g/10分)を示す。バイオHDPEは、ブラスケム社製、高密度ポリエチレン、SHA7260(密度0.955(g/cm3)、MFR20(g/10分)を示す。
【0083】
上記評価結果より、実施例1~3のチューブ容器1のキャップ20を開栓トルク値は、比較例1のポリプロピレン製のキャップより開栓トルク値を小さく抑えることができることがわかった。
また、実施例1~3のキャップ20においては、閉栓性に支障がなく、密封性に優れることがわかった。
さらに、実施例1のキャップ20は、バイオ度数が比較例1より高く、比較例1のキャップのヘイズ値より高いので、キャップの外方より光を照射した場合、ヘイズが90%以上であり、より高い反射率をもつため、内容物を外部から遮蔽するための着色剤を添加せずに白色で不透明な外観を呈することがわかった。
【符号の説明】
【0084】
1 チューブ容器
10 チューブ容器本体
11 頭部
12 胴部
13 肩部
14 注出口部
15 ネジ部
16 底シール部
17 ヒートシール部
20 キャップ
30 チューブ容器用包材(積層シート)
31 外層
32 中間層
33 内層
34 バリア層