IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車載ドライブレコーダシステム 図1
  • 特許-車載ドライブレコーダシステム 図2
  • 特許-車載ドライブレコーダシステム 図3
  • 特許-車載ドライブレコーダシステム 図4
  • 特許-車載ドライブレコーダシステム 図5
  • 特許-車載ドライブレコーダシステム 図6
  • 特許-車載ドライブレコーダシステム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車載ドライブレコーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241008BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20241008BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
H04N7/18 J
H04N7/18 U
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021064321
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159868
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田頭 侑土
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152786(JP,A)
【文献】特開2020-167566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G07C 5/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された撮像画像を記録する記録部と、
前記撮像画像中の移動物標であって、該移動物標の大きさ及び位置の少なくとも一方の変化量が所定の閾値を超える特定移動物標を取得する特定移動物標取得部と、
前記撮像画像中の前記特定移動物標の領域を切り出すと共に該特定移動物標の領域の切出位置情報を取得する切出部と、
前記撮像画像において前記切出部により切り出された前記特定移動物標の領域以外の領域を背景画像領域として取得し、前記特定移動物標の領域よりも低画質に変換した前記背景画像領域と切り出された前記特定移動物標の領域とを前記切出位置情報に基づいて合成した合成画像を前記記録部に記録させる記録制御部と、
を含み、
前記撮像画像が動画であり、
前記記録制御部は、時系列に撮像された複数の静止画像の各々が低画質に変換されてなる複数の低画質画像で構成された低画質動画と、
前記複数の静止画像の各々において、前記切出部により切り出された複数の前記特定移動物標の領域の画像で構成された高画質画像列と、
前記複数の静止画像において前記切出部により取得された前記切出位置情報と、を前記合成画像を表すデータとして記録部に記録させる車載ドライブレコーダシステム。
【請求項2】
前記記録制御部は、前記背景画像領域を含む全領域が前記低画質に変換された低画質画像の上に、前記切出部により切り出された前記特定移動物標の領域を重畳して合成した前記合成画像を前記記録部に記録させる請求項1に記載の車載ドライブレコーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ドライブレコーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、撮像画像データのうちの特定対象を他の領域よりも低い圧縮率で圧縮して保存することにより記録装置の容量増大化を抑制するドライブレコーダ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-175848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたドライブレコーダ装置においては、撮像画像を複数のブロックに分割して、分割されたブロックに対して段階的に重みを付与して圧縮を行っている。そのため、特定対象が分割されたブロックを跨ぐ場合があり、データ量の抑制には改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、データ量をより適切に低減した画像データを記録することができる車載ドライブレコーダシステムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車載ドライブレコーダシステムは、自車両周辺を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された撮像画像を記録する記録部と、前記撮像画像中の移動物標であって、該移動物標の大きさ及び位置の少なくとも一方の変化量が所定の閾値を超える特定移動物標を取得する特定移動物標取得部と、前記撮像画像中の前記特定移動物標の領域を切り出すと共に該特定移動物標の領域の切出位置情報を取得する切出部と、前記撮像画像において前記切出部により切り出された前記特定移動物標の領域以外の領域を背景画像領域として取得し、前記特定移動物標の領域よりも低画質に変換した前記背景画像領域と切り出された前記特定移動物標の領域とを前記切出位置情報に基づいて合成した合成画像を前記記録部に記録させる記録制御部と、を含み、前記撮像画像が動画であり、前記記録制御部は、時系列に撮像された複数の静止画像の各々が低画質に変換されてなる複数の低画質画像で構成された低画質動画と、前記複数の静止画像の各々において、前記切出部により切り出された複数の前記特定移動物標の領域の画像で構成された高画質画像列と、前記複数の静止画像において前記切出部により取得された前記切出位置情報と、を前記合成画像を表すデータとして記録部に記録させる
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車載ドライブレコーダシステムによれば、撮像画像中の移動物標であって、この移動物標の大きさ及び位置の少なくとも一方の変化量が所定の閾値を超える特定移動物標を取得する特定移動物標取得部と、撮像画像中の特定移動物標の領域を切り出すと共に特定移動物標の領域の切出位置情報を取得する切出部と、撮像画像において切出部により切り出された特定移動物標の領域以外の領域を背景画像領域として取得し、特定移動物標の領域よりも低画質に変換した背景画像領域と切り出された特定移動物標の領域とを切出位置情報に基づいて合成した合成画像を記録部に記録させる記録制御部を含んでいる。そのため、撮像画像において、大きさ及び位置の少なくとも一方の変化量が所定の閾値を超える特定移動物標を背景画像から適切に分離することができる。これにより、撮像画像中において適切な必要領域である特定移動物標の領域のみを高画質とし、不要領域である背景画像領域を低画質とすることができるので、データ量をより適切に低減した画像データを記録することができる。また、記録制御部が、低画質動画と、高画質画像列と、切出位置情報とを合成画像を表すデータとして記録部に記録させる。これにより、低画質動画と、高画質画像列と、切出位置情報とに基づいて、適切な必要領域を高画質とし、不要領域を低画質とした動画を生成することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る車載ドライブレコーダシステムは、請求項1に記載の車載ドライブレコーダシステムにおいて、前記記録制御部は、前記背景画像領域を含む全領域が前記低画質に変換された低画質画像の上に、前記切出部により切り出された前記特定移動物標の領域を重畳して合成した前記合成画像を前記記録部に記録させる。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る車載ドライブレコーダシステムによれば、合成画像は、背景画像領域を含む全領域が低画質に変換された低画質画像の上に、切出部により切り出された特定移動物標の領域が重畳されて合成されているので、切り出された特定移動物標と低画質に変換された低画質画像とを適切に合成することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る車載ドライブレコーダシステムは、データ量をより適切に低減した画像データを記録することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る車載ドライブレコーダシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】センサ部による物標位置情報の取得方法を説明するための説明図である。
図5】前方カメラにより取得された撮像画像の一例を示す一例図である。
図6】合成画像の一例を示す一例図である。
図7】制御装置による制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図6を用いて本発明の一実施形態に係る車載ドライブレコーダシステムについて説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、車両の前後左右上下の方向を示すものとする。
【0015】
図1は本実施形態に係る車載ドライブレコーダシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態の車載ドライブレコーダシステム10は、車両40(以下「自車両40」と呼ぶ)に搭載されており、センサ部12、周辺監視カメラ14、記録部16、及び制御装置20を備えている。
【0016】
センサ部12は、ミリ波レーダとされており、それぞれがレーダ装置である前方レーダ12Aと後方レーダ12Bとを含んでいる。前方レーダ12Aは、自車両40の前端中央部に配設されており、自車両40の前方領域にある物標を点情報として検出する。後方レーダ12Bは、自車両40の後端中央部に配設されており、自車両40の後方領域にある物標を点情報として検出する。
【0017】
センサ部12に含まれるレーダ装置のそれぞれは、送信部、受信部、及び、信号処理部(いずれも不図示)を備えている。送信部は、ミリ波帯の電波(以下、単に「ミリ波」とも称呼される。)を放射(送信)する。受信部は、放射範囲内に存在する物標(例えば、他車両、歩行者、ガードレール及び建造物)によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。
【0018】
信号処理部は、送信されたミリ波と受信した反射波との位相差、それらの周波数差、反射波の減衰レベル、及び、ミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間等に基づいて、自車両40に対する物標の方位、自車両40と物標との距離、及び、自車両40と物標との相対速度等を表す情報を所定時間が経過する毎に「物標情報」として取得する。更に、信号処理部は、取得された物標情報を制御装置20と記録部16とに出力する。なお、信号処理部により複数の物標が検出されていれば、信号処理部は、物標のそれぞれに対応する物標情報を制御装置20と記録部16とにそれぞれ送信する。
【0019】
なお、本実施形態において、信号処理部は、周囲の物標の検出結果を処理する機能を有している。信号処理部は、直近の複数回の検出結果に含まれる個々の物標との相対位置や相対速度の変化等に基づき、ノイズや動きのない物標としてガードレール等の路側物等を除外し、歩行者や他車両等の移動物標を追従監視する。
【0020】
周辺監視カメラ14は、自車両40の周辺を撮像するカメラであり、カラーCCD(Charge Coupled Device)カメラ等で構成された複数の撮像部を備えている。本実施形態においては複数の撮像部として、自車両40の前方を撮像する前方カメラ14Aと、自車両40の後方を撮像する後方カメラ14Bとが設けられている。前方カメラ14A及び後方カメラ14Bは、それぞれ自車両40の前部及び後部の室内側又は室外側の車幅方向中央に設置されている。周辺監視カメラ14は、制御装置20からの撮像信号に基づいて所定のフレームレートで車両周辺を撮像すると共に、撮像画像データを制御装置20と記録部16とに出力する。なお、本実施形態においては、フレームレートは、センサ部12による物標情報の取得間隔と同じ間隔になるように設定される。
【0021】
記録部16は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリであり、周辺監視カメラ14で撮影された撮像画像を記録する。また自車両40の車速度及び操舵角等も記録する。本実施形態においては、記録部16は、センサ部12から出力された物標情報も記録する。
【0022】
図2は本実施形態に係る制御装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示されるように、制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read only Memory)24、RAM(Random Access Memory)26、ストレージ28、入出力I/F30を含んで構成されている。CPU22、ROM24、RAM26、ストレージ28及び入出力I/F30は、バス32を介して相互に通信可能に接続されている。
【0023】
CPU22は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU22は、ROM24又はストレージ28からプログラムを読み出し、RAM26を作業領域としてプログラムを実行する。CPU22は、ROM24又はストレージ28に記録されているプログラムに従って、後述する各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0024】
ROM24は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM26は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記録する。ストレージ28は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記録装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0025】
入出力I/F30は、制御装置20がセンサ部12、周辺監視カメラ14、及び記録部16等と入出力するためのインタフェースである。
【0026】
図3は制御装置20の機能構成の例を示すブロック図である。図3に示されるように、制御装置20は、特定移動物標取得部210と、切出部220と、記録制御部230と、を有する。各機能構成は、CPU22がROM24又はストレージ28に記録された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
【0027】
特定移動物標取得部210は、撮影画像中の移動物標のうち、大きさ及び位置の少なくとも一方の変化量が所定の閾値を超える移動物標を特定移動物標として取得する。本実施形態においては、位置の変化量が所定の閾値を超える移動物標を特定移動物標として取得する。
【0028】
図4はセンサ部12による物標位置情報の取得方法を説明するための説明図である。具体的には図4に示されるように、特定移動物標取得部210は、センサ部12から出力された自車両40に対する移動物標Pの方位から、反射波が自車両40に飛来する方向に基づき、自車両40の進行方向を基準とした移動物標Pまでの水平角度θ1を取得する。本実施形態において水平角度θ1は、上記基準から移動物標Pまでの時計回りの角度とする。なお、図4において、一点鎖線で示される領域Aは、前方レーダ12Aの検出範囲である。
【0029】
また、移動物標取得部210は、センサ部12から出力された自車両40と物標との距離Dと上記水平角度θ1とから移動物標Pの位置情報を取得する。移動物標Pの位置は、自車両40に対して固定的に設定されたxz座標面上に存在する移動物標Pのxz座標面内における座標位置情報で表される。ここでxz座標面は、自車両40の幅方向に平行なx軸と、自車両40の前後方向に平行で、かつ自車両40の幅方向の中央を通るz軸とによって規定される。xz座標面内の移動物標Pの位置は、自車両40に対する相対位置となる。なお、本実施形態においてxz座標面内の原点は、自車両40の前端の車幅方向中央とする。
【0030】
特定移動物標取得部210は、同様にしてセンサ部12から出力された自車両40に対する移動物標Pの方位から、反射波が自車両40に飛来する方向に基づき、自車両40の進行方向を基準とした移動物標Pまでの垂直角度θ2(図示省略)を取得し、センサ部12から出力された自車両40と物標との距離Dと上記垂直角度θ2とから移動物標Pの位置情報を取得する。移動物標Pの位置は、自車両40に対して固定的に設定されたyz座標面上に存在する移動物標Pのyz座標面内における座標位置情報で表される。
【0031】
ここでyz座標面は、自車両40の高さ方向に平行なy軸と、上記z軸とによって規定される。yz座標面内の移動物標Pの位置は、自車両40に対する相対位置となる。なお、本実施形態においてyz座標面内の原点は、自車両40の前端中央に配設された前方レーダ12Aの取付位置とする。すなわち、y軸方向の原点は、前方レーダ12Aの高さ位置とされる。特定移動物標取得部210は、このようにして取得された移動物標Pのx軸方向とy軸方向の位置F(x,y)をxy座標で形成されたセンサ部二次元マップにプロットする。
【0032】
特定移動物標取得部210は、更に、周辺監視カメラ14から出力された撮像画像データにおいて座標を設定する。前方カメラ14Aにより撮像されている撮像画像データを一例として以下説明する。図5は前方カメラ14Aにより撮像された撮像画像50の一例を示す一例図である。なお、図5に示される撮像画像50は、自車両40が一例として左車線を走行中に前方カメラ14Aにより撮像された画像であり、撮像画像50内の他車両42は、反対車線(右車線)から左車線に入ってきた車両である。
【0033】
特定移動物標取得部210は、撮像画像50において座標軸を設定する。前方カメラ14Aは自車両40の前部の室内側の車幅方向中央に設置されているので、前方カメラ14Aが設置された位置を原点とし、自車両40の車幅方向をx軸、自車両40の車両上下方向をy軸とする。
【0034】
更に、特定移動物標取得部210は、前方カメラ14Aからの画像データを解析することによって自車両40の周囲にある物標を検出し、その物標の自車両40に対する位置(距離及び方位)及び形状を特定する。例えば図5において、特定移動物標取得部210は、他車両42及び他車両44を含む複数の物標を検出する。特定移動物標取得部210は、例えば他車両42において、他車両42を囲む矩形状の外枠42A(図5中、二点鎖線で示す)を設定し、その外枠42Aのx軸方向の幅Sとy軸方向の高さHとを他車両42の大きさ情報として検出する。また、特定移動物標取得部210は、一例として外枠42Aの左下の頂点の座標であるF(x,y)を他車両42の位置情報として検出する。特定移動物標取得部210は、同様にして他車両44やその他の物標についても大きさ情報及び位置情報を検出する。
【0035】
また、特定移動物標取得部210は、上述したセンサ部二次元マップ上のデータを撮像画像50上に変換する。この変換は一例として、次のように行う。センサ二次元マップ上のx軸方向の原点と、撮像画像50上のx軸方向の原点は共に自車両40の車幅方向中央であるため、x軸は一致している。センサ二次元マップ上のy軸方向の原点は、自車両40の前端中央に配設された前方レーダ12Aの取付位置であり、撮像画像50上のy軸方向の原点は、前方カメラ14Aが設置された位置である。そのため、前方レーダ12Aと前方カメラ14Aとの位置関係から予め変換値を算出しておき、特定移動物標取得部210は、算出された変換値に基づいて、センサ部二次元マップ上のy軸方向のデータを変換する。
【0036】
特定移動物標取得部210は、センサ部二次元マップから撮像画像50上に変換された移動物標Pの位置に存在する物標を撮像画像50において移動物標として検出する。図5においては、他車両42と他車両44とが移動物標として検出される。
【0037】
特定移動物標取得部210は、撮像画像50において検出された移動物標の各々において、時系列に隣接して撮像された撮像画像(本実施形態においては、過去画像)から位置の変化量が、予め設定された所定の閾値を超える移動物標を特定移動物標として取得する。なお、所定の閾値は、x座標とy座標の各々について設定される。
【0038】
具体的には、特定移動物標取得部210は、図5に示される撮像画像50のF(x,y)と、図5に示される撮像画像50よりも一つ前のフレームの撮像画像(図示省略)のF(x,y)との変化量であるΔx及びΔyの何れか一方の値が上記所定の閾値を超えた場合に、その移動物標を特定移動物標として取得する。図5においては、他車両42は、反対車線(右車線)から自車両40の走行車線に進入してきた車両であり、特定移動物標取得部210により、位置の変化量Δxが所定の閾値を超えていると判定されて、特定移動物標とされる。
【0039】
切出部220は、撮像画像50中の特定移動物標である他車両42を囲む外枠42A内の領域50Aを高画質のまま記録する高画質画像として切り出すと共に、特定移動物標の領域50Aの切出位置情報としてF(x,y)を取得する。
【0040】
記録制御部230は、撮像画像50において切出部220により切り出された特定移動物標すなわち他車両42の領域50A以外の領域を背景画像領域50Bとして取得し、特定移動物標の領域50Aよりも低画質に変換した背景画像領域50Bと切り出された特定移動物標の領域50Aとを切出位置情報に基づいて合成した合成画像60を記録部16に記録させる。
【0041】
具体的には、記録制御部230は、周辺監視カメラ14により時系列に撮像された撮像画像50を含む複数の静止画像から構成された周辺映像(動画)に対してデータ圧縮処理を行う。具体的には、フルカラー画像で構成された各静止画像をグレースケール10ビット階調の画像に変換すると共に、1920×1080ピクセルで構成された各静止画像を960×540ピクセルの画像に変換することにより、切出部220により切り出された他車両42の領域50Aよりも低画質に変換された低画質画像を生成する。
【0042】
記録制御部230は、変換された複数の低画質画像で構成された動画、つまり上記データ圧縮処理が施された周辺映像を低画質動画として記録部16に記録させる。なお、低画質動画は、一例としてMP4のファイル形式により記録させる。
【0043】
また、記録制御部230は、各静止画像において切出部220により取得された特定移動物標の領域50Aの切出位置F(x,y)を特定移動物標位置列としてテキストファイル形式で記録部16に記録させる。
【0044】
また、記録制御部230は、各静止画像において切出部220により切り出された特定移動物標の領域50Aを高画質画像列として記録部16に記録させる。なお、記録制御部230は、各撮像画像に例えばID(identification)を付与し、このID毎に、低画質画像、切出位置F(x,y)、及び特定移動物標の領域50Aを関連付けて記録させる。
【0045】
記録部16に記録された低画質動画、特定移動物標位置列、及び高画質画像列は、表示制御部(図示省略)により読み出されて、モニタ等の表示部(図示省略)に合成画像として表示される。図6は合成画像60の一例を示す一例図である。図6に示されるように、合成画像60は複数の静止画像により構成されており、各静止画像は同じIDが付与された低画質画像、切出位置F(x,y)、及び特定移動物標の領域50Aに基づいて合成されている。
【0046】
すなわち、各静止画像は、低画質画像の上に、切出位置F(x,y)に特定移動物標の領域50Aの左下頂点を位置させて特定移動物標の領域50Aが重畳されて合成されている。このように構成された各静止画像が連続して表示部に表示されることにより、特定移動物標の領域50Aが高画質、特定移動物標の領域50A以外の背景画像領域50Bが低画質で各々表示された映像が表示される。
【0047】
次に、車載ドライブレコーダシステム10の作用について説明する。
【0048】
図7は制御装置20による制御を説明するためのフローチャートである。CPU22がROM24又はストレージ28からプログラムを読み出してRAM26に展開して実行することにより、CPU22による制御処理が行なわれる。
【0049】
記録部16は、周辺監視カメラ14から出力された自車両40の周辺が撮像された周辺映像(動画)と、この周辺映像を構成し時系列で撮像された複数の撮像画像の各々と略同じタイミングでセンサ部12により取得された物標情報を記録する(ステップS11)。
【0050】
CPU22は、記録部16の記録容量が予め定められた閾値を超過したか否かを判定する(ステップS12)。ここで記録容量の閾値は、実際に記録可能な容量よりも低い値に設定されている。すなわち、記録部16の記録容量を超えないために、以下のデータ圧縮処理が行われる
【0051】
ステップS12において、記録部16の記録容量が超過していない場合(ステップS12;NO)には、CPU22はステップS11に処理を移行し、記録部16の記録容量が予め定められた閾値を超過するまでステップS11の処理を繰り返し行う。一方、ステップS12において、記録部16の記録容量が超過した場合(ステップS12;YES)には、CPU22は、記録部16に記録されたデータを圧縮する処理を開始する(ステップS13)。
【0052】
まず、特定移動物標取得部210は、記録部16に記録された周辺映像において、この周辺映像を構成し、時系列で撮像された複数の静止画像のうち、最も過去の静止画像であって時系列に隣接する2枚の静止画像において、上述したようにして、静止画像中の移動物標の大きさ及び位置情報を取得する(ステップS14)。
【0053】
次に、特定移動物標取得部210は、ステップS14にて取得した2枚の静止画像における移動物標の位置情報から位置の変化量を取得し、この変化量が所定の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS15)。変化量が所定の閾値を超えない場合(ステップS15;NO)には、特定移動物標取得部210は、その移動物標は高画質の画像を記録する必要がないと判定し、CPU22がステップS12へ処理を移行して、周辺映像を構成する全フレーム(撮像画像)において処理が完了したか否かを判定する(ステップS19)。処理が完了していない場合(ステップS19;NO)には、CPU22はステップS14に処理を移行して、全フレームにおいて処理が完了するまでステップS14以降の処理を繰り返し行う。
【0054】
一方、ステップS15において、変化量が所定の閾値を超える場合(ステップS15;YES)には、特定移動物標取得部210は、変化量が所定の閾値を超えた移動物標は高画質の画像を記録する必要があると判定し、この移動物標を特定移動物標として取得する(ステップS16)。
【0055】
次に、切出部220は、ステップS16にて特定移動物標取得部210により取得された特定移動物標を示す静止画像内の領域、すなわち図4で示される特定移動物標の領域50Aを撮像画像50から切り出し(ステップS17)、撮像画像50における領域50Aの切出位置F(x、y)を取得する(ステップS18)。
【0056】
次に、CPU22は、周辺映像を構成する全フレーム(各静止画像)において処理が完了したか否かを判定する(ステップS19)。処理が完了していない場合(ステップS19;NO)には、CPU22はステップS14に処理を移行して、全フレームにおいて処理が完了するまでステップS14以降の処理を繰り返し行う。処理が完了した場合(ステップS19;YES)には、記録制御部230が上述したようにしてデータ圧縮処理を行う(ステップS20)。記録制御部230は、ステップS13からステップS19において各種処理を行っていた周辺画像(動画)すなわち元動画を構成する各静止画像に対してデータ圧縮処理を行う。
【0057】
次に、記録制御部230は、上述したように合成画像として低画質動画、特定移動物標位置列、及び高画質画像列を記録部16に記録させる(ステップS21)。このようにして、一連の処理は行われる。
【0058】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係る車載ドライブレコーダシステム10によれば、撮像画像50中の移動物標であって、この移動物標の位置の変化量が所定の閾値を超える特定移動物標を取得する特定移動物標取得部210と、撮像画像50中の特定移動物標の領域50Aを切り出すと共に特定移動物標の領域50Aの切出位置情報を取得する切出部220と、撮像画像50において切出部220により切り出された特定移動物標の領域50A以外の領域を背景画像領域50Bとして取得し、特定移動物標の領域50Aよりも低画質に変換した背景画像領域50Bと切り出された特定移動物標の領域50Aとを切出位置情報に基づいて合成した合成画像60を記録部16に記録させる記録制御部230を含んでいる。そのため、撮像画像50において、位置の変化量が所定の閾値を超える特定移動物標の領域50Aと背景画像の領域50Bとを適切に分離することができる。これにより、撮像画像50中において適切な必要領域である特定移動物標の領域50Aのみを高画質とし、不要領域である背景画像領域50Bを低画質とすることができるので、データ量をより適切に低減した画像データを記録することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、合成画像60は、背景画像の領域50Bを含む全領域が低画質に変換された低画質画像の上に、切出部220により切り出された特定移動物標の領域50Aが重畳されて合成されているので、切り出された特定移動物標と低画質に変換された低画質画像とが適切に合成される。
【0061】
また、本実施形態によれば、記録制御部230が、低画質動画と、高画質画像列と、切出位置情報とを合成画像を表すデータとして記録部16に記録させている。これにより、低画質動画と、高画質画像列と、切出位置情報とに基づいて、適切な必要領域を高画質とし、不要領域を低画質とした動画像を生成することができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、特定移動物標取得部210は、位置の変化量を判定する際に、F(x,y)との変化量であるΔx及びΔyの何れか一方の値が所定の閾値を超えた場合に、その移動物標を特定移動物標として取得しているが、本発明はこれに限られず、Δx及びΔyの両方の値が所定の閾値を超えた場合に、その移動物標を特定移動物標として取得してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、特定移動物標取得部210は、特定移動物標を取得するために、位置の変化量を判定しているが、本発明はこれに限られない。例えば、大きさの変化量を判定してもよいし、位置と大きさの両方の変化量を判定してもよい。位置と大きさの両方の変化量を判定する場合には、どちらか一方の変化量が所定の閾値を超えた場合に、その移動物標を特定移動物標として取得してもよいし、両方の変化量が所定の閾値を超えた場合に、その移動物標を特定移動物標として取得してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、周辺監視カメラ14は前方カメラ14Aと後方カメラ14Bにより構成されているが、本発明はこれに限られない。自車両40の周辺画像を取得可能であれば、さらに右側方カメラ及び左側方カメラを備えていてもよいし、さらに他のカメラを備えていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では撮像画像50にいて特定移動物標が他車両42のみである場合を一例として説明したが、本発明はこれに限られない。例えば特定移動物標が2つ等、複数存在していてもよい。この場合、複数の特定移動物標の領域の各々を高画質領域として切り出して合成する。
【0066】
また、上記実施形態では、周辺監視カメラ14を構成するカメラは、カラーCCDで構成されているが、本発明はこれに限られない。例えばモノクロCCDであってもよいし、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等他の種類のカメラで構成されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、センサ部12としてミリ波レーダを使用したレーダ装置を採用しているが、本発明はこれに限られない。例えばレーザーレーダを使用したレーダ装置を採用してもよいし、2つのカメラ(ステレオカメラ)をセンサ部12として採用してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、記録部16の記録容量が超過した場合に、図7で示されるデータ圧縮処理を行っているが、本発明はこれに限られない。例えば記録部16に記録されてから予め定められた一定期間以上経過した動画像に対して図7で示されるデータ圧縮処理を行うようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、記録制御部230は、背景画像領域50Bを含む全領域が低画質に変換された低画質画像の上に、切出部220により切り出された特定移動物標の領域50Aを重畳して合成した合成画像を記録部16に記録しているが、本発明はこれに限られない。例えば、記録制御部230は、背景画像領域50Bのみが低画質に変換された低画質背景画像と、切出部220により切り出された特定移動物標の領域50Aとを合成した合成画像を記録部16に記録させてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、前方カメラ14Aにより撮像された周辺映像におけるデータ圧縮処理について説明したが、後方カメラ14Bにより撮像された周辺映像についても同様のデータ圧縮処理を行うことができる。
【0071】
また、上記実施形態で図2に示されるCPU22がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0072】
また、上記実施形態で説明した各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0073】
なお、上記実施形態及び上述の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
10 車載ドライブレコーダシステム
14 周辺監視カメラ
14A 前方カメラ(撮像部)
14B 後方カメラ(撮像部)
16 記録部
210 特定移動物標取得部
220 切出部
230 記録制御部
40 自車両
42 他車両(特定移動物標)
50 撮像画像
50A 特定移動物標の領域
50B 背景画像領域
60 合成画像
P 物標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7