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特許7567632エレベータ用遮煙装置及びエレベータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】エレベータ用遮煙装置及びエレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20241008BHJP
   B66B 13/30 20060101ALI20241008BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B66B11/02 Z
B66B13/30 R
B66B5/02 E
B66B5/02 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021064386
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159915
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】松本 健汰
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-292117(JP,A)
【文献】特開平09-315717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0023530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 11/00-11/08
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降するエレベータかごの少なくとも1つの外側面に格納状態で取り付けられ、展開されたときに、前記エレベータかごの前記昇降路と対向する全ての外側面に亘って前記エレベータかごと前記昇降路の間に広げられ、前記昇降路内の空間を上下に仕切る第1の遮煙部材と、
前記第1の遮煙部材を展開させる第1の展開手段と
を備えたエレベータ用遮煙装置。
【請求項2】
前記エレベータかごの出入口が設けられた側の外側面に格納状態で取り付けられ、展開されたときに、前記出入口の全周囲に亘って前記エレベータかごと前記昇降路の間に広げられ、前記昇降路内の空間を前記出入口と前記昇降路の間の空間とその他の空間とに仕切る第2の遮煙部材と、
前記第2の遮煙部材を展開させる第2の展開手段と
を備えた請求項1記載のエレベータ用遮煙装置。
【請求項3】
前記第1の遮煙部材は、内部空間を有し、当該内部空間に流体を充填されて膨張する膨張部材であり、
前記第1の展開手段は、前記内部空間に前記流体を充填させる請求項1又は2記載のエレベータ用遮煙装置。
【請求項4】
前記第1の遮煙部材は、折り畳んで格納される複数の板状部材を有し、
前記第1の展開手段は、折り畳まれた前記複数の板状部材を前記エレベータかごと前記昇降路の間に広げる請求項1又は2記載のエレベータ用遮煙装置。
【請求項5】
前記第1の遮煙部材は、前記エレベータかごの外側面に取り付けられ、前記エレベータかごから前記昇降路に向かって伸縮するリンク機構と、当該リンク機構に取り付けられたシート材とを有し、
前記第1の展開手段は、前記リンク機構を前記エレベータかごから前記昇降路に向かって伸ばすことによって前記シート材を前記エレベータかごと前記昇降路の間に広げる請求項1又は2記載のエレベータ用遮煙装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のエレベータ用遮煙装置と、
前記エレベータかごと、
前記昇降路が設けられた建物内に設置されている火災検知器から火災検知の信号を受信した場合に、前記第1の遮煙部材により前記昇降路内の空間が上下に仕切られる仕切位置が、火災が検知された階の乗場と前記昇降路の間に設けられた乗場出入口よりも上方となるように前記エレベータかごを移動させ、且つ、前記第1の展開手段により前記第1の遮煙部材を展開させる制御手段と
を備えるエレベータ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記火災検知の信号を受信した場合に、前記仕切位置が、前記火災が検知された階の乗場と前記昇降路の間に設けられた乗場出入口と、前記火災が検知された階の1つ上の階の乗場と前記昇降路の間に設けられた乗場出入口との間となるように前記エレベータかごを移動させる請求項6記載のエレベータ装置。
【請求項8】
前記エレベータかごは、前記少なくとも1つの外側面に前記第1の遮煙部材が取り付けられる凹状の格納部を有する請求項6又は7記載のエレベータ装置。
【請求項9】
昇降路内を昇降するエレベータかごの出入口が設けられた側の外側面に格納状態で取り付けられ、展開されたときに、前記出入口の全周囲に亘って前記エレベータかごと前記昇降路の間に広げられ、前記昇降路内の空間を前記出入口と前記昇降路の間の空間とその他の空間とに仕切る第2の遮煙部材と、
前記第2の遮煙部材を展開させる第2の展開手段と
を備えたエレベータ用遮煙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災が発生したときに昇降路を経由した煙の移動を抑制するためのエレベータ用遮煙装置及びエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータが設置された建物において、ある階で火災が発生したときにその煙が昇降路を通って他階へ広がるのを防ぐために、昇降路の乗場出入口などに遮煙装置を設ける技術が知られている。特許文献1には、昇降路の各乗降階に設けられた乗場出入口とその乗場出入口に設けられた乗場扉との隙間に、火災発生の際に膨張してその隙間を閉塞する膨張遮煙材を設けることが開示されている。特許文献2には、昇降路内壁の複数箇所に、昇降路を上下に仕切る仕切り装置を設け、火災発生の際には、かごを火災発生階よりも下方へ移動させるとともに、昇降路内壁の火災発生階に近い位置に設けられた仕切り装置を駆動して昇降路を上下に仕切ることが開示されている。なお、この仕切り部材には、かごのロープやガイドレール、釣合い重りなどが通過可能な切欠部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-72680号公報
【文献】特開2012-30932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示の遮煙装置は、各階の乗場出入口にそれぞれ膨張遮煙材を設ける必要があり、その設置やメンテナンスに掛かるコストが高額になってしまうという問題がある。また、上記特許文献2に開示の遮煙装置も、昇降路内壁の上下方向の所定間隔毎に、たとえば2階分の高さの間隔毎に仕切り装置を設ける必要があり、その設置やメンテナンスに掛かるコストが高額になってしまうという問題がある。この問題は階数が多い高層ビルではより顕著となる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、より低コストで、火災が発生したときに昇降路を経由した煙の移動を抑制できるエレベータ用遮煙装置及びエレベータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータ用遮煙装置は、昇降路内を昇降するエレベータかごの少なくとも1つの外側面に格納状態で取り付けられ、展開されたときに、エレベータかごの昇降路と対向する全ての外側面に亘ってエレベータかごと昇降路の間に広げられ、昇降路内の空間を上下に仕切る第1の遮煙部材と、第1の遮煙部材を展開させる第1の展開手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベータ用遮煙装置によれば、より低コストで、火災が発生したときに昇降路を経由した煙の移動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係るエレベータ装置の概略構成を示す図である。
図2】エレベータ用遮煙装置が取り付けられていない状態のエレベータかごを示す図である。
図3】エレベータかごに取り付けられたエレベータ用遮煙装置の格納状態を示す図である。
図4】エレベータかごに取り付けられたエレベータ用遮煙装置の展開状態を示す図である。
図5】遮煙運転状態のエレベータかごとエレベータ用遮煙装置を示す図である。
図6】エレベータ装置により行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図7】エレベータ装置のハードウェア構成図である。
図8】第1の遮煙部材の第1の変形例を示す図である。
図9】第1の展開手段の第1の構成例を示す図である。
図10】第1の展開手段の第2の構成例を示す図である。
図11】第1の遮煙部材の第2の変形例の格納状態を示す図である。
図12】第1の遮煙部材の第2の変形例の展開状態を示す図である。
図13】エレベータかごに対する第1の遮煙部材の取付位置の変更例を示す図である。
図14】エレベータかごに対する第1の遮煙部材の取付位置の変更例を示す図である。
図15】第2の実施の形態に係るエレベータ装置の遮煙運転時の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
以下、第1の実施の形態に係るエレベータ用遮煙装置及びエレベータ装置について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るエレベータ装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、エレベータ装置10は、エレベータ20と、エレベータ用遮煙装置30と、エレベータ20及びエレベータ用遮煙装置30の動きを制御するエレベータ制御部40と、その制御に参照される各種データが記憶された記憶部50を備えている。また、エレベータ20が設けられた建物には、煙又は熱を感知することにより火災の発生を検知する火災検知器41が複数設けられている。
【0010】
エレベータ20は、昇降路内を昇降するエレベータかご21と、エレベータかご21にロープを介して連結された釣合錘(図示せず)と、ロープを介してエレベータかご21及び釣合錘を昇降させる巻上機22を備えている。巻上機22によりロープが巻き上げられ、エレベータかご21及び釣合錘がそれぞれ互いに反対方向に移動し、エレベータかご21が建物に設けられた複数の乗場のうちの任意の乗場に着床して、利用者が乗降可能になっている。
【0011】
エレベータ制御部40は、エレベータ20の運行に関わる各種情報に基づいて運転モードを適宜切り替え、その運転モードによりエレベータ20の各部を制御する。運転モードには、通常運転、火災管制運転、遮煙運転等がある。エレベータ制御部40は、平常時は通常運転が行われるようにエレベータ20を制御する。また、エレベータ制御部40は、火災検知器41から火災検知の信号を受信した場合、まず火災管制運転が行われるようにエレベータ20を制御する。火災管制運転の際には、エレベータ制御部40は、エレベータかご21内の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合に、エレベータかご21を予め定められた避難階の乗場に着床させて乗客を避難させる。その後、エレベータ制御部40は、遮煙運転が行われるように、エレベータ20とエレベータ用遮煙装置30の動きを制御する。この遮煙運転については詳細を後述する。
【0012】
エレベータ用遮煙装置30は、エレベータかご21に取り付けられて使用されるものであり、第1の遮煙部材31と、第1の遮煙部材31を展開させる第1の展開手段32を備えている。また、エレベータ用遮煙装置30は、第2の遮煙部材36と、第2の遮煙部材36を展開させる第2の展開手段37を備えている。
【0013】
図2は、エレベータ用遮煙装置30が取り付けられていない状態のエレベータかご21を示す図である。エレベータかご21には、上下方向の上方寄りの位置において水平方向にエレベータかご21の全周に亘る凹状の第1の格納部23が形成されている。この第1の格納部23に、第1の遮煙部材31が取り付けられる。また、エレベータかご21には、出入口25の全周囲に亘って凹状の第2の格納部24が形成されている。この第2の格納部24に、第2の遮煙部材36が取り付けられる。
【0014】
図3及び図4は、いずれもエレベータ用遮煙装置30が取り付けられている状態のエレベータかご21を示す図であり、図3には、格納状態のエレベータ用遮煙装置30が示されている。図4には、展開状態のエレベータ用遮煙装置30が示されている。
【0015】
第1の遮煙部材31は、内部空間を有し、その内部空間に流体を充填されて膨張する膨張部材である。第1の遮煙部材31は、図3に示すように、第1の格納部23に沿ってエレベータかご21を囲むように配置されている。第1の遮煙部材31は、格納状態では、図3に示すように、小さく収縮された状態で第1の格納部23に納められる。
【0016】
第1の展開手段32は、エレベータ制御部40からの制御信号に基づいて動作し、第1の遮煙部材31を構成する膨張部材の内部空間に流体を充填させることによってその膨張部材を膨張させる。第1の遮煙部材31は、第1の展開手段32により展開され、図4に示すように、エレベータかご21の昇降路Hと対向する全ての外側面に亘ってエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられる。これにより、昇降路H内の空間が上下に仕切られ、その仕切られた位置の上方と下方の間の煙の移動を抑制できる。
【0017】
第1の展開手段32は、たとえばボンベに封じられた圧搾空気を膨張部材の内部空間に供給するものであってもよいし、火薬、爆薬、発泡剤等を用いて発生させたガスを膨張部材の内部空間に供給するものであってもよい。また、第1の展開手段32は、ポンプで膨張部材の内部空間に空気を供給するものであってもよいし、その他の構成により膨張部材の内部空間に流体を充填させるものであってもよい。
【0018】
第2の遮煙部材36は、内部空間を有し、その内部空間に流体を充填されて膨張する膨張部材である。第2の遮煙部材36は、第2の格納部24に沿って出入口25の周囲を囲むように延びている。第2の遮煙部材36は、格納状態では、図3に示すように、小さく収縮された状態で第2の格納部24に納められる。
【0019】
第2の展開手段37は、エレベータ制御部40からの制御信号に基づいて動作し、第2の遮煙部材36を構成する膨張部材の内部空間に流体を充填させることによってその膨張部材を膨張させる。第2の遮煙部材36は、第2の展開手段37により展開され、図4に示すように、出入口25の全周囲に亘ってエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられる。これにより、昇降路H内の空間が出入口25と昇降路Hの間の空間とその他の空間に仕切られ、そのいずれか一方の空間から他方の空間への煙の移動を抑制できる。
【0020】
第2の展開手段37は、第1の展開手段32と同様に、たとえばボンベに封じられた圧搾空気を膨張部材の内部空間に供給するものであってもよいし、火薬、爆薬、発泡剤等を用いて発生させたガスを膨張部材の内部空間に供給するものであってもよい。また、第2の展開手段37は、ポンプで膨張部材の内部空間に空気を供給するものであってもよいし、その他の構成により膨張部材の内部空間に流体を充填させるものであってもよい。
【0021】
次に、図5を参照して遮煙運転について説明する。図5は、遮煙運転状態のエレベータかご21とエレベータ用遮煙装置30を示す図である。遮煙運転の際に、エレベータ制御部40は、まずエレベータかご21を火災が検知された階である火災階Fに移動させる。その後、エレベータ制御部40は、第1の展開手段32により第1の遮煙部材31を展開させるとともに、第2の展開手段37により第2の遮煙部材36を展開させる。このとき、図5に示すように、展開された第1の遮煙部材31により昇降路H内の空間が上下に仕切られる仕切位置Sは、火災階Fの乗場と昇降路Hの間に設けられた乗場出入口55とその1つ上の階の乗場と昇降路Hの間に設けられた乗場出入口55との間となる。また、展開された第2の遮煙部材36により向い合って配置されるエレベータかご21の出入口25と火災階Fの乗場出入口55の周囲が囲まれ、その囲まれた空間が昇降路Hの他の空間と仕切られる。
【0022】
これにより、仮に火災の煙が火災階Fの乗場出入口55から出入口25と昇降路Hの間の空間に進入した場合でも、展開された第2の遮煙部材36により、煙が昇降路Hの他の空間に広がってしまうことを抑制できる。また、仮に火災の煙が昇降路Hの仕切位置Sより下方に進入した場合でも、展開された第1の遮煙部材31により、煙が仕切位置Sより上方へ広がってしまうことを抑制できる。なお、この遮煙運転については、その実行の要否を予め設定可能にし、その設定に応じて遮煙運転を実行し又は実行しないようにすることができる。例えば、遮煙運転機能の有効/無効を設定した設定情報を記憶部50に記憶させ、エレベータ制御部40が、その記憶された設定情報を参照して遮煙運転を実行し又は実行しないようにする。
【0023】
ここで、図6に示すフローチャートを参照して、エレベータ装置10により行われる処理の流れについて説明する。まず、平常時に、エレベータ制御部40が、通常運転が行われるようにエレベータ20を制御しながら(ステップS1)、火災検知器41のいずれかから火災検知の信号を受信したか否かを監視する(ステップS2)。火災検知器41から火災検知の信号を受信した場合は(ステップS2、YES)、ステップS3以降の処理を行う。一方、火災検知器41から火災検知の信号を受信していない場合は(ステップS2、NO)、ステップS1に戻る。
【0024】
ステップS3では、エレベータ制御部40が、火災管制運転が行われるようにエレベータ20を制御する(ステップS3)。火災管制運転においては、エレベータかご21内に乗客がいる場合に、エレベータ制御部40が、エレベータかご21を予め定められた避難階の乗場に着床させて乗客を避難させる。次いで、エレベータ制御部40が、エレベータかご21内の乗客の有無を判断し(ステップS4)、乗客がいない場合は(ステップS4、YES)、ステップS5以降の処理を行う。一方、乗客が残っている場合は(ステップS4、NO)、ステップS3に戻る。
【0025】
ステップS5では、エレベータ制御部40が、記憶部50に記憶されている遮煙運転機能の有効/無効の設定情報を参照して、遮煙運転機能が有効になっているか否かを判断する(ステップS5)。遮煙運転機能が無効である場合は(ステップS5、NO)、そこで処理を終了する。一方、遮煙運転機能が有効である場合は(ステップS5、YES)、遮煙運転の実行する処理としてステップS6以降の処理を行う。ステップS6では、エレベータ制御部40が、エレベータ20を制御してエレベータかご21を火災階Fに移動させる(ステップS6)。その後、エレベータ制御部40が、第1の展開手段32により第1の遮煙部材31を展開させるとともに、第2の展開手段37により第2の遮煙部材36を展開させ(ステップS7)、処理を終了する。
【0026】
なお、エレベータ装置10による処理の流れにおいて、遮煙運転機能の有効/無効を判断するステップは省略してもよい。たとえば遮煙運転機能の有効/無効を判断することなく、常に遮煙運転が実行されるようにすることができる。また、展開された第1の遮煙部材31と第2の遮煙部材36は、火災の鎮火後に、例えば保守員による復旧作業において再度格納され、又は新品に交換されるようにすることができる。
【0027】
エレベータ装置10の各構成は、図7に示す、プロセッサ51、メモリ52及び信号入出力部53を備えたコンピュータにより構成されている。エレベータ制御部40の各機能は、このコンピュータにより実現される。即ち、コンピュータのメモリ52には、エレベータ制御部40の各機能を実現するためのプログラム(エレベータ制御プログラム)が格納されている。また、記憶部50に記憶される各種情報は、メモリ52に格納される。プロセッサ51は、メモリ52に格納されたプログラムに基づいて、エレベータ20及びエレベータ用遮煙装置30の動きを制御するための演算処理を実行する。
【0028】
以上説明したように、エレベータ装置10は、エレベータかご21に取り付けられたエレベータ用遮煙装置30を有する。エレベータ用遮煙装置30は、昇降路H内を昇降するエレベータかご21の少なくとも1つの外側面に格納状態で取り付けられ、展開されたときに、エレベータかご21の昇降路Hと対向する全ての外側面に亘ってエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられ、昇降路H内の空間を上下に仕切る第1の遮煙部材31と、第1の遮煙部材31を展開させる第1の展開手段32とを備えている。このため、火災が発生した時に、第1の展開手段32により第1の遮煙部材31を展開させることによって、昇降路H内を経由した煙の移動を抑制できる。
【0029】
また、エレベータ用遮煙装置30は、エレベータかご21に取り付けられているため、昇降路H内におけるエレベータかご21の停止位置を適宜制御することによって、第1の遮煙部材31を展開させる位置を任意に変更できる。たとえば火災階Fの位置に応じて、遮煙による火災被害の低減に最も効果的な昇降路H内の位置で第1の遮煙部材31が展開されるようにすることができる。これにより、各階の乗場出入口又は昇降路内壁の複数個所にそれぞれ遮煙装置を設ける従来の方法と比べて、より低コストで、昇降路H内を経由した煙の移動を効果的に抑制できる。
【0030】
さらに、エレベータ用遮煙装置30は、エレベータかご21の出入口25が設けられた側の外側面に格納状態で取り付けられ、展開されたときに、出入口25の全周囲に亘ってエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられ、昇降路H内の空間を出入口25と昇降路Hの間の空間とその他の空間とに仕切る第2の遮煙部材36と、第2の遮煙部材36を展開させる第2の展開手段37とを備えている。このため、第2の展開手段37により第2の遮煙部材36を展開させることによって、昇降路H内を経由した煙の移動をさらに抑制できる。
【0031】
なお、上記第1の実施の形態では、第1の遮煙部材31が、格納状態において、第1の格納部23に沿ってエレベータかご21を囲むように配置されている場合について説明したが、これに限定されない。第1の遮煙部材31は、展開されたときに、エレベータかご21の昇降路Hと対向する全ての外側面に亘ってエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられるように、エレベータかご21の少なくとも1つの外側面に格納されていれば足りる。たとえば、エレベータかご21の1つ又は2つの外側面に小さく収縮して格納された膨張部材が、内部空間に流体を充填されるにつれてエレベータかご21を囲むように徐々に広げられる構成であってもよい。
【0032】
また、第1の遮煙部材31は、2以上の分割体からなるものであってもよい。たとえば、水平方向の断面が略矩形であるエレベータかご21の4つの外側面にそれぞれ、その外側面と対向する昇降路Hとの間に広げられる膨張部材を格納状態で取り付けられるようにしてもよい。
【0033】
また、上記第1の実施の形態では、第1の遮煙部材31と第2の遮煙部材36が、内部空間を有する膨張部材であり、その内部空間に流体を充填されて膨張することによって昇降路H内に仕切りを形成する構成である場合について説明したが、これに限定されない。たとえば図8に示すように、折り畳んで格納される複数の板状部材をエレベータかご21と昇降路Hの間に広げることによって昇降路H内に仕切りを形成する構成であってもよい。
【0034】
図8は、第1の遮煙部材の第1の変形例を示す図である。この構成は、第2の遮煙部材にも同様にも適用することができる。図8(a)には第1の遮煙部材131の格納状態が示されている。図8(b)には第1の遮煙部材131の展開途中の状態が示されている。図8(c)には第1の遮煙部材131の展開された状態が示されている。なお、図8(a)~(c)では、理解を容易にするため、第1の遮煙部材131の、エレベータかご21の1つの外側面に取り付けられる部分のみを図示しているが、図示のような構成はエレベータかご21の4つの外側面にそれぞれ取り付けられる。
【0035】
第1の遮煙部材131は、一端辺が蝶番81を介してエレベータかご21の外側面に取り付けられた矩形板状部材82と、その矩形板状部材82の左右の各端辺にばね付き蝶番83を介して取り付けられた三角形板状部材84を有する。第1の遮煙部材131は、格納状態では、図8(a)に示すように、矩形板状部材82と三角形板状部材84が折り畳まれてエレベータかご21の外側面側に納められる。そして、展開されるときは、第1の展開手段(図8には図示していない)によって、図8(b)に示すように、矩形板状部材82が蝶番81を軸に回動されてエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられる。この矩形板状部材82が広げられることに伴い、ばね付き蝶番83のバネ力によって、図8(c)に示すように、三角形板状部材84がばね付き蝶番83を軸に回動されて広げられる。そして、エレベータかご21の4つの外側面にそれぞれ取り付けられている矩形板状部材82と三角形板状部材84が全て展開されることによって、降路H内の空間を上下に仕切る仕切りが形成される。
【0036】
このとき、矩形板状部材82を回動させてエレベータかご21と昇降路Hの間に広げる第1の展開手段は、図9に示すように、バネ85などの付勢手段と、モータ、電磁石等により解除可能なストッパ86とからなるものであってもよい。図9は、第1の展開手段の第1の構成例を示す図である。図9は、エレベータかご21の1つの外側面と昇降路Hとの間を側方から見た図である。バネ85は、格納状態の矩形板状部材82とエレベータかご21の外側面との間に配置され、矩形板状部材82をエレベータかご21から離れる方向に弾性的に付勢する。このとき、バネ85は、矩形板状部材82とエレベータかご21の外側面のいずれか一方に取り付けられる。ストッパ86は、格納状態では、図9(a)に示すように矩形板状部材82の昇降路H側に当接し矩形板状部材82のエレベータかご21から離れる方向への動きを制限する。一方、展開されるときは、図9(b)に示すようにモータ等によりストッパ86が解除される。ストッパ86が解除されると、矩形板状部材82は、バネ85によりエレベータかご21から離れる方向に付勢されて回動し、エレベータかご21と昇降路Hの間に広げられる。
【0037】
なお、図9に示すように、矩形板状部材82の昇降路H側の端部に、ゴム、樹脂又はスポンジ等の可撓性を有する材料からなるクッション材821を取り付け、展開されるときに、このクッション材が昇降路H側に押し当てられるようにすることができる。これにより、エレベータ用遮煙装置による遮煙性をさらに向上させることができる。また、図9に示すように、エレベータかご21の外側面には、格納状態の第1の遮煙部材131を格納する凹状の第1の格納部123を設けることができる。
【0038】
また、矩形板状部材82を回動させてエレベータかご21と昇降路Hの間に広げる第1の展開手段は、図10に示すように、矩形板状部材82の回転軸87に取り付けられたモータ88であってもよい。図10は、第1の展開手段の第2の構成例を示す図である。モータ88は、回転軸87を介して矩形板状部材82を回動させることができる。
【0039】
また、昇降路H内に仕切りを形成する別の構成として、たとえば図11及び図12に示すように、リンク機構90を用いて可撓性を有するシート材96をエレベータかご21と昇降路Hの間に広げる構成がある。図11及び図12は、第1の遮煙部材の第2の変形例を示す図である。この構成は、第2の遮煙部材にも適用することができる。図11には、第1の遮煙部材231の格納状態が示されている。図12には、第1の遮煙部材231の展開された状態が示されている。また、図11及び図12は、エレベータかご21の1つの角部近傍における第1の遮煙部材231の構成を下方から見た図である。
【0040】
リンク機構90は、連結部91により相対的に回動可能に連結された複数のリンク92からなる。リンク機構90は、エレベータかご21の外側面に取り付けられ、エレベータかご21から昇降路Hに向かって伸縮する。リンク機構90の昇降路H側には、昇降路Hの壁と略平行に棒状の押し当て材94が取り付けられている。この押し当て材94は、リンク機構90が昇降路Hに向かって伸ばされたときに昇降路Hの壁に押し当てられる。また、リンク機構90には、押し当て材94を介して、シート材96が取り付けられている。シート材96は、可撓性を有する非通気性のシートであり、リンク機構90が伸ばされたときにエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられる大きさを有する。シート材96は、リンク機構90がエレベータかご21側に縮められた状態では、図11に示すように、小さく折り畳んだ状態でエレベータかご21の外側面側に納められる。たとえば矢印Cで示す箇所等において、シート材96が折り畳まれている。
【0041】
リンク機構90には、モータ等からなる第1の展開手段が接続されている。第1の展開手段であるモータ等(図示していない)により、図12に示すようにリンク機構90が伸ばされることによって、シート材96がエレベータかご21と昇降路Hの間に広げられる。このとき、押し当て材94によりシート材96が昇降路Hの壁に押し当てられる。
【0042】
なお、ここではリンク機構90が、回転運動によりエレベータかご21から昇降路Hに向かって伸縮するものである場合について説明したが、たとえばスライド運動により伸縮するものであってもよい。また、シート材96は、蛇腹状に折り畳まれて収納されるものであってもよい。また、シート材96は、1枚又は2枚以上のシートからなるものであってもよいし、袋状のものであってもよい。
【0043】
また、上記第1の実施の形態では、エレベータ用遮煙装置30が、第1の展開手段により展開される第1の遮煙部材31と、第2の展開手段37により展開される第2の遮煙部材36の両方を備えている場合について説明したが、これに限定されない。第1の遮煙部材31と第2の遮煙部材36は、それぞれが独立して昇降路H内を経由した煙の移動を抑制する効果を発揮することから、いずれか一方のみを備えるようにしてもよい。
【0044】
また、上記第1の実施の形態では、第1の遮煙部材31が、エレベータかご21の出入口25よりも上方の位置に取り付けられる場合を例示したが、これに代えて、たとえば出入口25よりも下方の位置に取り付けられるようにしてもよい。この場合、遮煙運転において、エレベータ制御部40は、図13に示すように、エレベータかご21を火災階Fの1つ上の階の乗場に移動させて第1の遮煙部材31を展開させる。これにより、展開された第1の遮煙部材31により昇降路H内の空間が上下に仕切られる仕切位置Sが、火災階Fの乗場と昇降路Hの間に設けられた乗場出入口55とその1つ上の階の乗場と昇降路Hの間に設けられた乗場出入口55との間となる。これにより、仮に火災の煙が火災階Fの乗場出入口55から昇降路Hの空間に進入した場合でも、展開された第1の遮煙部材31の存在により、煙が仕切位置Sより上方へ広がってしまうことを抑制できる。
【0045】
また、第1の遮煙部材31は、エレベータかご21の上下方向の出入口25を通る位置に取り付けられるようにしてもよい。この場合は、図14に示すように、第1の遮煙部材331と第2の遮煙部材36の組み合わせにより、昇降路H内が上下に仕切られるようにする。
【0046】
[第2の実施の形態]
以下、図15を参照して、第2の実施の形態に係るエレベータ装置について説明する。第2の実施の形態に係るエレベータ装置は、1つの昇降路H内に、複数のエレベータかご21a,21bを有する点で第1の実施の形態と相違する。また、エレベータかご21aには第1の遮煙部材31aが取り付けられ、エレベータかご21bには第1の遮煙部材31bが取り付けられ、エレベータかご21a、21bのいずれにも第2の遮煙部材は取り付けられていない点で第1の実施の形態と相違する。その他の点では第1の実施の形態と共通する。以下の説明ではその相違点についてのみ説明し、第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0047】
第2の実施の形態においては、遮煙運転の際に、エレベータ制御部40が、図15に示すように、昇降路H内の全てのエレベータかご21a,21bを昇降路H内の同じ位置(たとえば火災階F)に移動させた後に、各エレベータかご21a,21bに取り付けられた第1の遮煙部材31a、31bを展開させる。これにより、第1の遮煙部材31a、31bの展開される位置が昇降路Hの上下方向における同じ位置となり、展開された第1の遮煙部材31a、31bの組み合わせにより、昇降路H内が上下に仕切られる。
【0048】
なお、図15では、各エレベータかご21a,21bに対する第1の遮煙部材31a、31bの取付位置が同じ場合を例示しているが、その取付位置が異なる場合がある。取付位置が異なる場合は、第1の遮煙部材31a、31bが展開される位置が昇降路Hの上下方向における同じ位置となるように、昇降路H内におけるエレベータかご21a,21bの停止位置が決定されるようにする。
【0049】
また、上記各実施の形態では、エレベータかご21の水平方向の断面が略矩形である場合を例示しているが、円形又は楕円形であってもよいし、五角形、六角形等の多角形であってもよい。また、上記各実施の形態では、出入口が1つであるエレベータかごを例示して説明したが、2以上であってもよい。その場合、それぞれの出入口に対応させて第2の遮煙部材を複数設けるようにしてもよい。
【0050】
また、各実施の形態において、各階の乗場出入口又は昇降路内壁の複数個所に設けられる従来の遮煙装置をさらに設けるようにしてもよい。これにより、火災発生時に、遮煙機能をより長時間維持させることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 エレベータ装置
20 エレベータ
22 巻上機
23、123 第1の格納部
24 第2の格納部
25 出入口
30 エレベータ用遮煙装置
31、131、231、31a、31b、331 第1の遮煙部材
32 第1の展開手段
36 第2の遮煙部材
37 第2の展開手段
40 エレベータ制御部
41 火災検知器
50 記憶部
51 プロセッサ
52 メモリ
53 信号入出力部
55 乗場出入口
81 蝶番
82 矩形板状部材
83 ばね付き蝶番
84 三角形板状部材
85 バネ
86 ストッパ
87 回転軸
88 モータ
90 リンク機構
91 連結部
92 リンク
94 押し当て材
96 シート材
821 クッション材
F 火災階
H 昇降路
S 仕切位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15