(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】編物
(51)【国際特許分類】
D04B 1/20 20060101AFI20241008BHJP
D02G 1/02 20060101ALI20241008BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20241008BHJP
D02J 1/00 20060101ALI20241008BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
D04B1/20
D02G1/02 Z
D02G3/04
D02J1/00 K
D01F8/14 B
(21)【出願番号】P 2021071573
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須山 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小澤 昌弘
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117448(JP,A)
【文献】特開2018-150629(JP,A)
【文献】特開2003-166136(JP,A)
【文献】特開平5-247757(JP,A)
【文献】特開平11-43835(JP,A)
【文献】国際公開第2008/001920(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0027848(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/20
D02G 1/02
D02G 3/04
D02J 1/00
D01F 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合仮撚糸を含む編物であって、前記複合仮撚糸が、コンジュゲート仮撚糸Aと非コンジュゲート仮撚糸Bを含む糸条からなり、前記複合仮撚糸の交絡数が100ヶ/m以上、トルク撚数が30T/m以下、捲縮発現率差が5~30%であることを特徴とする編物。
【請求項2】
複合仮撚糸がS方向のトルクを有する仮撚糸とZ方向のトルクを有する仮撚糸とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の編物。
【請求項3】
コンジュゲート仮撚糸Aがポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の編物。
【請求項4】
コンジュゲート仮撚糸Aが偏心芯鞘断面であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の編物。
【請求項5】
繰り返し洗濯後のスナッグが3級以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来ストレッチ編物の課題であった、繰り返し洗濯後の耐スナッグ性を解消し、かつ優れたハリ腰性、ソフトな風合いを有する編物に関する。
【背景技術】
【0002】
編物は織物に比べ、ソフトな風合いやストレッチ性などの優れた特徴を有しているため、スポーツ、カジュアルアウター衣料等各種衣料用途に幅広く用いられている。近年、編物に更に高ストレッチ性を付与するため、ポリウレタン糸やバイメタル糸使いの編物が増えてきている。しかし、ポリウレタン使いの編物ではインナー用には好適であるが、生地のハリ腰がなく、体のラインが出すぎるため、アウター向けには不適であった。また異なるポリマーをサイドバイサイド型に貼り合わせたコンジュゲート糸使いの編物が提案されている(特許文献1参照)。本方法によれば確かにハリ腰性に優れた編物が得ることができるが、繊維表面に構成糸条の突出部が形成されており、耐スナッグ性は何ら考慮された編物でなかった。編物はその構成糸条がループを形成して編物表面に突出しているため、織物に比べてスナッグが発生し易いという大きな課題を有している。編物の耐スナッグを改良するため、これまで種々の検討がされている。例えば、編物表面に現れた糸条の拘束力を高めるために、編物を構成する糸条を撚糸する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、上記の方法で得られた編物では、編物本来の特徴であるソフトな風合いやストレッチ性が損なわれるという問題があった。また、S方向のトルクを有する仮撚糸とZ方向の仮撚糸との合糸に交絡を付与することにより低トルクの複合糸を得て耐スナッグ性を有する編物が提案されている(特許文献3参照)。本方法によれば確かに耐スナッグ性を有する編物を得ることができるが、本効果は洗濯前の効果であり、繰り返し洗濯後には2糸条の糸形態バランスが崩れ、編物表面に一方の糸条が突出しやすく、耐スナッグ性は低下するものであった。実際のストレッチ編物縫製品の耐スナッグ性は家庭洗濯後に悪化することが多く、その問題解決が急がれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-186503号公報
【文献】特開2003-247149号公報
【文献】特許第5155162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ストレッチ編物の課題であった繰り返し洗濯後の耐スナッグ性を解消し、かつ優れたハリ腰性、ソフトな風合いを有する編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するため本発明の編物は、次の構成を有する。すなわち、
複合仮撚糸を含む編物であって、前記複合仮撚糸が、コンジュゲート仮撚糸Aと非コンジュゲート仮撚糸Bを含む糸条からなり、前記複合仮撚糸の交絡数が100ヶ/m以上、トルク撚数が30T/m以下、捲縮発現率差が5~30%であることを特徴とする編物、である。
【0006】
本発明の編物は、複合仮撚糸がS方向のトルクを有する仮撚糸とZ方向のトルクを有する仮撚糸とで構成されることが好ましい。
【0007】
本発明の編物は、コンジュゲート仮撚糸Aがポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートから構成されることが好ましい。
【0008】
本発明の編物は、コンジュゲート仮撚糸Aが偏心芯鞘断面であることが好ましい。
【0009】
本発明の編物は、繰り返し洗濯後のスナッグが3級以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来得ることができなかった繰り返し洗濯後の耐スナッグ性を解消し、かつ優れたハリ腰性、ソフトな風合いを有する編物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の偏心芯鞘複合繊維の繊維横断面の一例を示す図面代用写真である。
【
図2】本発明の偏心芯鞘複合繊維の一例であり、その繊維断面における重心位置を説明するための繊維横断面である。
【
図3】本発明の偏心芯鞘複合繊維の繊維断面における繊維径(D)と最小厚み(S)を説明するための繊維断面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の編物は少なくともコンジュゲート仮撚糸Aと非コンジュゲート仮撚糸Bを含む複合仮撚糸条からなることが重要である。コンジュゲート仮撚糸と非コンジュゲート仮撚糸では捲縮形態が異なり、コンジュゲート仮撚糸は非コンジュゲート仮撚対比、コイル状のより細かい捲縮を有することで、編物内に存在する空隙に入り込み、編物内の空隙が少なくすることができる。編物内の糸条を動き難くすることで、繰り返し洗濯で編物に外力が付与されても、編物表面に糸条が突出することなく、優れた耐スナッグ性を得ることができる。ここで、コンジュゲート仮撚糸単体、もしくはコンジュゲート仮撚糸とコンジュゲート仮撚糸からなる複合仮撚糸からなる編物であると、ストレッチ性は優れているが、編物表面にコイル捲縮が突出し易くなり、耐スナッグ性が悪化する。また、非コンジュゲート仮撚糸単体、もしくは非コンジュゲート仮撚糸と非コンジュゲート仮撚糸らなる複合仮撚糸であると、編物内に空隙が多く、繰り返し洗濯で糸条が動き易く、糸条外層部の捲縮が突出し易くなり、耐スナッグ性が悪化する。また、コンジュゲート非仮撚糸と非コンジュゲート仮撚糸からなる複合仮撚糸であると、残留トルクが発生し易くなり、耐スナッグ性が悪化する。
【0013】
また本発明の編物を構成する複合仮撚糸条の交絡数が100ヶ/m以上であることが重要である。好ましい交絡数は120~200ヶ/mである。交絡数が100ヶ/m未満であると、糸条外層部の捲縮が突出し易くなり、収束形態を維持することができず、耐スナッグ性が悪化する。
【0014】
また本発明の編物を構成する複合仮撚糸条のトルク撚数が30T/m以下であることが重要である。好ましいトルク撚数は20T/M以下である。トルク撚数が30T/Mを超えると、染色加工時に、捲縮発現と同時にトルクも発現されるので、編物の凹凸が大きくなり、耐スナッグ性が悪化する。
【0015】
また本発明の編物を構成する複合仮撚糸条の捲縮発現率差が5~30%であることが重要である。好ましい捲縮発現率差が5~20%である。捲縮発現率差が5%未満であると、編物内に空隙が多く、繰り返し洗濯で糸条が動き易く、糸条外層部の捲縮が突出し易くなり、耐スナッグ性が悪化する。また、捲縮発現率差が30%を超えると、非コンジュゲート仮撚糸Bが編物表面に糸条ごと飛び出すようになり、耐スナッグ性が悪化する。
【0016】
また、本発明の編物を構成する複合仮撚糸条がS方向のトルクを有する仮撚糸とZ方向のトルクを有する仮撚糸とで構成されていることが好ましい。この好ましい態様により、仮撚トルクが打ち消されて、編クリンプがフラットになるので、優れた耐スナッグ性を得やすくなる。
【0017】
本発明で用いるコンジュゲート仮撚糸Aは繊維横断面が2種のポリマーから構成されている。ストレッチ性を得るために好適なポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドが挙げられる。これらの分子量を変更して一方に高分子量ポリマーを、他方に低分子量ポリマーを使用する、あるいは一方成分をホモポリマーとし、他方成分を共重合ポリマーとして使用することもできる。また、ポリマー組成が異なる組み合わせについても、例えば、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートなどの種々の組み合わせが挙げられる。この中でも、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの組み合わせにおいては、仮撚後に細かいコイル捲縮構造が発現することで、編物内の空隙が少なくなる。これにより、繰り返し洗濯で編物形態が変形し難く、編物表面に一方の糸条が突出することなく、優れた耐スナッグ性を得ることができ、好ましい。
【0018】
また、本発明で用いるコンジュゲート仮撚糸Aの両成分の比率は、A成分:B成分=70:30~30:70(面積比)の範囲が好ましく、65:35~45:55の範囲がより好ましい。
【0019】
またコンジュゲート仮撚糸Aの繊維横断面形状としては、サイドバイサイド構造でも偏心芯鞘構造でも任意の断面複合形状が用いられるが、偏心芯鞘断面は仮撚時の断面変形が小さく、各単糸で均斉な捲縮が得られ、編物表面の単糸スナールの飛び出しが低減し、耐スナッグ性が向上するので、好ましい。
【0020】
ここで、偏心芯鞘断面とは、2種の異なるポリマーが接合してなる複合断面を有しており、ポリマー特性が異なる2種のポリマーが実質的に分離せず接合された状態で存在し、B成分がA成分を完全に覆っている偏心芯鞘型である。
【0021】
ここで、偏心とは、複合繊維断面においてA成分ポリマーの重心点位置が複合繊維断面中心と異なっていることを指す。以下、
図2を用いて具体的に説明する。
図2において、水平ハッチングがB成分であり、30degハッチング(右上がり斜線)がA成分であって、複合繊維断面におけるA成分の重心が重心点aであり、複合繊維断面の重心が重心点Cである。重心点aと複合繊維断面の重心点Cが離れていること(偏心)により熱処理後に繊維が高収縮成分側に大きく湾曲する。このように高収縮成分が低収縮成分よりも相対的に強く収縮することにより偏心芯鞘複合繊維が繊維軸方向に湾曲し続ける。その結果偏心芯鞘複合繊維は3次元的なスパイラル構造をとり、良好な捲縮を発現することになるのである。ここで、重心位置が離れているほどより良好な捲縮が発現し、良好なストレッチ性能が得られる。
【0022】
また偏心芯鞘断面のA成分を覆っているB成分の最小となる厚みS(以下、「最小厚みS」という)と繊維径(複合繊維の直径)Dの比S/Dが0.01~0.2であるのが好ましく、0.02~0.08であるのがより好ましい。
【0023】
図3に示した繊維断面を用いて更に詳細に説明する。ここで芯鞘複合繊維におけるB成分の最薄部が最小厚みSである。
【0024】
さらに、最小厚みSの1.05倍以内の厚みの部分(以下、「最小厚み部分」ということもある)が複合繊維の全体の周囲長の1/3以上を占めていることが好ましい。この好ましい態様は、繊維の輪郭に沿ってA成分が存在していることを意味しており、同一面積比の従来の偏心芯鞘複合繊維と比較すると、本発明が、繊維断面においてそれぞれの成分の重心位置がより離れており、微細なスパイラルを形成し、良好な捲縮を発現する。
【0025】
より好ましくは、最小厚みSの1.05倍以内の厚みの周囲長を繊維全体の周囲長の2/5以上とすることで、捲縮発現時の繊維一本一本のコイル構造が均等になることから、単糸スナールの少ない、より耐スナッグ性に優れた編物が得られる。
【0026】
最小厚みSおよび繊維径Dの測定方法を以下に示す。
【0027】
偏心芯鞘複合繊維からなるマルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維方向に対して垂直方向の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本(箇所)以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差を利用して、A成分とB成分の接合部のコントラストを明確にすることができる。接合部があることで、偏心芯鞘複合繊維が2成分であることが確認出来る。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本(箇所)の偏心芯鞘複合繊維の単糸の横断面について、横断面に外接する円を設定し、その外接円径を測定した値が本発明でいう繊維径Dに相当する。ここでいう横断面に外接する円は、2次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に2点以上で最も多く外接する真円、外接円径とはその真円の径を意味する。また、繊維径Dを測定した画像を用いて、10本(箇所)以上の繊維について、A成分を覆っているB成分の最小となる厚みを測定した値が、本発明で言う最小厚みSに相当する。さらには、これら繊維径Dと最小厚みSについては、単位をμmとして測定し、少数第3位以下を四捨五入する。以上の操作を撮影した10箇所の画像について、測定した値およびその比(S/D)の単純な数平均値を求める。なお、上述で撮影した画像、および画像解析ソフト「WinROOF2015」(三谷商事(株)製)を用いて、繊維全体の面積およびA成分、B成分の面積を求めた後、比重の中心や面積比を求めることができる。
【0028】
また本発明で用いる非コンジュゲート仮撚糸Bは、仮撚加工が可能な熱可塑性ポリマーであれば制限はないが、特にポリエステル、ナイロンなどが好ましく用いられる。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートや、それらにスルホン酸成分、ジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分が共重合されたもの、あるいはそれらのポリエステルをブレンドしたものが挙げられる。中でも、スルホン酸基などのアニオン部位を有していれば、カチオン部位を有するカチオン染料との相互作用により、カチオン可染性を有し、ナチュラルな杢調が発現できるので好ましい。スルホン酸基の具体例として、5-スルホイソフタル酸金属塩があり、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、リチウム塩、ナトリウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が結晶性に優れるため、好適に採用できる。
【0029】
またナイロンであれば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン56等が挙げられるが、仮撚後の捲縮発現性に優れたナイロン6,ナイロン66が特に好ましい。
【0030】
また、本発明で用いる非コンジュゲート仮撚糸Bは、断面が丸型、三角、扁平、六角、L型、T型、W型、八葉型、ドッグボーン型などの多角形型、多様型など任意の形状を有するものを選択することができる。
【0031】
また、これらコンジュゲート仮撚糸Aおよび非コンジュゲート仮撚糸Bのポリマーにおいては、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化チタンなどの艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて含有させることができる。
【0032】
また本発明におけるコンジュゲート仮撚糸A、非コンジュゲート仮撚糸Bの繊度はそれぞれ15~150dtexであることが編物にハリ腰性、軽量性付与する一方、アウター向け衣服としたときに厚すぎることを防止する点で好ましい。より好ましい繊度はそれぞれ15~40dtexである。
【0033】
また本発明におけるコンジュゲート仮撚糸A、非コンジュゲート仮撚糸Bの単糸繊度はそれぞれ0.3~5dtexであることが編物にストレッチ性、ソフト性を付与する点で好ましい。より好ましい単糸繊度はそれぞれ0.5~3.5dtexである。
【0034】
また本発明におけるコンジュゲート仮撚糸A、非コンジュゲート仮撚糸Bの比率は(A/B:質量比)は捲縮発現のバランスを考慮すると、20/80~80/20の範囲が好ましい。より好ましくは30/70~70/30の範囲である。
【0035】
次に本発明の編物の製造方法について、説明する。
【0036】
まず、本発明で用いるコンジュゲート仮撚糸Aの原糸を紡糸するにあたっては、偏心芯鞘複合構造であれば、繊維の鞘厚みや薄皮部の周囲長を精密に制御することが好ましく、紡糸の口金には特開2011-174215号公報や特開2011-208313号公報、特開2012-136804号公報に例示される分配プレートを用いた方法が好適に用いられる。従来公知の複合口金を用いて偏心芯鞘型の断面を有する複合糸を製造する場合、芯の重心位置や鞘厚みの精密な制御が非常に困難となる場合が多い。例えば、鞘厚みが薄くなり、芯成分が露出された場合には、繰り返し洗濯使用において、編物表面の単糸スナールの飛び出しによるスナッグ低下の原因となり、逆に鞘厚みが厚くなってしまった場合には、捲縮発現が低下するために、ストレッチ性能が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0037】
また、紡糸速度においては、捲縮発現率を向上させるためには非晶部が高配向状態であることが好ましく、好ましい紡糸速度は2,800~3,500m/minである。
【0038】
また、本発明で用いる非コンジュゲート仮撚糸Bの原糸を紡糸するにあたっても高配向未延伸糸を紡糸することが好ましい。捲縮発現率を向上させるためには非晶部が高配向状態であることが好ましく、好ましい紡糸速度は2,800~3,500m/minである。
【0039】
続いて、本発明で用いる複合仮撚加工糸を製造するにあたっては、コンジュゲート仮撚糸Aの原糸と、非コンジュゲート仮撚糸Bの原糸を別々の仮撚方向(S方向の仮撚、Z方向の仮撚)を行い、後交絡することで、低トルクの複合糸が得られ、編クリンプがフラットになり、優れた耐スナッグ性を得やすくなり好ましい。
【0040】
仮撚条件としては任意の仮撚条件を選定できる。ツイスターにはスピンドル式、フリクションディスク式、ベルトニップ式いずれを用いても構わないが、高速で仮撚可能で単糸スナールが比較的少ないフリクションディスク式が好ましい。仮撚温度は接触式ヒータの場合、170~220℃であれば、強固な捲縮付与ができる点で好ましい。仮撚数においては、仮撚係数(仮撚数(T/M)×繊度(dtex)0.5)が27,000~33,000となる範囲で設定することが、強固な捲縮付与ができる点で好ましい。このときに、コンジュゲート仮撚糸Aの仮撚係数を非コンジュゲート仮撚糸Bの仮撚係数より大きく設定することで、コンジュゲート仮撚糸Aの細かいコイル捲縮が非コンジュゲート仮撚糸Bの捲縮の内側に入りやすくなり、編物内に存在する空隙をより効果的に埋めることができ、より好ましい。
【0041】
また、交絡条件としては、ストレッチ性と収束性のバランスを考慮して、交絡圧は0.25~0.5MPaであることが好ましい。
【0042】
糸加工速度については早ければ生産性が高くなり好ましいが、安定加工性を考慮すると、100~800(m/min)が好ましい。
【0043】
本発明の編物は通常の編機を使用して容易に製編することができる。本発明の目的を損なわなければ、複合加工糸以外のフィラメント、スパンを交編しても構わない。編物の組織は特に限定されず、丸編物でもよこ編物やたて編物であってもよい。丸編物およびよこ編組織としては、天竺、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編、ニットミス、片側結接等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。なかでも、ストレッチ性の点で丸編物が特に好ましい。軽量性が得られる点では、天竺編物が好ましい。
【0044】
また加工工程は、任意の染色工程及び条件に準じて行うことができる。本発明の編物において、編目密度が30~100コース/2.54cm、かつ50~130ウェール/2.54cmの範囲内であることが好ましい。
【0045】
また、本発明の編物には、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、常法の吸水加工、撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、抗ウイルス剤、消臭剤、防虫剤、再帰反射剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0046】
また、本発明の編物においては、通常のスナッグに加え、繰り返し洗濯後のスナッグが3級以上であることが好ましい。従来のストレッチ編物は繰り返し洗濯後に糸形態バランスが崩れ、編物表面に糸条が突出し、スナッグが発生する問題が生ずる場合があったが、繰り返し洗濯後のスナッグが3級以上であることにより、実際のストレッチ編物縫製品の耐スナッグ性もより向上させることができる。
【0047】
また、本発明の編物のストレッチ性としては、JIS L 1096(2010)に記載のB法により測定した経緯ストレッチ性で50%以上(好ましくは80~150%)であることが好ましい。
【0048】
本発明により得られた編物は衣料としてカジュアルシャツ、スポーツシャツ、ビジネスシャツからスカート、パンツ、体操服などの用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(1)繊度
枠周1.0mの検尺機を用いて100回分のカセを作製し、下記式に従って繊度を測定した。
【0050】
繊度(dtex)=100回分のカセ重量(g)×100
(2)交絡度
交絡度は、0.1cN/dtexの張力下における1m当たりの交絡部の数であり、糸に0.02cN/dtexの張力下で非交絡部にピンを刺し、糸条1mにわたり0.1cN/dtexの張力でピンを糸の長手方向の上下に移動せしめ、抵抗なく移動した部分を非交絡部として移動した距離を記録し、ピンが止まる部分を交絡部とする。この作業を30回繰り返し、その非交絡部の距離の平均値から1m当たりの交絡度を計算する。
(3)捲縮発現率差
編物内の複合仮撚糸からコンジュゲート仮撚糸Aと非コンジュゲート仮撚糸Bを丁寧にほぐして分別し各6cm×10本取り出し、サンプルとする。1mN/dtexの荷重下で5cmの間隔(L1)でマークしたサンプルをガーゼにくるんで、無緊張下で100℃の沸騰水で30分熱処理する。その後、サンプルを取り出し、35℃60%RH下で24時間風乾し、0.02mN/dtexの荷重下において、マークしておいた熱処理後の間隔(L)を読みとり、この作業を10回繰り返し、平均値を捲縮発現率とする。さらに下記式で捲縮発現率差を求めた。
【0051】
捲縮発現率(%)={(L-L1)/L}×100
捲縮発現率差(%)=(コンジュゲート仮撚糸Aの捲縮発現率)-(非コンジュゲート仮撚糸Bの捲縮発現率)
(4)トルク撚数
複合仮撚糸約75cmを横に張り、中央部に0.02mN/dtexの初荷重を吊るした後、両端を引揃える。糸は残留トルクにより回転しはじめるが初荷重が静止するまでそのままの状態で持ち、撚糸を得る。こうして得た撚糸を1mN/dtexの荷重下で25cm長の撚数を検撚器で測定する。得られた撚数(T/25cm)を4倍にしてトルク(T/m)とする。
(5)ストレッチ率(%)
JIS L 1096(2010)に記載のB法に従い、1.5kgf(14.7N)荷重時の伸長率を測定した。
(6)耐スナッグ評価
2槽式洗濯機で液温度40℃、洗濯時間5分、すすぎ30℃×2分×2回、脱水30秒のサイクル洗濯1回とした。洗剤には花王の“アタック”(登録商標)を1g/Lを用い、液量40L、試験布と導布である綿布の重量を合算して830gで実施した。この洗濯作業を20回繰り返した後、JIS L 1058(2010)D-1法に従い、級判定を行った。
3.5級以上を合格とする。
(7)ハリ腰性
官能評価にて、ハリ腰が大変優れている、ハリ腰が優れている、ハリ腰がやや不足している、ハリ腰が不足しているの4段階で評価し、無作為に選んだ10人の評価の平均に近いものを結果とした。
(8)ソフト性
官能評価にて、ソフト感が大変優れている、ソフト感が優れている、ソフト感がやや不足している、ソフト感が不足しているの4段階で評価し、無作為に選んだ10人の評価の平均に近いものを結果とした。
【0052】
<実施例1>
ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートを重量複合比は50/50、吐出孔数48の偏心芯鞘複合繊維用紡糸口金に流入させた。各ポリマーは、口金内部で合流し、B成分のポリマー中にA成分のポリマーが包含された偏心芯鞘複合形態を形成し、口金から紡速3,000(m/分)で紡糸し、繊度56dtex、48フィラメント、伸度130%のコンジュゲート部分配向糸を得た。なお、実施例1の紡糸においては、
図1に示す偏心芯鞘複合繊維が得られるような分配板方式の口金を用いた。繊維断面におけるS/Dは0.02であり、最小厚み部分が繊維円周上の40%を占めるものであった。
【0053】
次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を0.3mol%共重合した丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3,000(m/分)で紡糸し、繊度56dtex、48フィラメント、伸度145%のポリエチレンテレフタレート部分配向糸を得た。
【0054】
そして、フリクション仮撚加工機を用いて、加工速度:400m/min、ヒータ温度:180℃で、コンジュゲート部分配向糸を延伸倍率:1.7倍、仮撚係数:29,000でS方向に仮撚、ポリエチレンテレフタレート部分配向糸を延伸倍率:1.8倍、仮撚係数:28,000でZ方向に仮撚を行い、その後、交絡圧:0.4MPaでインターレース加工を行い、繊度:64dtex、交絡数:125ヶ/mの複合加工糸、トルク撚数:2T/m(S方向)を得た。
【0055】
次いで、該複合仮撚糸を用いて、36Gシングル丸編機を使用して天竺組織の丸編地を編成した。得られた生機に対して、98℃拡布連続精練、カチオン染料を用いた120℃での紺色染色を行い、さらに170℃仕上げセットを施し、目付け98g/m2、98コース/2.54cm、58ウェール/2.54cm、捲縮発現率差:18%(コンジュゲート:48%、非コンジュゲート:30%)の編物を得た。
【0056】
得られた編物は、ストレッチ率は経78%、緯110%、耐スナッグ評価は洗濯前:4.5級、20回後洗濯後:4級であり、長期繰り返し洗濯使用においても、耐スナッグ性に大変優れ、ソフト性、ハリ腰性に大変優れた編物であった。
【0057】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で繊度56dtex、48フィラメント、伸度130%のコンジュゲート部分配向糸を得た。
【0058】
次に、丸断面のナイロン66を紡速3,200(m/分)で紡糸し、繊度30dtex、26フィラメント、伸度60%のナイロン66延伸糸を得た。
【0059】
そして、フリクション仮撚加工機を用いて、加工速度:400m/min、ヒータ温度:180℃で、コンジュゲート部分配向糸を延伸倍率:1.7倍、仮撚係数:29,000でS方向に仮撚、ナイロン66延伸糸を延伸倍率:1.1倍、仮撚係数:28,500でZ方向に仮撚を行い、その後、交絡圧:0.45MPaでインターレース加工を行い、繊度:60dtex、交絡数:155ヶ/mの複合加工糸、トルク撚数:5T/m(S方向)を得た。
【0060】
次いで、該複合仮撚糸を用いて、36Gシングル丸編機を使用して天竺組織の丸編地を編成した。得られた生機に対して、98℃拡布連続精練、酸性染料を用いた100℃での紺色染色を行い、さらに170℃仕上げセットを施し、目付け96g/m2、102コース/2.54cm、61ウェール/2.54cm、捲縮発現率差:13%(コンジュゲート:48%、非コンジュゲート:35%)の編物を得た。
【0061】
得られた編物は、ストレッチ率は経85%、緯122%、耐スナッグ評価は洗濯前:4.5級、20回後洗濯後:4級であり、長期繰り返し洗濯使用においても、耐スナッグ性に大変優れ、ソフト性、ハリ腰性に大変優れた編物であった。
【0062】
<実施例3>
A成分としてポリエチレンテレフタレート、B成分としてポリトリメチレンテレフタレートとし、A成分とB成分の重量複合比は50/50、吐出孔数48のサイドバイサイドの口金から紡速3,000(m/分)で紡糸し、繊度90dtex、48フィラメント、伸度128%のコンジュゲート部分配向糸を得た。
【0063】
次に、丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3,000(m/分)で紡糸し、繊度56dtex、48フィラメント、伸度143%のポリエチレンテレフタレート部分配向糸を得た。
【0064】
そして、フリクション仮撚加工機を用いて、加工速度:400m/min、ヒータ温度:180℃で、コンジュゲート部分配向糸を延伸倍率:1.7倍、仮撚係数:29,000でS方向に仮撚、ポリエチレンテレフタレート部分配向糸を延伸倍率:1.8倍、仮撚係数:29,500でZ方向に仮撚を行い、その後、交絡圧:0.25MPaでインターレース加工を行い、繊度:94dtex、交絡数:104ヶ/mの複合加工糸、トルク撚数:3T/m(S方向)を得た。
【0065】
次いで、該複合仮撚糸を用いて、36Gシングル丸編機を使用して天竺組織の丸編地を編成した。得られた生機に対して、98℃拡布連続精練、分散染料を用いた130℃での紺色染色を行い、さらに170℃仕上げセットを施し、目付け118g/m2、82コース/2.54cm、51ウェール/2.54cm、捲縮発現率差:6%(コンジュゲート:42%、非コンジュゲート:36%)の編物を得た。
【0066】
得られた編物は、ストレッチ率は経72%、緯104%、耐スナッグ評価は洗濯前:4級、20回後洗濯後:3.5級、長期繰り返し洗濯使用においても、耐スナッグ性に優れ、ソフト性、ハリ腰性に優れた編物であった。
【0067】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で繊度56dtex、48フィラメント、伸度130%のコンジュゲート部分配向糸を2本得た。
【0068】
そして、上記2本のコンジュゲート部分配向糸をフリクション仮撚加工機を用いて、加工速度:400m/min、ヒータ温度:180℃で、延伸倍率:1.7倍、仮撚係数:29,000でそれぞれS方向に仮撚、Z方向に仮撚を行い、その後、交絡圧:0.4MPaでインターレース加工を行い、繊度:66dtex、交絡数:124ヶ/mの複合加工糸、トルク撚数:2T/m(S方向)を得た。
【0069】
次いで、該複合仮撚糸を用いて、36Gシングル丸編機を使用して天竺組織の丸編地を編成した。得られた生機に対して、98℃拡布連続精練、分散染料を用いた120℃での紺色染色を行い、さらに170℃仕上げセットを施し、目付け107g/m2、105コース/2.54cm、63ウェール/2.54cm、捲縮発現率差:0%の編物を得た。
【0070】
得られた編物は、ストレッチ率は経87%、緯134%、耐スナッグ評価は洗濯前:3.5級、20回後洗濯後:2.5級であり、繰り返し洗濯使用において、耐スナッグ性が低下した。またソフト性は優れていたが、ハリ腰性はやや不足するものであった。
【0071】
<比較例2>
丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3,000(m/分)で紡糸し、繊度56dtex、48フィラメント、伸度145%のポリエチレンテレフタレート部分配向糸を2本得た。
【0072】
そして、フリクション仮撚加工機を用いて、加工速度:400m/min、ヒータ温度:180℃で、ポリエチレンテレフタレート部分配向糸片方を延伸倍率:1.7倍、仮撚係数:29,000でS方向に仮撚、ポリエチレンテレフタレート部分配向糸もう片方を延伸倍率:1.8倍、仮撚係数:28,000でZ方向に仮撚を行い、その後、交絡圧:0.4MPaでインターレース加工を行い、繊度:64dtex、交絡数:118ヶ/mの複合加工糸、トルク撚数:2T/m(S方向)を得た。
【0073】
次いで、該複合仮撚糸を用いて、36Gシングル丸編機を使用して天竺組織の丸編地を編成した。得られた生機に対して、98℃拡布連続精練、分散染料を用いた130℃での紺色染色を行い、さらに170℃仕上げセットを施し、目付け98g/m2、85コース/2.54cm、53ウェール/2.54cm、捲縮発現率差:3%の編物を得た。
【0074】
得られた編物は、ストレッチ率は経43%、緯77%、耐スナッグ評価は洗濯前:4.5級、20回後洗濯後:2.5級であり、繰り返し洗濯使用において、耐スナッグ性が低下した。またソフト性はやや不足、ハリ腰性は不足するものであった。
【0075】
<比較例3>
実施例1と同様の方法で繊度56dtex、48フィラメント、伸度130%のコンジュゲート部分配向糸を2本得た。
【0076】
そして、上記2本のコンジュゲート部分配向糸をフリクション仮撚加工機を用いて、加工速度:400m/min、ヒータ温度:180℃で、延伸倍率:1.7倍、仮撚係数:29,000でそれぞれS方向に仮撚を行い、その後、交絡圧:0.4MPaでインターレース加工を行い、繊度:66dtex、交絡数:132ヶ/mの複合加工糸、トルク撚数:42T/m(S方向)を得た。
【0077】
次いで、該複合仮撚糸を用いて、36Gシングル丸編機を使用して天竺組織の丸編地を編成した。得られた生機に対して、98℃拡布連続精練、分散染料を用いた120℃での紺色染色を行い、さらに170℃仕上げセットを施し、目付け110g/m2、104コース/2.54cm、62ウェール/2.54cm、捲縮発現率差:0%の編物を得た。
【0078】
得られた編物は、ストレッチ率は経88%、緯138%、耐スナッグ評価は洗濯前:3級、20回後洗濯後:1.5級であり、繰り返し洗濯使用において、編物表面の凹凸が大きくなり、耐スナッグ性が低下した。またソフト性は不足し、ハリ腰性はやや不足するものであった。
【0079】
<比較例4>
実施例1と同様の方法で繊度56dtex、48フィラメント、伸度130%のコンジュゲート部分配向糸を得た。
【0080】
次に、丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3,000(m/分)で紡糸し、繊度56dtex、48フィラメント、伸度143%のポリエチレンテレフタレート部分配向糸を得た。
【0081】
そして、フリクション仮撚加工機を用いて、加工速度:400m/min、ヒータ温度:180℃で、コンジュゲート部分配向糸を延伸倍率:1.7倍、仮撚係数:29,000でS方向に仮撚、ポリエチレンテレフタレート部分配向糸を延伸倍率:1.8倍、仮撚係数:29,500でZ方向に仮撚を行い、その後、交絡圧:0.2MPaでインターレース加工を行い、繊度:93dtex、交絡数:85ヶ/mの複合加工糸、トルク撚数:10T/m(S方向)を得た。
【0082】
次いで、該複合仮撚糸を用いて、36Gシングル丸編機を使用して天竺組織の丸編地を編成した。得られた生機に対して、98℃拡布連続精練、カチオン染料を用いた120℃での紺色染色を行い、さらに170℃仕上げセットを施し、目付け106g/m2、95コース/2.54cm、56ウェール/2.54cm、捲縮発現率差:22%(コンジュゲート:48%、非コンジュゲート:26%)の編物を得た。
【0083】
得られた編物は、ストレッチ率は経80%、緯115%、耐スナッグ評価は洗濯前:4.5級、20回後洗濯後:2.5級であった。ソフト性、ハリ腰性は優れていたが、繰り返し洗濯使用において、交絡が外れ、編物表面に単糸が突出し、耐スナッグ性が低下するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の編物は、衣料としてカジュアルシャツ、スポーツシャツ、ビジネスシャツからスカート、パンツ、体操服などの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 A成分
2 B成分
a A成分の重心
C 複合繊維断面の重心
D 繊維径
S 最小厚み