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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】インク加熱装置および印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/175 121
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 301
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021075557
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169870
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】細野 豊
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078240(JP,A)
【文献】特開2006-095876(JP,A)
【文献】米国特許第5109234(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の印刷装置に内蔵されるインク加熱装置であって、
インクを貯留するインクタンクの外面に一の面が熱結合する状態で貼着される面状の加熱部材と、
前記加熱部材の他方の面側に設けられ、前記加熱部材を前記インクタンク側に押圧する断熱性の弾性部材と、
印刷装置本体部の起動時に印刷装置本体部の停止時間に応じて段階的に前記加熱部材を加熱制御する制御部と、を備える
インク加熱装置。
【請求項2】
前記加熱部材により加熱される被加熱部分の温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記制御部は、前記停止時間が所定閾値を超える場合、前記被加熱部分を予備加熱目標値まで昇温して維持する予備加熱制御と、予備加熱制御後、前記被加熱部分を予備加熱目標値から本加熱目標値まで昇温する本加熱制御とを実行する
請求項1に記載のインク加熱装置。
【請求項3】
前記予備加熱制御において、前記予備加熱目標値および前記被加熱部分を予備加熱目標値に維持する維持時間は、前記停止時間に応じて段階的に設定される
請求項2に記載のインク加熱装置。
【請求項4】
前記予備加熱制御において、前記予備加熱目標値および前記維持時間は、前記停止時間が長いほど、前記被加熱部分の平均温度変化が緩やかになるように、設定される
請求項3に記載のインク加熱装置。
【請求項5】
前記予備加熱目標値として、第1目標値および第1目標値よりも高い第2目標値を含む複数の目標値が設定され、
前記予備加熱制御は、前記被加熱部分を第1目標値まで昇温して維持する第1段加熱制御と、前記第1段加熱制御後、前記被加熱部分を第1目標値から第2目標値まで昇温して維持する第2段加熱制御と、を含む
請求項2に記載のインク加熱装置。
【請求項6】
前記停止時間が長いほど前記予備加熱制御における加熱の段数を増やす
請求項5に記載のインク加熱装置。
【請求項7】
前記予備加熱目標値は、前記弾性部材の耐熱温度の範囲内で設定される
請求項2に記載のインク加熱装置。
【請求項8】
前記予備加熱制御における前記予備加熱目標値および前記維持時間は、予め記憶する不揮発性の記憶部を更に備える
請求項3に記載のインク加熱装置。
【請求項9】
外部の装置から前記予備加熱制御における前記予備加熱目標値および前記維持時間を取得する取得部を更に備える
請求項3に記載のインク加熱装置。
【請求項10】
前記被加熱部分は、前記インクタンクに貯留されるインク、前記インクタンクおよび前記弾性部材のいずれか1以上を含む
請求項2に記載のインク加熱装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のインク加熱装置を備えるインクジェット方式の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インク加熱装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクをノズルから吐出するインクジェットヘッドを備え、インクジェットヘッドから記録媒体に向けてインクを吐出して着弾させることで、記録媒体上に画像を形成するインクジェット方式の印刷装置が知られている。
【0003】
インクジェット方式の印刷装置に使用されるインクには、加熱により粘度が変化するものがある。当該インクをインクタンクからインクジェットヘッドまで円滑に送液し、且つインクジェットヘッドから安定的に吐出させるためには、吐出前のインクを予め加熱し、適切な温度範囲に保つ必要がある。
【0004】
そこで、インクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクの外面に面状の加熱部材を設け、当該加熱部材によりインクタンク内のインクを加熱する構成において、加熱部材の非加熱面側に断熱効果のある弾性部材を設け、当該弾性部材の弾性変形の復元力により加熱部材をインクタンクに押圧することで、加熱効率を高める技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-78240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
弾性部材は、温度や湿度などの条件によって劣化が進行する場合があり、劣化が進行すると、インクの加熱効率を高める効果が失われる恐れがある。すなわち、劣化が進行して弾性部材の弾性力が失われると、加熱部材をインクタンクに押圧する力が弱まり、加熱部材とインクタンクの間に隙間(空気層)ができ、空気層が断熱層になって、インクタンクに熱が伝わりにくくなる可能性がある。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたもので、弾性部材の劣化の進行を抑制することが可能なインク加熱装置及び当該インク加熱装置を備える印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様のインク加熱装置は、インクジェット方式の印刷装置に内蔵されるインク加熱装置であって、インクを貯留するインクタンクの外面に一の面が熱結合する状態で貼着される面状の加熱部材と、前記加熱部材の他方の面側に設けられ、前記加熱部材を前記インクタンク側に押圧する断熱性の弾性部材と、印刷装置本体部の起動時に印刷装置本体部の停止時間に応じて段階的に前記加熱部材を加熱制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記インク加熱装置は、前記加熱部材により加熱される被加熱部分の温度を検出する温度検出部を更に備え、前記制御部は、前記停止時間が所定閾値を超える場合、前記被加熱部分を予備加熱目標値まで昇温して維持する予備加熱制御と、予備加熱制御後、前記被加熱部分を予備加熱目標値から本加熱目標値まで昇温する本加熱制御とを実行するとしてもよい。
【0010】
また、前記予備加熱制御において、前記予備加熱目標値および前記被加熱部分を予備加熱目標値に維持する維持時間は、前記停止時間に応じて段階的に設定されるとしてもよい。
【0011】
また、前記インク加熱装置は、前記予備加熱制御において、前記予備加熱目標値および前記維持時間は、前記停止時間が長いほど、前記被加熱部分の平均温度変化が緩やかになるように、設定されるとしてもよい。
【0012】
また、前記予備加熱目標値として、第1目標値および第1目標値よりも高い第2目標値を含む複数の目標値が設定され、前記予備加熱制御は、前記被加熱部分を第1目標値まで昇温して維持する第1段加熱制御と、前記第1段加熱制御後、前記被加熱部分を第1目標値から第2目標値まで昇温して維持する第2段加熱制御と、を含むとしてもよい。
【0013】
また、前記インク加熱装置は、前記停止時間が長いほど前記予備加熱制御における加熱の段数を増やすとしてもよい。
【0014】
また、前記予備加熱目標値は、前記弾性部材の耐熱温度の範囲内で設定されるとしてもよい。
【0015】
また、前記予備加熱制御における前記予備加熱目標値および前記維持時間は、予め記憶する不揮発性の記憶部を更に備えるとしてもよい。
【0016】
また、外部の装置から前記予備加熱制御における前記予備加熱目標値および前記維持時間を取得する取得部を更に備えるとしてもよい。
【0017】
また、前記被加熱部分は、前記インクタンクに貯留されるインク、前記インクタンクおよび前記弾性部材のいずれか1以上を含むとしてもよい。
【0018】
また、本開示の一態様の印刷装置は、インクを貯留するインクタンクの外面に一の面が熱結合する状態で貼着される面状の加熱部材と、前記加熱部材の他方の面側に設けられ、前記加熱部材を前記インクタンク側に押圧する断熱性の弾性部材と、印刷装置本体部の停止時間に応じて段階的に前記加熱部材を加熱制御する制御部と、を備えるインク加熱装置を内蔵するインクジェット方式の印刷装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、印刷装置の停止時間に応じて、段階的に加熱を制御することにより、弾性部材が湿気を含んだ状態での急激な温度上昇等が発生しないので、弾性部材の劣化の進行を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】印刷装置の主要構成を示す図である。
図2図2(a)は、ヘッドユニットを側方から見た場合のヘッドユニットの内部構成の概略図である。図2(b)は、ヘッドユニットを記録媒体側から見た場合のヘッドユニットの概略図である。
図3図3は、インクタンク50およびインク加熱装置60の概略斜視図である。
図4図4は、インクタンク50の概略平面図である。
図5図5は、インクタンク50に対するインク加熱装置60の取り付け後の状態を示す断面図である。
図6図6は、面状加熱部材61の概略構成を示す図である。
図7図7は、サーミスタ65の取り付け部分を示した概略斜視図である。
図8図8は、印刷装置1におけるインク吐出機構300の主要構成及びインク吐出機構の各部間の接続を示す概要図である。
図9図9は、インク加熱の制御構成を示すブロック図である。
図10図10は、起動ログ情報43の一例を示す図である。
図11図11は、昇温制御情報44の一例を示す図である。
図12図12は、サーミスタ65で検知される温度の推移と、印刷装置1の本体電源のON/OFFの推移を示すグラフである。
図13図13は、ウォーミングアップ時のインク加熱制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示に係る印刷装置およびインク加熱装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の機能および構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
[1]実施の形態
(1)印刷装置1
図1は、本開示の一実施形態である印刷装置1の全体構成を示す図である。図1に示すように、印刷装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40とを備える。
【0022】
(1-1)給紙部10
給紙部10は、画像形成が行われる記録媒体Pを画像形成部に供給する。給紙部10は、記録媒体Pを保持する給紙トレー11と、画像形成部20に記録媒体Pを供給する搬送部12とを備える。
【0023】
給紙トレー11は、1又は複数の記録媒体P載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動するように設けられており、最上の記録媒体Pが搬送部12により搬送される位置で保持される。
【0024】
搬送部12は、給紙トレー11に載置された記録媒体Pのうち最上のものをベルト123上に繰り出し、ベルト123をローラー121、122により回転駆動してベルト123上の記録媒体Pを搬送する。
【0025】
(1-2)画像形成部20
画像形成部20は、給紙部10から供給された記録媒体Pにインクを吐出させて画像を形成する。画像形成部20は、画像形成ドラム21と、受け渡しユニット22と、用紙加熱部23と、ヘッドユニット24と、照射部25と、デリバリー部26とを備える。
【0026】
画像形成ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、同図の半時計方向の回転に伴って記録媒体Pを搬送する。画像形成ドラム21の搬送面は、用紙加熱部23、ヘッドユニット24および照射部25に対向している。
【0027】
受け渡しユニット22は、搬送部12により搬送された記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す。受け渡しユニット22は、記録媒体Pの一端を担持するスイングアーム部221、円筒状の受け渡しドラム222等を備え、搬送部12上の記録媒体Pをスイングアーム部221で取り上げ、受け渡しドラム222により記録媒体Pを画像形成ドラム21の外周面に沿う向きに誘導して画像形成ドラム21に受け渡す。
【0028】
用紙加熱部23は、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pを加熱する。用紙加熱部23は、例えば、通電に応じて発熱する赤外線ヒーター等を有する。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であって、記録媒体Pの搬送方向においてヘッドユニット24の上流側に設けられる。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21に担持されて用紙加熱部23の近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように、その発熱を制御部40により制御される。
【0029】
ヘッドユニット24は、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pに対してインクを吐出し、画像を形成する。ヘッドユニット24は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色について個別に設けられている。図1では、記録媒体Pの搬送方向に対して上流からY、M、C、Kの各色に対応したヘッドユニット24が順番に設けられている。ヘッドユニット24の詳細構成については後述する。
【0030】
照射部25は、記録媒体Pにインクが吐出された後に、当該インクを硬化させるためのエネルギー線を記録媒体Pに照射する。照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を備える。照射部25は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であって、記録媒体Pの搬送方向においてヘッドユニット24の下流側に設けられる。
【0031】
照射部25は、インクの性質に応じてインクを硬化させるエネルギー線を発するものであればよく、低圧水銀ランプの他、水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオード等を用いることができる。
【0032】
デリバリー部26は、記録媒体Pを画像形成ドラム21から排紙部30に搬送する。デリバリー部26は、受け渡しドラム264により画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pをベルト263に受け渡し、ベルト263をローラー261、262により回転駆動してベルト263上の記録媒体Pを搬送する。
【0033】
(1-3)排紙部30
排紙部30は、板状の排紙トレー31を備え、画像形成部20から搬送された記録媒体Pを格納する。
【0034】
(1-4)制御部40
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。ROMに記憶された各種プログラムが読みだされてRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、制御部40は、印刷装置1の各部の動作を制御し、全体の動作を統括する。
【0035】
(2)ヘッドユニット24
ヘッドユニット24の詳細について説明する。
【0036】
図2(a)は、ヘッドユニット24を側方から見た場合におけるヘッドユニット24の内部構成の概略図である。図2(b)は、ヘッドユニット24を画像形成ドラム21に担持された記録媒体P側から見た場合におけるヘッドユニット24の概略図である。
【0037】
ヘッドユニット24は、記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向(幅方向:矢印X方向)について、記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で設けられている。
【0038】
ヘッドユニット24は、複数のインクジェットヘッド241を備える。図の例では、1つのヘッドユニット24に16個のインクジェットヘッド241が設けられている。16個のインクジェットヘッド241は、それぞれ2個のインクジェットヘッド241が一組になって、8個のインクヘッドモジュール242を構成している。
【0039】
インクジェットヘッド241は、それぞれが複数のノズル2411を備える。インクジェットヘッド241は、複数のノズル2411からインクを吐出し、記録媒体Pに画像を形成する。従って、インクジェットヘッド241は、複数のノズル2411が、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pに対向するように、ヘッドユニット24の下面側に露出するように設けられる。
【0040】
ヘッドユニット24には、インクジェットヘッド241に供給されるインクを貯留するインクタンク50およびインクを加熱するインク加熱装置60を備える。
【0041】
(2-1)インクタンク50
図3は、インクタンク50およびインク加熱装置60の概略斜視図である。図4は、インクタンク50の概略平面図である。図5は、インク加熱装置60が取り付けられたインクタンク50を、図3のX方向に垂直な面で切断したときの概略断面図である。
【0042】
なお、記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向をX方向、記録媒体Pの搬送方向をY方向、ヘッドユニット24のインクの吐出方向をZ方向とする。
【0043】
インクタンク50は、インク供給部70(図8参照)から供給されるインクを貯留し、貯留したインクをインクジェットヘッド241に供給する。また、インクタンク50は、インクジェットヘッド241から吐出されなかたインクを回収して貯留する。
【0044】
インクタンク50は、X方向に長尺に形成され、第1サブタンク51と複数の第2サブタンク52とが一体的に成形されて構成される。第1サブタンク51および複数の第2サブタンク52は、インクタンク50の長手方向に配列して設けられる。
【0045】
第1サブタンク51は、インクタンク50の長手方向中央部に凹設され、インク供給部70から供給されるインクおよびインクジェットヘッド241から回収されるインクを貯留する。第1サブタンク51は、供給されたインクを蛇行して流通させる流路511を有し、流路511の一端には、インク供給部70から供給又はインクジェットヘッド241から回収されるインクが流入する流入部512が形成されている。流路511の他端部には、流路511を通過したインクを貯留し、第2サブタンクにインクを供給する貯留部513が形成されている。流入部512から供給されたインクは、流路512を通過して貯留部513に貯留され、複数のポンプP1(図8参照)によって複数の第2サブタンク52に送り出される。
【0046】
第2サブタンク52は、インクタンク50の長手方向両端部に凹設され、第1サブタンク51から供給されるインクを貯留する。各第2サブタンク52に貯留されたインクは、対応するインクジェットモジュール242に供給される。
【0047】
なお、図3、4において、第2サブタンクの数を4つとしているが、第2サブタンクの数は、4つに限られるものではなく、インクジェットモジュール242の数等に応じて適宜変更されるものであってもよい。
【0048】
(2-2)インク加熱装置60
インク加熱装置60は、インクタンク50の一側面全体を覆うように設けられている。インク加熱装置60は、インクタンクの外面に設けられる面状加熱部材61、面状加熱部材61のインクタンク50と反対側に積層されて設けられる断熱効果のある弾性部材62、弾性部材62の面状加熱部材61と反対側に積層されて設けられる金属板(板状部材)63、金属板63をインクタンク50に固定するネジ64、インクタンク50の一側面に接触して設けられるサーミスタ65、面状加熱部材61の発熱を制御する制御部(上述した制御部40)を備える。
【0049】
面状加熱部材61は、インクタンク50に直接面接触しており、すなわち、インクタンク50の外面に熱結合する状態で貼着されており、インクタンク50の外面を加熱することで、インクタンク50内のインク50aを加熱する。面状加熱部材61は、サーミスタ65による検知される温度に基づいて制御部40により温度制御が行われる。なお、面状加熱部材61とインクタンク50との間に、潤滑剤や接着剤が塗布されていてもよく、塗布されていなくともよい。
【0050】
図6は、面状加熱部材61の概略構成を示す図である。面状加熱部材61は、電極61a、61bを備え、制御部40によりON/OFFが制御されるスイッチ46を介して電源45(図9参照)と接続される。面状加熱部材61は、スイッチ46がONの状態のときに電源45からの給電を受けて発熱する。
【0051】
面状加熱部材61として、例えば、発熱体を耐熱絶縁部材で帯状に被覆形成したラバーヒーター等を用いることができる。
【0052】
弾性部材62は、面状加熱部材61と金属板63との間に設けられる。弾性部材62は、金属板63を介して固定ネジ64により押圧されて厚さ方向(Y方向)に弾性変形した状態で配置され、その復元力によって面状加熱部材61を面方向に略均一な力で押圧し、面状加熱部材61をインクタンク50に押し付けている。弾性部材は、断熱効果があり、且つ、金属板63の押圧によって弾性変形し、その復元力によって面状加熱部材61を押圧できる部材であればよく、例えば、シリコンスポンジ等を用いることができる。
【0053】
金属板63は、弾性部材62に接触して設けられ、インク加熱装置60の外面を構成する。
【0054】
図3および図4に示すように、面状加熱部材61、弾性部材62および金属板63は、インクタンク50の長手方向中央部および両端部の3箇所に分けて設けられている。なお、面状加熱部材61の電極部61a、61bの存する部分についても一様に弾性部材62により押圧されているとしてもよいが、面状加熱部材61の電極部61a、61bの存する部分は弾性部材62に押圧されていなくてもよい。
【0055】
固定ネジ64は、面状加熱部材61、弾性部材62および金属板63に貫通して設けられ、インクタンク50に螺合することで、金属板63をインクタンク50に対して固定する。面状加熱部材61、弾性部材62および金属板63の固定ネジ64が貫通する箇所には、予め固定ネジ64の径よりも少し大きな径の貫通孔が形成され、固定ネジ64の取り付け時に固定ネジ64が容易に挿通することができるようになっている。
【0056】
図7は、図3の一部を拡大した図であって、サーミスタ65の取り付け部分を示した概略斜視図である。サーミスタ65は、インクタンク50に接触して取り付けられており、非加熱部としてのインクタンク50の温度を検出する。面状加熱部材61、弾性部材62および金属板63の縁部に切り欠きが形成されてインクタンク50が露出する露出部54が形成されており、その露出部54に対してサーミスタ65がネジ651により取り付けられている。なお、サーミスタ65は、ネジ651で固定されるものでなくともよく、例えば、薄膜形状に形成されて、インクタンク50と面状加熱部材61との間に挟み込まれるように固定されていてもよい。
【0057】
(2-3)インク吐出機構300
図8は、印刷装置1におけるインク吐出機構300の主要構成及びインク吐出機構の各部間の接続を示す概要図である。
【0058】
インク吐出機構300は、インクを供給するインク供給部70、インク供給部70から供給されるインクを貯留するインクタンク50、インクタンク50から供給されるインクを吐出するインクジェットヘッド241、インクジェットヘッド241のノズル2411を負圧にする圧力制御部305、インク供給部70とインクタンク50を接続する経路304、インクタンク50において第1サブタンク51と第2サブタンク52とを接続する経路303、第2サブタンク52とインクジェットヘッド241とを接続する供給路301、インクジェットヘッド241と第1サブタンク51とを接続する回収路302、第2サブタンク52と圧力制御部305とを接続する通気路306を備えて構成される。
【0059】
なお、図8において、インクの通路となる各経路を破線等により示しているが、これら各経路の具体的な構成はインクを導通する閉じた経路である。
【0060】
インク供給部70は、インク吐出機構300の各部に流通されるインクを貯留し、当該インクはインクタンク50の第1サブタンク51に供給される。
【0061】
第1サブタンク51は、インク供給部70から供給されるインクを貯留し、貯留されたインクは第2サブタンク52に供給される。第1サブタンク51に供給されるインクは流入部512から流入し、流路511を経て貯留部513に貯留され、当該貯留部513から第2サブタンク52に供給される。
【0062】
第1サブタンク51には、インク供給部70から加熱されていない常温のインクが供給されるが、供給されたインクは流路511を経て第2サブタンク52に供給されるため、第2サブタンク52に到達するまである程度の時間を要する。この間に、第1サブタンク51の外側に設けられたインク加熱装置60により、第1サブタンク51に供給された常温のインクが十分に加熱される。これにより、インク吐出量が多い場合であっても、第1サブタンク51から第2サブタンク52へ低温のインクが供給されることが抑制されている。
【0063】
第2サブタンク52は、第1サブタンク51から供給されるインクを貯留し、貯留されたインクはインクジェットヘッド241に供給される。これにより、第2サブタンク51に貯留されるインクが十分に加熱され、低温のインクがインクジェットヘッド241に供給されることによる吐出不良の発生を抑制されている。
【0064】
圧力制御部305は、第2サブタンク52に接続されて、制御部40の制御下で第2サブタンク52内の圧力を調整する。これにより、圧力制御部305は第2サブタンク52及び供給路301を介してインクジェットヘッド241のノズル2411の圧力を負圧状態とする。これにより、画像形成や各種のメンテナンスを行わない際にノズルからインクが漏れ出すことを防止する。
【0065】
供給路301、回収路302及び経路303、304はそれぞれ、内部をインクが通過するチューブ状の部材であり、例えば、樹脂等を素材としたり、伝熱性の良い部材で構成されたりする。
【0066】
経路304は、第1サブタンク51とインク供給部70とを接続し、当該経路304にはポンプP2が設けられている。ポンプP2は、制御部40の制御下で動作し、インク供給部70から第1サブタンク51にインクを供給する。ポンプP2としては、例えば、ダイヤフラムポンプ等の容積型のポンプやチューブポンプ等が用いられる。
【0067】
経路303は、第2サブタンク52と第1サブタンク51とを接続し、当該経路303にはポンプP1が設けられている。ポンプP1は、制御部40の制御下で動作し、第1サブタンク51から第2サブタンク52にインクを供給する。ポンプP1としては、例えば、ダイヤフラムポンプ等の容積型のポンプやチューブポンプ等が用いられる。
【0068】
供給路301は、インクジェットヘッド241のインレット2412と第2サブタンク52とを接続している。
【0069】
回収路302は、インクジェットヘッド241のアウトレット2413と第1サブタンク51とを接続している。
【0070】
通気路306は、第2サブタンク52と圧力制御部305とを接続している。通気路306は、内部を空気が通過するチューブ状の部材であり、例えば、樹脂等を素材とする。通気路306は、圧力制御部305に接続された1本の共通通気路3061から複数の第2サブタンク52の各々に接続される複数の分岐通気路3062に分岐する構造となっている。
【0071】
また、回収路302、経路303、分岐通気路3062にはそれぞれ電磁弁307、308、309が設けられている。電磁弁307~309は、制御部40の制御下で、それぞれが設けられたインクの流路や通気路を開閉する。すなわち、回収路302に設けられた電磁弁307は、回収路302の開閉を切り替える。経路303において第1サブタンク51とポンプP1との間に設けられた電磁弁308は、第1サブタンク51とポンプP1との接続の開閉を切り替える。分岐通気路3062に設けられた電磁弁309は、第2サブタンク52と圧力制御部305との接続の開閉を切り替える。
【0072】
なお、第2サブタンク52は、上記の各種の接続箇所を除いて密閉されたタンク状の容器である。すなわち、第2サブタンク52内の圧力は、圧力制御部305により加えられる負圧の度合いや、第1サブタンク51からのインクの供給の有無等により変化する。例えば、電磁弁309が閉じた状態となり圧力制御部305により加えられる負圧が失われた状態で、第1サブタンク51からのインクの供給を受けると、第2サブタンク52内のインクの量の増加に伴い、第2サブタンク52内の圧力は増加する。
【0073】
一方、第1サブタンク51は、外部に開放された容器であり、インクの量の増減に関わらずほぼ大気圧に保たれる。
【0074】
(2-4)インク加熱制御
図9は、インク加熱の制御構成を示すブロック図である。
【0075】
上述したように、面状加熱部材61は、スイッチ46を介して電源45と接続される。スイッチ46は、制御部40のCPU41によりON/OFFが制御される。サーミスタ65により検知された温度は、逐次、制御部40のCPU41に通知される。面状加熱部材61には、目標温度が設定され、CPU41は、サーミスタ65から通知された温度が目標温度を下回る場合にスイッチ46をONの状態にし、目標温度以上の場合にスイッチ46をOFFの状態にする。これにより、インクタンク50に貯留されたインクは、目標温度に維持される。
【0076】
上述の弾性部材62は、劣化が進行して弾性部材の弾性力が失われると、加熱部材をインクタンク側に押圧する力が弱まり、加熱部材とインクタンクの間に隙間(空気層)ができ、空気層が断熱層になって、インクタンクに熱が伝わりにくくなる可能性がある。弾性部材62の劣化要因としては、水分を含んだ状態での加熱、特に、急激な温度上昇が推定される。
【0077】
そこで、インク加熱装置60は、弾性部材62に所定以上の水分が含まれるか否かを判定し、弾性部材62に所定以上の水分が含まれると判定される場合に、急激な温度上昇が発生しないように、インクの過熱を段階的に制御する。具体的に、インクをインクジェットヘッド241に供給するのに適した本加熱温度に上昇させる本加熱制御を実行する前に、インクを予備加熱温度まで上昇させる予備加熱制御を行う。
【0078】
ここで、弾性部材62に含まれる水分について、印刷装置1の稼働時は、インクをインクジェットに供給するための加熱制御が行われ、それにより弾性部材62も高い温度で維持されて水分が気化されるため、弾性部材62が水分を多く含む状態になることは考えにくい。一方、印刷装置1の停止時には、周囲の湿度にもよるが、弾性部材62は室温程度の温度となり、気化する水分量がすくなくなり、停止時間に応じて弾性部材62に多くの水分が含まれることになる。
【0079】
そこで、本開示のインク加熱装置60は、弾性部材62に所定以上の湿気が含まれるか否かの判定を、印刷装置1の停止時間により判定する。すなわち、印刷装置1の停止時間が所定時間よりも長ければ、本加熱制御の前に予備加熱制御を行う。
【0080】
また、インク加熱装置60は、予備加熱制御において、印刷装置1の停止時間が長ければ長いほど、室温から予備加熱温度の目標値に達するまで平均温度上昇速度が小さくなるように、段階的に予備加熱を行う。
【0081】
以下、インク加熱装置60が実行する予備加熱制御について、詳細に説明する。
【0082】
制御部40は、不揮発性メモリ42に記憶された起動ログ情報43および昇温制御情報44を用いて予備加熱制御を実行する。
【0083】
図10に、起動ログ情報43の一例を示す。起動ログ情報43は、印刷装置1の起動時刻および停止時刻を記録したログ情報である。制御部40は、印刷装置1の起動時のウォーミングアップ時に、現在時刻から遡って最近の起動時刻とこれから遡って最近の停止時刻との差から印刷装置1の停止時間を算出する。
【0084】
図11に、昇温制御情報44の一例を示す。昇温制御情報44は、予備加熱制御における加熱段数、並びに、各加熱における目標温度および維持時間が設定された設定情報である。
【0085】
図11の例では、印刷装置の停止時間が0日(24時間未満)の場合には、予備加熱制御における加熱段数は0、すなわち、予備加熱制御を実行せずに最初から本加熱制御を実行することを示している。
【0086】
また、印刷装置の停止時間が1~2日(24時間以上72時間未満)の場合には、加熱段数が2であり、予備加熱制御として第1段加熱および第2段加熱を実行した後、本加熱制御を実行することを示している。そして、第1段加熱において、目標温度を35℃とし、目標温度に到達した後インクの温度を目標温度に10秒間維持することを示し、第2段加熱において、目標温度を50℃とし、目標温度に到達した後インクの温度を目標温度に10秒間維持することを示している。
【0087】
印刷装置の停止時間が3~10日(72時間以上264時間未満)の場合には、加熱段数が3であり、予備加熱制御として第1段加熱、第2段加熱および第3段加熱を実行した後、本加熱制御を実行することを示している。そして、第1段加熱において、目標温度30℃を10秒間維持することを示し、第2段加熱において、目標温度40℃を10秒間維持することを示し、第3段加熱において、目標温度50℃を10秒間維持することを示している。
【0088】
印刷装置の停止時間11~20日(264時間以上504時間未満)の場合には、加熱段数が3であり、予備加熱制御として第1段加熱、第2段加熱および第3段加熱を実行した後、本加熱制御を実行することを示している。そして、第1段加熱において、目標温度30℃を20秒間維持することを示し、第2段加熱において、目標温度40℃を20秒間維持することを示し、第3段加熱において、目標温度50℃を20秒間維持することを示している。
【0089】
印刷装置の停止時間21日以上(504時間以上)の場合には、加熱段数が4であり、予備加熱制御として第1段加熱、第2段加熱、第3加熱および第4段加熱を実行した後、本加熱制御を実行することを示している。そして、第1段加熱において、目標温度30℃を30秒間維持することを示し、第2段加熱において、目標温度40℃を20秒間維持することを示し、第3段加熱において、目標温度45℃を20秒間維持することを示し、第4段加熱において、目標温度50℃を10秒間維持することを示している。
【0090】
インク加熱装置60は、昇温制御情報44に従って、面状加熱部材61による過熱の制御を行う。
【0091】
図12は、印刷装置1の停止時間が1~2日であった場合における、サーミスタ65で検知される温度の推移と、印刷装置1の本体電源のON/OFFの推移を示すグラフである。時刻t0において、本体電源がOFFからONに切り替わり、予備加熱制御の第1段加熱を開始する。時刻t1において、サーミスタ65で検知される温度が第1段加熱の目標値35℃に達し、時刻t1から時刻t2までの10秒間、サーミスタ65で検知される温度を35℃に維持する制御を行う。そして、時刻t2において、予備加熱制御の第2段加熱を開始し、時刻t3においてサーミスタ65で検知される温度が第2段加熱の目標値50℃に達すると、時刻t3から時刻t4までの10秒間、サーミスタ65で検知される温度を50℃に維持する制御を行う。そして、時刻t4において、本加熱制御を開始し、時刻t5においてサーミスタ65で検知される温度が本加熱の目標値85℃に達すると、本体電源がOFFになるまで、サーミスタ65で検知される温度を85℃に維持する。
【0092】
図13は、印刷装置1のウォーミングアップ時(電源ON時)において、制御部40が実行するインク加熱制御のフローチャートである。
【0093】
制御部40は、印刷装置1の電源ONを検出すると(ステップS1)、起動ログ情報43を参照し、直近の起動時刻および停止時刻から印刷装置1の停止時間を算出する(ステップS2)。
【0094】
制御部40は、昇温制御情報44を参照し、ステップ2で算出した印刷装置1の停止時間に対応する加熱段数Nを決定する(ステップS3)。
【0095】
制御部40は、制御変数nを初期化し(ステップS4)、加熱段数N>制御変数nを満たす間(ステップS5:Yes)、予備加熱制御(ステップS6~ステップ9)を行い、満たさない場合(ステップS5:No)、本加熱制御(ステップS13)を行う。
【0096】
予備加熱制御において、制御部40は、昇温制御情報44を参照し、ステップS2で算出した印刷装置1の停止時間および制御変数nに応じた予備加熱目標値および予備加熱維持時間を設定する(ステップS6)。本開示では、nは、予備加熱制御における実行中の加熱段階数を示す変数であり、昇温制御情報44における第(n+1)段加熱の目標温度および維持時間を、予備加熱目標値および予備加熱維持時間として取得する。例えば、印刷装置1の停止時間が48時間でn=1の場合、停止時間が1~2日のレコードの第2段加熱の目標温度50℃および維持時間10秒を予備加熱目標値および予備加熱維持時間として設定する。
【0097】
制御部40は、スイッチ46をONにして面状加熱部材61の発熱を開始させ、設定された予備加熱目標値に向けてインクタンク50内のインクの昇温を開始する(ステップS7)。
【0098】
制御部40は、サーミスタ65から通知される温度を参照してインクの温度が予備加熱目標値まで上昇したか否かを判定する(ステップS8)。
【0099】
インクの温度が予備加熱目標値まで上昇していない場合(ステップS8:No)、ステップS7で面状加熱部材61の発熱を開始してからの時間が、予め定められた異常判定時間を超えているか否かを判定する(ステップS11)。
【0100】
ステップS7で面状加熱部材61の発熱を開始してからの時間が、予め定められた異常判定時間を超えている場合(ステップS11:Yes)、制御部40は、ヒーター異常(面状加熱部材61で正常に加熱できない異常)が発生していると判断し、ヒーター異常時の対応(例えば、予備加熱制御の中止や印刷装置1に備えられた表示装置にヒーター異常が発生した旨の表示等を行う)を行う(ステップS12)。
【0101】
ステップS7で面状加熱部材61の発熱を開始してからの時間が、予め定められた異常判定時間を超えていない場合(ステップS11:No)、所定時間待機してステップS8に戻り、再度インクの温度が予備加熱目標値まで上昇しているか否かの判定を行う。
【0102】
インクの温度が予備加熱目標値まで上昇している場合(ステップS8:Yes)、インクの温度が予備加熱目標値に到達してからの経過時間が予備加熱維持時間を超えるまでの間(ステップS9:No)、インクの温度を予備加熱目標値で維持する制御を行う。
【0103】
なお、インクの温度を予備加熱目標値で維持する制御は、例えば、サーミスタ65から通知されるインクの温度を監視して、予備加熱目標値以上の場合にスイッチをOFF、予備加熱目標値未満の場合にスイッチをONにするフィードバック制御により行う。
【0104】
インクの温度が予備加熱目標値に到達してからの経過時間が予備加熱維持時間を超えると、予備加熱制御における第(n+1)段加熱制御を終了し、制御変数nをインクリメント(ステップS10)して、ステップS5に戻る。
【0105】
このように、本加熱制御の前に、印刷装置1の停止時間の大小に応じて予備加熱制御の加熱段数を切り替えることで、インク加熱装置60は、停止時間が長期でも短期でも、弾性部材62の劣化要因となる水分を含んだ状態での急激な温度上昇が発生しなくなるため、弾性部材62の劣化を抑制することができる。
[2]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0106】
(1)上記実施の形態では、印刷装置1の停止時間が長くなれば、加熱段数の増加および予備加熱維持時間の長期化の両方を行っているが、本加熱温度までの平均温度変化率を小さくすることができれば、加熱段数の増加や予備加熱維持時間の長期化の一方又は両方は行わなくともよい。
【0107】
又、印刷装置1(またはインクタンク50)周辺の湿度をセンサーなどにより検出する機能を備え、印刷装置1の停止期間における湿度や印刷装置1の起動時の湿度が所定の閾値(例えば、高湿を示す80%RH)以上であれば予備加熱における加熱段数を、低湿、常湿時よりも増加させる制御を行ってもよい。
【0108】
(2)上記実施の形態において、印刷装置1は、記録媒体Pの幅方向について、記録媒体Pの全体をカバーする幅に設けられたヘッドユニット24に、複数のインクジェットヘッド241を配列して構成されたワンパス方式のラインヘッド型のインクジェット印刷装置として説明したが、マルチパス型のシリアルヘッド型のインクジェット印刷装置であってもよい。
【0109】
(3)上記実施の形態において、サーミスタ65により、インクタンク50の温度を検出することにより、間接的にインクの温度を検出していたが、加熱制御に用いられる温度検出の方法はこの限りではない。例えば、温度に比例して電気抵抗率が変化する促音抵抗体を用いて温度検出を行ってもよいし、物体表面から放射される赤外線のエネルギー量を計測する非接触型の温度計を用いて温度検出を行ってもよい。また、インクタンク50や弾性部材62等の温度から間接的にインクの温度を検出してもよく、インクの温度を直接計測してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本開示は、インクジェット方式の印刷装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
10 給紙部
20 画像形成部
30 排紙部
40 制御部
50 インクタンク
60 インク加熱装置
61 面状加熱部材
62 弾性部材
63 金属板
65 サーミスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13