(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型粘着シート及び表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20241008BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20241008BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20241008BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J109/00
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021076768
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武藤 国昭
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 信幸
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 万智
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040240(JP,A)
【文献】特開2017-226785(JP,A)
【文献】特開2019-182929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマーと、光重合開始剤と、両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体と
、架橋剤とを少なくとも含む粘着剤組成物の半硬化物を備え、
前記ジエン系共重合体の重量平均分子量は、1000~5000であり、
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量に対し、前記ジエン系共重合体を0.5~30質量部含み、
活性エネルギー線による硬化前のガラスに対する粘着力をX1、活性エネルギー線による硬化後のガラスに対する粘着力をX2としたとき、X1が20N/25mm以上であり、X1/X2の値が0.8以上である、活性エネルギー線硬化型粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマーの含有量が5質量部未満である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマーの含有量が5質量部未満である、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
【請求項4】
前記ジエン系共重合体は、1,2ビニル構造を有する重合体、又は、1,2ビニル構造に水素添加された構造を有する重合体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
【請求項5】
前記ジエン系共重合体のガラス転移温度は、0℃以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
【請求項6】
活性エネルギー線硬化後の100kHzにおける比誘電率が3.5以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
【請求項7】
液晶又は有機ELディスプレイ用部材の貼り合わせに使用され、
前記部材がガラス、偏光板、又はタッチセンサーである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シートの後硬化物を粘着剤層として含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型粘着シート及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、例えば、部材どうしを貼り合わせる用途等に使用されており、種々の分野において広く利用されている。このような粘着シートは、近年では液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、あるいはタッチパネル等の入力装置等の用途にも使用されている。表示装置あるいは入力装置を構成する光学ディスプレイ等の各部材どうしの貼り合わせに粘着シートを使用することで、高精度、かつ、容易に各種装置を製造することができる。
【0003】
粘着シートの一例として、活性エネルギー線硬化型粘着シートが知られている(例えば、特許文献1を参照)。斯かる活性エネルギー線硬化型粘着シートは、活性エネルギー線を照射することで(つまり、後硬化をすることで)、活性エネルギー線硬化型粘着シートの硬化が進行する性質を有する。従って、活性エネルギー線硬化型粘着シートで被着体どうしを貼合した状態で活性エネルギー線を照射すると、活性エネルギー線硬化型粘着シートの硬化が進行することで、被着体どうしがより強固に貼り合わされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の活性エネルギー線硬化型粘着シートは、初期粘着力、すなわち、活性エネルギー線を照射する前の粘着力が低いという問題があった。加えて、活性エネルギー線硬化型粘着シートを備えた表示装置等に活性エネルギー線を照射して粘着シートを後硬化する場合、ディスプレイのベゼル等が存在すると、その部分には粘着シートに活性エネルギー線が当たらないので、当該部分の後硬化が進行しにくく、結果として粘着力が不十分になることも問題となり得る。この観点から、初期粘着力に優れる活性エネルギー線硬化型粘着シートの開発が急務であるといえる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、初期粘着力に優れる活性エネルギー線硬化型粘着シート及び当該粘着シートを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
(メタ)アクリル系ポリマーと、光重合開始剤と、両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体とを少なくとも含む粘着剤組成物の半硬化物を備え、
活性エネルギー線による硬化前のガラスに対する粘着力をX1、活性エネルギー線による硬化後のガラスに対する粘着力をX2としたとき、X1が20N/25mm以上であり、
X1/X2の値が0.8以上である、活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項2
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマーの含有量が5質量部未満である、項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項3
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマーの含有量が5質量部未満である、項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項4
前記ジエン系共重合体は、1,2ビニル構造を有する重合体、又は、1,2ビニル構造に水素添加された構造を有する重合体である、項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項5
前記ジエン系共重合体の重量平均分子量は、1000~5000であり、
前記ジエン系共重合体のガラス転移温度は、0℃以下である、項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項6
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量に対し、前記ジエン系共重合体を0.5~30質量部含む、項1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項7
活性エネルギー線硬化後の100kHzにおける比誘電率が3.5以下である、項1~6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項8
液晶又は有機ELディスプレイ用部材の貼り合わせに使用され、
前記部材がガラス、偏光板、又はタッチセンサーである、項1~7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シート。
項9
項1~8のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着シートの後硬化物を粘着剤層として含む、表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型粘着シートは、初期粘着力に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
1.活性エネルギー線硬化型粘着シート
本発明の活性エネルギー線硬化型粘着シートは、(メタ)アクリル系ポリマーと、光重合開始剤と、両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体とを少なくとも含む粘着剤組成物の半硬化物を備える。本発明の活性エネルギー線硬化型粘着シートは、活性エネルギー線による硬化前のガラスに対する粘着力をX1、活性エネルギー線による硬化後のガラスに対する粘着力をX2としたとき、X1が20N/25mm以上であり、X1/X2の値が0.8以上である。なお、本明細書において、活性エネルギー線硬化型粘着シートを活性エネルギー線によって硬化することを単に「後硬化」ということもある。
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型粘着シートは、初期粘着力に優れるものである。従って、本発明の活性エネルギー線硬化型粘着シートを後硬化する際に、活性エネルギー線が当たらなかった箇所においても高い粘着力を有するので、結果的に本発明の活性エネルギー線硬化型粘着シートは、後硬化後においても粘着力に優れるものである。
【0013】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型粘着シートを単に「粘着シート」と表記する。
【0014】
<(メタ)アクリル系ポリマー>
(メタ)アクリル系ポリマーの種類は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートを形成するために使用されている(メタ)アクリル系ポリマーと同様とすることができる。特に、(メタ)アクリル系ポリマーは、後記する架橋剤によって、架橋反応が進行する重合体であることが好ましく、即ち、(メタ)アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を有する重合体であることが好ましい。架橋性官能基としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシル基、グリシジル基、アミノ基等を挙げることができる。
【0015】
(メタ)アクリル系ポリマーの一態様としては、(メタ)アクリルエステル単位(a)と、カルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体単位(b)とを含む重合体を挙げることができる。「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0016】
なお、(メタ)アクリルエステル単位(a)及びカルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体単位(b)における「単位」とは、重合体を構成する繰り返し単位であることを意味する。
【0017】
(メタ)アクリルエステル(a)は、(メタ)アクリルエステル化合物に由来する繰り返し単位である。(メタ)アクリルエステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル等が例示される。中でも、(メタ)アクリルエステル化合物としては、炭素数4~10、好ましくは炭素数4~8の直鎖又は分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル化合物が好ましい。(メタ)アクリルエステル化合物は、ヒドロキシル基及びカルボキシ基を有していないことが好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる(メタ)アクリルエステル単位(a)は、1種又は2種類以上とすることができる。
【0019】
カルボキシ基を有する単量体単位(b)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する繰り返し単位である。カルボキシ基を有する単量体は、例えば、公知のカルボキシ基含有重合性単量体を広く挙げることができ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0020】
ヒドロキシル基を有する単量体単位(b)は、ヒドロキシル基を有する単量体に由来する繰り返し単位である。ヒドロキシル基を有する単量体は、例えば、公知のヒドロキシル基含有重合性単量体を広く挙げることができ、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル系ポリマーは、単量体単位(b)として、カルボキシ基を有する単量体単位及びヒドロキシル基を有する単量体単位の両方を含むことができ、あるいは、いずれか一方のみを含むことができる。単量体単位(b)が、カルボキシ基を有する単量体単位及びヒドロキシル基を有する単量体単位の両方を含む場合、これらの含有比率は特に限定されず、如何なる含有比率であっても所望の粘着シートを得ることができる。
【0022】
(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリルエステル単位(a)及び単量体単位(b)の含有割合は特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリルエステル単位(a)及び単量体単位(b)の全質量に対し、(メタ)アクリルエステル単位(a)を50質量%以上含むことができ、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。また、(メタ)アクリルエステル単位(a)及び単量体単位(b)の全質量に対する(メタ)アクリルエステル単位(a)の含有割合は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下である。
【0023】
なお、本発明において、(メタ)アクリル系ポリマー中の各構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーを製造するときに使用する当該構成単位に由来する重合性単量体の使用量に一致するものとみなすことができる。
【0024】
(メタ)アクリル系ポリマーは、本発明の効果が阻害されない限り、(メタ)アクリルエステル単位(a)及び単量体単位(b)以外の他の構成単位を含むことができる。他の構成単位は、例えば、前記(メタ)アクリルエステル化合物と共重合可能な化合物に由来する構成単位を広く挙げることができる。斯かる化合物としては、具体的には、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられ、その他、アミノ基含有(メタ)アクリルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリルエステル、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリルエステル等も挙げることができる。
【0025】
(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位の総質量に対し、(メタ)アクリルエステル単位(a)及び単量体単位(b)の含有割合は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリルエステル単位(a)及び単量体単位(b)のみで構成することもできる。
【0026】
(メタ)アクリル系ポリマー中、各構成単位の配列順序は特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を形成することができ、製造が容易であるという点で、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されない。例えば、粘着シートの初期粘着力が高まりやすい点で、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は10万~200万が好ましく、20万~150万がより好ましい。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、後述する架橋剤で架橋される前の値を意味する。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
GPC測定にあたって、校正曲線は、標準ポリスチレンShodex standardポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320~2,500,000迄の10サンプルを使用する。
【0028】
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは1種のみとすることがき、あるいは、2種以上とすることができる。
【0029】
(メタ)アクリル系ポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の重合方法を利用した製造方法により、(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。(メタ)アクリル系ポリマーは、市販品等から入手することもできる。
【0030】
<両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体>
両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体(以下、単に「ジエン系共重合体」と表記する)は、ポリマー骨格(バックボーン)がジエン系の重合体であり、その両末端に(メタ)アクリレート部位を有するポリマーである。(メタ)アクリレート部位は、例えば、「CH2=C(CH3)COO-」で表される一価の基である。なお、念のための注記に過ぎないが、ジエン系共重合体は、(メタ)アクリル系ポリマー以外のポリマーである。
【0031】
本発明の粘着シートは、ジエン系共重合体を含むことで、初期粘着力が高くなり、さらに、段差追従性も向上しやすい。また、ジエン系共重合体は、粘着シートに低い比誘電率をもたらしやすい。
【0032】
前記ジエン系共重合体は、1,2ビニル構造を有する重合体、又は、1,2ビニル構造に水素添加された構造を有する重合体であることが好ましい。この場合、粘着シートの初期粘着力がより向上し、さらに、段差追従性も特に向上しやすい。1,2ビニル構造とは、例えば、CH2=CH-で表される一価の基であり、また、1,2ビニル構造に水素添加された構造とは、例えば、CH3-CH2-で表される一価の基である。前記ジエン系共重合体は、1,2ビニル構造を有する重合体、又は、1,2ビニル構造に水素添加された構造を有する重合体である場合、これらの構造は、例えば、ジエン系共重合体の側鎖に有することができる。
【0033】
中でも前記ジエン系共重合体は、ポリマー骨格がポリブタジエン骨格であって、その両末端に前記(メタ)アクリレート部位を有することが好ましい。これにより、粘着シートの初期粘着力を特に向上させることができ、段差追従性も特に向上しやすく、また、粘着シートの比誘電率をより低くすることもできる。
【0034】
両末端の前記(メタ)アクリレート部位は、バックボーンであるジエン系の重合体に直接結合していてもよいし、他の部位を介在して間接的に結合してもよい。前記(メタ)アクリレート部位が他の部位を介在して間接的に結合している場合、例えば、ウレタン結合を介してジエン系の重合体に結合することができる。両末端の前記(メタ)アクリレート部位は互いに同一とすることができ、あるいは互いに異なっていてもよい。
【0035】
前記ジエン系共重合体の重量平均分子量は特に限定されず、例えば、1000~5000とすることができる。これにより、粘着シートは初期粘着力が高まりやすく、段差追従性も向上しやすい。ジエン系共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、ポリスチレン基準で求めた値であって、前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量と同条件である。
【0036】
前記ジエン系共重合体のガラス転移温度は特に限定されず、例えば、0℃以下であることが好ましい。これにより、粘着シートは初期粘着力が高まりやすく、段差追従性も向上しやすい。ジエン系共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0037】
前記ジエン系共重合体の粘度は、例えば、1,000~500,000mPa・s/45℃であることが好ましい。この場合、粘着シートの初期粘着力が高まりやすく、段差追従性も特に向上しやすく、また、粘着シートの比誘電率をより低くすることもできる。ここでいう粘度は、B型粘度計(TOKI製RB-80L)で測定した値をいう。
【0038】
粘着剤組成物に含まれる前記ジエン系共重合体は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることができる。
【0039】
前記ジエン系共重合体の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の重合方法を利用した製造方法により、前記ジエン系共重合体を得ることができる。前記ジエン系共重合体は、市販品等から入手することもでき、例えば、日本曹達社製のTEシリーズを挙げることができる。
【0040】
粘着剤組成物において、前記ジエン系共重合体の含有量は特に限定されない。例えば、前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量に対し、前記ジエン系共重合体を0.5~30質量部含むことが好ましい。この場合、粘着シートは初期粘着力が高まりやすく、段差追従性も向上しやすく、また、粘着シートの比誘電率をより低くすることできる。前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量に対し、前記ジエン系共重合体を1質量部以上含むことがより好ましく、2質量部以上含むことがさらに好ましく、4質量部以上含むことが特に好ましく、また、20質量部以下含むことがより好ましく、18質量部以下含むことがさらに好ましく、16質量部以下含むことが特に好ましい。
【0041】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射(つまり、後硬化)により、例えば、前記ジエン系共重合体の重合反応を開始させる役割を果たす成分である。本発明において、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0042】
光重合開始剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の光重合開始剤を広く挙げることができる。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤等が挙げられる。
【0043】
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンメシチル(フェニル)ケトン、4-メチルベンゾフェノン等が挙げられ、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンメシチル(フェニル)ケトン及び4-メチルベンゾフェノンの混合物であってもよい。ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等が挙げられる。チオキサントン系開始剤として具体的には、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等が挙げられる。アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4-ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
【0044】
粘着剤組成物に含まれる光重合開始剤は1種を単独とすることができ、あるいは2種以上とすることができる。光重合開始剤は、例えば、市販品等から入手することができる。
【0045】
粘着剤組成物において、光重合開始剤の含有量は特に限定されず、前記ジエン系共重合体の種類及び含有量、並びに、半硬化または後硬化させるときの活性エネルギー線の照射量等に応じて適宜選択される。例えば、前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量に対し、光重合開始剤を0.05~10質量部含むことができ、0.1~5質量部含むことが好ましい。
【0046】
<粘着剤組成物>
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー、ジエン系共重合体、及び、光重合開始剤の他、架橋剤を含むことができる。
【0047】
架橋剤は、例えば、熱により(メタ)アクリル系ポリマーと反応する性質を有する化合物である。架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物を挙げることができる。(メタ)アクリル系ポリマーとの反応性が高いという点で、架橋剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物を用いることが好ましい。架橋剤が金属キレートを含む場合は、例えば、公知の架橋遅延剤を併用することも好ましい。
【0048】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0049】
粘着剤組成物に含まれる架橋剤は1種を単独とすることができ、あるいは2種以上とすることができる。架橋剤は、例えば、市販品等から入手することができる。
【0050】
粘着剤組成物において、架橋剤の含有量は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーの総質量100質量部あたり、0.01~5質量部とすることができる。この場合、得られる粘着シートの加工性が高まりやすい。架橋剤の含有量は架橋性(メタ)アクリル系共重合体の総質量100質量部あたり、0.05~3質量部とすることができる。
【0051】
粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含むこともできる。シランカップリング剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の化合物を広く使用できる。シランカップリング剤としては、例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、その他、各種アルコキシシロキサンのオリゴマーであってもよい。これらのシランカップリング剤は、いずれも市販品から入手することができる。
【0052】
粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、その含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、0.1~5質量部とすることができる。シランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0053】
粘着剤組成物は、塗工性を良好にする観点から、溶剤を含むことができる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0054】
粘着剤組成物が溶剤を含む場合、その含有量は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し、25~500質量部とすることができ、30~400質量部とすることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。溶剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0055】
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の各種の粘着剤用の添加剤を含むことができる。斯かる添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0056】
粘着剤組成物に含まれる他の成分としては、重合性単量体を挙げることができる。重合性単量体としては、多官能重合性単量体、単官能単量体を挙げることができる。以下、重合性単量体を「重合性単量体M」と表記する。念のための注記に過ぎないが、重合性単量体Mはジエン系共重合体以外の成分を意味する。重合性単量体Mの種類は特に限定されず、例えば、粘着シートを製造するために使用される公知の多官能重合性単量体、単官能単量体を広く挙げることができる。
【0057】
ただし、本発明では、前述のように、粘着シートの粘着シートの初期粘着力を向上させやすいという点で、粘着剤組成物は後記する特定の重合性単量体を含まないほうが好ましく、当該特定の重合性単量体を含むにしてもその使用量は少ないことが好ましい。ここでいう特定の重合性単量体とは具体的に分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマーが挙げられ、これを含むにしても、その含有量は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、5質量部未満であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、0.05質量部以下であることが特に好ましい。粘着剤組成物は分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマーを含まないことが特に好ましい。
【0058】
特定の重合性単量体の他例としては、炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマーが挙げられ、これを含むにしても、その含有量は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、5質量部未満であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、0.05質量部以下であることが特に好ましい。粘着剤組成物は炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマーを含まないことが特に好ましい。
【0059】
粘着剤組成物は、分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマー及び炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマーの両方を含まないことも好ましい。
【0060】
従って、粘着剤組成物が重合性単量体Mを含む場合は、斯かる重合性単量体Mは、分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマー及び炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマーを除くことが最も好ましい。重合性単量体Mが、分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマー及び炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマー以外である場合、その含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部あたり、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがさらに好ましい。粘着剤組成物は、重合性単量体Mを含まないことも好ましい。
【0061】
粘着剤組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、あらかじめ合成した(メタ)アクリルポリマーと、光重合開始剤と、両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体と、必要に応じて含まれる他の成分(例えば、架橋剤、シランカップリング剤、溶剤等)を所定の割合で混合することで、粘着剤組成物を調製することができる。この場合、(メタ)アクリルポリマーは、溶液又は分散液の状態で使用することができる。(メタ)アクリルポリマーが溶液又は分散液である場合、溶液又は分散液は、前記溶剤を含むことができる。官能基を有する(メタ)アクリルポリマーが溶液又は分散液は、固形分濃度で、例えば、1~50質量%とすることができる。
【0062】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、前記粘着剤組成物から形成された層状の半硬化物を備える。斯かる半硬化物は、粘着シートも粘着剤層として機能する。
【0063】
半硬化物は、(メタ)アクリルポリマーの硬化物と、前記光重合開始剤と、前記ジエン系共重合体(両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体)とを少なくとも含む。(メタ)アクリルポリマーの硬化物は、例えば、前記(メタ)アクリルポリマーと前記架橋剤との反応により生成する架橋ポリマーである。ただし、半硬化物には、未反応の(メタ)アクリルポリマー及び架橋剤は含まれることもある。なお、半硬化物を形成する方法は、後記<粘着シートの製造方法>で説明する。
【0064】
本発明の粘着シートは、前記半硬化物のみで形成されていてもよいし、あるいは、半硬化物以外の層を有することもできる。以下、半硬化物を「粘着剤層」と表記することがある。
【0065】
粘着シートは、前記粘着剤層を備える限り、その構造は特に限定されない。粘着シートは、片面粘着シートでも両面粘着シートでもよい。粘着シートが片面粘着シートである場合、支持体上に半硬化物(粘着剤層)が積層した多層シートが挙げられる。また、支持体と粘着剤層との間には他の層が設けられていてもよい。粘着シートが両面粘着シートである場合、半硬化物(粘着剤層)からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シートが挙げられる。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
【0066】
支持体としては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルム;反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルム等の光学フィルム;等が挙げられる。
【0067】
前記粘着剤層は剥離シートによって覆われていてもよく、この場合、剥離シート付き粘着シートが提供される。従って、本発明粘着シートを用いて、剥離シート付き粘着シートを形成することができる。剥離シートとしては、剥離シート用基材と該剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。
【0068】
剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH3)3SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
【0069】
前記粘着剤層の両面に剥離シートを有する場合、互いの剥離シートの剥離性が異なっていてもよい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。
【0070】
前記粘着剤層の厚みは、用途に応じて適宜設定できるので特に限定されない。例えば、粘着剤層の厚みは10~1000μmであることが好ましく、20~500μmであることがより好ましく、100~400μmであることがさらに好ましい。なお、粘着剤層の厚みとは、粘着剤層が多層の積層構造を有する場合は、各層の厚みの総合計を意味する。
【0071】
粘着シートにおいて、活性エネルギー線による硬化前のガラスに対する粘着力をX1、活性エネルギー線による硬化後のガラスに対する粘着力をX2としたとき、X1が20N/25mm以上であり、X1/X2の値が0.8以上である。ここでいうガラスは、ソーダガラス(平岡特殊硝子製作株式会社製、1.1mm厚み)である。
【0072】
X1が20N/25mm以上、かつ、X1/X2の値が0.8以上であることで本発明の粘着シートは初期粘着力に優れるものとなる。
【0073】
ここで、X2を測定するにあたっての「活性エネルギー線による硬化」において、活性エネルギー線の照射条件は、355nmの波長で120mW/cm2の照度とし、積算光量は3000mJ/cm2とする。照度計は、アイグラフィックス社製「UV-PFA1」を使用する。この照射条件では、紫外線照射機として、アイグラフィックス社製のECS-4011GX/Nを使用し、これに、高圧水銀灯H04-L41と熱線カットフィルターを取り付ける。以下、この照射条件を「照射条件A」と表記する。
【0074】
X1は、25N/25mm以上であることが好ましく、30N/25mm以上であることがより好ましい。X1の上限は特に限定的ではなく、例えば、50N/25mmである。X1/X2の値は0.82以上であることが好ましく、0.84以上であることがより好ましく、0.85以上であることがさらに好ましい。X1/X2の値は1未満であってもよいし、あるいは、X1/X2の値は1以上であってもよい。
【0075】
粘着シートは、(メタ)アクリルポリマーの架橋構造体と、前記光重合開始剤と、前記ジエン系共重合体とを少なくとも含むものであり、特に、ジエン系共重合体が含まれることで、X1の値が大きくなり、X1/X2の値も大きな値を示すことができる。
【0076】
従って、粘着シートを後硬化させた際に仮に粘着シートに活性エネルギー線が当たらない部分があったとしても、その部分の粘着力も十分に高く、後硬化した部位の粘着力に近い粘着力を示すことができ、結果的に粘着シートは、優れた粘着性能を発揮することができる。
【0077】
粘着シートが前述の分子量が1000未満である単官能アクリル系モノマー及び/又は炭素数が8~24の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を有する単官能アクリル系モノマーを含まない場合は、特にX1の値が大きくなり、つまり、初期粘着力が高まりやすい。限定的な解釈を望むものではないが、粘着シートがこれらの単官能アクリル系モノマーを含む場合、当該モノマーは一種の可塑効果をもたらすことから、粘着シートを後硬化させた際に仮に粘着シートに活性エネルギー線が当たらない部分があると、この部分には前記単官能アクリル系モノマーの可塑効果が作用する。これによって、当該部分の粘着力の低下を引き起こすと推察される。
【0078】
粘着シートを前記照射条件Aで硬化した後の100kHzにおける比誘電率は、例えば、3.5以下となる。このように粘着シートは低比誘電率であるので、例えば、本発明の粘着シートを液晶又は有機EL等の表示装置等の各種用途への使用に好適であり、特にモバイル端末のタッチセンサーの誤作動を防ぎやすくなる。
【0079】
粘着シートの活性エネルギー線硬化後の比誘電率は、例えば、前記ジエン系共重合体の種類や含有量の調節で制御することが可能である。粘着シートの活性エネルギー線硬化後の比誘電率は、周波数が100KHzで23℃、50%RHの環境下で測定した値であって、JIS C 2138に規定される方法で算出される。
【0080】
粘着シートのゲル分率は特に限定されない。粘着シート(前記照射条件Aで照射する前)のゲル分率は、例えば、35%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、特に好ましくは50%以上であり、上限は、例えば、70%である。また、粘着シートを前記照射条件Aで硬化した後のゲル分率は、例えば、55%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上であり、上限は、例えば、95%である。
【0081】
ゲル分率は、以下の方法で測定した値である。まず、粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定する。得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率を求める。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0082】
本発明の粘着シートのヘイズは特に限定されない。例えば、本発明の粘着シートを85℃のドライ環境下で10日間保管した後、及び、60℃、相対湿度95%の環境下で10日間保管した後のヘイズはいずれも1%以下、好ましくは0.5%以下である。
【0083】
また、本発明の粘着シートを、紫外線暴露による耐久性試験をした後のヘイズは、1%以下、好ましくは0.5%以下である。ここでいう紫外線暴露による耐久性試験は、粘着シートを60℃の環境下で0.63mW/cm2の照度で4時間照射し、次いで、50℃の結露条件下で4時間保管するという処理を計12回行う。
【0084】
本発明の粘着シートの全光線透過率は特に限定されない。例えば、本発明の粘着シートを85℃の環境下で10日間保管した後、及び、60℃、相対湿度95%の環境下で10日間保管した後の全光線透過率(JIS K 7361-1:1997に準拠して測定した値)はいずれも85%以上、好ましくは90%以上である。また、本発明の粘着シートを、前述の紫外線暴露による耐久性試験をした後の全光線透過率は、85%以上、好ましくは90%以上である。
【0085】
本発明の粘着シートのb*値は特に限定されない。例えば、本発明の粘着シートを85℃の環境下で10日間保管した後、及び、60℃、相対湿度95%の環境下で10日間保管した後のb*値はいずれも1以下、好ましくは0.5以下である。また、本発明の粘着シートを、前述の紫外線暴露による耐久性試験をした後のb*値はいずれも1以下、好ましくは0.5以下である。
【0086】
本発明の粘着シートは上記のような光学特性(ヘイズ、全光線透過率、b*値)を有することで、粘着シートが光学部材に用いられる場合に要求される透明性を満足することができ、耐加湿白濁性にも優れるので、光学用途として好適である。
【0087】
2.粘着シートの製造方法
本発明の粘着シートの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の活性エネルギー線硬化型粘着シートの製造方法を広く採用することができる。例えば、本発明の粘着シートは、粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、該塗膜を硬化させて半硬化物とする工程とを含む製造方法により得ることができる。
【0088】
粘着剤組成物の塗膜を形成する方法は特に限定されず、例えば、公知の塗布方法を広く採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の市販の塗布装置を用いて塗膜を形成することができる。粘着剤組成物の塗布量は特に限定されず、目的の粘着シートの粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。塗膜は適宜の基材上に形成でき、例えば、剥離シート上に塗膜を形成できる。
【0089】
塗膜を硬化させて半硬化物とする方法は特に限定されない。本発明では、塗膜を加熱することで半硬化物を形成することが好ましい。加熱の条件は特に限定されず、例えば、50℃以上150℃以下の条件で塗膜を加熱することができ、加熱時間は、加熱温度や目標とする粘着剤層の残留溶剤濃度に応じて適宜設定することができ、例えば、1~30分とすることができる。当該加熱処理は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。加熱処理の後は、必要に応じて、半硬化物を所定の環境下で熟成処理を行うことができる。
【0090】
上記のように得られる半硬化物は、粘着シートにおける粘着剤層となる。粘着剤組成物が溶剤等の揮発分が含まれる場合、半硬化物が形成される過程で揮発する。半硬化物は、前述のように、前記(メタ)アクリルポリマーと前記架橋剤との反応により生成する架橋ポリマーと、前記光重合開始剤と、前記ジエン系共重合体(両末端に(メタ)アクリレート部位を有するジエン系共重合体)とを少なくとも含む。ただし、半硬化物には、未反応の(メタ)アクリルポリマー及び架橋剤は含まれることもある。また、半硬化物が形成される過程で、前記光重合開始剤及び前記ジエン系共重合体が消費される場合もある。半硬化物中に残存する前記光重合開始剤及び前記ジエン系共重合体はそれぞれ、粘着剤組成物に含まれていた前記光重合開始剤及び前記ジエン系共重合体に対して95質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることが好ましい。
【0091】
上記のように半硬化物(粘着剤層)が形成され、本発明の粘着シートを得ることができる。必要に応じて半硬化物(粘着剤層)には剥離シート等で片面又は両面を保護することもき、例えば、前述の剥離シート付き粘着シートが提供される。
【0092】
(粘着シートの使用方法)
本発明の粘着シートは、前記光重合開始剤及び前記ジエン系共重合体を半硬化物中に含むので、活性エネルギー線硬化性を有している。従って、粘着シートの粘着剤層を被着体表面に接触させ、その状態で活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化、特には完全硬化させることができ、これにより、より強固に被着体と接着する。
【0093】
後硬化するにあたって採用する活性エネルギー線に特に制限は無く、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
【0094】
活性エネルギー線の照射条件も特に限定されず、波長によって適宜設定することができる。例えば、紫外線の照射出力は、積算光量が100mJ/cm2以上10000mJ/cm2以下となるようにすることが好ましく、500mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下となるようにすることがより好ましい。
【0095】
粘着シートの粘着剤層は半硬化状態であることから、活性エネルギー線を照射する前は、被着体が段差部を有していても、粘着剤層はその凹凸に追従することができる。このように、粘着シートを貼合し、凹凸に追従させた後、粘着剤層を活性エネルギー線で完全硬化させることで、粘着剤層の凝集力が高まり、耐久性が向上する。
【0096】
以上のように粘着シートを使用することにより、被着体と後硬化された粘着シートとが積層してなる積層体を得ることができる。従って、積層体は、活性エネルギー線硬化型粘着シートの後硬化物を粘着剤層として含む。
【0097】
積層体における被着体の種類は特に限定されず、例えば、各種光学部材が挙げられる。光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができ、具体的に液晶又は有機ELディスプレイ用部材が例示される。液晶又は有機ELディスプレイ用部材とは、具体的に、ガラス、偏光板、又はタッチセンサーが挙げられる。
【0098】
本発明の粘着シートは、活性エネルギー線照射前の初期粘着力が高いので活性エネルギー線が当たらない箇所が存在しても優れた粘着力を有し、かつ、低誘電率に調整することも可能であるという観点から、液晶又は有機ELディスプレイ用部材の貼合わせ用途に使用することが好ましい。従って、前記積層体としては表示装置等が好適である。
【0099】
本発明の粘着シートは、上記のような液晶又は有機ELディスプレイ用の他、粘着シートが必要とされる種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0101】
(製造例1)
2-エチルヘキシルメタクリレート(2-EHMA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)を質量比で70:20:10となるように配合し、ラジカル重合開始剤として2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、重量平均分子量(Mw)が45万、ガラス転移温度(Tg)が-20℃である(メタ)アクリル系ポリマーを得た。
【0102】
(粘着剤組成物の各成分)
各実施例及び比較例で使用した粘着剤組成物に含まれる各成分は以下のとおりとした。
<(メタ)アクリル系ポリマー>
(メタ)アクリル系ポリマーは製造例1で得られた(メタ)アクリル系ポリマーを使用した。
【0103】
<ジエン系共重合体>
ジエン系共重合体は以下の2種類のいずれかを使用した。
・日本曹達社製「TEAI-1000」(Mw1000、Tg-14℃)
・日本曹達社製「TE-2000」(Mw2000、Tg-9℃)
【0104】
<架橋剤>
架橋剤はキシレンジイソシアネート系化合物(三井化学社製「D-110N」)を使用した。
【0105】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤は信越化学製「X-41-1810」を使用した。
【0106】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は以下の2種類のいずれかを使用した。
・Omnirad184(IGMレジン)
・EsacureTZT(IGMレジン)
【0107】
<単官能アクリル系モノマー>
単官能アクリル系モノマーは以下の2種類のいずれかを使用した。
・アクリル酸イソステアリル(大阪有機化学工業株式会社製 ISTA(ISTAと略記)、分子量324)
・アクリル酸イソボルニル(大阪有機化学工業株式会社製 IBXA(IBXAと略記)、分子量208)
【0108】
<多単官能モノマー>
多単官能モノマーは、東亞合成社製の三官能モノマーM321(トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、分子量546)を使用した。
【0109】
(実施例1)
表1に示す配合条件に従い、粘着剤組成物を調製した。具体的に、製造例1で得られた(メタ)アクリル系ポリマー100質量部(ポリマー成分換算)と、ジエン系共重合体(日本曹達社製「TEAI-1000」)1質量部と、架橋剤0.2質量部と、シランカップリング剤0.2質量部と、光重合開始剤(Omnirad184)0.4質量部と、固形分濃度が46質量%となるように溶剤(E)として酢酸エチルとを混合して粘着剤組成物を得た。
【0110】
上記粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シートとする。王子エフテックス社製:100RL-07(2))上へ乾燥後の塗工量が200μm/m2になるようにアプリケーターで均一に塗工した。塗工には、ヨシミツ精機株式会社製、ドクターブレードYD型を用い、空気循環式恒温オーブンにて100℃で3分間加熱した。これにより、第1の剥離シートの表面に粘着剤層を形成した。この粘着剤層の表面に厚さ50μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製:50RL-07(L))を貼合して、半硬化物(粘着剤層)が剥離力差のある1対の剥離フィルムに挟まれた第1の剥離フィルム/粘着シート(粘着剤層)/第2の剥離フィルムの構成を備える剥離シート付き粘着シートを得た。この粘着シートに対し、23℃、相対湿度50%の条件で7日間静置するエージング処理を施した。粘着シートの厚みは200μmであった。
【0111】
(実施例2~9、比較例1~4)
粘着剤組成物の成分の種類及び使用量を表1に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。各粘着シートの厚みは表1に示すとおりとした。
【0112】
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた粘着シートの評価は以下のように行った。
<対ガラス粘着力(初期粘着力)>
PETフィルム(東洋紡社製「A4300#100」)を裏打ち材に使用し、粘着シート(後硬化前)をガラス板(平岡特殊硝子製作株式会社製ソーダガラス、1.1mm厚み)に2kg荷重ロール貼合した。これを25℃で24時間放置した後、引張試験機(型式:RTC-1210、A&D製)を用い、JIS Z 0237に準じて引張速度300mm/分(および3000mm/分)で180度剥離した際の剥離強度を測定し、粘着シートの初期粘着力(X1)とした。
【0113】
<対ガラス粘着力(後硬化後)>
PETフィルム(東洋紡社製「A4300#100」)を裏打ち材に使用し、粘着シート(後硬化前)をガラス板(平岡特殊硝子製作株式会社製ソーダガラス、1.1mm厚み)に2kg荷重ロールで貼合してから、粘着シートに活性エネルギー線を前記照射条件Aと同様の条件で裏打ち材側から照射し、後硬化させた。この後硬化後の粘着シートを25℃で24時間放置した後、引張試験機(型式:RTC-1210、A&D製)を用い、JIS Z 0237に準じて引張速度300mm/分(および3000mm/分)で180度剥離した際の剥離強度を測定し、後硬化後粘着シートの粘着力(X2)とした。なお、照射条件Aにおける照射条件は、355nmの波長で120mW/cm2の照度とし、積算光量は3000mJ/cm2とした。照度計は、アイグラフィックス社製「UV-PFA1」を使用した。この照射条件Aでは、紫外線照射機として、アイグラフィックス社製のECS-4011GX/Nを使用し、これに、高圧水銀灯H04-L41と熱線カットフィルターを取り付けた。
【0114】
<ゲル分率>
粘着シート(後硬化前または後硬化後)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定し、得られた乾燥質量から前記式1によりゲル分率を求めた。ゲル分率の測定における粘着シート後硬化は、前記照射条件Aにより行った。
【0115】
<比誘電率>
後硬化した粘着シートを2枚の銅箔の間に挟み、オートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30min)を実施した。その後、誘電率測定システム((株)東陽テクニカ製、1260型)によりJIS C 2138に基づいて測定した。周波数は100kHzで23℃、50%RHの環境下、JIS C 2138に規定される方法で比誘電率を算出した。
【0116】
<耐久性>
粘着シートの第1の剥離フィルムを剥離して露出した面に、100μmの厚さのポリエステルフィルム(東洋紡社製A4360)と貼合してから、50mm×50mmサイズに切り出して積層体1を得た。一方、予め全面に偏光板(ポラテクノ社製SKN-18243T-HC)を貼り付けたガラス板(松浪硝子社製S3112)の、偏光板上に平均粒径20μmの澱粉粒子(ニッカ社製ニッカリコL)を散布することで、積層体2を作製した。当該積層体2の澱粉粒子が散布された面と、前記積層体1の第2の剥離フィルムを剥がして露出した面とを貼合した後、オートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30分)を行い、評価用サンプルを得た。このサンプルを85℃ドライ環境下で24時間保管した後、サンプル内に発生した発泡の有無を評価し、下記基準で耐久性を判定した。
〇:気泡が無いことから耐久性に優れている。
×:気泡が有ることから耐久性が劣る。
【0117】
【0118】
表1には、各実施例及び比較例で得られた粘着シートの製造条件並びに評価結果を示している。実施例で得られた粘着シートはすべて、初期粘着力が高く、また、比誘電率も低いものであり、しかも、透明性も高く段差追従性に優れていた。これに対し、比較例で得られた粘着シートはジエン系共重合体を含まない粘着剤組成物から作製されており、しかも、単官能アクリル系モノマー及び/又は多単官能モノマーを含むことから、初期粘着力が低いものであった。