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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】樹脂枠付き電極箔の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241008BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241008BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241008BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M10/04
H01M10/0585
H01M10/052
H01M50/186
H01M50/193
H01M4/64 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021081573
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175293
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】衣川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真也
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220315(JP,A)
【文献】特開2020-087870(JP,A)
【文献】特開2016-170900(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220875(WO,A1)
【文献】特開平08-130230(JP,A)
【文献】特開2006-352058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-10/39
H01M 4/02- 4/84
H01G 11/80
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極箔の縁部に樹脂枠を溶着する樹脂枠付き電極箔の製造装置であって、
前記電極箔の縁部に沿って延びる回転軸を介して互いに連結され、前記樹脂枠を保持する一対の保持部と、
前記一対の保持部のそれぞれに設けられた一又は複数の溶着部と、を備え、
前記一対の保持部のそれぞれは、前記回転軸が軸回りに回転することにより、前記樹脂枠を外部の供給装置から受取可能な受取姿勢と、前記溶着部によって前記電極箔の縁部への前記樹脂枠の溶着を実施する溶着姿勢との間で移行可能であり、
前記一対の保持部の一方が前記溶着姿勢にあるときに、前記一対の保持部の他方が前記受取姿勢にある樹脂枠付き電極箔の製造装置。
【請求項2】
前記一対の保持部の一方が前記樹脂枠の溶着を実施している間、前記一対の保持部の他方が次の溶着に用いる樹脂枠を前記外部の供給装置から受け取る請求項1記載の樹脂枠付き電極箔の製造装置。
【請求項3】
前記電極箔は、第1面及び当該第1面と反対側の第2面を有し、
前記一対の保持部は、前記第1面側及び前記第2面側にそれぞれ設けられ、
前記電極箔と、前記電極箔の前記第1面の縁部及び前記第2面の縁部にそれぞれ配置された前記樹脂枠とが、前記第1面側で前記溶着姿勢にある前記保持部と前記第2面側で前記溶着姿勢にある前記保持部とによって挟持される請求項1又は2記載の樹脂枠付き電極箔の製造装置。
【請求項4】
前記第1面側で前記溶着姿勢にある前記保持部における前記溶着部の位置と、前記第2面側で前記溶着姿勢にある前記保持部における前記溶着部の位置とは、前記電極箔を挟んで対称となっている請求項3記載の樹脂枠付き電極箔の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂枠付き電極箔の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電モジュールの構成要素として、電極箔の縁部に樹脂枠を溶着した樹脂枠付き電極箔が用いられる場合がある。樹脂枠付き電極箔の製造に関する技術として、例えば特許文献1に記載の蓄電モジュールの製造方法がある。この特許文献1の蓄電モジュールの製造方法では、バイポーラ電極を構成する電極箔の第1面の周縁部に樹脂枠が仮止めされる。その後、ヒータ及び圧着ローラの協働により、電極箔の第1面の周縁部に樹脂枠が本溶着され、バイポーラ電極ユニットが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-95909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールの低コスト化の観点から、樹脂枠付き電極箔の生産性向上が要求されてきている。しかしながら、連続的に供給される電極箔への樹脂枠の溶着を行う場合、溶着を行うための装置では、樹脂枠を電極箔へ溶着する動作と次の溶着に用いる樹脂枠を受け取る動作とを交互に繰り返す必要がある。この場合、溶着の動作自体及び受取の動作自体に時間を要するだけでなく、溶着から受取へ移行する動作にも時間を要するため、樹脂枠付き電極箔の生産性向上が制限されてしまうという事情がある。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、樹脂枠付き電極箔の生産性向上が図られる製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る樹脂枠付き電極箔の製造装置は、電極箔の縁部に樹脂枠を溶着する樹脂枠付き電極箔の製造装置であって、電極箔の縁部に沿って延びる回転軸を介して互いに連結され、樹脂枠を保持する一対の保持部と、一対の保持部のそれぞれに設けられた一又は複数の溶着部と、を備え、一対の保持部のそれぞれは、回転軸が軸回りに回転することにより、樹脂枠を外部の供給装置から受取可能な受取姿勢と、溶着部によって電極箔の縁部への樹脂枠の溶着を実施する溶着姿勢との間で移行可能であり、一対の保持部の一方が溶着姿勢にあるときに、一対の保持部の他方が受取姿勢にある。
【0007】
この樹脂枠付き電極箔の製造装置では、一対の保持部の一方が樹脂枠の溶着姿勢にあるときに、一対の保持部の他方が樹脂枠の受取姿勢にある。このため、一方の保持部が溶着姿勢にて樹脂枠を電極箔に溶着した後、当該一方の保持部が受取姿勢に移行するに際し、既に受取姿勢にある他方の保持部にて次の溶着に用いる樹脂枠を速やかに受け取ることができる。したがって、一対の保持部のそれぞれが溶着姿勢から受取姿勢へ移行するサイクルが短縮され、樹脂枠付き電極箔の生産性向上を実現できる。また、回転軸を用いた構成により、溶着姿勢と受取姿勢との間の保持部の移行を限られたスペースで実施でき、装置の小型化が図られる。
【0008】
一対の保持部の一方が樹脂枠の溶着を実施している間、一対の保持部の他方が次の溶着に用いる樹脂枠を外部の供給装置から受け取ってもよい。この場合、溶着中に次の溶着に用いる樹脂枠の受取を実施できるため、樹脂枠付き電極箔の生産性の一層の向上が図られる。
【0009】
電極箔は、第1面及び当該第1面と反対側の第2面を有し、一対の保持部は、第1面側及び第2面側にそれぞれ設けられ、電極箔と、電極箔の第1面の縁部及び第2面の縁部にそれぞれ配置された樹脂枠とが、第1面側で溶着姿勢にある保持部と第2面側で溶着姿勢にある保持部とによって挟持されてもよい。この場合、樹脂枠の溶着の際に電極箔の両面が保持部によって挟持されるため、電極箔の歪みの発生を抑制できる。
【0010】
第1面側で溶着姿勢にある保持部に設けられた溶着部の位置と、第2面側で溶着姿勢にある保持部における保持部に設けられた溶着部の位置とは、電極箔を挟んで対称となっていてもよい。これにより、樹脂枠の溶着の際に電極箔の両面の同じ部位に溶着部からの入熱が加わるため、溶着速度の向上が図られる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、樹脂枠付き電極箔の生産性向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】樹脂枠付き電極箔の製造装置の一実施形態を示す模式的な側面図である。
図2図1に示した製造装置によって形成される樹脂枠付き電極箔の構成例を模式的に示す図であり、(a)は第1面側から見た図、(b)は第2面側から見た図である。
図3】製造装置の動作を示す模式的な側面図である。
図4図3の後続の動作を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る樹脂枠付き電極箔の製造装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、樹脂枠付き電極箔の製造装置の一実施形態を示す模式的な側面図である。本実施形態では、製造装置1は、電極箔11に樹脂枠12を仮溶着する装置として構成されている。製造装置1は、樹脂枠付き電極箔を用いた蓄電モジュールの製造ラインにおいて、電極箔11の縁部11aに樹脂枠12を本溶着する溶着装置の前段に組み込まれ得る。
【0015】
始めに、製造装置1によって形成される樹脂枠付き電極箔10について説明する。ここでの樹脂枠付き電極箔10は、図2(a)及び図2(b)に示すように、電極箔11の縁部11aに樹脂枠12を仮溶着した状態で構成されている。電極箔11は、例えばバイポーラ電極を構成する部材であり、平面視において矩形状をなしている。電極箔11は、第1面11b及び第1面11bと反対側の第2面11cを有している。電極箔11の第1面11bには、正極活物質層14が設けられ、電極箔11の第2面11cには、負極活物質層15が設けられている。
【0016】
バイポーラ電極の正極は、電極箔11と、当該電極箔11の第1面11bに設けられた正極活物質層14とによって構成される。また、バイポーラ電極の負極は、電極箔11と、当該電極箔113の第2面11cに設けられた負極活物質層15とによって構成される。電極箔11としては、例えば銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、ニッケル箔等が挙げられる。電極箔11は、これらの合金箔であってもよい。電極箔11は、複数の箔が一体化されたものであってもよく、箔の表面に別の金属をメッキしたものであってもよい。
【0017】
正極活物質層14は、正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材である。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物としては、例えばオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)が挙げられる。
【0018】
負極活物質層15は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材である。負極活物質としては、例えば黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素若しくは当該元素の化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。導電助剤及び結着剤は、正極活物質層14に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0019】
樹脂枠12は、電極箔11の平面視において、電極箔11の外形に倣う矩形枠状をなしている。樹脂枠12は、正極活物質層14及び負極活物質層15を取り囲むように配置されている。本実施形態では、図2(a)及び図2(b)に示すように、電極箔11の第1面11b及び第2面11cのそれぞれに配置されている。第1面11b側の樹脂枠12と第2面11c側の樹脂枠12とは、電極箔11を挟んで対称に配置されている。樹脂枠12は、例えば耐熱性及び電解液に対する耐腐食性を有する樹脂によって構成されている。このような樹脂としては、ポリイミド、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0020】
図2(a)及び図2(b)の例では、樹脂枠12は、電極箔11の外縁11dよりも外側に張り出す張出部分12aを有している。蓄電モジュールの製造工程においては、樹脂枠12を本溶着した後の樹脂枠付き電極箔10をセパレータを介して積層し、積層体を形成する。積層体の形成後、積層方向に隣り合う樹脂枠12の張出部分12a同士を互いに溶着してもよい。積層方向に隣り合う樹脂枠12の張出部分12a同士を溶着することで、積層方向に隣り合う樹脂枠付き電極箔10間の正極活物質層14及び負極活物質層15を含む空間がそれぞれ封止され得る。
【0021】
本実施形態では、仮溶着の状態での樹脂枠12は、電極箔11の4辺に対応した4つの短冊状の樹脂片16(樹脂枠12の辺部)によって構成されている。4つの短冊状の樹脂片16は、当該樹脂片16の長手方向の端部同士が互いに重なるように配置され、これにより、全体として矩形枠状の樹脂枠12が画成されている。隣り合う辺に沿う樹脂片16の端部同士の重なり部分は、樹脂枠12の角部に位置している。また、図2(a)及び図2(b)に示すように、電極箔11の第1面11b側における各樹脂片16の仮溶着部分Wの位置と、電極箔11の第2面11c側における各樹脂片16の仮溶着部分Wの位置とは、電極箔11を挟んで対称となっている。
【0022】
本実施形態では、仮溶着部分Wは、隣り合う辺に沿う樹脂片16の端部同士が重なる樹脂枠12の角部を避けた位置に設けられている。図2(a)及び図2(b)の例では、仮溶着部分Wは、各樹脂片16の長手方向において、隣り合う辺に沿う樹脂片16の端部同士が重なる部分よりも中央寄りであって樹脂枠12の角部の近傍となる位置に2箇所、及びこれらの間に2箇所、計4箇所に一定の間隔で設けられている。
【0023】
また、本実施形態では、仮溶着部分Wは、樹脂片16の電極箔11の縁部11aと重なる樹脂片16の本体部分16aにおいて、電極箔11の外縁11d寄りの位置に設けられている。具体的には、平面視において、仮溶着部分Wの中心点は、樹脂片16の本体部分16aのうち、本体部分16aの内縁16bよりも電極箔11の外縁11dに近い位置に設けられている。これにより、樹脂枠12が電極箔11から捲れることを抑制でき、仮溶着状態での樹脂枠付き電極箔10の取扱性を向上できる。
【0024】
続いて、上述した仮溶着状態の樹脂枠付き電極箔10を製造する製造装置1の構成について説明する。製造装置1は、図1に示すように、樹脂枠12を保持するための互いに連結された一対の保持部2(2A,2B)と、一対の保持部2A,2Bのそれぞれに設けられた一又は複数の溶着部3とを備えて構成されている。製造装置1には、溶着対象となる電極箔11の供給を受ける供給位置Kが設定されている。
【0025】
供給位置Kには、外部の供給装置から電極箔11が供給され、不図示の保持部によって保持される。供給位置Kでは、例えば電極箔11の中央部分が保持され、樹脂枠12が溶着される電極箔11の縁部11aは、フリーな状態とされる。供給位置Kでの電極箔11の保持手法は、特に制限はないが、例えばマグネットを用いたクランプが挙げられる。図1の例では、供給位置Kに供給される電極箔11の第1面11bが鉛直方向の上方を向き、第2面11cが鉛直方向の下方を向くようになっている。
【0026】
本実施形態では、製造装置1は、矩形状の電極箔11における第1面11b及び第2面11cの4辺のそれぞれに短冊状の樹脂片16を仮溶着する。このため、一対の保持部2A,2Bは、供給位置Kに供給される電極箔11の第1面11b側の4辺の縁部11aに対応して4体、第2面11c側の4辺の縁部11aに対応して4体、計8体配置されている。保持部2A,2Bのそれぞれは、吸着板4を有している。
【0027】
吸着板4は、例えば樹脂片16の形状に対応して帯状をなしており、多数の吸引孔が形成された吸着面を有している。吸着板4は、不図示の配管によって負圧源に接続され、負圧によって樹脂片16を吸着するようになっている。吸着板4は、負圧によって吸着を行う態様に限られず、静電気などの他の手段によって吸着を行う態様であってもよい。
【0028】
なお、以下の説明では、供給位置Kに供給される電極箔11の第1面11b側及び第2面11c側の一対の保持部2A,2Bの区別の便宜のため、第1面11b側の一対の保持部2A,2Bを第1面側保持部2A1,2B1と称し、第2面11c側の一対の保持部2A,2Bを第2面側保持部2A2,2B2と称する場合がある。
【0029】
溶着部3は、樹脂片16を電極箔11に対して点溶着するヒータである。溶着部3は、電極箔11の縁部11aへの樹脂片16の仮溶着部分Wの形成予定位置に対応して配置されている。本実施形態では、図2(a)及び図2(b)に示したように、電極箔11の第1面11b側における各樹脂片16の仮溶着部分Wの位置と、電極箔11の第2面11c側における各樹脂片16の仮溶着部分Wの位置とを、電極箔11を挟んで対称としている。このため、電極箔11の供給位置Kにおいて、第1面11b側の保持部2A,2Bに設けられた溶着部3の位置と、第2面11c側の保持部2A,2Bに設けられた溶着部3の位置とは、電極箔11を挟んで対称となっている。
【0030】
また、本実施形態では、図2(a)及び図2(b)に示したように、各樹脂片16の4箇所に一定の間隔で仮溶着部分Wを形成する。したがって、一対の保持部2A,2Bのそれぞれには、これらの仮溶着部分Wを形成するための4つの溶着部3が、吸着板4の長手方向に沿って一定の間隔で配置されている。
【0031】
一対の保持部2A,2Bは、図1に示すように、電極箔11の縁部11aのそれぞれに沿って延びる複数の回転軸Lの軸回りにそれぞれ設けられている。一対の保持部2A,2Bは、回転軸Lを介して互いに連結されている。回転軸Lは、供給位置Kに供給される電極箔11の縁部11a(外縁11d)のうちの一辺に沿って延在し、モータ等の駆動手段によって軸回りに回転自在となっている。一対の保持部2A,2Bのそれぞれは、この回転軸Lの回転により、樹脂枠12(樹脂片16)を外部の供給装置(不図示)から受取可能な受取姿勢PRと、溶着部3によって電極箔11の縁部11aへの樹脂枠12(樹脂片16)の溶着を実施する溶着姿勢PWとの間で移行可能となっている。
【0032】
受取姿勢PRにある一対の保持部2A,2Bの一方では、吸着板4が回転軸Lよりも電極箔11から離れて位置すると共に、外部の供給装置側(図1の例では、供給位置Kに供給される電極箔11の反対側)を向いた状態となる。溶着姿勢PWにある一対の保持部2A,2Bの他方では、吸着板4が回転軸Lよりも電極箔11の近くに位置すると共に、供給位置Kに供給される電極箔11の縁部11aに対向した状態となる。溶着姿勢PWにある一対の保持部2A,2Bの一方と、受取姿勢PRにある一対の保持部2A,2Bの他方とは、回転軸Lに対して回転対称(図1では2回対称)に配置されている。これにより、一対の保持部2A,2Bの一方が溶着姿勢PWにあるときに、一対の保持部2A,2Bの他方が受取姿勢PRにあるようになっている。
【0033】
本実施形態では、一対の保持部2A,2Bは、回転軸Lと共に、供給位置Kに供給される電極箔11に近づく近接位置Q1(図3参照)と、当該近接位置Q1よりも供給位置Kに供給される電極箔11から遠ざかる遠隔位置Q2との間で移動可能となっている。一対の保持部2A,2B及び回転軸Lが近接位置Q1に位置する際、溶着姿勢PWにある一対の保持部2A,2Bの一方の吸着板4に保持された樹脂片16は、供給位置Kに供給される電極箔11の縁部11aに押し当てられる。
【0034】
一対の保持部2A,2B及び回転軸Lが遠隔位置Q2から近接位置Q1に移動するまでの間、溶着姿勢PWにある一対の保持部2A,2Bの一方は、溶着準備姿勢をとる。溶着準備姿勢をとる一対の保持部2A,2Bの一方の吸着板4は、回転軸Lよりも電極箔11に近づいて位置すると共に、電極箔11の縁部11aに対向する。溶着準備姿勢にある一対の保持部2A,2Bの一方の吸着板4に保持された樹脂片16は、供給位置Kに供給される電極箔11の縁部11aから離間した状態となる。
【0035】
外部の供給装置は、製造装置1に供給する樹脂片16を各吸着板4に向けてガイドする複数のガイド部材5を有している。ガイド部材5は、第1面側保持部2A1,2B1に対応する第1面側ガイド部材51と、第2面側保持部2A2,2B2に対応する第2面側ガイド部材52とを含んで構成されている。第1面側ガイド部材51は、例えば樹脂片16の短手方向の動きを規制する一対の壁部によって構成されている。第1面側ガイド部材51は、受取姿勢PRにある第1面側保持部2A1,2B1の一方の吸着板4に近接して配置されている。第1面側ガイド部材51は、受取姿勢PRにある第1面側保持部2A1,2B1の一方の吸着板4に沿うように、近接位置Q1と遠隔位置Q2との間の第1面側保持部2A1,2B1の移動に連動するようになっている。
【0036】
第2面側ガイド部材52は、例えば樹脂片16の短手方向の動きを規制する一対の壁部と、一対の壁部を繋ぐ底面部とによって構成されている。第2面側ガイド部材52は、受取姿勢PRにある第2面側保持部2A2,2B2の一方の吸着板4と床面部とが対向するように、遠隔位置Q2にある第2面側保持部2A2,2B2に近接して配置されている。第2面側ガイド部材52の位置は固定となっており、近接位置Q1と遠隔位置Q2との間の第2面側保持部2A2,2B2の移動に連動しないようになっている。
【0037】
次に、上述した製造装置1の動作について説明する。図3の状態では、計8体の一対の保持部2A,2Bのそれぞれにおいて、保持部2Aが溶着姿勢PWにあり、保持部2Bが受取姿勢PRにある。また、図3の状態では、溶着対象となる電極箔11が外部の供給装置から供給位置Kに供給されており、全ての一対の保持部2A,2Bが回転軸Lと共に遠隔位置Q2から近接位置Q1に移動している。溶着姿勢PWにある保持部2Aのそれぞれの吸着板4に保持された樹脂片16は、供給位置Kに供給される電極箔11の縁部11aのそれぞれに押し当てられている。
【0038】
4体の第1面側保持部2A1,2B1及び4体の第2面側保持部2A2,2B2は、同じタイミングで回転軸Lと共に遠隔位置Q2から近接位置Q1に移動する。これにより、電極箔11の第1面11b側及び第2面11c側の4辺それぞれに、計8体の樹脂片16が押し当てられる。また、電極箔11と、電極箔11の第1面11b側の4辺それぞれの樹脂片16と、電極箔11の第2面11c側の4辺それぞれの樹脂片16とが、4体の第1面側保持部2A1と、4体の第2面側保持部2A2とによって挟持される。
【0039】
電極箔11及び各樹脂片16を第1面側保持部2A1及び第2面側保持部2A2で挟持した状態において、溶着部3による電極箔11の縁部11aへの樹脂片16の点溶着が行われる。本実施形態では、上述したように、電極箔11の供給位置Kにおいて、第1面側保持部2A1に設けられた溶着部3の位置と、第2面側保持部2A2に設けられた溶着部3の位置とは、電極箔11を挟んで対称となっている。このため、電極箔11の第1面11b側の樹脂片16のそれぞれ、及び電極箔11の第2面11c側の樹脂片16のそれぞれには、電極箔11の厚さ方向から見て同じ位置に溶着部3からの入熱が加わる。溶着部3による点溶着により、図2(a)及び図2(b)に示した仮溶着状態の樹脂片付き電極箔11が形成される。
【0040】
一対の保持部2A,2Bのそれぞれが回転軸Lと共に近接位置Q1に移動し、電極箔11への樹脂片16の溶着が行われている際、受取姿勢PRにある第1面側保持部2B1及び第2面側ガイド部材52には、外部の供給装置から次の溶着に用いられる樹脂片16が供給される。第1面側保持部2B1に供給された樹脂片16は、第1面側ガイド部材51の壁部による位置決めがなされた状態で第1面側保持部2B1の吸着板4に保持され、当該第1面側保持部2B1に受け渡される。第2面側ガイド部材52へ供給された樹脂片16は、第2面側ガイド部材52の壁部による位置決めがなされた状態で第2面側ガイド部材52の底面部に一時的に載置される。
【0041】
各保持部2Aに保持された樹脂片16の仮溶着と、第1面側保持部2B1への次の樹脂片16の供給及び保持と、第2面側ガイド部材52への次の樹脂片16の供給が終了した後、図4に示すように、一対の保持部2A,2Bのそれぞれが回転軸Lと共に近接位置Q1から遠隔位置Q2に移動する。このタイミングで、溶着対象となる次の電極箔11が外部の供給装置から供給位置Kに供給される。
【0042】
また、受取姿勢P3にある第2面側保持部2B2が第2面側ガイド部材52から次の樹脂片16を受け取る。遠隔位置Q2に移動した第2面側保持部2B2の吸着板4は、第2面側ガイド部材52の底面部に載置された樹脂片16に当接する。この樹脂片16は、第2面側保持部2B2の吸着板4に保持され、当該第2面側保持部2B2に受け渡される。第2面側保持部2B2に次の樹脂片16が受け渡された後、回転軸Lが軸回りに回転し、樹脂片16の仮溶着を終えた各保持部2Aが受取姿勢PRに移行し、次の樹脂片16を保持する各保持部2Bが溶着姿勢PWに移行する。以上の動作を繰り返すことにより、仮溶着状態の樹脂片付き電極箔11が連続的に形成される。
【0043】
形成された仮溶着状態の樹脂片付きの電極箔11は、不図示の搬送装置により、本溶着を行う溶着装置に向けて搬送される。本溶着を行う溶着装置では、電極箔11の各辺に仮溶着された各樹脂片16を、電極箔11の各辺の全体にわたって連続的に溶着する。このとき、隣り合う辺に沿う樹脂片16の端部同士が重なる部分にも溶着が行われて樹脂枠12が形成され、樹脂枠付き電極箔10が製造される。
【0044】
以上説明したように、この樹脂枠付き電極箔の製造装置1では、一対の保持部2A,2Bの一方が樹脂枠12の溶着姿勢PWにあるときに、一対の保持部2A,2Bの他方が樹脂枠12の受取姿勢PRにある。このため、例えば一方の保持部である保持部2Aが溶着姿勢PWにて樹脂片16を電極箔11に溶着した後、当該保持部2Aが受取姿勢PRに移行するに際し、既に受取姿勢PRにある他方の保持部2Bにて次の溶着に用いる樹脂片16を速やかに受け取ることができる。したがって、一対の保持部2A,2Bのそれぞれが溶着姿勢PWから受取姿勢PRへ移行するサイクルが短縮され、樹脂枠付き電極箔10の生産性向上を実現できる。
【0045】
本実施形態では、一対の保持部2A,2Bは、電極箔11の縁部11aに沿って延びる回転軸Lを介して互いに連結されている。そして、回転軸Lが軸回りに回転することにより、一対の保持部2A,2Bの一方が溶着姿勢PWに移行し、一対の保持部2A,2Bの他方が受取姿勢PRに移行する。このような回転軸Lを用いた構成により、溶着姿勢PWと受取姿勢PRとの間の保持部2の移行を限られたスペースで実施でき、装置の小型化が図られる。
【0046】
なお、本実施形態では、電極箔11の4辺の縁部11aのそれぞれに対応して一対の保持部2A,2Bが設けられ、各縁部11aに樹脂片16をそれぞれ溶着している。このため、一対の保持部2A,2Bの大きさは、各縁部11aと同程度の大きさとなる。したがって、回転軸Lによる溶着姿勢PWと受取姿勢PRとの間の保持部2の移行をより限られたスペースで実施でき、装置の一層の小型化が図られる。
【0047】
本実施形態では、電極箔11は、第1面11b及び当該第1面11bと反対側の第2面11cを有し、一対の保持部2A,2Bは、第1面11b側及び第2面11c側にそれぞれ設けられている。そして、電極箔11と、電極箔11の第1面11bの縁部11a及び第2面11cの縁部11aにそれぞれ配置された樹脂枠12とが、第1面11b側で溶着姿勢PWにある保持部2と第2面11c側で溶着姿勢PWにある保持部2とによって挟持される。この場合、樹脂枠12の溶着の際に電極箔11の両面が保持部2によって挟持されるため、電極箔11の歪みの発生を抑制できる。
【0048】
本実施形態では、第1面11b側で溶着姿勢PWにある保持部2に設けられた溶着部3の位置と、第2面11c側で溶着姿勢PWにある保持部2に設けられた溶着部3の位置とが電極箔11を挟んで対称となっている。これにより、樹脂枠12の溶着の際に電極箔11の両面の同じ部位に溶着部3からの入熱が加わるため、溶着速度の向上が図られる。
【0049】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、製造装置1を電極箔11への樹脂枠12の仮溶着を行う装置として例示しているが、本開示の樹脂枠付き電極箔の製造装置は、例えば溶着部3を電極箔11の縁部11aに沿うラインヒータとし、電極箔11への樹脂枠12の本溶着を行う装置として構成してもよい。
【0050】
上記実施形態では、電極箔11の第1面11b側の縁部11a及び第2面11c側の縁部11aにそれぞれ樹脂片16を溶着しているが、樹脂片16の溶着(すなわち、一対の保持部2A,2Bの配置)は、電極箔11の第1面11b側の縁部11a及び第2面11c側の縁部11aのいずれか一面側のみであってもよい。上記実施形態では、電極箔11の4辺の縁部11aに対して樹脂片16を同時に溶着しているが、電極箔11の4辺の縁部11aに対して樹脂片16を1辺ずつ又は2辺ずつ溶着してもよい。
【0051】
上記実施形態では、電極箔11の縁部11aに沿って延在する回転軸Lの軸回りに一対の保持部2A,2Bが設けられているが、溶着姿勢PWと受取姿勢PRとの間の一対の保持部2A,2Bの移動機構は、他の態様であってもよい。移動機構は、例えば回転軸Lが電極箔11の厚さ方向に延在し、当該回転軸Lに対して回転対称に一対の保持部2A,2Bが配置された態様であってもよい。また、移動機構は、一対の保持部2A,2Bを電極箔11の面方向にスライドさせる態様であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…樹脂枠付き電極箔の製造装置、2(2A,2B)…保持部、3…溶着部、10…樹脂枠付き電極箔、11…電極箔、11a…縁部、11b…第1面、11c…第2面、12…樹脂枠、L…回転軸、PW…溶着姿勢、PR…受取姿勢。
図1
図2
図3
図4