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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20241008BHJP
   H02P 29/68 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
H02P5/46 J
H02P29/68
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021083889
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177548
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹内 隆大
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-046170(JP,A)
【文献】特開2015-133843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P4/00-5/753
25/08-25/098
29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(BT)からの電力供給に基づいて複数のモータ(11)の各々の駆動を制御する制御部(12)を備え、
前記制御部は、前記制御部を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように前記複数のモータの各々の駆動を制御する発熱管理部(15)を有し
前記制御部は、前記モータの駆動情報に基づいて前記モータのロックを検出し、
前記発熱管理部は、2つ以上の前記モータのロックが検出されている場合に、当該モータにおけるロック状態下での駆動時間であるロック時間を制限する、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記発熱管理部は、ロックが検出された前記各モータにおける前記ロック時間に基づいて発熱レベル値(ΣL)を算出し、前記発熱レベル値が予め設定された許容時間(Tx)以上になったとき、ロックが検出された前記モータのうちの少なくとも1つの駆動を停止させる、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記発熱管理部は、前記発熱レベル値が前記許容時間以上になったとき、ロックが検出された前記モータのうち、最後にロックが検出されたモータの駆動のみ継続させ、その他のモータの駆動を停止させる、
請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記発熱管理部は、ロック状態にある前記モータの台数(n)を検出し、当該台数が増えるにつれて前記許容時間を相対的に減少させる制御を行う、
請求項2または請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
電源(BT)からの電力供給に基づいて複数のモータ(11)の各々の駆動を制御する制御部(12)を備え、
前記制御部は、前記制御部を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように前記複数のモータの各々の駆動を制御する発熱管理部(15)を有し、
前記発熱管理部は、前記複数のモータの各々における発熱度合いを算出し、前記各モータにおける発熱度合いの合算値(FL)が予め設定された許容値(Fx)以上になったとき、駆動中の前記モータに印加する駆動電圧を下げる出力制限を行う、
モータ制御装置。
【請求項6】
前記発熱管理部は、前記出力制限中において、前記合算値が前記許容値未満になったとき、前記出力制限を緩和する、
請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記発熱管理部は、前記電源の電圧、外気温、及び前記モータの回転速度の少なくとも1つに基づいて、前記発熱度合いを算出する、
請求項5または請求項6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
電源(BT)からの電力供給に基づいて複数のモータ(11)の各々の駆動を制御する制御部(12)を備え、
前記制御部は、前記制御部を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように前記複数のモータの各々の駆動を制御する発熱管理部(15)を有し、
前記発熱管理部は、前記複数のモータの各々における発熱度合いを算出し、前記各モータにおける発熱度合いの合算値(FL)が予め設定された閾値(Fa)以上であるときに前記モータの駆動指令を検出したとき、当該駆動指令を保留し、その後前記合算値が前記閾値未満になったとき、保留している前記駆動指令を実行する、
モータ制御装置。
【請求項9】
電源(BT)からの電力供給に基づいて複数のモータ(11)の各々の駆動を制御する制御部(12)を備え、
前記制御部は、前記制御部を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように前記複数のモータの各々の駆動を制御する発熱管理部(15)を有し、
前記制御部は、前記モータの駆動情報に基づいて前記モータのロックを検出し、ロック状態にある前記モータの駆動中に他のモータの駆動指令を検出したとき、当該駆動指令をキャンセルする、
モータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、車両用のモータ制御装置が記載されている。車両には、例えば、複数のウィンドウガラスにそれぞれ対応して設けられた複数のモータが設けられている。上記特許文献1に記載の車両では、同複数のモータ1つにつき、1つのモータ制御装置が搭載されている。そして、各モータ制御装置がそれぞれ対応するモータの駆動を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-68175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成では、複数のモータ1つにつき、1つのモータ制御装置が必要となるため、部品点数ひいては製造コストが増えてしまう問題があった。本発明の目的は、複数のモータを制御するシステムにおいて、部品点数を抑制可能にしたモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するモータ制御装置は、電源(BT)からの電力供給に基づいて複数のモータ(11)の各々の駆動を制御する制御部(12)を備え、前記制御部は、前記制御部を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように前記複数のモータの各々の駆動を制御する発熱管理部(15)を有している。
【0006】
この構成によれば、1つのモータ制御装置で複数のモータを制御可能である。このため、複数のモータを制御するシステムの構築に際し、複数のモータ1つにつき1つのモータ制御装置を設ける必要がなくなる。したがって、部品点数を抑制可能であり、ひいては、システムの構築に掛かるコストを抑えることが可能である。また、モータ制御装置の数を減らすことで、モータ制御装置の設置スペースを縮小することが可能となる。
【0007】
また、複数のモータを同時に駆動させた場合、制御部に流れる電流がモータの駆動台数に応じて増加するため、大電流によって制御部を構成する素子が焼損するおそれがある。その点、上記の構成によれば、発熱管理部によって、複数のモータの各々の駆動が、制御部を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように制御される。これにより、複数のモータを同時に駆動させた場合でも、発熱管理部によって、制御部を構成する素子の焼損を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のモータ制御装置を含むシステムの概略構成図。
図2】第1実施形態の制御部の処理態様を説明するためのタイムチャート。
図3】第1実施形態の制御部の処理を説明するためのフロー図。
図4】第2実施形態の制御部の処理態様を説明するためのタイムチャート。
図5】第2実施形態の制御部の処理を説明するためのフロー図。
図6】変更例の制御部の処理態様を説明するためのタイムチャート。
図7】同変更例の制御部の処理を説明するためのフロー図。
図8】変更例の制御部の処理態様を説明するためのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、モータ制御装置の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、モータ制御装置10は、例えば車両に搭載される複数のモータ11を制御する制御装置である。複数のモータ11は、例えば2つである。以下、複数のモータ11の一方を第1モータM1とし、他方を第2モータM2とする。
【0010】
本実施形態のモータ制御装置10は、例えばパワーウィンドウECUである。第1モータM1は、例えば、前席ドアD1が備えるウィンドウガラスW1を駆動させるモータである。第1モータM1は、前席ドアD1に設けられている。第1モータM1は、前席ドアD1の内部において、図示しないレギュレータ等を介してウィンドウガラスW1に連結されている。ウィンドウガラスW1は、第1モータM1の駆動によって上下動する。
【0011】
第2モータM2は、例えば、後席ドアD2が備えるウィンドウガラスW2を駆動させるモータである。同第2モータM2は、後席ドアD2に設けられている。第2モータM2は、後席ドアD2の内部において、図示しないレギュレータ等を介してウィンドウガラスW2に連結されている。ウィンドウガラスW2は、第2モータM2の駆動によって上下動する。なお、前席ドアD1及び後席ドアD2は、例えば、車両の右側または左側に前後に並ぶドアである。モータ制御装置10は、前席ドアD1及び後席ドアD2のいずれか、または、車両における前席ドアD1及び後席ドアD2以外の箇所に配置される。
【0012】
(モータ制御装置10の構成)
モータ制御装置10は、第1モータM1及び第2モータM2の各々を制御する制御部12を備えている。制御部12は、マイコンや駆動回路等からなる。制御部12は、車載のバッテリBTから電源供給を受けている。制御部12は、駆動回路のデューティ比を変更することで各モータ11に印加する駆動電圧を調整するPWM制御を実行可能である。
【0013】
制御部12は、図示しない上位のボディECUから、必要な各種の車両情報を取得する。当該車両情報としては、例えば、車両に備えられる周知のイグニッションスイッチのオン/オフ信号や、車両に搭載されている外気温センサにて検出される外気温情報St等が挙げられる。
【0014】
制御部12には、第1操作スイッチSW1の操作に基づいて、第1モータM1の駆動指令である第1駆動指令Sc1が入力される。制御部12は、第1駆動指令Sc1を検出すると、第1モータM1の駆動を開始する。また、制御部12には、第2操作スイッチSW2の操作に基づいて、第2モータM2の駆動指令である第2駆動指令Sc2が入力される。制御部12は、第2駆動指令Sc2を検出すると、第2モータM2の駆動を開始する。
【0015】
制御部12には、第1回転センサ13及び第2回転センサ14の各々から出力される回転検出信号が入力される。第1回転センサ13は、第1モータM1の回転を検出すべく、第1モータM1に一体に設けられている。第2回転センサ14は、第2モータM2の回転を検出すべく、第2モータM2に一体に設けられている。第1回転センサ13及び第2回転センサ14の各々から出力される回転検出信号は、例えばパルス信号である。制御部12は、回転検出信号に基づいて第1モータM1及び第2モータM2の回転速度を検出する。また、制御部12は、回転検出信号に基づいて、ウィンドウガラスW1,W2の開閉位置を検出する。
【0016】
第1モータM1及び第2モータM2の各々において、駆動中に大きな負荷が掛かることにより、回転速度が著しく低下することがある。なお、以下の説明では、第1モータM1または第2モータM2の回転速度が負荷により著しく低下することを、第1モータM1または第2モータM2がロックされる、または、第1モータM1または第2モータM2のロック、と称する。
【0017】
例えば、閉作動中のウィンドウガラスW1,W2が閉じ切り位置に達したとき、ウィンドウガラスW1,W2の上端が窓枠部分に接触する。そして、その接触の負荷によって、第1モータM1及び第2モータM2がロックされる。
【0018】
制御部12は、第1モータM1の駆動情報に基づいて第1モータM1のロックを検出する。当該第1モータM1の駆動情報は、例えば第1モータM1の回転速度の変動等である。制御部12は、第1モータM1のロックを検出すると、その時点から時間のカウントを開始する。なお、第1モータM1のロック状態下での駆動時間を、第1モータM1のロック時間と称する。
【0019】
また、制御部12は、第2モータM2の駆動情報に基づいて第2モータM2のロックを検出する。当該第2モータM2の駆動情報は、例えば第2モータM2の回転速度の変動等である。制御部12は、第2モータM2のロックを検出すると、その時点から時間のカウントを開始する。なお、第2モータM2のロック状態下での駆動時間を、第2モータM2のロック時間と称する。なお、第1モータM1及び第2モータM2の各々において、ウィンドウガラスW1,W2の上端と窓枠との間の隙間を極力小さくするためには、ロックの検出後に即時駆動を停止するのではなく、前記ロック時間を所定の長さだけ確保する必要がある。
【0020】
(発熱管理部15)
制御部12は、発熱管理部15を備えている。発熱管理部15は、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように、第1モータM1及び第2モータM2の各々の駆動を制御する。
【0021】
発熱管理部15は、各モータ11におけるロック時間に基づいて発熱レベル値ΣLを算出する。そして、発熱管理部15は、発熱レベル値ΣLが予め設定された許容時間Tx以上になったとき、ロックが検出されたモータ11のうちの少なくとも1つの駆動を停止させる。例えば、発熱管理部15は、発熱レベル値ΣLが許容時間Tx以上になったとき、ロックが検出されたモータ11のうち、最後にロックが検出されたモータ11の駆動のみ継続させ、その他のモータ11の駆動を停止させる。
【0022】
(発熱レベル値ΣLの算出について)
発熱管理部15は、次式(a)によって発熱レベル値ΣLを算出する。
ΣL=T1×1+T2×2×3+・・・+Tn×n×(2n-1)…(a)
上記式(a)において、nは、ロック状態にあるモータ11の台数である。また、Tnは、n台のモータ11がロック状態である時間である。すなわち、T1は1台のモータ11がロック状態にある時間であり、T2は2台のモータ11が共にロック状態にある時間である。また、上記式(a)中の(2n-1)は、重み付け係数Cである。すなわち、本実施形態では、重み付け係数Cは、ロック状態にあるモータ11の台数nが増えるほど大きくなる値である。すなわち、重み付け係数Cを含む上記式(a)を用いた処理は、ロック状態にあるモータ11の台数nが増えるにつれて許容時間Txを相対的に減少させる処理といえる。
【0023】
図2には、一例として、第1モータM1のロック中に第2モータM2においてもロックが開始されたときの発熱管理部15の処理を示している。まず、閉作動中の第1モータM1において、ウィンドウガラスW1の閉じ切りに伴うロックが検出される。発熱管理部15は、第1モータM1のロックの検出に基づいて時間T1のカウントを開始する。時間T1は、第1モータM1のみがロック状態である時間、すなわち、第1モータM1のロックが検出されてから、第2モータM2のロックが検出されるまでの時間である。
【0024】
第1モータM1がロックされると、第1モータM1に流れる電流が上昇する。第1モータM1のみがロックされた状態では、時間T1がそのまま発熱レベル値ΣLとなる。
その後、発熱管理部15は、第1モータM1のロック中における第2モータM2のロックの検出に基づいて時間T2のカウントを開始する。第2モータM2がロックされると、第2モータM2に流れる電流が上昇する。すなわち、第1モータM1及び第2モータM2が共にロックされている状態では、第1モータM1に流れる電流と第2モータM2に流れる電流の合計値が高くなる。これにより、第1モータM1及び第2モータM2が共にロックされている状態では、制御部12を構成する素子の温度は、より顕著に上昇する。
【0025】
ここで、発熱レベル値ΣLは、ΣC=T1×1+T2×2×3となる。そして、発熱レベル値ΣLが許容時間Tx以上となるまで、第1モータM1及び第2モータM2のロック状態下での駆動が維持される。
【0026】
許容時間Txは、予め所定の値に設定されている。例えば、許容時間Txは、ウィンドウガラスW1,W2を隙間無く閉じきるのに十分な長さの時間に設定される。
例えば、許容時間Txが100[ms]に設定される。そして、時間T1が50[ms]であった場合には、時間T2が9[ms]になったときに、発熱レベル値ΣLがΣL=104、すなわち許容時間Tx以上となる。
【0027】
発熱管理部15は、発熱レベル値ΣLが許容時間Tx以上になったとき、発熱抑制処理を行う。当該発熱抑制処理では、例えば、最後にロックが検出されたモータ11、すなわち上記の例では第2モータM2の駆動のみ継続させ、第1モータM1の駆動を停止させる。このように、発熱管理部15は、発熱レベル値ΣLが許容時間Tx以上になったとき、第1モータM1のロック時間を制限する。上記の例では、第1モータM1のロック時間は、T1+T2=59[ms]に制限される。
【0028】
また、当該発熱抑制処理では、第2モータM2の駆動は、ロック時間が許容時間Txに達するまで継続される。これにより、第2モータM2のロック時間が、ウィンドウガラスW2を隙間無く閉じきるのに十分な長さの時間だけ確保される。上記のように、発熱抑制処理によって第1モータM1のロック時間が制限されることで、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないようになっている。
【0029】
なお、1台のモータ11のみがロックされる場合には、時間T1がそのまま発熱レベル値ΣLとなる。このため、当該モータ11におけるロック状態下での駆動は許容時間Txまで継続された後、停止されることとなる。上記の例において、第1モータM1のロック中に第2モータM2のロックが検出されない場合には、第1モータM1のロック時間を許容時間Tx=100[ms]まで継続させることができる。
【0030】
次に、第1実施形態における制御部12の制御フローとその作用を説明する。
図3に示すように、制御部12は、第1モータM1及び第2モータM2の各々において、駆動がロックされたか否かを判定する。ステップS1において、駆動がロックされていないと判定した場合、制御部12はステップS1を繰り返す。
【0031】
ステップS1において、駆動がロックされたと判定された場合、ステップS2に移行する。ステップS2では、発熱管理部15は、上記式(a)に基づいて発熱レベル値ΣLを算出する。
【0032】
次のステップS3において、発熱管理部15は、ステップS2で算出した発熱レベル値ΣLと許容時間Txとを比較する。ここで、発熱レベル値ΣLが許容時間Tx未満の場合、発熱管理部15はステップS2に戻り、増加したロック時間に基づく発熱レベル値ΣLを算出する。これにより、発熱レベル値ΣLは、ロック時間の増加に応じて増加していく。
【0033】
ステップS3において、発熱レベル値ΣLが許容時間Tx以上の場合、ステップS4に移行する。ステップS4では、発熱管理部15は、ロック状態にあるモータ11の台数nが1台か否かを判定する。
【0034】
ステップS4において、ロック状態にあるモータ11の台数が1台である場合、ステップS5に移行する。ステップS5では、発熱管理部15は、ロック状態にあるモータ11の駆動を停止させる。
【0035】
ステップS4において、ロック状態にあるモータ11の台数が複数である場合、ステップS6に移る。ステップS6では、発熱管理部15は、前記発熱抑制処理を実行する。発熱抑制処理によって、ロック状態にある複数のモータ11のうち、最後にロックが検出されたモータ11の駆動のみが許容時間Txだけ継続され、その他のモータ11の駆動が停止される。これにより、複数のモータ11においてロックされる状況となっても、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないようになっている。なお、第1モータM1のロックと第2モータM2のロックとが同時に検出された場合には、発熱抑制処理において、第1モータM1及び第2モータM2のいずれかの駆動のみが継続される。
【0036】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)制御部12は、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように複数のモータ11の各々の駆動を制御する発熱管理部15を有している。この構成によれば、1つのモータ制御装置10で複数のモータ11を制御可能である。このため、複数のモータ11を制御するシステムの構築に際し、複数のモータ11の1つにつき1つのモータ制御装置10を設ける必要がなくなる。したがって、複数のモータ11を制御するシステムにおけるモータ制御装置10の数を抑制可能であり、ひいては、システムの構築に掛かるコストを抑えることが可能である。また、モータ制御装置10の数を減らすことで、モータ制御装置10の設置スペースを縮小することが可能となる。
【0037】
また、複数のモータ11を同時に駆動させた場合、制御部12に流れる電流がモータ11の駆動台数nに応じて増加するため、大電流によって制御部12を構成する素子が焼損するおそれがある。その点、上記の構成によれば、発熱管理部15によって、複数のモータ11の各々の駆動が、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように制御される。これにより、複数のモータ11を同時に駆動させた場合でも、発熱管理部15によって、制御部12を構成する素子の焼損を抑制することが可能となる。
【0038】
(1-2)制御部12は、各モータ11の駆動情報に基づいて各モータ11のロックを検出する。そして、発熱管理部15は、2つ以上のモータ11のロックが検出されている場合に、当該モータ11におけるロック状態下での駆動時間であるロック時間を制限する。発熱管理部15がモータ11のロック時間を制限することで、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないようにすることが可能となる。
【0039】
(1-3)発熱管理部15は、ロックが検出された各モータ11におけるロック時間に基づいて発熱レベル値ΣLを算出する。そして、発熱管理部15は、発熱レベル値ΣLが予め設定された許容時間Tx以上になったとき、ロックが検出されたモータ11のうちの少なくとも1つの駆動を停止させる。これにより、発熱レベル値ΣLと予め設定された許容時間Txとの比較に基づいて、モータ11のロック時間を制限することが可能となる。
【0040】
(1-4)発熱管理部15は、発熱レベル値ΣLが許容時間Tx以上になったとき、ロックが検出されたモータ11のうち、最後にロックが検出されたモータ11の駆動のみ継続させ、その他のモータ11の駆動を停止させる。これにより、最後にロックが検出されたモータ11のロック時間が確保されるため、ロック時間が極端に短いモータ11が生じないように制御できる。
【0041】
(1-5)発熱管理部15は、ロック状態にあるモータ11の台数nを検出する。そして、発熱管理部15は、ロック状態にあるモータ11の台数nが増えるにつれて許容時間Txを相対的に減少させる制御を行う。この構成によれば、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように好適に制御することが可能となる。
【0042】
<第2実施形態>
次に、モータ制御装置の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に対して発熱管理部15の制御態様のみ相違する。このため、以下では、第2実施形態における発熱管理部15の制御態様についてのみ説明する。
【0043】
第2実施形態では、発熱管理部15は、複数のモータ11の各々における発熱度合いを算出する。本実施形態において、各モータ11における発熱度合いは、例えば、各モータ11に供給する電流の推定値である。各モータ11に供給する電流の推定値は、バッテリBTの電圧、外気温情報St、及びモータ11の回転速度の少なくとも1つに基づいて推定することが可能である。なお、各モータ11における発熱度合いは、各モータ11における発熱量の推定値であってもよい。各モータ11における発熱量の推定値は、バッテリBTの電圧、外気温情報St、及びモータ11の回転速度の少なくとも1つに基づいて推定することが可能である。そして、発熱管理部15は、各モータ11における発熱度合いの合算値FLが予め設定された許容値Fx以上になったとき、駆動中のモータ11に印加する駆動電圧を下げる出力制限を行う。なお、発熱管理部15は、PWM制御によって駆動電圧を調整する。
【0044】
図4には、一例として、第1モータM1のロック中に第2モータM2においてもロックが開始されたときの発熱管理部15の処理を示している。まず、閉作動中の第1モータM1において、ウィンドウガラスW1の閉じ切りに伴うロックが検出される。発熱管理部15は、第1モータM1のロックの検出に基づいて時間T1のカウントを開始する。
【0045】
第1モータM1がロックされると、第1モータM1に流れる電流、すなわち第1モータM1の発熱度合いが上昇する。このとき、前記合算値FLが許容値Fx以上になった場合、発熱管理部15は、合算値FLが許容値Fx未満となるように、第1モータM1に印加する駆動電圧を電圧値V1に制限する。
【0046】
その後、発熱管理部15は、第1モータM1のロック中における第2モータM2のロックの検出に基づいて時間T2のカウントを開始する。第2モータM2がロックされると、第2モータM2に流れる電流が上昇する。第2モータM2がロックされると、第2モータM2に流れる電流、すなわち第2モータM2の発熱度合いが上昇する。したがって、合算値FLも上昇する。このとき、合算値FLが許容値Fx以上になった場合、発熱管理部15は、合算値FLが許容値Fx未満となるように、第1モータM1及び第2モータM2にそれぞれ印加する駆動電圧を電圧値V2まで下げる。当該電圧値V2は、前記電圧値V1よりも低い値である。なお、第1モータM1及び第2モータM2には、互いに等しい電圧値V2が印加される。
【0047】
その後、発熱管理部15は、所定条件に基づいて、第1モータM1への通電を停止する。当該所定条件は、第1モータM1のロックが開始されてからの経過時間が所定時間Trに達すること、または、第1モータM1の回転の停止が検出されること等が挙げられる。許容時間Txは、例えば、ウィンドウガラスW1,W2を隙間無く閉じきるのに十分な長さの時間に設定される。
【0048】
出力制限中において第1モータM1の駆動が停止されると、合算値FLは、許容値Fx未満となる。発熱管理部15は、合算値FLが許容値未満になったとき、第2モータM2に印加する駆動電圧を電圧値V1まで上げる。その後、第2モータM2のロックが開始されてからの経過時間が所定時間Trに達したとき、発熱管理部15は、第2モータM2の駆動を停止させる。
【0049】
次に、第2実施形態における制御部12の制御フローとその作用を説明する。
図5に示すように、モータ11の駆動中、ステップS11において、発熱管理部15は、合算値FLを算出する。
【0050】
次のステップS12において、発熱管理部15は、ステップS11で算出した合算値FLと許容値Fxとを比較する。ステップS12において、合算値FLが許容値Fx以上の場合、ステップS13を経てステップS14に移行する。ステップS13では、発熱管理部15は、駆動中のモータ11に印加する駆動電圧を下げる出力制限を行う。この出量制限によって、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないようになっている。
【0051】
ステップS12において、合算値FLが許容値Fx未満の場合、ステップS13を飛ばしてステップS14に移行する。
ステップS14では、発熱管理部15は、モータ11のロック時間が所定時間Trに達したか否かを判定する。ステップS14において、モータ11のロック時間が所定時間Trに達した場合、ステップS15に移行する。ステップS15では、ロック時間が所定時間Trに達したモータ11への通電が停止される。なお、ステップS14で、ロック中のモータ11の回転が停止されたか否かを判定し、ステップS15で、回転が停止されたモータ11への通電を停止してもよい。
【0052】
ステップS14において、モータ11のロック時間が所定時間Trに達していない場合、モータ11への通電を継続させつつ、ステップS16に移行する。ステップS16では、発熱管理部15は、合算値FLを再計算し、当該合算値FLと許容値Fxとを比較する。ここで、合算値FLが許容値Fx以上の場合、発熱管理部15はステップS11に戻る。
【0053】
ステップS16において、合算値FLが許容値Fx未満の場合、ステップS17を経てステップS11に戻る。ステップS17では、発熱管理部15は、モータ11の駆動電圧に対する制限を緩和する。これにより、合算値FLと許容値Fxとの間に余裕が生じた場合には、出力制限を緩和することで、出来るだけ出力を上げてモータ11を駆動させることが可能となる。
【0054】
第2実施形態の効果について説明する。
(2-1)発熱管理部15は、複数のモータ11の各々における発熱度合いを算出する。そして、発熱管理部15は、各モータ11における発熱度合いの合算値FLが予め設定された許容値Fx以上になったとき、駆動中のモータ11に印加する駆動電圧を下げる出力制限を行う。この構成によれば、複数のモータ11を同時に駆動させた場合でも、発熱管理部15の出力制限によって、制御部12を構成する素子の焼損を抑制することが可能となる。また、この構成では、モータ11のロック時間を短く制限することなく、制御部12を構成する素子の焼損を抑制可能である。すなわち、モータ11のロック時間を確保できるため、ウィンドウガラスW1,W2を好適に閉じきることが可能となる。
【0055】
(2-2)発熱管理部15は、出力制限中において、合算値FLが許容値未満になったとき、出力制限を緩和する。この構成によれば、合算値FLの値に応じたより最適な出力制限を実行することが可能となる。このため、例えば、ウィンドウガラスW1,W2の閉じきり時の出力不足等を抑制可能である。
【0056】
(2-3)発熱管理部15は、バッテリBTの電圧、外気温情報St、及びモータ11の回転速度の少なくとも1つに基づいて、各モータ11の発熱度合いを算出する。この構成によれば、各モータ11に流れる電流を検出する電流センサや、各モータ11やモータ制御装置10に取り付けられる温度センサ等を別途設けなくても、各モータ11の発熱度合いを推定することが可能となる。
【0057】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
(第1実施形態の変更例)
・許容時間Txの値は、上記第1実施形態で例示した100[ms]に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更可能である。
【0058】
・上記第1実施形態において、発熱レベル値ΣLの算出に用いる重み付け係数Cを、ロック状態にあるモータ11の台数nのみによって決定される値としているが、これに特に限定されるものではない。例えば、重み付け係数Cを、台数nの他に、バッテリBTの電圧、外気温、モータ11の回転速度、及びモータ11の出力などの特性、のうちの少なくとも1つに基づいて決定される値としてもよい。
【0059】
・上記第1実施形態の発熱抑制処理では、最後にロックが検出されたモータ11の駆動のみ継続させ、その他のモータ11の駆動を停止させるが、これに特に限定されるものではない。例えば、発熱レベル値ΣLが予め設定された許容時間Tx以上になったとき、最初にロックが検出されたモータ11の駆動のみ継続させ、その他のモータ11の駆動を停止させてもよい。また、例えば、発熱レベル値ΣLが予め設定された許容時間Tx以上になったとき、ロック中の全てのモータ11の駆動を停止させてもよい。
【0060】
・上記第1実施形態の発熱管理部15の処理は、上記第1実施形態の態様に限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態の発熱管理部15の処理と、上記第2実施形態の発熱管理部15の処理とを組み合わせて実施することも可能である。
【0061】
(第2実施形態の変更例)
・上記第2実施形態において、発熱管理部15による出力制限の制限量は、例えば、モータ11の同時作動台数、バッテリBTの電圧、外気温、モータ11の回転速度、及びモータ11の出力などの特性、のうちの少なくとも1つに応じて可変してもよい。
【0062】
・上記第2実施形態では、発熱管理部15は、合算値FLが予め設定された許容値Fx以上になったとき、駆動中のモータ11に印加する駆動電圧を下げる出力制限を行うが、これに限らず、例えば、図6及び図7に示すような処理に変更してもよい。
【0063】
図6には、一例として、第1モータM1のロック中に第2駆動指令Sc2が入力された場合の処理を示している。まず、閉作動中の第1モータM1において、ウィンドウガラスW1の閉じ切りに伴うロックが検出される。発熱管理部15は、第1モータM1のロックの検出に基づいて時間T1のカウントを開始する。第1モータM1がロックされると、第1モータM1に流れる電流、すなわち第1モータM1の発熱度合いが上昇する。これにより、合算値FLが予め設定された閾値Fa以上になる。
【0064】
合算値FLが閾値Fa以上であるときに、第2駆動指令Sc2が入力されると、発熱管理部15は、第2駆動指令Sc2を保留する。すなわち、合算値FLが閾値Fa以上であるときに、第2操作スイッチSW2が操作されても、ウィンドウガラスW2が作動されない。
【0065】
その後、発熱管理部15は、所定条件に基づいて、第1モータM1への通電を停止する。当該所定条件は、第1モータM1のロックが開始されてからの経過時間が所定時間Trに達すること、または、第1モータM1の回転の停止が検出されること等が挙げられる。
【0066】
第1モータM1の駆動が停止されると、合算値FLは、閾値Fa未満となる。発熱管理部15は、合算値FLが許容値未満になったとき、保留している第2駆動指令Sc2を実行する。これにより、第2モータM2の作動が開始される。
【0067】
当該変更例における制御部12の制御フローを説明する。
図7に示すように、発熱管理部15は、ステップS21でモータ11の駆動指令を検出すると、ステップS22に移行する。ステップS22では、発熱管理部15は、合算値FLを算出し、その合算値FLと閾値Faとを比較する。
【0068】
ステップS22において、合算値FLが閾値Fa未満の場合、ステップS23に移行する。ステップS23では、発熱管理部15は、ステップS21で検出した駆動指令に基づいてモータ11を駆動させる。
【0069】
ステップS22において、合算値FLが閾値Fa以上の場合、ステップS24に移行する。ステップS24では、検出した駆動指令を保留する。すなわち、検出した駆動指令に基づくモータ11の駆動を実行しない。ステップS24の実行後、ステップS22に戻る。
【0070】
このような処理によれば、発熱管理部15は、合算値FLが閾値Fa以上であるときにモータ11の駆動指令を検出したとき、当該駆動指令を保留し、その後、合算値FLが閾値Fa未満になったとき、保留している駆動指令を実行する。これにより、モータ11の発熱度合いの合算値FLが閾値Fa以上のときに、更なるモータ11の駆動が開始されない。このため、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように制御可能である。これにより、制御部12を構成する素子の焼損を抑制することが可能となる。
【0071】
また、上記のような処理では、発熱管理部15の制御ロジックの簡素化が可能となる。また、上記のような処理では、駆動指令が保留されるのみであるため、第1操作スイッチSW1及び第2操作スイッチSW2を再度操作することなく、モータ11を駆動させることが可能となる。
【0072】
・発熱管理部15の処理は、上記各実施形態の処理に限定されるものではなく、他の態様に変更可能である。例えば、図8に示すように、ロック状態にあるモータ11の駆動中に他のモータ11の駆動指令を検出したとき、当該駆動指令をキャンセルする処理に変更してもよい。なお、図8には、一例として、第1モータM1のロック中に第2駆動指令Sc2が入力された場合の処理を示している。発熱管理部15は、第1モータM1のロック中に第2モータM2の第2駆動指令Sc2を検出したとき、当該第2駆動指令Sc2をキャンセルする。このような処理によれば、モータ11のロック中に更なるモータ11の駆動が開始されない。したがって、発熱管理部15の制御ロジックを簡素化しつつも、制御部12を構成する素子の温度が耐熱上限を超えないように制御可能である。
【0073】
・上記各実施形態では、モータ制御装置10にて複数のパワーウィンドウモータを制御するシステムを例にとって説明したが、これに限らず、例えば、車両に搭載される他の複数のモータを制御するモータ制御装置10に適用してもよい。
【0074】
・上記各実施形態及び上記各変更例において、制御部12が制御可能なモータ11の数は2つに限られるものではなく、3つ以上のモータ11を制御可能な制御部12にも適用可能である。例えば、車両に搭載された4つのパワーウィンドウモータを制御する制御部12に適用してもよい。
【0075】
・今回開示された各実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
10 モータ制御装置、11 モータ、12 制御部、15 発熱管理部、BT バッテリ(電源)、ΣL 発熱レベル値、Tx 許容時間、n 台数、FL 合算値、Fx 許容値、Fa 閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8