(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20241008BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 E
(21)【出願番号】P 2021086067
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-145018(JP,A)
【文献】特開2016-062664(JP,A)
【文献】特開2012-038524(JP,A)
【文献】特開2016-072104(JP,A)
【文献】特開2008-277257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に接合されたプラグカバー(5)と、を有し、上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されている内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記ハウジングの先端部と上記プラグカバーの基端部とを当接させ、両者を溶接することで、上記プラグカバーを上記ハウジングの先端部に接合し、
上記ハウジングの先端部又は上記プラグカバーの基端部は、上記ハウジング又は上記プラグカバーの外周面(21、52)に沿って形成されると共に、上記プラグカバーの基端部又は上記ハウジングの先端部に対してプラグ軸方向(Z)及びプラグ径方向の双方に対向する外周対向部(11)を有し、
上記外周対向部は、プラグ軸方向の長さ(H)が、上記プラグ径方向における長さ(S)よりも短く、
上記ハウジングの先端部と上記プラグカバーの基端部との溶接は、上記外周対向部におけるプラグ軸方向の全体にわたって溶融部(12)が形成されるように行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項2】
上記外周対向部の上記プラグ径方向における長さは、上記プラグカバーの最大厚み(T)の半分以上である、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項3】
上記接地電極は、上記ハウジングの先端部に接合されており、上記プラグカバーと上記ハウジングとの溶接と共に、上記接地電極を上記ハウジングの先端部に溶接する、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項4】
上記接地電極は、上記ハウジングの先端面(22)に接合されており、上記プラグカバーは、その内周面(53)の一部が上記プラグ径方向における外側に後退することにより形成された凹部(54)を有し、該凹部の内側に上記接地電極の一部が配置された状態にて、上記プラグカバーを上記ハウジングの先端部に溶接によって接合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項5】
上記ハウジングの先端部と上記プラグカバーの基端部との溶接は、レーザー溶接によって行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えた内燃機関用のスパークプラグが知られている。特許文献1に記載のスパークプラグは、絶縁碍子の副燃焼室に面する外周面の表面積に対する、ハウジング及びプラグカバーの副燃焼室に面する内壁面の合計表面積の比率を規定している。これにより、副燃焼室が高温になることを抑え、スパークプラグによる放電の発生よりも前に混合気が着火すること(すなわちプレイグニッション)を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグは、プラグカバーにおける、ハウジングを介した外部への放熱については考慮されていない。すなわち、プラグカバーは、副燃焼室と主燃焼室との双方に面することから、特に温度上昇しやすい。それゆえ、プレイグニッションの抑制に当たっては、特にプラグカバーの過熱を抑制することが重要となる。プラグカバーの放熱は、主としてハウジングを介して行われる。そのため、プラグカバーからハウジングへの熱移動をいかに向上させるかが重要となるところ、特許文献1に記載の発明においては、この点について特に考慮されていない。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、プラグカバーの過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを効率的に製造することができる方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に接合されたプラグカバー(5)と、を有し、上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されている内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記ハウジングの先端部と上記プラグカバーの基端部とを当接させ、両者を溶接することで、上記プラグカバーを上記ハウジングの先端部に接合し、
上記ハウジングの先端部又は上記プラグカバーの基端部は、上記ハウジング又は上記プラグカバーの外周面(21、52)に沿って形成されると共に、上記プラグカバーの基端部又は上記ハウジングの先端部に対してプラグ軸方向(Z)及びプラグ径方向の双方に対向する外周対向部(11)を有し、
上記外周対向部は、プラグ軸方向の長さ(H)が、上記プラグ径方向における長さ(S)よりも短く、
上記ハウジングの先端部と上記プラグカバーの基端部との溶接は、上記外周対向部におけるプラグ軸方向の全体にわたって溶融部(12)が形成されるように行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【発明の効果】
【0007】
上記スパークプラグの製造方法において、外周対向部は、プラグ軸方向の長さが、プラグ径方向における長さよりも短い。そして、ハウジングの先端部とプラグカバーの基端部との溶接は、外周対向部におけるプラグ軸方向の全体にわたって溶融部が形成されるように行う。それゆえ、ハウジングの先端部とプラグカバーの基端部との互いの対向部位を、効率的に、広範囲にわたって溶接することができる。それゆえ、プラグカバーの熱がハウジングに移動しやすいスパークプラグを効率的に製造することができる。その結果、プラグカバーの過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを効率的に製造することができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、プラグカバーの過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを効率的に製造することができる方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、溶接工程前の、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面相当図。
【
図3】実施形態1における、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図4】実施形態1における、各部位の寸法を示す、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図5】実施形態1における、溶接工程前のプラグカバーを基端側から見た図。
【
図6】実施形態1における、接地電極をハウジングの先端面に当接させる様子を示す断面図。
【
図7】実施形態1における、プラグカバーをハウジングに当接させる様子を示す断面図。
【
図8】実施形態1における、溶接工程後の、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図9のVIII-VIII線矢視断面相当図。
【
図10】実施形態1における、スパークプラグが設置された内燃機関の断面図。
【
図11】比較形態における、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図12】比較形態における、溶融部周辺の拡大断面図。
【
図13】実施形態2における、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図14】実施形態3における、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図15】実施形態4における、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図16】実施形態5における、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図17】実施形態6における、外周対向部周辺の拡大断面図。
【
図18】実施形態7における、溶接工程前の、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグの製造方法に係る実施形態について、
図1~
図10を参照して説明する。
本形態の製造方法によって得られる内燃機関用のスパークプラグ1は、
図8、
図9に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に接合されている。プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。
【0011】
本形態のスパークプラグ1の製造方法においては、
図1に示すごとく、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とを当接させ、
図8に示すごとく、両者を溶接することで、プラグカバー5をハウジング2の先端部に接合する。
【0012】
図1、
図2に示すごとく、ハウジング2の先端部又はプラグカバー5の基端部は、外周対向部11を有する。外周対向部11は、ハウジング2又はプラグカバー5の外周面21、52に沿って形成されている。また、外周対向部11は、プラグカバー5の基端部又はハウジング2の先端部に対してプラグ軸方向Z及びプラグ径方向の双方に対向する。
【0013】
外周対向部11は、
図4に示すごとく、プラグ軸方向Zの長さHが、プラグ径方向における長さSよりも短い。ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との溶接は、
図8に示すごとく、外周対向部11におけるプラグ軸方向Zの全体にわたって溶融部12が形成されるように行う。
【0014】
次に、本形態の製造方法によって得られるスパークプラグ1について説明する。
スパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。スパークプラグ1は、
図10に示すごとく、ハウジング2の外周面に形成したネジ部24を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、内燃機関10に取り付けられる。スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、ハウジング2は、ネジ部24を介して、内燃機関のシリンダヘッド71と熱的に接触している。
【0015】
内燃機関10は、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。内燃機関10には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。
【0016】
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室101に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。また、プラグ径方向とは、スパークプラグ1の中心軸Cに直交する平面上において、スパークプラグ1の中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、本形態の製造方法によって得られるスパークプラグ1において、プラグ中心軸Cは、
図8、
図9に示すごとく、中心電極4の中心軸でもある。
【0017】
図10に示すごとく、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室101とを連通させている。プラグカバー5は、例えば、鉄、ニッケル、鉄或いはニッケルの合金、ステンレス鋼等の材料からなる。
【0018】
また、プラグカバー5は、
図8に示すごとく、溶融部12を介してハウジング2の先端部に接合されている。プラグカバー5とハウジング2とは、互いに熱的に接触している。ハウジング2は、例えば、鉄、ニッケル、鉄或いはニッケルの合金、ステンレス鋼等の材料からなる。
【0019】
また、本形態の製造方法によって得られるスパークプラグ1において、噴孔51は、
図9に示すごとく、Z方向から見たとき、接地電極6と重ならないように形成されている。
【0020】
接地電極6は、
図8、
図9に示すごとく、ハウジング2に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。接地電極6は、溶融部12を介してハウジング2の先端部に接合されている。接地電極6とハウジング2とは、互いに熱的に接触している。接地電極6は、金属材料からなる。
【0021】
接地電極6は、全体として、略L字形状をなしている。具体的には、接地電極6における固定端部61よりも先端側の部分が内側に向かって屈曲している。これにより、接地電極6の基端面62の一部が中心電極4の先端部とZ方向に対向し、放電ギャップGを形成している。
【0022】
次に、スパークプラグ1の製造方法について説明する。
本形態の製造方法は、当接工程と溶接工程とを有する。当接工程は、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とを互いに当接させる工程である。溶接工程は、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とを互いに溶接する工程である。
【0023】
まず、当接工程について説明する。
本形態において、当接工程では、
図7の矢印Mに示すように、プラグカバー5を、ハウジング2の先端部に対し、Z方向に当接させる。
【0024】
ここで、本形態において、プラグカバー5の基端部とハウジング2の先端部とは、
図1、
図3、
図4に示すごとく、それぞれ段状に形成されている。当接工程においては、プラグカバー5の基端部が、ハウジング2の先端部に対して、Z方向及びプラグ径方向の双方に対向するように、ハウジング2とプラグカバー5とを当接させる。以降、プラグカバー5の基端部にける、ハウジング2の先端部に対してZ方向及びプラグ径方向の双方に対向する部分を、カバー対向部55と称する。
【0025】
本形態において、カバー対向部55は、プラグカバー5の外周面52に沿って形成されている。すなわち、本形態においては、カバー対向部55が、外周対向部11となっている。
【0026】
外周対向部11は、
図2、
図5に示すごとく、プラグカバー5の基端部において、プラグ周方向の全体に形成されている。つまり、外周対向部11は、プラグカバー5の外周面52に沿って、環状に形成されている。
【0027】
図4に示すごとく、外周対向部11のプラグ径方向における長さSは、プラグカバー5の最大厚みTの半分以上である。本形態において、最大厚みTは、プラグカバー5の基端部における最大厚みとなっている。また、長さSは、例えば、最大厚みTの7割以下の長さとすることができる。
【0028】
また、外周対向部11のZ方向の長さHは、例えば、長さSの1/2以上の長さとすることができる。
【0029】
また、当接工程において、ハウジング2とプラグカバー5とを当接させた際、ハウジング2の先端部は、プラグカバー5の基端部に対し、Z方向及びプラグ径方向の双方に対向する。以降、ハウジング2の先端部における、プラグカバー5の基端部に対してZ方向及びプラグ径方向の双方に対向する部分を、ハウジング対向部23と称する。
【0030】
本形態において、ハウジング対向部23は、外周対向部11のプラグ径方向における内側に配置される。ハウジング対向部23と外周対向部11とは、プラグ径方向に互いに対向している。また、ハウジング対向部23と外周対向部11とは、Z方向における長さが、互いに同等となっている。
【0031】
本形態においては、当接工程において、ハウジング2とプラグカバー5とを互いに当接させたとき、外周対向部11は、ハウジング2とZ方向に当接している。また、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とは、Z方向及びプラグ径方向の双方において、互いに当接している。
【0032】
また、当接工程において、ハウジング2とプラグカバー5とを互いに当接させたとき、
図3に示すごとく、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とがZ方向に互いに対向する部分である軸方向対向部13が形成される。本形態において、軸方向対向部13は、2つ形成される。
【0033】
また、当接工程において、ハウジング2とプラグカバー5とを互いに当接させたとき、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とがプラグ径方向に互いに対向する部分である径方向対向部14も形成される。径方向対向部14は、2つの軸方向対向部13同士によって、プラグ径方向に挟まれるように形成されている。
【0034】
次に、溶接工程について説明する。
溶接工程では、当接工程の後に、プラグカバー5をハウジングの先端部に溶接する。本形態において、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との溶接は、レーザー溶接によって行う。
【0035】
具体的には、
図3に示すごとく、外周対向部11のZ方向における中間位置に向けて、外周側からレーザー光Lを照射することにより、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とを溶接する。溶接工程においては、
図8に示すごとく、外周対向部11におけるプラグ軸方向Zの全体にわたって溶融部12が形成されるように溶接を行う。また、
図9に示すごとく、外周対向部11のプラグ周方向における全体にわたって溶融部12が形成されるように、溶接を行う。
【0036】
また、接地電極6は、ハウジング2の先端面22に接合されている。また、プラグカバー5は、
図1、
図2、
図5、
図7に示すごとく、その内周面53の一部がプラグ径方向における外側に後退することにより形成された凹部54を有する。本形態においては、
図8に示すごとく、凹部54の内側に接地電極6の一部が配置された状態にて、プラグカバー5をハウジング2の先端部に溶接によって接合する。
【0037】
また、溶接工程前において、凹部54は、
図7に示すごとく、基端側に開口するように、形成されている。凹部54のプラグ周方向の幅は、接地電極6のプラグ周方向の幅と略同じとなっている。
【0038】
次に、接地電極6とハウジング2との溶接について説明する。
接地電極6は、当接工程の前に、ハウジング2に仮固定される。具体的には、接地電極6を、
図6の矢印Mに示すように、ハウジング2の先端面22に対し、Z方向に当接させる。そして、
図7に示すごとく、接地電極6を、抵抗溶接により、ハウジング2の先端面22に仮固定する。なお、抵抗溶接による仮固定の代わりに、ハウジング2の先端部に凹部を形成し、その凹部に接地電極6を圧入することにより、接地電極6をハウジング2に仮固定することもできる。
【0039】
接地電極6の仮固定後、上述のごとく、当接工程を行う。そして、当接工程の後、接地電極6をハウジング2に接合する。
【0040】
具体的には、接地電極6は、
図8に示すごとく、ハウジング2の先端部に接合されている。そして、プラグカバー5とハウジング2との溶接と共に、接地電極6をハウジング2の先端部に溶接する。つまり、本形態において、溶接工程では、プラグカバー5とハウジング2との溶接と同時に、接地電極6とハウジング2との溶接も行う。
【0041】
また、溶接工程では、ハウジング2の先端部と接地電極6とをつなぐ溶融部において、仮固定の際に形成される溶融部よりも、溶接工程によって形成される溶融部12の方が、割合が大きくなるように、溶接を行う。
【0042】
以上のように、当接工程と溶接工程とを有するスパークプラグ1の製造方法によって、
図8、
図9に示すごとく、外周対向部11におけるZ方向の全体にわたって溶融部12が形成されたスパークプラグ1が得られる。
【0043】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1の製造方法において、外周対向部11は、プラグ軸方向Zの長さHが、プラグ径方向における長さSよりも短い。そして、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との溶接は、外周対向部11におけるプラグ軸方向Zの全体にわたって溶融部12が形成されるように行う。それゆえ、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との互いの対向部位を、効率的に、広範囲にわたって溶接することができる。それゆえ、プラグカバー5の熱がハウジング2に移動しやすいスパークプラグ1を効率的に製造することができる。その結果、プラグカバー5の過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0044】
上記スパークプラグ1は、放電ギャップGに放電を生じさせることにより、副燃焼室50内の混合気を着火させ、火炎を形成する。そして、副燃焼室50内にて生じた火炎を、噴孔51から噴出させる。これにより、主燃焼室内に火炎を伝搬させて混合気を燃焼させる。そのため、副燃焼室50と主燃焼室との双方に面するプラグカバー5は、副燃焼室50内の燃焼と主燃焼室内の燃焼との双方によって受熱することとなる。ここで、ハウジング2は、内燃機関のシリンダヘッドと熱的に接触している。また、プラグカバー5は、広範囲にわたって形成された溶融部12を介してハウジング2と熱的に接触している。そのため、燃焼によって受熱したプラグカバー5は、ハウジング2を介して、外部、すなわちシリンダヘッドに効果的に放熱することができる。
【0045】
図11に示すごとく、仮に、外周対向部11のZ方向の長さHが、プラグ径方向における長さSよりも長い比較形態のスパークプラグ9を想定する。比較形態のスパークプラグ9の場合、長さHが長い分、径方向対向部14のZ方向における長さが長くなりやすい。そのため、外周側の軸方向対向部13に溶融部が形成されるように、外周側からレーザー溶接を行うと、
図12に示すごとく、溶接されない軸方向対向部13及び径方向対向部14が残りやすい。それゆえ、プラグカバー5の熱は、ハウジング2を介して外部に放熱されにくい。また、仮に、軸方向対向部13と径方向対向部14とにおいて、ハウジング2とプラグカバー5とが互いに当接している場合であっても、当該当接部は、溶融部12が形成された部分と比較し、プラグカバー5からハウジング2へと熱を伝えにくい。それゆえ、プラグカバー5は高温となりやすい。
【0046】
また、比較形態のスパークプラグ9において、軸方向対向部13と径方向対向部14とを広範囲に溶接した場合、放熱性は良くなるものの、製造効率が悪くなりやすい。つまり、広範囲に溶接しようとした場合、本形態と比較し、レーザー溶接を行う範囲が広くなり、製造効率が悪くなりやすい。
【0047】
一方、本形態において、外周対向部11は、プラグ軸方向Zの長さHが、プラグ径方向における長さSよりも短い。それゆえ、
図8に示すごとく、外周対向部11におけるプラグ軸方向Zの全体にわたって溶融部12が形成されるように溶接しやすい。そのため、軸方向対向部13と径方向対向部14との双方を、広範囲にわたって、効率的に接合しやすい。そのため、プラグカバー5の熱がハウジング2に移動しやすいスパークプラグ1を効率的に製造することができる。その結果、プラグカバー5の過熱を抑制することができるスパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0048】
また、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との互いの対向部位を広範囲にわたって溶接できることにより、ハウジング2とプラグカバー5との接合部の強度を高めることができる。それゆえ、高い強度を有するスパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0049】
外周対向部11のプラグ径方向における長さSは、プラグカバー5の最大厚みTの半分以上である。それゆえ、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との互いの対向部位を、広範囲にわたって確実に溶接しやすい。その結果、プラグカバー5の熱がハウジング2に、より効率的に移動しやすいスパークプラグ1を製造することができる。
【0050】
本形態においては、プラグカバー5とハウジング2との溶接と共に、接地電極6をハウジング2の先端部に溶接する。それゆえ、スパークプラグ1の製造工程、及び製造設備を簡素化しやすい。その結果、スパークプラグ1を一層効率的に製造することができる。
【0051】
接地電極6は、ハウジング2の先端面22に接合されている。また、凹部54の内側に接地電極6の一部が配置された状態にて、プラグカバー5をハウジング2の先端部に溶接によって接合する。それゆえ、接地電極6とハウジング2との接合範囲を広くしやすい。つまり、凹部54の内側に接地電極6の一部が配置されている分、接地電極6とハウジング2の先端面22との接合範囲を広くすることができる。それゆえ、接地電極6の熱がハウジング2に移動しやすいスパークプラグ1を製造することができる。その結果、接地電極6の過熱を抑制することができるスパークプラグ1を製造することができる。
【0052】
また、プラグカバー5に凹部54が形成されていることにより、接地電極6に対する噴孔51の位置、及びハウジング2におけるネジ部24のネジ切り始めに対する噴孔51の位置を決めやすい。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50に流入した気流が、接地電極6によって阻害されにくいように、噴孔51を配置しやすい。また、噴孔51の主燃焼室側の開口部が、主燃焼室の気流の上流側を向くように、噴孔51を配置しやすい。それゆえ、副燃焼室50内の気流を強化しやすい。それゆえ、放電によって形成された初期火炎は、気流によって、副燃焼室50における、より基端側に運ばれやすい。それゆえ、副燃焼室50における、より基端側から火炎が成長しやすい。それゆえ、プラグカバー5及び接地電極6等の受熱を低減させやすい。その結果、プラグカバー5及び接地電極6の過熱を抑制することができる。
【0053】
ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との溶接は、レーザー溶接によって行う。それゆえ、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部との互いの対向部位を、広範囲にわたって確実に溶接することができる。その結果、プラグカバー5の熱がハウジング2に、より効果的に移動しやすいスパークプラグ1を製造することができる。
【0054】
スパークプラグ1は、外周対向部11を有する。それゆえ、当接工程において、プラグカバー5を、ハウジング2に対して、所望の位置に配置しやすい。その結果、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0055】
外周対向部11は、ハウジング2とZ方向に当接している。それゆえ、溶接時において、ブローホールが形成されにくい。その結果、プラグカバー5の熱がハウジング2に確実に移動しやすいスパークプラグ1を製造することができる。
【0056】
以上のごとく、本形態によれば、プラグカバー5の過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを効率的に製造することができる方法を提供することができる。
【0057】
(実施形態2)
本形態は、
図13に示すごとく、ハウジング2に外周対向部11が形成された形態である。
【0058】
本形態においては、
図13に示すごとく、ハウジング対向部23が外周対向部11となっている。そして、外周対向部11のプラグ径方向における内側にカバー対向部55が配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施形態3)
本形態は、
図14に示すごとく、実施形態1に対し、外周対向部11の形状を変更した形態である。
【0060】
本形態において、外周対向部11は、
図14に示すごとく、基端側に向かうほど、プラグ径方向における厚みが小さくなっている。つまり、外周対向部11は、Z方向に対して傾斜した傾斜対向面15を有する。傾斜対向面15は、外周対向部11のZ方向における全体にわたって形成されている。
【0061】
また、ハウジング対向部23も、Z方向に対して傾斜した傾斜対向面25を有する。ハウジング対向部23の傾斜対向面25は、外周対向部11の傾斜対向面15に沿うように形成されている。そして、傾斜対向面25と傾斜対向面15とは、互いに、Z方向及びプラグ径方向の双方に対向している。また、傾斜対向面25と傾斜対向面15とは、互いに当接している。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0062】
(実施形態4)
本形態は、
図15に示すごとく、実施形態3に対し、外周対向部11の形状を変更した形態である。
【0063】
本形態において、外周対向部11は、
図15に示すごとく、プラグカバー5の内周面53から外周面52にわたって形成されている。また、外周対向部11のプラグ径方向における長さSは、プラグカバー5の最大厚みTと同等となっている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態3と同様である。
【0064】
(実施形態5)
本形態は、
図16に示すごとく、実施形態4に対し、外周対向部11の形状を変更した形態である。
【0065】
本形態において、傾斜対向面15は、
図16に示すごとく、外周対向部11のプラグ径方向における全体にわたって形成されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態4と同様である。
【0066】
(実施形態6)
本形態は、
図17に示すごとく、実施形態1に対し、プラグカバー5の基端部及びハウジング2の先端部の形状を変更した形態である。
【0067】
本形態において、プラグカバー5は、
図17に示すごとく、2つのカバー対向部55を有する。そして、一方のカバー対向部55に対し、プラグ径方向における外側に位置するカバー対向部55が、外周対向部11となっている。
【0068】
また、ハウジング対向部23は、2つのカバー対向部55同士によって、プラグ径方向に挟まれるように配置される。
その他は、実施形態1と同様である。
【0069】
ハウジング対向部23は、2つのカバー対向部55同士によって、プラグ径方向に挟まれるように配置される。それゆえ、ハウジング2に対し、プラグカバー5を、所望の位置に安定して配置させやすい。それゆえ、ハウジング2に対し、プラグカバー5を所望の位置に確実に溶接しやすい。その結果、スパークプラグ1を一層効率的に製造することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施形態7)
本形態は、
図18に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0071】
本形態において、接地電極6は、
図18に示すごとく、屈曲することなく、固定端部61から副燃焼室50内に突出している。また、接地電極6の基端面62は、プラグ中心軸Cに近づくほど先端側へ向かうように傾斜している。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0072】
上記実施形態1~7において、プラグカバー5には、4つの噴孔51が形成されている。ただし、噴孔は、プラグカバーに5つ以上形成することもできる。また、プラグカバーに形成された噴孔の数は、3つ以下とすることもできる。
【0073】
上記実施形態1~7において、噴孔51は、Z方向から見たとき、接地電極6と重ならないように形成されている。ただし、噴孔は、Z方向から見たとき、接地電極と重なるように形成することもできる。
【0074】
上記実施形態1~7においては、Z方向から見たとき、噴孔51とプラグ中心軸Cとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線(図示略)に対して、噴孔51の中心軸が傾斜するように、噴孔51が形成されている。この場合、副燃焼室50内に、プラグ中心軸Cの周りを螺旋状に旋回するスワール流が形成されることが期待される。そうすると、比較的、副燃焼室50内の掃気性が向上して、プラグカバー5の過熱がより抑制されることが期待できる。ただし、噴孔は、Z方向から見たとき、噴孔の中心軸がプラグ径方向に沿うように形成することもできる。つまり、噴孔の中心軸の延長線が実質的にプラグ中心軸を通過するように、噴孔を形成することもできる。
【0075】
上記実施形態1~7において、放電ギャップGは、中心電極4と接地電極6とが、Z方向に互いに対向することにより形成されている。ただし、放電ギャップは、例えば、中心電極と接地電極とが、プラグ径方向に互いに対向することにより形成することもできる。
【0076】
また、放電ギャップを形成する中心電極の先端部と接地電極とのそれぞれに、チップを接合することもできる。つまり、中心電極の先端部に接合されたチップと接地電極に接合されたチップとの間に、放電ギャップを形成することもできる。チップは、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
【0077】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…スパークプラグ、11…外周対向部、12…溶融部、2…ハウジング、21…ハウジングの外周面、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、52…プラグカバーの外周面、6…接地電極、G…放電ギャップ、Z…プラグ軸方向