(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電子写真感光体
(51)【国際特許分類】
G03G 5/05 20060101AFI20241008BHJP
G03G 5/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G03G5/05 101
G03G5/05 104B
G03G5/06 371
G03G5/06 313
G03G5/06 312
(21)【出願番号】P 2021088350
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和隆
(72)【発明者】
【氏名】森川 良太
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕生
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169858(JP,A)
【文献】特開2012-141413(JP,A)
【文献】特開2021-071564(JP,A)
【文献】特開2020-079915(JP,A)
【文献】特開平09-124781(JP,A)
【文献】特開2020-148829(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097903(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/163463(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/163462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/147
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、感光層とを備え、
前記感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを含み、
前記電荷発生層は、電荷発生剤を含有し、
前記電荷輸送層は、正孔輸送剤、バインダー樹脂、及びフタロシアニン顔料を含有し、
前記バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含み、
前記ポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有し、前記式(1)及び(3)で表される繰り返し単位の総数に対する、前記式(3)で表される繰り返し単位の含有率は、0%より大きく20%未満であり、
前記フタロシアニン顔料の含有量は、100.00質量部の前記バインダー樹脂に対して、0.15質量部以上0.50質量部以下であり、
前記フタロシアニン顔料は、無金属フタロシアニン、又は式(11)で表される化合物である、電子写真感光体。
【化1】
(前記式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表し、
前記式(2)中、Wは、式(W1)又は(W2)で表される二価の基を表す。)
【化2】
(前記式(X1)中、tは、1以上3以下の整数を表し、*は、結合手を表し、
前記式(X2)中、R
3及びR
4は、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R
3及びR
4は、互いに異なる基を表し、*は、結合手を表す。)
【化3】
(前記式(W1)及び(W2)中、*は、結合手を表す。)
【化4】
(前記式(11)中、Mは、配位子を有してもよい金属原子を表す。)
【請求項2】
前記式(1)中、R
1及びR
2は、メチル基を表し、Xは、前記式(X1)で表される二価の基を表す、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-1)で表される繰り返し単位である、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化5】
【請求項4】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-1)で表される繰り返し単位であり、前記式(2)で表される繰り返し単位は、式(2-1)で表される繰り返し単位である、請求項1~3の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化6】
【請求項5】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-1)で表される繰り返し単位であり、前記式(2)で表される繰り返し単位は、式(2-2)で表される繰り返し単位である、請求項1~3の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化7】
【請求項6】
前記式(1)中、R
1及びR
2は、水素原子を表し、Xは、前記式(X2)で表される二価の基を表す、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-2)で表される繰り返し単位である、請求項1又は6に記載の電子写真感光体。
【化8】
【請求項8】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-2)で表される繰り返し単位であり、前記式(2)で表される繰り返し単位は、式(2-1)で表される繰り返し単位である、請求項1、6、又は7に記載の電子写真感光体。
【化9】
【請求項9】
前記フタロシアニン顔料は、前記無金属フタロシアニンである、請求項1~8の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記正孔輸送剤は、式(20)で表される化合物を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化10】
(前記式(20)中、R
31~R
36は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
37及びR
38は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、b5及びb6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表し、d及びeは、各々独立に、0又は1を表す。)
【請求項11】
前記正孔輸送剤は、式(HTM-1)で表される化合物を含む、請求項1~10の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化11】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
【0003】
特許文献1には、その表面層が下記式で示される二価カルボン酸成分と二価フェノール成分とから得られるポリアリレート樹脂を含有する電子写真感光体が記載されている。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電子写真感光体は、耐摩耗性の点で不十分である。また、特許文献1に記載の電子写真感光体は、溶剤へのバインダー樹脂の溶解性の点、及び感度特性の点で不十分であることが、本発明者らの検討により判明した。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、感光層を良好に形成でき、感度特性及び耐摩耗性に優れる電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを含む。前記電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。前記電荷輸送層は、正孔輸送剤、バインダー樹脂、及びフタロシアニン顔料を含有する。前記バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含む。前記ポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有する。前記式(1)及び(3)で表される繰り返し単位の総数に対する、前記式(3)で表される繰り返し単位の含有率は、0%より大きく20%未満である。前記フタロシアニン顔料の含有量は、100.00質量部の前記バインダー樹脂に対して、0.15質量部以上0.50質量部以下である。前記フタロシアニン顔料は、無金属フタロシアニン、又は式(11)で表される化合物である。
【0009】
【0010】
前記式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表す。前記式(2)中、Wは、式(W1)又は(W2)で表される二価の基を表す。
【0011】
【0012】
前記式(X1)中、tは、1以上3以下の整数を表し、*は、結合手を表す。前記式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は、結合手を表す。
【0013】
【0014】
前記式(W1)及び(W2)中、*は、結合手を表す。
【0015】
【0016】
前記式(11)中、Mは、配位子を有してもよい金属原子を表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子写真感光体は、感光層を良好に形成でき、感度特性及び耐摩耗性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
【
図4】ポリアリレート樹脂Hの
1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「一般式」及び「化学式」を包括的に、「式」と記載する。式の説明における「各々独立に」は、同一の基を表してもよく異なる基を表してもよいことを意味する。「配位子を有してもよい」とは、配位子と配位結合していてもよいことを意味する。「配位子を有する」とは、配位子と配位結合していることを意味する。本明細書に記載の各成分は、特記なき限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において、電子写真感光体の「感度特性」は、ソリッド画像を印刷する際の感度特性、及び中間調画像を印刷する際の感度特性の両方を包含する。
【0020】
まず、本明細書で用いられる置換基について説明する。ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)、及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0021】
炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基及び3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基の例は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0022】
炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基、炭素原子数3以上10以下のパーフルオロアルキル基、炭素原子数5以上7以下のパーフルオロアルキル基、及び炭素原子数6のパーフルオロアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-sec-ブチル基、パーフルオロ-tert-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基、パーフルオロ-1-メチルブチル基、パーフルオロ-2-メチルブチル基、パーフルオロ-3-メチルブチル基、パーフルオロ-1-エチルプロピル基、パーフルオロ-2-エチルプロピル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-2,2-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-n-ヘキシル基、パーフルオロ-1-メチルペンチル基、パーフルオロ-2-メチルペンチル基、パーフルオロ-3-メチルペンチル基、パーフルオロ-4-メチルペンチル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-3,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,1,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1-エチルブチル基、パーフルオロ-2-エチルブチル基、及びパーフルオロ-3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロヘプチル基、直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロオクチル基、直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロノニル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロデシル基が挙げられる。炭素原子数3以上10以下のパーフルオロアルキル基、炭素原子数5以上7以下のパーフルオロアルキル基、及び炭素原子数6のパーフルオロアルキル基の例は、炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0023】
炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基、及び炭素原子数1以上3以下のアルカンジイル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基(メチレン基)、エタンジイル基、n-プロパンジイル基、イソプロパンジイル基、n-ブタンジイル基、sec-ブタンジイル基、tert-ブタンジイル基、n-ペンタンジイル基、1-メチルブタンジイル基、2-メチルブタンジイル基、3-メチルブタンジイル基、1-エチルプロパンジイル基、2-エチルプロパンジイル基、1,1-ジメチルプロパンジイル基、1,2-ジメチルプロパンジイル基、2,2-ジメチルプロパンジイル基、n-ヘキサンジイル基、1-メチルペンタンジイル基、2-メチルペンタンジイル基、3-メチルペンタンジイル基、4-メチルペンタンジイル基、1,1-ジメチルブタンジイル基、1,2-ジメチルブタンジイル基、1,3-ジメチルブタンジイル基、2,2-ジメチルブタンジイル基、2,3-ジメチルブタンジイル基、3,3-ジメチルブタンジイル基、1,1,2-トリメチルプロパンジイル基、1,2,2-トリメチルプロパンジイル基、1-エチルブタンジイル基、2-エチルブタンジイル基、及び3-エチルブタンジイル基が挙げられる。炭素原子数1以上3以下のアルカンジイル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0024】
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、3-エチルブトキシ基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチルオキシ基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチルオキシ基が挙げられる。
【0025】
炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基は、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、インダセニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基が挙げられる。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
【0026】
<電子写真感光体>
以下、
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)について説明する。
図1~
図3は、各々、本実施形態の感光体1の部分断面図を示す。感光体1は、積層型電子写真感光体とも呼ばれる。
図1に示すように、本実施形態の感光体1は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと、電荷輸送層3bとを含む。つまり、感光体1は、感光層3として、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとを備えている。
【0027】
図1に示すように、導電性基体2上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられてもよい。或いは、
図2に示すように、導電性基体2上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。
【0028】
図3に示すように、感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、中間層4(下引き層)を更に備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。
図1及び
図2に示すように、感光体1において、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、
図3に示すように、感光体1において、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。感光体1が中間層4を備える場合、
図3に示すように、導電性基体2上に中間層4が設けられ、中間層4上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられてもよい。或いは、導電性基体2上に中間層4が設けられ、中間層4上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。
【0029】
感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、保護層(不図示)を更に備えてもよい。保護層は、感光層3上に設けられる。
図1~
図3に示すように、感光層3(例えば、電荷輸送層3b又は電荷発生層3a)が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。或いは、保護層が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。
【0030】
図1に示すように、感光層3(好ましくは、電荷輸送層3b)が、感光体1の最表面層として備えられることが好ましい。電荷輸送層3bが、一層であり、且つ感光体1の最表面層として備えられることがより好ましい。後述するポリアリレート樹脂(PA)を含有する電荷輸送層3bが最表面層として備えられることで、感光体1の耐摩耗性が更に向上する。
【0031】
電荷発生層3aは、電荷発生剤を含有する。電荷発生層3aは、必要に応じて、ベース樹脂を含有してもよい。電荷発生層3aは、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。電荷発生層3aの厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷発生層3aは、例えば、一層である。
【0032】
電荷輸送層3bは、正孔輸送剤とバインダー樹脂とフタロシアニン顔料とを含有する。電荷輸送層3bは、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。電荷輸送層3bの厚さは、特に限定されないが、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3bは、例えば、一層である。以上、
図1~
図3を参照して、感光体1について説明した。以下、感光体について更に詳細に説明する。
【0033】
(電荷発生剤)
電荷発生層が含有する電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。感光層は、1種の電荷発生剤のみを含有してもよく、2種以上の電荷発生剤を含有してもよい。
【0034】
フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン構造を有する顔料である。フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン、及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、式(CGM-1)で表される。チタニルフタロシアニンは、式(CGM-2)で表される。
【0035】
【0036】
【0037】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0038】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0039】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有していない。
【0040】
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0041】
電荷発生剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。
【0042】
(ベース樹脂)
電荷発生層が含有するベース樹脂の例は、後述する電荷輸送層が含有するその他のバインダー樹脂の例と同じである。
【0043】
(バインダー樹脂)
電荷輸送層が含有するバインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含む。このポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有する。式(1)及び(3)で表される繰り返し単位の総数に対する、式(3)で表される繰り返し単位の含有率は、0%より大きく20%未満である。
【0044】
【0045】
式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表す。式(2)中、Wは、式(W1)又は(W2)で表される二価の基を表す。
【0046】
【0047】
式(X1)中、tは、1以上3以下の整数を表し、*は、結合手を表す。式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は、結合手を表す。
【0048】
【0049】
式(W1)及び(W2)中、*は、結合手を表す。
【0050】
以下、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を、各々、「繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)」と記載することがある。また、繰り返し単位(1)及び(3)の総数に対する繰り返し単位(3)の含有率を、「含有率(3)」と記載することがある。また、繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)を有し、含有率(3)が0%より大きく20%未満であるポリアリレート樹脂を、「ポリアリレート樹脂(PA)」と記載することがある。
【0051】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)を必須に有する。このような繰り返し単位を有することから、ポリアリレート樹脂(PA)は、溶剤への溶解性に優れ、感光層に含有された場合に、感光体の耐摩耗性を向上できる。
【0052】
含有率(3)は、ポリアリレート樹脂(PA)が有する繰り返し単位(1)の数N1及び繰り返し単位(3)の数N3の合計に対する、繰り返し単位(3)の数N3の百分率(即ち、100×N3/(N1+N3))である。含有率(3)が20%未満であることで、ポリアリレート樹脂(PA)の溶剤への溶解性が向上する。含有率(3)が0%より大きい、即ち含有率(3)が0%ではないことで、ポリアリレート樹脂(PA)を感光層に含有させた場合に感光体の耐摩耗性が向上する。含有率(3)は、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。また、含有率(3)は、19%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0053】
繰り返し単位(2)及び(4)の総数に対する繰り返し単位(4)の含有率は、0%より大きく100%未満である。繰り返し単位(2)及び(4)の総数に対する繰り返し単位(4)の含有率を、「含有率(4)」と記載することがある。含有率(4)は、ポリアリレート樹脂(PA)が有する繰り返し単位(2)の数N2及び繰り返し単位(4)の数N4の合計に対する、繰り返し単位(4)の数N4の百分率(即ち、100×N4/(N2+N4))である。含有率(4)は0%より大きい、即ち含有率(4)は0%ではないので、ポリアリレート樹脂(PA)は繰り返し単位(4)を有する。繰り返し単位(4)を有することで、ポリアリレート樹脂(PA)の溶剤への溶解性が向上し、ポリアリレート樹脂(PA)を感光層に含有させた場合に、感光体の耐摩耗性が向上する。一方、含有率(4)は100%未満である、即ち含有率(4)は100%ではないので、ポリアリレート樹脂(PA)は繰り返し単位(2)を有する。繰り返し単位(2)を有することで、ポリアリレート樹脂(PA)を感光層に含有させた場合に、感光体の耐摩耗性が向上する。含有率(4)は、1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、35%以上であることが更に好ましい。また、含有率(4)は、99%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、65%以下であることが更に好ましい。
【0054】
含有率(3)及び(4)は、各々、プロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂(PA)の1H-NMRスペクトルを測定し、得られた1H-NMRスペクトルにおける各繰り返し単位に特徴的なピークの比率から算出できる。
【0055】
式(1)中、R1及びR2は、メチル基を表すことが好ましい。
【0056】
式(X1)中、tは、2を表すことが好ましい。
【0057】
式(X2)中、R3が水素原子を表し且つR4がメチル基、エチル基、又は炭素原子数3のアルキル基を表すこと、R3がメチル基を表し且つR4がエチル基又は炭素原子数3のアルキル基を表すこと、又はR3がエチル基を表し且つR4が炭素原子数3のアルキル基を表すことが好ましい。R3がメチル基を表し且つR4がエチル基を表すことがより好ましい。
【0058】
式(X1)及び(X2)中の*が表す結合手は、式(1)中のXが結合している炭素原子に結合している。式(W1)及び(W2)中の*が表す結合手は、式(2)中のWが結合している炭素原子に結合している。
【0059】
繰り返し単位(1)としては、例えば、式(1-1)、(1-2)、及び(1-3)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、及び(1-3)と記載することがある)が挙げられる。
【0060】
【0061】
繰り返し単位(2)は、式(2-1)又は(2-2)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを、繰り返し単位(2-1)及び(2-2)と記載することがある)である。
【0062】
【0063】
一態様において、式(1)中、R1及びR2は、メチル基を表し、Xは、式(X1)で表される二価の基を表すことが好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であることがより好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-1)であること;又は繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-2)であることが更に好ましい。
【0064】
別の態様において、式(1)中、R1及びR2は、水素原子を表し、Xは、式(X2)で表される二価の基を表すことが好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-2)であることがより好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-2)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-1)であること;又は繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-2)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-2)であることが更に好ましい。別の態様で述べたポリアリレート樹脂(PA)が感光層に含有されることで、感光体の耐摩耗性が更に向上する。
【0065】
ポリアリレート樹脂(PA)は、末端基を有していてもよい。ポリアリレート樹脂(PA)が有する末端基としては、例えば、式(T-1)及び(T-2)で表される末端基が挙げられる。式(T-1)で表される末端基としては、式(T-DMP)で表される末端基(以下、末端基(T-DMP)と記載することがある)が好ましい。式(T-2)で表される末端基としては、式(T-PFH)で表される末端基(以下、末端基(T-PFH)と記載することがある)が好ましい。
【0066】
【0067】
式(T-1)中、R11は炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はハロゲン原子を表し、pは0以上5以下の整数を表す。R11は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。pは、1以上3以下の整数を表すことが好ましく、2を表すことがより好ましい。
【0068】
式(T-2)中、R12は炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表し、Rfは、炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基を表す。R12は炭素原子数1以上3以下のアルカンジイル基を表すことが好ましく、メチレン基を表すことがより好ましい。Rfは、炭素原子数3以上10以下のパーフルオロアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数5以上7以下のパーフルオロアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数6のパーフルオロアルキル基を表すことが更に好ましい。
【0069】
式(T-1)、(T-2)、(T-DMP)、及び(T-PFH)中の*は、結合手を示す。式(T-1)、(T-2)、(T-DMP)、及び(T-PFH)中の*が示す結合手は、ポリアリレート樹脂(PA)の末端に位置するジカルボン酸由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(2)又は(4))に対して結合している。
【0070】
ポリアリレート樹脂(PA)の好適な例としては、表1に示すポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)が挙げられる。ポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)として表1に示す繰り返し単位を有する。表1及び後述する表2において、単位(1)~(4)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)を示す。
【0071】
【0072】
ポリアリレート樹脂(PA)の更に好適な例としては、表2に示すポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)が挙げられる。ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)として表2に示す繰り返し単位と、表2に示す末端基とを有している。
【0073】
【0074】
ポリアリレート樹脂(PA)において、ビスフェノール由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(1)又は(3))と、ジカルボン酸由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(2)又は(4))とは、隣接して互いに結合している。即ち、繰り返し単位(1)は、繰り返し単位(2)と結合してもよく、繰り返し単位(4)と結合してもよい。また、繰り返し単位(3)は、繰り返し単位(2)と結合してもよく、繰り返し単位(4)と結合してもよい。ビスフェノール由来の繰り返し単位はジカルボン酸由来の繰り返し単位と略同数であり、計算式「ジカルボン酸由来の繰り返し単位の数=ビスフェノール由来の繰り返し単位の数+1」を満たす。ポリアリレート樹脂(PA)は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体であってもよい。
【0075】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)として、1種の繰り返し単位(1)のみを有してもよく、2種以上(例えば、2種)の繰り返し単位(1)を有してもよい。ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(2)として、1種の繰り返し単位(2)のみを有してもよく、2種の繰り返し単位(2)を有してもよい。
【0076】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)~(4)以外の繰り返し単位を更に有していてもよい。しかし、溶剤への溶解性を向上させ、感光層に含有された場合の感光体の耐摩耗性を向上させるために、ポリアリレート樹脂(PA)が有する繰り返し単位の総数における、繰り返し単位(1)~(4)の含有率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。即ち、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)~(4)のみを有することが特に好ましい。
【0077】
溶剤への溶解性を向上させるために、ポリアリレート樹脂(PA)が有するビスフェノール由来の繰り返し単位の総数における、繰り返し単位(3)の含有率は、20%以下であることが好ましく、20%未満であることがより好ましい。
【0078】
ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが一層好ましく、55,000以上であることが特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が10,000以上であると、感光体の感光層に含有された場合に感光体の耐摩耗性が向上する。一方、ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることが一層好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が80,000以下であると、ポリアリレート樹脂(PA)の溶剤に対する溶解性が向上する。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、JIS(日本産業規格)K7252-1:2016に従って測定される。
【0079】
次に、ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法について、説明する。ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法として、例えば、ビスフェノール由来の繰り返し単位を構成するためのビスフェノールと、ジカルボン酸由来の繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合には、公知の合成方法(例えば、溶液重合、溶融重合、又は界面重合)を採用することができる。
【0080】
ビスフェノール由来の繰り返し単位を構成するためのビスフェノールとしては、例えば、式(BP-1)及び(BP-3)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(BP-1)及び(BP-3)と記載することがある)が挙げられる。ジカルボン酸由来の繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸としては、例えば、式(DC-2)及び(DC-4)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(DC-2)及び(DC-4)と記載することがある)が挙げられる。式(BP-1)中のR1、R2、及びXは、式(1)中のR1、R2、及びXと同義である。式(DC-2)中のWは、式(2)中のWと同義である。
【0081】
【0082】
ポリアリレート樹脂(PA)の製造における、化合物(BP-1)及び(BP-3)の総量(単位:モル)に対する、化合物(BP-3)の量(単位:モル)の百分率が、含有率(3)に相当する。また、化合物(DC-2)及び(DC-4)の総量(単位:モル)に対する、化合物(DC-4)の量(単位:モル)の百分率が、含有率(4)に相当する。
【0083】
ビスフェノールは、芳香族ジアセテートに誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸は、誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸の誘導体の例としては、ジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸ジメチルエステル、ジカルボン酸ジエチルエステル、及びジカルボン酸無水物が挙げられる。ジカルボン酸ジクロライドは、ジカルボン酸が有する2個の「-C(=O)-OH」基が各々「-C(=O)-Cl」基で置換された化合物である。
【0084】
ビスフェノールとジカルボン酸との縮重合において、末端停止剤が添加されてもよい。末端停止剤としては、例えば、2,6-ジメチルフェノール、及び1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノールが挙げられる。末端停止剤として2,6-ジメチルフェノールを用いることで、末端基(T-DMP)を形成できる。末端停止剤として1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノールを用いることで、末端基(T-PFH)を形成できる。
【0085】
ビスフェノールとジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方が添加されてもよい。塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒の例としては、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、及びトリメチルアミンが挙げられる。
【0086】
感光層は、バインダー樹脂として、1種のポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよく、2種以上のポリアリレート樹脂(PA)を含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよく、ポリアリレート樹脂(PA)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。その他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリアリレート樹脂(PA)以外のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
【0087】
(フタロシアニン顔料)
電荷輸送層が含有するフタロシアニン顔料は、無金属フタロシアニン、又は式(11)で表される化合物である。以下、「式(11)で表される化合物」を、「フタロシアニン顔料(11)」と記載することがある。また、「無金属フタロシアニン、又はフタロシアニン顔料(11)」を、「所定フタロシアニン顔料」と記載することがある。電荷輸送層が所定フタロシアニン顔料を含有することで、感度特性、特にソリッド画像を印刷する際の感度特性及び中間調画像を印刷する際の感度特性が向上する。
【0088】
まず、無金属フタロシアニンについて説明する。無金属フタロシアニンは、式(K-1)で表される化合物(以下、フタロシアニン顔料(K-1)と記載することがある)である。式(K-1)と既に述べた式(CGM-1)とは同一であるが、区別して記載するために、電荷輸送層に含有される無金属フタロシアニンを式(K-1)で表し、電荷発生層に含有される無金属フタロシアニンを式(CGM-1)で表している。無金属フタロシアニンは、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、X型無金属フタロシアニンが挙げられる。
【0089】
【0090】
次に、フタロシアニン顔料(11)について説明する。下記式(11)中、Mは、配位子を有してもよい金属原子を表す。
【0091】
【0092】
式(11)中、Mが表す金属原子は、チタン原子、ガリウム原子、銅原子、亜鉛原子、又は鉛原子を表すことが好ましく、チタン原子、又はガリウム原子を表すことがより好ましく、チタン原子を表すことが更に好ましい。
【0093】
式(11)中、Mで表される金属原子は、配位子を有してもよい。このような配位子としては、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、及びオキソ基(=O)が挙げられる。これらのうち、オキソ基以外の配位子が配位する場合、金属原子に2つの配位子が配位結合してもよい。配位子としては、ハロゲン原子(より好ましくは、塩素原子)、ヒドロキシ基、又はオキソ基が好ましい。
【0094】
式(11)中、Mは、配位子を有してもよいチタン原子、配位子を有してもよいガリウム原子、配位子を有してもよい銅原子、配位子を有してもよい亜鉛原子、又は配位子を有してもよい鉛原子を表すことが好ましく、配位子を有してもよいチタン原子、又は配位子を有してもよいガリウム原子を表すことがより好ましく、配位子を有するチタン原子、又は配位子を有するガリウム原子を表すことが更に好ましい。配位子を有するチタン原子としては、配位子として酸素原子を有するチタン原子(即ち、TiO)を表すことが好ましい。配位子を有するガリウム原子としては、配位子として塩素原子を有するガリウム原子(即ち、GaCl)、又は配位子としてヒドロキシ基を有するガリウム原子(即ち、GaOH)が好ましい。
【0095】
フタロシアニン顔料(11)は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン顔料(11)としては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、又はクロロガリウムフタロシアニンが好ましく、チタニルフタロシアニンがより好ましい。チタニルフタロシアニンは、式(K-2)で表される化合物(以下、フタロシアニン顔料(K-2)と記載することがある)である。式(K-2)と既に述べた式(CGM-2)とは同一であるが、区別して記載するために、電荷輸送層に含有されるチタニルフタロシアニンを式(K-2)で表し、電荷発生層に含有されるチタニルフタロシアニンを式(CGM-2)で表している。チタニルフタロシアニンの結晶としては、α型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンが挙げられる。
【0096】
【0097】
所定フタロシアニン顔料の含有量は、100.00質量部のバインダー樹脂に対して、0.15質量部以上0.50質量部以下である。
【0098】
感光体が露光される際に、電荷発生層に含有される電荷発生剤からだけでなく、電荷輸送層に含有される所定フタロシアニン顔料からも、電荷が発生する傾向がある。このため、電荷輸送層に所定フタロシアニン顔料が含有されることで、感光体の感度特性、特にソリッド画像を印刷する際の感度特性が向上する。このような効果は、所定フタロシアニン顔料の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して0.15質量部以上である場合に顕著となる。
【0099】
一方、所定フタロシアニン顔料の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して0.50質量部超であると、感光体が露光される際に、露光光が電荷輸送層で遮られて電荷発生層まで到達し難い傾向がある。所定フタロシアニン顔料の含有量が100.00質量部のバインダー樹脂に対して0.50質量部以下であると、露光光が電荷輸送層で遮られ難く、露光光が電荷発生層まで良好に到達する。その結果、感光体の感度特性、特にソリッド画像を印刷する際の感度特性が向上する。
【0100】
電荷輸送層は、無金属フタロシアニン及びフタロシアニン顔料(11)のうちの1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。無金属フタロシアニン及びフタロシアニン顔料(11)の2種以上が含有される場合、所定フタロシアニン顔料の含有量は、2種以上の無金属フタロシアニン及びフタロシアニン顔料(11)の合計含有量を意味する。
【0101】
感光体の感度特性を更に向上させるために、電荷輸送層に含有される所定フタロシアニン顔料は、電荷発生層に含有される電荷発生剤と同一であることが好ましい。
【0102】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。感光層は、1種の正孔輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の正孔輸送剤を含有してもよい。
【0103】
正孔輸送剤の好適な例としては、式(20)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(20)と記載することがある)が挙げられる。感光層が、ポリアリレート樹脂(PA)及び所定フタロシアニン顔料とともに、正孔輸送剤(20)を含有することで、感光層を更に良好に形成でき、感光体の感度特性及び耐摩耗性が更に向上する。
【0104】
【0105】
式(20)中、R31、R32、R33、R34、R35、及びR36は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。R37及びR38は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。b5及びb6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。d及びeは、各々独立に、0又は1を表す。
【0106】
式(20)中、b1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR31は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR32は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR33は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR34は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b5が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR35は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR36は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0107】
式(20)中、R31~R36は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことが更に好ましい。R37及びR38は、水素原子を表すことが好ましい。b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。b5及びb6は、0を表すことが好ましい。d及びeは、1を表すことが好ましい。
【0108】
正孔輸送剤のより好適な例としては、式(HTM-1)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(HTM-1)と記載することがある)が挙げられる。
【0109】
【0110】
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上60質量部以下であることが更に好ましい。
【0111】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、電子アクセプター化合物、及びレベリング剤が挙げられる。レベリング剤としては、シリコーンオイルが好ましく、ジメチルポリシロキサン構造を有するシリコーンオイルがより好ましい。
【0112】
(材料の組み合わせ)
感光層を良好に形成し、感光体の感度特性及び耐摩耗性を向上させるためには、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-1)であることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-1)であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(HTM-1)であることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-1)であり、電荷発生剤がチタニルフタロシアニンであることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-1)であり、電荷発生剤が無金属フタロシアニンであることが好ましい。なお、ポリアリレート樹脂A~Iについては、実施例で詳述する。
【0113】
感光層を良好に形成し、感光体の感度特性及び耐摩耗性を向上させるためには、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-2)であることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-2)であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(HTM-1)であることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-2)であり、電荷発生剤がチタニルフタロシアニンであることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)、ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)、及びポリアリレート樹脂A~Iのうちの1種であり、フタロシアニン顔料がフタロシアニン顔料(K-2)であり、電荷発生剤が無金属フタロシアニンであることが好ましい。
【0114】
(導電性基体)
導電性基体は、特に限定されず、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0115】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0116】
(中間層)
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。
【0117】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。
【0118】
中間層用樹脂の例は、既に述べたその他のバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
【0119】
(感光体の製造方法)
以下、感光体の製造方法の一例を説明する。感光体の製造方法は、例えば、電荷発生層形成工程と電荷輸送層形成工程とを含む。電荷発生層形成工程では、まず、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した電荷発生層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して電荷発生層を形成する。電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、ベース樹脂と、溶剤とを含有する。このような電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及びベース樹脂を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷発生層用塗布液は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0120】
電荷輸送層形成工程では、まず、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する。次いで、塗布した電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して電荷輸送層を形成する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、フタロシアニン顔料と、溶剤とを含む。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、フタロシアニン顔料とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製できる。電荷輸送層用塗布液は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0121】
電荷発生層用塗布液、及び電荷輸送層用塗布液(以下、これらを包括的に塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含有される各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0122】
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布する場合に、電荷発生層が電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
【0123】
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0124】
塗布液を塗布する方法は、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
【0125】
塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上120分以下である。
【0126】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでいてもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0128】
<ポリアリレート樹脂A~Nの準備>
実施例に係るポリアリレート樹脂A~I、及び比較例に係るポリアリレート樹脂J~Nを、以下に示す方法により合成した。ポリアリレート樹脂A~Nの組成を、下記表3に示す。
【0129】
【0130】
表3において、「BisCZ」、「BisB」、「BisZ」、「BP」、「14NACC」、「26NACC」、「DPEC」、「TPC」、及び「IPC」は、各々、下記式(BisCZ)、(BisB)、(BisZ)、(BP)、(14NACC)、(26NACC)、(DPEC)、(TPC)、及び(IPC)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BisCZ)、(BisB)、(BisZ)、(BP)、(14NACC)、(26NACC)、(DPEC)、(TPC)、及び(IPC)と記載することがある)を示す。
【0131】
【0132】
また、表3における各用語の意味は、次のとおりである。
モノマー:ポリアリレート樹脂の合成に使用したモノマー
形成単位:該当するモノマーから形成される繰り返し単位
樹脂:ポリアリレート樹脂
ビスフェノール添加率:ポリアリレート樹脂の合成において添加されたビスフェノールモノマーの総量(単位:モル)に対する該当するビスフェノールモノマーの量(単位:モル)の百分率(単位:%)
ジカルボン酸添加率:ポリアリレート樹脂の合成において添加されたジカルボン酸モノマーの総量(単位:モル)に対する該当するジカルボン酸モノマーの量(単位:モル)の百分率(単位:%)
分子量:粘度平均分子量
単位:繰り返し単位
TPC/IPC:モル比が1/1である化合物(TPC)及び(IPC)の混合物
TPC/IPC欄の50/50:化合物(TPC)のジカルボン酸添加率が50%であり且つ化合物(IPC)のジカルボン酸添加率が50%であること
DMP:2,6-ジメチルフェノール
PFH:1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノール
測定不可:粘度分子量測定用の溶剤にポリアリレート樹脂が溶解せず、粘度平均分子量を測定できなかったこと
【0133】
(ポリアリレート樹脂Aの合成)
反応容器として、温度計、三方コック、及び滴下ロートを備えた三口フラスコを用いた。反応容器に、モノマーである化合物(BisCZ)(38.95ミリモル)と、モノマーである化合物(BP)(2.05ミリモル)と、末端停止剤である2,6-ジメチルフェノール(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド(0.384ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水(300mL)を加えた。反応容器の内容物を50℃で1時間攪拌した。反応容器の内容物を10℃まで冷却して、アルカリ性水溶液S-Aを得た。
【0134】
次に、モノマーである化合物(14NACC)のジカルボン酸ジクロライド(16.0ミリモル)、及びモノマーである化合物(26NACC)のジカルボン酸ジクロライド(16.0ミリモル)を、クロロホルム(150mL)に溶解させた。これにより、クロロホルム溶液S-Bを得た。
【0135】
アルカリ性水溶液S-Aに対して、滴下ロートを用いて、110分間かけてゆっくりとクロロホルム溶液S-Bを滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を15±5℃に調節しながら、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。デカントを用いて反応容器の内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、三角フラスコに、イオン交換水(400mL)を加えた。三角フラスコ内に、得られた有機層を更に加えた。三角フラスコ内に、クロロホルム(400mL)及び酢酸(2mL)を更に加えた。三角フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。デカントを用いて三角フラスコ内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、イオン交換水(1L)で、得られた有機層を洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。メタノール(1L)に得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂Aが得られた。
【0136】
(ポリアリレート樹脂B~Nの合成)
表3に示すモノマーを、表3に示す添加率で使用したこと以外は、ポリアリレート樹脂Aの合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂B~Nの各々を合成した。なお、ビスフェノールモノマーの総量が41.0ミリモルとなり、且つ表3に示すビスフェノール添加率となるように、各ビスフェノールモノマーの添加量を設定した。例えば、ポリアリレート樹脂Bの合成において、化合物(BisB)の添加量は38.95ミリモル(=41.0×95/100)であり、化合物(BP)の添加量は2.05ミリモル(=41.0×5/100)であった。また、ジカルボン酸モノマーの総量が32.0ミリモルとなり、且つ表3に示すジカルボン酸添加率となるように、各ジカルボン酸モノマーの添加量を設定した。例えば、ポリアリレート樹脂Bの合成において、化合物(14NACC)の添加量は16.0ミリモル(=32.0×50/100)であり、化合物(26NACC)の添加量は16.0ミリモル(=32.0×50/100)であった。
【0137】
プロトン核磁気共鳴分光計(日本電子株式会社製、600MHz)を用いて、得られたポリアリレート樹脂A~Nの
1H-NMRスペクトルを測定した。溶媒として重水素化クロロホルムを用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。ポリアリレート樹脂A~Nのうちの代表例として、ポリアリレート樹脂Hの
1H-NMRスペクトルを、
図4に示す。
1H-NMRスペクトルから読み取られる化学シフトから、ポリアリレート樹脂Hが得られていることを確認した。ポリアリレート樹脂A~G及びI~Nについても同じ方法で、ポリアリレート樹脂A~G及びI~Nが得られていることを確認した。
【0138】
<ポリアリレート樹脂Oの準備>
比較例に係るポリアリレート樹脂Oを準備した。ポリアリレート樹脂Oは、下記式(O)で表される。式(O)中のビスフェノール由来の繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂Oに含まれるビスフェノール由来の繰り返し単位の総数に対する、該当するビスフェノール由来の繰り返し単位の含有率(単位:%)を示す。また、式(O)中のジカルボン酸由来の繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂Oに含まれるジカルボン酸由来の繰り返し単位の総数に対する、該当するジカルボン酸由来の繰り返し単位の含有率(単位:%)を示す。ポリアリレート樹脂Oは、末端基として、2,6-ジメチルフェノール由来の末端基を有していた。ポリアリレート樹脂Oの粘度平均分子量は、54400であった。
【0139】
【0140】
<粘度平均分子量の測定>
ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量を、JIS(日本産業規格)K7252-1:2016に従って測定した。測定された粘度平均分子量を、表3に示す。
【0141】
<感光体の製造>
(感光体(A-1)の製造)
まず、中間層を形成した。表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT-A」、数平均一次粒径10nm)を準備した。SMT-Aは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて更に表面処理したものであった。次いで、SMT-Aの2質量部と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)1質量部と、メタノール10質量部と、ブタノール1質量部と、トルエン1質量部とを、ビーズミルを用いて5時間混合して、中間層用塗布液を得た。中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法により、導電性基体の表面に中間層用塗布液を塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体を用いた。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚:1.5μm)を形成した。
【0142】
次に、電荷発生層を形成した。詳しくは、電荷発生剤であるY型チタニルフタロシアニン1.5質量部と、ベース樹脂であるポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX-5」)1.0質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル40.0質量部と、テトラヒドロフラン40.0質量部とを、ビーズミルを用いて12時間混合して、電荷発生層用塗布液を得た。電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。ディップコート法により、得られたろ液を中間層上に塗布し、50℃で5分間乾燥させた。このようにして、中間層上に電荷発生層(膜厚:0.3μm)を形成した。
【0143】
次に、電荷輸送層を形成した。詳しくは、正孔輸送剤(HTM-1)45.00質量部と、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂Aの100.00質量部と、フタロシアニン顔料(K-1)0.30質量部と、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製「KF96-50cs」、ジメチルポリシロキサン構造を有するシリコーンオイル)0.07質量部と、テトラヒドロフラン560.00質量部と、トルエン140.00質量部とを混合して、電荷輸送層用塗布液を得た。ディップコート法により、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、120℃で40分間乾燥させた。このようにして、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚:30μm)を形成し、感光体(A-1)を得た。感光体(A-1)において、導電性基体上に中間層が、中間層上に電荷発生層が、電荷発生層上に電荷輸送層が備えられていた。
【0144】
(感光体(A-2)~(A-12)、(B-1)~(B-4)及び(B-6)~(B-12)の製造)
表5に示すポリアリレート樹脂を使用したこと、及び0.30質量部のフタロシアニン顔料(K-1)の代わりに、表5の「顔料等」欄に示す化合物を表5に示す量で使用したこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法で、感光体(A-2)~(A-12)、(B-1)~(B-4)及び(B-6)~(B-12)の各々を製造した。
【0145】
表5の「顔料等」欄における「K-1」及び「K-2」は、各々、フタロシアニン顔料(K-1)及び(K-2)を示す。表5の「顔料等」欄に示す「K-3」、「K-4」、及び「K-5」は、各々、下記式(K-3)、(K-4)、及び(K-5)で表される化合物を示す。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
(感光体(B-5)の製造)
0.30質量部のフタロシアニン顔料(K-1)を添加しなかったこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法で、感光体(B-5)を製造した。
【0150】
<溶剤への溶解性の評価>
温度22℃の環境下において、3gのポリアリレート樹脂と、ポリアリレート樹脂の濃度が15質量%となるような量のテトラヒドロフランとを、60分間攪拌し、評価液を得た。評価液を肉眼で確認し、下記基準に従って、溶剤であるテトラヒドロフランへのポリアリレート樹脂の溶解性を評価した。評価A又はBであるポリアリレート樹脂を、溶剤への溶解性が良好であると判定し、評価Cであるポリアリレート樹脂を、溶剤への溶解性が不良であると判定した。各ポリアリレート樹脂の評価結果を、表4に示す。
【0151】
(溶剤への溶解性の評価基準)
A:テトラヒドロフランにポリアリレート樹脂が完全に溶解し、評価液の白濁及びゲル化は確認されなかった。
B:評価液の白濁が確認されたが、評価液のゲル化は確認されなかった。
C:評価液のゲル化が確認された。
【0152】
<ソリッド画像を印刷する際の感度特性の評価>
ソリッド画像を印刷する際の感光体の感度特性(以下、感度特性Aと記載することがある)を評価した。詳しくは、温度25℃及び相対湿度50%RHの環境下で、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機を用いて、感光体の表面電位が-550Vになるように感光体を帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いてハロゲンランプの光から取り出した単色光(波長:780nm、露光量:0.87μJ/cm2)を、感光体の表面に照射した。なお、0.87μJ/cm2の露光量は、ソリッド画像を印刷する際の露光量に相当する。単色光の照射から50ミリ秒が経過した時点での感光体の表面電位を測定し、露光後電位A(VLA、単位:-V)とした。各感光体の露光後電位Aを、表5に示す。露光後電位Aから、下記基準に従って、感光体の感度特性Aを評価した。
【0153】
(感度特性Aの評価基準)
良好:露光後電位Aの絶対値が、120V以下である。
不良:露光後電位Aの絶対値が、120V超である。
【0154】
<中間調画像を印刷する際の感度特性の評価>
中間調画像を印刷する際の感光体の感度特性(以下、感度特性Bと記載することがある)を評価した。露光量を0.87μJ/cm2から0.15μJ/cm2に変更したこと以外は、感度特性Aの評価と同じ方法により、感度特性Bを評価した。なお、0.15μJ/cm2の露光量は、中間調画像を印刷する際の露光量に相当する。単色光の照射から50ミリ秒が経過した時点での感光体の表面電位を測定し、露光後電位B(VLB、単位:-V)とした。各感光体の露光後電位Bを、表5に示す。露光後電位Bから、下記基準に従って、感光体の感度特性Bを評価した。
【0155】
(感度特性Bの評価基準)
良好:露光後電位Bの絶対値が、250V超である。
不良:露光後電位Bの絶対値が、250V以下である。
【0156】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の評価に使用した評価機は、カラープリンター(株式会社沖データ製「C711dn」)であった。評価機のトナーカートリッジに、シアントナーを充填した。まず、感光体の電荷輸送層の膜厚T1を測定した。次いで、感光体を評価機に搭載した。次いで、常温常湿環境(温度23℃及び相対湿度50%RH)下で、評価機を用いて、10,000枚の用紙に画像I(印字率1%のパターン画像)を印刷した。次いで、高温高湿環境(温度32℃及び相対湿度85%RH)下で、評価機を用いて、10,000枚の用紙に画像Iを印刷した。次いで、低温低湿環境(温度10℃及び相対湿度15%RH:以下、LL環境と記載することがある)下で、評価機を用いて、10,000枚の用紙に画像Iを印刷した。LL環境下で印刷した後に、評価機を2時間静置した。次いで、LL環境下にてソリッド画像(画像濃度100%のソリッド画像)を1枚の用紙に印刷した。その後、感光体の電荷輸送層の膜厚T2を測定した。そして、印刷前後の電荷輸送層の膜厚変化量である摩耗量(T1-T2、単位:μm)を求めた。求めた摩耗量を、表5に示す。摩耗量から、下記基準に従って、感光体の耐摩耗性を評価した。
【0157】
(耐摩耗性の評価基準)
良好:摩耗量が、2.0μm以下である。
不良:摩耗量が、2.0μm超である。
【0158】
表4において、「樹脂」は、ポリアリレート樹脂を示し、「溶解性」は、溶剤への溶解性の評価を示す。表5における用語の意味は、次の通りである。「樹脂」は、ポリアリレート樹脂を示す。「顔料等」は、フタロシアニン顔料又はその他の化合物を示す。「感度A」は、感度特性Aの評価を示す。「VLA」は、感度特性Aの評価における感光体の露光後電位Aを示す。「感度B」は、感度特性Bの評価を示す。「VLB」は、感度特性Bの評価における感光体の露光後電位Bを示す。「調製不可」は、ポリアリレート樹脂が電荷輸送層用塗布液を形成するための溶剤に溶解せず、電荷輸送層塗布液を調製できなかったため、該当する評価を実施できなかったことを示す。「-」は、該当する成分を使用していないことを示す。
【0159】
【0160】
【0161】
表3から理解できるように、ポリアリレート樹脂J~Nは、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂ではなかった。また、式(O)から理解できるように、ポリアリレート樹脂Oは、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂ではなかった。表5から理解できるように、感光体(B-1)~(B-4)及び(B-11)~(B-12)において、バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂(PA)を含んでいなかった。このため、表4及び表5に示すように、ポリアリレート樹脂J及びMの溶剤への溶解性は不良であり、ポリアリレート樹脂J及びMを用いて電荷輸送層用塗布液を調製できず、感光体(B-1)及び(B-4)の電荷輸送層を形成できなかった。また、表5に示すように、感光体(B-2)及び(B-3)の耐摩耗性は、不良であった。また、表5に示すように、感光体(B-11)及び(B-12)の感度特性A及び耐摩耗性は、不良であった。
【0162】
表5から理解できるように、感光体(B-5)の電荷輸送層は、所定フタロシアニン顔料を含有していなかった。このため、感光体(B-5)の感度特性A及び感度特性Bは、不良であった。
【0163】
表5から理解できるように、感光体(B-6)において、所定フタロシアニン顔料の含有量は、100.00質量部のバインダー樹脂に対して、0.15質量部未満であった。このため、感光体(B-6)の感度特性Aは、不良であった。
【0164】
表5から理解できるように、感光体(B-7)において、所定フタロシアニン顔料の含有量は、100.00質量部のバインダー樹脂に対して、0.50質量部超であった。このため、感光体(B-7)の感度特性Aは、不良であった。
【0165】
表5から理解できるように、感光体(B-8)~(B-10)は添加剤(K-3)~(K-5)の何れかを含有していたが、添加剤(K-3)~(K-5)は何れも所定フタロシアニン顔料ではなかった。このため、感光体(B-8)~(B-10)の感度特性Aは、不良であった。
【0166】
一方、表3から理解できるように、ポリアリレート樹脂A~Iは、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂であった。表5から理解できるように、感光体(A-1)~(A-12)の電荷輸送層は、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂及び所定フタロシアニン顔料を含有していた。また、感光体(A-1)~(A-12)において、フタロシアニン顔料の含有量は、100.00質量部のバインダー樹脂に対して、0.15質量部以上0.50質量部以下であった。このため、感光体(A-1)~(A-12)は、感光層を良好に形成でき、感度特性(より具体的には、感度特性A及びB)及び耐摩耗性を向上できていた。
【0167】
以上のことから、感光体(A-1)~(A-12)を包含する本発明の感光体は、感光層を良好に形成でき、感度特性及び耐摩耗性を向上できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用できる。
【符号の説明】
【0169】
1 :感光体(電子写真感光体)
2 :導電性基体
3 :感光層
3a :電荷発生層
3b :電荷輸送層