(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】温調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20241008BHJP
B60H 1/08 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/08 611J
(21)【出願番号】P 2021101489
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 基正
(72)【発明者】
【氏名】朝柄 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】島田 広樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 彰
(72)【発明者】
【氏名】濱田 拓也
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-43262(JP,A)
【文献】特開2021-91243(JP,A)
【文献】特開2020-40431(JP,A)
【文献】特開2010-260528(JP,A)
【文献】実開昭57-195580(JP,U)
【文献】特開2015-179609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部から充電される際に発生する熱を蓄えることが可能なバッテリ(60)と、冷媒が循環する冷凍サイクル装置(10)を有し、前記バッテリに蓄えた熱を利用して
目標吹出温度に近付くように加熱した空調風を車室内に吹き出すことで車室内を暖房する車両用空調装置(1)とを搭載した車両に適用される温調装置であって、
前記バッテリに接続され、前記バッテリに蓄えられた熱によって加熱される熱媒体が循環する熱媒体通路(51)と、
前記熱媒体通路に接続され、前記バッテリに蓄えられた熱によって加熱された前記熱媒体を前記冷媒と熱交換させて前記冷媒を加熱する熱交換器(16)と、
前記熱媒体が前記熱媒体通路を流れるための駆動力を出力して前記バッテリおよび前記熱交換器に前記熱媒体を循環させる駆動部(52)と、
前記車両用空調装置が前記バッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、前記熱交換器によって行われる前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進させて、前記冷媒の温度を、熱交換を促進させない場合に比較して上昇させる熱交換促進部(57、58、62、70)と
、
前記目標吹出温度に関する温度を検出する温度検出部(72d)と、を備え
、
前記熱交換促進部は、前記熱媒体通路を流れる前記熱媒体の速度が増加するように前記駆動部が出力する駆動力を変更させて前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進させるとともに、前記温度検出部が検出する温度が所定の閾値以下である場合、前記温度検出部が検出する温度が所定の閾値より大きい場合に比較して、前記駆動部が出力する駆動力を大きくさせる温調装置。
【請求項2】
前記熱交換促進部は、前記熱媒体通路に設けられ、前記熱媒体を貯留可能な貯留タンク(57)を含み、前記車両用空調装置が前記バッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う前に、前記バッテリが充電される際に発生する熱によって加熱された前記熱媒体を前記貯留タンクに貯留して前記冷媒に供給可能な熱量を増加させて前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進する請求項
1に記載の温調装置。
【請求項3】
前記熱交換促進部は、前記駆動部の作動開始および作動停止を制御するとともに、前記車両用空調装置が作動を最後に停止した状態から次に前記車両用空調装置が作動を開始する起動タイミングを検出可能であって、
前記起動タイミングに至るよりも前に前記駆動部の作動を開始させて前記バッテリに蓄えられた熱によって前記熱媒体を加熱することで、前記起動タイミング時の前記熱媒体の温度を前記駆動部の作動開始時の前記熱媒体の温度よりも上昇させて前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進する請求項
1に記載の温調装置。
【請求項4】
前記熱交換促進部は、前記熱媒体通路に設けられ、前記熱媒体を貯留可能な貯留タンク(58)を含み、前記起動タイミングに至るよりも前に前記バッテリに蓄えた熱によって加熱された前記熱媒体を前記貯留タンクに貯留して前記冷媒に供給可能な熱量を増加させて前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進する請求項
3に記載の温調装置。
【請求項5】
前記貯留タンクは、外周の少なくとも一部が、断熱性を有する断熱構造を含んで構成されている請求項
2または
4に記載の温調装置。
【請求項6】
前記熱媒体通路は、外周の少なくとも一部が、断熱性を有する断熱構造を含んで構成されている請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の温調装置。
【請求項7】
前記車両は、前記車両が走行する際に作動することによって発熱するとともに、前記熱媒体が流れる冷却用熱媒体通路(62a)を有する電気機器(62)を有し、
前記熱交換促進部は、前記熱媒体を、前記冷却用熱媒体通路を介して前記熱媒体通路に導く機器加熱用通路(51c)を含み、
前記車両用空調装置が前記バッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う前に、前記バッテリに蓄えられた熱によって加熱された前記熱媒体を前記冷却用熱媒体通路において前記電気機器と熱交換させることで前記電気機器を加熱して前記電気機器に蓄熱させることで、前記冷媒に供給可能な熱量を増加させて前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進する請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の温調装置。
【請求項8】
車両外部から充電される際に発生する熱を蓄えることが可能なバッテリ(60)と、冷媒が循環する冷凍サイクル装置(10)を有し、前記バッテリに蓄えた熱を利用して車室内を暖房する車両用空調装置(1)とを搭載した車両に適用される温調装置であって、
前記バッテリに接続され、前記バッテリに蓄えられた熱によって加熱される熱媒体が循環する熱媒体通路(51)と、
前記熱媒体通路に接続され、前記バッテリに蓄えられた熱によって加熱された前記熱媒体を前記冷媒と熱交換させて前記冷媒を加熱する熱交換器(16)と、
前記熱媒体が前記熱媒体通路を流れるための駆動力を出力して前記バッテリおよび前記熱交換器に前記熱媒体を循環させる駆動部(52)と、
前記車両用空調装置が前記バッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、前記熱交換器によって行われる前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進させて、前記冷媒の温度を、熱交換を促進させない場合に比較して上昇させる熱交換促進部(57、58、62、70)とを備え
、
前記車両は、前記車両が走行する際に作動することによって発熱するとともに、前記熱媒体が流れる冷却用熱媒体通路(62a)を有する電気機器(62)を有し、
前
記熱交換促進部は、前記熱媒体を、前記冷却用熱媒体通路を介して前記熱媒体通路に導く機器加熱用通路(51c)を含み、
前記車両用空調装置が前記バッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う前に、予め充電させて熱を蓄えた状態の前記バッテリに蓄えられた熱によって加熱された前記熱媒体を前記冷却用熱媒体通路において作動前の状態の前記電気機器と熱交換させることで前記電気機器を加熱して前記電気機器に蓄熱させることで、前記冷媒に供給可能な熱量を増加させて前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進する温調装置。
【請求項9】
前記バッテリが充電される際に発生する熱によって前記バッテリの温度を所定の目標温度に近付くように前記バッテリを加熱する制御装置(70)を備え、
前記制御装置は、前記車両外部の温度が所定の低温閾値以下の場合、前記目標温度を、前記バッテリを作動させるための適切な温度であるバッテリ標準温度より高い温度に設定する請求項1ないし
8のいずれか1つに記載の温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された電池を充電する際に、電池を作動させる際の適切な温度より高い温度まで加熱させることで電池に蓄熱し、車室内を暖房する際に、電池に蓄えた熱を利用する電池温度調整装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の電池温度調整装置は、冷媒が流れる冷凍サイクル装置を有する車両用空調装置を含む車両に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電池温度調整装置のような温調装置が電池に蓄えた熱を暖房に利用する場合、電池に蓄えた熱を冷凍サイクル装置を流れる冷媒に伝達する必要がある。そして、電池に蓄えた熱を冷媒に伝達する方法として、電池の温度調整に用いる冷却水を熱媒体として用いる方法がある。
【0005】
熱媒体を介して電池に蓄えた熱を冷媒に伝達させる場合、電池に流した熱媒体を電池と熱交換させて熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体を冷媒と熱交換させて冷媒を加熱する。これにより、車両用空調装置は、加熱された冷媒を用いて暖房を行うことができる。
【0006】
しかし、熱媒体の熱伝達係数が比較的小さい場合、熱媒体と電池とを熱交換させる際に電池に蓄えた熱を充分に熱媒体へ供給させることができない。すると、車両用空調装置を暖房で動作させるために必要な熱量を電池に蓄えても、熱媒体を介して冷媒の温度を必要な温度まで加熱することができないため、車室内を充分に暖房することができない虞がある。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
【0007】
本開示は、車両用空調装置がバッテリに蓄えた熱を利用して車室内を暖房する際に、冷媒の温度を上昇させることが可能な温調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
車両外部から充電される際に発生する熱を蓄えることが可能なバッテリ(60)と、冷媒が循環する冷凍サイクル装置(10)を有し、バッテリに蓄えた熱を利用して目標吹出温度に近付くように加熱した空調風を車室内に吹き出すことで車室内を暖房する車両用空調装置(1)とを搭載した車両に適用される温調装置であって、
バッテリに接続され、バッテリに蓄えられた熱によって加熱される熱媒体が循環する熱媒体通路(51)と、
熱媒体通路に接続され、バッテリに蓄えられた熱によって加熱された熱媒体を冷媒と熱交換させて冷媒を加熱する熱交換器(16)と、
熱媒体が熱媒体通路を流れるための駆動力を出力してバッテリおよび熱交換器に熱媒体を循環させる駆動部(52)と、
車両用空調装置がバッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、熱交換器によって行われる熱媒体と冷媒との熱交換を促進させて、冷媒の温度を、熱交換を促進させない場合に比較して上昇させる熱交換促進部(57、58、62、70)と、
前記目標吹出温度に関する温度を検出する温度検出部(72d)と、を備え、
前記熱交換促進部は、前記熱媒体通路を流れる前記熱媒体の速度が増加するように前記駆動部が出力する駆動力を変更させて前記熱媒体と前記冷媒との熱交換を促進させるとともに、前記温度検出部が検出する温度が所定の閾値以下である場合、前記温度検出部が検出する温度が所定の閾値より大きい場合に比較して、前記駆動部が出力する駆動力を大きくさせる。
また、請求項8に記載の発明は、
車両外部から充電される際に発生する熱を蓄えることが可能なバッテリ(60)と、冷媒が循環する冷凍サイクル装置(10)を有し、バッテリに蓄えた熱を利用して車室内を暖房する車両用空調装置(1)とを搭載した車両に適用される温調装置であって、
バッテリに接続され、バッテリに蓄えられた熱によって加熱される熱媒体が循環する熱媒体通路(51)と、
熱媒体通路に接続され、バッテリに蓄えられた熱によって加熱された熱媒体を冷媒と熱交換させて冷媒を加熱する熱交換器(16)と、
熱媒体が熱媒体通路を流れるための駆動力を出力してバッテリおよび熱交換器に熱媒体を循環させる駆動部(52)と、
車両用空調装置がバッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、熱交換器によって行われる熱媒体と冷媒との熱交換を促進させて、冷媒の温度を、熱交換を促進させない場合に比較して上昇させる熱交換促進部(57、58、62、70)とを備え、
車両は、車両が走行する際に作動することによって発熱するとともに、熱媒体が流れる冷却用熱媒体通路(62a)を有する電気機器(62)を有し、
熱交換促進部は、熱媒体を、冷却用熱媒体通路を介して熱媒体通路に導く機器加熱用通路(51c)を含み、
車両用空調装置がバッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う前に、予め充電させて熱を蓄えた状態のバッテリに蓄えられた熱によって加熱された熱媒体を冷却用熱媒体通路において作動前の状態の電気機器と熱交換させることで電気機器を加熱して電気機器に蓄熱させることで、冷媒に供給可能な熱量を増加させて熱媒体と冷媒との熱交換を促進する。
【0009】
これによれば、温調装置は、車両用空調装置がバッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、熱交換器における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることによって、冷媒の温度を上昇させることができる。このため、バッテリに蓄えた熱を利用して暖房を行う車両用空調装置は、車室内を充分に暖房することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る温調側熱媒体通路およびバッテリの概略構成図である。
【
図3】第1実施形態に係る室内空調ユニットの概略構成図である。
【
図4】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御装置を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る温調装置の充電モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係る温調装置が充電モードを実行する際の熱媒体の流れを示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る温調装置の起動モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態に係る温調装置の暖房要求大判定の制御処理を示すフローチャートである。
【
図9】第1実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際の熱媒体および冷媒の流れを示す図である。
【
図10】温調装置の比較例となる第1熱交換モデルの概略構成図である。
【
図11】模擬ポンプの圧送能力が第1流量である場合における模擬バッテリおよび第1熱交換モデルを流れる熱媒体の温度変化を示す図である。
【
図12】模擬ポンプの圧送能力が第2流量である場合における模擬バッテリおよび第1熱交換モデルを流れる熱媒体の温度変化を示す図である。
【
図13】第2実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【
図14】第2実施形態に係る温調装置が充電モードを実行する際の熱媒体の流れを示す図である。
【
図15】第2実施形態に係る温調装置の起動モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図16】第2実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際の熱媒体および冷媒の流れを示す図である。
【
図17】第3実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【
図18】第3実施形態に係る温調装置の充電モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図19】第3実施形態に係る温調装置が充電モードを実行する際の熱媒体の流れを示す図である。
【
図20】第3実施形態に係る温調装置のプレヒートモードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図21】第3実施形態に係る温調装置がプレヒートモードを実行する際の熱媒体の流れを示す図である。
【
図22】第3実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際の熱媒体および冷媒の流れを示す図である。
【
図23】温調装置の比較例となる第2熱交換モデルの概略構成図である。
【
図24】プレヒートモードを実行後における模擬バッテリおよび第2熱交換モデルを流れる熱媒体の温度変化を示す図である。
【
図25】第4実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【
図26】第4実施形態に係る温調装置のプレヒートモードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図27】第4実施形態に係る温調装置がプレヒートモードを実行する際の熱媒体の流れを示す図である。
【
図28】第5実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【
図29】第5実施形態に係る温調装置の充電モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図30】第5実施形態に係る温調装置が充電モードを実行する際において、バッテリに蓄熱する場合の熱媒体の流れを示す図である。
【
図31】第5実施形態に係る温調装置が充電モードを実行する際において、トランスアクスル装置に蓄熱する場合の熱媒体の流れを示す図である。
【
図32】第5実施形態に係る温調装置の起動モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図33】第5実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際において、バッテリに蓄えた熱を利用して暖房する場合の熱媒体の流れを示す図である。
【
図34】第5実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際において、トランスアクスル装置に蓄えた熱を利用して暖房する場合の熱媒体の流れを示す図である。
【
図35】第5実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際において、トランスアクスル装置の潤滑油の温度変化を示す図である。
【
図36】第5実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際において、トランスアクスル装置のフリクションロスの変化を示す図である。
【
図37】第5実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際において、トランスアクスル装置のフリクションロスの平均値を示す図である。
【
図38】第6実施形態に係る温調装置の起動モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図39】第6実施形態に係る温調装置において、温調側ポンプの圧送能力が第1流量である場合のバッテリおよび温調装置を流れる熱媒体の温度変化を示す図である。
【
図40】第6実施形態に係る温調装置において、温調側ポンプの圧送能力が第2流量である場合のバッテリおよび温調装置を流れる熱媒体の温度変化を示す図である。
【
図41】第6実施形態に係る温調装置が起動モードを実行する際のチラーに流入する熱媒体の温度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~11を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る温調装置50を、後述するモータジェネレータ61から走行用の駆動力を得る電気自動車に搭載された車両用空調装置1に適用している。この車両は、
図1に示すように、モータジェネレータ61等に電力を供給するバッテリ60と、バッテリ60を充電するための充電器80と、空調対象空間である車室内に送風する送風空気の加熱および冷却を行う車両用空調装置1とを備えている。そして、車両用空調装置1は、送風空気の温度調整だけでなく、バッテリ60の温度を調整する機能も有する。
【0014】
バッテリ60は、モータジェネレータ61等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。本実施形態のバッテリ60は、リチウムイオン電池である。バッテリ60は、
図2に示すように、複数の電池セル60bを有し、これらの電池セル60bを電気的に直列あるいは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。
【0015】
このような二次電池は、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。このため、バッテリ60の温度は、バッテリ60の充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(例えば、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。
【0016】
そこで、車両用空調装置1では、冷凍サイクル装置10によってバッテリ60の冷却を行うことができるようになっている。また、バッテリ60は、車両の外部に設けられた外部電源81から供給される電力によって充電される際に自己発熱する。バッテリ60は、自己発熱によって加熱されるとともに、充電によって発生する熱を蓄え、蓄えた熱を外部に出力可能に構成されている。
【0017】
本実施形態のバッテリ60は、複数の電池セル60bを略直方体形状となるように積層配置されて、専用ケース60cに収容されている。当該専用ケース60cの内部には、後述する熱媒体を流通させる熱媒体通路であるバッテリ水通路60aが形成されている。
【0018】
バッテリ水通路60aは、全ての電池セル60bを均等に温度調整できるように形成されている。また、バッテリ水通路60aは、バッテリ水通路60aを流れる熱媒体を熱を蓄えたバッテリ60と熱交換させることで、バッテリ60に蓄えた熱を当該熱媒体に出力できるように形成されている。
【0019】
充電器80は、車両の外に位置するスタンドなどの外部電源81から供給される電力を変換してバッテリ60に供給する供給電力を生成する充電装置である。充電器80は、入力側に不図示の充電プラグを介して外部電源81が電気的に接続されている。また、充電器80は、後述する制御装置70が接続されており、制御装置70から入力される制御信号に基づいて、外部電源81から得られる交流電力を直流に変換して供給電力を生成する。
【0020】
また、充電器80は、出力側にバッテリ60が電気的に接続されており、生成した供給電力をバッテリ60に出力する。充電器80は、制御装置70から送信される制御信号に基づいて、バッテリ60に供給する供給電力が制御される。
【0021】
車両用空調装置1は、
図1および
図3に示すように、冷凍サイクル装置10、空調側熱媒体回路20、室内空調ユニット30、吸熱側熱媒体回路40、温調装置50等を備えている。
【0022】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される送風空気を冷却する機能および空調側熱媒体回路20を循環する熱媒体を加熱する機能を有する。さらに、冷凍サイクル装置10は、温調装置50を循環する熱媒体を冷却する機能を有する。
【0023】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、様々な運転モード用の冷媒回路に切替可能に構成されている。具体的に、冷凍サイクル装置10は、冷媒回路を空調用の運転モードの冷媒回路として、冷房モードの冷媒回路、暖房モード、除湿暖房モードの冷媒回路等に切替可能に構成されている。また、冷凍サイクル装置10は、空調用の各運転モードにおいて、バッテリ60を冷却する冷媒回路と、バッテリ60の冷却を行わない冷媒回路とに切替可能に構成されている。さらに、冷凍サイクル装置10は、空調を行わず、バッテリ60を冷却する冷却モードの冷媒回路にも切替可能に構成されている。
【0024】
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機12から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷凍サイクル装置10は、ヒートポンプサイクルである。
【0025】
冷凍サイクル装置10は、
図1に示すように、冷媒を循環させるための冷媒循環通路11を有している。そして、冷媒循環通路11には、冷媒を圧縮する圧縮機12と、冷媒と熱媒体との間でそれぞれ熱交換させる水-冷媒熱交換器13、室内蒸発器15、チラー16が設けられている。また、冷媒循環通路11には、冷媒を減圧させる第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bが設けられている。
【0026】
圧縮機12は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機12は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータで回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機12は、後述する制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。圧縮機12の吐出口には、水-冷媒熱交換器13のチラー冷媒通路16aの入口側が接続されている。
【0027】
水-冷媒熱交換器13は、圧縮機12から吐出された高圧冷媒と空調側熱媒体回路20を循環する熱媒体とを熱交換させて、熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。水-冷媒熱交換器13は、圧縮機12から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、空調側熱媒体回路20を循環する熱媒体を流通させる水通路とを有している。また、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路の出口には、第1膨張弁14aの入り口側および第2膨張弁14bの入口側が接続されている。
【0028】
第1膨張弁14aは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量(すなわち、質量流量)を調整する冷房用減圧部である。第1膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0029】
第1膨張弁14aは、弁開度を全閉から全開の範囲で変更することで通路を流れる冷媒の流量を調整する。第1膨張弁14aは、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。第1膨張弁14aの出口には、室内蒸発器15の入口側が接続されている。
【0030】
第2膨張弁14bは、少なくともバッテリ60の冷却を行う運転モード時に、水-冷媒熱交換器13のチラー冷媒通路16aから流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷却用減圧部である。また、第2膨張弁14bは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水-冷媒熱交換器13の冷媒通路から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の通路である。第2膨張弁14bは、基本的構成が第1膨張弁14aと同様であるため、詳細な説明は省略する。第2膨張弁14bの出口には、チラー16のチラー冷媒通路16aの入口側が接続されている。
【0031】
室内蒸発器15は、第1膨張弁14aにおいて減圧された低圧冷媒と後述する送風機33から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器15は、後述する室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。また、室内蒸発器15の冷媒出口には、圧縮機12の吸入口側が接続されている。
【0032】
チラー16は、バッテリ60の冷却を行う運転モード時に、第2膨張弁14bにおいて減圧された低圧冷媒と温調装置50を循環する熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発部である。また、チラー16は、車室内の暖房を行う運転モード時に、第2膨張弁14bを通過した低圧冷媒と温調装置50を循環する熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を加熱する加熱用の熱交換器でもある。チラー16は、第2膨張弁14bから流出された低圧冷媒を流通させるチラー冷媒通路16aと、温調装置50を循環する熱媒体を流通させるチラー水通路16bとを有している。チラー冷媒通路16aの出口には、圧縮機12の吸入口側が接続されている。
【0033】
次に、空調側熱媒体回路20について説明する。空調側熱媒体回路20は、熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。空調側熱媒体回路20は、熱媒体を循環させるための空調側熱媒体通路21を有している。そして、空調側熱媒体通路21には、水-冷媒熱交換器13の水通路、空調側ポンプ22、流量調整弁23、空調側ラジエータ24、ヒータコア25、第1空調三方継手26、第2空調三方継手27、電気ヒータ28等が配置されている。
【0034】
空調側ポンプ22は、空調側熱媒体通路21を流れる熱媒体を流量調整弁23へ圧送する水ポンプである。空調側ポンプ22は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。空調側ポンプ22は、制御装置70から出力される制御電圧の変化に応じて、空調側熱媒体通路21を流れる熱媒体の流速を変化させて、流量調整弁23へ流入される熱媒体の単位時間当たりの流量を変化させる。
【0035】
流量調整弁23は、1つの流入口および3つの流出口を有し、流入口から流量調整弁23の内部に流入した熱媒体を3つの流出口それぞれから流出させる流量を調整する四方弁である。具体的に、流量調整弁23は、空調側ポンプ22が吐出した熱媒体を流入させるポンプ側流入口23aを有する。また、流量調整弁23は、ポンプ側流入口23aから流入した熱媒体を、空調側ラジエータ24へ導く空調ラジエータ側流出口23bと、ヒータコア25へ導くヒータコア側流出口23cと、温調装置50へ導く温調側流出口23dとを有する。
【0036】
また、流量調整弁23は、回転位置を変更可能に構成された弁体と、この弁体の回転位置を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の弁装置である。流量調整弁23は、弁体の回転位置を調整することで、空調ラジエータ側流出口23b、ヒータコア側流出口23c、温調側流出口23dそれぞれから流出させる熱媒体の流量比を調整する。
【0037】
具体的に、流量調整弁23は、弁体の回転位置を調整することで、ポンプ側流入口23aから流入した熱媒体を、空調ラジエータ側流出口23b、ヒータコア側流出口23c、温調側流出口23dのいずれか1つの流出口のみから流出させることができる。また、流量調整弁23は、弁体の回転位置を調整することで、熱媒体を温調側流出口23dから流出させることなく、空調ラジエータ側流出口23bおよびヒータコア側流出口23cのそれぞれから流出させることができる。
【0038】
流量調整弁23は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0039】
空調側ラジエータ24は、水-冷媒熱交換器13において加熱された熱媒体と不図示の外気ファンから送風された外気とを熱交換させる空調側外気熱交換部である。空調側ラジエータ24は、駆動装置室内の前方側に配置されている。空調側ラジエータ24の熱媒体出口には、第1空調三方継手26の一方の流入口側が接続されている。
【0040】
ヒータコア25は、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ28において加熱された熱媒体と室内空調ユニット30を流れる送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア25は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。ヒータコア25の熱媒体出口には、第1空調三方継手26の他方の流入口側が接続されている。
【0041】
第1空調三方継手26は、2つの流入口および1つの流出口を有し、2つの流入口から流入した熱媒体を1つの流出口へ流出させる三方継手部である。第1空調三方継手26の流出口には、水-冷媒熱交換器13の水通路の入口側が接続されており、空調側ラジエータ24およびヒータコア25それぞれから流出した熱媒体を水-冷媒熱交換器13の水通路に導く。そして、水-冷媒熱交換器13の水通路の出口には、第2空調三方継手27が接続されている。
【0042】
第2空調三方継手27は、2つの流入口および1つの流出口を有し、2つの流入口から流入した熱媒体を1つの流出口へ流出させる三方継手部である。第2空調三方継手27は、水-冷媒熱交換器13の水通路の出口側に接続される空調側流入口27aと、温調装置50に接続される温調側流入口27bと、電気ヒータ28に接続されるヒータ側流出口27cを有する。ヒータ側流出口27cには、第2空調三方継手27から流量調整弁23に至るまでの熱媒体通路である空調側蓄熱通路21aが接続される。
【0043】
電気ヒータ28は、第2空調三方継手27を介して、水-冷媒熱交換器13の水通路から流入する熱媒体および温調装置50から流入する熱媒体を加熱する加熱装置である。電気ヒータ28は、PTC素子(すなわち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータが採用されている。電気ヒータ28は、充電器80を介して外部電源81に接続されており、充電器80から供給される電力を動力源として発熱する。また、電気ヒータ28は、
図4に示す通り、バッテリ60にも接続されており、バッテリ60から供給される電力を動力源としても発熱可能に構成されている。電気ヒータ28は、制御装置70に接続されており、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0044】
電気ヒータ28は、単位時間当たりの発熱量が予め定められている。すなわち、充電器80またはバッテリ60から供給されることによって電気ヒータ28が空調側蓄熱通路21aを流れる熱媒体へ供給する単位時間当たりの熱量は、予め定められている。電気ヒータ28は、熱媒体の出口側に空調側ポンプ22の吸入口側が接続されている。
【0045】
このように構成される空調側熱媒体回路20では、車両用空調装置1が後述する暖房モードまたは除湿暖房モードで動作する際に、空調側ポンプ22および電気ヒータ28がヒータコア25を通過する送風空気を加熱することができる。また、空調側熱媒体回路20では、温調装置50が後述する充電モードを実行する際に、空調側ポンプ22および電気ヒータ28が空調側熱媒体通路21を流れる熱媒体を加熱することができる。
【0046】
次に、
図3を用いて室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0047】
室内空調ユニット30は、その外殻を形成する空調ケース31内に形成された空気通路内に送風機33、室内蒸発器15、ヒータコア25等を収容したものである。
【0048】
空調ケース31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)で成形されている。
【0049】
空調ケース31の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置32が配置されている。内外気切替装置32は、空調ケース31内へ導入する空気を内気(すなわち、車室内空気)と外気(すなわち、車室外空気)とに切り替えるものである。
【0050】
内外気切替装置32は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口32aおよび外気を導入させる外気導入口32bの開口面積を、内外気切替ドア32cによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させるものである。内外気切替ドア32cは、内外気切替ドア32c用の不図示の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。内外気切替装置32の送風空気流れ下流側には、送風機33が配置されている。
【0051】
送風機33は、内外気切替装置32を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風するものである。送風機33は、遠心多翼ファン33aを電動モータ33bで駆動する電動送風機である。送風機33は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0052】
送風機33の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器15およびヒータコア25が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器15は、ヒータコア25よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
【0053】
空調ケース31内には、室内蒸発器15通過後の送風空気を、ヒータコア25を迂回して流す冷風バイパス通路34が設けられている。空調ケース31内の室内蒸発器15の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア25の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア35が配置されている。
【0054】
エアミックスドア35は、室内蒸発器15通過後の送風空気のうち、ヒータコア25側を通過する送風空気の風量と冷風バイパス通路34を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア35は、エアミックスドア35用の不図示の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0055】
空調ケース31内の冷風バイパス通路34の送風空気流れ下流側には、混合空間36が配置されている。混合空間36は、ヒータコア25によって加熱された送風空気と冷風バイパス通路34を通過して加熱されていない送風空気とを混合させる空間である。
【0056】
さらに、空調ケース31の送風空気流れ下流部には、混合空間36で混合された送風空気(すなわち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
【0057】
この開口穴としては、いずれも不図示のフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0058】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたいずれも不図示のフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。各吹出口からは、混合空間36において目標吹出温度に近づくように調整された空調風が吹き出される。
【0059】
次に、
図1に戻って、吸熱側熱媒体回路40について説明する。吸熱側熱媒体回路40は、外気から吸収する熱を利用して車室内を暖房する運転モード時に、外気からの吸熱で熱媒体を加熱するとともに、加熱した熱媒体をチラー16に導くものである。
【0060】
吸熱側熱媒体回路40は、熱媒体が循環する吸熱側熱媒体通路41を有している。そして、吸熱側熱媒体通路41には、吸熱側ラジエータ42、吸熱側三方継手43、電気機器用通路44が配置されている。吸熱側熱媒体通路41は、熱媒体流れ最上流部が温調装置50の後述する温調側五方弁56に接続されており、熱媒体流れ最下流部が温調装置50の後述する第2温調側三方継手54に接続されている。
【0061】
吸熱側ラジエータ42は、温調側五方弁56から流出した熱媒体と不図示の外気ファンから送風された外気とを熱交換させる吸熱側外気熱交換部である。吸熱側ラジエータ42は、駆動装置室内の前方側であって、空調側ラジエータ24の外気流れ下流側に配置されている。
【0062】
したがって、吸熱側ラジエータ42は、空調側ラジエータ24通過後の外気と熱媒体とを熱交換させる。吸熱側ラジエータ42は、空調側ラジエータ24と一体的に形成されていてもよい。吸熱側ラジエータ42の熱媒体出口には、吸熱側三方継手43が接続されている。
【0063】
吸熱側三方継手43は、1つの流入口および2つの流出口を有し、1つの流入口から流入した冷媒を2つの流出口のいずれにも流出可能に構成された三方継手部である。吸熱側三方継手43は、流入口に吸熱側ラジエータ42の熱媒体出口が接続されている。また、吸熱側三方継手43は、一方の流出口に第2温調側三方継手54が接続され、他方の流出口に電気機器用通路44が接続されている。吸熱側三方継手43は、吸熱側ラジエータ42から流入する熱媒体を第2温調側三方継手54および電気機器用通路44へ導く。
【0064】
電気機器用通路44は、吸熱側三方継手43と温調側五方弁56との間に配置されており、吸熱側ラジエータ42の熱媒体出口側から流出した冷媒を、吸熱側ラジエータ42の熱媒体入口側へ戻す熱媒体通路である。電気機器用通路44には、機器用三方継手44a、機器用ポンプ44b、モータジェネレータ61のMG水通路61a、トランスアクスル装置62のT/A水通路62a、パワーコントールユニット63のPCU水通路63a等が配置されている。以下、モータジェネレータ61をMG61、トランスアクスル装置62をT/A62、パワーコントールユニット63をPCU63とも呼ぶ。
【0065】
機器用三方継手44aは、2つの流入口および1つの流出口を有し、2つの流入口それぞれから流入した熱媒体を流出口へ流出させる三方継手部である。機器用三方継手44aは、一方の流入口に吸熱側三方継手43の他方側の流出口が接続され、他方の流入口に後述するバイパス通路44cが接続されている。また、機器用三方継手44aは、いつの流出口にMG61のMG水通路61aが接続されている。機器用三方継手44aは、吸熱側三方継手43およびバイパス通路44cから流入する熱媒体をPCU63のPCU水通路63aへ導く。
【0066】
PCU63は、バッテリ60に接続された複数の電気機器の1つである。PCU63は、モータを駆動するインバータ、バッテリ60から供給する電圧を調整する昇圧コンバータ、高電圧を低電圧に降圧するDCDCコンバータ、これらの機器を収容するハウジング部等で構成されている。
【0067】
PCU63は、車両が走行する際に、バッテリ60から出力された直流電力を交流電力に変換してMG61へ供給するする。また、PCU63は、車両が減速する際に、MG61が発生させた交流電力を直流電力に変換してバッテリ60側へ出力することもできる。PCU63は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0068】
PCU63は、作動時に発熱する。PCU63は、高温になると電気回路の劣化が進行しやすい。このため、PCU63の温度は、電気回路の保護が可能な基準耐熱温度(本実施形態では、130℃以下)より低い温度に維持されていることが望ましい。
【0069】
そこで、本実施形態では、ハウジング部に熱媒体を流通させるPCU水通路63aが形成されている。PCU63のPCU水通路63aは、熱媒体とPCU63とを熱交換させるパワーコントールユニット用熱交換部である。
【0070】
PCU63は、PCU63の温度より低い温度の熱媒体がPCU水通路63aを流れると、当該熱媒体と熱交換することで熱媒体に吸熱されて冷却される。また、PCU63は、PCU63の温度より高い温度の熱媒体がPCU水通路63aを流れると、当該熱媒体と熱交換することで熱媒体から吸熱して加熱される。PCU63のPCU水通路63aの出口には、MG61のMG水通路61aの入口側が接続されている。
【0071】
MG61は、バッテリ60に間接的に接続された複数の電気機器の1つである。MG61は、PCU63から供給された電力によって走行用の駆動力を出力する走行用電動モータである。さらに、MG61は、車両の減速中や降坂走行時に回生電力を発生させる発電装置である。
【0072】
MG61は、作動時に発熱する。MG61は、高温になると電気回路の劣化が進行しやすい。さらに、MG61は、低温になると摺動抵抗が増して円滑な回転駆動力を出力しにくくなる。このため、MG61の温度は、電気回路の保護と円滑な回転駆動力の出力を行うことのできる適切な温度範囲内(本実施形態では、80℃以上、かつ、130℃以下)に維持されていることが望ましい。
【0073】
そこで、本実施形態では、MG61の外殻を形成するハウジング部に熱媒体を流通させるMG水通路61aが形成されている。MG水通路61aは、MG水通路61aを流れる熱媒体とMG61とを熱交換させるモータジェネレータ用熱交換部である。
【0074】
MG61は、MG61の温度より低い温度の熱媒体がMG水通路61aを流れると、当該熱媒体と熱交換することで熱媒体に吸熱されて冷却される。また、MG61は、MG61の温度より高い温度の熱媒体がMG水通路61aを流れると、当該熱媒体と熱交換することで熱媒体から吸熱して加熱される。
【0075】
ところで、MG61は、構成機器が主に金属部材で構成されているため、熱媒体と熱交換することで供給される熱をハウジング部の内部に蓄え易い。このため、MG61は、熱媒体と熱交換して加熱されると、熱交換することで当該熱媒体から供給される熱を蓄えることができる。MG61のMG水通路61aの出口には、T/A62のT/A水通路62aの入口側が接続されている。
【0076】
T/A62は、バッテリ60に間接的に接続された複数の電気機器の1つである。T/A62は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギアを一体化した装置であって、MG61に接続されている。
【0077】
T/A62は、作動時に発熱する。T/A62は、高温になると電気回路の劣化が進行しやすい。さらに、T/A62は、低温になるとT/A62を潤滑するための潤滑油が循環し難くなる。このため、T/A62の温度は、電気回路の保護と円滑なオイル循環を行うことのできる適切な温度範囲内(例えば、-10℃以上、かつ、60℃以下)に維持されていることが望ましい。
【0078】
そこで、本実施形態では、T/A62の外殻を形成するハウジング部に熱媒体を流通させるT/A水通路62aが形成されている。T/A水通路62aは、T/A水通路62aを流れる熱媒体とT/A62とを熱交換させるトランスアクスル装置用熱交換部である。本実施形態において、T/A水通路62aは、T/A62を冷却するための熱媒体が流れる冷却用熱媒体通路として機能する。
【0079】
T/A62は、T/A62の温度より低い温度の熱媒体がT/A水通路62aを流れると、当該熱媒体と熱交換することで熱媒体に吸熱されて冷却される。また、T/A62は、T/A62の温度より高い温度の熱媒体がT/A水通路62aを流れると、当該熱媒体と熱交換することで熱媒体から吸熱して加熱される。
【0080】
ところで、T/A62は、構成機器が主に金属部材で構成されているため、熱媒体と熱交換することで供給される熱をハウジング部の内部に蓄え易い。このため、T/A62は、熱媒体と熱交換して加熱されると、熱交換することで当該熱媒体から供給される熱を蓄えることができる。T/A62のT/A水通路62aの出口には、機器用ポンプ44bの吸入口側が接続されている。
【0081】
機器用ポンプ44bは、T/A62から流出した熱媒体をPCU63のPCU水通路63aへ圧送する水ポンプである。機器用ポンプ44bは、基本的構成が空調側ポンプ22と同様であるため、詳細な説明を省略する。機器用ポンプ44bの熱媒体吐出側は、温調側五方弁56を介してバイパス通路44cに接続されている。吸熱側熱媒体回路40は、機器用ポンプ44bから吐出された熱媒体が温調側五方弁56を介して、バイパス通路44cへ流入可能に構成されている。
【0082】
バイパス通路44cは、機器用ポンプ44bから吐出された熱媒体を、吸熱側ラジエータ42を通過させることなくPCU63のPCU水通路63aに導くための熱媒体通路である。バイパス通路44cは、熱媒体流れ上流側が温調装置50の温調側五方弁56に接続されており、熱媒体流れ下流側が機器用三方継手44aの他方の流入口に接続されている。
【0083】
次に、温調装置50について説明する。温調装置50は、バッテリ60の冷却を行う運転モード時に、冷凍サイクル装置10によって冷却された熱媒体をバッテリ60に循環させてバッテリ60を冷却するものである。また、温調装置50は、バッテリ60に蓄えた熱を利用して車室内の暖房を行う運転モード時に、バッテリ60に蓄えた熱で加熱した熱媒体をチラー16のチラー水通路16bに循環させてチラー16のチラー冷媒通路16aを流れる冷媒を加熱するものである。
【0084】
さらに、温調装置50は、バッテリ60に蓄えた熱を用いて車室内の暖房を行う運転モードを実行する前に、熱媒体を空調側熱媒体回路20に循環させることで、バッテリ60の蓄熱を助長させるものである。温調装置50は、電気ヒータ28によって加熱された熱媒体をバッテリ60に循環させることで、バッテリ60を加熱可能に構成されている。
【0085】
温調装置50は、熱媒体が循環する温調側熱媒体通路51を有しており、バッテリ60の冷却を行う運転モード用の熱媒体回路と、車室内の暖房を行う運転モード用の熱媒体回路に切替可能に構成されている。
【0086】
温調側熱媒体通路51は、空調側熱媒体回路20に接続されている。そして、温調側熱媒体通路51には、チラー16のチラー水通路16b、温調側ポンプ52、バッテリ60のバッテリ水通路60a、第1温調側三方継手53、第2温調側三方継手54、第3温調側三方継手55等が配置されている。また、温調側熱媒体通路51には、温調装置50の熱媒体回路を切り替える温調側五方弁56が配置されている。
【0087】
温調側熱媒体通路51は、バッテリ60の冷却または車室内の暖房を行う運転モード時に熱媒体が流れる冷暖房用通路51aと、バッテリ60に蓄熱させる運転モード時に熱媒体が流れる蓄熱用通路51bとを有する。
【0088】
冷暖房用通路51aは、バッテリ水通路60aの出口側から流出する熱媒体をチラー水通路16bの入口側に導くとともに、チラー水通路16bの出口側から流出する熱媒体をバッテリ水通路60aの入口側へ導く熱媒体通路である。冷暖房用通路51aは、熱媒体流れ上流側がバッテリ水通路60aの出口側に接続されており、熱媒体流れ下流側がチラー水通路16bを介してバッテリ水通路60aの入口側に接続されている。
【0089】
また、冷暖房用通路51aは、
図2に示すように、断熱性を有する通路断熱部材51aaによって断熱構造を有している。具体的に、冷暖房用通路51aは、熱媒体流れ最上流部から最下流部に至る部位において、熱媒体通路を構成する材料(例えば、銅合金)よりも熱伝導率の小さい材料(例えば、樹脂)で構成された通路断熱部材51aaに覆われている。これにより、冷暖房用通路51aの内部と外部とが通路断熱部材51aaによって断熱されている。
【0090】
冷暖房用通路51aには、バッテリ水通路60aとチラー水通路16bとの間に、第1温調側三方継手53、第2温調側三方継手54、温調側ポンプ52が熱媒体流れに対してこの順で設けられている。そして、冷暖房用通路51aには、チラー水通路16bとバッテリ水通路60aとの間に、温調側五方弁56および第3温調側三方継手55が熱媒体流れに対してこの順で設けられている。
【0091】
さらに、冷暖房用通路51aは、第1温調側三方継手53において、蓄熱用通路51bの熱媒体流れ最上流部が接続されており、第3温調側三方継手55において、蓄熱用通路51bの熱媒体流れ最下流部が接続されている。そして、冷暖房用通路51aは、温調側五方弁56において、吸熱側熱媒体通路41の熱媒体流れ最上流部が接続されており、第2温調側三方継手54において、吸熱側熱媒体通路41の熱媒体流れ最下流部が接続されている。
【0092】
蓄熱用通路51bは、バッテリ60に蓄熱させる際に、熱媒体を空調側熱媒体回路20へ導くための熱媒体通路である。蓄熱用通路51bは、バッテリ水通路60aから流出した熱媒体を空調側熱媒体回路20へ導く上流側蓄熱用通路51baと、空調側熱媒体回路20から流出した熱媒体をバッテリ水通路60aへ導く下流側蓄熱用通路51bbとで構成されている。
【0093】
上流側蓄熱用通路51baは、熱媒体流れ上流側が第1温調側三方継手53に接続されており、熱媒体流れ下流側が第2空調三方継手27の温調側流入口27bへ接続されている。下流側蓄熱用通路51bbは、熱媒体流れ上流側が流量調整弁23の温調側流出口23dに接続されており、熱媒体流れ下流側が第3温調側三方継手55に接続されている。
【0094】
温調側ポンプ52は、熱媒体をチラー水通路16bの入口側へ圧送する水ポンプである。温調側ポンプ52は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。温調側ポンプ52は、制御装置70から出力される制御電圧の変化に応じて、冷暖房用通路51aを流れる熱媒体の流速を変化させて、チラー水通路16bの入口側へ流入させる熱媒体の流量を調整する。
【0095】
具体的に、温調側ポンプ52は、回転数が速くなるほど冷暖房用通路51aを流れる熱媒体の流速を増加させて、チラー水通路16bの入口側へ流入させる熱媒体の単位時間当たりの流量を増加させることができる。これに対して、温調側ポンプ52は、回転数が遅くなるほど冷暖房用通路51aを流れる熱媒体の流速を減少させて、チラー水通路16bの入口側へ流入させる熱媒体の単位時間当たりの流量を減少させることができる。
【0096】
温調側ポンプ52の熱媒体吐出側には、チラー水通路16bの入口側が接続されている。チラー水通路16bの出口には、温調側五方弁56が接続されている。本実施形態における温調側ポンプ52は、熱媒体が温調装置50の熱媒体回路を循環するための駆動力を出力する駆動部として機能する。
【0097】
第1温調側三方継手53は、1つの流入口および2つの流出口を有し、1つの流入口から流入した熱媒体を2つの流出口のいずれにも流出可能に構成された三方継手部である。具体的に、第1温調側三方継手53は、バッテリ水通路60aに接続されるバッテリ側流入口53aを有する。また、第1温調側三方継手53は、バッテリ水通路60aから流出した熱媒体を第2温調側三方継手54を介して温調側ポンプ52へ導く冷暖房用流出口53bと、バッテリ水通路60aから流出した熱媒体を蓄熱用通路51bへ導く蓄熱用流出口53cとを有する。
【0098】
第2温調側三方継手54は、2つの流入口および1つの流出口を有し、2つの流入口から流入した熱媒体を1つの流出口へ流出させる三方継手部である。
【0099】
第2温調側三方継手54は、一方の流入口に第1温調側三方継手53の冷暖房用流出口53bが接続されており、他方の流入口に吸熱側熱媒体通路41の熱媒体流れ最下流部が接続されており、流出口に温調側ポンプ52の吸入口が接続されている。第2温調側三方継手54は、第1温調側三方継手53および吸熱側熱媒体通路41から流入する熱媒体を温調側ポンプ52へ導く。
【0100】
第3温調側三方継手55は、基本的構成が第2温調側三方継手54と同様であって、2つの流入口および1つの流出口を有し、2つの流入口から流入した熱媒体を1つの流出口へ流出させる三方継手部である。第3温調側三方継手55は、一方の流入口に温調側五方弁56が接続されており、他方の流入口に蓄熱用通路51bの熱媒体流れ最下流部が接続されており、流出口にバッテリ水通路60aが接続されている。第3温調側三方継手55は、温調側五方弁56および蓄熱用通路51bから流入する熱媒体をバッテリ水通路60aへ導く。
【0101】
温調側五方弁56は、2つの流入口および3つの流出口を有し、2つの流入口それぞれから流入する熱媒体を、車両用空調装置1の各運転モードに対応する流出口に導く熱媒体回路切替部である。具体的に、温調側五方弁56は、チラー水通路16bの出口側に接続されるチラー側流入口56aと、電気機器用通路44の熱媒体流れ下流側に接続される電気機器側流入口56bとを有する。また、温調側五方弁56は、バッテリ水通路60aの入口側に接続されるバッテリ側流出口56cと、吸熱側ラジエータ42の熱媒体入口側に接続される吸熱ラジエータ側流出口56dと、バイパス通路44cの熱媒体流れ上流側に接続される電気機器側流出口56eとを有する。
【0102】
温調側五方弁56は、回転位置を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の弁装置である。温調側五方弁56は、弁体の回転位置が調整されることで、バッテリ側流出口56c、吸熱ラジエータ側流出口56d、電気機器側流出口56eのうち、チラー側流入口56aおよび電気機器側流入口56bそれぞれに連通する流出口が変更される。
【0103】
具体的に、温調側五方弁56は、弁体の回転位置が調整されることで、チラー側流入口56aが、バッテリ側流出口56cおよび吸熱ラジエータ側流出口56dのどちら一方の流出口に連通される。また、温調側五方弁56は、チラー側流入口56aに連通する流出口を切り替える作動に並行して、電気機器側流入口56bと電気機器側流出口56eとを連通状態または非連通状態に切り替えることができる。
【0104】
さらに、温調側五方弁56は、弁体の回転位置が調整されることで、チラー側流入口56aが吸熱ラジエータ側流出口56dに連通した状態で、電気機器側流入口56bと吸熱ラジエータ側流出口56dとを連通状態または非連通状態に切り替えることができる。温調側五方弁56は、チラー側流入口56aおよび電気機器側流入口56bから流入した熱媒体を、それぞれが連通する流出口から流出させることができる。
【0105】
なお、温調側五方弁56は、熱媒体を逆流させることができない構成となっている。すなわち、温調側五方弁56は、バッテリ側流出口56c、吸熱ラジエータ側流出口56d、電気機器側流出口56eのいずれの流出口から熱媒体を流入させてチラー側流入口56aおよび電気機器側流入口56bから流出させることができない。
【0106】
また、温調側五方弁56は、弁体の回転位置が調整されることで、チラー側流入口56aおよび電気機器側流入口56bを全閉状態にすることで熱媒体通路を閉塞することができる。温調側五方弁56は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70から出力される制御信号によって、弁体の回転位置が制御される。
【0107】
このように構成される温調装置50では、温調側五方弁56によって、熱媒体が循環する熱媒体回路が切り替えられる。具体的に、温調装置50は、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとが連通すると、熱媒体がバッテリ60のバッテリ水通路60aを循環する構成となる。また、温調装置50は、温調側五方弁56のチラー側流入口56aと吸熱ラジエータ側流出口56dとが連通すると、熱媒体が吸熱側熱媒体回路40の吸熱側ラジエータ42を介して循環する構成となる。
【0108】
次に、
図4を用いて、本実施形態の制御装置70の概要について説明する。制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、制御装置70は、ROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器等の作動を制御する。なお、制御装置70のROMおよびRAMは、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
【0109】
また、制御装置70の入力側には、
図4に示すように、車両用空調装置1の作動を制御するためのセンサ群72が接続されている。当該センサ群72には、バッテリ温度検出部72a、バッテリ電圧検出部72b、充電プラグ接続検出部72c、外気温検出部72d等が含まれる。また、当該センサ群72には、車室内温度を検出する内気温検出部72e、車室内へ照射される日射量を検出する日射量検出部72f等が含まれる。制御装置70には、これらのセンサ群72の検出信号が入力される。
【0110】
バッテリ温度検出部72aは、バッテリ60の温度であるバッテリ温度Tbを検出する温度センサである。本実施形態のバッテリ温度検出部72aは、複数の温度センサを有し、電池セル60bそれぞれの箇所の温度を検出することによって、複数の温度センサの検出値の平均値をバッテリ温度Tbとして採用している。
【0111】
バッテリ電圧検出部72bは、バッテリ60の開放電圧を検出する電圧センサである。バッテリ電圧検出部72bは、検出した開放電圧に基づいて、バッテリ60の電池残量を推定する。
【0112】
充電プラグ接続検出部72cは、充電器80が充電プラグを介して外部電源81に電気的に接続されているか否かを検出するセンサである。充電プラグ接続検出部72cは、充電器80に充電プラグが接続されると、充電器80が充電プラグに接続された状態を示す検出信号を制御装置70に送信する。
【0113】
外気温検出部72dは、車室外の温度である外気温Tcirを検出する温度センサである。内気温検出部72eは、車室内温度を検出する温度センサである。日射量検出部72fは、車室内へ照射される日射量を検出する日射量センサである。
【0114】
さらに、制御装置70の入力側には、
図4に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル71が接続され、この操作パネル71に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0115】
操作パネル71に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動開始あるいは作動停止を設定する電源スイッチ、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチがある。また、各種操作スイッチとしては、車両用空調装置1の運転モードを選択するモード選択スイッチ、送風機33の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度を設定する温度設定スイッチ等がある。
【0116】
さらに、各種操作スイッチとしては、車両用空調装置1が作動を停止した状態から次に車両用空調装置1の作動を開始させる予定時刻を設定する空調予定設定スイッチ等がある。制御装置70は、空調予定設定スイッチによって制御装置70に入力された信号に基づいて、車両用空調装置1が最後に作動を停止した状態から次に車両用空調装置1の作動を開始する起動タイミングに関する起動タイミング情報を検出する。
【0117】
なお、空調予定設定スイッチによって車両用空調装置1の作動開始予定時刻が入力された場合において、当該作動開始予定時刻に至ったとしても、車両用空調装置1は、作動を自動で開始しない。車両用空調装置1は、作動開始予定時刻が入力された場合であっても、電源スイッチによって作動開始が設定され、または車両用空調装置1の自動制御運転が設定されることによって作動を開始することができる。
【0118】
また、制御装置70の出力側には、
図4に示すように、圧縮機12、空調側ポンプ22、温調側ポンプ52、機器用ポンプ44b、送風機33、PCU63、充電器80等が接続されている。また、制御装置70の出力側には、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b、流量調整弁23、温調側五方弁56、エアミックスドア35を動作させる各種電動アクチュエータ等が接続されている。本実施形態の制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器等の作動を制御する。また、制御装置70には、バッテリ60から出力された電力がPCU63を介して供給される。本実施形態における制御装置70は、駆動部として機能する温調側ポンプ52が出力する駆動力を制御する熱交換促進部としても機能する。
【0119】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1は、車室内の冷房および暖房を行うだけでなく、バッテリ60を冷却する機能を有している。このため、車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10の冷媒回路、空調側熱媒体回路20の熱媒体回路、吸熱側熱媒体回路40の熱媒体回路、温調装置50の熱媒体回路それぞれを切り替えて、以下に示す運転モードでの運転を行うことができる。
【0120】
これらの運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、乗員の操作によって操作パネル71のオートスイッチが投入された際に制御装置70によって実行される。また、空調を行う運転モードにおいて、制御装置70は、各吹出口から吹き出される空調風の温度が目標吹出温度に近づくように、圧縮機12、空調側ポンプ22、送風機33、エアミックスドア35を動作させる電動アクチュエータの作動を制御する。
【0121】
制御装置70は、各運転モードにおける目標吹出温度をセンサ群72の検出信号に基づいて、以下の数式1によって算出する。
【0122】
(数1)
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tcir-Ks×Ts+C
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度である。Trは内気温検出部72eによって検出される車室内の温度である。Tcirは外気温検出部72dによって検出される車室外の温度である。Tsは日射量検出部72fによって検出される日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0123】
本実施形態では、外気温Tcirを検出する外気温検出部72dが、室内空調ユニット30が吹き出す空調風の目標吹出温度に関する温度を検出する温度検出部として機能する。
【0124】
(1)冷房モード
冷房モードは、バッテリ60の冷却を行うことなく車室内の冷房を行う運転モードであって、車室内の空調を行う空調モードの1つである。
【0125】
冷房モードにおいて、制御装置70は、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを全閉状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aと空調ラジエータ側流出口23bとを連通させる。
【0126】
したがって、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第1膨張弁14a→室内蒸発器15→圧縮機12の順に冷媒が循環する。また、冷房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22→流量調整弁23→空調側ラジエータ24→第1空調三方継手26→水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が循環する。なお、冷房モードでは、吸熱側熱媒体回路40および温調装置50において熱媒体が循環しない。
【0127】
このように冷媒が流れる冷房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として熱媒体を加熱し、第1膨張弁14aが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器15が送風機33から送風された送風空気から吸熱して冷媒を蒸発させて送風空気を冷却する。
【0128】
また、このように熱媒体が流れる冷房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ラジエータ24が水-冷媒熱交換器13で加熱された熱媒体を放熱する。
【0129】
したがって、冷房モードの車両用空調装置1は、室内蒸発器15にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことにより、車室内の冷房を行うことができる。
【0130】
(2)暖房モード
暖房モードは、バッテリ60の冷却を行うことなく、車室内の暖房を行う運転モードであって、車室内の空調を行う空調モードの1つである。
【0131】
暖房モードにおいて、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aとヒータコア側流出口23cとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aと吸熱ラジエータ側流出口56dとを連通させる。
【0132】
そして、制御装置70は、温調側ポンプ52が作動するための制御信号を出力する。具体的に、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が一定となるように温調側ポンプ52を制御する。本実施形態では、制御装置70は、暖房モードにおける温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が10L/minとなるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。
【0133】
また、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体によってヒータコア25を通過する空気を充分に加熱できない場合、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。以下の説明において、制御装置70が電気ヒータ28を作動させる場合についてのみ説明するが、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体の温度等に応じて電気ヒータ28の作動オンまたは作動オフを切替可能である。
【0134】
したがって、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第2膨張弁14b→チラー16のチラー冷媒通路16a→圧縮機12の順に冷媒が循環する。また、暖房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22→流量調整弁23→ヒータコア25→第1空調三方継手26→水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が循環する。
【0135】
そして、暖房モードの吸熱側熱媒体回路40および温調装置50では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→温調側五方弁56→吸熱側ラジエータ42→吸熱側三方継手43→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0136】
このように冷媒が流れる暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として熱媒体を加熱し、第2膨張弁14bが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。
【0137】
また、このように熱媒体が流れる暖房モードの空調側熱媒体回路20では、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体がヒータコア25において送風機33から送風された送風空気と熱交換して、送風空気を加熱する。
【0138】
そして、このように熱媒体が流れる暖房モードの吸熱側熱媒体回路40および温調装置50では、吸熱側ラジエータ42において外気から吸熱することで加熱された熱媒体がチラー16において冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。
【0139】
したがって、暖房モードの車両用空調装置1は、ヒータコア25にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことにより、車室内の暖房を行うことができる。
【0140】
(3)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、バッテリ60の冷却を行うことなく車室内の除湿暖房を行う運転モードであって、車室内の空調を行う空調モードの1つである。
【0141】
除湿暖房モードにおいて、制御装置70は、第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aを空調ラジエータ側流出口23bおよびヒータコア側流出口23cと連通させる。さらに、制御装置70は、温調側五方弁56のチラー側流入口56aと吸熱ラジエータ側流出口56dとを連通させる。
【0142】
そして、制御装置70は、暖房モードと同様に、温調側ポンプ52、電気ヒータ28それぞれが作動するための制御信号を出力する。すなわち、制御装置70は、除湿暖房モードにおける温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が10L/minとなるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。
【0143】
したがって、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第1膨張弁14a→室内蒸発器15→圧縮機12の順に冷媒が循環する。さらに、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第2膨張弁14b→チラー16のチラー冷媒通路16a→圧縮機12の順にも冷媒が循環する。
【0144】
また、除湿暖房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22が流出した熱媒体が流量調整弁23に流れて分岐する。流量調整弁23で分岐した一方の冷媒は、空調側ラジエータ24を経由して第1空調三方継手26に流れる。また、流量調整弁23で分岐した他方の冷媒は、ヒータコア25を経由して第1空調三方継手26に流れる。そして、空調側ラジエータ24およびヒータコア25それぞれから流出した熱媒体が第1空調三方継手26で合流し、水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が流れる。
【0145】
そして、除湿暖房モードの吸熱側熱媒体回路40および温調装置50では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→温調側五方弁56→吸熱側ラジエータ42→吸熱側三方継手43→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0146】
このように冷媒が流れる除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として熱媒体を加熱し、第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10は、室内蒸発器15において送風機33から送風された送風空気から吸熱して冷媒を蒸発させて送風空気を冷却および除湿する。
【0147】
また、このように熱媒体が流れる除湿暖房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ラジエータ24が水-冷媒熱交換器13で加熱された熱媒体を放熱する。さらに、除湿暖房モードの空調側熱媒体回路20では、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体がヒータコア25において、室内蒸発器15において冷却および除湿された送風空気と熱交換して、送風空気を再加熱する。
【0148】
そして、このように熱媒体が流れる暖房モードの吸熱側熱媒体回路40および温調装置50では、吸熱側ラジエータ42において外気から吸熱することで加熱された熱媒体がチラー16において冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。
【0149】
したがって、除湿暖房モードの車両用空調装置1は、室内蒸発器15にて冷却および除湿され、ヒータコア25にて再加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことにより、車室内の除湿暖房を行うことができる。
【0150】
上記のように、車両用空調装置1は、各空調モードを実行することで、車室内の空調を行うことができる。
【0151】
(4)冷却モード
冷却モードは、車室内の冷房および暖房を行うことなく、バッテリ60の冷却を行う運転モードである。
【0152】
冷却モードにおいて、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aと空調ラジエータ側流出口23bとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。そして、制御装置70は、圧縮機12、空調側ポンプ22それぞれが作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が10L/minとなるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。
【0153】
したがって、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第2膨張弁14b→チラー16→圧縮機12の順に冷媒が循環する。
【0154】
また、冷却モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22→流量調整弁23→空調側ラジエータ24→第1空調三方継手26→水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が循環する。
【0155】
そして、冷却モードの温調装置50では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→第1温調側三方継手53→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0156】
このように冷媒が流れる冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器13が圧縮機12から吐出された冷媒を熱源として熱媒体を加熱し、第2膨張弁14bが水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒を減圧する。そして、冷凍サイクル装置10では、チラー16が温調装置50を循環する熱媒体から吸熱して冷媒を蒸発させて熱媒体を冷却する。
【0157】
また、このように熱媒体が流れる冷却モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ラジエータ24が水-冷媒熱交換器13で加熱された熱媒体を放熱する。そして、このように熱媒体が流れる冷却モードの温調装置50では、チラー16で冷却された熱媒体がバッテリ60のバッテリ水通路60aにおいてバッテリ60と熱交換する。
【0158】
したがって、冷却モードの車両用空調装置1は、チラー16で冷却された熱媒体を循環させて、バッテリ60の冷却を行うことができる。
【0159】
ところで、車両用空調装置1は、各空調モードにおいて、バッテリ60の冷却が必要となる運転条件では、それぞれの空調モードに冷却モードを組合せたモードを実行することができる。バッテリ60の冷却が必要となる運転条件とは、例えば、バッテリ60が作動して自己発熱することによって、バッテリ60の温度がバッテリ60の正常動作を行うための適切な温度より高くなった場合である。
【0160】
各空調モードを実行する際にバッテリ60の冷却が必要となる場合、制御装置70は、各空調モードを実行するための制御信号を各種構成機器に出力するのに加えて、冷却モードを実行するための制御信号を各種構成機器に出力する。
【0161】
また、車両用空調装置1は、各運転モードにおいて、バッテリ60に接続された電気機器であるMG61、T/A62、PCU63の冷却または加熱が必要となる運転条件では、電気機器用通路44に熱媒体を流すことができる。
【0162】
バッテリ60に接続されたこれらの電気機器の冷却が必要となる運転条件とは、例えば、MG61、T/A62、PCU63が作動して自己発熱することによって、これらの電気機器の温度が電気機器の正常動作を行うための適切な温度より高くなった場合である。また、これらの電気機器の加熱が必要となる運転条件とは、例えば、車両の作動開始直後等において、MG61、T/A62、PCU63が冷えた状態であって、これらの電気機器の温度が電気機器の正常動作を行うための適切な温度より低い場合である。
【0163】
制御装置70は、MG61、T/A62、PCU63の冷却が必要な場合、各運転モードを実行するための制御信号を構成機器に出力するに加えて、電気機器用通路44に熱媒体を流すための制御信号を温調側五方弁56および機器用ポンプ44bに出力する。具体的に、制御装置70は、温調側五方弁56の電気機器側流入口56bを吸熱ラジエータ側流出口56dと連通させるとともに、機器用ポンプ44bを作動させる。
【0164】
この場合、吸熱側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→温調側五方弁56→吸熱側ラジエータ42→吸熱側三方継手43→機器用三方継手44a→PCU水通路63a→MG水通路61a→T/A水通路62a→機器用ポンプ44bの順に熱媒体が循環する。
【0165】
これによれば、車両用空調装置1は、吸熱側熱媒体通路41を流れる熱媒体を空調側ラジエータ24によって放熱することができる。そして、MG水通路61a、T/A水通路62a、PCU水通路63aそれぞれにおいて空調側ラジエータ24で放熱された熱媒体と熱交換を行うことで、MG61、T/A62、PCU63を冷却することができる。
【0166】
また、制御装置70は、MG61、T/A62、PCU63の加熱が必要な場合、各運転モードを実行するための制御信号を構成機器に出力するに加えて、電気機器用通路44に熱媒体を流すための制御信号を温調側五方弁56および機器用ポンプ44bに出力する。具体的に、制御装置70は、温調側五方弁56の電気機器側流入口56bと電気機器側流出口56eとを連通させるとともに、機器用ポンプ44bを作動させる。
【0167】
この場合、吸熱側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→温調側五方弁56→バイパス通路44c→機器用三方継手44a→PCU水通路63a→MG水通路61a→T/A水通路62a→機器用ポンプ44bの順に熱媒体が循環する。
【0168】
これによれば、車両用空調装置1は、MG水通路61a、T/A水通路62a、PCU水通路63aそれぞれにおいて熱媒体と、作動によって自己発熱するMG61、T/A62、PCU63とを熱交換させることで、熱媒体を加熱することができる。そして、MG水通路61a、T/A水通路62a、PCU水通路63aを流れて加熱された熱媒体をバイパス通路44cを介して再びMG水通路61aの入口側に戻すことで加熱された熱媒体をMG61、T/A62、PCU63の加熱に用いることができる。なお、制御装置70は、MG61、T/A62、PCU63の冷却または加熱を行う場合、MG61、T/A62、PCU63の温度に応じて機器用ポンプ44bの圧送能力を変化させてもよい。
【0169】
このように、本実施形態の車両用空調装置1は、車室内の空調およびバッテリ60の冷却に加えて、バッテリ60に接続されたMG61、T/A62、PCU63の冷却および加熱を行うことができる。
【0170】
ところで、車両が長時間停車された状態等において、冷凍サイクル装置10のヒートポンプの性能が低下する場合がある。そして、冷凍サイクル装置10のヒートポンプの性能が低下した状態で車両用空調装置1が暖房モードまたは除湿暖房モードで動作する場合、ヒータコア25が送風空気を充分に加熱することができない虞がある。ヒートポンプの性能が低下した状態とは、冷媒が充分に加熱されていない状態である。この場合、送風空気を目標吹出温度まで加熱することができず、車室内を充分に暖房できない。
【0171】
このため、本実施形態における車両用空調装置1では、車両外部からバッテリ60が充電される際にバッテリ60に発生する熱をバッテリ60に蓄え、バッテリ60に蓄えた熱を利用して車室内を暖房することが可能となっている。
【0172】
具体的に、車両が作動を停止し、車両用空調装置1が動作していない状態にバッテリ60が車両外部から充電される際、車両用空調装置1は、充電モードを実行することでバッテリ60に蓄熱する。そして、車両用空調装置1は、車両が作動を開始した直後等、冷凍サイクル装置10のヒートポンプの性能が低下している場合に暖房モードまたは除湿暖房モードが実行させる際に、起動モードを実行することでバッテリ60に蓄えた熱を利用して車室内を暖房する。以下に、充電モードおよび起動モードの作動の詳細を説明する。
【0173】
充電モードでは、制御装置70が、
図5に示す充電モードの制御フローを実行する。まず、ステップS10において、制御装置70は、充電プラグ接続検出部72cから送信される検出信号に基づいて、充電器80が充電プラグに接続されているか否かを判定する。制御装置70は、充電プラグ接続検出部72cから充電器80が充電プラグに接続されている状態を示す検出信号が受信するまで、ステップS10の処理を繰り返す。そして、制御装置70は、充電プラグ接続検出部72cから充電器80が充電プラグに接続されている状態を示す検出信号が受信するとステップS20の処理を実行する。
【0174】
ステップS20において、制御装置70は、外気温検出部72dから送信される検出信号を読み込み、外気温Tcirを検出する。そして、ステップS30において、制御装置70は、バッテリ温度検出部72aから送信される検出信号を読み込み、バッテリ温度Tbを検出する。
【0175】
ステップS40において、制御装置70は、冷凍サイクル装置10のヒートポンプの性能が低下している虞があるか否かを判断する。具体的に、制御装置70は、外気温Tcirが低温閾値より高い場合、ヒートポンプの性能が低下していないと判定する。これに対して、制御装置70は、外気温Tcirが低温閾値以下の場合、ヒートポンプの性能が低下している虞があると判定する。
【0176】
低温閾値は、予め制御装置70に記憶される温度であって、冷凍サイクル装置10の冷媒の性能が低下する温度(例えば0℃)で設定される。なお、低温閾値は、0℃より低い温度(例えば-2℃)で設定されてもよいし、0℃より高い温度(例えば2℃)で設定されてもよい。
【0177】
外気温Tcirが低温閾値より高いと判定した場合、ステップS50において、制御装置70は、バッテリ60の目標温度を第1目標温度Tb1に決定する。第1目標温度Tb1は、予め制御装置70に記憶される温度であって、バッテリ60の充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内のうち、最適な温度であるバッテリ標準温度(例えば、35℃)で設定される。なお、第1目標温度Tb1は、バッテリ60の充放電容量を充分に活用可能な温度である15℃以上、かつ、55℃以下であれば、35℃より低い温度(例えば、25℃)で設定されてもよいし、35℃より高い温度(例えば、45℃)で設定されてもよい。
【0178】
ステップS60において、制御装置70は、バッテリ60を第1目標温度Tb1まで加熱するために必要な熱量である第1バッテリ加熱量Q1を算出する。第1バッテリ加熱量Q1は、バッテリ60をステップS30で検出したバッテリ温度Tbから第1目標温度Tb1まで加熱させるために必要な熱量である。
【0179】
また、外気温Tcirが低温閾値以下と判定した場合、ステップS70において、制御装置70は、バッテリ60の目標温度を、バッテリ60の充放電容量を充分に活用することができる適切な温度よりも高い第2目標温度Tb2に決定する。具体的に、第2目標温度Tb2は、予め制御装置70に記憶される温度であって、バッテリ60の充放電容量を充分に活用可能な温度範囲のうちの最大値である55℃より高い温度(例えば、65℃)で設定される。なお、第2目標温度Tb2は、55℃より高い温度であれば、65℃より低い温度(例えば、60℃)で設定されてもよいし、65℃より高い温度(例えば、70℃)で設定されてもよい。第2目標温度Tb2は、第1目標温度Tb1より高い温度である。
【0180】
ステップS80において、制御装置70は、バッテリ60を第2目標温度Tb2まで加熱するために必要な熱量である第2バッテリ加熱量Q2を算出する。第2バッテリ加熱量Q2は、バッテリ60をステップS30で検出したバッテリ温度Tbから第2目標温度Tb2まで加熱させるために必要な熱量である。また、第2目標温度Tb2が第1目標温度Tb1より高い温度であるため、第2バッテリ加熱量Q2は、第1バッテリ加熱量Q1より大きい。
【0181】
ステップS90において、制御装置70は、乗員の空調予定設定スイッチの操作によって起動タイミング情報が入力されているか否かを判定する。制御装置70は、ステップS90において、起動タイミング情報が入力されていると判定しない場合、ステップS100の処理に進み、起動タイミング情報が入力されていると判定した場合、起動タイミング情報を取得し、ステップS160の処理に進む。
【0182】
ステップS100において、制御装置70は、バッテリ60の加熱を開始する。具体的に、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aと温調側流出口23dとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。これにより、温調側五方弁56は、バッテリ側流出口56cから熱媒体が流入しない状態となる。
【0183】
そして、制御装置70は、空調側ポンプ22が作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、バッテリ60を充電させるための制御信号を充電器80に出力するとともに、電気ヒータ28に電力を供給させるための制御信号を充電器80に出力する。そして、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。なお、充電モードにおけるバッテリ60および電気ヒータ28の電力供給源は、充電器80に接続された外部電源81である。
【0184】
これにより、充電モードの温調装置50では、バッテリ60のバッテリ水通路60aが、冷暖房用通路51a、上流側蓄熱用通路51ba、空調側蓄熱通路21a、下流側蓄熱用通路51bbに連通する熱媒体回路が形成される。そして、このように形成される熱媒体回路では、
図6の矢印に示すように、空調側ポンプ22→流量調整弁23→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→第1温調側三方継手53→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に熱媒体が循環する。
【0185】
そして、このように熱媒体が流れる充電モードの温調装置50では、電気ヒータ28によって加熱された熱媒体がバッテリ水通路60aに流入する。このため、バッテリ60は、加熱された熱媒体と熱交換することで熱媒体から熱が供給されて加熱される。そして、バッテリ60は、充電器80から電力が供給されることによって充電されるとともに、充電によって自己発熱して、さらに加熱される。
【0186】
ステップS110において、制御装置70は、バッテリ電圧検出部72bから送信される検出信号に基づいてバッテリ60が満充電であるか否かを判定する。制御装置70は、バッテリ60が満充電状態になるまでステップS110を繰り返し、バッテリ60が満充電状態になると、ステップS120の処理へ進む。
【0187】
ステップS120において、制御装置70は、バッテリ温度TbがステップS50で決定した第1目標温度Tb1またはステップS70で決定した第2目標温度Tb2以上であるか否かを判定する。具体的に、目標温度が第1目標温度Tb1である場合、制御装置70は、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1になるまでステップS120を繰り返す。これに対して、目標温度が第2目標温度Tb2である場合、制御装置70は、バッテリ温度Tbが第2目標温度Tb2になるまでステップS120を繰り返す。制御装置70は、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2以上になったと判定した場合、ステップS130の処理へ進む。
【0188】
すなわち、制御装置70は、ステップS110およびステップS120において、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2以上になるまでバッテリ60の充電を維持する。これにより、充電モードにおいて、バッテリ60は、自己発熱によって得られる熱および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。
【0189】
バッテリ60への加熱量は、ステップS40において外気温Tcirが低温閾値より高いと判定された場合に比較して、外気温Tcirが低温閾値以下と判定された場合のほうが大きい。すなわち、バッテリ60への加熱量は、バッテリ60の目標温度が第1目標温度Tb1で決定された場合に比較して第2目標温度Tb2に決定された場合のほうが大きい。このため、ステップS100においてバッテリ60に蓄えられる熱量は、ステップS60において第1バッテリ加熱量Q1と算出される場合に比較してステップS80において第2バッテリ加熱量Q2と算出される場合の方が大きい。
【0190】
そして、ステップS110およびステップS120において、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが目標温度以上になるまで加熱されたと判定した場合、ステップS130において、制御装置70は、バッテリ60の充電、加熱を停止する。具体的に、ステップS130において、制御装置70は、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれへ作動を停止させるための制御信号を停止する。このように制御することで、バッテリ60が満充電状態になった際にバッテリ温度Tbがバッテリ60の作動に最適な温度以下の場合であっても、バッテリ温度Tbをバッテリ60の作動に最適な温度以上まで上昇させることができる。
【0191】
ステップS140およびステップS150において、制御装置70は、車両が作動を開始するまで、バッテリ60の温度を維持させる。具体的に、ステップS140において、制御装置70は、車両が動作を開始したかを判定する。そして、車両が動作を開始したと判定しない場合、ステップS150において、制御装置70は、バッテリ温度検出部72aから送信される検出信号に基づいて、バッテリ60の温度を第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2で維持させる。この場合、制御装置70は、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2に近づくように空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれを制御する。
【0192】
例えば、制御装置70は、第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2を基準に設定されたオフ判定温度Toffおよびオン判定温度Tonを用いて、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれを断続的に動作させる。制御装置70は、充電、加熱を停止後、バッテリ温度Tbがオン判定温度Tonまで低下すると、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれ動作させて、充電、加熱を再開する。また、制御装置70は、充電、加熱を再開後、バッテリ温度Tbがオフ判定温度Toffまで上昇すると、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれの作動を停止させる。
【0193】
制御装置70は、このように空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28の作動を制御することで、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2に近づくようにして、バッテリ温度Tbを維持する。
【0194】
第1目標温度Tb1を基準に設定されるオン判定温度Tonは、例えば、第1目標温度Tb1よりも低い温度に設定される。この場合、第1目標温度Tb1を基準に設定されるオフ判定温度Toffは、第1目標温度Tb1を基準に設定されるオン判定温度Tonに所定のヒステリシス幅(例えば、3℃)を加えた温度であって、第1目標温度Tb1よりも高い温度に設定される。ヒステリシス幅は、1℃や5℃など、3℃に比べて小さい値や大きい値であってもよい。
【0195】
第2目標温度Tb2を基準に設定されるオン判定温度Tonは、第1目標温度Tb1を基準に設定されるオン判定温度Tonと同様に設定されてもよい。また、第2目標温度Tb2を基準に設定されるオフ判定温度Toffは、第1目標温度Tb1を基準に設定されるオフ判定温度Toffと同様に設定されてもよい。
【0196】
また、第1目標温度Tb1および第2目標温度Tb2それぞれを基準に設定されるオン判定温度Tonとオフ判定温度Toffとのヒステリシス幅は、互いに異なる値が設定されてもよい。
【0197】
ステップS140およびステップS150において、制御装置70は、車両が作動を開始するまで空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれを断続的に動作させる。そして、ステップS140において車両が作動を開始したと判定すると、制御装置70は、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれの作動を停止させて起動モードを実行する。
【0198】
また、ステップS90において、起動タイミング情報が入力されていると判定した場合、ステップS160において、制御装置70は、電気ヒータ28によってバッテリ60を加熱する際のヒータ加熱量QHを算出する。
【0199】
ヒータ加熱量QHは、ステップS60で算出した第1バッテリ加熱量Q1またはステップS80で算出した第2バッテリ加熱量Q2に対して、バッテリ60の充電の際に発生する自己発熱によって得られる熱量との差を算出することで求められる。すなわち、ヒータ加熱量QHは、ステップS60またはステップS80で算出したバッテリ60の加熱量に対して、起動タイミングに至るまでバッテリ60を充電して得られる熱量では不足する熱量である。なお、起動タイミングに至るまでバッテリ60を充電することによってステップS60またはステップS80で算出したバッテリ60の加熱量を得られる場合、ヒータ加熱量QHの値は0で設定される。
【0200】
ステップS170において、制御装置70は、加熱開始タイミングを算出する。加熱開始タイミングは、車両用空調装置1の次の作動開始予定時刻に、バッテリ60を少なくともステップS50で決定した第1目標温度Tb1またはステップS70で決定した第2目標温度Tb2まで加熱させるために設定される加熱開始時刻である。すなわち、加熱開始タイミングは、起動タイミング情報が入力されている場合におけるバッテリ60への充電を開始する時刻である。
【0201】
加熱開始タイミングは、バッテリ60の目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合と、バッテリ60の目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合とにおいて、互いに異なる時間で設定される。
【0202】
具体的に、目標温度が第1目標温度Tb1である場合、制御装置70は、バッテリ60をバッテリ60の自己発熱および電気ヒータ28を用いて、ステップS30で検出したバッテリ温度Tbから第1目標温度Tb1まで加熱するために必要な時間を求める。また、目標温度が第2目標温度Tb2である場合、制御装置70は、バッテリ60をバッテリ60の自己発熱および電気ヒータ28を用いて、ステップS30で検出したバッテリ温度Tbから第2目標温度Tb2まで加熱するために必要な時間を求める。
【0203】
加熱開始タイミングは、車両用空調装置1の次の作動開始予定時刻から、バッテリ温度Tbを第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2まで加熱するために必要な時間だけ遡ることで得られる時刻で設定される。
【0204】
加熱開始タイミングは、ステップS160において算出したヒータ加熱量QHおよび予め定められる加熱開始タイミングを算出する制御マップに基づいて算出される。加熱開始タイミングを算出する制御マップは、バッテリ60の充電によって発生する単位時間当たりの熱量および電気ヒータ28が熱媒体へ供給可能な単位時間当たり熱量に基づいて定められている。
【0205】
ステップS180において、制御装置70は、ステップS170で算出した加熱開始タイミングに到達したか否かを判定する。制御装置70は、ステップS180で加熱開始タイミングに至るまでバッテリ60を加熱しない状態を維持し、加熱開始タイミングに至ると、ステップS190において、ステップS100と同様に、バッテリ60の加熱を開始する。
【0206】
具体的に、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aと温調側流出口23dとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。
【0207】
そして、制御装置70は、空調側ポンプ22が作動するための制御信号を出力するとともに、バッテリ60を充電させるための制御信号を充電器80に出力する。また、制御装置70は、ステップS160において、ヒータ加熱量QHの値が0より大きい値で算出された場合、電気ヒータ28に電力を供給させるための制御信号を充電器80に出力し、電気ヒータ28が作動するための制御信号を電気ヒータ28に出力する。
【0208】
これにより、ステップS100と同様に、バッテリ60は、充電器80から電力が供給されることによって充電されるとともに、充電によって自己発熱して加熱される。さらに、バッテリ60は、電気ヒータ28が動作する場合、電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から熱が供給されて加熱される。
【0209】
ステップS200およびステップS210において、制御装置70は、ステップS110およびステップS120と同様に、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが目標温度以上になるまでバッテリ60の充電を維持する。これにより、充電モードにおいて、バッテリ60は、自己発熱によって得られる熱および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。
【0210】
そして、ステップS200およびステップS210において、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが目標温度以上になるまで加熱されたと判定した場合、制御装置70は、バッテリ60の加熱を停止する。具体的に、制御装置70は、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれに作動を停止させるための制御信号を出力して充電モードを終了する。
【0211】
ところで、起動タイミング情報が入力されている場合、バッテリ60の加熱は、車両用空調装置1の作動開始予定時刻からバッテリ60を目標温度まで加熱するために必要な時間だけ遡ることで得られる時刻に開始される。このため、ステップS220においてバッテリ60の加熱が停止する時刻は、車両用空調装置1が最後に作動を停止した状態から次に車両用空調装置1の作動を開始する予定の時刻と略同じである。
【0212】
したがって、ステップS220においてバッテリ60の加熱が停止されてから車両用空調装置1の作動が開始されるまでの待機時間にバッテリ温度Tbが低下することを回避し易い。このため、起動タイミング情報が入力されている場合、ステップS140およびステップS150において実行される空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれの断続的動作が不要になる。
【0213】
続いて、起動モードについて説明する。起動モードは、作動停止状態の車両が次に作動を開始してから初めて車両用空調装置1の自動制御運転が設定された際に実行される。起動モードでは、制御装置70が、
図7に示す起動モードの制御フローを実行する。
【0214】
ステップS300において、制御装置70は、乗員の操作パネル71の操作によって、暖房要求がされているか否かを判定する。具体的に、制御装置70は、操作パネル71のモード選択スイッチの操作によって、車室内の暖房を行う運転モードを実行ための信号が入力されているか否かを判定する。制御装置70は、暖房要求がされるまでステップS300を繰り返し実行し、暖房要求がされたと判定した場合、ステップS310に進む。
【0215】
ステップS310において、制御装置70は、
図8に示す制御フローの処理を実行し、暖房要求大判定を行う。具体的に、ステップS400において、制御装置70は、外気温検出部72dから送信される検出信号を読み込み、外気温Tcirを検出する。そして、ステップS410において、制御装置70は、外気温Tcirが所定の閾値である暖房判定温度T0以下か否かを判定する。
【0216】
外気温Tcirが暖房判定温度T0以下であると判定した場合、ステップS420において、制御装置70は、制御装置70中の暖房要求大フラグをオンにする。これに対して、外気温Tcirが暖房判定温度T0以下であると判定されなかった場合、ステップS430において、制御装置70は、制御装置70中の暖房要求大フラグをオフにする。
【0217】
本実施形態の暖房判定温度T0は、予め制御装置70に記憶される温度であって、低温閾値と同様に、冷凍サイクル装置10の冷媒の性能が低下する温度(例えば0℃)で設定される。なお、暖房判定温度T0は、低温閾値より低い温度(例えば-2℃)で設定されてもよいし、低温閾値より高い温度(例えば2℃)で設定されてもよい。
【0218】
ステップS320において、制御装置70は、暖房要求大フラグがオンであるか否かを判定する。ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定されなかった場合、制御装置70は、ステップS330に進み、蓄熱暖房小モードを実行する。これに対して、ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定された場合、制御装置70は、ステップS350に進み、蓄熱暖房大モードを実行する。
【0219】
蓄熱暖房小モードにおいて、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aとヒータコア側流出口23cとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。
【0220】
そして、制御装置70は、圧縮機12および空調側ポンプ22それぞれが作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体によってヒータコア25を通過する空気を充分に加熱できない場合、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。なお、起動モードにおける電気ヒータ28の電力供給源は、バッテリ60である。
【0221】
また、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第1流量V1となるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。本実施形態において、第1流量V1は、暖房モードおよび除湿暖房モードにおける温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量と同じ流量であって、10L/minで設定されている。なお、第1流量V1は、8L/minや15L/minなど、暖房モードおよび除湿暖房モードにおける温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量に比べて小さい値や大きい値であってもよい。
【0222】
したがって、蓄熱暖房小モードの冷凍サイクル装置10では、
図9の矢印に示すように、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第2膨張弁14b→チラー16のチラー冷媒通路16a→圧縮機12の順に冷媒が循環する。また、蓄熱暖房小モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22→流量調整弁23→ヒータコア25→第1空調三方継手26→水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が循環する。
【0223】
そして、蓄熱暖房小モードの温調装置50では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→第1温調側三方継手53→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0224】
このように熱媒体が流れる蓄熱暖房小モードの温調装置50では、バッテリ水通路60aを流れる熱媒体が熱を蓄えたバッテリ60と熱交換することで加熱される。そして、バッテリ60に蓄えた熱によって加熱された熱媒体がチラー16において冷凍サイクル装置10を流れる冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。
【0225】
また、このように冷媒が流れる蓄熱暖房小モードの冷凍サイクル装置10では、熱媒体と熱交換して加熱された冷媒がチラー冷媒通路16aから流出し、圧縮機12によって圧縮および加熱されて水-冷媒熱交換器13に流入する。そして、水-冷媒熱交換器13に流入した冷媒は、水-冷媒熱交換器13において空調側熱媒体回路20を流れる熱媒体と熱交換して熱媒体を加熱する。また、水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒は、第2膨張弁14bによって減圧される。
【0226】
そして、このように熱媒体が流れる蓄熱暖房小モードの空調側熱媒体回路20では、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体がヒータコア25において送風機33から送風された送風空気と熱交換して、送風空気を加熱する。
【0227】
したがって、蓄熱暖房小モードの車両用空調装置1は、バッテリ60に蓄えた熱を利用して加熱した熱媒体を介してヒータコア25にて送風空気を加熱し、加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことにより、車室内の暖房を行うことができる。
【0228】
また、ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定された場合、ステップS350において、制御装置70は、蓄熱暖房大モードを実行する。蓄熱暖房大モードにおいて、制御装置70は、蓄熱暖房小モードと同様に、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aとヒータコア側流出口23cとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。
【0229】
そして、制御装置70は、圧縮機12および空調側ポンプ22それぞれが作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体によってヒータコア25を通過する空気を充分に加熱できない場合、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。
【0230】
また、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第2流量V2となるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。本実施形態において、第2流量V2は、第1流量V1より大きい値で設定される。具体的に、第2流量V2は、第1流量V1の2倍の大きさである20L/minで設定される。
【0231】
このように、本実施形態の車両用空調装置1は、外気温Tcirが暖房判定温度T0以下であると判定された場合、制御装置70は、外気温Tcirが暖房判定温度T0以下であると判定されなかった場合に比較して、温調側ポンプ52の圧送能力を大きくする。なお、第2流量V2は、第1流量V1より大きい値であれば、第1流量V1の1.5倍や3倍等、第1流量V1の2倍の大きさと異なる大きさであってもよい。
【0232】
したがって、蓄熱暖房大モードの冷凍サイクル装置10、空調側熱媒体回路20、温調装置50では、
図9の矢印に示すように、蓄熱暖房小モードと同様に熱媒体および冷媒が流れる。しかし、蓄熱暖房大モードでは、圧送能力が蓄熱暖房小モードを実行する際の圧送能力と異なっており、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が蓄熱暖房小モードに比較して大きくなっている。
【0233】
このため、蓄熱暖房大モードでは、バッテリ水通路60aに流入する熱媒体の単位時間当たりの流量が蓄熱暖房小モードにおけるバッテリ水通路60aに流入する熱媒体の単位時間当たりの流量より増加する。このように、蓄熱暖房大モードと蓄熱暖房小モードとで、温調側ポンプ52の圧送能力を変更させる理由について、以下に説明する。
【0234】
発明者らの鋭意検討によれば、バッテリ60と熱媒体とを熱交換する際の熱伝達係数が比較的小さい場合、起動モードにおいてバッテリ60に蓄えた熱を充分に熱媒体へ供給できない虞があることが分かった。バッテリ60に蓄えた熱を充分に熱媒体へ供給できない場合、充電モードにおいて、車室内を目標温度まで暖めるために必要な熱量をバッテリ60に蓄熱しても、熱媒体を介して冷凍サイクル装置10の冷媒の温度を暖房に必要な温度まで加熱することが難しい。
【0235】
このため、バッテリ60と熱媒体とを熱交換する際の熱伝達係数が比較的小さい場合であっても、バッテリ60に蓄えた熱を充分に熱媒体へ供給する方法が必要となる。これに対して、本実施形態の車両用空調装置1は、暖房要求大フラグのオン/オフに応じて、バッテリ水通路60aに流入する熱媒体の単位時間当たりの流量が増加するように、温調側ポンプ52の圧送能力を変化させる。これにより、バッテリ水通路60aにおいて、バッテリ60と熱媒体との熱交換が促進される。そして、バッテリ60と熱媒体との熱交換を促進することで、温調側ポンプ52の圧送能力を変化させない場合に比較して、バッテリ60に蓄えた熱を充分に熱媒体へ供給することができる。
【0236】
図10~
図12を参照して、温調側ポンプ52の圧送能力を変化させることによって促進される熱媒体と冷媒との熱交換についての説明を行う。
図10に示す第1熱交換モデル100は、本実施形態の温調装置50の一部を模擬したテストモデルである。そして、第1熱交換モデル100では、熱媒体である冷却水が循環する模擬熱媒体通路110に、温調側ポンプ52に対応する模擬ポンプ120と、バッテリ60に対応する模擬バッテリ130と、チラー16に対応する模擬チラー140とが設けられている。
【0237】
模擬バッテリ130は、バッテリ60と同様に、充電することによって模擬バッテリ130を第1目標温度Tb1および第2目標温度Tb2まで加熱させることで蓄熱可能に構成されている。模擬ポンプ120は、温調側ポンプ52と同様に、圧送能力が変更可能であって、第1流量V1および第2流量V2の冷却水を流出可能に構成されている。模擬チラー140は、冷却水が流れる不図示の冷却水通路と冷媒が流れる不図示の冷媒通路とを備え、冷却水通路を流れる冷却水と冷媒通路を流れる冷媒とを熱交換可能に構成されている。
【0238】
そして、第1熱交換モデル100では、模擬ポンプ120を動作させることによって、模擬熱媒体通路110で冷却水を模擬ポンプ120→模擬バッテリ130→模擬チラー140の順に循環させることができる。そして、第1熱交換モデル100では、温調装置50と同様に、模擬チラー140において、模擬バッテリ130に蓄えた熱で加熱した冷却水と冷媒とで熱交換させることで、模擬バッテリ130に蓄えた熱を外部へ出力することができる。
【0239】
模擬バッテリ130を第1目標温度Tb1まで昇温させた状態から模擬ポンプ120を動作させて冷却水を循環させた際の模擬バッテリ130および模擬チラー140を流れる冷却水の温度変化について
図11および
図12を参照して説明する。
【0240】
図11に示す破線は、模擬ポンプ120を第1流量V1の圧送能力で作動させた際の時間経過に伴う模擬バッテリ130の温度変化を表す。また、
図11に示す実線は、模擬ポンプ120を第1流量V1の圧送能力で作動させた際の時間経過に伴う模擬チラー140の冷却水通路の入口側に流入する冷却水の温度変化を表す。そして、
図11に示す一点鎖線は、模擬ポンプ120を第1流量V1の圧送能力で作動させた際の時間経過に伴う模擬チラー140の冷却水通路の出口側から流出する冷却水の温度変化を表す。
【0241】
これに対して、
図12に示す破線は、模擬ポンプ120を第2流量V2の圧送能力で作動させた際の時間経過に伴う模擬バッテリ130の温度変化を表す。また、
図12に示す実線は、模擬ポンプ120を第2流量V2の圧送能力で作動させた際の時間経過に伴う模擬チラー140の冷却水通路の入口側に流入する冷却水の温度変化を表す。そして、
図12に示す一点鎖線は、模擬ポンプ120を第2流量V2の圧送能力で作動させた際の時間経過に伴う模擬チラー140の冷却水通路の出口側から流出する冷却水の温度変化を表す。
【0242】
図11および
図12に示すように、模擬ポンプ120を第1流量V1の圧送能力で作動させる前および模擬ポンプ120を第2流量V2の圧送能力で作動させる前の模擬バッテリ130それぞれの温度は、第1目標温度Tb1であって、互いに等しい。そして、模擬ポンプ120が作動を開始すると、模擬バッテリ130と模擬熱媒体通路110を循環する冷却水とが熱交換することで、模擬バッテリ130に蓄えた熱が冷却水に供給される。このため、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1および第2流量V2のどちらの場合も、模擬バッテリ130の温度は、時間の経過に伴って低下していく。
【0243】
ただし、模擬バッテリ130の時間経過に対する温度変化の割合は、模擬ポンプ120を第2流量V2の圧送能力で作動させた方が第1流量V1の圧送能力で作動させた場合に比較して大きい。すなわち、模擬バッテリ130に蓄えた熱は、模擬ポンプ120を第1流量V1の圧送能力で作動させた場合に比較して第2流量V2の圧送能力で作動させた方が冷却水へ速く供給される。
【0244】
ここで、模擬ポンプ120を第1流量V1および第2流量V2の圧送能力で作動を開始させた場合の、模擬バッテリ130の温度が最も低い温度に至るまでの時間をそれぞれバッテリ最小温度時間Δt3、バッテリ最小温度時間Δt4とする。
図11および
図12に示すように、バッテリ最小温度時間Δt3は、バッテリ最小温度時間Δt4より短い。このように、模擬ポンプ120を第2流量V2の圧送能力で作動を開始させた場合、第1流量V1の圧送能力で作動させる場合に比較して、模擬バッテリ130に蓄えた熱を短い時間で冷却水に供給することができる。
【0245】
また、模擬ポンプ120を第1流量V1の圧送能力で作動させる前および模擬ポンプ120を第2流量V2の圧送能力で作動させる前の模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水と模擬チラー140の冷却水通路の出口側の冷却水との温度は、互いに略等しい。そして、模擬ポンプ120が作動を開始すると、模擬バッテリ130を通過する冷却水は、模擬バッテリ130と熱交換することで加熱される。
【0246】
これにより、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水が徐々に加熱される。このため、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1および第2流量V2のどちらの場合も、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度および模擬チラー140の冷却水出口側の冷却水の温度は、時間の経過に伴って上昇する。
【0247】
そして、模擬バッテリ130に蓄えた熱によって加熱された冷却水が模擬チラー140に流入し、模擬チラー140において冷却水と冷媒とが熱交換することで、模擬バッテリ130に蓄えた熱が冷却水を介して外部へ出力される。
【0248】
ところで、模擬ポンプ120が作動を開始した直後において、模擬バッテリ130の温度と模擬熱媒体通路110を循環する冷却水との温度差が比較的大きい場合、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量が大きくなり易い。これに対して、模擬ポンプ120が作動を開始した直後において、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水と冷媒との温度差が比較的小さい場合、冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力される単位時間当たりの熱量が小さくなり易い。そして、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量が冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力する熱量よりも大きい場合、冷却水の温度が上昇する。
【0249】
このため、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1および第2流量V2のどちらの流量の場合も、模擬ポンプ120が作動を開始後、時間の経過とともに、模擬バッテリ130の温度が低下する。これに対して、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水の温度は、模擬ポンプ120が作動を開始後、時間の経過とともに上昇する。
【0250】
そして、模擬バッテリ130の温度が低下し、これに対して、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水の温度が上昇するに伴い、模擬バッテリ130と冷却水との温度差が小さくなっていく。これにより、時間の経過に伴って、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量が減少する。
【0251】
すると、模擬ポンプ120が作動を開始後、ある程度の時間の経過時点において、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量と、冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力する熱量とが等しくなる。そして、模擬ポンプ120が作動を開始後、ある程度の時間が経過すると、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力する熱量よりも模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量が小さくなる。
【0252】
このため、模擬ポンプ120が作動を開始後、ある程度の時間が経過した後においては、模擬バッテリ130の温度および模擬熱媒体通路110を循環する冷却水の温度が時間の経過に伴って低下する。したがって、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1および第2流量V2のどちらの流量の場合も、ある程度の時間が経過した後において、模擬バッテリ130の温度および模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度が時間の経過に伴って低下する。
【0253】
ここで、模擬ポンプ120を第1流量V1および第2流量V2の圧送能力で作動を開始させた場合の、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度が最も高い温度に至るまでの時間をそれぞれ入口最大温度時間Δt1、入口最大温度時間Δt2とする。
図11および
図12に示すように、入口最大温度時間Δt2における模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度は、入口最大温度時間Δt1における模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度より高い。
【0254】
そして、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度および模擬チラー140の冷却水通路の出口側の冷却水の温度は、入口最大温度時間Δt1または入口最大温度時間Δt2を経過後、時間の経過に伴って低下していく。
【0255】
ところで、
図11に示すように、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1である場合、模擬バッテリ130の温度と模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度との乖離が比較的大きい。換言すれば、模擬バッテリ130と模擬熱媒体通路110を循環する冷却水との温度差が比較的大きい。そして、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1である場合、模擬バッテリ130の温度と模擬チラー140の冷却水通路の出口側の冷却水との温度との乖離がさらに大きくなる。
【0256】
これは、模擬バッテリ130と冷却水とを熱交換する際の熱伝達係数が比較的小さいため、模擬バッテリ130に蓄えた熱が模擬熱媒体通路110を循環する冷却水に充分に供給できていないためである。このように、模擬バッテリ130と模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度との乖離が大きい場合、模擬バッテリ130に蓄えた熱を模擬チラー140の外部へ充分に出力することが難しい。
【0257】
これに対して、
図12に示すように、模擬ポンプ120の圧送能力が第2流量V2である場合、模擬バッテリ130の温度と模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度との乖離は、圧送能力が第1流量V1である場合に比較して小さい。換言すれば、模擬バッテリ130と模擬熱媒体通路110を循環する冷却水との温度差が比較的小さい。
【0258】
これは、第1流量V1に比較して模擬ポンプ120の圧送能力を増加させることによって、模擬バッテリ130に流入する冷却水の単位時間当たりの流量が増加して、模擬バッテリ130と冷却水との熱交換が促進されるためである。
【0259】
具体的に、模擬バッテリ130と冷却水との熱交換が促進されると、圧送能力が第1流量V1である場合に比較して模擬バッテリ130から失われる熱量が増加し、これに対して、模擬バッテリ130から冷却水に供給される熱量が増加する。このため、
図11および
図12に示すように、模擬ポンプ120の作動開始後の経過時間が等しい場合、模擬バッテリ130の温度は、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1である場合に比較して、第2流量V2である場合のほうが低くなる。これに対して、模擬ポンプ120の作動開始後における模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度は、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1である場合に比較して、第2流量V2である場合のほうが高くなる。
【0260】
これにより、模擬ポンプ120の圧送能力が第2流量V2である場合の模擬バッテリ130の温度と模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度との乖離は、圧送能力が第1流量V1である場合に比較して小さくなる。換言すれば、模擬ポンプ120の圧送能力が第2流量V2である場合、圧送能力が第1流量V1である場合に比較して模擬バッテリ130に蓄えた熱を模擬熱媒体通路110を循環する冷却水に多く供給できる。
【0261】
また、模擬チラー140の冷却水通路の入口側に流入させる冷却水の流量は、模擬ポンプ120の圧送能力が第2流量V2である場合、第1流量V1である場合に比較して増加する。さらに、上述のように、模擬ポンプ120の作動開始後の経過時間が等しい場合、模擬ポンプ120の圧送能力が第2流量V2である場合における模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度は、圧送能力が第1流量V1である場合に比較して高くなる。
【0262】
このため、模擬ポンプ120の圧送能力が第2流量V2である場合、模擬チラー140において冷却水から冷媒へ供給される熱量は、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1である場合に比較して方が多くなる。これにより、模擬ポンプ120の圧送能力が第2流量V2である場合の模擬チラー140における外部へ出力される熱量は、模擬ポンプ120の圧送能力が第1流量V1である場合に比較して方が多くなる。
【0263】
このように、模擬バッテリ130へ流入する冷却水の流量が増加するように模擬ポンプ120の圧送能力を変化させることで、模擬チラー140における冷却水と冷媒との熱交換を促進させることができる。したがって、模擬バッテリ130と冷却水とを熱交換する際の熱伝達係数が比較的小さい場合であっても、模擬バッテリ130に蓄えた熱を冷却水を介して外部に充分に出力することができる。
【0264】
本実施形態の温調装置50は、蓄熱暖房大モードにおける温調側ポンプ52の圧送能力を蓄熱暖房小モードにおける温調側ポンプ52の圧送能力に比較して大きくする。このため、温調装置50は、蓄熱暖房大モードにおけるチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度を蓄熱暖房小モードにおけるチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度より高くすることができる。
【0265】
これにより、蓄熱暖房大モードを実行する際のチラー16における熱媒体と冷媒との熱交換が促進される。したがって、温調装置50は、蓄熱暖房大モードを実行する際における冷媒の温度を、蓄熱暖房小モードを実行する際における冷媒の温度よりも高い温度まで加熱することができる。
【0266】
図7に戻り、蓄熱暖房小モードで作動する場合、ステップS340において、制御装置70は、第1ポンプ維持時間t1が経過したか否かを判定する。制御装置70は、ステップS340において、第1ポンプ維持時間t1が経過するまで、車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持する。このため、蓄熱暖房小モードで作動する温調装置50では、第1ポンプ維持時間t1が経過するまで、チラー水通路16bに第1流量V1の熱媒体が流入し続ける。
【0267】
第1ポンプ維持時間t1は、バッテリ60が熱媒体と熱交換することで蓄えた熱が失われる場合においても、バッテリ60の温度が充放電容量を充分に活用可能な温度以下とならないように制御装置70に設定される時間であって、予め実験等によって求められる。また、第1ポンプ維持時間t1は、起動モードで決定される目標温度が第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2で決定されるそれぞれの場合において、互いに異なる時間で設定される。
【0268】
具体的に、充電モードで目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合、第1ポンプ維持時間t1は、温調側ポンプ52の圧送能力が10L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが35℃から20℃になると想定される時間で設定される。また、充電モードで目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合、第1ポンプ維持時間t1は、温調側ポンプ52の圧送能力が10L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが65℃から30℃になると想定される時間で設定される。制御装置70は、第1ポンプ維持時間t1が経過するまで、温調側ポンプ52の圧送能力を第1流量V1で維持する。
【0269】
なお、充電モードで目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合における第1ポンプ維持時間t1は、温調側ポンプ52の圧送能力が10L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが20℃と異なる温度になると想定される時間で設定されてもよい。例えば、第1ポンプ維持時間t1は、温調側ポンプ52の圧送能力が10L/minで作動する際において、35℃より低い温度であれば、15℃や25℃など、バッテリ温度Tbが20℃より低い温度または高い温度になると想定される時間で設定されてもよい。
【0270】
また、充電モードで目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合における第1ポンプ維持時間t1は、温調側ポンプ52の圧送能力が10L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが30℃と異なる温度になると想定される時間で設定されてもよい。例えば、第1ポンプ維持時間t1は、温調側ポンプ52の圧送能力が10L/minで作動する際において、55℃より低い温度であれば、20℃や40℃など、バッテリ温度Tbが30℃より低い温度または高い温度になると想定される時間で設定されてもよい。また、第1ポンプ維持時間t1および第2ポンプ維持時間t2は、外気温Tcirなどの外部要因に応じて予め定められる制御マップに基づいて定められてもよい。
【0271】
ステップS340において第1ポンプ維持時間t1が経過したと判定した場合、制御装置70は、センサ群72の検出信号および操作パネル71に入力される車室内の目標温度等に応じて、運転モードを暖房モードまたは除湿暖房モードに切り替える。
【0272】
また、蓄熱暖房大モードで作動する場合、ステップS360において、制御装置70は、第2ポンプ維持時間t2が経過したか否かを判定する。制御装置70は、ステップS360において、第2ポンプ維持時間t2が経過するまで、車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持する。このため、蓄熱暖房大モードで作動する温調装置50では、第2ポンプ維持時間t2が経過するまで、チラー水通路16bに第2流量V2の熱媒体が流入し続ける。
【0273】
第2ポンプ維持時間t2は、第1ポンプ維持時間t1と同様、バッテリ60が熱媒体と熱交換することで蓄えた熱が失われる場合においても、バッテリ60の温度が充放電容量を充分に活用可能な温度以下とならないように、予め制御装置70に設定される。
【0274】
具体的に、充電モードで目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合、第2ポンプ維持時間t2は、温調側ポンプ52の圧送能力が20L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが35℃から20℃になると想定される時間で設定される。また、充電モードで目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合、第2ポンプ維持時間t2は、温調側ポンプ52の圧送能力が20L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが65℃から30℃になると想定される時間で設定される。
【0275】
ここで、蓄熱暖房大モードで作動する場合、温調側ポンプ52の圧送能力は、蓄熱暖房小モードで作動する場合の温調側ポンプ52の圧送能力よりも大きい。このため、蓄熱暖房大モードで作動する際におけるバッテリ水通路60aには、蓄熱暖房小モードよりも多くの熱媒体が流入する。このため、蓄熱暖房大モードで作動する場合、バッテリ60が熱媒体と熱交換することで失われる単位時間当たりの熱量は、蓄熱暖房小モードで作動する場合に比較して多くなる。
【0276】
本実施形態では、バッテリ60に蓄えられた熱が過度に熱媒体に供給されることを防止するため、第2ポンプ維持時間t2は、第1ポンプ維持時間t1よりも短い時間で設定される。制御装置70は、第2ポンプ維持時間t2が経過するまで、温調側ポンプ52の圧送能力を第2流量V2で維持する。
【0277】
なお、第2ポンプ維持時間t2は、第1ポンプ維持時間t1が設定される際に用いられるバッテリ温度Tbとは異なる温度で設定されてもよい。例えば、充電モードで目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合における第2ポンプ維持時間t2は、温調側ポンプ52の圧送能力が20L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが20℃と異なる温度になると想定される時間で設定されてもよい。また、充電モードで目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合、第2ポンプ維持時間t2は、温調側ポンプ52の圧送能力が20L/minで作動する際において、バッテリ温度Tbが30℃とは異なる温度になると想定される時間で設定されてもよい。
【0278】
バッテリ60の温度調整よりも車室内の暖房を優先する場合、第2ポンプ維持時間t2は、第1ポンプ維持時間t1が設定される際のバッテリ温度Tbよりも低い温度になると想定される時間で設定されてもよい。これに対して、車室内の暖房よりもバッテリ60の温度調整を優先する場合、第2ポンプ維持時間t2は、第1ポンプ維持時間t1が設定される際のバッテリ温度Tbよりも高い温度になると想定される時間で設定されてもよい。
【0279】
ステップS360において第2ポンプ維持時間t2が経過したと判定した場合、制御装置70は、センサ群72の検出信号および操作パネル71に入力される車室内の目標温度等に応じて、運転モードを暖房モードまたは除湿暖房モードに切り替える。
【0280】
そして、車両用空調装置1は、蓄熱暖房小モードで作動する際に第1ポンプ維持時間t1が経過後、または、蓄熱暖房大モードで作動する際に第2ポンプ維持時間t2が経過後、バッテリ60に蓄えた熱で充分に加熱された冷媒を用いて車室内の暖房を行うことができる。
【0281】
以上の如く、本実施形態の温調装置50では、車両用空調装置1がバッテリ60に蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体の速度が増加するように温調側ポンプ52の圧送能力を変更させる。これにより、温調装置50は、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させて、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の温度を車両用空調装置1が暖房を行うために充分な温度まで加熱し易くできる。このため、バッテリ60に蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、車両用空調装置1は、車室内を充分に暖房することができる。
【0282】
(1)上記実施形態では、車両用空調装置1は、目標吹出温度に関する温度を検出する外気温検出部72dを備えている。そして、制御装置70は、外気温検出部72dが検出する外気温Tcirが暖房判定温度T0以下である場合、外気温Tcirが暖房判定温度T0より大きい場合に比較して、温調側ポンプ52の圧送能力を大きくする。
【0283】
これによれば、外気温Tcirが暖房判定温度T0以下である場合、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換をさらに促進させることができる。このため、外気温Tcirが冷凍サイクル装置10の冷媒の性能が低下する温度であっても、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の温度を車両用空調装置1が暖房を行うために充分な温度まで加熱し易くできる。
【0284】
(2)上記実施形態では、冷暖房用通路51aが断熱性を有する通路断熱部材51aaで覆われている。これによれば、このように構成されていない場合に比較して、バッテリ60に蓄えた熱によって加熱された熱媒体が冷暖房用通路51aを流れる際に外部に熱を奪われ難くなるので、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換をさらに促進させることができる。
【0285】
(3)本実施形態では、温調装置50は、空調側熱媒体回路20に接続されている。そして、温調装置50は、充電モードにおいて、空調側熱媒体回路20の電気ヒータ28によって加熱された熱媒体をバッテリ水通路60aにおいてバッテリ60と熱交換することで、バッテリ60を加熱することができる。
【0286】
このため、このように構成されていない場合に比較して、充電モードにおける単位時間当たりのバッテリ60に蓄える熱量を増加させることができる。したがって、温調装置50に熱媒体を加熱するためのヒータ装置を追加することなく、車両用空調装置1が暖房するための充分な熱量をバッテリ60に蓄えることができる。
【0287】
(第1実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、起動モードにおいて、制御装置70が、外気温Tcirに応じて温調側ポンプ52の圧送能力を第1流量V1または第2流量V2のいずれかの圧送能力に切り替える例について説明したが、これに限定されない。制御装置70は、外気温Tcirに応じて温調側ポンプ52の圧送能力を3つ以上の互いに異なる圧送能力に切り替えてもよい。
【0288】
(第1実施形態の第2の変形例)
上述の第1実施形態では、起動モードにおいて、制御装置70が、バッテリ温度Tbが予め定められた温度になると想定されるポンプ維持時間が経過するまで車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持する例について説明したが、これに限定されない。例えば、制御装置70は、起動モードにおいて、バッテリ温度検出部72aから送信される検出信号に基づいて、バッテリ温度Tbが予め定められた温度になるまで車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持させてもよい。
【0289】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図13~
図16を参照して説明する。本実施形態における温調装置50は、第1実施形態に比較して、温調側熱媒体通路51に蓄熱用貯留タンク57が追加されている。そして、本実施形態では、起動モードにおいて実行される制御処理の一部が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0290】
本実施形態における温調側熱媒体通路51には、温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体を貯めることが可能な蓄熱用貯留タンク57が設けられている。蓄熱用貯留タンク57は、温調側熱媒体通路51のうち、充電モードおよび起動モードのいずれのモードで動作する際にも熱媒体が流通する部位に設けられている。具体的に、蓄熱用貯留タンク57は、
図13に示すように、冷暖房用通路51aのうち、バッテリ水通路60aと第1温調側三方継手53との間に設けられている。
【0291】
蓄熱用貯留タンク57は、内部に熱媒体を貯める容器である。蓄熱用貯留タンク57は、熱媒体を貯めるタンク部57aと、タンク部57aの外周を覆うタンク断熱部材57bとを有する。
【0292】
タンク部57aは、耐食性に優れた金属製(例えば、ステンレス)の部材で構成されている。また、タンク部57aは、タンク部57aの容積/タンク部57aの内壁面積が温調側熱媒体通路51の容積/温調側熱媒体通路51の内壁面積よりも大きくなように設定されている。
【0293】
また、タンク部57aは、温調側熱媒体通路51の内部に存在する熱媒体の量に比較して多くの量の熱媒体を内部に貯留可能に形成されている。具体的に、タンク部57aは、冷暖房用通路51aの内部に存在する熱媒体の量の5倍以上の熱媒体を貯留可能に形成されている。本実施形態のタンク部57aは、内部に2Lの熱媒体を貯留する。また、タンク部57aは、熱媒体を流入出する部位を除いて、その外周がタンク断熱部材57bによって覆われている。
【0294】
タンク断熱部材57bは、タンク部57aを構成する部材よりも熱伝導率の小さい断熱性を有する材料(例えば、樹脂)で構成されている。これにより、蓄熱用貯留タンク57は、タンク部57aの内部と外部とがタンク断熱部材57bによって断熱される断熱構造で形成される。
【0295】
このように構成される本実施形態の温調装置50は、蓄熱用貯留タンク57が設けられない仮想的な構成である例と比較した場合、温調側熱媒体通路51を循環可能な熱媒体の流量が増加する。具体的に、温調装置50は、蓄熱用貯留タンク57が設けられない構成に比較して、充電モードおよび起動モードを実行する際にバッテリ水通路60aに流入可能な熱媒体の熱量が増加する。本実施形態では、蓄熱用貯留タンク57が熱交換促進部として機能する。
【0296】
続いて、本実施形態の車両用空調装置1が実行する充電モードおよび起動モードの作動について説明する。
【0297】
本実施形態における制御装置70が実行する充電モードの制御処理は、第1実施形態で説明した制御装置70が実行する充電モードの制御処理と同じ制御処理である。このため、本実施形態における充電モードの温調装置50では、
図14の矢印に示すように、空調側ポンプ22→流量調整弁23→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→蓄熱用貯留タンク57→第1温調側三方継手53→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に熱媒体が循環する。
【0298】
そして、このように熱媒体が循環する温調装置50では、蓄熱用貯留タンク57の入口側にバッテリ60によって加熱された熱媒体が流入することで、蓄熱用貯留タンク57の内部に加熱された熱媒体が貯められる。そして、蓄熱用貯留タンク57の出口側から流出した熱媒体は、電気ヒータ28によって加熱されてバッテリ60のバッテリ水通路60aに戻されて、バッテリ60と熱交換することで再度加熱される。
【0299】
制御装置70は、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2以上になるまでバッテリ60の充電を維持しつつ、温調側熱媒体通路51で熱媒体を循環させる。これにより、充電モードにおいて、バッテリ60は、自己発熱によって得られる熱および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。また、蓄熱用貯留タンク57には、バッテリ60および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体が貯められる。
【0300】
このため、温調装置50は、バッテリ60に蓄熱するに加えて、加熱された状態の熱媒体を貯めることで蓄熱用貯留タンク57に蓄熱する。これにより、温調装置50は、蓄熱用貯留タンク57が設けられない構成に比較して、蓄熱用貯留タンク57に蓄えられる熱量の分だけ、温調装置50全体に蓄えられる熱量が増加する。
【0301】
続いて、制御装置70が実行する起動モードについて
図15に示す制御フローを参照して説明する。本実施形態の起動モードは、第1実施形態の起動モードのステップS310に示した暖房要求大判定の処理が存在しない。また、本実施形態の起動モードは、外気温Tcirによって、温調側ポンプ52の圧送能力が変更されない。
【0302】
具体的に、まず、ステップS300において、第1実施形態と同様に、制御装置70は、乗員の操作パネル71の操作のモード選択スイッチの操作によって、車室内の暖房を行う運転モードを実行ための信号が入力されているか否かを判定する。制御装置70は、暖房要求がされるまでステップS300を繰り返し実行し、暖房要求がされたと判定した場合、ステップS335に進む。
【0303】
そして、ステップS335において、制御装置70は、蓄熱暖房モードを実行する。蓄熱暖房モードにおいて、蓄熱暖房小モードおよび蓄熱暖房大モードと同様に、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aとヒータコア側流出口23cとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。
【0304】
そして、制御装置70は、圧縮機12および空調側ポンプ22それぞれが作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体によってヒータコア25を通過する空気を充分に加熱できない場合、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第1流量V1である10L/minとなるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。
【0305】
したがって、蓄熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図16の矢印に示すように、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第2膨張弁14b→チラー16のチラー冷媒通路16a→圧縮機12の順に冷媒が循環する。また、蓄熱暖房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22→流量調整弁23→ヒータコア25→第1空調三方継手26→水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が循環する。
【0306】
そして、蓄熱暖房モードの温調装置50では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→蓄熱用貯留タンク57→第1温調側三方継手53→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0307】
このように熱媒体が流れる蓄熱暖房モードの温調装置50では、バッテリ60および電気ヒータ28によって加熱されて蓄熱用貯留タンク57に貯められた熱媒体がチラー水通路16bに流入する。そして、加熱された熱媒体がチラー16において冷凍サイクル装置10を流れる冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。また、チラー水通路16bから流出する熱媒体は、バッテリ水通路60aに流入し、熱を蓄えたバッテリ60と熱交換することで加熱されて蓄熱用貯留タンク57に流入する。
【0308】
また、このように冷媒が流れる蓄熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、熱媒体と熱交換して加熱された冷媒がチラー冷媒通路16aから流出し、圧縮機12によって圧縮および加熱されて水-冷媒熱交換器13に流入する。そして、水-冷媒熱交換器13に流入した冷媒は、水-冷媒熱交換器13において空調側熱媒体回路20を流れる熱媒体と熱交換して熱媒体を加熱する。また、水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒は、第2膨張弁14bによって減圧される。
【0309】
そして、このように熱媒体が流れる蓄熱暖房モードの空調側熱媒体回路20では、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体がヒータコア25において送風機33から送風された送風空気と熱交換して、送風空気を加熱する。
【0310】
したがって、蓄熱暖房モードの車両用空調装置1は、バッテリ60および蓄熱用貯留タンク57に蓄えた熱を利用して加熱した熱媒体を介してヒータコア25にて送風空気を加熱し、加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことにより、車室内の暖房を行うことができる。
【0311】
ステップS345において、制御装置70は、所定のポンプ維持時間t0が経過したか否かを判定する。制御装置70は、ステップS345において、所定のポンプ維持時間t0が経過するまで、車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持する。このため、温調装置50では、所定のポンプ維持時間t0が経過するまで、チラー水通路16bに第1流量V1の熱媒体が流入し続ける。
【0312】
所定のポンプ維持時間t0は、第1ポンプ維持時間t1および第2ポンプ維持時間t2と同様に、バッテリ60の温度が充放電容量を充分に活用可能な温度以下とならないように制御装置70に設定される時間であって、予め実験等によって求められる。
【0313】
ステップS345において所定のポンプ維持時間t0が経過したと判定した場合、制御装置70は、センサ群72の検出信号および操作パネル71に入力される車室内の目標温度等に応じて、運転モードを暖房モードまたは除湿暖房モードに切り替える。
【0314】
(1)本実施形態の温調装置50では、温調側熱媒体通路51に、加熱された状態の熱媒体を貯める蓄熱用貯留タンク57が設けられている。これにより、充電モードにおいて、蓄熱用貯留タンク57が設けられない構成に比較して、温調装置50に蓄熱可能な熱量を増加させることができる。
【0315】
そして、起動モードにおいて、充電モードで加熱された熱媒体を蓄熱用貯留タンク57から流出させてチラー16に循環させることで、チラー16において冷凍サイクル装置10を流れる冷媒を加熱することができる。また、冷媒と熱交換することで冷却された熱媒体をバッテリ60に蓄えた熱を利用して再加熱することができる。
【0316】
これにより、蓄熱用貯留タンク57が設けられない構成に比較して、チラー水通路16bに流入する熱媒体の時間経過にともなう温度低下が抑制されるので、チラー16において、熱媒体から冷媒へ供給する単位時間当たりの熱量を増加することができる。このため、蓄熱用貯留タンク57が設けられない構成に比較して、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。したがって、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の温度を車両用空調装置1が暖房を行うために充分な温度まで加熱し易くできる。
【0317】
(2)本実施形態の蓄熱用貯留タンク57は、外周が断熱性を有するタンク断熱部材57bによって覆われている。これによれば、このように構成されていない場合に比較して、蓄熱用貯留タンク57に蓄えた熱が外部に熱を奪われ難くなるので、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換をさらに促進させることができる。
【0318】
(第2実施形態の第1の変形例)
上述の第2実施形態では、起動モードにおいて暖房要求大判定の処理が存在せず、外気温Tcirによって温調側ポンプ52の圧送能力が変更されない例について説明したが、これに限定されない。
【0319】
例えば、制御装置70は、起動モードにおいて、第1実施形態のステップS310と同様の暖房要求大判定の処理を実行し、外気温Tcirに応じて暖房要求大フラグのオン/オフを変更させる処理を実行してもよい。そして、制御装置70は、暖房要求大フラグのオン/オフ判定結果に応じで、第1実施形態のステップS330またはステップS350と同様に、蓄熱暖房小モードまたは蓄熱暖房大モードを実行して温調側ポンプ52の圧送能力を変更してもよい。
【0320】
(第2実施形態の第2の変形例)
上述の第2実施形態では、タンク部57aの外周が、熱媒体を流入出する部位を除く全ての部位において、タンク断熱部材57bによって覆われている例について説明したが、これに限定されない。例えば、蓄熱用貯留タンク57は、タンク部57aの外周における熱媒体が流入出する部位を除く全ての部位がタンク断熱部材57bによって覆われておらず、その一部のみがタンク断熱部材57bによって覆われている構成であってもよい。
【0321】
(第2実施形態の第3の変形例)
上述の第2実施形態では、タンク部57aの外周が、タンク断熱部材57bによって覆われている例について説明したが、これに限定されない。例えば、蓄熱用貯留タンク57は、二重タンクによる真空断熱容器等、断熱部材以外の断熱手段によって断熱構造が達成されていても良い。
【0322】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図17~
図24を参照して説明する。本実施形態における温調装置50は、第1実施形態に比較して、温調側熱媒体通路51にプレヒート用貯留タンク58が追加されている。そして、本実施形態では、充電モードと起動モードとの間に実行される制御処理が追加されている点が第1実施形態および第2実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態および第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0323】
本実施形態における温調側熱媒体通路51には、温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体を貯めることが可能なプレヒート用貯留タンク58が設けられている。プレヒート用貯留タンク58は、温調側熱媒体通路51のうち、充電モードで動作する際に熱媒体が流通せず、後述するプレヒートモードおよび起動モードで動作する際に熱媒体が流通する部位に設けられている。具体的に、プレヒート用貯留タンク58は、
図17に示すように、冷暖房用通路51aのうち、チラー水通路16bと温調側五方弁56との間に設けられている。プレヒート用貯留タンク58は、基本的な構成が蓄熱用貯留タンク57と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0324】
本実施形態の温調装置50は、プレヒート用貯留タンク58が設けられない仮想的な構成である例と比較した場合、プレヒートモードおよび起動モードを実行する際に循環可能な熱媒体の流量が増加可能に構成されている。具体的に、温調装置50は、プレヒート用貯留タンク58が設けられない構成に比較して、プレヒートモードおよび起動モードを実行する際にバッテリ水通路60aに流入可能な熱媒体の熱量が増加する。
【0325】
ところで、第1実施形態において第1熱交換モデル100を用いて説明したように、バッテリ60の温度と温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体との温度差が比較的大きい場合、バッテリ60から熱媒体に供給される単位時間当たりの熱量が大きくなり易い。これに対して、温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体と冷媒との温度差が比較的小さい場合、熱媒体と冷媒との熱交換によって冷媒へ供給される単位時間当たりの熱量が小さくなり易い。
【0326】
そして、バッテリ60から熱媒体に供給される単位時間当たりの熱量が熱媒体と冷媒との熱交換によって冷媒へ供給される単位時間当たりの熱量よりも大きい場合、熱媒体の温度が上昇する。これは、バッテリ60から供給される熱量のうち、熱媒体と冷媒との熱交換によって冷媒へ供給する熱量よりも温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体の加熱に用いられる熱量が大きいためである。この場合、バッテリ60に蓄えた熱が冷媒に供給され難い。
【0327】
また、温調側ポンプ52の作動開始後、ある程度の時間が経過することによってバッテリ60の温度が低下し、熱媒体の温度が上昇することでバッテリ60と熱媒体との温度差が小さくなる。これにより、バッテリ60から熱媒体に供給される単位時間当たりの熱量が熱媒体と冷媒との熱交換によって冷媒へ供給される単位時間当たりの熱量よりも大きくなり、バッテリ60に蓄えた熱が冷媒に供給され易くなる。
【0328】
しかし、当該熱媒体の温度を上昇させてバッテリ60と熱媒体との温度差が小さくなるために要する時間は、車両用空調装置1が送風空気を目標吹出温度まで加熱するために必要な時間が長くなる要因となるため、短縮することが望まれる。
【0329】
これに対して、本実施形態の温調装置50は、充電モードと起動モードとの間に、温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体を加熱するプレヒートモードを実行することで、起動モードの実行前に熱媒体の温度を上昇可能に構成されている。また、プレヒートモードの追加に伴い、本実施形態の充電モードおよび起動モードは、第1実施形態の充電モードおよび起動モードと一部が異なっている。本実施形態では、制御装置70およびプレヒート用貯留タンク58が熱交換促進部として機能する。以下に、本実施形態における充電モード、プレヒートモード、起動モードの作動の詳細を説明する。
【0330】
具体的な充電モードの制御処理について、
図18に示す制御フローを参照して説明する。本実施形態の充電モードは、操作パネル71の空調予定設定スイッチを乗員が操作することによって、制御装置70の入力側に空調予定設定がされる信号が入力された際に実行される。なお、
図18に示す充電モードの制御フローで付されたステップのうち、
図5に示した第1実施形態の充電モードの制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0331】
ステップS60において第1バッテリ加熱量Q1を算出後、または、ステップS80において、第2バッテリ加熱量Q2を算出後、ステップS160において、制御装置70は、電気ヒータ28によってバッテリ60を加熱する際のヒータ加熱量QHを算出する。
【0332】
ステップS162において、制御装置70は、制御装置70に入力された空調予定設定がされる信号に基づいて起動タイミング情報を取得し、車両用空調装置1が作動を停止した状態から次に車両用空調装置1の作動が開始される予定の時刻情報を検出する。
【0333】
ステップS164において、制御装置70は、ステップS50で決定される第1目標温度Tb1またはステップS70で決定される第2目標温度Tb2およびステップS162で取得した起動タイミング情報に基づいて、プレヒート開始タイミングを算出する。プレヒート開始タイミングは、後述するプレヒートモードの実行開始予定時刻である。
【0334】
プレヒート開始タイミングは、温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体およびプレヒート用貯留タンク58が貯留する熱媒体をバッテリ60の自己発熱によって熱媒体目標温度まで加熱するために必要な時間を算出することで得られる。温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体およびプレヒート用貯留タンク58が貯留する熱媒体とは、温調装置50全体の熱媒体を意味する。
【0335】
また、熱媒体目標温度は、ステップS50で決定する第1目標温度Tb1またはステップS70で決定する第2目標温度Tb2と同じ温度に設定される。プレヒート開始タイミングは、ステップS50でバッテリ60の目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合と、ステップS70でバッテリ60の目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合とにおいて、互いに異なる時間で設定される。
【0336】
具体的に、熱媒体目標温度が第1目標温度Tb1である場合、制御装置70は、温調装置50全体の熱媒体を、バッテリ60の自己発熱を用いてステップS20で検出した外気温Tcirから第1目標温度Tb1まで加熱するために必要な時間を求める。これにより、熱媒体目標温度が第1目標温度Tb1である場合のプレヒート開始タイミングは、車両用空調装置1の作動開始予定時刻から、当該算出した加熱に必要な時間だけ遡ることで得られる時刻に設定される。
【0337】
また、熱媒体目標温度が第2目標温度Tb2である場合、制御装置70は、温調装置50全体の熱媒体をバッテリ60の自己発熱を用いてステップS20で検出した外気温Tcirから第2目標温度Tb2まで加熱するために必要な時間を求める。これにより、熱媒体目標温度が第2目標温度Tb2である場合のプレヒート開始タイミングは、車両用空調装置1の作動開始予定時刻から、当該算出した加熱に必要な時間だけ遡ることで得られる時刻に設定される。
【0338】
プレヒート開始タイミングは、ステップS160において算出したヒータ加熱量QHおよび予め定められる加熱開始タイミングを算出する制御マップに基づいて算出される。プレヒート開始タイミングを算出する制御マップは、バッテリ60の充電によって発生する単位時間当たりの熱量、プレヒートモードで作動する温調側ポンプ52の圧送能力、温調装置50全体の熱媒体の量に基づいて定められている。
【0339】
そして、制御装置70は、ステップS170において、加熱開始タイミングを算出する。本実施形態における加熱開始タイミングは、ステップS164で算出したプレヒート開始タイミングに至った際に、バッテリ60を少なくとも第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2まで加熱させるために設定される加熱開始時刻である。加熱開始タイミングは、ステップS50でバッテリ60の目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合と、ステップS70でバッテリ60の目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合とにおいて、互いに異なる時間で設定される。
【0340】
具体的に、目標温度が第1目標温度Tb1である場合、制御装置70は、バッテリ60をバッテリ60の自己発熱および電気ヒータ28を用いて、ステップS30で検出したバッテリ温度Tbからから第1目標温度Tb1まで加熱するために必要な時間を求める。これにより、熱媒体目標温度が第1目標温度Tb1である場合の加熱開始タイミングは、ステップS164で設定されたプレヒート開始タイミングから、当該算出した加熱に必要な時間だけ遡ることで得られる時刻に設定される。
【0341】
また、目標温度が第2目標温度Tb2である場合、制御装置70は、バッテリ60をバッテリ60の自己発熱および電気ヒータ28を用いて、ステップS30で検出したバッテリ温度Tbから第2目標温度Tb2まで加熱するために必要な時間を求める。これにより、熱媒体目標温度が第2目標温度Tb2である場合の加熱開始タイミングは、ステップS164で設定されたプレヒート開始タイミングから、当該算出した加熱に必要な時間だけ遡ることで得られる時刻に設定される。
【0342】
加熱開始タイミングは、ステップS160において算出したヒータ加熱量QHおよび予め定められる加熱開始タイミングを算出する制御マップに基づいて算出される。加熱開始タイミングを算出する制御マップは、バッテリ60の充電によって発生する単位時間当たりの熱量および電気ヒータ28が熱媒体へ供給可能な単位時間当たり熱量に基づいて定められている。
【0343】
ステップS180において、制御装置70は、加熱開始タイミングに到達したか否かを判定する。制御装置70は、ステップS180で加熱開始タイミングに至るまで加熱しない状態を維持し、加熱開始タイミングに至ると、ステップS190において、加熱を開始する。
【0344】
これにより、充電モードの温調装置50では、
図19の矢印に示すように、空調側ポンプ22→流量調整弁23→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→第1温調側三方継手53→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に熱媒体が循環する。このように、本実施形態における充電モードでは、プレヒート用貯留タンク58に熱媒体が循環しない。このため、プレヒート用貯留タンク58に貯留された熱媒体がバッテリ温度Tbより低い状態に充電モードが実行されたとしても、当該熱媒体がバッテリ水通路60aに循環されることによってバッテリ60が冷却されることを回避できる。
【0345】
また、このように熱媒体が流れる充電モードの温調装置50では、電気ヒータ28によって加熱された熱媒体がバッテリ水通路60aにおいてバッテリ60と熱交換することで、バッテリ60を加熱する。そして、バッテリ60は、充電器80から電力が供給されることによって充電されるとともに自己発熱する。さらに、バッテリ60は、電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から熱が供給される。
【0346】
そして、ステップS200およびステップS210において、制御装置70は、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが目標温度以上になるまでバッテリ60の充電を維持する。これにより、充電モードにおいて、バッテリ60は、自己発熱によって得られる熱および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。
【0347】
そして、ステップS200およびステップS210において、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが目標温度以上になるまで加熱されたと判定した場合、制御装置70は、プレヒートモードを実行する。
【0348】
なお、バッテリ60が満充電状態まで充電された際のバッテリ温度Tbが目標温度以下である場合、制御装置70は、ステップ210において、バッテリ60が目標温度以上になるまでバッテリ60を加熱後にプレヒートモードを開始する。この場合、プレヒートモードは、ステップS164において算出したプレヒート開始タイミングと凡そ同じ時刻に開始される。
【0349】
また、バッテリ60が充電されることによってバッテリ温度Tbが目標温度まで加熱されてもバッテリ60が満充電状態まで充電されない場合、制御装置70は、ステップS200において、バッテリ60が満充電状態になるまでバッテリ60を加熱する。この場合、プレヒートモードは、ステップS164において算出したプレヒート開始タイミングよりも遅い時刻に開始される。プレヒートモードの制御処理について、
図20に示す制御フローを参照して説明する。
【0350】
ステップS500において、制御装置70は、プレヒートを開始する。具体的に、制御装置70は、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通状態を維持する。
【0351】
そして、制御装置70は、バッテリ60を充電させるための制御信号を充電器80に出力するとともに、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第1流量V1となるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。
【0352】
したがって、プレヒートモードの温調装置50では、
図21の矢印に示すように、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→プレヒート用貯留タンク58→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→第1温調側三方継手53→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0353】
このように熱媒体が循環するプレヒートモードの温調装置50では、バッテリ水通路60aを流れる熱媒体が熱を蓄えたバッテリ60と熱交換することで加熱される。また、プレヒート用貯留タンク58の入口側にバッテリ60によって加熱された熱媒体が流入することで、プレヒート用貯留タンク58の内部に加熱された熱媒体が貯められる。そして、プレヒート用貯留タンク58の出口側から流出した熱媒体は、バッテリ60のバッテリ水通路60aに戻されて、バッテリ60と熱交換することで加熱される。
【0354】
なお、プレヒートモードにおいて、圧縮機12は作動しない。このため、プレヒートモードにおいては、バッテリ60に蓄えた熱が冷凍サイクル装置10を流れる冷媒にほとんど供給されない。
【0355】
ステップS510において、制御装置70は、ステップS162において取得した起動タイミング情報に基づいて、次に車両用空調装置1の作動が開始される予定の時刻に至ったか否かを判定する。制御装置70は、ステップS510において、次に車両用空調装置1の作動が開始される予定の時刻に至るまで、温調側ポンプ52の作動を維持する。
【0356】
そして、ステップS510において、次に車両用空調装置1の作動が開始される予定の時刻に至ったと判定すると、ステップS520において、制御装置70は、プレヒートを終了する。具体的に、制御装置70は、ステップS520において、温調側ポンプ52の作動を停止させる。
【0357】
ところで、プレヒートモードは、上述のように、起動タイミングから、温調装置50全体の熱媒体を目標熱媒体温度まで加熱するために必要な時間だけ遡ることで得られるプレヒート開始タイミングと凡そ同じ時刻から開始される。
【0358】
このため、プレヒートモードを実行することで、温調装置50全体の熱媒体は、目標熱媒体温度に近づくように加熱される。すなわち、温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体およびプレヒート用貯留タンク58が貯留する熱媒体は、ステップS50で決定される第1目標温度Tb1またはステップS70で決定される第2目標温度Tb2に近い温度まで加熱される。これにより、プレヒートモード終了時点における温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体およびプレヒート用貯留タンク58が貯留する熱媒体は、プレヒートモードを実行する時点における熱媒体の温度より上昇する。
【0359】
このように、プレヒートモードでは、充電モードのステップS162において取得した起動タイミングに至るまでバッテリ60の充電を維持することで、温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体およびプレヒート用貯留タンク58が貯留する熱媒体が加熱される。続いて、起動モードについて説明する。
【0360】
本実施形態の起動モードにおいて、制御装置70は、
図15を参照して説明した第2実施形態における起動モードと同じ制御処理を実行する。起動モードは、作動停止状態の車両が次に作動を開始してから初めて車両用空調装置1の自動制御運転が設定された際に実行される。
【0361】
ステップS300において、制御装置70は、暖房要求がされたと判定されるまでステップS300を繰り返し実行し、暖房要求がされたと判定した場合、ステップS335に進む。
【0362】
そして、ステップS335において、制御装置70は、蓄熱暖房モードを実行する。蓄熱暖房モードにおいて、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aとヒータコア側流出口23cとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。
【0363】
そして、制御装置70は、圧縮機12および空調側ポンプ22それぞれが作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体によってヒータコア25を通過する空気を充分に加熱できない場合、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第1流量V1である10L/minとなるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。
【0364】
したがって、蓄熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図22の矢印に示すように、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第2膨張弁14b→チラー16のチラー冷媒通路16a→圧縮機12の順に冷媒が循環する。また、蓄熱暖房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22→流量調整弁23→ヒータコア25→第1空調三方継手26→水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が循環する。
【0365】
そして、蓄熱暖房モードの温調装置50では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→プレヒート用貯留タンク58→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→第1温調側三方継手53→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0366】
このように冷媒が流れる蓄熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、チラー16において、熱媒体と冷媒とが熱交換して冷媒が加熱される。ここで、本実施形態における起動モードでの実行開始時点における熱媒体は、起動モードが実行されるよりも前にプレヒートモードが実行されることによって熱媒体目標温度に近づくように加熱されている。
【0367】
このため、起動モードでの実行開始時点における熱媒体の温度は、プレヒートモードを実行しない場合に比較して上昇している。これにより、起動モードを実行することで車両用空調装置1が暖房を行う場合、吹出口から吹き出す空調風の温度を目標吹出温度まで加熱させ易くできる。プレヒートモードを実行させて起動モードの実行開始時点の熱媒体の温度を上昇させた場合の効果について、
図23および
図24を参照して説明する。
【0368】
図23に示す第2熱交換モデル101は、
図10に示した第1熱交換モデル100に比較して、模擬熱媒体通路110にプレヒート用貯留タンク58に対応する模擬タンク150が追加されている。模擬タンク150は、プレヒート用貯留タンク58と同様に、内部に2Lの熱媒体である冷却水を貯留可能である。
【0369】
そして、第2熱交換モデル101では、模擬ポンプ120を作動させることによって、模擬熱媒体通路110において、冷却水を模擬ポンプ120→模擬タンク150→模擬バッテリ130→模擬チラー140の順に循環させることができる。また、第2熱交換モデル101は、模擬熱媒体通路110で冷却水を循環させる際に、模擬チラー140において、冷却水と冷媒との熱交換を行うか行わないかを切り替え可能に構成されている。
【0370】
これにより、第2熱交換モデル101は、模擬チラー140において冷却水と冷媒との熱交換を行わない状態で冷却水を循環させることで、本実施形態のプレヒートモードを模擬する模擬プレヒートモードで動作することができる。また、第2熱交換モデル101は、模擬チラー140において冷却水と冷媒との熱交換を行いつつ冷却水を循環させることで、本実施形態の起動モードを模擬する模擬起動モードで動作することができる。
【0371】
すなわち、第2熱交換モデル101は、模擬プレヒートモードで動作することで、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水および模擬タンク150に貯められた冷却水を自己発熱する模擬バッテリ130の温度と同じ温度まで加熱することができる。そして、第2熱交換モデル101は、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水、模擬タンク150に貯められた冷却水、模擬バッテリ130それぞれに蓄熱することができる。
【0372】
また、第2熱交換モデル101は、模擬プレヒートモードで動作後に模擬起動モードで動作することで、模擬プレヒートモードにおいて蓄えられた熱を模擬チラー140において外部に出力することができる。
【0373】
続いて、第2熱交換モデル101において、模擬ポンプ120を第1流量V1の圧送能力で作動させて模擬起動モードを実行した場合の模擬バッテリ130および冷却水の温度変化について、
図24を参照して説明する。
図24では、模擬プレヒートモードを実行して模擬熱媒体通路110を循環する冷却水および模擬タンク150に蓄えられた冷却水の温度を模擬バッテリ130の温度まで加熱した状態で、模擬起動モードを実行した場合の温度変化を示している。
【0374】
具体的に、
図24に示す破線は、模擬起動モードを実行した後の時間経過に伴う模擬バッテリ130の温度変化を表し、
図24に示す実線は、模擬起動モードを実行した後の時間経過に伴う模擬チラー140の冷却水通路の入口側に流入する冷却水の温度変化を表す。また、
図24に示す一点鎖線は、模擬起動モードを実行した後の時間経過に伴う模擬チラー140の冷却水通路の出口側から流出する冷却水の温度変化を表す。
【0375】
図24に示すように、模擬起動モードの実行開始時点における模擬バッテリ130の温度、模擬チラー140の冷却水通路の入口側に流入する冷却水の温度、模擬チラー140の冷却水通路の出口側から流出する冷却水の温度は、互いに略等しい。これは、模擬起動モードが実行されるタイミングよりも前に、模擬プレヒートモードを実行することで、模擬熱媒体通路110を循環する冷却水の温度を模擬バッテリ130の温度まで加熱させたからである。
【0376】
このため、模擬ポンプ120が作動を開始した直後においては、模擬バッテリ130の温度と模擬熱媒体通路110を流れる冷却水との温度がほぼ等しい。したがって、模擬バッテリ130から模擬熱媒体通路110を流れる冷却水に模擬バッテリ130に蓄えた熱がほぼ供給されない。これに対して、模擬ポンプ120が作動を開始した直後において、模擬熱媒体通路110を流れる冷却水と冷媒との温度差が比較的大きい場合、模擬チラー140において、冷却水と冷媒との熱交換によって冷却水から冷媒に比較的多くの熱量が供給される。
【0377】
このため、模擬ポンプ120が作動を開始すると模擬熱媒体通路110を流れる冷却水の温度が急激に低下する。これにより、模擬チラー140の冷却水通路の入口側に流入する冷却水の温度および模擬チラー140の冷却水通路の出口側から流出する冷却水の温度も急激に低下する。さらに、温度が低下した冷却水が模擬熱媒体通路110を循環することで、模擬タンク150に貯められた冷却水の温度も同様に低下していく。
【0378】
また、模擬ポンプ120が作動を開始した直後においては、模擬熱媒体通路110を流れる冷却水に蓄えた熱および模擬タンク150に蓄えた熱が失われた熱量だけ、その熱量が外部に出力される。
【0379】
そして、模擬ポンプ120の作動開始後、模擬熱媒体通路110を流れる冷却水の温度が急激に低下することで、当該冷却水の温度が模擬バッテリ130の温度に比較して急激に低下する。これにより、模擬熱媒体通路110を流れる冷却水と模擬バッテリ130との温度差が生じることで模擬バッテリ130に蓄えた熱が冷却水に供給される。したがって、模擬バッテリ130の温度は、時間の経過とともに低下する。
【0380】
上述のように、模擬ポンプ120が作動を開始した直後においては、模擬バッテリ130の温度と模擬熱媒体通路110を流れる冷却水との温度差が比較的小さいため、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量が小さい。これに対して、模擬ポンプ120が作動を開始した直後において、模擬熱媒体通路110を流れる冷却水と冷媒との温度差が比較的大きい場合、模擬チラー140における冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力される単位時間当たりの熱量が大きくなり易い。そして、冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力する熱量が模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量よりも大きい場合、冷却水の温度が低下する。
【0381】
このため、模擬ポンプ120が作動を開始後、ある程度の時間が経過するまで、模擬バッテリ130の温度が時間の経過に伴って低下するとともに、模擬熱媒体通路110を流れる冷却水の温度も時間の経過に伴って低下する。また、模擬タンク150に貯められた冷却水の温度も時間の経過に伴って低下する。したがって、
図24に示すように、ある程度の時間が経過するまでにおいては、模擬バッテリ130の温度が時間の経過に伴って低下するとともに、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度が時間の経過に伴って低下する。これにより、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水と冷媒との温度差が小さくなる。
【0382】
そして、当該温度差が小さくなるに伴い、冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力される単位時間当たりの熱量が減少する。これに対して、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度が急激に低下することで、模擬バッテリ130と模擬熱媒体通路110を流れる冷却水の温度差が比較的大きくなる。これにより、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量が増加する。
【0383】
このため、模擬ポンプ120が作動を開始後、ある程度の時間の経過時点において、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量と、冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力する熱量とが等しくなる。
【0384】
そして、模擬ポンプ120が作動を開始後、ある程度の時間が経過した後は、冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力する単位時間当たりの熱量に比較して模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量が大きくなる。このため、模擬バッテリ130の温度が時間の経過に伴って低下するのに対して、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度が時間の経過に伴って増加する。
【0385】
また、さらに時間が経過した後は、模擬バッテリ130から冷却水に供給される単位時間当たりの熱量に比較して冷却水と冷媒との熱交換によって外部へ出力する単位時間当たりの熱量が大きくなる。このため、模擬バッテリ130の温度が時間の経過に伴って低下するとともに、模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度が時間の経過に伴って低下する。
【0386】
ここで、模擬ポンプ120が第1流量V1の圧送能力で動作する第1熱交換モデル100と模擬ポンプ120が第1流量V1の圧送能力で動作する第2熱交換モデル101との模擬チラー140に流入する冷却水の温度変化について
図11および
図24を比較する。
図11および
図24に示すように、圧送能力が等しい場合であっても、模擬プレヒートモードを実行する場合、模擬プレヒートモードを実行しない場合に比較して模擬ポンプ120の作動開始時の模擬チラー140の冷却水通路の入口側の冷却水の温度が高くなる。
【0387】
これにより、模擬ポンプ120の作動開始直後においては、模擬熱媒体通路110を流れる冷却水に蓄えた熱および模擬タンク150に蓄えた熱が失われた熱量に対して、その失われた熱量のほぼ全てが冷媒に出力される。換言すれば、模擬起動モードにおける模擬チラー140に流入する冷却水と冷媒との熱交換が促進される。このため、模擬起動モードを実行する場合の模擬チラー140において外部へ供給される熱量は、模擬プレヒートモードを実行しない場合に比較して多くなる。
【0388】
また、模擬熱媒体通路110に模擬タンク150が設けられることによって、第2熱交換モデル101全体に蓄えられる熱量は、模擬タンク150に貯められる冷却水が蓄熱する分だけ増加する。すなわち、第2熱交換モデル101全体に蓄えられる熱量は、模擬タンク150に蓄えられる熱量の分だけ増加する。このため、模擬起動モードを実行する場合の模擬チラー140において外部へ供給される熱量は、模擬タンク150が設けられない場合に比較して多くなる。
【0389】
このように、本実施形態における車両用空調装置1は、起動モードを実行する前にプレヒートモードを実行して温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体を加熱することで、起動モードでのチラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。
【0390】
さらに、温調側熱媒体通路51にプレヒート用貯留タンク58を設けることで、温調装置50全体に蓄えられる熱量が増加する。このため、起動モードでのチラー16における熱媒体と冷媒との熱交換をさらに促進させることができる。
【0391】
図20に戻り、ステップS345において、制御装置70は、所定のポンプ維持時間t0が経過するまで、車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持する。ステップS345において所定のポンプ維持時間t0が経過したと判定した場合、制御装置70は、センサ群72の検出信号および操作パネル71に入力される車室内の目標温度等に応じて、運転モードを暖房モードまたは除湿暖房モードに切り替える。
【0392】
(1)本実施形態の温調装置50では、起動モードを実行する前にプレヒートモードを実行することで、温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体を加熱することで、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。したがって、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の温度を車両用空調装置1が暖房を行うために充分な温度まで加熱し易くできる。
【0393】
また、車両が長時間停車された後に作動を開始した直後等であっても、熱媒体の温度を上昇させるための時間を待つことなく、吹出口から加熱した空調風を吹き出すことができる。
【0394】
(2)上記実施形態では、温調側熱媒体通路51に、プレヒートモード実行時に加熱された状態の熱媒体を貯めるプレヒート用貯留タンク58が設けられている。これにより、プレヒートモードにおいて、プレヒート用貯留タンク58が設けられない構成に比較して、温調装置50に蓄える熱量を増加させることができる。
【0395】
そして、起動モードにおいて、プレヒートモード実行時にプレヒート用貯留タンク58に貯められた加熱された状態の熱媒体をチラー16に循環させることで、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。
【0396】
(第3実施形態の第1の変形例)
上述の第3実施形態では、温調側熱媒体通路51にプレヒート用貯留タンク58が設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、温調装置50は、温調側熱媒体通路51にプレヒート用貯留タンク58が設けられていない構成であってもよい。
【0397】
この場合、プレヒート用貯留タンク58に蓄熱させることができないが、プレヒートモードにおいて温調側熱媒体通路51で熱媒体を循環させて、温調側熱媒体通路51を流れる熱媒体に蓄熱させることができる。そして、起動モードの実行開始時点でのチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度を上昇させることができる。このため、起動モードでのチラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。
【0398】
(第3実施形態の第2の変形例)
上述の第3実施形態では、起動モードにおいて暖房要求大判定の処理が存在せず、外気温Tcirによって温調側ポンプ52の圧送能力が変更されない例について説明したが、これに限定されない。
【0399】
例えば、制御装置70は、起動モードにおいて、第1実施形態のステップS310と同様の暖房要求大判定の処理を実行し、外気温Tcirに応じて暖房要求大フラグのオン/オフを変更させる処理を実行してもよい。そして、制御装置70は、暖房要求大フラグのオン/オフ判定結果に応じで、第1実施形態のステップS330またはステップS350と同様に、蓄熱暖房小モードまたは蓄熱暖房大モードを実行して温調側ポンプ52の圧送能力を変更してもよい。
【0400】
(第3実施形態の第3の変形例)
上述の第3実施形態では、起動タイミングにおける温調装置50全体の熱媒体の温度が第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2となるようにプレヒート開始タイミングが設定される例について説明したが、これに限定されない。
【0401】
例えば、プレヒート開始タイミングは、プレヒートモードの開始時点における熱媒体の温度よりも高い温度であれば、起動タイミングにおける温調装置50全体の温度が第1目標温度Tb1および第2目標温度Tb2と異なる温度となるように設定されてもよい。
【0402】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図25~
図27を参照して説明する。本実施形態における温調装置50は、プレヒート用貯留タンク58の内部にタンクヒータ58aおよびタンク温度検出部58bが追加されている点が第3実施形態と相違している。本実施形態では、第3実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0403】
図25に示すように、本実施形態におけるプレヒート用貯留タンク58の内部には、プレヒート用貯留タンク58に流入する熱媒体を加熱するタンクヒータ58aが設けられている。タンクヒータ58aは、基本的構成が電気ヒータ28と同様である。具体的に、タンクヒータ58aは、PTC素子を有するPTCヒータが採用されており、充電器80から電力が供給されることによって発熱する。
【0404】
また、タンクヒータ58aは、単位時間当たりの発熱量が予め定められている。すなわち、充電器80から供給されることによってタンクヒータ58aがプレヒート用貯留タンク58に流入する熱媒体へ供給する単位時間当たりの熱量は、予め定められている。
【0405】
そして、プレヒート用貯留タンク58の内部には、プレヒート用貯留タンク58に貯められた熱媒体の温度を検出するタンク温度検出部58bが設けられている。タンク温度検出部58bは、制御装置70に接続されており、プレヒート用貯留タンク58の内部に貯められた熱媒体の温度情報を有する検出信号を制御装置70に出力する。
【0406】
続いて、本実施形態の車両用空調装置1の作動について説明する。本実施形態の制御装置70が実行する充電モードおよび起動モードの制御処理は、第3実施形態の制御装置70が実行する制御処理と同様であるため、その説明を省略する。また、本実施形態の制御装置70が実行するプレヒートモードの制御処理は、その一部が第3実施形態の制御装置70が実行する制御処理と異なっている。以下に、本実施形態の制御装置70が実行するプレヒートモードの制御処理について、
図26に示す制御フローを参照して説明する。
【0407】
ステップS500において、制御装置70は、プレヒートを開始する。具体的に、制御装置70は、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。
【0408】
そして、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第1流量V1となるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。さらに、制御装置70は、タンクヒータ58aが作動するための制御信号をタンクヒータ58aに出力する。本実施形態のプレヒートモードにおけるタンクヒータ58aの電力供給源は、充電器80に接続された外部電源81である。
【0409】
したがって、プレヒートモードの温調装置50では、
図27の矢印に示すように、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→プレヒート用貯留タンク58→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→第1温調側三方継手53→第2温調側三方継手54→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0410】
このように熱媒体が循環するプレヒートモードの温調装置50では、バッテリ水通路60aを流れる熱媒体が蓄熱したバッテリ60と熱交換することで加熱される。また、プレヒート用貯留タンク58の入口側にバッテリ60によって加熱された熱媒体が流入することで、プレヒート用貯留タンク58の内部に加熱された熱媒体が貯められる。
【0411】
さらに、プレヒート用貯留タンク58に流入する熱媒体は、タンクヒータ58aによって加熱される。そして、プレヒート用貯留タンク58の出口側から流出した熱媒体は、バッテリ60のバッテリ水通路60aに戻されて、バッテリ60と熱交換することで再度加熱される。
【0412】
ステップS515において、制御装置70は、タンク温度検出部58bから送信される検出信号に基づいて、プレヒート用貯留タンク58に貯められた熱媒体の温度が目標熱媒体温度以上であるか否か判定する。制御装置70は、ステップS515において、プレヒート用貯留タンク58に貯められた熱媒体の温度が目標熱媒体温度以上に加熱されるまで、温調側ポンプ52およびタンクヒータ58aの作動を維持する。そして、制御装置70は、プレヒート用貯留タンク58に貯められた熱媒体の温度が目標熱媒体温度以上まで加熱されたと判定するとステップS520において、温調側ポンプ52およびタンクヒータ58aそれぞれの作動を停止させる。
【0413】
ここで、目標熱媒体温度は、ステップS50で決定される第1目標温度Tb1またはステップS70で決定される第2目標温度Tb2と同じ温度で設定される。具体的に、ステップS50においてバッテリ60の目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合、目標熱媒体温度は、第1目標温度Tb1と同じ温度(本実施形態では、35℃)で設定される。これに対して、ステップS70においてバッテリ60の目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合、目標熱媒体温度は、第2目標温度Tb2と同じ温度(本実施形態では、65℃)で設定される。
【0414】
このため、本実施形態のプレヒートモードにおいて、温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体およびプレヒート用貯留タンク58が貯留する熱媒体を確実に第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2まで上昇させることができる。
【0415】
(1)本実施形態の温調装置50では、プレヒートモードにおいてプレヒート用貯留タンク58に流入する熱媒体をタンクヒータ58aによって加熱することができる。このため、プレヒート用貯留タンク58にタンクヒータ58aが設けられない構成に比較して、プレヒート用貯留タンク58に貯められる熱媒体の温度が目標熱媒体温度に至るまでに要する時間を短縮することができる。
【0416】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図28~
図37を参照して説明する。本実施形態における温調装置50は、第1温調側三方継手53が温調側三方弁59に置き換わっており、第2温調側三方継手54が温調側四方継手54aに置き換わっている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0417】
本実施形態の温調側熱媒体通路51には、
図28に示すように、バッテリ60のバッテリ水通路60aと温調側ポンプ52との間に温調側四方継手54aおよび温調側三方弁59が配置されている。具体的に、温調側熱媒体通路51には、温調側四方継手54aおよび温調側三方弁59が熱媒体流れに対してこの順で設けられている。
【0418】
また、本実施形態の温調側熱媒体通路51は、温調側三方弁59に流入する熱媒体を吸熱側熱媒体回路40に導く機器加熱用通路51cを有する。機器加熱用通路51cは、熱媒体流れ上流側が温調側三方弁59に接続されており、冷媒流れ下流側が吸熱側熱媒体回路40に設けられた機器加熱用三方継手45に接続されている。本実施形態では、機器加熱用通路51cが熱交換促進部として機能する。
【0419】
機器加熱用三方継手45は、電気機器用通路44においてT/A水通路62aと機器用ポンプ44bとの間に設けられ、2つの流入口および1つの流出口を有する三方継手部である。機器加熱用三方継手45は、一方の流入口にT/A水通路62aの出口側が接続され、他方の流入口に機器加熱用三方継手45が接続されている。また、機器加熱用三方継手45は、流出口に機器用ポンプ44bの吸入口が接続されている。
【0420】
温調側四方継手54aは、2つの流入口および2つの流出口を有し、2つの流入口から流入した熱媒体を2つの流出口へ流出させる四方継手部である。
【0421】
温調側四方継手54aは、一方の流入口に温調側三方弁59が接続されており、他方の流入口に吸熱側熱媒体通路41の熱媒体流れ下流側が接続されている。また、温調側四方継手54aは、一方の流出口に温調側ポンプ52の吸入口が接続されており、他方の流出口に上流側蓄熱用通路51baの熱媒体流れ上流側が接続されている。第2温調側三方継手54は、温調側三方弁59および吸熱側熱媒体通路41から流入する熱媒体を温調側ポンプ52または上流側蓄熱用通路51baへ導く。
【0422】
温調側三方弁59は、1つの流入口および2つの流出口を有し、温調装置50の熱媒体回路を切り替える熱媒体回路切替部である。具体的に、温調側三方弁59は、バッテリ水通路60aに接続されるバッテリ側流入口59aを有する。また、温調側三方弁59は、バッテリ水通路60aから流出した熱媒体を温調側四方継手54aを介して温調側ポンプ52へ導く冷暖房用流出口59bと、バッテリ水通路60aから流出した熱媒体を機器加熱用三方継手45へ導く機器加熱用流出口59cを有する。
【0423】
このように構成される本実施形態の温調装置50は、暖房モード、除湿暖房モード、冷却モードを実行する際に、制御装置70が温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと冷暖房用流出口59bとを連通させて冷媒が循環をさせる。また、温調装置50は、充電モードにおいて、熱媒体をT/A62のT/A水通路62aに導くことで、バッテリ60に加えて、T/A62にも蓄熱することができる。そして、温調装置50は、起動モードにおいて、熱媒体をT/A62のT/A水通路62aに導くことで、バッテリ60に蓄えた熱およびT/A62に蓄えた熱を利用して車室内を暖房することができる。以下に、本実施形態における充電モードおよび起動モードの作動の詳細を説明する。
【0424】
具体的な充電モードの制御処理について、
図29に示す制御フローを参照して説明する。本実施形態の充電モードは、
図29に示すように、第1実施形態の充電モードに比較して、T/A62を加熱する制御処理が追加されている。
図29に示す充電モードの制御フローで付されたステップのうち、
図5に示した第1実施形態の充電モードの制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0425】
制御装置70は、ステップS90において、起動タイミング情報が入力されていないと判定した場合、ステップS100において、バッテリ60の加熱を開始する。具体的に、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aと温調側流出口23dとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。さらに、制御装置70は、温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと冷暖房用流出口59bとを連通させる。
【0426】
そして、制御装置70は、空調側ポンプ22が作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、バッテリ60を充電させるための制御信号を充電器80に出力するとともに、電気ヒータ28に電力を供給させるための制御信号を充電器80に出力する。そして、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。
【0427】
この場合、熱媒体通路では、
図30の矢印に示すように、空調側ポンプ22→流量調整弁23→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→温調側三方弁59→温調側四方継手54a→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に熱媒体が循環する。
【0428】
ステップS110およびステップS120において、制御装置70は、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2以上になるまでバッテリ60の充電を維持する。これにより、充電モードにおいて、バッテリ60は、自己発熱によって得られる熱および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。
【0429】
そして、制御装置70は、ステップS130において、バッテリ60の充電および加熱を停止後、ステップS131において、T/A62へ供給するT/A加熱量Q3を算出する。T/A加熱量Q3は、外気温Tcirに基づいて、予め制御装置70に記憶された制御マップを参照して決定される値であって、T/A62を第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2まで加熱するために必要な熱量である。
【0430】
具体的に、T/A加熱量Q3は、ステップS50においてバッテリ60の目標温度が第1目標温度Tb1に決定された場合、T/A62の温度を、ステップS20で検出した外気温Tcirから第1目標温度Tb1まで加熱可能な熱量に決定される。また、T/A加熱量Q3は、ステップS70においてバッテリ60の目標温度が第2目標温度Tb2に決定された場合、T/A62の温度を、ステップS20で検出した外気温Tcirから第2目標温度Tb2まで加熱可能な熱量に決定される。
【0431】
ステップS132において、制御装置70は、ステップS131で決定したT/A加熱量Q3をT/A62へ供給するために必要なT/A加熱時間を算出する。T/A加熱時間は、バッテリ60の充電によって発生する単位時間当たりの熱量、T/A62の内部を循環する潤滑油の熱容量、T/A62の外殻を形成するハウジング部の形状および材質等に基づいて予め定められる制御マップによって決定される。
【0432】
ステップS133において、制御装置70は、T/A62の加熱を開始する。具体的に、制御装置70は、バッテリ水通路60aから流出する熱媒体をT/A水通路62aへ導くため、温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと機器加熱用流出口59cとを連通させる。そして、制御装置70は、空調側ポンプ22および電気ヒータ28の作動を維持する。
【0433】
これにより、熱媒体通路では、
図31の矢印に示すように、空調側ポンプ22→流量調整弁23→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→温調側三方弁59→機器加熱用三方継手45→T/A水通路62a→MG水通路61a→PCU水通路63a→機器用三方継手44a→吸熱側三方継手43→温調側四方継手54a→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に熱媒体が循環する。
【0434】
このように熱媒体が流れる充電モードの温調装置50では、電気ヒータ28およびバッテリ60によって加熱された熱媒体がT/A水通路62aにおいてT/A62と熱交換することで、T/A62を加熱する。また、電気ヒータ28およびバッテリ60によって加熱された熱媒体がMG水通路61aにおいてMG61と熱交換することで、MG61も加熱される。さらに、電気ヒータ28およびバッテリ60によって加熱された熱媒体がPCU水通路63aにおいてPCU63と熱交換することで、PCU63も加熱される。
【0435】
ステップS134において、制御装置70は、ステップS132において算出したT/A加熱時間が経過したか否かを判定する。そして、制御装置70は、T/A加熱時間が経過するまで電気ヒータ28への電力供給およびバッテリ60の充電を維持する。これにより、T/A62、MG61およびPCU63は、電気ヒータ28およびバッテリ60によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。また、T/A62が蓄熱することによって、T/A62の内部を循環する潤滑油の温度が加熱される。
【0436】
これにより、温調装置50は、熱媒体を貯留するためのタンクを設けなくとも、第1実施形態の充電モードにおいて温調装置50全体に蓄えられる熱量に比較して、T/A62、MG61およびPCU63に蓄えられる熱量だけ、温調装置50全体に蓄えられる熱量が増加する。また、バッテリ60の加熱が終了した後にT/A62の加熱を開始することによって、T/A62よりもバッテリ60を優先して加熱することができる。
【0437】
そして、ステップS134において、T/A加熱時間が経過したと判定した場合、ステップS135において、制御装置70は、T/A62の加熱を停止する。具体的に、ステップS135において、制御装置70は、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれへの制御信号の出力を停止する。このように制御することで、制御装置70は、T/A62の温度を第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2まで上昇させることができる。
【0438】
ステップS140およびステップS150において、制御装置70は、車両が作動を開始するまで、バッテリ60の温度およびT/A62の温度を維持させる。具体的に、ステップS150において、制御装置70は、温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと機器加熱用流出口59cとが連通した状態を維持する。そして、制御装置70は、バッテリ温度検出部72aから送信されるバッテリ温度Tbに基づいて、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2に近づくように空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれを制御する。
【0439】
これにより、バッテリ60は、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2に近い温度で維持される。また、第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2に近い温度のバッテリ60によって加熱された熱媒体がT/A水通路62aに流入することで、T/A62も、第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2に近い温度で維持される。
【0440】
ステップS140およびステップS150において、制御装置70は、車両が作動を開始するまで空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれを断続的に動作させる。そして、ステップS140において車両が作動を開始したと判定すると、制御装置70は、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれの作動を停止させて充電モードを終了する。
【0441】
また、ステップS90において、起動タイミング情報が入力されていると判定した場合、制御装置70は、ステップS160において、制御装置70は、電気ヒータ28によってバッテリ60を加熱する際のヒータ加熱量QHを算出する。そして、ステップS161において、制御装置70は、ステップS131と同様に、T/A62へ供給するT/A加熱量Q3を算出する。
【0442】
ステップS171において、制御装置70は、加熱開始タイミングを算出する。加熱開始タイミングは、ステップS160において算出したヒータ加熱量QHと、ステップS161で算出したT/A加熱量Q3と、予め定められる加熱開始タイミングを算出する制御マップとに基づいて算出される。
【0443】
そして、制御装置70は、ステップS180~ステップS220を実行することでバッテリ60を加熱する。なお、制御装置70は、ステップS190において、ステップS100と同様に、温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと冷暖房用流出口59bとを連通させる。
【0444】
この場合、熱媒体通路では、
図30の矢印に示すように、空調側ポンプ22→流量調整弁23→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→温調側三方弁59→温調側四方継手54a→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に熱媒体が循環する。このように熱媒体が流れる充電モードにおいて、バッテリ60は、電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から供給される熱量および充電によって発生する熱を蓄える。
【0445】
制御装置70は、ステップS200およびステップS210において、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2以上になるまでバッテリ60の充電を維持する。これにより、バッテリ60は、自己発熱によって得られる熱および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。
【0446】
ステップS200およびステップS210において、バッテリ60が満充電状態、且つ、バッテリ温度Tbが第1目標温度Tb1または第2目標温度Tb2以上になるまで昇温されたと判定した場合、制御装置70は、バッテリ60の加熱を停止する。そして、ステップS223~ステップS225において、制御装置70は、ステップS133~ステップS135と同様に、T/A62を加熱する。
【0447】
具体的に、ステップS223において、制御装置70は、温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと機器加熱用流出口59cとを連通させる。そして、制御装置70は、空調側ポンプ22が作動するための制御信号を出力する。そして、制御装置70は、空調側ポンプ22および電気ヒータ28の作動を維持する。これにより、T/A62は、電気ヒータ28およびバッテリ60によって加熱された熱媒体がT/A水通路62aに流入することで加熱される。
【0448】
ステップS224において、制御装置70は、加熱時間が経過するまで電気ヒータ28への電力供給およびバッテリ60の充電を維持する。これにより、T/A62は、電気ヒータ28およびバッテリ60によって加熱された熱媒体から供給される熱を蓄える。
【0449】
そして、ステップS224において、加熱時間が経過したと判定した場合、ステップS225において、制御装置70は、T/A62の加熱を停止する。具体的に、制御装置70は、空調側ポンプ22、充電器80、電気ヒータ28それぞれへの制御信号の出力を停止させて充電モードを終了する。
【0450】
続いて、具体的な起動モードの制御処理について、
図32に示す制御フローを参照して説明する。
図32に示す起動モードの制御フローで付されたステップのうち、
図7に示した第1実施形態の起動モードの制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0451】
ステップS320において、制御装置70は、暖房要求大フラグがオンであるか否かを判定する。ステップS320において暖房要求大フラグがオンでないと判定された場合、制御装置70は、ステップS335に進み、バッテリ蓄熱暖房モードを実行する。これに対して、ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定された場合、制御装置70は、ステップS355に進み、T/A蓄熱暖房モードを実行する。
【0452】
バッテリ蓄熱暖房モードにおいて、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aとヒータコア側流出口23cとを連通させる。さらに、制御装置70は、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させるとともに、温調側三方弁59の温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと冷暖房用流出口59bとを連通させる。
【0453】
そして、制御装置70は、圧縮機12、空調側ポンプ22それぞれが作動するための制御信号を出力する。また、制御装置70は、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第1流量V1となるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。なお、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体によってヒータコア25を通過する空気を充分に加熱できない場合、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。
【0454】
ところで、車両用空調装置1は、外気温Tcirが比較的低い場合に、乗員の操作パネル71の操作によって、暖房要求がされる。そして、外気温Tcirが比較的低い場合、MG61、T/A62、PCU63の加熱が必要となる可能性が高い。このため、暖房要求がされる際に、制御装置70は、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させるのに加えて、電気機器側流入口56bと電気機器側流出口56eとを連通させてもよい。
【0455】
また、MG61、T/A62、PCU63の加熱が必要となる場合、制御装置70は、機器用ポンプ44bが作動するための制御信号を出力する。制御装置70は、MG61、T/A62、PCU63の温度に応じて、機器用ポンプ44bの圧送能力を変更させてもよい。以下では、MG61、T/A62、PCU63の加熱が必要となっている場合において、吸熱側熱媒体回路40に熱媒体を循環させる際の作動について説明する。なお、MG61、T/A62、PCU63の加熱が必要となっていない場合、車両用空調装置1は、吸熱側熱媒体回路40において熱媒体を循環させない。
【0456】
したがって、バッテリ蓄熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図33の矢印に示すように、圧縮機12→水-冷媒熱交換器13の冷媒通路→第2膨張弁14b→チラー16のチラー冷媒通路16a→圧縮機12の順に冷媒が循環する。また、バッテリ蓄熱暖房モードの空調側熱媒体回路20では、空調側ポンプ22→流量調整弁23→ヒータコア25→第1空調三方継手26→水-冷媒熱交換器13の水通路→第2空調三方継手27→電気ヒータ28→空調側ポンプ22の順に冷媒が循環する。
【0457】
そして、バッテリ蓄熱暖房モードの温調装置50では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→温調側三方弁59→温調側四方継手54a→温調側ポンプ52の順に冷媒が循環する。
【0458】
また、吸熱側熱媒体回路40では、機器用ポンプ44b→温調側五方弁56→バイパス通路44c→機器用三方継手44a→PCU水通路63a→MG水通路61a→T/A水通路62a→機器用ポンプ44bの順に熱媒体が循環する。
【0459】
このように熱媒体が流れるバッテリ蓄熱暖房モードの温調装置50では、バッテリ水通路60aを流れる熱媒体が蓄熱したバッテリ60と熱交換することで加熱される。そして、バッテリ60に蓄えた熱によって加熱された熱媒体がチラー16において冷凍サイクル装置10を流れる冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。
【0460】
また、このように冷媒が流れる蓄熱暖房小モードの冷凍サイクル装置10では、熱媒体と熱交換して加熱された冷媒がチラー冷媒通路16aから流出し、圧縮機12によって圧縮および加熱されて水-冷媒熱交換器13に流入する。そして、水-冷媒熱交換器13に流入した冷媒は、水-冷媒熱交換器13において空調側熱媒体回路20を流れる熱媒体と熱交換して熱媒体を加熱する。また、水-冷媒熱交換器13から流出した冷媒は、第2膨張弁14bによって減圧される。
【0461】
そして、このように熱媒体が流れるバッテリ蓄熱暖房モードの空調側熱媒体回路20では、水-冷媒熱交換器13および電気ヒータ28によって加熱された熱媒体がヒータコア25において送風機33から送風された送風空気と熱交換して、送風空気を加熱する。
【0462】
また、このように熱媒体が流れる吸熱側熱媒体回路40では、MG水通路61a、T/A水通路62a、PCU水通路63aを流れる熱媒体と自己発熱によって加熱するMG61、T/A62、PCU63とを熱交換させて熱媒体を加熱することができる。そして、加熱された熱媒体をバイパス通路44cを介してMG水通路61aに戻すことで、MG61、T/A62、PCU63の自己発熱を用いてMG61、T/A62、PCU63を加熱することができる。
【0463】
したがって、バッテリ蓄熱暖房モードの車両用空調装置1は、バッテリ60に蓄えた熱を利用して加熱した熱媒体を介してヒータコア25にて送風空気を加熱し、加熱された空調風を車室内へ吹き出すことにより、車室内の暖房を行うことができる。
【0464】
ステップS340において、制御装置70は、第1ポンプ維持時間t1が経過したか否かを判定する。制御装置70は、ステップS340において、第1ポンプ維持時間t1が経過するまで、車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持する。このため、温調装置50では、第1ポンプ維持時間t1が経過するまで、チラー水通路16bに第1流量V1の熱媒体が流入し続ける。
【0465】
ステップS340において第1ポンプ維持時間t1が経過したと判定した場合、制御装置70は、センサ群72の検出信号および操作パネル71に入力される車室内の目標温度等に応じて、運転モードを暖房モードまたは除湿暖房モードに切り替える。
【0466】
また、ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定された場合、ステップS355において、制御装置70は、T/A蓄熱暖房モードを実行する。具体的に、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置70は、流量調整弁23のポンプ側流入口23aとヒータコア側流出口23cとを連通させるとともに、温調側五方弁56のチラー側流入口56aとバッテリ側流出口56cとを連通させる。そして、制御装置70は、温調側三方弁59の温調側三方弁59のバッテリ側流入口59aと機器加熱用流出口59cとを連通させる。
【0467】
そして、制御装置70は、圧縮機12、空調側ポンプ22それぞれが作動するための制御信号を出力する。制御装置70は、バッテリ蓄熱暖房モードと同様に、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第1流量V1となるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。また、制御装置70は、水-冷媒熱交換器13の水通路から流出する熱媒体によってヒータコア25を通過する空気を充分に加熱できない場合、電気ヒータ28が作動するための制御信号を出力する。
【0468】
また、制御装置70は、温調側五方弁56の電気機器側流入口56bと電気機器側流出口56eとを連通させるための制御信号を出力する。
【0469】
したがって、T/A蓄熱暖房モードの冷凍サイクル装置10、空調側熱媒体回路20では、
図34の矢印に示すように、バッテリ蓄熱暖房モードと同様に熱媒体および冷媒が流れる。しかし、T/A蓄熱暖房モードの温調装置50および吸熱側熱媒体回路40では、温調側ポンプ52→チラー16のチラー水通路16b→温調側五方弁56→第3温調側三方継手55→バッテリ60のバッテリ水通路60a→温調側三方弁59→機器加熱用三方継手45→T/A水通路62a→MG水通路61a→PCU水通路63a→機器用三方継手44a→吸熱側三方継手43→温調側四方継手54a→温調側ポンプ52の順に熱媒体が循環する。
【0470】
このように熱媒体が流れるT/A蓄熱暖房モードの温調装置50では、熱媒体がバッテリ水通路60aを流れる際に蓄熱したバッテリ60と熱交換することで加熱され、T/A水通路62aを流れる際に蓄熱したT/A62と熱交換することでさらに加熱される。このため、T/A水通路62aから流出する熱媒体は、バッテリ蓄熱暖房モードにおいてバッテリ水通路60aから流出する熱媒体に比較してT/A62と熱交換することによって加熱される分だけ温度が高くなる。
【0471】
これにより、T/A蓄熱暖房モードにおいてチラー水通路16bに流入する熱媒体は、バッテリ蓄熱暖房モードにおけるチラー水通路16bに流入する熱媒体に比較してT/A62と熱交換することによって加熱される分だけ温度が高くなる。
【0472】
そして、バッテリ60に蓄えた熱およびT/A62に蓄えた熱によって加熱された熱媒体がチラー16において冷凍サイクル装置10を流れる冷媒と熱交換して冷媒を加熱する。このため、T/A蓄熱暖房モードのチラー16において熱媒体と熱交換して加熱される冷媒は、バッテリ蓄熱暖房モードのチラー16において熱媒体と熱交換して加熱される冷媒の温度より高い温度まで加熱される。
【0473】
これにより、T/A蓄熱暖房モードのヒータコア25において加熱される送風空気は、バッテリ蓄熱暖房モードのヒータコア25において加熱される冷送風空気の温度より高い温度まで加熱される。したがって、T/A蓄熱暖房モードの車両用空調装置1は、バッテリ60およびT/A62に蓄えた熱を利用して送風空気を加熱することで、バッテリ蓄熱暖房モードにおいて吹き出す送風空気の温度よりも高い温度の送風空気を吹き出すことができる。
【0474】
ステップS360において、制御装置70は、第2ポンプ維持時間t2が経過したか否かを判定する。制御装置70は、ステップS360において、第2ポンプ維持時間t2が経過するまで、車両用空調装置1の各種構成機器の作動を維持する。このため、温調装置50では、第2ポンプ維持時間t2が経過するまで、バッテリ蓄熱暖房モードと同様に、チラー水通路16bに第1流量V1の熱媒体が流入し続ける。
【0475】
ステップS360において第2ポンプ維持時間t2が経過したと判定した場合、制御装置70は、センサ群72の検出信号および操作パネル71に入力される車室内の目標温度等に応じて、運転モードを暖房モードまたは除湿暖房モードに切り替える。
【0476】
このように、本実施形態の温調装置50では、充電モードにおいて、T/A62に熱媒体を循環させることで、T/A62に蓄熱させることができる。
【0477】
そして、起動モードにおいて、T/A62に蓄えた熱を利用してチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度を高くすることで、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。これにより、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の温度を車両用空調装置1が暖房を行うために充分な温度まで加熱し易くできる。このため、バッテリ60に蓄えた熱およびT/A62に蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、車両用空調装置1は、車室内を充分に暖房することができる。
【0478】
また、充電モードにおいてT/A62に蓄熱することによって、充電モードにおいてT/A62に蓄熱しない場合に比較して、起動モードにおけるT/A62の温度が上昇している。
【0479】
ここで、T/A62の内部を循環させてトランスミッションの動作を潤滑する潤滑油の温度変化について、
図35を参照して説明する。なお、
図35における破線は、充電モードにおいてT/A62に蓄熱しない場合の起動モードの実行後における時間経過に伴う潤滑油の温度変化を表す。また、
図35における実線は、本実施形態の充電モードにおいてT/A62に蓄熱した場合の起動モードの実行後における時間経過に伴う潤滑油の温度変化を表す。
【0480】
車両が作動を開始して車両用空調装置1の作動が開始されることで起動モードが実行されると、
図35に示すように、T/A62の内部を循環する潤滑油の温度は、T/A62の作動に伴う自己発熱によって、時間の経過にともない上昇する。また、起動モードの開始時点における潤滑油の温度は、充電モードにおいてT/A62に蓄熱されることで、T/A62に蓄熱しない場合に比較して高くなる。
【0481】
このため、充電モードにおいてT/A62に蓄熱した場合の起動モードの実行後における潤滑油の温度は、起動モードを実行開始後のいずれの時間のおいても、充電モードにおいてT/A62に蓄熱しない場合に比較して高くなる。なお、充電モードにおいてT/A62に蓄熱した場合と蓄熱しない場合の起動モードの実行後における潤滑油の温度差は、時間の経過に伴い小さくなる。
【0482】
ところで、T/A62の内部を循環する潤滑油の温度が高いほど、当該潤滑油の粘性が低くなる。このため、T/A62が作動する際に発生するトランスミッションのフリクションロスは、T/A62の内部を循環する潤滑油の温度が高いほど抑制し易い。
【0483】
そして、本実施形態の温調装置50は、充電モードにおいてT/A62に蓄熱することで、起動モードで実行した際の潤滑油の温度を、T/A62に蓄熱しない場合に比較して高くできる。このため、本実施形態の温調装置50は、充電モードにおいてT/A62に蓄熱しない場合に比較してトランスミッションのフリクションロスを抑制できる。
【0484】
充電モードにおいてT/A62に蓄熱した場合と充電モードにおいてT/A62に蓄熱しない場合のそれぞれの具体的なトランスミッションのフリクションロスについて、
図36および
図37を参照して説明する。なお、
図36における破線は、充電モードにおいてT/A62に蓄熱しない場合の起動モードの実行後における時間経過に伴うフリクションロスの大きさの変化を表す。また、
図36における実線は、本実施形態の充電モードにおいてT/A62に蓄熱した場合の起動モードの実行後における時間経過に伴うフリクションロスの大きさの変化を表す。
【0485】
また、
図37における斜線のハッチングを付したグラフは、T/A62に蓄熱せずに起動モードを実行した場合の実行開始から所定時間t3に至るまでのフリクションロスの平均値を表す。また、
図37におけるドット柄のハッチングを付したグラフは、充電モードにおいてT/A62に蓄熱して起動モードの実行した場合の実行開始から所定時間t3に至るまでのフリクションロスの平均値を表す。
【0486】
図36に示すように、潤滑油の温度差が比較的大きい起動モードの実行直後は、T/A62に蓄熱した場合と蓄熱しない場合のフリクションロスの差が比較的大きい。そして、当該フリクションロスの差は、時間の経過に伴い小さくなる。
【0487】
そして、起動モードの実行後、所定時間t3に至るまでのフリクションロスの平均値は、T/A62に蓄熱しない場合に比較して、蓄熱した場合の方が小さくなる。
【0488】
(1)本実施形態の温調装置50では、T/A62に蓄えた熱を利用してチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度を高くすることで、チラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。これにより、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の温度を車両用空調装置1が暖房を行うために充分な温度まで加熱し易くできる。このため、バッテリ60に蓄えた熱およびT/A62に蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、車両用空調装置1は、車室内を充分に暖房することができる。
【0489】
また、本実施形態の温調装置50は、充電モードにおいてT/A62に蓄熱することによって、トランスミッションのフリクションロスを抑制できる。
【0490】
(第5実施形態の第1の変形例)
上述の第5実施形態では、充電モードにおいて、制御装置70が、T/A加熱時間が経過したと判定した場合にT/A62の加熱を停止する例について説明したが、これに限定されない。例えば、バッテリ温度検出部72aから送信される検出信号に基づいて、制御装置70が、T/A62の加熱を停止する構成であってもよい。具体的に、バッテリ温度Tbが所定の温度以上になった場合に、制御装置70が、T/A62の加熱を停止する構成であってもよい。
【0491】
(第5実施形態の第2の変形例)
上述の第5実施形態では、温調装置50が、バッテリ60およびT/A62に蓄熱する例について説明したが、これに限定されない。例えば、温調装置50は、第2実施形態等のように、熱媒体を貯めることが可能な貯留タンクを備え、バッテリ60およびT/A62に加えて当該タンクにも蓄熱可能な構成であってもよい。
【0492】
(第5実施形態の第3の変形例)
上述の第5実施形態では、温調装置50が、充電モードおよび起動モードを実行する例について説明したが、これに限定されない。例えば、温調装置50は、充電モードおよび起動モードに加えて、第4実施形態で説明したプレヒートモードを実行可能に構成せれていてもよい。
【0493】
(第5実施形態の第3の変形例)
上述の第5実施形態では、温調装置50が、充電モードの実行時に、バッテリ60の加熱終了後にT/A62を加熱する例について説明したが、これに限定されない。例えば、温調装置50は、充電モードの実行時に、バッテリ60およびT/A62を同時に加熱してもよい。
【0494】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、
図38~
図40を参照して説明する。本実施形態における温調装置50は、制御装置70が起動モードにおいて、暖房要求大フラグのオン/オフに応じて温調側ポンプ52の圧送能力を変更する点が第5実施形態と相違している。本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について主に説明し、第5実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0495】
本実施形態の起動モードの制御処理について、
図38に示す制御フローを参照して説明する。なお、
図38に示す起動モードの制御フローは、ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定された場合に実行される制御処理が
図32に示した第5実施形態の起動モードの制御フローと異なる。このため、以下に、ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定された場合に実行される制御処理の説明をし、その他の制御処理の内容の説明を省略する。
【0496】
ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定された場合、ステップS356において、制御装置70は、T/A蓄熱暖房大モードを実行する。具体的に、制御装置70は、T/A蓄熱暖房モードと異なり、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量が第2流量V2となるための制御信号を温調側ポンプ52に出力する。すなわち、制御装置70は、ステップS320において暖房要求大フラグがオンであると判定されなかった場合に比較して、温調側ポンプ52の圧送能力を大きくする。
【0497】
したがって、T/A蓄熱暖房大モードの冷凍サイクル装置10では、温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量がバッテリ蓄熱暖房モードにおける温調側ポンプ52から流出する熱媒体の単位時間当たりの流量に比較して大きくなる。このため、T/A蓄熱暖房大モードでは、チラー16のチラー水通路16bに流入する熱媒体の単位時間当たりの流量がバッテリ蓄熱暖房モードにおけるチラー16のチラー水通路16bに流入する熱媒体の単位時間当たりの流量より増加する。
【0498】
これにより、バッテリ蓄熱暖房モードに比較して、T/A蓄熱暖房大モードのチラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進させることができる。以下に、
図39~
図41を参照して、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した場合と、T/A蓄熱暖房大モードを実行した場合とのバッテリ60の温度、チラー水通路16bに流入する熱媒体の温度、チラー水通路16bから流出する熱媒体の温度について、説明する。
【0499】
図39に示す破線は、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した際の時間経過に伴うバッテリ60の温度変化を表す。また、
図39に示す実線は、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した際の時間経過に伴うチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度変化を表す。そして、
図39に示す一点鎖線は、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した際の時間経過に伴うチラー水通路16bから流出する熱媒体の温度変化を表す。
【0500】
これに対して、
図40に示す破線は、T/A蓄熱暖房大モードを実行した際の時間経過に伴うバッテリ60の温度変化を表す。また、
図40に示す実線は、T/A蓄熱暖房大モードを実行した際の時間経過に伴うチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度変化を表す。そして、
図40に示す一点鎖線は、T/A蓄熱暖房大モードを実行した際の時間経過に伴うチラー水通路16bから流出する熱媒体の温度変化を表す。
【0501】
図39および
図40に示すように、各モード開始後の経過時間が等しい場合、T/A蓄熱暖房大モードを実行した場合のバッテリ60の温度は、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した場合に比較して高くなる。すなわち、T/A蓄熱暖房大モードを実行した場合、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した場合に比較して、時間経過に伴うバッテリ温度Tbの低下を抑制できる。
【0502】
これは、T/A蓄熱暖房大モードにおいて、T/A62に蓄えた熱を用いて熱媒体を加熱することで、バッテリ水通路60aにおいてバッテリ60から熱媒体に供給する熱量を抑制することができるためである。
【0503】
また、T/A蓄熱暖房大モードにおいて、T/A62に蓄えた熱を用いて熱媒体を加熱することで、T/A蓄熱暖房大モードを実行した場合の温調側熱媒体通路51を循環する熱媒体の温度をバッテリ蓄熱暖房モードを実行した場合に比較して高くすることができる。このため、各モード開始後の経過時間が等しい場合、T/A蓄熱暖房大モードを実行した場合のチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度は、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した場合に比較して高くなる。
【0504】
例えば、
図41に示すように、T/A蓄熱暖房大モードの実行開始から所定時間t4経過時点のチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度は、バッテリ蓄熱暖房モードの実行開始から所定時間t4経過時点のチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度より高い。
【0505】
なお、
図41に示す斜線のハッチングを付したグラフは、バッテリ蓄熱暖房モードの実行開始から所定時間t4経過時点におけるチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度を表す。また、
図41に示すドット柄のハッチングを付したグラフは、T/A蓄熱暖房大モードの実行開始から所定時間t4経過時点におけるチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度を表す。
【0506】
これにより、T/A蓄熱暖房大モードを実行した場合、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した場合に比較してバッテリ60の温度とチラー水通路16bに流入する熱媒体の温度との乖離は小さくできる。このため、T/A蓄熱暖房大モードを実行した場合、バッテリ蓄熱暖房モードを実行した場合に比較してチラー16における熱媒体と冷媒との熱交換を促進することができる。
【0507】
このため、冷凍サイクル装置10を循環する冷媒の温度を車両用空調装置1が暖房を行うために充分な温度まで加熱し易くできる。したがって、バッテリ60に蓄えた熱およびT/A62に蓄えた熱を利用して暖房を行う際に、車両用空調装置1は、車室内を充分に暖房することができる。
【0508】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0509】
上述の実施形態では、充電モードにおいて、バッテリ60の充電に伴う発熱および電気ヒータ28によって加熱される熱媒体を用いてバッテリ60が蓄熱する例について説明したが、これに限定されない。例えば、車両用空調装置1は、充電モードにおいて、バッテリ60の充電に伴う発熱のみをバッテリ60に蓄熱する構成でもよい。
【0510】
上述の実施形態では、充電モードにおいて、車両用空調装置1のヒートポンプの性能が低下している虞があるか否かに基づいて、バッテリ60の目標温度が変化する例について説明したが、これに限定されない。例えば、車両用空調装置1のヒートポンプの性能に応じてバッテリ60の目標温度が変化せず、バッテリ60の目標温度が予め所定の温度に定められていてもよい。
【0511】
上述の実施形態では、冷暖房用通路51aが、熱媒体流れ最上流部から最下流部に至る部位まで、断熱性を有する通路断熱部材51aaで覆われている例について説明したが、これに限定されない。例えば、冷暖房用通路51aは、熱媒体流れ最上流部から最下流部に至る部位のうち、少なくとも一部が断熱性を有する通路断熱部材51aaで覆われている構成であってもよい。
【0512】
上述の実施形態では、制御装置70が外気温Tcirを外気温検出部72dから取得する例について説明したが、これに限定されない。例えば、車両用空調装置1は、外気温検出部72dが廃された構成であって、車両の外部のサーバまたはクラウドから外気温Tcirを受信する構成であってもよい。あるいは、車両用空調装置1は、外気温検出部72dが廃された構成であって、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外気温Tcirに関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外気温Tcirを推定する構成であってもよい。
【0513】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0514】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0515】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0516】
1 車両用空調装置
10 冷凍サイクル装置
16 熱交換器
51 熱媒体通路
52 駆動部
60 バッテリ
70 熱交換促進部