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特許7567679コイル温度センサ故障検出システム及びコイル温度センサ故障検出方法
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  • 特許-コイル温度センサ故障検出システム及びコイル温度センサ故障検出方法 図1
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  • 特許-コイル温度センサ故障検出システム及びコイル温度センサ故障検出方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】コイル温度センサ故障検出システム及びコイル温度センサ故障検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20241008BHJP
   H02P 29/64 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P29/64
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021102135
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001425
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】米山 嵩人
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178799(JP,A)
【文献】特開2004-320881(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131408(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021043(WO,A1)
【文献】特開2013-005475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
H02P 29/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相のモータのコイル温度センサ故障検出システムであって、
前記モータのロック時に、コイル温度センサにより検出された三相の異なる相のモータコイル温度検出値の差分の絶対値から当該ロック時の当該コイル温度センサの温度補正値を減算して得られた値に基づき、当該コイル温度センサの異常判定を行う温度センサ異常判定部を備えたこと
を特徴とするコイル温度センサ故障検出システム。
【請求項2】
前記温度センサ異常判定部は、前記モータのロック解除後に、前記コイル温度センサにより検出された三相の異なる相のモータコイル温度検出値の差分の絶対値から以下の式(1)で示される当該コイル温度センサの温度補正値H2を減算して得られた値に基づき、当該コイル温度センサの異常判定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載のコイル温度センサ故障検出システム。
H2=H1×exp(-t/τ)…(1)
H1:前記モータのロック時のモータコイル温度補正値
t:前記モータのロック解除後の経過時間(秒)
τ:前記モータのモータコイル温度熱時定数
【請求項3】
前記モータはインバータによって駆動することを特徴とする請求項1または2に記載のコイル温度センサ故障検出システム。
【請求項4】
三相のモータのコイル温度センサ故障検出方法であって、
前記モータのロック時に、コイル温度センサにより検出された三相の異なる相のモータコイル温度検出値の差分の絶対値から当該ロック時の当該コイル温度センサの温度補正値を減算して得られた値に基づき、当該コイル温度センサの異常判定を行う
ことを特徴とするコイル温度センサ故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載モータ等のモータのコイル温度センサの故障検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
三相モータを駆動するインバータにおいて、モータコイルに温度センサを設けてコイルの過熱保護を行う先行技術がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、モータコイルの温度検出部において、温度センサの故障を見抜くために、三相コイル中二相に取り付けた温度センサの2点の検出値を比較することでセンサの健全性を監視し故障の検出を行う技術がある。
【0004】
図3に示すインバータ3において、主回路部4は、モータ2に電力を給電する。従来の温度センサ異常判定部5は、モータ2内のU相コイル及びV相コイルに設けられたコイル温度センサ6より、U相コイル温度Tu及びV相コイル温度Tvを検出する。図4に示された温度センサ異常判定部5の従来のコイル温度センサ故障検出回路20は、第一減算回路11によりモータコイル温度検出値1(Tu)とモータコイル温度検出値2(Tv)との差分を算出する。前記差分は絶対値回路12を介して絶対値として第二減算回路16に供される。そして、第二減算回路16において前記絶対値が減算回路閾値を超過した時に、前記二点の温度センサのいずれかが故障発生していると判定する。この技術は、三相モータの各相にはほぼ等しい電流が流れ、各相のコイル温度はほぼ等しいことを前提としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-62266号公報
【文献】特開2013-5475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、モータロック時においては、モータの三相コイルに流れる電流が不平衡となる。このことから、各相のコイル温度に乖離が生じ、二点の温度センサが正常であっても、温度センサ異常の誤検出を起こす。また、モータロックの解除後も、コイル温度の熱時定数が長いため、モータロックの解除から所定時間経過までの期間では、上記の温度センサ異常の誤検出を起こす。
【0007】
本発明は、以上の事情を鑑み、モータのロック時を含むモータ駆動時のコイル温度センサの故障診断を可能とすることで高頻度且つ高精度で温度センサの故障検出を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、三相のモータのコイル温度センサ故障検出システムであって、前記モータのロック時に、コイル温度センサにより検出された三相の異なる相のモータコイル温度検出値の差分の絶対値から当該ロック時の当該コイル温度センサの温度補正値を減算して得られた値に基づき、当該コイル温度センサの異常判定を行う温度センサ異常判定部を備える。
【0009】
本発明の一態様は、前記コイル温度センサ故障検出システムにおいて、前記温度センサ異常判定部は、前記モータのロック解除後に、前記コイル温度センサにより検出された三相の異なる相のモータコイル温度検出値の差分の絶対値から以下の式(1)で示される当該コイル温度センサの温度補正値H2を減算して得られた値に基づき、当該コイル温度センサの異常判定を行う。
H2=H1×exp(-t/τ)…(1)
H1:前記モータのロック時のモータコイル温度補正値
t:前記モータのロック解除後の経過時間(秒)
τ:前記モータのモータコイル温度熱時定数
本発明の一態様は、前記コイル温度センサ故障検出システムにおいて、前記モータはインバータによって駆動する。
【0010】
本発明の一態様は、三相のモータのコイル温度センサ故障検出方法であって、前記モータのロック時に、コイル温度センサにより検出された三相の異なる相のモータコイル温度検出値の差分の絶対値から当該ロック時の当該コイル温度センサの温度補正値を減算して得られた値に基づき、当該コイル温度センサの異常判定を行う。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、モータのロック時を含むモータ駆動時のコイル温度センサの故障診断を可能とすることで高頻度且つ高精度で温度センサの故障検出を行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様であるコイル温度センサ故障検出システムのブロック図。
図2】前記コイル温度センサ故障検出システムのコイル温度センサ故障検出回路。
図3】従来のコイル温度センサ故障検出システムのブロック図。
図4】従来のコイル温度センサ故障検出回路。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1に示された本発明の一態様であるコイル温度センサ故障検出システム1は、三相のモータ2及びインバータ3を備える。
【0015】
インバータ3は、主回路部4と、温度センサ異常判定部5とを備える。
【0016】
主回路部4は、モータ2を駆動制御する。モータ2には、コイル温度センサ6、回転数センサ7、トルクセンサ8が付帯されている。
【0017】
温度センサ異常判定部5は、モータ2のロック時に二点(U,V)のコイル温度検出値Tu,Tvの差分の絶対値から当該ロック時またはロック解除後の前記温度センサの温度補正値を減算した値に基づき当該温度センサの異常判定を行う。
【0018】
温度センサ異常判定部5には、モータ2のコイル温度検出値Tu,Tvに加えて、モータ2の回転数検出値及びトルク検出値が入力される。この回転数検出値とトルク検出値は、本来のインバータ3の制御に用いてもよい。この場合、回転数センサ7及びトルクセンサ8を別途新たに備える必要がなくなる。また、モータトルク検出値は、外部から入力されてインバータ3の制御に用いられるトルク指令値に置き換えてもよい。この場合でも、トルクセンサ8を別途備える必要がなくなる。
【0019】
温度センサ異常判定部5は、具体的には図2に例示のコイル温度センサ故障検出回路10を実装する。
【0020】
コイル温度センサ故障検出回路10は、モータ2のロック時及び通常時のコイル温度センサ故障の判定を行う。
【0021】
コイル温度センサ故障検出回路10は、第一減算回路11、絶対値回路12、モータロック判定回路13、スイッチ回路14、一次遅れフィルタ15、第二減算回路16、第三減算回路17を備える。
【0022】
第一減算回路11は、コイル温度センサ6から入力されたモータコイル温度検出値1(コイル温度検出値Tu)とモータコイル温度検出値2(コイル温度検出値Tv)との差分を出力する。
【0023】
絶対値回路12は、第一減算回路11から入力された差分の絶対値を出力する。
【0024】
モータロック判定回路13は、回転数センサ7及びトルクセンサ8から各々入力されたモータ2の回転数検出値及びトルク検出値に基づきモータ2がロック時またはロック解除後であるか否かの判定を行い、判定した状態を示す信号を出力する。この判定には、例えば、特許文献2に記載のモータロック判定技術が適用される。
【0025】
スイッチ回路14は、モータロック判定回路13から入力された信号に基づき、ロック時の温度補正値H1または以下の初期値、目標値及びフィルタ時定数に基づく一次遅れフィルタ15を介したロック解除後の温度補正値H2のいずれかを選択して出力する。
初期値:モータ2のロック時のモータコイル温度補正値(H1)
目標値:0
フィルタ時定数:モータコイル温度熱時定数(τ)
ロック時の温度補正値H1は、モータ2がロック時の各相のコイル温度を実測する事前試験の結果に基づき設定される。コイル温度熱時定数(τ)は、モータ2のデータシート値または事前試験によって得られた時定数測定値が設定される。
【0026】
ロック解除後の一次遅れフィルタ15を介した温度補正値H2は、以下の式(1)によって算出される。
H2=H1×exp(-t/τ)…(1)
H1:モータ2のロック時のモータコイル温度補正値
t:モータ2のロック解除後の経過時間(秒)
τ:モータ2のモータコイル温度熱時定数
第二減算回路16は、絶対値回路12からの前記絶対値に対して、スイッチ回路14からのロック時の温度補正値H1またはロック解除後の温度補正値H2を減算して得られた値を出力する。
【0027】
第三減算回路17は、第二減算回路16から出力された値に故障認定閾値を減算して得られた値を出力する。
【0028】
そして、温度センサ異常判定部5は、第三減算回路17による減算により得られた値に基づき当該温度センサの異常判定を行う。
【0029】
以上のコイル温度センサ故障検出回路10によれば、モータ2がロック時である場合、スイッチ回路14は、ロック時のコイル温度センサ6間の温度乖離をロック時の温度補正値H1として第二減算回路16に出力する。第二減算回路16は、絶対値回路12からの温度検出値差分(絶対値)に対して温度補正値H1を減算することで、誤検出を防ぐ。
【0030】
一方、モータ2がロック解除後の場合、温度補正値H1を一次遅れフィルタ15に供して得られた温度補正値H2を第二減算回路16に出力する。第二減算回路16は、絶対値回路12からの温度検出値差分(絶対値)に対して温度補正値H2を減算することで、一定の精度を保ちながら誤検出を防ぐ。
【0031】
したがって、以上のコイル温度センサ故障検出システム1によれば、モータ2がロック時にロックによる二点のコイル温度センサ6間の温度乖離を加味して温度補正された後の値で故障検出行う。したがって、温度補正値が適切であれば、コイル温度センサ異常の誤検出を回避できる。
【0032】
また、モータ2がロック解除後は、熱時定数に基づいた一次遅れフィルタ15により温度補正値が減少していくので、過大な閾値(または必要以上の補正がなされた温度差分)で診断を行う必要がなくなる。さらに、コイル温度の熱時定数に従って補正がなされるため温度補正値及び時定数設定が適切であれば、誤検出の可能性が低くなる。
【0033】
したがって、モータ2のコイル温度センサの故障検出精度及び診断頻度が向上する。尚、本発明のコイル温度センサ故障検出回路はインバータを限定することなく三相のモータを駆動するシステムにも有効に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1…コイル温度センサ故障検出システム
10…コイル温度センサ故障検出回路、11…第一減算回路、12…絶対値回路、13…モータロック判定回路、14…スイッチ回路、15…一次遅れフィルタ、16…第二減算回路、17…第三減算回路
2…モータ
3…インバータ
4…主回路部
5…温度センサ異常判定部
6…コイル温度センサ
7…回転数センサ
8…トルクセンサ
図1
図2
図3
図4