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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】バイアス算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/00 20130101AFI20241008BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
G01C21/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021103499
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002320
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一平
(72)【発明者】
【氏名】松平 宣明
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-085104(JP,A)
【文献】特開2013-064707(JP,A)
【文献】特開平09-096534(JP,A)
【文献】特開2002-131077(JP,A)
【文献】特開平06-066568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00
G01C 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたジャイロセンサ(160)から出力されるジャイロ信号に含まれるバイアス値を算出するための閾値と前記ジャイロ信号に含まれるノイズに関連する判定値との関係性の記憶された記憶部(220)と、
前記判定値に応じた前記閾値を前記記憶部から読み出し、その読み出した前記閾値よりも低い前記ジャイロ信号をサンプリングするサンプリング部(230)と、
前記サンプリング部でサンプリングされた複数の前記ジャイロ信号に基づいて、前記バイアス値を算出する算出部(230)と、を有するバイアス算出装置。
【請求項2】
前記判定値には、前記ジャイロセンサの温度と、前記ジャイロ信号のサンプリング数のうちの少なくとも一方が含まれている請求項1に記載のバイアス算出装置。
【請求項3】
前記判定値に前記ジャイロセンサの温度が含まれており、
前記閾値は前記ジャイロセンサの温度が高いほどに大きい請求項2に記載のバイアス算出装置。
【請求項4】
前記サンプリング部は、前記車両の非角速度発生状態のときに、前記閾値よりも低い前記ジャイロ信号をサンプリングする請求項2または請求項3に記載のバイアス算出装置。
【請求項5】
前記判定値に前記ジャイロセンサのサンプリング数が含まれており、
前記閾値は前記ジャイロセンサのサンプリング数が少ないほどに大きい請求項4に記載のバイアス算出装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記サンプリング数が所定値よりも低い場合、前記サンプリング部でサンプリングされた複数の前記ジャイロ信号に基づいて算出した前記バイアス値を小さくする補正を行う請求項5に記載のバイアス算出装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記サンプリング部でサンプリングされた複数の前記ジャイロ信号のうち、前記ジャイロセンサの温度が同等の時にサンプリングされた複数の前記ジャイロ信号に基づいて、前記バイアス値を算出する請求項1~6のいずれか1項に記載のバイアス算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、ジャイロセンサのバイアス値を算出するバイアス算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、振動ジャイロと制御回路を備える車載機が開示されている。制御回路は振動ジャイロのバイアス値を求める処理フローを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-219228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される制御回路は、処理フローにおいて、振動ジャイロの出力の差分値を計算する。そして制御回路は差分値が閾値以下であるか否かを判定する。差分値が閾値以下の場合、制御回路は振動ジャイロの出力をサンプリングする。制御回路はそのサンプリングした振動ジャイロの出力によりバイアス値を算出する。
【0005】
しかしながら、振動ジャイロの出力(ジャイロ信号)にはノイズが含まれる。このノイズは振動ジャイロの環境によって種々変化する。そのため、バイアス値を算出するのに不適格なジャイロ信号をサンプリングする虞がある。
【0006】
本開示の目的は、バイアス値を算出するのに適格なジャイロ信号をサンプリングすることのできるバイアス算出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によるバイアス算出装置は、車両に搭載されたジャイロセンサ(160)から出力されるジャイロ信号に含まれるバイアス値を算出するための閾値とジャイロ信号に含まれるノイズに関連する判定値との関係性の記憶された記憶部(220)と、
判定値に応じた閾値を記憶部から読み出し、その読み出した閾値よりも低いジャイロ信号をサンプリングするサンプリング部(230)と、
サンプリング部でサンプリングされた複数のジャイロ信号に基づいて、バイアス値を算出する算出部(230)と、を有する。
【0008】
このように、ジャイロ信号に含まれるノイズに応じて閾値がかわる。これにより、バイアス値を算出するのに適格なジャイロ信号をサンプリングすることができる。
【0009】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車載センサとバイアス算出装置を示すブロック図である。
図2】記憶部に記憶されている閾値と温度の関係性を示す模式図である。
図3】バイアス値算出処理を示すフローチャートである。
図4】閾値設定処理を示すフローチャートである。
図5】記憶部に記憶されている閾値とサンプリング数の関係性を示す模式図である。
図6】バイアス値算出処理を示すフローチャートである。
図7】閾値設定処理を示すフローチャートである。
図8】記憶部に記憶されている閾値、温度、サンプリング数の関係性を示す模式図である。
図9】閾値設定処理を示すフローチャートである。
図10】バイアス値算出処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0012】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態を図1図4に基づいて説明する。
【0014】
以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。本実施形態ではx方向が車両の左右方向に沿っている。y方向が車両の進退方向に沿っている。z方向が車両の天地方向に沿っている。車両が水平面に停車している場合、x方向とy方向それぞれは水平面に沿っている。z方向は鉛直方向に沿っている。
【0015】
図1に車載センサ100と演算装置200を示す。車載センサ100と演算装置200はハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両に搭載される。この電動車両には、乗用車、バス、建設作業車、および、農業機械車両などが含まれる。なお、もちろんではあるが、車載センサ100と演算装置200はガソリン自動車に搭載されてもよい。車載センサ100と演算装置200の搭載(採用)される車種は特に限定されない。
【0016】
<車載センサ>
車載センサ100は電動車両の状態に関連するセンサ信号を生成して出力する。このセンサ信号が演算装置200に入力される。
【0017】
センサ信号には、検出対象のセンサ値、ノイズ、および、バイアス値が含まれる。ノイズには熱ノイズと振動ノイズが含まれる。熱ノイズはセンサ温度が高いほどに大きくなる。振動ノイズはセンサ振動が高いほどに大きくなる。これらノイズがセンサ信号から除去されると、検出対象のセンサ値の検出精度が高められる。
【0018】
バイアス値はセンサとして用いられる製品に含まれる固有の特性(偏り)である。このバイアス値を算出しておき、このバイアス値でもってセンサ信号が補正されると、検出対象のセンサ値の検出精度が高められる。
【0019】
車載センサ100は、GNSS110、車外カメラ120、加速度センサ130、および、車輪速センサ140を有する。また車載センサ100は、温度センサ150とジャイロセンサ160を有する。
【0020】
GNSSはGlobal Navigation Satellite Systemの略である。図面において車外カメラ120をOCCと表記している。加速度センサ130をACMと表記している。車輪速センサ140をWSSと表記している。温度センサ150をTSと表記している。ジャイロセンサ160をGSと表記している。
【0021】
GNSS110は電動車両の位置を検出する。車外カメラ120は電動車両の外の画像(車外画像)を撮像する。加速度センサ130は電動車両の加速度を検出する。車輪速センサ140は電動車両の車輪の速さを検出する。温度センサ150は電動車両の温度を検出する。ジャイロセンサ160は電動車両の角速度を検出する。これら各種センサから出力されるセンサ信号が、演算装置200に入力される。
【0022】
なお、温度センサ150はジャイロセンサ160の近くに設けられる。そのために温度センサ150で検出される温度は、ジャイロセンサ160の温度と同等になっている。本実施形態のジャイロセンサ160はz方向の角速度を検出する。
【0023】
<演算装置>
演算装置200は、入力部210と、記憶部220と、演算部230と、出力部240と、を有する。図面では、入力部210をISと表記している。記憶部220をMUと表記している。演算部230をOPと表記している。出力部240をOSと表記している。演算装置200がバイアス算出装置に相当する。
【0024】
入力部210には諸情報が入力される。この諸情報には車載センサ100から出力されるセンサ信号が含まれている。この諸情報には電動車両に搭載された各種ECUから出力される車両情報が含まれている。
【0025】
記憶部220はコンピュータやプロセッサによって読み取り可能なデータとプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶部220は揮発性メモリと不揮発性メモリとを有している。この記憶部220に、入力部210に入力された諸情報や演算部230の処理結果が記憶される。
【0026】
記憶部220は演算部230が演算処理するための各種プログラムと各種参照値を記憶している。この参照値には、例えば、閾値とジャイロ信号に含まれるノイズに関連する判定値との関係性がある。本実施形態では、判定値にジャイロセンサ160の温度が含まれている。
【0027】
閾値とジャイロセンサ160の温度との関係性を図2に模式的に示す。図面において閾値をTh1,Th2,Th3…Thnと表記している。ジャイロセンサ160の温度をT1,T2,T3…Tnと表記している。閾値はジャイロセンサ160の温度が高くなるほどに大きくなっている。
【0028】
演算部230にはプロセッサが含まれている。演算部230は入力部210に入力された諸情報を記憶部220に記憶する。演算部230は記憶部220に記憶された情報に基づいて各種演算処理を実行する。
【0029】
出力部240は演算部230の演算処理結果を含む電気信号を、電動車両に搭載された各種ECUに出力する。演算装置200と各種ECUとの電気信号の入出力のやり取りは、図1において白抜き矢印で示している。
【0030】
<演算部>
演算部230はジャイロセンサ160から出力されるジャイロ信号に含まれるバイアス値を算出する。係るバイアス値の算出を、演算部230は電動車両に角速度が発生していないときに実行する。演算部230にサンプリング部と算出部それぞれが含まれている。
【0031】
演算部230には車載センサ100から電動車両の位置、車外画像、電動車両の加速度、電動車両の角速度、および、電動車両の車輪の速さが入力される。演算部230は、これらに基づいて、電動車両が直線運動を行っているか、電動車両が停車しているか、を判定する。
【0032】
演算部230は、電動車両が直線運動している場合、電動車両に角速度が発生していない状態(非角速度発生状態)であると判定する。演算部230は、電動車両が停車している場合、電動車両が非角速度発生状態であると判定する。
【0033】
演算部230は、バイアス値を算出するにあたって、温度センサ150から出力される温度を取得する。そして演算部230はその温度に対応する閾値を記憶部220から読み出す。
【0034】
演算部230はその読み出した閾値とジャイロ信号とを比較する。演算部230は閾値よりも低いジャイロ信号をサンプリングする。それとともに演算部230は、そのジャイロ信号を出力した際のジャイロセンサ160の温度もサンプリングする。演算部230はこれらサンプリングしたジャイロ信号と温度とを記憶部220に記憶する。
【0035】
演算部230はジャイロ信号を例えば1kHz程度の速さでサンプリングする。係る時間間隔で取得した複数のジャイロ信号の値には、ノイズのために差がある。そこで演算部230は0.1s程度の時間間隔の間に取得した複数のジャイロ信号の移動平均値を算出する。それとともに演算部230は0.1s程度の時間間隔の間に取得した複数の温度の移動平均値を算出する。演算部230はこれらジャイロ信号の移動平均値と温度の移動平均値を記憶部220に記憶する。
【0036】
なお、上記したようにジャイロ信号にはノイズが含まれている。演算装置200はこのジャイロ信号に含まれるノイズを除去するためのバンドパスフィルタを有している。演算部230には、このバンドパスフィルタを通ったジャイロ信号と、バンドパスフィルタを通らないジャイロ信号それぞれが入力される。
【0037】
演算部230はバンドパスフィルタを通ることでノイズの除去されたジャイロ信号と閾値とを比較する。演算部230は、その比較結果に基づいて、バンドパスフィルタを通らないジャイロ信号の記憶部220への記憶を決定する。なお、演算部230は、上記の比較結果に基づいて、バンドパスフィルタを通ったジャイロ信号の記憶部220への記憶を決定してもよい。
【0038】
演算部230は以上に示したジャイロ信号と温度のサンプリング、移動平均値の算出、および、それらの記憶を繰り返す。この後、演算部230は記憶部220に蓄積された複数のジャイロ信号の移動平均値の加算平均値を算出する。演算部230はこのジャイロ信号の加算平均値に基づいて、ジャイロ信号に含まれるバイアス値を算出する。なお、演算部230は記憶部220に蓄積された複数の温度の移動平均値の加算平均値を算出し、それを記憶部220に記憶してもよい。
【0039】
<バイアス値算出処理>
次に、図3図4に基づいて、バイアス値算出処理を説明する。演算部230は係るバイアス値算出処理をサイクルタスクで実行している。
【0040】
ステップS10において演算部230は、電動車両が非角速度発生状態か否かを判定する。電動車両が非角速度発生状態の場合、演算部230はステップS20へ進む。電動車両に角速度が発生している状態(角速度発生状態)の場合、演算部230はバイアス値算出処理を終了する。
【0041】
なお、ステップS10において演算部230は、電動車両が停車しているか、電動車両が直線運動しているかの判断に基づいて、電動車両が非角速度発生状態か否かを判定する。演算部230はまず電動車両が停車状態か否かを判定する。電動車両が停車状態の場合、演算部230は電動車両の停車状態を記憶部220に記憶する。この後に演算部230はステップS20へ進む。電動車両が非停車状態の場合、演算部230は電動車両が直線運動しているか否かを判断する。電動車両が直線運動状態の場合、演算部230は電動車両の直線運動状態を記憶部220に記憶する。そして演算部230はステップS20へ進む。電動車両が非直線運動状態の場合、演算部230はバイアス値算出処理を終了する。
【0042】
ステップS20へ進むと演算部230は図4に示す閾値設定処理を実行する。
【0043】
図4に示すステップS21において演算部230は、温度センサ150から出力される温度を取得する。そして演算部230はステップS22へ進む。
【0044】
ステップS22へ進むと演算部230は、ステップS21で取得した温度に対する閾値を記憶部220から読み出す。そして演算部230はステップS23へ進む。
【0045】
ステップS23へ進むと演算部230は、ステップS23で読み出した閾値を、ジャイロ信号との比較に用いることを決定する。そして演算部230は図3のステップS30へ進む。
【0046】
ステップS30へ進むと演算部230は、ジャイロ信号と閾値とを比較する。ジャイロ信号が閾値よりも低い場合、演算部230はステップS40へ進む。ジャイロ信号が閾値以上の場合、演算部230はバイアス値算出処理を終了する。
【0047】
ステップS40へ進むと演算部230は、ステップS30で閾値との比較に用いたジャイロ信号を含む複数のジャイロ信号の移動平均値を算出する。そして演算部230はステップS50へ進む。
【0048】
上記したようにバイアス値算出処理はサイクルタスクである。そのためにステップS30を幾度も演算部230は実行する。この結果、演算部230は閾値よりも低いジャイロ信号を複数取得する。演算部230はこれら複数のジャイロ信号の移動平均値をステップS40で算出する。
【0049】
ステップS50へ進むと演算部230は、ステップS40で算出したジャイロ信号の移動平均値を記憶部220に記憶する。そして演算部230はステップS60へ進む。
【0050】
なお、ステップS40において演算部230は閾値よりも低いジャイロ信号とともに温度の移動平均値を算出してもよい。そしてステップS50において演算部230は温度の移動平均値を記憶部220に記憶してもよい。
【0051】
ステップS60へ進むと演算部230は、ジャイロ信号のサンプリング数と記憶部220に参照値として記憶されている所定数とを比較する。サンプリング数が所定数よりも大きい場合、演算部230はステップS70へ進む。サンプリング数が所定数以下の場合、演算部230はバイアス値算出処理を終了する。
【0052】
なお、サンプリング数は、ステップS30において閾値よりも低いと判定されたジャイロ信号の数でもよいし、ステップS50において記憶部220に記憶された複数のジャイロ信号に基づく移動平均値の数でもよい。
【0053】
ステップS70へ進むと演算部230は、記憶部220に記憶された複数のジャイロ信号の移動平均値に基づいて、ジャイロセンサ160のバイアス値を算出する。そして演算部230はバイアス値算出処理を終了する。なお演算部230はステップS70の実行後、サンプリング数をクリアしてもよい。
【0054】
<作用効果>
上記したように、記憶部220には、閾値とジャイロ信号に含まれるノイズに関連する判定値との関係性が記憶されている。演算部230は判定値に応じた閾値を記憶部220から読み出す。そして演算部230はその読み出した閾値よりも低いジャイロ信号をサンプリングする。演算部230はサンプリングしたジャイロ信号に基づいてバイアス値を算出する。
【0055】
これにより、バイアス値を算出するのに適格なジャイロ信号がサンプリングされる。
【0056】
判定値はジャイロセンサ160の温度である。ジャイロセンサ160の温度が高いほどに閾値が大きくなっている。
【0057】
ジャイロセンサ160の温度が高い場合、ジャイロ信号に熱ノイズが多く含まれる。そのためにジャイロ信号の値が底上げされる態様で大きくなる。
【0058】
これに対して、上記したように、ジャイロセンサ160の温度が高いほどに閾値が大きくなっている。これにより、バイアス値を算出するのに不適格なジャイロ信号をサンプリングすることが抑制される。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5図7に基づいて説明する。
【0060】
第1実施形態では、判定値がジャイロセンサ160の温度である例を示した。これに対し本実施形態では、判定値がジャイロ信号のサンプリング数になっている。記憶部220には閾値とサンプリング数との関係性が記憶されている。
【0061】
閾値とサンプリング数との関係性を図5に模式的に示す。図面においてサンプリング数をS1,S2,S3…Snと表記している。図2と同様にして、閾値をTh1,Th2,Th3…Thnと表記している。閾値はサンプリング数が少ないほどに大きくなっている。
【0062】
第1実施形態ではサンプリング数と比較するための所定数が参照値として記憶部220に記憶されている例を示した。これに対して本実施形態では、記憶部220に値の異なる複数の所定数が記憶されている。これらは、例えば、第1所定数N1、第2所定数N2、第3所定数N3,…,第N所定数NNと表すことができる。番数が増大するにしたがって、所定数の数が多くなっている。これら隣り合う番数の所定数間の差は、同一でも不同でもよい。
【0063】
演算部230は図6に示すバイアス値算出処理を実行する。このバイアス値算出処理と図3に示すバイアス値算出処理とは、ステップS20の閾値設定処理の内容が異なる。
【0064】
演算部230は図6に示すステップS20において、図7に示す閾値設定処理を実行する。
【0065】
図7に示すステップS24において演算部230は、サンプリング数を記憶部220から読み出す。そして演算部230はステップS25へ進む。
【0066】
上記したようにバイアス値算出処理は繰り返し実行される。その過程でサンプリング数が変化する。このサンプリング数は、例えばステップS50で記憶部220に記憶される。
【0067】
ステップS25へ進むと演算部230は、ステップS24で読み出したサンプリング数に対する閾値を記憶部220から読み出す。そして演算部230はステップS26へ進む。
【0068】
ステップS26へ進むと演算部230は、ステップS25で読み出した閾値を、ジャイロ信号との比較に用いることを決定する。そして演算部230は図6のステップS30へ進む。
【0069】
図6に示すバイアス値算出処理では、図3に示すバイアス値算出処理とは異なり、ステップS70の実行の後、演算部230はステップS80へ進む。
【0070】
ステップS80へ進むと演算部230は、所定数を更新する。例えば、サンプリング数が第1所定数N1よりも大きい場合、演算部230は第2所定数N2を記憶部220から読み出す。そして演算部230は、第2所定数N2をサンプリング数との比較に用いることを決定する。この後に演算部230はバイアス値算出処理を終了する。
【0071】
係る更新を行った後、電動車両の非角速度発生状態が連続的に継続される場合、再度、演算部230はバイアス値算出処理を実行する。この場合、サンプリング数が増大しているために、ステップS20において値の低い閾値が記憶部220から読み出される。そしてステップS30でこの値の低い閾値とジャイロ信号との比較が実行される。この閾値よりも低いジャイロ信号に基づいて、バイアス値が算出される。そして、再度、所定数が更新される。
【0072】
以上に示す、サンプリング数の増大と、閾値の低下と、バイアス値の更新と、所定数の更新が、電動車両の非角速度発生状態が連続的に継続される限り、実行される。係る変化と更新は、例えば、電動車両が非角速度発生状態から角速度発生状態に変化すると止まる。また車両が停止し、電源がオフの状態になるとサンプリング数がクリアされる。所定数は初期値の第1所定数N1にされる。
【0073】
<作用効果>
電動車両は、角速度発生状態から非角速度発生状態に遷移する過渡期を経て、非角速度発生状態になる。そのため、電動車両が非角速度発生状態であると判定され始めた際、換言すれば、演算部230でジャイロ信号がサンプリングされ始めた際、ジャイロ信号に電動車両の動力源などを起因とする振動ノイズなどが多めに含まれている可能性がある。
【0074】
しかしながら、電動車両の操作によっては、角速度発生状態から非角速度発生状態に遷移した後、短期間で、非角速度発生状態から角速度発生状態に遷移する可能性がある。バイアス値の算出ができていない場合、若しくは、記憶部220に記憶されているバイアス値の信頼性が低い場合、係る短期間においても、バイアス値を算出することが求められる。
【0075】
そこで、本実施形態で示したように、サンプリング数が少ないほどに閾値を大きくする。こうすることで、例え角速度発生状態から非角速度発生状態に遷移した後の時間が短時間であったとしても、バイアス値を算出するためのジャイロ信号がサンプリングされやすくなる。
【0076】
なお、演算部230は電動車両が直線運動している場合、電動車両が停車している場合において、電動車両が非角速度発生状態であると判定している。しかしながら、これらの場合において、電動車両の非角速度発生状態の安定性が異なる。電動車両が直線運動している場合、電動車両が停車している場合と比べて、電動車両の非角速度発生状態が不安定になっている。上記したバイアス値の信頼性が低い場合とは、例えば、電動車両が直線運動している際にバイアス値を算出した場合である。
【0077】
また、電動車両が角速度発生状態から非角速度発生状態に遷移した後、電動車両の非角速度発生状態が長期的に継続されると、ジャイロ信号に電動車両の動力源などを起因とする振動ノイズなどが含まれ難い状態であることが期待される。換言すれば、サンプリング数が増大すると、ジャイロ信号に電動車両の動力源などを起因とする振動ノイズなどが含まれ難い状態であることが期待される。このようにサンプリング数は振動ノイズと少なからず関連している。
【0078】
これに対して、本実施形態では、サンプリング数が大きいほどに閾値が小さくなる。これにより、振動ノイズを含むジャイロ信号をサンプリングすることが抑制される。バイアス値を算出するのに不適格なジャイロ信号をサンプリングすることが抑制される。
【0079】
なお、サンプリング数が少ない場合、算出したバイアス値に振動ノイズが含まれている可能性がある。そのためにジャイロ信号の値が高めになっている可能性がある。
【0080】
そこで、サンプリング数が例えば第2所定数N2よりも低い場合のジャイロ信号に基づいてバイアス値を算出した場合、演算部230はそのバイアス値が小さくなる補正を実行してもよい。係る補正は、例えば、サンプリングしたジャイロ信号に基づいて算出したバイアス値に1よりも小さい補正係数を乗算することで実現される。これにより、バイアス値に含まれる振動ノイズの影響が軽減される。第2所定数N2が所定値に相当する。
【0081】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図8図9に基づいて説明する。
【0082】
第2実施形態では判定値がジャイロ信号のサンプリング数である例を示した。これに対して本実施形態では、判定値がジャイロセンサ160の温度とサンプリング数になっている。記憶部220には閾値と、サンプリング数と、温度の関係性が記憶されている。
【0083】
閾値と、サンプリング数と、温度の関係性を図8に模式的に示す。図面において温度をT1,T2,…,Tnと表記している。T1に対するサンプリング数をS11,S12,S13…S1nと表記し、閾値をTh11,Th12,Th13…Th1nと表記している。同様にして、T2に対するサンプリング数をS21,S22,S23…S2nと表記し、閾値をTh21,Th22,Th23…Th2nと表記している。Tnに対するサンプリング数をSn1,Sn2,Sn3…Snnと表記し、閾値をThn1,Thn2,Thn3…Thnnと表記している。
【0084】
本実施形態の演算部230は図6に示すバイアス値算出処理を実行する。
【0085】
ただし演算部230は、ステップS20において図9に示す閾値設定処理を実行する。
【0086】
図9に示すステップS21において演算部230は、温度センサ150から出力される温度を取得する。そして次のステップS24で演算部230はサンプリング数を記憶部220から読み出す。そして演算部230はステップS27へ進む。
【0087】
ステップS27へ進むと演算部230は、ステップS21で取得した温度とステップS24で読み出したサンプリング数に対する閾値を記憶部220から読み出す。そして演算部230はステップS28へ進む。
【0088】
ステップS28へ進むと演算部230は、ステップS27で読み出した閾値を、ジャイロ信号との比較に用いることを決定する。
【0089】
本実施形態に記載の演算装置200には、これまでに説明した実施形態に記載の演算装置200と同等の構成要素が含まれている。そのために本実施形態の演算装置200がこれまでに説明した実施形態に記載の演算装置200と同等の作用効果を奏することは言うまでもない。そのためにその記載を省略する。
【0090】
(第1変形例)
第1実施形態では、演算部230はステップS50の後にステップS60を実行する例を示した。演算部230はステップS60において、ジャイロ信号のサンプリング数と所定数とを比較する例を示した。
【0091】
これに対して、例えば図10に示すように、演算部230はステップS50の後にステップS90を実行してもよい。演算部230はステップS90において、同等の温度のジャイロ信号のサンプリング数と所定数とを比較する。そして演算部230は、ステップS70において、同等の温度であり、なおかつ、閾値よりも低いジャイロ信号に基づいて、バイアス値を算出する。
【0092】
これによれば、バイアス値の算出に用いられる複数のジャイロ信号それぞれに含まれる熱ノイズのばらつきに相違の生じることが抑制される。この結果、バイアス値の算出程度の低下が抑制される。
【0093】
(第2変形例)
各実施形態では、ジャイロセンサ160がz方向の角速度を検出する例を示した。しかしながら、ジャイロセンサ160は、z方向の他に、x方向とy方向それぞれの角速度を検出してもよい。そして、演算部230はこれら3方向の角速度を示すジャイロ信号と閾値とを比較し、これら3種類のジャイロ信号それぞれが閾値よりも低い場合に、z方向のジャイロ信号のバイアス値を求めるようにしてもよい。なお、3種類のジャイロ信号との比較に用いられる3つの閾値は同一でも不同でもよい。
【0094】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0095】
100…車載センサ、160…ジャイロセンサ、200…演算装置、220…記憶部、230…演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10