(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】配送計画作成装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/083 20240101AFI20241008BHJP
【FI】
G06Q10/083
(21)【出願番号】P 2021104170
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊洋
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-208686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EV車およびエンジン車を利用した荷物の配送計画を作成するように構成されるプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
ユーザから取得した前記荷物の情報に基づいて、常温で管理される
通常荷物の配送を前記EV車に割り当て
る旨の情報と、冷蔵
で管理される冷蔵荷物または冷凍で管理される
冷凍荷物の配送を前記エンジン車に割り当て
る旨の情報とを作成し、
前記冷蔵荷物および前記冷凍荷物の量に対して、割り当てる前記エンジン車の台数が不足する場合、前記冷蔵荷物および前記冷凍荷物の配送を前記EV車に割り当てる旨の情報を作成し、
前記冷蔵荷物および前記冷凍荷物を配送中の前記EV車から、前記冷凍荷物の配送が完了した旨の情報を取得した場合、当該EV車に対して、荷室のエアコンの温度を前記冷蔵荷物に合わせた温度に変更する旨の指示を出力する、
配送計画作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配送計画作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配送先までの配送距離(配送距離コスト)を考慮して配送計画を生成する配送計画生成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、配送会社や物流会社において、配送用車両をエンジン車(コンベ車)からEV車(電動車)へと置き換えることが検討されている。配送用車両としてEV車を用いる場合、配送距離だけを考慮して配送計画を作成すると、配送効率が低下する可能性がある。そのため、配送用車両としてEV車を用いる場合において、配送効率の高い配送計画を作成することが求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、配送用車両としてEV車を用いる場合において、配送効率の高い配送計画を作成することができる配送計画作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る配送計画作成装置は、EV車およびエンジン車を利用した荷物の配送計画を作成するように構成されるプロセッサを備え、前記プロセッサが、常温で管理される荷物の配送を前記EV車に割り当て、冷蔵または冷凍で管理される荷物の配送を前記エンジン車に割り当てる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配送用車両としてEV車を用いる場合において、配送効率の高い配送計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る配送計画作成システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る配送計画作成システムの各構成要素の詳細を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る配送計画作成システムが実行する配送計画作成方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係る配送計画作成装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
(配送計画作成システム)
実施形態に係る配送計画作成装置を含む配送計画作成システムについて、
図1および
図2を参照しながら説明する。配送計画作成システム1は、
図1に示すように、配送計画作成装置10と、EV車21と、エンジン車22と、端末30と、を有している。配送計画作成装置10および端末30は、通信機能を備えており、ネットワークNWを通じて相互に通信可能に構成されている。このネットワークNWは、例えばインターネット回線網、携帯電話回線網等から構成される。
【0011】
EV車21およびエンジン車22は、ユーザから依頼された荷物を配送するための配送用車両である。EV車21およびエンジン車22は、例えば荷物の配送を行う配送会社で管理されている。また、EV車21およびエンジン車22は、通信機能を備えていてもよい。EV車21およびエンジン車22が通信機能を備えている場合、ネットワークNWを通じて配送計画作成装置10と各種情報のやり取りを行う。
【0012】
(配送計画作成装置)
配送計画作成装置10は、EV車21およびエンジン車22を利用した荷物の配送計画を作成するためのものである。この配送計画作成装置10は、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータによって実現される。また、配送計画作成装置10は、例えば荷物の配送を行う配送会社で管理されている。
【0013】
配送計画作成装置10は、
図2に示すように、制御部11と、通信部12と、記憶部13と、を備えている。制御部11は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等からなるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)と、を備えている。
【0014】
制御部11は、記憶部13に格納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等を制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。制御部11は、記憶部13に格納されたプログラムの実行を通じて、荷物情報登録部111、車両割当部112、配送計画作成部113および温度変更指示部114として機能する。
【0015】
荷物情報登録部111は、配送する荷物に関する情報(以下、「荷物情報」という)を、記憶部13の所定領域に登録する。この「荷物情報」には、例えば荷物を配送する配送先に関する情報(例えば配送先住所、氏名、電話番号等)、荷物の配送指定時間、荷物の荷重(重量)、荷物のサイズ、荷物のクールタイプ等が含まれる。「荷物の配送指定時間」には、配送指定の有無、配送指定時間(配送指定ありの場合)が含まれる。また、「荷物のクールタイプ」とは、荷物を配送する際の温度のことであり、例えば常温、冷蔵、冷凍等の区分が挙げられる。
【0016】
なお、本実施形態では、常温で管理しながら配送する荷物のことを「通常荷物」、冷蔵で管理しながら配送する荷物のことを「冷蔵荷物」、冷凍で管理しながら配送する荷物のことを「冷凍荷物」、と表現する。
【0017】
荷物情報登録部111における荷物情報の登録は、配送会社における荷物の配送受付に基づいて行われる。この荷物の配送受付は、オンラインまたはオフラインで行われる。荷物の配送受付がオンラインで行われる場合、例えばユーザが所持する端末30から配送計画作成装置10へと、荷物の配送依頼が送信(出力)される。これを受けて、荷物情報登録部111は、荷物の配送依頼に含まれる情報を、荷物情報131として記憶部13に登録する。
【0018】
一方、荷物の配送受付がオフラインで行われる場合、例えばユーザによって記入された荷物の配送伝票が、配送会社に提出される。そして、配送会社のスタッフにより、荷物の配送伝票に含まれる情報が、配送計画作成装置10へと入力される。これを受けて、荷物情報登録部111は、荷物の配送伝票に含まれる情報を、荷物情報131として記憶部13に登録する。
【0019】
車両割当部112は、荷物情報登録部111によって荷物情報131が登録された荷物ごとに、当該荷物を配送する配送用車両の割り当てを行う。車両割当部112は、荷物のクールタイプに応じて、当該荷物をEV車21とエンジン車22のどちらで配送するのかを決定する。
【0020】
車両割当部112は、具体的には、通常荷物の配送をEV車21に割り当て、冷蔵荷物および冷凍荷物の配送をエンジン車22に割り当てる。ここで、EV車21は、エアコンの電力消費が電費に与える影響が大きいのに対して、エンジン車22は、エアコンの電力消費が燃費に与える影響が比較的小さい。そのため、エアコンを使用しない通常荷物の配送をEV車21に割り当てることにより、荷物の配送時におけるEV車21の電費の悪化を抑制することができる。
【0021】
例えば配送会社がEV車21およびエンジン車22をそれぞれ5台ずつ管理している場合であって、EV車21およびエンジン車22が以下のような電費性能および燃費性能を有している場合を考える。
【0022】
満充電のEV車21が通常荷物を配送可能な総時間:8時間
満充電のEV車21が冷蔵・冷凍荷物を配送可能な総時間:6時間
ガソリン満タンのエンジン車22が通常荷物を配送可能な総時間:8時間
ガソリン満タンのエンジン車22が冷蔵・冷凍荷物を配送可能な総時間:8時間
【0023】
この場合、通常荷物をEV車21に割り当て、冷蔵・冷凍荷物をエンジン車22に割り当てると、「8時間×5台+8時間×5台」により、合計の配送可能時間は「80時間」となる。一方、通常荷物をエンジン車22に割り当て、冷蔵・冷凍荷物をEV車21に割り当てると、「8時間×5台+6時間×5台」により、合計の配送可能時間は「70時間」となる。
【0024】
このように、エンジン車22では、冷蔵・冷凍荷物を配送する場合と、通常荷物を配送する場合とで燃費があまり変化しないため、車両割当部112では、冷蔵・冷凍荷物の配送をエンジン車22に割り当て、通常荷物の配送をEV車21に割り当てる。
【0025】
なお、配送会社で管理するEV車21の台数には限りがあるため、通常荷物の量に対して、割り当てるEV車21の台数が不足する場合も想定される。この場合、車両割当部112は、通常荷物の配送をエンジン車22に割り当ててもよい。同様に、配送会社で管理するエンジン車22の台数には限りがあるため、冷蔵・冷凍荷物の量に対して、割り当てるエンジン車22の台数が不足する場合も想定される。この場合、車両割当部112は、冷蔵・冷凍荷物の配送をEV車21に割り当ててもよい。
【0026】
EV車21およびエンジン車22において、通常荷物、冷蔵荷物および冷凍荷物を混在させて配送する場合、例えば荷室を3つの領域に区切り、荷室内のエアコンが設置された場所(例えば荷室の最も前方)に最も近い位置に冷凍荷物を、エアコンが設置された場所から次に近い位置に冷蔵荷物を、エアコンが設置された場所から最も遠い位置(例えば荷室の最も後方)に通常荷物を積み込むことが考えられる。
【0027】
また、車両割当部112は、冷蔵・冷凍荷物の配送をEV車21に割り当てた場合、冷蔵荷物と冷凍荷物とを、それぞれ異なるEV車21に割り当てる。冷蔵荷物と冷凍荷物とでは、エアコンの設定温度が異なるため、冷蔵荷物および冷凍荷物とを、それぞれ異なるEV車21によって配送することにより、全体としてのEV車21の電費の悪化を抑制することができる。
【0028】
配送計画作成部113は、荷物の配送計画を作成する。配送計画作成部113は、具体的には、EV車21とエンジン車22とが混在し、かつ冷蔵荷物と冷凍荷物とが混在するEV車21がある場合(以下、「第一のケース」という)と、EV車21とエンジン車22とが混在し、かつ冷蔵荷物と冷凍荷物とが混在するEV車21がない場合(以下、「第二のケース」という)と、EV車21とエンジン車22とが混在しない場合(以下、「第三のケース」という)とで、それぞれ別の方法によって荷物の配送計画を作成する。
【0029】
「第一のケース」は、例えばEV車21およびエンジン車22を用いて荷物を配送する場合において、冷蔵・冷凍荷物が混在して積み込まれているEV車21がある場合を示している。また、「第二のケース」は、例えばEV車21およびエンジン車22を用いて荷物を配送する場合において、冷蔵・冷凍荷物が混在して積み込まれているEV車21がない場合を示している。また、「第三のケース」は、例えばエンジン車22のみを用いて荷物を配送する場合を示している。以下、第一~第三のケースにおける配送計画の作成方法の一例について、それぞれ説明する。
【0030】
<第一のケースの配送計画(配送指定時間なし)>
配送計画作成部113は、EV車21に割り当てられた荷物の配送について、トータル走行エネルギーが最小の配送ルートを決定する。なお、本ケースにおけるEV車21は、冷蔵・冷凍荷物が混在して積み込まれているEV車21のことを示している。また、「トータル走行エネルギー」とは、言い換えると、荷物の配送する際にエアコンによって消費するエネルギー(電力)のことを示している。例えばEV車21によって、二つの荷物を配送する場合を考える。この場合、配送計画作成部113は、以下に示すように、荷物ごとに設定された配送先への配送順を並び替えることにより、出発地(例えば配送会社)から各配送先を経由して、再度出発地に戻る配送ルートの候補を探索する。
【0031】
配送ルート候補1:出発地→配送先A→配送先B→出発地(総配送距離:15km)
配送ルート候補2:出発地→配送先B→配送先A→出発地(総配送距離:12km)
【0032】
続いて、配送計画作成部113は、探索した配送ルートの候補ごとに、配送ルートの距離と、荷物のクールタイプ(冷蔵または冷凍)と、エアコンによるEV車21のバッテリ消費量(平均バッテリ消費量)とに基づいて、トータル走行エネルギーを算出する。配送計画作成部113は、具体的には、各荷物の配送先間の距離に対して、エアコンによるEV車21のバッテリ消費量を掛けた値を、足し合わせることにより、トータル走行エネルギーを算出する。
【0033】
例えば配送ルート候補1,2において、各荷物のクールタイプ、各配送ルート候補で配送した場合のバッテリ消費量、各配送先間の距離が、以下である場合を考える。なお、各配送ルート候補で配送した場合のバッテリ消費量は、例えば荷物のクールタイプに応じて決定される。このバッテリ消費量は、予め実験的または経験的に求めておいたものを用いてもよい。
【0034】
配送先Aへの荷物のクールタイプ:冷凍
配送先Bへの荷物のクールタイプ:冷蔵
配送ルート候補1のバッテリ消費量:2%/km
配送ルート候補2のバッテリ消費量:3%/km
出発地→配送先Aの距離、配送先A→配送先Bの距離、配送先B→出発地の距離:各5km
出発地→配送先Bの距離、配送先B→配送先Aの距離、配送先A→出発地の距離:各4km
【0035】
ここで、配送ルート候補1では、冷凍荷物を最初に(配送先Aで)下ろすため、例えば配送先Aから配送先Bまでは、エアコンの温度を冷蔵荷物に合わせた温度(冷蔵向け温度)に変更して(下げて)配送を行う。一方、配送ルート候補2では、冷凍荷物を最後に(配送先Aで)下ろすため、例えば配送先Bから配送先Aまでは、エアコンの温度を常に冷凍荷物に合わせた温度(冷凍向け温度)のままにして配送を行う。そのため、配送ルート候補1のバッテリ消費量は、配送ルート候補2のバッテリ消費量よりも小さい値となる。
【0036】
この場合、配送計画作成部113は、配送ルート候補1,2のトータル走行エネルギーを、以下のように算出する。
【0037】
配送ルート候補1のトータル走行エネルギー=5km(出発地→配送先A)×2%/km+5km(配送先A→配送先B)×2%/km+5km(配送先B→出発地)×2%/km=30%
配送ルート候補2のトータル走行エネルギー=4km(出発地→配送先B)×3%/km+4km(配送先B→配送先A)×3%/km+4km(配送先A→出発地)×3%/km=36%
【0038】
そして、配送計画作成部113は、配送ルート候補1,2のうち、トータル走行エネルギーが最小(=30%)の配送ルート候補1を、EV車21の配送ルートとして決定する。このように、トータル走行エネルギーが最小の配送ルートを含む配送計画を作成することにより、EV車21の電費を悪化させることなく、荷物を効率よく配送することができる。
【0039】
<第一のケースの配送計画(配送指定時間あり)>
配送計画作成部113は、配送する荷物の中に、配送先への配送指定時間が設定された荷物が含まれる場合、この配送指定時間を優先的に考慮して配送計画を作成してもよい。例えばEV車21によって、以下に示すように、配送指定時間が設定された荷物を含む、二つの荷物を配送する場合を考える。
【0040】
配送先Aへの荷物の配送指定時間:なし
配送先Bへの荷物の配送指定時間:15時-18時
【0041】
この場合、配送計画作成部113は、以下に示すように、配送指定時間を考慮して配送順を並び替えることにより、出発地(例えば配送会社)から各配送先を経由して再度出発地に戻る配送ルートの候補を探索する。
【0042】
配送ルート候補1:出発地→配送先A→配送先B→出発地(総配送距離:15km)
配送ルート候補2:出発地→配送先B→配送先A→出発地(総配送距離:12km)
【0043】
続いて、配送計画作成部113は、探索した配送ルートの候補ごとに、配送ルートの距離と、荷物のクールタイプ(冷蔵または冷凍)と、エアコンによるEV車21のバッテリ消費量(平均バッテリ消費量)とに基づいて、トータル走行エネルギーを算出する。配送計画作成部113は、具体的には、各荷物の配送先間の距離に対して、エアコンによるEV車21のバッテリ消費量を掛けた値を、足し合わせることにより、トータル走行エネルギーを算出する。
【0044】
例えば配送ルート候補1,2において、各荷物のクールタイプ、各配送ルート候補で配送した場合のバッテリ消費量、各配送先間の距離が、以下である場合を考える。なお、各配送ルート候補で配送した場合のバッテリ消費量は、例えば荷物のクールタイプに応じて決定される。このバッテリ消費量は、予め実験的または経験的に求めておいたものを用いてもよい。
【0045】
配送先Aへの荷物のクールタイプ:冷凍
配送先Bへの荷物のクールタイプ:冷蔵
配送ルート候補1のバッテリ消費量:2%/km
配送ルート候補2のバッテリ消費量:3%/km
出発地→配送先Aの距離、配送先A→配送先Bの距離、配送先B→出発地の距離:各5km
出発地→配送先Bの距離、配送先B→配送先Aの距離、配送先A→出発地の距離:各4km
【0046】
ここで、配送ルート候補1では、冷凍荷物を最初に(配送先Aで)下ろすため、例えば配送先Aから配送先Bまでは、エアコンの温度を冷蔵荷物に合わせた温度(冷蔵向け温度)に変更して(下げて)配送を行う。一方、配送ルート候補2では、冷凍荷物を最後に(配送先Aで)下ろすため、例えば配送先Bから配送先Aまでは、エアコンの温度を常に冷凍荷物に合わせた温度(冷凍向け温度)のままにして配送を行う。そのため、配送ルート候補1のバッテリ消費量は、配送ルート候補2のバッテリ消費量よりも小さい値となる。
【0047】
この場合、配送計画作成部113は、配送ルート候補1,2のトータル走行エネルギーを、以下のように算出する。
【0048】
配送ルート候補1のトータル走行エネルギー=5km(出発地→配送先A)×2%/km+5km(配送先A→配送先B)×2%/km+5km(配送先B→出発地)×2%/km=30%
配送ルート候補2のトータル走行エネルギー=4km(出発地→配送先B)×3%/km+4km(配送先B→配送先A)×3%/km+4km(配送先A→出発地)×3%/km=36%
【0049】
そして、配送計画作成部113は、配送ルート候補1,2のうち、トータル走行エネルギーが最小(=30%)の配送ルート候補1を、EV車21の配送ルートとして決定する。このように、荷物に設定された配送指定時間を遵守した配送ルートを含む配送計画を作成することにより、ユーザが希望する時間帯に荷物を配送することができる。また、トータル走行エネルギーが最小の配送ルートを含む配送計画を作成することにより、EV車21の電費を悪化させることなく、荷物を効率よく配送することができる。
【0050】
<第二、第三のケースの配送計画(配送指定時間なし)>
配送計画作成部113は、EV車21またはエンジン車22に割り当てられた荷物の配送について、総配送距離(配送距離コスト)が最小の配送ルートを決定する。なお、本ケースにおけるEV車21は、冷蔵・冷凍荷物が混在して積み込まれていない、すなわち冷蔵荷物のみが積み込まれたEV車21、および冷凍荷物のみが積み込まれたEV車21のことを示している。また、本ケースにおけるエンジン車22は、通常荷物、冷蔵荷物、冷凍荷物が積み込まれたエンジン車22のことを示している。このエンジン車22では、通常荷物、冷蔵荷物、冷凍荷物が混在して積み込まれていてもよく、あるいは通常荷物、冷蔵荷物、冷凍荷物が混在して積み込まれていなくてもよい。
【0051】
例えばEV車21またはエンジン車22によって、二つの荷物を配送する場合を考える。この場合、配送計画作成部113は、以下に示すように、荷物ごとに設定された配送先への配送順を並び替えることにより、出発地(例えば配送会社)から各配送先を経由して、再度出発地に戻る配送ルートの候補を探索する。
【0052】
配送ルート候補1:出発地→配送先A→配送先B→出発地(総配送距離:15km)
配送ルート候補2:出発地→配送先B→配送先A→出発地(総配送距離:12km)
【0053】
そして、配送計画作成部113は、探索した配送ルート候補1,2のうち、総配送距離が最小(=12km)の配送ルート候補2を、EV車21またはエンジン車22の配送ルートとして決定する。このように、総配送距離が最小の配送ルートを含む配送計画を作成することにより、荷物を効率よく、かつ早期に配送することができる。
【0054】
なお、EV車21に通常荷物のみが積み込まれた場合においても、配送計画作成部113は、上記と同様に、複数の配送ルートの候補を探索し、当該候補のうち、総配送距離(配送距離コスト)が最小の配送ルートを決定する。
【0055】
<第二、第三のケースの配送計画(配送指定時間あり)>
配送計画作成部113は、配送する荷物の中に、配送先への配送指定時間が設定された荷物が含まれる場合、この配送指定時間を優先的に考慮して配送計画を作成してもよい。例えばEV車21またはエンジン車22によって、以下に示すように、配送指定時間が設定された荷物を含む、二つの荷物を配送する場合を考える。
【0056】
配送先Aへの荷物の配送指定時間:なし
配送先Bへの荷物の配送指定時間:15時-18時
【0057】
この場合、配送計画作成部113は、以下に示すように、配送指定時間を考慮して配送順を並び替えることにより、出発地(例えば配送会社)から各配送先を経由して、再度出発地に戻る配送ルートの候補を探索する。
【0058】
配送ルート候補1:出発地→配送先A→配送先B→出発地(総配送距離:15km)
配送ルート候補2:出発地→配送先B→配送先A→出発地(総配送距離:12km)
【0059】
そして、配送計画作成部113は、配送ルート候補1,2のうち、総配送距離が最小(=12km)の配送ルート候補2を、EV車21またはエンジン車22の配送ルートとして決定する。このように、荷物に設定された配送指定時間を遵守した配送ルートを含む配送計画を作成することにより、ユーザが希望する時間帯に荷物を配送することができる。
【0060】
なお、EV車21に通常荷物のみが積み込まれた場合においても、配送計画作成部113は、上記と同様に、複数の配送ルートの候補を探索し、当該候補のうち、総配送距離(配送距離コスト)が最小の配送ルートを決定する。
【0061】
また、EV車21およびエンジン車22が通信機能を備えている場合、配送計画作成部113は、例えばネットワークNWを通じて、決定した配送ルートを含む配送計画を、EV車21およびエンジン車22へと送信してもよい。これを受けて、EV車21およびエンジン車22は、入力された配送ルートを、例えばカーナビの画面等に表示することにより、運転者に提示してもよい。
【0062】
温度変更指示部114は、冷蔵・冷凍荷物が混在して積み込まれたEV車21に対して、温度変更を指示する。例えば温度変更指示部114は、ネットワークNWを通じて、冷蔵・冷凍荷物を配送中のEV車21から、荷物の配送状況に関する情報を取得する。そして、温度変更指示部114は、EV車21において冷凍荷物の配送が完了した旨の情報を取得した際に、当該EV車21に対して、エアコンの温度を冷蔵荷物に合わせた温度(冷蔵向け温度)に変更する旨の指示(以下、「温度変更指示情報」)を送信する。これを受けて、EV車21は、エアコンの温度を、冷蔵荷物に合わせた温度へと変更する。このように、冷凍荷物の配送が完了した時点でEV車21のエアコンの温度を変更することにより、エアコンの消費電力を低減することができ、EV車21の電費の悪化を抑制することができる。
【0063】
通信部12は、例えばLAN(Local Area Network)インターフェースボード、無線通信のための無線通信回路等から構成される。通信部12は、公衆通信網であるインターネット等のネットワークNWに接続されている。そして、通信部12は、当該ネットワークNWに接続することにより、EV車21、エンジン車22および端末30との間で通信を行う。
【0064】
記憶部13は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部13には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。
【0065】
記憶部13には、荷物情報131が格納されている。この荷物情報131には、例えば荷物を配送する配送先に関する情報(例えば配送先住所、氏名、電話番号等)、荷物の配送指定時間(例えば配送指定の有無、配送指定時間(配送指定ありの場合))、荷物の荷重(重量)、荷物のサイズ、荷物のクールタイプ(常温、冷蔵、冷凍等の区分)等が含まれる。また、記憶部13には、EV車21から取得した、荷物の配送状況に関する情報が、必要に応じて格納される。
【0066】
(端末)
端末30は、必要に応じて配送計画作成装置10との間で各種情報のやり取りを行う。この端末30は、例えばユーザが所有するスマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ウェアラブルコンピュータ等によって実現される。
【0067】
端末30は、
図2に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、操作・表示部34と、を備えている。制御部31、通信部32および記憶部33は、ハードウェアとしては制御部11、通信部12および記憶部13と同様である。
【0068】
通信部32は、ネットワークNWを介した無線通信により、配送計画作成装置10との間で通信を行う。記憶部33には、例えば荷物の配送依頼を行うためのアプリケーションソフト等が、必要に応じて格納されている。
【0069】
操作・表示部34は、例えばタッチパネルディスプレイ等により構成されており、ユーザの手指やペン等による操作を受け付ける入力機能と、制御部31の制御に基づいて各種情報を表示する表示機能と、を有している。操作・表示部34は、制御部31の制御に基づいて、例えば荷物の配送依頼画面等を表示する。
【0070】
(配送計画作成方法)
実施形態に係る配送計画作成システム1が実行する配送計画作成方法の処理手順の第一の例について、
図3を参照しながら説明する。本例では、配送計画作成装置10を主体とした処理について説明する。また、本例では、荷物のクールタイプに基づいてEV車21またはエンジン車22へと荷物を割り当て、EV車21に割り当てた荷物について、配送指定時間を遵守しながら配送ルートを決定する場合について説明する。
【0071】
まず、荷物情報登録部111は、荷物情報131を記憶部13に登録する(ステップS1)。続いて、車両割当部112は、荷物の配送用車両として、EV車21とエンジン車22とが混在しているか否かを判定する(ステップS2)。
【0072】
ステップS2において、EV車21とエンジン車22とが混在していると判定した場合(ステップS2でYes)、車両割当部112は、通常荷物の配送をEV車21に割り当て、冷蔵荷物および冷凍荷物の配送をエンジン車22に割り当てる(ステップS3)。
【0073】
続いて、車両割当部112は、冷蔵荷物と冷凍荷物とを、異なるEV車21に割り当てる(ステップS4)。なお、ステップS4は、ステップS3において、通常荷物が積み込まれなかったEV車21に対する処理である。続いて、配送計画作成部113は、冷蔵荷物と冷凍荷物とが混在して積み込まれたEV車21があるか否かを判定する(ステップS5)。
【0074】
ステップS5において、冷蔵荷物と冷凍荷物とが混在して積み込まれたEV車21があると判定した場合(ステップS5でYes)、配送計画作成部113は、配送指定時間を考慮した配送ルートの候補を探索する(ステップS6)。
【0075】
続いて、配送計画作成部113は、探索した配送ルートの候補ごとに、配送ルートの距離と、荷物のクールタイプ(冷蔵または冷凍)と、エアコンによるEV車21のバッテリ消費量(平均バッテリ消費量)とに基づいて、トータル走行エネルギーを算出する(ステップS7)。続いて、配送計画作成部113は、探索した配送ルートの候補のうち、トータル走行エネルギーが最小の配送ルートの候補を、EV車21の配送ルートとして選択する(ステップS8)。
【0076】
続いて、温度変更指示部114は、冷凍荷物の配送が完了した時点で、EV車21に対して温度変更指示情報を送信し、冷蔵向け温度への変更を指示する(ステップS9)。以上により、EV車21の配送計画の作成処理は完了する。
【0077】
なお、ステップS2において、EV車21とエンジン車22とが混在していないと判定した場合(ステップS2でNo)、およびステップS5において、冷蔵荷物と冷凍荷物とが混在して積み込まれたEV車21がないと判定した場合(ステップS5でNo)、配送計画作成部113は、配送指定時間を考慮した配送ルートの候補を探索し、探索した配送ルートの候補のうち、総配送距離が最小の配送ルートの候補を、エンジン車22の配送ルートとして選択する(ステップS10)。以上により、エンジン車22の配送計画の作成処理は完了する。
【0078】
以上説明したように、実施形態に係る配送計画作成装置では、通常荷物の配送をEV車21に割り当て、冷蔵・冷凍荷物の配送をエンジン車22に割り当てることにより、エアコンによるEV車21の電力消費を極力抑制することができ、全体の配送効率(稼働率)を向上させることができる。従って、配送用車両としてEV車21を用いる場合において、配送効率の高い配送計画を作成することができる。
【0079】
また、実施形態に係る配送計画作成装置によれば、配送用車両としてEV車21を用いることにより、燃料代の削減、運転疲労の低減、騒音の低減、環境への影響の低減等のメリットを享受することができる。
【0080】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わしかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 配送計画作成システム
10 配送計画作成装置
11 制御部
111 荷物情報登録部
112 車両割当部
113 配送計画作成部
114 温度変更指示部
12 通信部
13 記憶部
131 荷物情報
21 EV車
22 エンジン車
30 端末
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 操作・表示部
NW ネットワーク