(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】制動制御装置および制動制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241008BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20241008BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60T7/12 C
G01S15/931
(21)【出願番号】P 2021104252
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 隆大
(72)【発明者】
【氏名】福万 真澄
(72)【発明者】
【氏名】貴田 明宏
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081449(JP,A)
【文献】特開2019-172032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60T 7/12
G01S 15/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された、制動制御装置(2)であって、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限
し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立した後、前記第一の組み合わせと前記第三の組み合わせとのうちの一方のみにおける物体検知が消失することを含む、
制動制御装置。
【請求項2】
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立してから所定の実行猶予時間内であることを含む、
請求項
1に記載の制動制御装置。
【請求項3】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された、制動制御装置(2)であって、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立してから所定の実行猶予時間内であることを含む、
制動制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記自車両の走行速度に応じて、前記実行猶予時間を設定する、
請求項
2または3に記載の制動制御装置。
【請求項5】
前記第三条件は、前記自車両の起動から所定の待機時間経過後であることを含む、
請求項1~4のいずれか1つに記載の制動制御装置。
【請求項6】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された、制動制御装置(2)であって、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記自車両の起動から所定の待機時間経過後であることを含む、
制動制御装置。
【請求項7】
前記第三条件は、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の近位側閾値距離よりも大きいことを含む、
請求項1~
6のいずれか1つに記載の制動制御装置。
【請求項8】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された、制動制御装置(2)であって、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の近位側閾値距離よりも大きいことを含む、
制動制御装置。
【請求項9】
前記第三条件は、物体検知の開始時点の、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の遠位側閾値距離よりも小さいことを含む、
請求項1~
8のいずれか1つに記載の制動制御装置。
【請求項10】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された、制動制御装置(2)であって、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、物体検知の開始時点の、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の遠位側閾値距離よりも小さいことを含む、
制動制御装置。
【請求項11】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行される、制動制御プログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限
し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立した後、前記第一の組み合わせと前記第三の組み合わせとのうちの一方のみにおける物体検知が消失することを含む、
制動制御プログラム。
【請求項12】
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立してから所定の実行猶予時間内であることを含む、
請求項11に記載の制動制御プログラム。
【請求項13】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行される、制動制御プログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立してから所定の実行猶予時間内であることを含む、
制動制御プログラム。
【請求項14】
前記判定処理は、前記自車両の走行速度に応じて、前記実行猶予時間を設定する、
請求項12または13に記載の制動制御プログラム。
【請求項15】
前記第三条件は、前記自車両の起動から所定の待機時間経過後であることを含む、
請求項11~14のいずれか1つに記載の制動制御プログラム。
【請求項16】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行される、制動制御プログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記自車両の起動から所定の待機時間経過後であることを含む、
制動制御プログラム。
【請求項17】
前記第三条件は、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の近位側閾値距離よりも大きいことを含む、
請求項11~16のいずれか1つに記載の制動制御プログラム。
【請求項18】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行される、制動制御プログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の近位側閾値距離よりも大きいことを含む、
制動制御プログラム。
【請求項19】
前記第三条件は、物体検知の開始時点の、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の遠位側閾値距離よりも小さいことを含む、
請求項11~18のいずれか1つに記載の制動制御プログラム。
【請求項20】
自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行される、制動制御プログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、物体検知の開始時点の、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の遠位側閾値距離よりも小さいことを含む、
制動制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置および制動制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波センサ等の測距センサを車両に搭載し、車両の周辺に存在する障害物等の物体を検知するとともに、その物体検知結果に基づいて、車両の走行安全性を向上させるための各種制御、例えば、制動装置の作動や、運転者への報知等を行うことが提案されている。この点、特許文献1は、以下のような課題を提示している。車両と物体との接触を予測し、車両と物体とが接触しないように制御を行う場合、例えば、車両の前方を塞ぐように停車する他車両が移動するような状況が想定される。他車両が移動を開始した場合においても、他車両が車両前方に存在しなくなるまで、車両の進行軌跡は他車両の位置と交わることとなり、車両の発進を抑制する制御が行われる。一方、運転者は、他車両の移動開始により、他車両が前方から居なくなれば、車両を発進させても他車両と接触する可能性は小さいと判断し、車両を発進させようとする。このときに、車両において発進を抑制する制御が行われていれば、その制御は運転者の意図しない制御となる。
【0003】
そこで、特許文献1に記載された発明は、移動体の移動方向に存在する障害物についてその横切りを適正に判定することができる物体検知装置を提供する。具体的には、特許文献1に記載された物体検知装置は、第1検知手段と、第2検知手段と、障害物判定手段と、横切り判定手段と、を備える。第1検知手段は、移動体の移動方向に探査波を送信し、該探査波の反射波を物体の検知情報として受信することで、物体を検知する。第2検知手段は、第1検知手段と異なる位置から移動体の移動方向に探査波を送信し、該探査波の反射波を物体の検知情報として受信することで、物体を検知する。障害物判定手段は、第1検知手段による物体の検知結果と第2検知手段による物体の検知結果とに基づいて、移動体の移動方向に障害物が存在していることを判定する。横切り判定手段は、障害物判定手段において障害物が存在していると判定されている状態で、その障害物の存在の判定が両検知手段での所定時間の継続的な検知によりなされたものであり、且つ、その継続的に検知されている状態から両検知手段のいずれかにおいて物体が非検知になった場合に、障害物の横切りが生じたと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、自車両に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置が提案されている。かかる制動制御装置において、自車両の進行方向先を横切る他車両である横切り車両を誤って静止車両や壁等の静止障害物と判断した場合、無用な自動緊急ブレーキ動作が実行されるという課題があった。このため、従来のこの種の制動制御装置に対して、横切り判定精度のさらなる向上が求められている。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の制動制御装置(2)は、自車両(C)に搭載されることで、当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成されている。
かかる制動制御装置は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立した後、前記第一の組み合わせと前記第三の組み合わせとのうちの一方のみにおける物体検知が消失することを含む。
請求項3に記載の制動制御装置(2)は、自車両(C)に搭載されることで、当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成されている。
かかる制動制御装置は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立してから所定の実行猶予時間内であることを含む。
請求項6に記載の制動制御装置(2)は、自車両(C)に搭載されることで、当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成されている。
かかる制動制御装置は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記自車両の起動から所定の待機時間経過後であることを含む。
請求項8に記載の制動制御装置(2)は、自車両(C)に搭載されることで、当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成されている。
かかる制動制御装置は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の近位側閾値距離よりも大きいことを含む。
請求項10に記載の制動制御装置(2)は、自車両(C)に搭載されることで、当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成されている。
かかる制動制御装置は、
前記自車両の進行方向側に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得部(201)と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定部(202)と、
を備え、
前記検知結果取得部は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定部は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、物体検知の開始時点の、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の遠位側閾値距離よりも小さいことを含む。
請求項11に記載の制動制御プログラムは、自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行されるプログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の前方に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立した後、前記第一の組み合わせと前記第三の組み合わせとのうちの一方のみにおける物体検知が消失することを含む。
請求項13に記載の制動制御プログラムは、自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行されるプログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の前方に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記第一条件と前記第二条件とが成立してから所定の実行猶予時間内であることを含む。
請求項16に記載の制動制御プログラムは、自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行されるプログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の前方に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記自車両の起動から所定の待機時間経過後であることを含む。
請求項18に記載の制動制御プログラムは、自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行されるプログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の前方に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の近位側閾値距離よりも大きいことを含む。
請求項20に記載の制動制御プログラムは、自車両(C)に搭載されることで当該自車両における自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成された制動制御装置(2)により実行されるプログラムであって、
前記制動制御装置が実行する処理は、
前記自車両の前方に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を含み、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限し、
前記第三条件は、物体検知の開始時点の、前記物体検知センサとしての測距センサにおける検知距離が、所定の遠位側閾値距離よりも小さいことを含む。
【0007】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を、単に示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る制動制御装置を含む車載システムを搭載した自車両の概略構成を示す平面図である。
【
図2A】
図1に示された車載システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2B】
図2Aに示された制動制御装置にて実現される概略的な機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2Aおよび
図2Bに示された制動制御装置における、前進中の自車両の前方を他車両が横切る場面での動作概要を示す概略図である。
【
図4】
図3に示された場面に対応する測距情報の変化の様子を示すタイムチャートである。
【
図5】
図2Aおよび
図2Bに示された制動制御装置における、前進中の自車両が前方に存在する壁に接近する場面での動作概要を示す概略図である。
【
図6】
図5に示された場面に対応する測距情報の変化の様子を示すタイムチャートである。
【
図7】
図2Aおよび
図2Bに示された制動制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0010】
(車載システム構成)
図1を参照すると、車載システム1は、移動体としての車両Cに搭載されている。車両Cは、いわゆる四輪自動車であって、平面視にて略矩形状に形成された箱状の車体C1を備えている。「平面視」における車両Cの各部分の形状は、車両Cを走行可能に水平面に安定的に載置した状態で当該部分を重力作用方向と同一方向の視線で見た場合の形状を指すものである。本実施形態に係る車載システム1を搭載する車両Cを、以下「自車両C」と称する。
【0011】
以下、平面視にて、自車両Cの車幅方向における中心を通り、且つ自車両Cにおける車両全長方向と平行な仮想直線を、車幅中心線LCと称する。なお、車幅中心線LCは、車両中心線とも称され得る。車両全長方向は、車幅方向と直交し且つ車高方向と直交する方向である。車高方向は、自車両Cの車高を規定する方向であって、自車両Cを走行可能に水平面に安定的に載置した場合の重力作用方向と平行な方向である。また、「前」「後」「左」「右」「上」を、
図1中にて矢印で示された通りに定義する。すなわち、車両全長方向は、前後方向と同義である。また、車幅方向は、左右方向と同義である。
【0012】
車載システム1は、制動制御装置2と複数の測距センサ3とを備えることで、自車両Cの周囲の物体Bすなわち障害物を検知可能に構成されている。具体的には、本実施形態においては、車載システム1は、いわゆる自動緊急ブレーキシステムであって、少なくとも複数の測距センサ3を用いた自車両Cの周囲の物体Bの検知結果に基づいて衝突回避支援および/または衝突被害軽減のための自動的なブレーキ動作を実現可能に構成されている。
【0013】
制動制御装置2は、車体C1の内部に収容されている。制動制御装置2は、自車両Cに搭載されることで、当該自車両Cにおける自動緊急ブレーキ動作を実行可能に構成されている。すなわち、制動制御装置2は、自動緊急ブレーキシステムである車載システム1の動作を制御する、AEB-ECUとも称され得る構成を有している。AEBはAutonomous Emergency Brakingの略である。ECUはElectronic Control UnitあるいはElectric Control Unitの略である。
【0014】
物体検知センサとしての測距センサ3は、いわゆる超音波センサであって、外部に向けて放射された超音波である探査波の物体Bによる反射波を受信することで、物体Bの有無および物体Bとの距離を検知するように構成されている。本実施形態においては、測距センサ3は、送受信一体型の構成を有している。すなわち、測距センサ3は、外部に向けて探査波を放射する送信器としての機能、および、探査波の物体Bによる反射波を受信する受信器としての機能を具備している。
【0015】
自車両Cにおけるフロントバンパー、すなわち、車体C1における前面側のバンパーC2には、測距センサ3としての、第一フロントセンサ3A、第二フロントセンサ3B、第三フロントセンサ3C、および第四フロントセンサ3Dが装着されている。同様に、自車両Cにおけるリアバンパー、すなわち、車体C1における後面側のバンパーC2には、測距センサ3としての、第一リアセンサ3E、第二リアセンサ3F、第三リアセンサ3G、および第四リアセンサ3Hが装着されている。
【0016】
第一フロントセンサ3Aは、自車両Cの左前方に向けて送信波を発信するように、フロントバンパーにおける左端部近辺に設けられている。第二フロントセンサ3Bは、自車両Cの略前方に向けて送信波を発信するように、車幅方向について第一フロントセンサ3Aと車幅中心線LCとの間に配置されている。第三フロントセンサ3Cは、車幅中心線LCを挟んで第二フロントセンサ3Bと略対称な位置に配置されている。第三フロントセンサ3Cは、自車両Cの略前方に向けて送信波を発信するように、車幅方向について車幅中心線LCと第四フロントセンサ3Dとの間に配置されている。第四フロントセンサ3Dは、車幅中心線LCを挟んで第一フロントセンサ3Aと略対称な位置に配置されている。第四フロントセンサ3Dは、自車両Cの右前方に向けて送信波を発信するように、フロントバンパーにおける右端部近辺に設けられている。
【0017】
第一リアセンサ3Eは、自車両Cの左後方に向けて送信波を発信するように、リアバンパーにおける左端部近辺に設けられている。第二リアセンサ3Fは、自車両Cの略後方に向けて送信波を発信するように、車幅方向について第一リアセンサ3Eと車幅中心線LCとの間に配置されている。第三リアセンサ3Gは、車幅中心線LCを挟んで第二リアセンサ3Fと略対称な位置に配置されている。第三リアセンサ3Gは、自車両Cの略後方に向けて送信波を発信するように、車幅方向について車幅中心線LCと第四リアセンサ3Hとの間に配置されている。第四リアセンサ3Hは、車幅中心線LCを挟んで第一リアセンサ3Eと略対称な位置に配置されている。第四リアセンサ3Hは、自車両Cの右後方に向けて送信波を発信するように、リアバンパーにおける右端部近辺に設けられている。
【0018】
図1および
図2Aを参照すると、車載システム1は、制動制御装置2および測距センサ3に加えて、車速センサ4と、HMI装置5と、ブレーキ装置6とを備えている。HMIはヒューマン・マシン・インタフェースの略である。なお、図示の簡略化のため、
図1に示された、測距センサ3としての第一フロントセンサ3A~第四リアセンサ3Hは、
図2Aにおいては、測距センサ3として一纏めに示されている。制動制御装置2は、車載の情報通信回線を介して、測距センサ3、車速センサ4、HMI装置5、およびブレーキ装置6と情報授受可能に接続されている。
【0019】
車速センサ4は、自車両Cの走行速度に対応する信号を出力するように構成されている。HMI装置5は、計器や表示機器等の視覚的情報提示装置と、スピーカ等の音声出力装置と、ドライバ等の乗員からの入力を受け付ける入力デバイスとを備えている。ブレーキ装置6は、自車両Cの各車輪に制動力を発生させる、いわゆる電子式油圧ブレーキ機構を備えている。すなわち、ブレーキ装置6は、ドライバによるブレーキペダルの踏力、あるいは、制動制御装置2からの指令信号に応じた制動力を発生させるように構成されている。
【0020】
(制動制御装置)
本実施形態においては、制動制御装置2は、いわゆる車載マイクロコンピュータであって、プロセッサ21とメモリ22とを備えている。プロセッサ21は、CPUやMPUにより構成されている。メモリ22は、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ、等の各種の非遷移的実体的記憶媒体のうち、少なくともROMおよびRAMを備えている。不揮発性リライタブルメモリは、電源投入中は情報を書き換え可能である一方で電源遮断中は情報を書き換え不能に保持する記憶装置であって、例えばフラッシュROM等である。制動制御装置2は、ROMまたは不揮発性リライタブルメモリに格納された制御プログラムを読み出して実行することで、車載システム1の動作の全体を制御するように構成されている。
【0021】
図2Bを参照すると、制動制御装置2は、車載マイクロコンピュータ上に実現される機能構成として、検知結果取得部201と、判定部202と、制動指令部203とを備えている。検知結果取得部201は、測距センサ3を用いた物体Bの検知結果を含む,各種センサの検知結果を取得するように構成されている。すなわち、
図2Aを参照すると、プロセッサ21は、測距センサ3等の各種センサから検知結果を受信してRAMおよび/または不揮発性リライタブルメモリに格納するようになっている。
【0022】
判定部202は、検知結果取得部201にて取得した各種の検知結果に基づいて、自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定するように構成されている。具体的には、判定部202は、所定の実行条件および所定の制限条件の成否を判定し、実行条件が成立し且つ制限条件が不成立の場合に、自動緊急ブレーキ動作の実行を判定するようになっている。制動指令部203は、判定部202が自動緊急ブレーキ動作の実行を判定した場合に、ブレーキ装置6に向けて、自動緊急ブレーキ動作を実行するための指令信号を出力するように構成されている。
【0023】
(動作概要)
以下、本実施形態に係る制動制御装置2の動作概要について、各図面を参照しつつ説明する。この動作概要説明においては、自車両Cが前進走行中に、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dを用いて自車両Cの進行方向側すなわち前方に存在する物体Bを検知し、その検知結果に基づいて制動制御装置2が自動緊急ブレーキ動作の実行可否を判定する例を用いる。
【0024】
「直接波」および「間接波」を、以下のように定義する。一つのバンパーC2に装着され車幅方向に沿って配列された複数の測距センサ3(例えば第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3D)のうちの一つを「第一測距センサ」と称し、これに隣接する他の一つを「第二測距センサ」と称する。第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波に起因する、第一測距センサにおける受信波を、「直接波」と称する。直接波は、典型的には、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波を第一測距センサ自身が受信波として検知したときの当該受信波である。すなわち、直接波は、探査波を送信した測距センサ3と、当該探査波の物体Bによる反射波を受信波として検知した測距センサ3とが、同一である場合の、当該受信波である。これに対し、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波に起因する、第二測距センサにおける受信波を、「間接波」と称する。間接波は、典型的には、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波を第二測距センサが受信波として検知したときの当該受信波である。すなわち、間接波とは、探査波を送信した測距センサ3と、当該探査波の物体Bによる反射波を受信波として検知した測距センサ3とが、異なる場合の、当該受信波である。かかる直接波および間接波の定義に基づけば、直接波を受信する第一測距センサを「直接検知センサ」と称し、間接波を受信する第二測距センサを「間接検知センサ」と称することが可能である。
【0025】
第一測距センサと第二測距センサとを用いた三角測量は、直接波のTOFと間接波のTOFとに基づいて、物体Bの位置を算出するというものである。TOFはTime of Flightの略であり、伝播時間とも称され得る。このような三角測量の具体的な内容は周知であって、例えば、特許文献1にて詳細に開示されている。したがって、三角測量のこれ以上の詳細な内容については、本明細書においては説明を省略する。
【0026】
制動制御装置2は、所定の動作条件成立中、所定周期(例えば10msec)で、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dを用いた物体検知動作を繰り返し実行する。具体的には、制動制御装置2は、自車両Cにおける車幅中心線LCを挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dのうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量により、物体Bを検知する。組み合わせは、以下の6種類である。
(1)第一フロントセンサ3A=直接検知センサ/第二フロントセンサ3B=間接検知センサ
(2)第二フロントセンサ3B=直接検知センサ/第一フロントセンサ3A=間接検知センサ
(3)第二フロントセンサ3B=直接検知センサ/第三フロントセンサ3C=間接検知センサ
(4)第三フロントセンサ3C=直接検知センサ/第二フロントセンサ3B=間接検知センサ
(5)第三フロントセンサ3C=直接検知センサ/第四フロントセンサ3D=間接検知センサ
(6)第四フロントセンサ3D=直接検知センサ/第三フロントセンサ3C=間接検知センサ
【0027】
1回の物体検知動作において、制動制御装置2は、例えば、(1)→(3)→(5)→(2)→(4)→(6)のように、上記の(1)~(6)の6通りの組み合わせを1組ずつ順に選択する。選択された組において、直接検知センサは、自車両Cの進行方向側すなわち前方あるいは前側方に向けて探査波を放射して、当該探査波の物体Bによる反射波を受信する。間接検知センサは、直接検知センサから放射された探査波の物体Bによる反射波を受信する。制動制御装置2すなわち検知結果取得部201は、上記の(1)~(6)の全ての組み合わせについての検知結果を、所定の動作条件成立中、所定周期で繰り返し取得する。
【0028】
図3(a)~(c)は、物体Bとしての、図中右方向に向かって前進走行中の他車両B1が、前進走行中すなわち図中上方に向かって走行中の自車両Cの左前方に出現して、かかる他車両B1が自車両Cの前方を横切る場面を示す。なお、この例においては、他車両B1は、
図3(a)に示された検知開始時点において、自車両Cから、自動緊急ブレーキ動作の実行要否が問題となり得る程度の近距離位置(例えば3~4m)に存在しているものと仮定する。
【0029】
図3において、「P1」は、第一フロントセンサ3Aと第二フロントセンサ3Bとのうちの一方を直接検知センサとし他方を間接検知センサとした場合(すなわち上記(1)または(2)の組み合わせの場合)の物体検知状態を概念的に示す。「P2」は、第二フロントセンサ3Bを直接検知センサとし第三フロントセンサ3Cを間接検知センサとした場合(すなわち上記(3)の組み合わせの場合)の物体検知状態を概念的に示す。「P3」は、第三フロントセンサ3Cを直接検知センサとし第二フロントセンサ3Bを間接検知センサとした場合(すなわち上記(4)の組み合わせの場合)の物体検知状態を概念的に示す。「P4」は、第三フロントセンサ3Cと第四フロントセンサ3Dとのうちの一方を直接検知センサとし他方を間接検知センサとした場合(すなわち上記(5)または(6)の組み合わせの場合)の物体検知状態を概念的に示す。P1~P4において、物体検知が成立している状態を黒丸で示し、物体検知が成立していない状態を白丸で示す。
図4は、
図3に示された場面における、P1~P4に対応する測距情報の、時間経過に伴う変化の様子を示す。
【0030】
図3(a)に示されているように、自車両Cの左前方に他車両B1を最初に検知した段階においては、車幅中心線LCよりも左側のP1およびP2について物体検知が成立する一方、車幅中心線LCよりも右側のP3およびP4については物体検知が不成立である。ここで、上記の通り、自車両Cの前方を他車両B1が横切る場合、かかる他車両B1の検知開始時点において、他車両B1は、比較的近距離範囲に出現する。このため、
図4に示されているように、P1における物体検知の成立と、P2における物体検知の成立とは、ほぼ同時となる。
【0031】
図3(b)は、
図3(a)に示されている段階から他車両B1および自車両Cがさらに前進して、他車両B1が自車両Cの前方を完全に塞いだ段階を示す。この段階においては、P1~P4の全てについて、物体検知が成立する。
図4に示されているように、P3における物体検知の成立と、P4における物体検知の成立とは、ほぼ同時となる。また、P1およびP2における物体検知の成立と、P3およびP4における物体検知の成立との間のタイムラグは小さい。すなわち、P1~P4における物体検知の成立は、所定の短時間内に発生する。
【0032】
図3(c)は、
図3(b)に示されている段階から他車両B1および自車両Cがさらに前進して、他車両B1が自車両Cの前方を通過しつつある段階を示す。この段階においては、まず、車幅中心線LCよりも左側のP1およびP2における物体検知が成立から不成立に転じる。その後、車幅中心線LCよりも左側のP3およびP4における物体検知が成立から不成立に転じる。
【0033】
図5(a)~(c)は、物体Bとしての壁B2に向かって自車両Cが前進走行中の場面を示す。
図6は、かかる場面における、P1~P4に対応する測距情報の、時間経過に伴う変化の様子を示す。
図5および
図6の見方は、
図3および
図4と同様である。
【0034】
第二フロントセンサ3Bおよび第三フロントセンサ3Cは、自車両Cの略前方を検知範囲としている。これに対し、第一フロントセンサ3Aおよび第四フロントセンサ3Dは、自車両Cの斜め前方を検知範囲としている。このため、壁B2に向かって自車両Cが前進走行中の場面においては、第二フロントセンサ3Bおよび第三フロントセンサ3Cの方が、第一フロントセンサ3Aおよび第四フロントセンサ3Dよりも、より早期すなわち遠距離(例えば5m以上)から壁B2を検知することが可能となる。
【0035】
したがって、
図5(a)に示されているように、壁B2が最初に検知された時点においては、P2およびP3における物体検知がまず成立する一方、P1およびP4における物体検知は不成立である。P2およびP3における物体検知は、
図3のような他車両B1の横切りの場面よりも、かなり早期すなわち遠距離の段階で成立する。P2およびP3における物体検知が成立してから、
図5(b)に示されているようにP1~P4の全てにおける物体検知が成立するまでのタイムラグは、
図3のような他車両B1の横切りの場面と比して、かなり大きい。そして、その後は、P1~P4の全てにおける物体検知の成立が継続する。
【0036】
このように、自動緊急ブレーキ動作を実行すべきではない横切りの場面においては、複数の測距センサ3における検知状態が、特殊な推移を示す。具体的には、
図3に示されているように、車幅中心線LCを挟んで対称的に配置された2対の測距センサ3のうちの一方にて先に物体検知が成立し、次に2対の双方にて物体検知が成立し、その後、先に物体検知が成立した1対のみにて物体検知が不成立に転じる。そこで、制動制御装置2すなわち検知結果取得部201は、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dのうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による物体検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得する。そして、制動制御装置2すなわち判定部202は、検知結果取得部201による取得結果に基づいて実行条件および制限条件の成否を判定し、実行条件が成立しても制限条件が成立する場合には自動緊急ブレーキ動作を制限する。
【0037】
上記の通り、他車両B1の横切りの場合は、P1およびP2における物体検知成立→P1~P4の全てにおける物体検知成立→P1およびP2における物体検知不成立、あるいは、P3およびP4における物体検知成立→P1~P4の全てにおける物体検知成立→P3およびP4における物体検知不成立、という経過をたどる。また、P1~P4の全てにおける物体検知の成立は、これに先立つP1およびP2あるいはP3およびP4における物体検知の成立から比較的短時間に発生する。したがって、制限条件としては、例えば、以下の第一~第三条件がすべて成立することとすることが可能である。これにより、横切り判定精度のさらなる向上が達成され得る。
・第一条件:第一フロントセンサ3Aと第二フロントセンサ3Bとの組み合わせである第一の組み合わせと、第二フロントセンサ3Bと第三フロントセンサ3Cとの組み合わせである第二の組み合わせと、第三フロントセンサ3Cと第四フロントセンサ3Dとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立する。
・第二条件:第一の組み合わせによる物体検知の開始と、第二の組み合わせによる物体検知の開始と、第三の組み合わせによる物体検知の開始とが、全て所定の閾値時間内に発生する。
・第三条件:第一条件と第二条件とが成立した後、第一の組み合わせと第三の組み合わせとのうちの一方のみにおける物体検知が消失する。
【0038】
また、自車両Cの前方を他車両B1が横切る場合、かかる他車両B1の検知開始時点において、他車両B1は、比較的近距離範囲に出現する。一方、壁B2への接近の場合は、壁B2の検知開始時点において、壁B2は、他車両B1が横切る場合よりも遠距離範囲に存在し、壁B2の検知開始から自動緊急ブレーキが必要な時刻まで数秒程度あるいはそれ以上を要する。したがって、制限条件として、第三条件として、上記の条件に代えて、あるいは、これとともに、以下の条件を用いることが可能である。
・第一条件と第二条件とが成立してから所定の実行猶予時間内である。
【0039】
判定部202は、自車両Cの走行速度に応じて、上記の実行猶予時間を設定することが好適である。具体的には、実行猶予時間は、自車両Cの走行速度が高い場合よりも低い場合の方が長く設定される。自動緊急ブレーキを実施したい
図5においては、壁B2は自車両Cが低速の場合、測距センサ3が壁B2を検知してから自動緊急ブレーキをかけたい位置まで自車量Cが接近するまでにかかる時間が高速で接近するときより長くなる。したがって自車両Cの速度が低い場合は実行猶予時間が長くても
図3の自動緊急ブレーキを作動させたくないシーンと
図5の自動緊急ブレーキを作動させたいシーンとの両立が可能となる。一方で自車速Cが高速の場合且つ
図3のシーンにおいて自動緊急ブレーキが作動する位置関係になることは実用面では頻度が低い、あるいは自動緊急ブレーキが作動したとしても不要なブレーキと感じられることは少ない。通常
図3のシーンは自車が停止あるいは1~3km/hといった極低速時の場合が大半なためである。これにより、自車両Cの走行速度に応じた実行猶予時間を設定することで適切な自動緊急ブレーキ動作制御が達成され得る。
【0040】
ところで、自車両Cの起動時点すなわち駐停車中且つイグニッションスイッチがオン操作された時点において、自車両Cの前方至近距離に壁B2が存在する場合があり得る。また、自車両Cの起動直後において、自車両Cが他車両B1の横切りの場面に遭遇する可能性はほとんどない。したがって、制限条件は、自車両Cの起動から所定の待機時間経過後であることを含んでいてもよい。
【0041】
上記の通り、自車両Cの前方を他車両B1が横切る場合、かかる他車両B1の検知開始時点において、他車両B1は、比較的近距離範囲に出現する。一方、壁B2への接近の場合は、壁B2の検知開始時点において、壁B2は、他車両B1が横切る場合よりも遠距離範囲に存在する。したがって、制限条件は、物体検知の開始時点の、測距センサ3における検知距離が、所定の遠位側閾値距離よりも小さいことを含んでいてもよい。また、自車両Cの前方を他車両B1が横切る場合のうち、自車両Cと他車両B1が至近距離(例えば1~1.5m)の位置関係の場合は、自動緊急ブレーキをかけなければ自車両Cが他車両B1に接触する可能性がある。したがって、制限条件は、測距センサ3における検知距離が、所定の近位側閾値距離よりも大きいことを含んでいてもよい。なお、上記の遠位側閾値距離および近位側閾値距離は、遠位側閾値距離>近位側閾値距離であって、遠位側閾値距離は例えば2~3mであり、近位側閾値距離は例えば1~1.5mである。
【0042】
(動作例)
以下、本実施形態に係る制動制御装置2の動作例について、
図1~
図2Bに加えて
図7に示されているフローチャートを参照しつつ説明する。なお、
図7において、「S」は「ステップ」の略である。
【0043】
プロセッサ21は、メモリ22から
図7に示されているルーチンに対応するプログラムを読み出して、所定時間間隔で繰り返し起動する。かかるプログラムが起動されると、まず、ステップ701にて、プロセッサ21は、測距センサ3を含む各種センサにおける検知結果であるセンサ情報を取得する。次に、ステップ702にて、プロセッサ21は、ステップ701にて取得したセンサ情報に基づいて、実行条件の成否を判定する。続いて、ステップ703にて、プロセッサ21は、ステップ702にて実行条件の成立が判定されたか否かに応じた処理を実行する。
【0044】
実行条件の成立が判定された場合(すなわちステップ703=YES)、プロセッサ21は、処理をステップ704に進行させる。これに対し、実行条件の不成立が判定された場合(すなわちステップ703=NO)、プロセッサ21は、ステップ704以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。
【0045】
ステップ704にて、プロセッサ21は、ステップ701にて取得したセンサ情報に基づいて、制限条件の成否を判定する。続いて、ステップ705にて、プロセッサ21は、ステップ704にて制限条件の成立が判定されたか否かに応じた処理を実行する。
【0046】
制限条件の不成立が判定された場合(すなわちステップ705=NO)、プロセッサ21は、処理をステップ706に進行させる。ステップ706にて、プロセッサ21は、自動緊急ブレーキを作動させるための指令信号を、ブレーキ装置6に出力する。これに対し、制限条件の成立が判定された場合(すなわちステップ705=YES)、プロセッサ21は、ステップ706の処理をスキップして、本ルーチンを一旦終了する。
【0047】
このように、プロセッサ21とメモリ22とを備えた制動制御装置2により実行されるプログラムは、制動制御装置2すなわちプロセッサ21が実行する処理として、
前記自車両の前方に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を有し、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限する。
また、制動制御装置2は、プロセッサ21とメモリ22とを備え、
プロセッサ21は、
前記自車両の前方に向けて探査波を放射して当該探査波の物体(B)による反射波を受信する物体検知センサ(3)を用いた前記物体の検知結果を取得する、検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記自動緊急ブレーキ動作を実行するか否かを判定する、判定処理と、
を実行するように構成され、
前記検知結果取得処理は、4個の前記物体検知センサであって前記自車両における車幅中心線を挟んで対称に配置されつつ車幅方向に沿って順に配列された第一センサ(3A)、第二センサ(3B)、第三センサ(3C)、および第四センサ(3D)、のうちの、互いに隣接配置された2個の組み合わせを用いた三角測量による前記検知結果を、全ての組み合わせについて順次取得し、
前記判定処理は、前記第一センサと前記第二センサとの組み合わせである第一の組み合わせと、前記第二センサと前記第三センサとの組み合わせである第二の組み合わせと、前記第三センサと前記第四センサとの組み合わせである第三の組み合わせとの全てにおける物体検知が成立するという第一条件と、前記第一の組み合わせによる物体検知の開始と前記第二の組み合わせによる物体検知の開始と前記第三の組み合わせによる物体検知の開始とが全て所定の閾値時間内に発生するという第二条件と、所定の第三条件とが成立した場合、前記自動緊急ブレーキ動作を制限する。
【0048】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一の符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0049】
本発明は、上記実施形態に示された具体的な装置構成に限定されるものではない。例えば、測距センサ3は、フロントバンパーおよび/またはリアバンパーに5個以上装着されていてもよい。この場合であっても、5個以上の測距センサ3のうちの任意の4個を「第一センサ」、「第二センサ」、「第三センサ」および「第四センサ」と認定することで、本発明の要件は充足され得る。
【0050】
送受信一体型の測距センサ3の具体的構成についても、特段の限定はない。すなわち、例えば、測距センサ3は、1個の筐体に送信用の超音波素子と受信用の超音波素子とを個別に設けた構成であってもよい。
【0051】
制動制御装置2の全部または一部は、上記のような動作を可能に構成されたデジタル回路、例えばASICあるいはFPGAを備えた構成であってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。すなわち、制動制御装置2において、車載マイクロコンピュータ部分とデジタル回路部分とは併存し得る。
【0052】
上記実施形態にて説明した、各種の動作、手順、あるいは処理を実行可能とする、本発明に係るプログラムは、V2X通信を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。V2XはVehicle to Xの略である。あるいは、かかるプログラムは、車両Cの製造工場、整備工場、販売店、等に設けられた端末機器を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。かかるプログラムの格納先は、メモリーカード、光学ディスク、磁気ディスク、等であってもよい。
【0053】
このように、上記の各機能構成および処理は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および処理は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および処理は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、上記の各機能構成および処理は、これを実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【0054】
したがって、
図2Bに示された検知結果取得部201、判定部202、および制動指令部203は、あくまで、本発明の内容の理解に資するために便宜的に設定した機能構成ブロックである。したがって、これらの機能構成ブロックが実際にサブルーチンあるいはハードウェアとして制動制御装置2の内部に実現されていなくても、本発明所定の機能あるいは処理が実現されていれば、本発明の要件は充足され得る。
【0055】
本発明は、上記実施形態に示された具体的な動作態様に限定されない。すなわち、例えば、本発明は、自車両Cが後退中に、リアバンパーに装着された複数の測距センサ3を用いて後方あるいは後側方の物体Bを検知する場合にも、上記実施形態と同様に適用可能である。
【0056】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0057】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0058】
2 制動制御装置
201 検知結果取得部
202 判定部
3 測距センサ
3A 第一フロントセンサ
3B 第二フロントセンサ
3C 第三フロントセンサ
3D 第四フロントセンサ
B1 他車両
C 自車両