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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】フレーム
(51)【国際特許分類】
   A47G 1/06 20060101AFI20241008BHJP
   A47G 1/14 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A47G1/06 C
A47G1/14 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021108776
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006262
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2021年5月20日、http://designart.jp/entry2021/、展示会(DESIGNART TOKYO 2021)ウェブサイトへレジュメを送信し参加申し込み
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】田村 由貴
(72)【発明者】
【氏名】高木 瑞江
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-006096(JP,U)
【文献】特開2006-123982(JP,A)
【文献】実開昭50-036795(JP,U)
【文献】特開平09-276105(JP,A)
【文献】特開平08-072499(JP,A)
【文献】実開平03-072769(JP,U)
【文献】登録実用新案第3214001(JP,U)
【文献】実公昭52-033520(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/06
A47G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掲示物を額装するフレームであって、
正面視で前記掲示物を囲って延在し、パルプモールド製の枠体と、
背面視で前記掲示物を覆って延在するとともに前記枠体に対して背面側に配置され、パルプモールド製の裏体と、
前記枠体と前記裏体とを着脱自在に嵌め合わせる嵌合構造と、を備え
前記枠体は、正面側に凸の形状であって、内周側の端縁である内端よりも外周側の端縁である外端のほうが背面側に配置され、
前記裏体は、前記枠体と嵌め合わせられた状態において前記枠体に対して付勢される周縁部と、前記周縁部を除いた部位の主部とを有し、前記主部よりも前記周縁部のほうが正面視で見る方向に直交する平面である所定平面に沿って印加される外力に沿って印加される外力に対して変形しやすい機械的性質であって、
前記嵌合構造は、前記周縁部が前記枠体に付勢されるように前記主部に対して前記周縁部が折り曲げられた形状に成型された構造を含む
ことを特徴とするフレーム
【請求項2】
前記嵌合構造は、前記周縁部において前記枠体に沿う面状の領域が前記枠体に押し当てられて付勢する構造である
ことを特徴とする請求項に記載のフレーム。
【請求項3】
前記嵌合構造は、前記周縁部において前記枠体に沿う線状の領域が前記枠体に押し当てられて付勢する構造である
ことを特徴とする請求項に記載のフレーム。
【請求項4】
前記裏体は、正面視で前記枠体と重複する領域において前記枠体と前記裏体とが離間した中空部へ向けて突設されるとともに前記所定平面において突条をなす凸部を有する
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載のフレーム。
【請求項5】
前記凸部は、複数箇所に断続的に配置された
ことを特徴とする請求項に記載のフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掲示物を額装するフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イラストや写真といった掲示物を額装するフレームには、さまざまな材料が用いられており、木製フレーム(特許文献1参照),樹脂製フレーム(特許文献2参照),金属製フレーム(特許文献3参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-68206号公報
【文献】特開2009-153680号公報
【文献】登録実用新案第3006035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように木材,樹脂,金属を材料とするフレームは、リサイクルしにくいこと,重いことなどの課題が挙げられ、ユーザビリティが十分とは言えないおそれがある。よって、フレームのユーザビリティを高めるうえで改善の余地がある。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、フレームのユーザビリティを高めることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示するフレームは、掲示物を額装するフレームである。本フレームは、正面視で前記掲示物を囲って延在し、パルプモールド製の枠体と、背面視で前記掲示物を覆って延在するとともに前記枠体に対して背面側に配置され、パルプモールド製の裏体と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本件によれば、フレームのユーザビリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フレームを掲示物とともに示す分解斜視図である。
図2】フレームの要部断面図である。
図3】変形例に係るフレームを示す正面図である。
図4】変形例に係る嵌合構造を説明する要部断面図である。
図5図2に対応する図面であり、変形例に係るフレームを説明する要部拡大断面図である。
図6図4に対応する図面であり、変形例に係るフレームを説明する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、フレームを実施するための形態を説明する。
本実施形態のフレームは、掲示物を額装するフレームである。掲示物の例としては、イラスト,絵画,写真といった平面的な形状の物をはじめ、Tシャツやエンブレムといった立体的な形状の物なども挙げられる。フレームは、掲示物が写真の場合にはフォトフレームとも称され、掲示物が絵画の場合には額(あるいは「額縁」)とも称される。
【0010】
本実施形態の説明では、フレームで額装された掲示物を正面から見ることを正面視と称する。ここでいう正面から見ること(すなわち正面視)は、掲示物の額装されたフレームをオモテ側(正面側)からウラ側(背面側)へ向けて見ることである。反対に、ウラ側からオモテ側を見ることを背面視と称する。さらに、正面視や背面視で見る方向に直交する平面を所定平面と称し、所定平面において掲示物の中心を基準にして径方向および周方向を定める。
【0011】
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、フレームの構成を項目[1]で述べる。項目[1]では、フレームを概説してから、フレームの製造に関するパルプモールドについて小項目[1-1]で説明し、各構成要素を小項目[1-2]で説明する。そして、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
【0012】
[1.構成]
図1に示すように、フレーム1には、掲示物9に対してオモテ側から取り付けられる枠体2と、掲示物9に対してウラ側から取り付けられる裏体3とが設けられている。図1には、正面視で角の丸められた矩形状の外形をなすフレーム1を例示する。
本実施形態のフレーム1は、枠体2および裏体3のみで構成されており、枠体2と裏体3とが別体である。
【0013】
本フレーム1には、従来の額装用フレームに設けられている下掲の部材が設けられていない。
・掲示物に対してオモテ側に配置される透明板(たとえばガラス板)
・枠体と裏体とを係止するための別部材(たとえばネジや爪部材)
【0014】
[1-1.パルプモールド]
枠体2および裏体3のそれぞれは、パルプモールド製である。ここでいう「パルプモールド製」とは、下記の工程1,2を実施して製造された成型体(「パルプモールド成型体」や単に「パルプモールド」とも称される)を意味する。
・工程1:パルプの懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる工程
・工程2:工程1で得られたモールド中間体を金型でプレスする工程
【0015】
本実施形態(本出願)で言う「パルプモールド製」は、成型体の材料に熱硬化性樹脂(好ましくは樹脂)が含まれないことを意味する。熱硬化性樹脂(好ましくは樹脂)が含まれないことで、リサイクルが容易であり、かつ水性インクによる着色性を確保することができる。
枠体2や裏体3は、パルプ含有量が100[質量%](パルプのみで構成)であってもよいだけでなく、サイズ剤や紙力増強剤といった他材料がパルプに添加された材料から製造されてもよい。他材料の添加された材料におけるパルプ含有量は、環境負荷を抑える観点やリサイクル性を高める観点から、95[質量%]以上であることが好ましく、96[質量%]以上であることがより好ましく、97[質量%]以上であることが更により好ましく、98[質量%]以上であることが更に一層好ましい。
【0016】
熱硬化性樹脂を含む材料から製造された成型体は、金型でプレス成型した後の加熱工程が熱硬化性樹脂を硬化させるために必要である。これに対し、上記のように熱硬化性樹脂フリーの材料から製造された枠体2および裏体3は、工程2の後に別工程で加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる工程が不要である。
上記の工程2では、加熱しながらプレス(いわゆるホットプレス)する工程が実施される。当該工程を行うことで、表面平滑性に優れたフレームを得ることができる。なお、工程2の後に別工程で加熱する工程で製造されたことは、本実施形態で言う「パルプモールド製」の意味に含まれないものとする。
【0017】
本工程2では、対向して配置された二つの金型で挟み込まれたモールド中間体がプレスされる。
工程2において、表面平滑性に優れた成型体を得る観点から、金型によるプレス時の圧力は、好ましくは0.1[MPa]以上、より好ましくは0.3[MPa]以上、更に好ましくは0.4[MPa]以上、より更に好ましくは0.6[MPa]以上である。なお、ここでいう圧力は、消費電力および装置負荷を抑制する観点から、好ましくは3.0[MPa]以下、より好ましくは2.0[MPa]以下、更に好ましく1.5[MPa]以下である。
【0018】
また、工程2において、表面平滑性に優れた成型体を得る観点から、金型によるプレス時の温度は、好ましくは130[℃]以上、より好ましくは150[℃]以上、更に好ましくは170[℃]以上である。なお、ここでいう温度は、消費電力,装置負荷,変色などを抑制する観点から、好ましくは280[℃]以下、より好ましくは250[℃]以下、更に好ましくは230[℃]以下である。
【0019】
上記のような範囲に圧力や温度が設定された工程2が実施されることにより製造された成型体は、平滑性に優れており、ファインモールドあるいはファインパルプモールドとも称される。そのため、本実施形態の枠体2および裏体3のそれぞれは、ファインモールド製あるいはファインパルプモールド製であるとも言える。
そのほか、枠体2および裏体3は、径方向外側の端縁が一致あるいはほぼ一致する形状に成型され、厚みも共通あるいはほぼ同等に成型されている。
【0020】
[1-2.構成要素]
つぎに、パルプモールド製の枠体2,裏体3のそれぞれを説明する。
枠体2は、正面視で掲示物9を囲って延在している。
この枠体2は、正面視で掲示物9における外観可能な主部9A(少なくとも一部)に対して外周側の周縁部9Bを覆う範囲に延在している。すなわち、正面視で掲示物9の主部9Aを囲繞する範囲に枠体2が延在している。
【0021】
本実施形態の枠体2は、オモテ側に膨出した形状に設けられている。枠体2の形状を詳細に言えば、図2に示すように、内周側の端縁(内端)2Aよりも外周側の端縁(外端)2Bがウラ側に配置されており、径方向断面がオモテ側に凸の形状であってJ字状をなす。このような形状に成型された枠体2は、所定平面に沿って延在する構成と比較して、所定平面に沿って印加される外力に対して変形しやすい機械的性質を有する。
フレーム1の正面視では、掲示物9の主部9Aおよび枠体2のみが外観可能である。外観可能な掲示物9の主部9Aは、オモテ側に露出する。掲示物9および枠体2の双方に対してウラ側には裏体3が配置され、フレーム1の正面視では裏体3が外観不能である。
【0022】
裏体3は、背面視で掲示物9を覆う領域に延在している。換言すれば、正面視で掲示物9からはみ出す範囲に裏体3が延在している。この裏体3は、額装用フレームにおいて裏板と称される部位に対応する構成であるが、板状の形態に限らず種々の形態が適用されうる。裏体3と枠体2との間には掲示物9の周縁部9Bが挟み込まれ、枠体2および裏体3によって掲示物9が挟装される。
この裏体3には、所定平面に沿って延在する主部3Aと、主部3Aに対して折り曲げられた形状に設けられた周縁部3Bとが設けられている。
【0023】
主部3Aは、掲示物9の全部に対してウラ側に配置される平板状の部位である。この主部3Aは、正面視で掲示物9からはみ出す範囲であって枠体2からははみ出さない範囲に延在する。
この主部3Aには、掲示物9の主部9Aに対してウラ側に配置される領域をなす中央部31に対して径方向外側に、正面視で枠体2の一部に覆われる領域をなす被覆部32が設けられている。被覆部32における径方向内側の端縁には、枠体2における内周側の端縁2Aが掲示物9を介して当接する。
【0024】
被覆部32に対してオモテ側には、枠体2との間に中空の空間をなす中空部8が設けられている。ここで例示する被覆部32には、中空部8へ向けて凸部3Cが突設されている。具体的には、周方向に沿って延在する凸部3C(いわゆる「突条」)が設けられている。図1には、枠体2のなす矩形の各辺に沿って四箇所(複数箇所)に凸部3Cが断続的に配置された例を示す。
【0025】
周縁部3Bは、所定平面に沿って延在する主部3Aに対して折り曲げられた形状であることから、所定平面に沿って印加される外力に対して主部3Aよりも変形しやすい機械的性質をもつ。たとえば、径方向内側へ向かう外力が印加された周縁部3Bは、外周側へ向かう抗力を発揮しつつ径方向に圧縮されることで変形し、この外力の印加が解除されると復元する。
【0026】
本実施形態のフレーム1には、枠体2と裏体3とを着脱自在に嵌め合わせる嵌合構造23が設けられている。
この嵌合構造23は、枠体2および裏体3の双方がパルプモールド製であることから、枠体2および裏体3ともたわみが許容されるという物性を利用した構造である。具体的には、裏体3の周縁部3Bと枠体2との双方が有する変形しやすい機械的性質を利用した嵌合構造23がフレーム1に内包されている。ここで例示する嵌合構造23は、裏体3の周縁部3Bが枠体2に付勢されるように、裏体3の主部3Aに対して周縁部3Bが折り曲げられた形状に成型された構造である。
【0027】
本嵌合構造23は、裏体3の周縁部3Bにおいて枠体2に沿う面状の領域(図2では線状の領域が図示されている)が枠体2に押し当てられて付勢する構造である。
この嵌合構造23をなす裏体3の周縁部3Bは、径方向内側の第一半部B1が径方向外側へ向かうほどオモテ側に位置する姿勢で折り立てられた形状に成型されている。この周縁部3Bは、径方向外側の第二半部B2が径方向外側へ向かうほどウラ側に位置する姿勢で第一半部B1に対してウラ側に折り返された形状に成型されている。
【0028】
さらに、第二半部B2のうちウラ側の半部(最も径方向外側の部位)は、オモテ側からウラ側へ向かう方向と平行に設けられ、枠体2のうち第二半部B2のうちウラ側の半部が押し当てられる内面(外観不能な側の面)と平行に設けられている。
上記の嵌合構造23は、枠体2と裏体3とが嵌め合わせられるときに、第二半部B2のうちウラ側の半部が枠体2の内面に摺接し、周縁部3Bが径方向内側に圧縮されて変形するとともに枠体2が径方向外側に伸張するように変形する。そして、第二半部B2のうちウラ側の半部と枠体2の内面とが面状に接触しつつ、径方向に押し付け合うことによって、枠体2と裏体3とが嵌め合わせられる。
【0029】
[2.作用および効果]
本実施形態のフレーム1は、上述のように構成されるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
枠体2および裏体3のそれぞれがパルプモールド製であることから、木材,樹脂,金属を材料とするフレームと比較して軽量であり、木材を材料とするフレームと比較して種々の形状に成型しやすく、古紙のリサイクルに供することができるという種々の利点が挙げられる。さらに、本実施形態の枠体2は、材料に熱硬化性樹脂(好ましくは樹脂)が用いられていないことから、リサイクルが容易かつ樹脂材に対して着色しにくい水性インクによる着色性を確保することもできる。そのため、フレーム1の使用者が枠体2にイラストや模様を描くことができる。
よって、本フレーム1によれば、ユーザビリティを高めることができる。
【0030】
枠体2と裏体3とを着脱自在に嵌め合わせる嵌合構造23は、枠体2および裏体3の双方がパルプモールド製であることから、枠体2および裏体3ともたわみが許容されるという物性を利用してフレーム1に内包することができる。具体的に言えば、パルプモールド製の枠体2および裏体3から構成されたフレーム1は、金属製や木製といった剛な材料のフレームと比較して柔な材料から成型されることから変形が許容される。そのため、枠体と裏体とを着脱するための構造の別設を省略することができ、フレーム1に内包された嵌合構造23によって枠体2と裏体3とを着脱することができる。
【0031】
この嵌合構造23は、裏体3の主部3Aに対して周縁部3Bが折り曲げられた形状に成型された構造を含むことから、主部3Aよりも変形しやすい周縁部3Bの圧縮による付勢力によって枠体2および裏体3を互いに嵌め合わせることができる。
本実施形態で上述の嵌合構造23は、裏体3の周縁部3Bにおいて枠体2に沿う面状の領域が枠体2に押し当てられて付勢する構造であることから、枠体2および裏体3の嵌め合いで互いに押し当てられる領域を面状に確保することができる。そのため、枠体2および裏体3が嵌め合わせられた状態を確実に保持することができる。
【0032】
裏体3の被覆部32に突設された凸部3Cは、被覆部32の補強するリブのように機能するため被覆部32の変形が抑えられ、被覆部32を含む主部3Aの変形を抑制することができる。そのため、裏体3の主部3Aによって掲示物9をウラ側から確実に支持することができる。この凸部3Cによれば、所定平面に沿う方向への掲示物9のズレを規制することもでき、掲示物9の位置決めやズレ防止に寄与する。
【0033】
また、四箇所の凸部3Cが断続的に配置されていることから、ズレの規制される掲示物9のサイズや形状への対応自由度を確保することができる。
そのほか、各凸部3Cが延在して設けられていることから、主部3Aの変形抑制効果を向上させることができ、掲示物9の位置決めを容易にすることもできる。
【0034】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
フレームは、図1図2に示す形状に限らず、種々の形状を採用することができる。たとえば、図3図4に例示する形状のフレーム1′を採用してもよい。
【0035】
図3に示すように、フレーム1′は、図1に例示のフレーム1に対して矩形の各辺に対応する部位が径方向内側にやや窪んだ外形をなす点が相違する。
嵌合構造において押し当てられる領域は、一実施形態で上述のように面状の領域に限らない。図4に例示する嵌合構造23′のように、裏体3′の周縁部3B′における線状の領域(図2では点状の領域が図示されている)が枠体2′に押し当てられてもよい。
【0036】
このように周縁部3B′において枠体2′に沿う線状の領域が枠体2′に押し当てられて付勢する嵌合構造23′によれば、枠体2′および裏体3′をより容易に嵌め合わせることができ、枠体2′および裏体3′の一方を他方から容易に取り外すこともできる。
なお、本フレームは、枠体および裏体が少なくともパルプモールド製であればよく、掲示物のオモテ側に透明なフィルム類やガラス板(透明板)などの透明部材が設けられてもよく、掲示物と裏体との間に台紙や保護シートなどの他部材が介装されていてもよい。さらに、フレームを補強する観点から、枠体と裏体とを係止するための別部材を使用してもよい。
【0037】
あるいは、枠体と裏体とが別体に設けられたフレームに限らず、図5図6に示すように枠体2X,2Yと裏体3X,3Yとが一体に成型されていてもよい。具体的に言えば、フレーム1X,1Yの周縁のうち正面視で上下左右のいずれか一辺のみにおいて、枠体2X,2Yと裏体3X,3Yとが罫線部4X,4Yを介して繋がっていてもよい。すなわち、罫線部4X,4Yを枢軸にして枠体2X,2Yや裏体3X,3Yが揺動自在に設けられていてもよい。このように一体成型されたフレーム1X,1Yによれば、枠体2X,2Yと裏体3X,3Yとの分離が構造的に回避されるため、ユーザビリティの向上に資する。このフレーム1X,1Yは、枠体2X,2Yと裏体3X,3Yとの分離が構造的に回避されたことから、嵌合構造を省略するのに好適である。
【0038】
また、本フレームの資材であるパルプ材は、パルプ繊維を含むスラリー(以下、「パルプスラリー」または「抄紙原料」とも称する,一実施形態の工程1で上述の「懸濁液」に対応)を原料として抄造されたものを用いることができ、着色剤が添加されてもよい。この場合には、パルプ材に添加された着色剤によってフレームが着色されてもよい。すなわち、本実施形態のフレームは、パルプ繊維および着色剤を含むパルプスラリーを湿式抄造してなるものであってもよい。湿式抄造の方法としては、公知の方法を採用することができる。着色剤についての詳細は後述する。
【0039】
<二次加工フレーム>
本発明の実施形態に係るフレームを表面加工して、二次加工フレームとしてもよい。なお、本発明の実施形態において、二次加工フレームとは、フレームに、表面加工を施したものである。なお、本発明の実施形態に係るフレームは、表面平滑性に優れるため、表面加工を容易に施すことができるという利点をも有する。
二次加工の方法としては、パルプモールドの表面加工が可能な方法であればとくに限定されないが、二次加工フレームは、直刷法、ラミネート法、転写法、および蒸着法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることが好ましく、直刷法、ラミネート法、および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがより好ましく、ラミネート法および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがさらに好ましい。
なお、これらの方法に限定されず、予め印刷されたシール等を貼付してもよい。
【0040】
(直刷法)
直刷法は、色、柄、模様等の付与や、防水性、防湿性等の付与を目的として、直接フレームの表面にインクや樹脂を付与するものであり、含浸、印刷等により、フレームを表面加工する方法が挙げられる。
印刷としては、ゴム版や樹脂版による凸版印刷、シルクスクリーン印刷、タンポ印刷、静電印刷、熱転写印刷などのいずれの印刷手段であってもよい。印刷により、得られたフレームの表面に、図柄や文字等を設けることができる。
また、フレームへの刷毛、スプレーなどによって直刷してもよい。これらの中でも、均一に樹脂等を付与する観点から、スプレー塗布が好ましい。スプレー塗布はエアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等のいずれにより行ってもよい。
フレームの表面に防水・防湿性を付与する場合には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の樹脂を固形分に含む水系エマルジョン塗料、またはこれらの樹脂の水溶液塗料若しくは有機溶剤系塗料等を塗工すればよい。
【0041】
(ラミネート法)
ラミネート加工は、樹脂フィルムで被覆することにより行われることが好ましく、使用される樹脂フィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂フィルム、変性ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂フィルムが挙げられる。製造コスト、成形性等を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、環境に配慮した廃棄性の点からは、生分解性樹脂フィルムが好ましい。ラミネート加工は、これらの樹脂フィルムの2種以上を積層させて形成してもよい。
樹脂フィルムの厚みはとくに限定されないが、10[μm]以上300[μm]以下であることが好ましい。
【0042】
上記の樹脂フィルムをラミネート加工することにより、耐水性、耐油性、ガスバリア性
等の機能を向上または付与することができる。
また、ラミネート加工する樹脂フィルムに、予め絵柄を印刷してもよく、着色性のある顔料、微細粒子(パール顔料、ホログラム等)、夜光染料・夜光顔料等を添加しておいてもよい。このような樹脂フィルムを使用することにより、フレームの表面に、光沢性や意匠性を付与することができる。
【0043】
ラミネート加工は、フレームに対して押出ラミネーション、熱ラミネーション、ドライラミネーション、またはウェットラミネーション等の公知の方法で行えばよい。
これらの中でも、熱ラミネーションが好ましく、真空ラミネーション、真空プレスが好ましく、真空ラミネーションがより好ましい。
真空ラミネーションは、基材側(パルプモールド側)からの吸引により、その上部に置かれたシートを変形させてラミネートを行ってもよく、また、予め真空にされた上下チャンバーを樹脂フィルムで2分割しておき、樹脂フィルム加熱装置を備えた上部チャンバーを圧空とすることにより、下部チャンバーに置かれた基材(フレーム)にラミネートする方法でもよい。
また、真空プレスは、シリコンラバー等を基材(フレーム)側からの真空吸引、場合により上部より圧空力を加えて基材形状に変形させ、シリコンゴム等と基材との間に挟まれた樹脂フィルムがシリコンゴムの圧力により基材にラミネートされる。
また、樹脂フィルムを、フレームの形状に合わせて、金型により予備成形し、フレームとラミネートしてもよい。
【0044】
ラミネート加工は、従来公知の方法で行えばよく、真空ラミネーション装置としては、TOM成形機(布施真空株式会社製)などが例示される。
また、ラミネーションの際の温度、圧力などの条件は、ラミネートする樹脂フィルムの素材および厚み、基材の形状、接着剤の有無等により適宜選択すればよいが、たとえば、ヒーターの加熱温度は80~200[℃]で、貼合を行う。
【0045】
ラミネートの際に、樹脂フィルムとフレームとの間に、接着剤を付与してもよく、また、付与しなくてもよい。接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、セルロース系接着剤、その他のラミネート用接着剤をしようすることができる。接着剤を付与する場合には、接着剤に着色性を有する顔料、パール顔料、微細粒子(ホログラム等)、夜光顔料、夜光染料等を添加してもよい。
【0046】
(転写法)
転写法としては、ホットスタンプ転写法、インモールド転写法、水圧転写法などの種々の転写法が例示され、乾式転写法、湿式転写法のいずれでもよい。またインモールド転写法において、予備成形工程を加えてもよい。
転写法の中では、ホットスタンプ転写法(以下、単に「ホットスタンプ法」ともいう)が好ましい。ホットスタンプ法は、「箔」と呼ばれる金属を蒸着したり、顔料を塗布したフィルムを使用し、箔表面に設けた熱接着層を介して基材に熱転写する方法である。ホットスタンプ法に使用される箔は、離型性を有するベースフィルム(たとえば、二軸延伸ポリエステルフィルム)、剥離層(保護層)、絵柄層・蒸着層、熱接着層の順に積層されており、必要に応じて、ベースフィルムと保護層との間に離形層が設けられる。ホットスタンプ法としては、(i)アップダウン方式、(ii)ロール転写方式が挙げられ、熱圧の存在する部分の絵柄層・蒸着層が、基材(フレーム)に転移するという原理は同じである。アップダウン方式では、ヒーターが内蔵された型板を、ベースフィルム側から基材に押し付け、熱接着層を介して、絵柄層・蒸着層を基材に転写する。同様に、ロール転写方式では、加熱したローラをベースフィルム側から押し付けることで、絵柄層・蒸着層を基材に転写する。また、ベースフィルム側に研削加工、艶差処理、凹凸加工等を施すことにより、転写時に、絵柄層、蒸着層に賦形(凹凸を付す)を行うことも可能である。
【0047】
(蒸着)
蒸着は、従来公知の蒸着法を採用すればよく、物理蒸着でも化学蒸着でもよく、とくに限定されないが、フレームに金属光沢を付与する目的で蒸着することが好ましく、物理蒸着である真空蒸着がより好ましい。
蒸着材料は、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類、SiO、TiO、ZrO、MgFなどの酸化物やフッ化物を使用することが好ましい。
蒸着層の厚みは、とくに限定されないが、0.1[μm]以上であることが好ましい。
【0048】
上記表面加工は、フレームに収容する包装対象の外観や特徴等に合わせて選択されてもよい。これにより、包装対象およびフレーム一体の意匠性がより高められる。
表面加工として真空ラミネート法を用いると、微細な凹凸がある面に気泡やゴミを混入させることなく樹脂フィルムを張ることができるため、滑らかな表面のフレームを得られる。
また、表面加工としてホットスタンプ転写法を用いると、金属光沢を得られるため、シャイニーな表面のフレームを得られる。
【0049】
本発明の実施形態に係る実施形態のフレームに用いられうる着色剤としては、フレームに何らかの着色を施し得るものであれば、その種類に特に制限は無い。着色剤の例としては、有機顔料、無機顔料、金属顔料、染料等が挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、縮合多環顔料等が挙げられる。無機顔料としては、二酸化チタン、酸化鉄、パールマイカ、硫酸バリウム、チタンブラック等が挙げられる。金属顔料としては、板状酸化鉄、グラファイト、アルミ粉等が挙げられる。染料としては、酸性染料、塩基性染料、油性染料などの公知の染料が挙げられる。着色剤は、ラメや夜光顔料であってもよい。
【0050】
着色剤の平均粒径は、特に限定されないが、着色性に優れたフレームを得る観点から、好ましくは0.001~1[μm]、より好ましくは0.01~0.7[μm]である。平均粒径は、顕微鏡観察、沈降分析など公知の方法を用いて測定される(以下、平均粒径というときには、この方法によって測定された値をいう)。また着色剤は、球状、板状、柱状等の種々の形状であり得るものであり、その最大長さをもって粒径とし、該最大長さの平均値を平均粒径とする。
【0051】
フレーム中の着色剤の含有量も、特に限定されないが、パルプ繊維100重量部に対して、好ましくは0.01~5[重量部]、より好ましくは0.05~2.5[重量部]である。
【0052】
抄紙原料となるパルプスラリーには、着色むらを抑制するために、無機フィラーまたは/および定着剤が添加されてもよい。無機フィラーとしては、アルミノシリケート、タルク等の珪酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、マイカ、カオリンクレー、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、焼成クレー、シリカ等が挙げられる。定着剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。着色むらの防止の観点
から、パルプスラリーの調製においては、パルプ繊維を含むスラリーに着色剤を添加混合した後、無機フィラーを添加混合することが、着色むらの防止の点から好ましい。定着剤の添加順序は、特に限定されず、例えば(1)着色剤、(2)定着剤、(3)無機フィラーの順に添加してもよいし、(1)定着剤、(2)着色剤、(3)無機フィラーの順に添加してもよいし、(1)定着剤、(2)着色剤、(3)無機フィラー、(4)定着剤の順に添加してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 フレーム
2 枠体
2A 内周側の端縁(内端)
2B 外周側の端縁(外端)
23 嵌合構造
3 裏体
31 中央部
32 被覆部
3A 主部
3B 周縁部
3C 凸部
8 中空部
9 掲示物
9A 主部
9B 周縁部
B1 第一半部
B2 第二半部
図1
図2
図3
図4
図5
図6