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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20241008BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20241008BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20241008BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20241008BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241008BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
F04B39/06 Q
H02K11/30
H02K5/22
H02M7/48 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021113570
(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公開番号】P2023009908
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 裕民
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-092168(JP,A)
【文献】特開2011-067064(JP,A)
【文献】特開2019-019808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0324975(US,A1)
【文献】実開平07-029895(JP,U)
【文献】国際公開第2019/215805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00、39/06
H02K 5/22、11/30
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記インバータを収容する金属製のハウジングと、を備え、
前記インバータは、スイッチング動作を行う3相のスイッチング素子と、前記3相のスイッチング素子を保持する樹脂製のホルダと、を有し、
前記ハウジングは、前記3相のスイッチング素子と熱的に結合する放熱面を有し、
前記ホルダは、一対の締結部材によって前記ハウジングに固定されるとともに、前記3相のスイッチング素子を前記放熱面へ押圧している電動圧縮機であって、
前記3相のスイッチング素子は、前記一対の締結部材を結ぶ線分に沿って並ぶよう配置され、
前記ホルダは、
前記3相のスイッチング素子のうち、中央に位置する1相を収容する第1収容部と、
前記3相のスイッチング素子のうち、両端に位置する2相を収容する一対の第2収容部と、を有し、
前記第1収容部は、前記スイッチング素子を前記放熱面へ押圧する平坦面を有し、
前記一対の第2収容部は、前記第1収容部から前記第2収容部に向けて延在し、且つ前記スイッチング素子を前記放熱面へ押圧する舌状の当接部をそれぞれ有し、
前記当接部は、変形することで前記ホルダによる前記スイッチング素子への押圧力を低減させることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記第2収容部は、前記スイッチング素子を囲繞する貫通孔を有し、
前記当接部は、前記貫通孔の内部に設けられており、
前記当接部は、前記第1収容部から前記締結部材に向けて延在していることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記当接部の先端には、前記放熱面に向けて突出するとともに前記スイッチング素子に当接する凸部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するインバータと、を備えている。また、電動圧縮機は、インバータを収容する金属製のハウジングを備えている。インバータは、スイッチング動作を行うスイッチング素子を有している。また、インバータは、スイッチング素子を保持する樹脂製のホルダを有している場合がある。ホルダは、スイッチング素子を挟むように並ぶ複数の締結部材によってハウジングに固定されている。このような構成では、締結部材による締結力がホルダを介して押圧力としてスイッチング素子に作用する。その一方で、ホルダはスイッチング素子から反作用の接触力を受けるので、ホルダが全体的に撓んでしまい、スイッチング素子を均一にハウジングの放熱面へ押圧できない問題がある。この問題の解決手段として、例えば特許文献1に開示されているように、ホルダが、金属製のばね部材を有しており、ばね部材が柔軟に変形しつつスイッチング素子をハウジングの放熱面に向けて均一に押圧する。これにより、スイッチング素子から生じる熱が、放熱面にて効率良く放熱されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-26320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スイッチング素子を、ばね部材によって、ハウジングの放熱面に向けて押圧する構成では、スイッチング素子のリード線同士が金属製のばね部材を介して短絡してしまう虞がある。かといって、ばね部材を廃止してしまうと、スイッチング素子をハウジングの放熱面に向けて均一に押圧することができなくなってしまうため、各スイッチング素子から生じる熱を放熱面にて効率良く放熱することができなくなってしまう。特に、3相のスイッチング素子が一対の締結部材の間に並ぶよう配列されている構成において、この問題は顕著になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータと、前記インバータを収容する金属製のハウジングと、を備え、前記インバータは、スイッチング動作を行う3相のスイッチング素子と、前記3相のスイッチング素子を保持する樹脂製のホルダと、を有し、前記ハウジングは、前記3相のスイッチング素子と熱的に結合する放熱面を有し、前記ホルダは、一対の締結部材によって前記ハウジングに固定されるとともに、前記3相のスイッチング素子を前記放熱面へ押圧している電動圧縮機であって、前記3相のスイッチング素子は、前記一対の締結部材を結ぶ線分に沿って並ぶよう配置され、前記ホルダは、前記3相のスイッチング素子のうち、中央に位置する1相を収容する第1収容部と、前記3相のスイッチング素子のうち、両端に位置する2相を収容する一対の第2収容部と、を有し、前記一対の第2収容部は、前記スイッチング素子と当接する舌状の当接部をそれぞれ有し、前記当接部は、変形することで前記ホルダによる前記スイッチング素子への押圧力を低減させる。
【0006】
ここで、3相のスイッチング素子のうち、両端に位置する2相を収容する一対の第2収容部は、3相のスイッチング素子のうち、中央に位置する1相を収容する第1収容部よりも一対の締結部材のうちのどちらか一方に近い位置に配置されていると言える。そして、ホルダにおける各締結部材近傍では、各締結部材におけるホルダをハウジングに固定するための締結力によって、放熱面に向けて変形し易い。
【0007】
このとき、例えば、各締結部材におけるホルダをハウジングに固定するための締結力による放熱面に向けた各第2収容部の変形が起こると、ホルダが全体的に撓むことにより、第1収容部が放熱面から離間する方向へ変形することになる。その結果、中央に位置するスイッチング素子が、第1収容部によって放熱面に向けて押し付けられ難くなってしまい、スイッチング素子から生じる熱を効率良く放熱することができなくなってしまう。
【0008】
そこで、第2収容部は、舌状の当接部を有する。第2収容部において、舌状の当接部は、全体的に撓んだホルダにおいて、元の状態に戻るよう変形するため、スイッチング素子への押圧力は低減する。同時に、第1収容部が放熱面から離間する方向へ変形し難くなり、中央に位置するスイッチング素子を、第1収容部によって放熱面に向けて押し付けられ難くなってしまうことを抑制することができる。そして、第1収容部においてスイッチング素子を放熱面へと押圧する力は増加する。その結果、スイッチング素子から生じる熱を放熱面にて効率良く放熱することができる。
【0009】
したがって、全てのスイッチング素子を、ばね部材によって、ハウジングの放熱面に向けて押圧する必要が無い。よって、例えば、スイッチング素子を、ばね部材によってハウジングの放熱面に向けて押圧する構成の場合に生じ得るスイッチング素子のリード線同士におけるばね部材を介した短絡を回避することができる。以上により、各スイッチング素子の絶縁性を確保しつつも、各スイッチング素子から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【0010】
上記電動圧縮機において、前記第2収容部は、前記スイッチング素子を囲繞する貫通孔を有し、前記当接部は、前記貫通孔の内部に設けられており、前記当接部は、前記第1収容部から前記締結部材に向けて延在しているとよい。これによれば、当接部は第1収容部に近い位置から延在しているため、これらによるスイッチング素子への押圧力がより均一になる。
【0011】
上記電動圧縮機において、前記当接部の先端には、前記放熱面に向けて突出するとともに前記スイッチング素子に当接する凸部が設けられているとよい。
これによれば、例えば、当接部の先端に凸部が設けられていない場合に比べると、当接部によってスイッチング素子を放熱面に向けて好適に押し付けることができる。したがって、スイッチング素子から生じる熱をさらに効率良く放熱し易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、各スイッチング素子の絶縁性を確保しつつも、各スイッチング素子から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
図2】電動圧縮機の一部分を拡大して示す断面図。
図3】ホルダの平面図。
図4】各スイッチング素子がホルダによって保持された状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
(電動圧縮機10の全体構成)
図1に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、吐出ハウジング12と、モータハウジング13と、インバータケース14と、を有している。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。したがって、ハウジング11は、金属製である。吐出ハウジング12は、筒状である。モータハウジング13は、吐出ハウジング12に連結されている。モータハウジング13は、板状の端壁13aと、端壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。
【0015】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して流体としての冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の回転軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の端壁13a側に配置されている。そして、モータハウジング13内における圧縮部16と端壁13aとの間には、電動モータ17を収容するモータ室18が形成されている。
【0016】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0017】
電動モータ17は、筒状のステータ19と、ステータ19の内側に配置されるロータ20と、を有している。ロータ20は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ19は、ロータ20を取り囲んでいる。ロータ20は、回転軸15に止着されたロータコア20aと、ロータコア20aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ19は、筒状のステータコア19aと、ステータコア19aに巻回されたモータコイル21と、を有している。
【0018】
周壁13bには、吸入口13hが形成されている。吸入口13hは、周壁13bにおける端壁13a側に位置する部分に形成されている。吸入口13hは、モータ室18に連通している。吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。
【0019】
外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータ室18内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータ室18内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0020】
インバータケース14は、モータハウジング13の端壁13aに取り付けられている。インバータケース14内には、インバータ30を収容するインバータ収容室14aが形成されている。したがって、ハウジング11は、インバータ収容室14aを有しており、内部にインバータ30を収容している。圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ30は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。
【0021】
図2に示すように、インバータケース14は、ケース本体24と、蓋部材25と、を有している。ケース本体24は、ケース本体24は、板状のケース端壁24aと、ケース端壁24aの外周部から円筒状に延びるケース周壁24bと、を有している。蓋部材25は、板状である。蓋部材25は、ケース周壁24bの開口を閉塞した状態で、ケース本体24に連結されている。インバータ収容室14aは、ケース本体24及び蓋部材25によって区画されている。
【0022】
(インバータ30の構成)
インバータ30は、電動モータ17を駆動する。インバータ30は、回路基板31を有している。回路基板31は、インバータ収容室14a内に収容されている。また、インバータ30は、3相のスイッチング素子40を有している。3相のスイッチング素子40は、回路基板31に実装されている。各スイッチング素子40は、電動モータ17を駆動するためにスイッチング動作を行う。回路基板31には、U相、V相、及びW相それぞれの上アームを構成するスイッチング素子40と、U相、V相、及びW相それぞれの下アームを構成するスイッチング素子40とが実装されている。したがって、本実施形態において、インバータ30は、3相のスイッチング素子40を2組有している。よって、本実施形態において、回路基板31には、6つのスイッチング素子40が実装されている。
【0023】
また、インバータ30は、樹脂製のホルダ50を有している。ホルダ50は、3相のスイッチング素子40を保持する。ホルダ50は、インバータ収容室14a内に収容されている。したがって、ホルダ50は、ハウジング11に収容されている。なお、ホルダ50は、外部からの入力電流に含まれるノイズを低減するフィルタ素子である図示しないコンデンサや、コンデンサと共にフィルタ回路を構成する図示しないコイル等も保持している。
【0024】
(ホルダ50の構成)
図2図3及び図4に示すように、ホルダ50は、板状のホルダ本体部51を有している。ホルダ本体部51は、平面視略四角形状である。ホルダ本体部51の厚み方向の一方に位置する第1面511を平面視したときに、ホルダ本体部51の厚み方向に対して直交する方向を第1方向X1とする。また、ホルダ本体部51の第1面511を平面視したときに、ホルダ本体部51の厚み方向に対して直交し、且つ第1方向X1に対しても直交する方向を第2方向Y1とする。
【0025】
ホルダ本体部51は、第1収容部61と、一対の第2収容部62と、を有している。第1収容部61及び一対の第2収容部62は、第1方向X1に並んで配置されている。第1収容部61は、第1方向X1で一対の第2収容部62の間に配置されている。したがって、第1収容部61は、第1方向X1において一対の第2収容部62に挟まれている。本実施形態において、ホルダ50は、第1収容部61及び一対の第2収容部62を2組有している。
【0026】
各組それぞれの第1収容部61及び一対の第2収容部62は、3相のスイッチング素子40をそれぞれ収容している。したがって、各組の3相のスイッチング素子40は、第1方向X1に並んで配置されている。第1収容部61は、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する1相を収容する。一対の第2収容部62は、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相を収容する。
【0027】
1組の第1収容部61及び一対の第2収容部62それぞれは、ホルダ本体部51の第1面511における第2方向Y1の一方寄りで、第1方向X1に並んで配置されている。また、残りの1組の第1収容部61及び一対の第2収容部62それぞれは、ホルダ本体部51の第1面511における第2方向Y1の他方寄りで、第1方向X1に並んで配置されている。
【0028】
なお、1組の第1収容部61及び一対の第2収容部62に関する説明は、残りの1組の第1収容部61及び一対の第2収容部62に関する説明とほぼ同一である。よって、以下の説明では、1組の第1収容部61及び一対の第2収容部62に関する説明のみ詳細に説明し、残りの1組の第1収容部61及び一対の第2収容部62に関する説明は、同一符号を付すなどしてその詳細な説明を省略する。
【0029】
図3及び図4に示すように、ホルダ本体部51には、一対のボルト挿通孔55が形成されている。一対のボルト挿通孔55は、第1収容部61及び一対の第2収容部62を第1方向X1で挟む位置にそれぞれ配置されている。図4に示すように、3相のスイッチング素子40は、一対のボルト挿通孔55の内側を通過する締結部材としての一対のボルト60を結ぶ線分L10に沿って並ぶよう配置されている。3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相を収容する一対の第2収容部62は、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する1相を収容する第1収容部61よりも一対のボルト60のうちのどちらか一方に近い位置に配置されている。
【0030】
図2に示すように、各ボルト挿通孔55には、円筒状のカラー部材58が圧入されている。各カラー部材58における軸方向の一方の端面は、ホルダ本体部51の第1面511から突出している。各カラー部材58の内側には、ボルト60が挿通可能になっている。
【0031】
ホルダ50は、各カラー部材58がケース本体24のケース端壁24aの内面に接触した状態でケース端壁24aに対して配置されている。そして、各カラー部材58の内側を通過する各ボルト60が、ケース端壁24aを貫通してモータハウジング13の端壁13aにねじ込まれる。これにより、ホルダ50及びケース本体24がユニット化された状態で、モータハウジング13の端壁13aに取り付けられている。したがって、ホルダ50は、ボルト60によってハウジング11に固定されている。
【0032】
各スイッチング素子40は、絶縁シート59を介してケース本体24のケース端壁24aの内面に熱的に結合されている。したがって、ケース本体24のケース端壁24aの内面は、3相のスイッチング素子40と熱的に結合する放熱面24cになっている。よって、ハウジング11は、3相のスイッチング素子40と熱的に結合する放熱面24cを有している。
【0033】
図4に示すように、各スイッチング素子40は、各スイッチング素子40のリード線40aが、ホルダ50にそれぞれ形成された各リード挿通孔52に挿通された状態で、第1収容部61及び一対の第2収容部62それぞれに収容されている。そして、図2に示すように、各リード線40aの先端部は、回路基板31に電気的に接続されている。各リード線40aの先端部は、例えば、回路基板31に半田付けされている。
【0034】
(第1収容部61の構成)
図3及び図4に示すように、第1収容部61は、ホルダ本体部51の厚み方向の一方に位置する第1面511に形成されている。第1収容部61は、ホルダ本体部51の第1面511から凹む凹部である。第1収容部61の内周縁は、スイッチング素子40の外面に沿って延びている。第1収容部61は、スイッチング素子40を内周縁が囲繞するようにホルダ50に形成されている。第1収容部61の底面は、平坦面状である。第1収容部61の底面は、スイッチング素子40に当接している。そして、第1収容部61は、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する1相を収容しつつ放熱面24cに向けて押圧している。
【0035】
(一対の第2収容部62の構成)
各第2収容部62は、貫通孔63と、当接部64と、からなる。貫通孔63は、ホルダ本体部51を厚み方向に貫通している。貫通孔63は、大孔部65及び小孔部66を有している。大孔部65は、ホルダ本体部51の第1面511から凹む四角孔状である。大孔部65の内周縁は、スイッチング素子40の外面に沿って延びている。したがって、貫通孔63は、スイッチング素子40を内周縁が囲繞するようにホルダ50に形成されている。
【0036】
小孔部66は、大孔部65の底面に形成されている。小孔部66は、大孔部65に連通している。小孔部66は、ホルダ本体部51を貫通している。図2に示すように、小孔部66は、ホルダ本体部51の厚み方向の他方に位置する第2面512に開口している。小孔部66は、第2収容部62に収容されているスイッチング素子40とホルダ本体部51の厚み方向で重なるようにホルダ50に形成されている。
【0037】
図3及び図4に示すように、当接部64は、舌状である。当接部64は、薄板四角板状である。当接部64の厚みは、ホルダ本体部51の厚みよりも薄い。当接部64は、貫通孔63の内部に設けられている。当接部64は、第1収容部61からボルト60に向けて延在している。当接部64の外周縁は、小孔部66に沿って延びている。したがって、小孔部66は、当接部64の外周縁を囲うように延びている。当接部64における第1収容部61側の基端は、小孔部66における第1収容部61側の縁部に連続している。したがって、小孔部66は、小孔部66における第1収容部61側の縁部が当接部64における第1収容部61側の基端に連続する位置まで延びている。
【0038】
当接部64は、第1収容部61側の基端を基点として撓むように弾性変形可能になっている。当接部64の基端は固定端であるとともに、当接部64の先端は自由端になっている。当接部64の先端には、凸部67が設けられている。凸部67は、当接部64の先端からホルダ本体部51の第1面511に向けて突出している。凸部67の突出端面は、平坦面状である。そして、凸部67は、スイッチング素子40に当接している。よって、凸部67は、放熱面24cに向けて突出するとともにスイッチング素子40に当接している。
【0039】
したがって、当接部64は、第1収容部61から貫通孔63の内部へと延在しつつスイッチング素子40と当接する。このように、一対の第2収容部62は、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相を収容しつつ放熱面24cに向けてそれぞれ押圧する。したがって、ホルダ50は、3相のスイッチング素子40を放熱面24cへ押圧している。当接部64は、変形することでホルダ50によるスイッチング素子40への押圧力を低減させる。
【0040】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
外部電源からの直流電圧が、各スイッチング素子40のスイッチング動作によって交流電圧に変換され、変換された交流電圧が駆動電圧として電動モータ17に供給される。これにより、電動モータ17が駆動し、電動モータ17の駆動に伴う回転軸15の回転によって、圧縮部16が駆動して冷媒が圧縮部16により圧縮される。
【0041】
ところで、ホルダ50には、各ボルト60におけるホルダ50をモータハウジング13の端壁13aに固定するための締結力によって、ホルダ本体部51における各ボルト60の周囲がモータハウジング13の端壁13aに近づくような撓みが発生する。なお、図2では、ホルダ本体部51の撓みを二点鎖線L1で仮想的に示している。よって、ホルダ50における各ボルト60近傍では、各ボルト60におけるホルダ50をモータハウジング13に固定するための締結力によって、放熱面24cに向けて変形し易い。
【0042】
このとき、例えば、各ボルト60の締結力による放熱面24cに向けた各第2収容部62の変形が起こると、ホルダ50が全体的に撓むことにより、第1収容部61が放熱面24cから離間する方向へ変形することになる。その結果、中央に位置するスイッチング素子40が、第1収容部61によって放熱面24cに向けて押し付けられ難くなってしまい、スイッチング素子40から生じる熱を効率良く放熱することができなくなってしまう。
【0043】
そこで、第2収容部62は、舌状の当接部64を有する。第2収容部62において、舌状の当接部64は、全体的に撓んだホルダ50において、元の状態に戻るよう変形するため、スイッチング素子40への押圧力は低減する。同時に、第1収容部61が放熱面24cから離間する方向へ変形し難くなり、中央に位置するスイッチング素子40が、第1収容部61によって放熱面24cに向けて押し付けられ難くなってしまうことが抑制されている。そして、第1収容部61においてスイッチング素子40を放熱面24cへと押圧する力は増加する。その結果、スイッチング素子40から生じる熱が放熱面24cにて効率良く放熱される。
【0044】
(効果)
上記実施形態では以下の作用効果を得ることができる。
(1)第2収容部62は、スイッチング素子40と当接する舌状の当接部64を有する。これによれば、第2収容部62において、舌状の当接部64は、全体的に撓んだホルダ50において、元の状態に戻るよう変形するため、スイッチング素子40への押圧力は低減する。同時に、第1収容部61が放熱面24cから離間する方向へ変形し難くなり、中央に位置するスイッチング素子40を、第1収容部61によって放熱面24cに向けて押し付けられ難くなってしまうことを抑制することができる。そして、第1収容部61において、スイッチング素子40を放熱面24cへと押圧する力は増加する。その結果、スイッチング素子40から生じる熱を放熱面24cにて効率良く放熱することができる。
【0045】
したがって、全てのスイッチング素子40を、ばね部材によって、放熱面24cに向けて押圧する必要が無い。よって、例えば、スイッチング素子40を、ばね部材によって放熱面24cに向けて押圧する構成の場合に生じ得るスイッチング素子40のリード線40a同士におけるばね部材を介した短絡を回避することができる。以上により、各スイッチング素子40の絶縁性を確保しつつも、各スイッチング素子40から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【0046】
(2)第2収容部62はスイッチング素子40を囲繞する貫通孔63を有し、当接部64は貫通孔63の内部に設けられているとともに第1収容部61からボルト60に向けて延在している。これによれば、当接部64は第1収容部61に近い位置から延在しているため、これらによるスイッチング素子40への押圧力がより均一になる。
【0047】
(3)当接部64の先端には、放熱面24cに向けて突出するとともにスイッチング素子40に当接する凸部67が設けられている。これによれば、例えば、当接部64の先端に凸部67が設けられていない場合に比べると、当接部64によってスイッチング素子40を放熱面24cに向けて好適に押し付けることができる。具体的には、例えば、当接部64の先端部よりも当接部64の基端部がスイッチング素子40に先に当接してしまうと、当接部64が弾性変形し難くなってしまう。そこで、当接部64の先端に凸部67が設けられていることにより、当接部64の基端部よりも先に凸部67をスイッチング素子40に当接させることができる。よって、当接部64によってスイッチング素子40を放熱面24cに向けて好適に押し付けることができる。したがって、スイッチング素子40から生じる熱をさらに効率良く放熱し易くすることができる。
【0048】
(4)本実施形態によれば、各スイッチング素子40から生じる熱を効率良く放熱するために、スイッチング素子40を、ばね部材によって、放熱面24cに向けて押圧する必要が無いため、部品点数を削減することができる。
【0049】
(5)当接部64における第1収容部61からの長さを調整することにより、当接部64におけるスイッチング素子40を放熱面24cへ押圧する押圧力を調整することができる。
【0050】
(変更例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
○ 実施形態において、当接部64は、薄板四角板状でなくてもよい。要は、当接部64は、貫通孔63の内部に設けられるとともに第1収容部61からボルト60に向けて延在している舌状のものであればよい。
【0052】
○ 実施形態において、凸部67の突出端面が平坦面状でなくてもよい。要は、凸部67がスイッチング素子40に当接可能であれば、凸部67の形状は特に限定されるものではない。
【0053】
○ 実施形態において、当接部64の先端に、凸部67が設けられていなくてもよい。
○ 実施形態において、貫通孔63は、大孔部65を有しておらず、例えば、小孔部66のみによって形成されていてもよい。この場合、小孔部66の内周縁は、スイッチング素子40の外面に沿って延びている。このようにして、貫通孔63が、スイッチング素子40を内周縁が囲繞するようにホルダ50に形成されていてもよい。
【0054】
○ 実施形態において、ホルダ50をハウジング11に固定するために用いられる一対の締結部材として、例えば、ハウジング11に圧入される圧入ピンを採用してもよい。要は、ホルダ50をハウジング11に固定するために用いられる締結部材は、ボルト60に限らない。
【0055】
○ 実施形態において、例えば、モータハウジング13の端壁13aにカバー部材が取り付けられることにより、モータハウジング13の端壁13a及びカバー部材によって、インバータ収容室14aが区画されている構成であってもよい。この場合、モータハウジング13の端壁13aにおけるインバータ収容室14a側の端面は、3相のスイッチング素子40と熱的に結合する放熱面として機能する。
【0056】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、インバータ30が、ハウジング11に対して回転軸15の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要は、圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ30が、この順で、回転軸15の軸線方向に並設されていなくてもよい。
【0057】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、16…圧縮部、17…電動モータ、24c…放熱面、30…インバータ、40…スイッチング素子、50…ホルダ、61…第1収容部、62…第2収容部、63…貫通孔、64…当接部、67…凸部、L10…線分。
図1
図2
図3
図4