(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】回転成形装置及び回転成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 41/04 20060101AFI20241008BHJP
B29C 41/38 20060101ALI20241008BHJP
B29C 41/34 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C41/04
B29C41/38
B29C41/34
(21)【出願番号】P 2021114765
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 愼吾
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-276265(JP,A)
【文献】特開昭57-041912(JP,A)
【文献】特開2012-033271(JP,A)
【文献】特開平10-086162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 41/00-41/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表面層を有する中空形状の成形品を成形する回転成形装置であって、
型割線に沿って型割された複数の型部分を有する回転成形金型と、
前記型割線を挟んだ両側の型部分の間に配置されて、前記回転成形金型の型空間を前記両側の型部分にそれぞれ対応する型空間部分に間仕切りする仕切部材と、
前記型空間部分に配置される成形材料を溶融させる回転成形において前記回転成形金型を加熱する加熱装置と、
を備え、
前記仕切部材は
、前記成形材料の溶融温度以
上の溶融温度を有する部材であ
り、
前記加熱装置は、
第1段階の回転成形において、前記成形材料の溶融温度以上の温度であって、前記仕切部材の溶融温度未満の温度である第1加熱温度で加熱し、
前記第1段階の回転成形の後の第2段階の回転成形において、前記仕切部材の溶融温度以上の温度である第2加熱温度で加熱する、回転成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転成形装置であって、さらに、
前記両側の型部分の間で前記仕切部材を挟み込んで固定する固定部材であって、前記回転成形金型に比べて熱伝導度が低い固定部材を備える、回転成形装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の回転成形装置であって、
前記両側の型部分の間に互いに空間を空けて積層配置される二つの前記仕切部材を有し、
二つの前記仕切部材の間の前記空間は、前記成形材料により成形される表面層の内面に積層される層の成形に用いられる成形材料が配置される空間である、
回転成形装置。
【請求項4】
複数の表面層を有する中空形状の成形品を成形する回転成形方法であって、
回転成形金型の型割線を挟んだ両側の型部分の間に、前記回転成形金型の型空間を前記両側の型部分にそれぞれ対応する型空間部分に間仕切りする仕切部材を挟み込む際に、前記仕切部材で間仕切りされる型空間部分にそれぞれ対応する成形材料を配置する工程と、
回転成形において前記成形材料を溶融させるために設定される前記成形材料の溶融温度以上の加熱温度で前記回転成形金型を加熱して、前記加熱温度以上の溶融温度を有する仕切部材を溶融させずに、前記型空間部分に配置された成形材料を溶融させた後、前記仕切部材を溶融させる工程と、
を備える、回転成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中空形状の成形品表面で複数の異色材料による成形を可能とする回転成形装置及び回転成形装置により実行される回転成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多色スラッシュ成形として、金型内部の空間を仕切板で区画し、区画された空間ごとに、それぞれに充填された異色パウダーによって、それぞれの金型の内面に沿って異色表面層を成形する点について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、表裏面を有する非中空形状の樹脂成形品を対象とする成形方法である。このため、中空形状の樹脂成形品を成形するための回転成形に対して、上記従来技術の仕切板を適用したとしても、成形品の中空形状の内部空間には仕切板が残存することになるため、仕切板を回収する手段等が新たに求められ、工程の増加やコストの増加を招く、という問題がある。
【0005】
そこで、複数の表面層を有する中空形状の成形品の回転成形による成形を、工程増加やコスト増加を抑制しつつ簡素に実現する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、複数の表面層を有する中空形状の成形品を成形する回転成形装置が提供される。この回転成形装置は、型割線に沿って型割された複数の型部分を有する回転成形金型と、前記型割線を挟んだ両側の型部分の間に配置されて、前記回転成形金型の型空間を前記両側の型部分にそれぞれ対応する型空間部分に間仕切りする仕切部材と、前記型空間部分に配置される成形材料を溶融させる回転成形において前記回転成形金型を加熱する加熱装置と、を備える。前記仕切部材は、前記成形材料の溶融温度以上の溶融温度を有する部材である。前記加熱装置は、第1段階の回転成形において、前記成形材料の溶融温度以上の温度であって、前記仕切部材の溶融温度未満の温度である第1加熱温度で加熱し、前記第1段階の回転成形の後の第2段階の回転成形において、前記仕切部材の溶融温度以上の温度である第2加熱温度で加熱する。
この形態の回転成形装置によれば、回転成形において、回転成形金型の内面に成形材料を溶着させることで表面層を成形している間、仕切部材が溶融しないように回転成形金型を加熱することで、間仕切りされた型空間部分に配置される成形材料が互いに混入しないようにできる。また、表面層の成形後に仕切部材を溶融させることで、成形品の中空内に残存する仕切部材の回収を不要とすることができる。これにより、複数の表面層を有する中空形状の成形品の回転成形による成形を、工程増加やコスト増加を抑制しつつ簡素に実現することができる。
(2)上記形態の回転成形装置において、前記両側の型部分の間で前記仕切部材を挟み込んで固定する固定部材であって、前記回転成形金型に比べて熱伝導度が低い固定部材を備えるとしてもよい。
この形態の回転成形装置によれば、回転成形金型の内面に成形材料を溶着させることで表面層を成形している間、間仕切りされた型空間部分に配置される成形材料が混入しないように、シール部材によって仕切部材の温度が仕切部材の溶融温度まで上昇するのを遅らせることができる。
(3)上記形態の回転成形装置において、前記両側の型部分の間に互いに空間を空けて積層配置される二つの前記仕切部材を有し、二つの前記仕切部材の間の前記空間は、前記成形材料により成形される表面層の内面に積層される層の成形に用いられる成形材料が配置される空間であるとしてもよい。
この形態の回転成装置によれば、表面層の成形後に仕切部材を溶融させることで、表面層の内面に積層される層を成形することができる。
本開示は、上記形態の回転成形装置だけでなく、回転成形方法等の種々の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態としての回転成形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図1に示した領域Aeaを拡大して示す説明図である。
【
図3】上型が型合わせされる前の下型を上型側から示す説明図である。
【
図4】回転成形装置により実行される回転成形方法を示す説明図である。
【
図5】
図4に示した成形品の領域Aebを拡大して示す説明図である。
【
図6】第2実施形態としての回転成形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図7】
図6の回転成形装置による成形品の一部を拡大して示す説明図である。
【
図8】第3実施形態としての回転成形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図9】
図8の回転成形装置による成形品を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は第1実施形態としての回転成形装置の概略構成を示す説明図である。この回転成形装置は、回転成形金型100と、不図示の回転装置及び加熱装置と、を備えている。回転装置は、回転成形において金型を回転させる装置であり、振り子状に左右に大きく揺れる台の上で金型を回転させる回転方式(「一軸回転+揺動運動」方式)の装置や、二軸回転方式の装置等の種々の回転方式の装置を用いることができる。また、加熱装置は、回転成形において金型を加熱する装置であり、直火式、熱風循環オーブン式、媒体循環式等の種々の加熱方式の装置を用いることができる。なお、
図1には、(一軸回転+揺動運動)の回転方式による金型の回転運動及び熱風循環オーブン式による金型の加熱の様子が例に示されている。
【0010】
回転成形金型100は、型割線PLに沿って型割された複数の型部分である下型110と上型120とから構成されている。下型110は型構造部111とフランジ部112とを有している。上型120も型構造部121とフランジ部122とを有している。型構造部111と型構造部121とは、回転成形金型100の型空間102を構成する部分である。フランジ部112とフランジ部122とは、型構造部111と型構造部121とを型合わした状態で固定するために締結される部分である。回転成形金型100は、SS(構造用圧延鋼材)、アルミニウム、ニッケル等の種々の金属材料で構成される。
【0011】
型割線PLを挟んだ両側の型部分である下型110と上型120との間には、フィルム状の仕切部材130が型割線PLに沿って配置されている。仕切部材130は、下型110と上型120の型空間102側の端部にそれぞれ設けられたシール部材140を介して下型110と上型120との間に挟み込まれて固定されている。シール部材140は、下型110と上型120との間で仕切部材130を挟み込んで固定する固定部材である。なお、シール部材140は型空間102を密閉する部材でもある。仕切部材130は、型空間102を下型110側の型空間部分102Lと上型120側の型空間部分102Uとに間仕切りする部材である。下型110の型空間部分102Lは回転成形の際に第1成形材料m1が投入される部分であり、上型120の型空間部分102Uは回転成形の際に第2成形材料m2が投入される部分である。
【0012】
成形材料m1,m2には、色が異なる同種の熱可塑性の樹脂材料が用いられる。同種の樹脂材料としては、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ABS、PMMA等の種々の汎用樹脂や、TPO、TPC、TPU等の種々のエラストマー樹脂など、種々の樹脂材料を用いることができる。異色の樹脂材料は、例えば、上記同種の樹脂材料に異なる着色材料が含まれた材料である。
【0013】
仕切部材130には、用いられる成形材料と同種の樹脂材料が用いられることが好ましい。また、仕切部材130には、用いられる成形材料と異種の樹脂材料が用いられてもよい。但し、この場合には、後述する回転成形において仕切部材を溶融させた際に成形材料と仕切部材との接合性が良い樹脂材料が用いられることが好ましい。また、仕切部材130には、成形材料m1,m2の溶融温度よりも高い溶融温度を有する部材が用いられている。
【0014】
シール部材140には、回転成形金型100を構成する金属部材に比べて熱伝導度が低く、加熱温度よりも高い耐熱性を有する種々の部材を用いることができる。例えば、シリコン樹脂材料で構成されたシール部材を用いることができる。
【0015】
図2は
図1に示した領域Aeaを拡大して示す説明図である。
図3は上型120が型合わせされる前の下型110を上型120側から示す説明図である。
図2及び
図3に示すように、下型110のフランジ部112には、型構造部111の外周に沿って複数のピン113が設けられている。仕切部材130には、各ピン113がそれぞれ挿入されるピン孔133が設けられている。
図3に示すように、下型110の各ピン113が仕切部材130の各ピン孔133に挿入されるように、仕切部材130を下型110上に載置することにより、仕切部材130は各ピン113で固定されて下型110上に保持される。このため、仕切部材130には、
図3に示すように、上型120の型空間部分102Uに投入される第2成形材料m2を載置することができる。これにより、上型120を下型110の上に型合わせして配置する前に仕切部材130上に第2成形材料m2を配置しておくことができる。
【0016】
また、
図2に示すように、上型120のフランジ部122には、下型110の各ピン113に対応する位置に、それぞれピン孔123が設けられている。上型120の各ピン孔123に下型110の各ピン113が挿入されるように、下型110上に上型120を配置することにより、下型110に対して上型120を容易に型合わせすることができる。従って、下型110の各ピン113は、仕切部材130を下型110上で保持するための仕切部材保持用ピンであるとともに、型合わせ基準用ピンとしても利用される。
【0017】
なお、
図3に示す下型110のフランジ部112に設けられた複数の孔114は、上記した締結用の孔である。また、図示は省略するが、上型120のフランジ部122にも、下型110の複数の孔114に対応する複数の締結用の孔が設けられている。なお、締結用の孔にボルトが挿入されることによる締結ではなく、クランプによる締結が行なわれてもよい。
【0018】
図4は、回転成形装置により実行される回転成形方法を示す説明図である。まず、回転成形金型100に、仕切部材130及び成形材料m1,m2をセットする。具体的には、まず、下型110の内部に第1成形材料m1を投入する。次に、下型110の仕切部材材固定用のピン113に仕切部材130のピン孔133を挿入して、下型110上に仕切部材130を仮固定する。次に、仮固定された仕切部材130上に第2成形材料m2を載置する。次に、下型110の型合わせ基準用のピン113に上型120のピン孔123を挿入して、下型110と上型120とを型合わせし、下型110のフランジ部112と上型120のフランジ部122との間を締結する。これにより、仕切部材130及び成形材料m1,m2がセットされた回転成形金型100が構成される。
【0019】
次に、セット済みの回転成形金型100を回転装置により回転運動させるとともに、加熱装置により加熱することにより、回転成形を実行する。回転運動における回転速度や揺動角度、揺動速度は、あらかじめ設定された状態とされる。
【0020】
回転成形では、第1段階で、第1成形材料m1を下型110の内面に溶着させて表面層PM1を成形するとともに、第2成形材料m2を溶着させて上型120の内面に表面層PM2を成形し、第2段階で、仕切部材130を溶融させる。
【0021】
ここで、第1段階の回転成形における第1加熱温度は、仕切部材130が溶融しない温度、すなわち、成形材料m1,m2の溶融温度以上で、仕切部材130の溶融温度未満の温度とされる。第2段階の回転成形における第2加熱温度は、仕切部材130が溶融する温度、すなわち、仕切部材130の溶融温度以上で、装置の耐熱温度未満の許容温度とされる。例えば、成形材料m1,m2の溶融温度が130℃で、仕切部材130の溶融温度が150℃、許容温度170℃とする。この場合、第1加熱温度は130℃以上150℃未満の温度に設定可能であり、例えば130℃や140℃等の一定の温度に設定可能である。また、第2加熱温度は150℃以上170℃以下の温度に設定可能であり、例えば150℃や160℃等の一定の温度に設定可能である。また、第1加熱温度は、加熱開始から加熱終了までの間に、成形材料の溶融温度から仕切部材の溶融温度まで変化するように設定されてもよい。また、第2加熱温度は、第1段階の加熱終了時を第2段階の加熱開始時として、加熱開始から加熱終了までの間に、仕切部材の溶融温度から許容温度まで変化するように設定されてもよい。例えば、第1加熱温度は130℃から150℃まで変化し、第2加熱温度は150℃から170℃まで変化するように設定されてもよい。なお、上記した成形材料の溶融温度や加熱温度は一例であってこれに限定されるものではない。成形材料の溶融温度は、成形材料として用いられる部材の溶融温度に応じて変化するものである。また、加熱温度は、成形材料として用いられる部材の溶融温度に応じて適宜設定されればよい。なお、加熱温度は、成形材料が接触する回転成形金型100の型空間102(
図1参照)側の内面の温度であることが好ましい。但し、これに限定されるものではなく、回転成形金型100の内面の温度と相関関係がある間接的な温度、例えば、回転成形金型100の外面の温度や、回転成形金型100の周囲温度、加熱装置の設定温度等であってもよい。この場合の加熱温度は、回転成形金型100の内面の温度が目標とする温度となるような温度に設定されればよい。
【0022】
回転成形の終了後、回転成形金型100を冷却後、回転成形金型100を型開きして成形品PMの取り出しを行なう。これにより、第1表面層PM1及び第2表面層PM2を有する2色成形された中空形状の成形品PMを得ることができる。冷却は、例えば、金型の回転を維持したまま自然放令により行うことができる。また、水冷却等の種々の冷却手段を用いて行なうこともできる。なお、成形材料の軟化温度を下回れば冷却は完了する。
【0023】
図5は
図4に示した成形品PMの領域Aebを拡大して示す説明図である。仕切部材130のうち、成形品PMの第1表面層PM1と第2表面層PM2との境界部分は、溶融によって接合部130mとなって第1表面層PM1と第2表面層PM2とを接合して、成形品PMの一部となって一体化する。また、仕切部材130のうち、型空間102(
図1参照)を間仕切りしていた部分は、溶融後に成形品PMの内面に付着して内面付着部130fとなる。また、仕切部材130のうち、下型110と上型120との間に挟み込まれた部分130bは、接合部130mに付随して残存する可能性がある。この残存部分130bは、後工程で除去される。なお、接合部130mの部分は、他の部品を配置して隠す等の外観に考慮した手段を設けることが好ましい。
【0024】
以上説明したように、第1実施形態の回転成形装置では、成形材料m1,m2を溶着させている間、仕切部材130が溶融せずに型空間102の間仕切りを維持させることができるので、成形材料m1,m2が互いに混入しないようにできる。これにより、2色の表面層PM1,PM2を有する中空形状の成形品PMを成形することができる。これにより、塗装工程を省略することができる。
【0025】
また、表面層PM1,PM2の成形後に型空間102を間仕切りしている仕切部材130の部分130bを溶融させて内面付着部130fとすることができるので、成形品PMの中空内に残存する仕切部材130を回収不要とすることができる。
【0026】
従って、2色の表面層PM1,PM2を有する中空形状の成形品PMの回転成形による成形を、工程増加やコスト増加を抑制しつつ簡素に実現することができる。
【0027】
なお、上記実施形態の回転成形装置では、仕切部材130として、成形材料m1,m2の溶融温度よりも高い溶融温度を有する部材が用いられているものとして説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、以下で説明するように、仕切部材130として、成形材料m1,m2の溶融温度に等しい溶融温度を有する部材を用いてもよい。なお、成形材料の溶融温度がそれぞれ異なる場合には、仕切部材の溶融温度は、最も高い溶融温度以上であることが好ましい。
【0028】
仕切部材130を挟み込んで固定するシール部材140は、回転成形金型100を構成する金属部材の熱伝導度よりも熱伝導度が低い部材で構成されているので、仕切部材130への熱伝導を遅らせることができる。これにより、成形材料m1,m2の溶融温度に等しい溶融温度を有する部材を仕切部材130として用いても、表面層PM1,PM2を成形している間、シール部材140によって仕切部材130の温度が溶融温度まで上昇しないようにして、成形材料m1,m2が混入しないようにできる。この場合、第1加熱温度及び第2加熱温度は、成形材料m1,m2及び仕切部材130の溶融温度以上の一定の加熱温度とすることも可能である。
【0029】
仕切部材130の温度の上昇の遅延は、例えば、シール部材140の熱伝導度、
図2に示す幅whや高さwv等の外形寸法、距離dh1,dh2,dv等の型表面からの距離等を調整することで、設定することができる。例えば、熱伝導度は低くするほど温度の上昇を遅延させることができる。また、外形寸法を大きくするほど温度の上昇を遅延させることができる。型表面からの距離は小さくするほど温度の上昇を遅延させることができる。
【0030】
また、仕切部材130として、成形材料m1,m2の溶融温度よりも高い溶融温度を有する部材が用いられている場合、仕切部材130を挟み込むためのシール部材140としては必ずしも必須ではなく省略することが可能である。但し、この場合、型空間102を密閉する部材が別途必要である。
【0031】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態としての回転成形装置の概略構成を示す説明図である。第2実施形態の回転成形装置は、回転成形金型100の下型110と上型120との間に2つの仕切部材130が型割線PLに沿って互いに空間を空けて積層配置されている点が第1実施形態の回転成形装置と異なっている。
【0032】
二つの仕切部材130の間の空間は、成形材料m1,m2により成形される表面層PM1,PM2の内面に積層される層の成形に用いられる成形材料msが配置される空間を構成する。成形材料msには、発泡樹脂材料等の種々の種類の樹脂材料が利用可能である。
【0033】
図6に示す成形材料m1,m2,msが配置された回転成形金型100は、第1実施形態の成形材料m1,m2が配置された回転成形金型100(
図1参照)を構成する手順(
図4参照)に、仮固定した1つめの仕切部材130上に成形材料msを載置し、その上に2つめの仕切部材130を仮固定する手順を追加することで構成される。
【0034】
回転成形では、第1段階で、第1成形材料m1を下型110の内面に溶着させて表面層PM1を成形するとともに、第2成形材料m2を上型120の内面に溶着させて表面層PM2を成形する。そして、第2に段階で、仕切部材130を溶融させるとともに、表面層PM1,PM2の内面に成形材料msを溶着させることにより、成形材料msが積層された層(以下、「積層層」と呼ぶ)PMsを成形する。
【0035】
図7は
図6の回転成形装置により成形された成形品PMBの一部を拡大して示す説明図である。成形品PMBは、成形品PM(
図5参照)と同様に、2色の表面層PM1,PM2が接合部130mを介して互いに接合されて一体に成形されている。また、成形品PMBの中空の内面には、成形材料msによる積層層PMsが成形されている。なお、積層層PMsと表面層PM1,PM2との境界や積層層PMs内には、溶融した仕切部材130が含まれている(不図示)。
【0036】
ここで、成形材料msの溶融温度は、仕切部材130の溶融温度よりも高く、仕切部材130を溶融させる際の加熱温度(第2加熱温度)よりも高いことが好ましい。この場合には、仕切部材130を溶融後、成形材料msの溶融温度以上の温度に加熱温度を高くする必要がある。また、上記したように、成形材料msが発泡性樹脂の場合には、成形材料msに含まれる発泡材の発泡温度以上の温度に加熱温度を高くする必要がある。
【0037】
第2実施形態の回転成形装置においても、第1実施形態の回転成形装置と同様に、2色の表面層PM1,PM2を有する中空形状の成形品PMBを成形することができる。また、第1実施形態の回転成形装置と同様に、仕切部材130を回収不要とすることができる。また、成形品PMBの中空の内面に成形材料msによる積層層PMsを成形することができる。従って、2色の表面層PM1,PM2を有する成形品PMBであって、成形品PMBの内面の積層層PMsを有する成形品PMBの回転成形による成形を、工程増加やコスト増加を抑制しつつ簡素に実現することができる。
【0038】
なお、第1実施形態において説明した、成形材料の溶融温度等や、仕切部材の溶融温度等、シール部材の寸法等、加熱温度等、成形材料の種類等の各条件は、第2実施形態においても同様に適用可能である。
【0039】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態としての回転成形装置の概略構成を示す説明図である。第3実施形態の回転成形装置で用いられる回転成形金型100Cは、第1実施形態の回転成形金型100と同様の下型110及び上型120と、下型110と上型120との間に配置される中間型110Mと、から構成されている。下型110と中間型110Mは、第1型割線PL1に沿って型割された2つの型部分であり、中間型110Mと上型120とは第2型割線PL2に沿って型割された2つの型部分である。2つの型割線PL1,PL2は、3つの型部分が積層配置される方向に沿って並ぶ平行線である。
【0040】
中間型110Mは型構造部111Mとフランジ部112ML,112MUとを有している。下型110側のフランジ部112MLは、下型110と中間型110Mとが型合わせされた状態で下型110のフランジ部112と締結される部分である。また、上型120側のフランジ部112MUは、中間型110Mと上型120とが型合わせされた状態で上型120のフランジ部122と締結される部分である。下側のフランジ部112MLには、型合わせ基準用のピン113に挿入される型合わせ用のピン孔123が設けられている。また、上側のフランジ部112MUには、仕切部材130を仮固定用ピンであるとともに、上型120の型合わせ基準用ピンであるピン113が設けられている。
【0041】
型割された下型110と中間型110Mとの間には、第1型割線PL1に沿って配置された仕切部材130がシール部材140を介して下型110と中間型110Mとの間に挟み込まれて固定されている。また、型割された中間型110Mと上型120との間にも、第2型割線PL2に沿って配置された仕切部材130がシール部材140を介して中間型110Mと上型120との間に挟み込まれて固定されている。平行に配置された2つの仕切部材130は、型空間102を3つの型部分が積層配置される方向に沿って3つの型空間部分102L,102M,102Uに間仕切りする部材である。下型110の型空間部分102Lは回転成形の際に第1成形材料m1が投入配置される部分であり、上型120の型空間部分102Uは回転成形の際に第2成形材料m2が投入配置される部分であり、中間型110Mの型空間部分102Mは回転成形の際に第3成形材料m3が投入配置される部分である。成形材料m1,m2,m3には、色が異なる同種の熱可塑性の樹脂材料が用いられる。
【0042】
図8に示した2つの仕切部材130及び成形材料m1,m2,m3がセットされた回転成形金型100Cは、以下の手順で構成することができる。下型110の内部に第1成形材料m1を投入し、下型110上に1つめの仕切部材130を仮固定する。仮固定した仕切部材130上に第3成形材料m3を載置し、その上に中間型110Mを型合わせして締結する。型合わせした中間型110M上に2つめの仕切部材130を仮固定する。仮固定した仕切部材130上に第2成形材料m2を載置し、その上に上型120を型合わせして締結する。これにより、2つの仕切部材130及び成形材料m1,m2,m3がセットされた回転成形金型100Cを構成することができる。
【0043】
回転成形では、第1段階で、第1成形材料m1を下型110の内面に溶着させて表面層PM1を成形し、第2成形材料m2を上型120の内面に溶着させて表面層PM2を成形し、第3成形材料m3を中間型110Mの内面に溶着させて表面層PM3を成形し、第2段階で、仕切部材130を溶融させる。なお、第1段階の回転成形における第1加熱温度及び第2段階の回転成形における第2加熱温度は、第1実施形態と同様に設定されればよい。
【0044】
図9は
図8の回転成形装置により成形された成形品PMCを示す説明図である。成形品PMCは、3色の表面層PM1,PM2,PM3が接合部130mを介して互いに接合されて一体に成形されている。また、成形品PMCの中空の内面には、仕切部材130が溶融して付着した内面付着部130fが成形されている。
【0045】
以上説明したように、第3実施形態の回転成形装置では、3色の表面層PM1,PM2,PM3を有する中空形状の成形品PMCを成形することができる。これにより、塗装工程を省略することができる。成形品PMCの中空内に残存する仕切部材130を回収不要とすることができる。従って、3色の表面層PM1,PM2,PM3を有する中空形状の成形品PMCの回転成形による成形を、工程増加やコスト増加を抑制しつつ簡素に実現することができる。
【0046】
また、上記した回転成形金型100Cを用いた回転成形装置は、3色の表面層PM1,PM2,PM3を有する成形品PMCを成形する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、1色の1つの表面層と他の1色の2つの表面層を交互に有する3つの表面装置の成形品を成形することも可能である。また、4色以上の表面層を有する成形品を成形することも可能である。すなわち、2色以上の複数の表面層を有する成形品を成形することも可能である。なお、複数の表面層を成形する場合、増加する表面層の数に応じて上型と下型の間に配置する中間型が設けられればよい。
【0047】
なお、第1実施形態で説明した、成形材料の溶融温度等や、仕切部材の溶融温度等、シール部材の寸法等、加熱温度等の各条件は、第3実施形態においても同様に適用可能である。
【0048】
D.他の実施形態:
(D1)上記第1実施形態の回転成形装置は、異なる2色の成形材料m1,m2による2色の表面層PM1,PM2を成形する場合を例に説明している。しかしながら、これに限定されるものではなく、異なる種類の成形材料による異なる種類の表面層を成形することも可能である。例えば、汎用樹脂のPPとエラストマー樹脂のTPOや、汎用樹脂のABSとエラストマー樹脂のTPC,TPUのように、接合性の相性が良い硬い材料と柔らかい材料とを用いて硬い表面層と柔らかい表面層とを成形することが可能である。また、汎用樹脂のABSと汎用樹脂のPC,PMMAのように、接合性の相性が良い不透明の材料と透明の材料とを用いて不透明な表面層と透明な表面層とを成形することも可能である。また、汎用樹脂のPCとエラストマー樹脂のTPC,TPUのように、接合性の相性が良い透明の材料と柔らかい材料とを用いて透明な表面層と柔らかい表面層とを成形することも可能である。
【0049】
同様に、上記第3実施形態の回転成形装置においても、異なる種類の複数の成形材料による複数の表面層を成形することも可能である。
【0050】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
100,100C…回転成形金型、102…型空間、102L…型空間部分、102M…型空間部分、102U…型空間部分、110…下型、111…型構造部、112…フランジ部、110M…中間型、111M…型構造部、112ML…フランジ部、112MU…フランジ部、113…ピン、114…孔、120…上型、121…型構造部、122…フランジ部、123…ピン孔、130…仕切部材、130b…残存部分、130f…内面付着部、130m…接合部、133…ピン孔、140…シール部材、Aea…領域、Aeb…領域、PL,PL1,PL2…型割線、PM,PMB,PMC…成形品、PM1,PM2,PM3…表面層、PMs…積層層、m1,m2,m3…成形材料、ms…成形材料